ZOLB005イ B603 2014年3月作成 ゾラデックス® の治療を 受ける患 者さまへ はじめに 乳がんは、治癒が期待できるがんの 1 つです。また 進行や再発した場合でも、現在では、たくさんの治療 法があることから、患者さんに大きな利益を提供でき C o ntent s るようになりました。 がんの治療を受けるとき、正確な情報を入手し、そ 01 閉経前乳がんの術後の治療について 2 02 閉経前のエストロゲン分泌のしくみ 4 03 閉経前のホルモン療法について 5 本冊子は、ゾラデックス ® の治療を受ける閉経前乳 04 ゾラデックス®の治療効果について (術後療法) 6 がん患者さんに、その治療の目的やお薬に関する情 05 ゾラデックス®の治療効果について (進行・再発) 7 報を提供することを目的に作成いたしました。理解を 06 副作用について 9 深め、よりよい治療を受けていただけるその一助にな 07 治療期間中のセルフケア 10 れば幸いです。 08 ゾラデックス®による治療中の注意事項 11 09 注射スケジュールと投与期間 12 10 投与部位 13 11 薬剤費について 14 12 情報ツール:乳がん.jpについて 15 れを正しく理解することが大切です。そのため、医師 や看護師などの医療者とのコミュニケーションは大変 重要でしょう。 監修:増田 慎三先生(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 外科医長・乳腺外科科長) 四方 文子先生(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター) 江並 亜希子先生(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター) 1 01 閉経前乳がんの術後の治療について 乳がんは、卵巣から分泌される女性ホルモン(エストロゲン) で、大きくなる性質があります。乳がん患者さんの多くは、エスト ロゲンを感知するエストロゲン受容体がたくさん発現しています (ホルモン陽性乳がん)。乳がんの手術を行った後でも、目にみえ ない体の中に残っている可能性のあるがん(微小転移)を抑え、 再発を予防するために、薬の治療が大切です。エストロゲンは月 経と深い関係があるので、月経を止める(エストロゲンの産生を 止める)治療がホルモン陽性乳がんの場合、重要になります。 がんの性格やその腫瘍の大きさにより、化学療法(抗がん剤治 療)が勧められる場合もあります。化学療法を受けると、卵巣の 働きが低下もしくは休止し、月経が停止することがあります。ホル モン陽性乳がんの場合、化学療法で無月経(生理が止まる) となっ た患者さんでは、月経が継続した患者さんに比べ、がんの再発の 危険性が少なくなることがわかっています。つまり、術後の一定 期間、月経を止めておくことが、再発防止に役立つといえます。 化学療法を終えた後に、ホルモン療法を 5 年間実施するこ とが標準です。その基本は、抗エストロゲン剤のタモキシフェン とLH-RH アゴニストという治療薬が用いられます。化学療法によ り完全に卵巣機能が抑えられている状態でしたら、LH-RH アゴ ニストは不要ですが、卵巣機能が戻る可能性がある場合は、月 微小転移(潜在がん)のイメージ図 ● 経の再開よりも以前に、卵巣機能が徐々に復活してきていること から、早い時期からLH-RHアゴニストを併用することも多いです。 微小転移(潜在がん) ん) 月経: 生理のこと 無病生存率: がんがない状態の患者さんの生存割合のこと 手術後に体の中にがんが んが あります。 残っている可能性があります。 月経有無別の無病生存率 リンパ 再発を認めない人の割合 肺 100 (%) 骨 肝臓 80 ハザード比:0.70 p< 0.001 60 40 月経状態 患者数 再発を認めた人数 1,868 無月経 424 475 月経あり 173 20 0 0 再発を認めない人数 全体数 2,343 無月経 1,868 月経あり 475 2 4 手術からの期間 6 2,101 1,705 396 1,838 1,519 319 974 797 177 8(年) 323 250 73 Swain SM, et al. N Engl J Med 2010: 362; 2053-65. Copyright © 2010 Massachusetts Medical Society. All rights reserved. Translated with permission. もっと乳がんの治療について知りたい方へ 乳がん. jp では、乳がんに関する詳しい情報を提供しています。さらに乳がんの治療 について知りたい方は、P15 の乳がん. jp の項をご参照ください。 2 3 02 03 閉経前のエストロゲン分泌のしくみ 閉経前のホルモン療法について 乳がんと深い関係があるエストロゲンの分泌指令は、脳の視 乳がんの手術後には、体の中のエストロゲンを少なくする必要 床下部という場所から黄体ホルモン放出ホルモン(LH-RH)が放 があります。そのためには、ホルモン療法で月経を止める必要があ 出され、それが下垂体に伝わって黄体形成ホルモン(LH)と卵胞 ります。閉経前の患者さんにおいては、LH-RHアゴニストのゾラデッ 刺激ホルモン(FSH)の分泌を促します。LHとFSH のバランス良 クス® を使用することで、体の中のエストロゲンを減少させること い刺激で卵巣が働き、エストロゲンが産生されます。 ができます。ゾラデックス® は、下垂体からの指令ホルモンを抑え て、卵巣からのエストロゲンの分泌を少なくさせる治療薬です。 エストロゲン分泌のしくみ(イメージ図) 一般的にゾラデックス® は、エストロゲン受容体をブロックする 抗エストロゲン剤のタモキシフェンと併用されます。 ● 閉経前女性のホルモン環境 ※治療薬や治療期間は、患者さんの年齢や病状によって異なる場合があります。 視床下部 ゾラデックス®のはたらき (イメージ図) LH-RH↓ LH RH↓ ● 閉経前女性のホルモン環境 下垂体 (LH-RH受容体) エストロゲン 受容体 ゾラデックス LH↓ FSH↓ ® エストロゲン↓ 視床下部 下垂体 (LH-RH受容体) タモキシフェン LH↓ FSH↓ 乳がんの退縮 卵巣 エストロゲン 受容体 エストロゲン↓ LH-RH:黄体ホルモン放出ホルモン LH:黄体形成ホルモン FSH:卵胞刺激ホルモン 卵巣 LH-RH:黄体ホルモン放出ホルモン LH:黄体形成ホルモン FSH:卵胞刺激ホルモン 4 5 04 ゾラデックス®の治療効果について (術後療法) ゾラデックス®の治療効果について(進行・再発) ゾラデックス® は、閉経前ホルモン陽性の患者さんでその治療 乳がん検診が広まり、乳房健康への関心が浸透して、がんは ® 効果を発揮します。このゾラデックス には、4 週間に 1 回、腹部 ® に注射するゾラデックス 3.6mgデポと、3ヵ月(12週間)に1回、 ® 腹部に注射するゾラデックス LA10.8mg デポがあります。ゾラ ® 05 早期でみつかることが多くなりましたが、進行した状態でがんが みつかることも少なくありません。また、手術後、適切な薬物療 法を実施しても、がんが再発することもあります。進行や再発の デックス LA10.8mg デポの場合、注射を始めてから12 週目で 乳がんでは、ホルモン陽性乳がんの場合、まずは、エストロゲン 月経が止まります。 を減少させる、あるいはエストロゲンの働きをブロックするホル モン療法を中心に治療を行います(がんの状態により、化学療法 剤なども使用されることがあります)。ホルモン療法は、患者さん ゾラデックス®の無月経誘発までの期間 の QOL(生活の質)を維持しながら、治療効果が期待できる治 療法です。 ゾラデックス® LA10.8mgデポ(n=86) ゾラデックス® 3.6mgデポ(n=84) (%) 100%(86例) 100 進行・再発時の治療 100%(84例) 90 ● がんが進行・再発しても 治療において 打つ手はいろいろあります。 80 月経を認める人の割合 72.6%(61例) 70 67.4%(58例) 60 治療薬 A 治療薬 B 治療薬 C 治療薬 D 50 40 30 20 10 1.2%(1例) 2.3%(2例) 1.2%(1例) 0% 0% 0% 0 投与前 4週目 8週目 12週目 16週目 社内資料 6 7 06 副作用について 臨床試験の結果、ゾラデックス® と抗エストロゲン剤のタモキ ゾラデックス® による治療を始めた数日間は、一時的に体の中 シフェンの併用による治療は、ゾラデックス® 単独による治療と のエストロゲンの量が増加することがあるため、骨が痛いといっ 比べて、病勢進行だけでなく全生存期間も延長することが示さ た症状が現れることがあります。その後には、体の中のエストロ れています。 ゲンの量が低くなるため、ほてりなどの更年期様症状があらわれ 病勢進行: がんが大きくならないこと 全生存率: 患者さんの生存している割合 ることがあります。気になる症状が現れたときは、担当医に必ず ご相談ください。 進行・再発閉経前乳がんにおける ゾラデックス®+タモキシフェンの治療効果 主な副作用の発現頻度 ●ゾラデックス®3.6mgデポ ●ゾラデックス®LA10.8mgデポ ほてり (13.6%) 代謝・栄養障害(5.4%) 肝臓・胆管系障害(5.2%) ほてり (38.3%) 頭痛(6.2%) 関節痛(5.8%) ゾラデックス® 注射後、以下の症状が現れたときは、直ちに医 療機関に連絡し、相談してください。 非常にまれ(0.1%未満)であるが 注意すべき副作用とその症状 高カルシウム血症: ひどい吐き気や嘔吐、のどがかわく ゾラデックス®とタモキシフェンの 併用による治療で効果が上がります。 アナフィラキシー: 顔、くちびる、舌、のどなどが腫れる、足や陰部が 腫れる、食べ物が飲みこみにくい、息ができない、 発疹がでる 間 質 性 肺 炎: 息切れがする、息苦しい、乾咳がでる 肝機能障害、黄疸: からだがだるい、かゆみ、吐き気、食 欲 がない、 皮膚や白目が黄色くなる 血 栓 塞 栓 症: 手足の麻痺やしびれ、しゃべりにくい、胸の痛み、 呼吸困難、片方の足の急激な痛みや脹れ 8 9 07 治療期間中のセルフケア ゾラデックス®による治療中の注意事項 ゾラデックス® による治療中の代表的な副作用には、ほてりや ゾラデックス® による治療には、いくつか注意していただく事 のぼせなどがあります。服装を工夫したり、適度な運動や、ヨガ・ 項があります。注意事項に該当する方、または該当する症状が現 アロマなどのリラックス効果で、ほてりやのぼせの症状をやわら れた方は、必ず担当医と相談してください。 08 げることができるかもしれません。また、熱いお風呂は、ほてりや のぼせの原因になるともいわれています。ぬるめのお風呂で半 治療前または治療中の注意事項 身浴もいいかもしれません。 (ゾラデックス® を注射した日の入浴 ■ 治療が受けられない人:妊婦または妊娠している可能性のある人、授 乳中の人。 も基本的には可能ですが、担当医の指示に従ってください)。症 状がひどいときは、主治医や看護師・薬剤師に相談してみてくだ さい。患者サロンなどで他の患者さんの工夫を聞いてみるのも いいでしょう。 ゾラデックス® は、体の中のエストロゲンを減少させます。エスト ロゲンには、骨の健康を維持する働きがあります。ゾラデックス® による治療中は、エストロゲンの低下によって、骨の密度が低く なり、骨量減少症の場合は、骨折の危険性が高くなります。併用 ■ ホルモン療法中は、適切な方法※で避妊するようにしましょう(※ホル モン剤(ピルなど)の使用は避けましょう)。 ■ 現在、服用している薬や、治療している病気について、必ず担当医や 看護師に伝えましょう(血を固まりにくくする薬剤を一緒に服用してい る場合は、血が止まりにくくなることがあります)。 ■ 過去に注射や薬を服用して、発疹などが現れたことのある方は、あら かじめ担当医に伝えましょう。 ■ ほかの医療機関を受診する場合や薬局で薬を買う場合は、必ずゾラ デックス® による治療を受けていることを伝えましょう。 するタモキシフェンには、一方、骨保護作用があるといわれてい ますので、治療開始前に骨量が正常な場合は、あまり気にする必 要はないかもしれませんが、普段から、バランスの良い食事で、 カルシウムやビタミン Dも摂取し、さらに適度な運動を日常生活 の中に取り入れることで、骨の健康維持をめざしましょう。骨量 が低い場合は、1 年に 1 回、骨密度検査を受けながら、必要に応 じて、骨保護作用のあるお薬の治療をうけることも大切です。 注射後数日間の注意事項 ® ■ ゾラデックス を注射した場所(投与部位)は、揉まないでください。 ■ 注射部位から出血がないことを確認した後、ご帰宅ください。 ■ 帰宅途中や帰宅後に、注射部位から出血があった場合には、上から軽 く押さえてください。 ■ 次の症状があった場合は、すみやかに医療機関に連絡してください。 血が止まらない場合、いつもと違う症状があると感じたとき、注射部 位周囲の腫れ、注射部位周囲の痛み、注射部位周囲の肌の色の変化 ( 内出血 )、気分が悪い、動悸、冷や汗がでる。 10 11 09 10 注射スケジュールと投与期間 投与部位 ゾラデックス® には、4 週 間 に 1 回 注 射 するゾラデックス® ゾラデックス® は、腹部などの皮下脂肪内に注射する治療薬で 3.6mg デポと、3ヵ月(12 週間)に 1 回注射するゾラデックス® す。注射する具体的な場所は、おへその下右側、左側の皮下の ® LA10.8mg デポがあります。ゾラデックス LA10.8mg デポは、 ® どちらかに行い、注射回数に応じて右側と左側を交互に注射す ゾラデックス 3.6mg デポと比べて、注射の間隔が長くなるとい ることがあります。投与の際は、皮膚をつまんで投与することが うメリットがあります。 あります。 投与期間については、担当医に相談しましょう。 注射について不安に感じることがございましたら、担当医や看 護師、薬剤師に相談しましょう。 ゾラデックス®の注射スケジュール ゾラデックス®の投与部位 ●ゾラデックス®3.6mgデポの注射スケジュール 治療 開始 4 8 12 16 20 24 28 32 36 40 (週) 36 40 (週) 投与部位 ●ゾラデックス®LA10.8mgデポの注射スケジュール 治療 開始 4 8 12 16 20 24 28 32 おへその下右側、 もしくは左側の皮下のどちらかに注射します。 12 13 11 薬剤費について 情報ツール:乳がん.jpについて ゾラデックス® による治療は、多くの場合、抗エストロゲン剤の 治療にあたって、正確な情報を入手し、それを正しく理解する タモキシフェンとの併用で行われます。一般的な治療期間は、ゾ ことは大切なことです。そのため、医師や看護師、薬剤師などの ® ラデックス が2∼5年間、タモキシフェンが5年間とされています。 ® 12週間(3ヵ月) に1回注射するゾラデックス LA10.8mgデポは、 医療者とのコミュニケーションは重要です。説明された内容でわ かりにくいところがあれば、遠慮なく質問し、疑問を解決される 4 週間に 1 回注射するゾラデックス 3.6mg デポと比べ、患者 ことが大切です。説明を受けた内容をより詳しく知りたい、復習 さんの薬剤費の負担を軽減できるというメリットがあります。 したいと思われることもあるでしょう。そのようなときは、乳がん. ® 12 jpを一度ご覧ください。 ゾラデックス®の薬剤費の比較(2014年4月∼) ●ゾラデックス®+タモキシフェンの1年間にかかる薬剤費 (3割負担) 乳がん .jp は、乳がんの発症の過程や、さまざまな乳がんに対 する治療などの情報について、分かりやすく説明している患者さ ん向けのサイトです。 【薬価】 ゾラデックス®LA10.8mgデポ(68,203円) ゾラデックス®3.6mgデポ(38,888円) タモキシフェン20mg(322.4円) ゾラデックス® LA10.8mgデポ タモキシフェン ゾラデックス®LA10.8mgデポ 35,303円 81,844円 ( 3ヵ月徐放製剤) 117,147円 +タモキシフェン ゾラデックス® 3.6mgデポ タモキシフェン 35,303円 ( 4週間徐放製剤) ゾラデックス®3.6mgデポ 151,663円 186,966円 +タモキシフェン ● ゾラデックス®LA10.8mgデポの場合:28,585円 / 1回あたりの薬剤費 (3割負担) 3ヵ月 【タモキシフェン (84日) :8,124円+ゾラデックス®LA10.8mgデポ(1回) :20,461円】 ●ゾラデックス®3.6mgデポの場合:14,374円 / 1ヵ月 【タモキシフェン (28日) :2,708円+ゾラデックス®3.6 mgデポ(1回) :11,666円】 ® タモキシフェン20mg/日:ノルバデックス(販売名) で算出 乳がん.jp: http://www.nyugan.jp/ 以下のサイトもご参照ください がんになっても: http://www.az-oncology.jp/ 14 15 memo お名前: 医療機関名: 医療機関連絡先: 医療機関緊急連絡先: 担当医:
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