主要国の鉱業を巡る最近の動向 - JOGMEC 独立行政法人石油天然ガス

調査部金属資源調査課
主要国の鉱業を巡る最近の動向(2014年6~7月)
鉱業セクターの2013年納税額が前年比減
チリ国税局のデータによると、大規模民間鉱山企業
の法人税納税額は、17.03億US$で前年比5.7%減、鉱
業特別税(鉱業ロイヤルティ)の税収は前年比20.6%減
の4.57億US$であった。国税局は税収減の要因として
2014.9 金属資源レポート
111
(330)
7
月)
CODELCO資金供給法案、複数年度の枠組みを検討
Aurora Williams鉱業大臣は、2014年H2中の国会提
出を政府が予定しているCODELCO資金供給法案には
複 数 年 度 の 枠 組 み が 取 り 入 れ ら れ る と 発 言 し た。
CODELCOへの資金供給法案の国会への提出は、2014
年5月21日のMichelle Bachelet大統領教書演説で発表
されていた。国営企業であるCODELCOは全ての利益
を政府へ納めており、毎年6月末までに納めた利益の
うちいくらが返還されるかが決定される。現在同社は
中核プロジェクトの開発のため、約50億US$/年の大
規模投資を実施中。Óscar Landrretche役員会会長は、
プロジェクトを前進させるために必要な資金が確保で
きなければ、政府が計画する多様な社会政策の原資を
納められなくなる危険性があると述べた。
6
〜
環境影響評価システムに関する新規則施行後に環境評
価プロセス申請却下の割合が大幅増
環境評価プロセスを規制する環境影響評価システム
に関する規則令の2013年12月施行後、環境評価プロセ
ス申請却下のケースが大幅に増加しているという。
2014年Q1に提出された118件の環境影響評価(EIA)・
環境影響宣言
(DIA)のうち、36.4%
(43件)が却下され
た。この割合は2013年に比べると3倍に及ぶ。新規則
施行後に環境影響評価に対する要求が厳しくなってお
下院、CODELCO未採掘鉱区のENAMIへ譲渡要請す
る裁定案を承認
2014年5月20日、チリ下院は、現在採掘が行われて
いないCODELCOの鉱区をENAMI
(チリ鉱業公社)に
移 譲 す る こ と を 要 請 す る 裁 定 案(proyecto de
resolución)を承認した。この裁定案は、ENAMIから
中小鉱山業者に鉱区を譲渡することを目的としたも
の。対象となるのは、CODELCOの通常生産規模にお
いて現在操業がなされていない場所。この案を支持し
ているのは与党会派Nueva Mayoríaに所属する議員グ
ループであり、現行法でCODELCOからENAMIへの
土地の移譲は可能であるとしている。チリ地質鉱業局
(SERNAGEOMIN)のデータによると、2013年時点の
CODELCOの 鉱 区 保 有 面 積 は、 直 接 保 有435,500ha、
子会社のCompañía Contractual Minera Los Andesを
通じて841,100ha、操業中の8事業所が840,704haとなっ
ている。
主要国の鉱業を巡る最近の動向(2014年
1. 中南米
(1)
チリ
<政府・政策に関する動向>
CODELCO、2014年Q1剰余金前年比38%減、1.69億
US$のコスト削減
2014年5月30日、CODELCOは2014年Q1決算を発表
した。剰余金は5.39億US$で前年同期比37.9%減とな
った。この剰余金減は、銅価格及び副産物価格の下落
によるもの。2014年Q1平均銅価格は3.194US$/lbで前
年 同 期 比11 % 下 落、 モ リ ブ デ ン は 同12 % 下 落
(22
US$/kg)
、硫酸は同29%下落
(76US$/t)、金は同21%
下落
(1.293US$/oz)
、銀は同32%下落
(20US$/oz)した。
CODELCOが100%権益を保有し操業する鉱山からの
銅生産量は、38.3万tで前年同期比0.5%減であったが、
同 社 が 権 益 の 一 部 を 保 有 す るEl Abra鉱 山
(49 %)
、
Anglo America Sur
(20%)
からの権益見合い分の銅生
産量を加えると、前年同期比0.1%増の42.8万tとなる。
電力コスト、消耗品、サービスコストが削減され、ト
ータルキャッシュコストは2.361US$/lbで前年同期比
3.6%減となった。C1コストは前年同期比6.1%減の
1.596US$/lb、C3コ ス ト は 同2.9 % 減 の2.224US$/lbと
なった。コスト削減の取り組みにより、2014年Q1に
削減したコストは約1.69億US$に達し、2014年目標の6
億US$削減に向け順調に進んでいるとIván Arrigada
管理・財務部門副総裁は語った。去就が注目されてい
るThomas Keller総裁は、自身の総裁職継続への意思
について、同社の今後に関するビジョンを役員会と共
有出来る場合にのみと述べた。
り、環境影響評価局によると、提出プロセスに必要な
手続きが不十分なプロジェクトがあるという。新規則
施行前の駆け込みで多数の会社が環境評価プロセスを
申請したことから、プロセス申請数自体も減少してお
り、2013年Q1の276件に対し、2014年Q1は半減以下と
なっている。
鉱業動向
本稿では、JOGMEC海外事務所や海外業界誌によ
る主要国の鉱業関連のニュースを纏める。各ニュース
の詳細及び出典等については、
「金属資源情報」
webサ
イト
(http://mric.jogmec.go.jp/)にて公開している「ニ
ュース・フラッシュ」や
「世界のメタル動向」を参照さ
れたい。
鉱業動向
主要国の鉱業を巡る最近の動向(2014年
〜
6
月)
7
銅価格の下落
(3.60US$/lb→3.32US$/lb)を挙げるとと
もに、2012年の税収にはAnglo American Surの49%
株式売却に関連する所得税が含まれていたためとして
いる。2013年のチリの銅輸出量は578万tで前年比6%
増 加、 輸 出 額 は439億US$と な り、 鉱 業 輸 出 全 体 の
91.4%を占めた。
CODELCO役員会、Thomas Keller総裁の解任を決議
し、暫定総裁にOctavio Araneda中央・南部操業副総
裁を指名
2014年6月5日に開催されたCODELCOの臨時役員会
議でThomas Keller総裁の解任が決議された。6月13
日にCODELCO役員会はOctavio Araneda中央・南部
操業副総裁を暫定総裁に指名した。暫定総裁は、6月
13日より新総裁が決まるまでCODELCOの指揮を執
る。Araneda 氏 は 52 歳 で、28 年 間 の 勤 務 経 験 は
CODELCOのみ。El Teniente事業所においてキャリ
アを重ね、2010年12月からは事業所長を務めた。メデ
ィア報道によると、同氏周辺はAraneda氏を
「対話の
人」と表現し、労働者との関係は良好で高い技術背景
があるとしている。
リチウム技術委員会発足
2014年6月11日、Michelle Bachelet大統領はリチウ
ム技術委員会設置のための政令に署名した。この委員
会では、今後のチリにおけるリチウム採掘に関する評
価が行われる。リチウム探鉱及び採掘を促進し、新規
プレイヤーに対する参入障壁を引き下げるため、現在
の鉱業権システムを改善する政策を準備することが目
標で、2014年末までに案を作成する。20名からなる委
員 会 メ ン バ ー に は、Aurora Williams 鉱 業 大 臣、
Ignacio Moreno鉱業次官、Luis Felipe Céspeded経済
大臣のほか、エコノミスト、地質技師、天然資源の専
門家などが含まれる。リチウム技術委員会の設立は、
Bachelet大統領が政権発足後100日以内に取り組むと
した選挙公約のうちの1つ。チリではリチウムが戦略
鉱物に指定されているため、現行鉱業法下では特殊な
条件下でしかリチウムの採掘が出来ない。
環境監督庁は体制を充実し活動を強化することを計画
2014年6月12日、JOGMECサンティアゴ事務所が環境
(SMA: Superintendencia del Medio Ambiente)
監督庁
監督官房長David Silva氏と面談したところ、SMAは
組織体制を充実し活動を強化する計画を有しており、
具体的な施策として、職員の増強を図るほか、15ある
各州に地方事務所を設置し職員を常駐させる予定との
ことである。現状では、100人の職員のほかチリ地質
鉱業局
(SERNAGEOMIN)や大学等の協力を得て、環
境認可
(RCA:Resolución de Calificación Ambiental)
の履行状況の追跡・監査を実施しているものの、年間
5,000件程度あるRCAに対応するには実施体制が不十
分であることから、この状況の改善を目指すという。
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2014.9 金属資源レポート
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また、SMAとしてはRCAの内容を超える順守事項を
求めることはなく、個別の項目について判断基準を有
するものではないとしながらも、各種環境規制基準の
順守や自然環境・地域住民環境への配慮のほか、ILO
第169号条約
(1989年の原住民及び種族民条約)に規定
される先住民との合意形成プロセスへの配慮が重要と
いえるだろうとの見解が示された。SMAは、その活
動を高い水準で維持することを方針として掲げてお
り、
「社会的不平等との闘い」に重点を置いた政策を推
し進めるBachelet大統領の意向も反映され、予算強化
がなされている模様である。SMAは、2010年、チリ
のOECD加盟に際して、環境基本法(Ley Sobre Bases
Generales del Medio Ambiente、法律第19,300号)改
正に伴って設立された組織であり、このような国際水
準に比肩する行政システムの整備と運用は、投資事業
に明確な見通しを与えるものといえ、投資事業リスク
の低減に資するものであるとしている。
氷河保護法案の国会提出は2014年8月に
Pablo Badenier環境大臣の下院環境委員会での発言
で、チリ政府が氷河保護法案を2014年8月に国会へ提
出することが明らかにされた。Badenier環境大臣は、
「多くの議員動議がこれまでにあり、これらを評価し
有益なところは取り入れることも検討しながら、政府
の法案として提出したい。しかし、分析や対話が必要
な複雑な問題もあることから、よりよい形での規制を
検討するため、科学者や大学教員、業界関係者と意見
交換を行っている」と述べた。政府は氷河保護と両立
可能な経済活動の実現を目指しているという。さらに
同大臣は、氷河保護は氷河保護法によって扱われるの
に加え、先頃国会に提出された生物多様性及び野生生
物地域保護局設立法案にも付加的な氷河の保護が含ま
れると述べた。
CODELCOへの2億US$の利益返還を政府が承認
2014年7月1日、CODELCOの投資計画に資するため、
2億US$の利益返還を同社に行う手続きを開始するこ
と を 決 定 し た と チ リ 財 務 省 が 発 表 し た。 ま た、
Michelle Bachelet大統領が5月21日の教書演説で発表
したCODELCOの長期の資金調達を保証するための法
案を2014年Q3中に国会へ提出することを政府が承認
したことも明らかにされた。CODELCOが政府から利
益返還を受けるのは過去15年で6回目。2013年の利益
返還額は10億US$と決定されたが、Anglo American
Sur株式取引で生じた留保利益を利用したもので、
CODELCOが求めていた金額よりも少なく同社と政府
の間で対立が生じていた。調達した資金は、5年間で
約230億US$に上る大型投資の一部に充てられる。
COCHILCO、2014年の平均銅価格予測を引き上げ
2014年7月8日に発表した国際銅市場の動向報告書中
で、COCHILCOは2014年の平均銅価格を3.12US$/lb
2014.9 金属資源レポート
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月)
Barrick Gold、Pascua Lama金-銀プロジェクトに反
対する先住民族コミュニティと暫定合意
加Barrik Goldはチリ・アルゼンチンの2国間鉱業開
発プロジェクト、Pascua Lama金-銀プロジェクト建
設に反対するDiaguita族先住民グループと暫定合意に
達した。Huasco渓谷に居住する18のDiaguita族コミ
ュニティのうちの15コミュニティと覚書を取り交わし
たもの。この暫定合意に関し、Diaguita族コミュニテ
ィ代表のLorenzo Soto弁護士は、
「チリにおいて初めて
先住民族コミュニティ、Cerro Colorado鉱山の導水シ
ステム建設環境認可に異議申し立て
先住民族のAymaraコミュニティが、Cerro Cororado
鉱山
(チリ第Ⅰ州)
の導水システム建設に関する環境認
可承認に対し、異議申し立てを行った。導水システム
は、大雨の際に地域の小河川へ鉱山から流出する可能
性 の あ る 水 が 入 ら な い よ う に 計 画 さ れ た も の で、
Cerro Negro・Norte・Parcaズリ堆積場近傍での建設
が予定されている。投資額は680万US$が見積もられ
ており、環境認可は2014年5月に承認された。コミュ
ニティ側は、人の暮らすコミュニティが計画施設の近
傍に存在することから、環境影響宣言
(DIA)でなく
ILO第169号に合致した環境影響評価(EIA)の実施が
6
〜
<企業・プロジェクトに関する動向>
Escondida鉱山、2016年からのLNG供給契約を締結
Escondida鉱山
(チリ第Ⅱ州)
はGNL Mejillones LNG
再ガス化プラントからLNGの供給を受ける契約をGas
Natural Fenosaと 結 ん だ。 契 約 に 基 づ い た 出 荷 は、
Kelar火力発電所が操業を始める2016年開始が予定さ
れている。Kelar火力発電所には、コンバインドサイ
クル発電方式が採用され、発電能力は517MWである。
環境裁判所、Maricunga金鉱山に対する環境監督庁の
罰金裁定の再作成を命令
環境裁判所は、2014年2月に環境監督庁がMaricunga
金鉱山
(チリ第Ⅲ州)に対し5,122UTA
(約450万US$)の
罰 金 適 用 を 決 定 し た 裁 定 の 再 作 成 を 命 じ た。
Maricunga金鉱山を操業する加Kinross Goldが、環境
監督庁の裁定を不服として環境裁判所へ訴えていたも
の。新たな裁定には、Kinross Goldが2013年11 月に
開始していたが、期限後に提出されたとして環境監督
庁が不受理とした修復プロセスを考慮するよう求めら
れた。さらに裁判所は、問題に対処するための同鉱山
のアクションプランを却下する際、環境監督庁に不法
な振る舞いがあったことも認めた。環境監督庁が指摘
していた違反事項には、ベルトコンベアへのカバー未
整備、救急用地へのズリ及び廃棄物の積み上げ、磨鉱
プラントからの粒子状物質拡散防止インフラの未整備
などがあった。また、環境監督庁は、当初の環境認可
に含まれていない作業や施設の存在を監査中に確認し
たとし、違法性があると主張していた。
主要国の鉱業を巡る最近の動向(2014年
鉱業審議会及びCODELCO、エネルギー省とエネルギ
ー効率化協定を締結
2014年7月15日、鉱業審議会
(Consejo Minero)及び
CODELCOは、エネルギー省と業界のエネルギー使用
効率化を推進する協定を締結した。鉱業審議会は大規
模鉱山会社で構成される業界団体。エネルギー省との
この種の協定を締結するのは鉱業セクターが最初であ
り、2015年H1に国会提出が予定されているエネルギ
ー効率化法案を先取りしたもの。Máximo Pachecoエ
ネルギー大臣は、鉱業セクターがチリ全体のエネルギ
ー需要の39%、電力需要の15%を消費する最大消費部
門であることから今回の協定締結が重要であると強調
した。この協定に基づき、鉱山会社はエネルギー使用
効率化に繋がる要素を抽出するための監査を受け、そ
の結果を基にエネルギー効率化を進めていく。2014年
の始めにPachecoエネルギー大臣は、過去10年のエネ
ルギー使用量の増加に比べ、銅の生産量が増えていな
いことを非難する発言をしていた。同大臣は、北部供
給システム
(SING)の発電量の約85%を消費する10大
鉱山会社が5%の消費節約をすれば、250MWの発電所
1基建設するのと同じ効果があると述べていた。
締結される性質の合意であり、今後は先住民族コミュ
ニティが類似プロジェクトの開発に対し意見を述べる
権利を持つことになる」とコメントした。暫定合意の
有効期間は6か月で、Barrick Goldはプロジェクトに
関する情報を先住民と共有することに合意、それらの
情報は独立した専門家によって裏付けをとることがで
きるとされ、その費用は同社が負担する。このステー
ジが成功と判断されれば、両者は最長2年間の対話ス
テージを開始する。このステージには、国際監視員が
参加、先住民族ロイヤルティの支払いが検討される。
建設は、このステージが完了するまで開始されない。
先住民族ロイヤルティに関しSoto弁護士は、類似ロイ
ヤルティに関するアイデアはこれまでないが、創設さ
れうるものであり、創設への障害はないと述べた。
Aurora Williamas鉱業大臣は、Barrick Goldと先住民
族コミュニティ間の合意を歓迎したが、鉱業に普遍的
に適用される先住民族ロイヤルティ導入の短期的な可
能性については否定した。
鉱業動向
と予測、2014年3月発表の同報告書中で予測した3.05
US$/lbから引き上げた。中国の銅消費が前回予測よ
りも回復すると見込まれたことによるもの。2015年の
平均銅価格予測は、3US$/lbで据え置いた。同報告書
の 中 で、 世 界 の 銅 鉱 山 生 産 量 は、2014年 が 前 年 比
5.9%増の1,938万t、2015年が2014年予測値から5.8%増
の2,050万tと予測された。チリの銅生産量は、2014年
が前年比3%増の595万t、2015年は627万tが推定され
ており、これらの生産増予測は、主にMinistro Hales
鉱山、Caserones鉱山、Sierra Gorda鉱山、Antucoya
鉱山の生産が開始されることによるものとされる。
求められると主張している。Cerro Colorado鉱山は
BHP Billitonが100%の権益を保有し操業する。2013
年の産銅量は7.4万t。
鉱業動向
主要国の鉱業を巡る最近の動向(2014年
〜
6
月)
7
Li3 Energy、リチウム新政策をにらみMaricungaプロ
ジェクトでの新たな探鉱作業を計画
Li3 EnergyはMaricungaリチウム-カリウムプロジ
ェクトでの2回目の探鉱キャンペーンを開始する意向
である。2015年5月までの完了を目指し、リチウム埋
蔵量を更新することを目的とした探鉱作業を実施する
計画。新たに得られた埋蔵量を使い、2015年末までに
FSを行う。これらの予定は、リチウム技術委員会が
作成するリチウム新政策の実施時期に合わせ調整され
るという。2014年6月に発足したリチウム技術委員会
は、10月まで政策立案のための作業を行う。立案され
た政策は、委員会内での承認を受けた後、政府がこれ
を 公 表 し、2015年Q1中 の 法 制 化 に 向 け、Michelle
Bachelet大統領に提出される予定となっている。
CODELCO、Andina拡張プロジェクトを変更
CODELCOは、2014年7月24日付けニュースリリー
ス で、 環 境 影 響 評 価 手 続 き を 前 に 進 め る た め、
Andina拡張プロジェクトの変更を考慮した環境影響
評価書の追補
(Addenda)を提出したと発表した。こ
の拡張プロジェクトは、周辺の氷河や水資源に悪影響
を与える恐れがあるとしてNGOや国会議員から強い
非難を浴びていた。CODELCOは、環境評価プロセス
を通じて住民やNGO等から提出された環境影響評価
書に対する2,000を超える所見への回答に1年以上をか
けた。内務・サステナブル部門のRené Aguilar副総裁
は、
「我々は、受け取った所見をひとつひとつ検討する
ために1年以上をかけた。コミュニティ代表者、当局、
専門家の声を聞くため、何十回もミーティングを開催
した」と述べ、さらに、
「より多くの情報、主な懸念事
項への新たな対策、周辺環境への影響の低減が含まれ
たより素晴らしいプロジェクトとなった」とコメント
した。プロジェクト部門のGerhard von Borries暫定
副総裁は、プロジェクトの変更には、プロジェクトが
影響を及ぼす氷河を5つまで減らすオープンピットの
デザイン変更が含まれると説明した。拡張プロジェク
トの計画マインライフである65年間に亘り永続的に氷
河をモニタリングするシステムや地域の粉塵の影響を
評価する新しいモデリング調査も導入されているとい
う。
<その他の動向>
国内の硫酸需給、2020年には生産が消費を上回ると
の予測
COCHILCO
(チリ銅委員会)が、2014年7月21日に公
表した「チリ硫酸市場の2023年までの見通し」による
と、チリの硫酸需給は将来的な銅カソード生産の減少
のため、2020年までに従来の需給状況が逆転し、生産
114
2014.9 金属資源レポート
(333)
過剰に転ずると予測された。2013年のチリの硫酸生産
量は542万tであった一方、消費量は836万tで294万tの
供給不足であった。2013年の硫酸輸入量は283万tであ
り、その多くをペルー、日本、韓国から輸入した。
COCHILCOの予測によると、2019年までは供給不足
が続くが、2020年に需給が逆転、22万t程度生産量が
消費量を上回る。硫酸消費量の減少は、銅カソードの
生産減により説明され、2013年に193万tだった生産量
が、2023年には113万tまで減ると予想されている。銅
カソードの大規模な新規生産が近年中に予定されてい
る の はAntofagasta Minerals及 び 丸 紅 が 出 資 す る
Antucoya プ ロ ジ ェ ク ト( 第 Ⅱ 州 )の み で あ り、
Collahuasi、Quebrada Blanca、Mantos Blancos、
Michilla、Mantoverdeでは2023年までの操業終了が見
込 ま れ て い る。CODELCO も Salvador 事 業 所 及 び
Chuquicamata事業所の湿式製錬ラインを閉鎖するた
め、2023年までに40万tの銅カソード生産減になると
見られている。
港湾労働者がストライキ
2014年7月8日から2日間、労働者によるストライキ
がチリの10か所の港で発生した。港湾労働者の権利を
拡大し、昼食手当の遡及払いをもたらす法案の議論が
下院で合意されたが、その法案の内容が港湾会社に交
代要因雇用の余地を与え、労働組合の力を削ぐものと
して、労働者側が反発した。ストライキはチリの10 か
所の港
(San Antonio、Iquique、Chañaral、Caldera、
Huasco、San Vicente、Coronel、Liquén、Puerto
Montt、Punta Arenas)で実施されたという。
北部供給システムで停電、鉱山の操業に影響
2014年7月2日昼頃、大規模銅鉱山が多数所在する北
部供給システム(SING)において約2時間の停電が発
生、 鉱 山 の 操 業 に 影 響 が 出 た。CODELCO は
Chuquicamata・Radmiro Tomic・Ministro Hales・
Gabriera Mistralの4事業所に停電の影響が出たことを
明らかにした。各事業所はそれぞれバックアップシス
テムを保有しているが、生産ペースを維持するには不
十分なためという。しかし、停電の時間が長くなかっ
たことから、生産減は少なく回復可能なものであると
関係者はコメントした。Antofagasta Mineralsは、緊
急時対応モードを処置し、バックアップチームを備え
て い た こ と か ら 状 況 は 悪 化 し て い な い と し た。
Collahuasi鉱山(チリ第Ⅰ州)では、操業はストップし
たが、生産の停止には至らなかったという。
(2)ブラジル
<政府・政府に関する動向>
2014年 前 期 の 鉱 業 ロ イ ヤ ル テ ィ 納 付 額 は 前 年 比
29.4%の減少
2014 年前期(1~6月)の鉱業ロイヤルティ
(CFEM)
納付額は912百万BRL
(レアル)
(約410百万US$)で、前
年同期比29.4%の減少となった。うち6月の総納付額
は、119百万BRLで、前年同月比1.2%の増加であった。
2013年のCFEM納付額は総額23.8億BRL。
115
(334)
7
月)
2014.9 金属資源レポート
6
〜
ICMMを脱退の可能性
Valeは、ギニアのSimandou鉄鉱石プロジェクトに
関 す る Rio Tinto か ら の 訴 訟 問 題 を 背 景 と し て、
ICMM
(International Council on Mining and Metals、
国 際 金 属・鉱業評議会)を脱退する可 能 性 が あ る。
Valeの脱退の動きに関してICMMの広報担当者は、
Onça Pumaニッケル鉱山での先住民との争議は2日間
で平和裡に収束
Valeが操業するOnça Pumaニッケル鉱山
(Para州)
での先住民反対運動は2日間で平和裡に収束した。鉱
山操業による地域コミュニティ発展への脅威を緩和す
るための修正合意を求める先住民集団約400名が、6
月15日、鉱山ゲートを封鎖し、従業員50名を鉱山施設
内に留めたほか、施設への放火を示唆して威嚇するな
どしていた。Valeは、
「先住民との議論には応じる姿勢
主要国の鉱業を巡る最近の動向(2014年
中国向け低品位鉄鉱石の輸出価格値引きを発表
Valeは主な同業他社の例にならい、カラジャス地域
の鉄鉱石を除く低品位鉄鉱石の中国向け輸出価格値引
きを発表した。同社の輸出量は271百万tであり、その
内110百万tはカラジャス地域からのものであること
から、半分以上が値引き対象となる。これは、鉄鉱石
の生産量が増える一方で、需要が停滞していることを
背景としたもの。Goldman Sachsによると、2013年に
14百万tの余剰が見られたのに対し、2014年は72百万t、
2015年には175百万tと余剰が急増する見通しとされて
いる。そのような観測に関して、ValeのMartins鉄鉱
石担当役員は、世界の鉄鉱石市場は少なくとも前年度
比10 % の 伸 び 率 を 維 持 す る だ ろ う と し て い る。
Morgan Stanleyのアナリストによると、Valeの生産
コストはほぼ28 US$/t。SLW株式仲介企業のGaldi氏
は、20~25US$とさらに低くみている。市場価格が
95US$/tの水準となり、t当たり2.5US$の割引をし
たとしても同社は充分対応可能とみられる。
<企業・プロジェクトの動向>
豪Iluka社、Tapira鉱山でのチタン資源開発事業に関し
てValeと提携
豪Iluka Resources社は、Tapira鉱山でのチタン資
源開発事業に関してValeと共同開発契約を締結した。
この共同開発契約に基づき、Iluka社は、Tapira鉱山
の貯鉱を対象としたチタン資源の開発に関する地質学
的および冶金学的研究を実施する。Iluka社によると、
第1期事業では、15か月をかけて、地質学的技術検討
や市場評価、パイロットプラントの設計を実施する予
定である。また、第2期事業として、パイロットプラ
ントの建設と稼働、FSの実施、そして商業生産施設
の建設と稼働を計画している。FS実施までの費用拠
出状況により同社は最大49%のチタン資源開発に係る
JV権益を得ることができるほか、Valeが保有する他
の酸化チタン鉱床開発事業への参画を優先的に選択す
ることが可能となる。Valeがリン酸塩生産事業を実施
しているTapira鉱山には酸化チタン資源が賦存して
いるが、その冶金学的特性から未利用のままで、リン
酸塩の生産に伴ってストックされている。
鉱業動向
<Valeに関する動向>
ValeのS11D鉄鉱石プロジェクト建設工事は順調に進捗
ValeのS11D鉄 鉱 石 プ ロ ジ ェ ク ト
(Pará州 )で は、
2013年10月に建設工事が着手されて以降、鉄鉱石処理
施設の建設工事が計画通りに順調に進捗しおり、今般、
第2および第3のクラッシャー設備の建設が完了した。
また、豪WorlyParsons社は、2014年6月12日付リリー
スにおいて、Valeとの間で同プロジェクトにおける建
設管理支援に係る契約を締結したことを発表した。
WorlyParsons社は2010年から同プロジェクトに関与
しており、これまでの処理施設の設計段階で培ったノ
ウハウを建設段階における施設の移送・導入や組み立
てに活用することとなる。S11D鉄鉱石プロジェクト
は、初期投資額80.4億US$のCarajás Serra Sul鉱山・
処理施設建設
(生産能力90百万t/年)と、114億US$の
Carajás鉄道・Ponta da Madeira港増強等インフラ投
資
(増強後輸送量230百万t/年)を含むものである。
2016年下期に操業開始が予定されているこの事業は、
Valeにとってのみならず、ブラジル鉄鉱石産業の歴史
の中でも最大規模の開発事業となる。Carajás Serra
Sul鉄鉱床の埋蔵鉱量は42.4億t、平均Fe品位は66.7%
である。
Valeの参加継続について話を続けているとしている。
一方、Valeの広報担当者は、ICMMにレターを送った
ことを認めたが、それ以上のコメントをしていない。
ICMMは、環境に配慮した持続可能な鉱山開発の促進
を目的として結成された業界団体であり、Valeおよび
Rio Tintoのほか、BHP BillitonやGlencoreなど世界の
大手金属鉱山会社22社により構成される。Rio Tinto
のValeに対する訴訟の内容は、Valeとイスラエル人
億万長者Beny Steimets氏が共謀して同社の保有して
いたSimandou鉄鉱石プロジェクト鉱区の半分を奪い
取ろうとしたというもの。Simandouプロジェクトを
めぐっては、2008年のBSG Resources(BSGR)
社によ
る鉱区取得に際して、同社による当時政権への賄賂と
いった不正行為があったことが明るみとなったため、
2014年4月、ギニア政府により、BSGR社とそのJVパ
ートナーのValeの保有する鉱区が取り消された経緯
がある。Rio Tintoは、Simandouプロジェクト鉱区の
半分が2008年当時の政府によりBSGR社へ付与される
との判断がなされるまで、鉱区全体を保有していた。
Valeは、2010年4月に、BSGR社が保有するSimandou
プロジェクトの権益51%を25億US$で取得していた。
鉱業動向
主要国の鉱業を巡る最近の動向(2014年
〜
6
月)
7
であるが、従業員の安全を脅かすような暴力の行使は
断固として認めない」とのコメントを発表した。Onça
Pumaニッケル鉱山のフェロニッケル生産能力は220
千t/年(ニッケル純分53千t/年)で、ほとんどが中国、
日本、ドイツ、フィンランド、イタリア等に輸出され
る。2011年6月に操業を開始した後、2012年6月、製錬
炉の問題から操業を停止し、2013年11月に操業を再開
した。断続的な操業となっているが、年間ニッケル生
産実績は、2011年:7千t、2012年:6千t、2013年:1.9
千tと推移してきている。
Bamin社、Pedra de Ferro鉄鉱石プロジェクトの操業
ライセンスを取得
Bahia Mineração
(Bamin)社はPedra de Ferro鉄鉱
石プロジェクト
(Bahia州北部)の操業ライセンスを取
得した。Pedra de Ferro鉄鉱石プロジェクトは、鉄鉱
石生産量19.5百万t/年の鉱山のほか、処理量1百万t/
年のプラントおよび面積495haの臨海ターミナル施設
からなるPort Sul港湾複合施設の建設を含むプロジェ
ク ト で あ る。 計 画 で は、Port Sul へ は Ferrovia
Centro-Atlântica社の鉄道を経由して年間25百万tの鉄
鉱 石 を 輸 送 す る と さ れ る。Bamin社 は、6月15日、
Bahia州環境水資源機構
(INEMA:Instituto do Meio
Ambiente e Recursos Hídricos)
から3年間の操業ライ
センスを付与された。Bamin社は、Eurasian Natural
Resources社
(カザフスタン)とZamin Ferrous社のJV
(出資比率50:50)
であり、Bahia州において保有する4
鉱区の鉄鉱石資源量は18億tである。Pedra de Ferro
鉄鉱石プロジェクトの可採鉱量は454.3百万t、平均Fe
品位は42.9%、鉱物資源量
(精測、概測、予測)は12.4
億t、平均Fe品位は37.5%である。
連邦裁判所、Volta Grande金プロジェクトのライセン
ス手続き差し止めを承認
ブラジル連邦裁判所は、Belo Sun Mining社(本社:
トロント)が保有するVolta Grande金プロジェクトの
ライセンス手続きの差し止めを承認した。裁判所は、
また、2013年12月にPará州環境省
(Sema:Secretaria
de Meio Ambiente do Pará)
が発行したVolta Grande
金プロジェクトの暫定ライセンスについても保留とし
た。今回の裁判所の判断は、2013年11月にPará州連
邦公共検事局
(MPF:Ministério Público Federal no
Pará)が下した、同社が先住民調査を完了するまでは
暫定的に手続きを停止する、
との措置を支持するもの。
Belo Sun社は
「連邦裁判所の裁定は暫定ライセンスが
有効となる余地を残すものであり、今後のライセンス
の取得に向けて先住民調査を完遂する必要がある」と
発表したほか、
「プロジェクト推進に向けたライセンス
認可の要求事項達成に向けて、Semaとの協力を継続
していく」ともしている。Volta Grandeプロジェクト
は、議論を呼んでいるBelo Monta水力発電所(初期投
資額130億US$)と同じ地域に位置しており、Belo Sun
116
2014.9 金属資源レポート
(335)
社が保有する鉱区内には先住民が居住するほか、小規
模採掘活動が存在している。
(3)アルゼンチン
<政府・政府に関する動向>
Chubut州議会、住民団体が作成した鉱業規制法案を
検討
アルゼンチン・Chubut州議会は住民団体Unión de
Asambleas Ciudadanas de Chubutが作成した金属鉱
業活動の規制法案を検討する。同住民団体は、金属鉱
業開発を制限し、ウラン・トリウム資源の開発の全面
的禁止を要求、露天採掘及び鉱石処理にシアンを使用
する金属鉱業を禁止した州法第5001号の拡大を狙って
いるという。法案は13,000人以上の署名を集め、近く
州議会で審議される見込み。
<企業・プロジェクトの動向>
First Quantum 社、Taca Taca 銅 プ ロ ジ ェ ク ト の
Lumina Copper社を買収
2014年6月17日、加First Quantum Minerals Ltd.
(以
下、First Quantum 社)とLumina Copper Corp.
(以下、
Lumina社)
は、友好的企業買収
(Plan of Arrangement)
により、First Quantum社がLumina 社の発行済全株
式を取得する正式契約の締結を発表した。本契約に基
づき、Lumina 社の株主は同社普通株式1株あたり、1)
現金5.00C$及びFirst Quantum 社普通株式0.2174株、
2)現金0.01C$及び同普通株式0.4348 株、3)現金10C$、
のいずれかを選択して受け取ることができる。本件に
係る取引額は約470百万C$。First Quantumはプレス
リリースの時点でLumina Copper社の発行済み普通
株式250万株を保有している。Lumina 社は、アルゼ
ンチン北西部のSalta 州Puna 地域に位置するTaca
Taca 銅鉱床を保有している。同鉱床は、世界最大の
銅鉱山であるEscondida 鉱山の東120km に位置し、
NI43-101に準拠した同プロジェクトの概測鉱物資源量
として21.7億t、Cu 0.44%、Au 0.05 g/t、Mo 0.012%が、
予測鉱物資源量として9.2億t、Cu 0.37%、Au 0.05 g/t、
Mo 0.012%が報告されている(カットオフ品位はいず
れもCu換算0.3%)。
Bajo de la Alumbrera鉱山、Bajo el Durazno鉱床開発
に2014年11月着手
Bajo de la Alumbrera鉱山
(アルゼンチンCatamarca
州)
は、Bajo el Durazno鉱床の開発を決定した。同鉱
床はAlumbrera鉱山の北、直線距離で6kmに位置する。
2014年11月に開発に着手、2015年2月からAlumbrera
鉱山のプラントへ鉱石を供給する予定である。現在、
環境影響評価書を州政府に提出したところで、当局に
よる審査から承認までの時間を考慮すると11月末の開
発着手が見込まれているという。
Las Bambas銅プロジェクト必要投資額、60億3,100
万US$に増加
中国五鉱集団公司傘下のMMG社を中心とする中国
企業コンソーシアムの依頼に基づき調査を実施したコ
ンサルタント会社の報告によると、Las Bambas銅プ
ロジェクト
(Apurimac州)の実施に必要な投資額は、
2014.9 金属資源レポート
117
(336)
6
7
月)
中国アルミ鉱業、Toromocho銅プロジェクトの生産
量を下方修正
中国アルミ鉱業国際(Chinalco Mining Corporation
International)はその傘下のToromocho銅プロジェク
トの2014年銅精鉱生産を下方修正すると発表した。同
プロジェクトは、現在同企業にとって唯一の鉱業資産
である。同プロジェクトは試運転段階の設備調整及び
プロセスの最適化が初期の目標より複雑で、現在の運
営状況に基づき、2014年銅精鉱生産量を497,554tか
ら405,845t に 引 き 下 げ、 銅 金 属 量 を120,000t か ら
100,000tに引き下げる見込み。同プロジェクトは、3
月末から4月初めにかけて、ペルー当局による排水関
連の環境法違反の指摘を受け操業を一時停止してい
た。2014年6月15日まで、Toromochoプロジェクトは
既に74,000tの銅精鉱を産出している。そのうちの大
部分は既に販売している。Toromochoプロジェクト
の長期的な生産量には大きな影響を受けない予想。
Toromochoプロジェクトは2013年12月10日から試験
操業を開始している。以前、同社が公表していた情報
によると、Toromochoプロジェクトは2014年Q3の7
月に生産量が設計規模に達する予定である。
〜
<企業・プロジェクトの動向>
Cerro Lindo銅鉱山拡張、2014年下半期に完了
証券会社Kallpaは、Milpo社
(本社:ペルー)のCerro
Lindo銅鉱山
(Ica州)が、2014年下半期に拡張工事を完
了しフル操業を開始するとの見通しを示した。拡張に
MMG社、Las Bambas銅プロジェクトのマインライ
フ延長に向けた探鉱開始
Glencore Xstrata社(本社:スイス)からLas Bambas
銅プロジェクト(Apurimac州)を58.5億US$で買収し
たコンソーシアムを率いるMMG社
(五鉱資源有限公
司、本社:中国)のMichael Nossal代表取締役は、今後、
同プロジェクトのマインライフを延長させるのに必要
な活動に注力する方針を示した。MMG社は、2014年
第3四半期にGlencore Xstrata社への買収代金支払い
を完了することで、プロジェクトの権益62.5%
(Guoxin
国信国際投資公司:22.5%、CITIC Metal 中信金属公
司:15.0%)を所有することになる。
Michael Nossal代表取締役は、Las Bambas銅プロ
ジェクトについて「開発はだいぶ進んでおり、既に35
億US$が投資されている。これほどの大プロジェクト
を買収する機会はめったにない」とのコメントを行っ
た。さらに、Las Bambas銅プロジェクトが生産を開
始後、マインライフ延長を目的とした探鉱活動を開始
する方針を示した。生産開始は2016年ないし2017年で、
マインライフは現在のところ20年と見込まれている
主要国の鉱業を巡る最近の動向(2014年
国会、鉱業・環境規制緩和を含む経済活性対策法案を
承認
国会の常任委員会は、景気減速への対応を目的とし
た経済活性対策法案を承認した。2014年上半期の経済
成長の鈍化を受け、投資促進を目的に政府から国会へ
送付された経済活性対策法案では、鉱業・エネルギー・
建設セクターにおける大規模プロジェクトへの投資促
進、中小企業振興、税制及び環境法規の変更等が規定
されている。鉱業関連では、環境評価監査局
(OEFA)
による鉱業・エネルギー業に対する罰金額を今後3年
間、本来適用される罰金額の50%に縮小することや、
自然保護地域、最大排出量、環境基準は、環境省では
なく内閣が策定すること、環境影響評価(EIA)に対す
る意見・質疑の提示期限を45日間に短縮すること等が
盛り込まれている。さらに、初期生産の段階で粗鉱処
理量15,000t/日以上の規模のプロジェクトに対する新
たな税安定化契約の締結のほか、投資額2億5,000万
US$以上の鉱山拡張プロジェクトに対しては、現行の
税安定化契約を延長すること等が提案されている。本
法案は、経済界・鉱業界からは主に歓迎の声が聞かれ
る一方、経済優先政策による環境省の権限の低下や規
制緩和が環境対策を後退させ、社会・環境問題を誘発
する原因となる等の懸念や批判の声が上がっている。
よって、同鉱山の粗鉱生産量は日産17,000tとなる見
通しである。
鉱業動向
(4)
ペルー
<政府・政策に関する動向>
政府、違法鉱業を取締り
2014年6月9日と6月11日、Madre de Dios州の熱帯
雨林地域で軍隊や警官隊850名による違法鉱業取締り
が実施された。6月9日にはLa Pampaと呼ばれる50ha
の違法採掘現場でキャンプ場をはじめとする施設が破
壊されたほか、地中に隠された発電機48台、ボート52
隻、オートバイ94台等が押収された。なお、取締りの
実施後に、多くの違法鉱業労働者は活動を再開するこ
とから、取締り後もヘリコプターが週3回の割合で現
場を巡回する計画となっている。さらに6月11日には、
La Pampa違法鉱業エリアへの物資の供給源となって
いる、大陸横断道路沿いの集落において取締りが実施
され、200馬力の大型発電機、オートバイ300台等が押
収されたほか、6名が逮捕された。一方、Madre de
Dios川においても取締りが実施され、金の大型採掘船
5隻、エンジン38台等が破壊された。また労働者キャ
ンプにおいても、金採掘船52隻、エンジン48台等が破
壊された。なお、政府はMadre de Dios州における違
法鉱業を2014年7月までに70%、同年12月までに100%
撲滅する方針を打ち出している。
鉱業動向
主要国の鉱業を巡る最近の動向(2014年
〜
6
月)
7
当初の52億US$から16%増加し60億3,100万US$となっ
ている。同報告によれば、必要投資額増加の原因は、
主要インフラ建設の遅延である。また、調査は5月に
実施され、現在の必要額は
「妥当な」
ものであるとしつ
つも、今後さらにコストが上昇し、一層プロジェクト
が 遅 延 す る リ ス ク が 存 在 す る と 警 告 し て い る。
Glencore Xstrata社は、2014年1月までにLas Bambas
銅プロジェクトに対して35億1,100万US$を既に投資
しているが、今後、差額の25億1,900万US$を更に投資
する必要があることになる。
Hochschild社、2億US$のコスト削減目標達成
Hochschild Mining社
(本社:英国)は、2億US$のコ
スト削減目標を達成したほか、3件の銀鉱山を操業す
るペルーとアルゼンチンにおいて、新しいコスト削減
方法を特定したことを明らかにした。同社は、経営、
操業、探鉱等の分野に関連するコスト削減のメカニズ
ムを採用しているとされる。2013年に金価格が28%、
銀価格が36%下落して以降、同社はコスト削減の必要
性から、取締役会の規模縮小や役員の減俸等を実施し
て き た。 一 方、Inmaculada 金・ 銀 プ ロ ジ ェ ク ト
(Ayacucho州)の操業は、2014年Q4に開始される予定
で、その結果2017年には同社の金・銀生産量が35百万
oz
( 約1,090t )に 増 加 す る 見 通 し と な っ て い る。
Hochschild Mining社CEOのBustamante氏は、同社は
現在、低コスト・低リスクの新しい生産体制への重要
な過渡期にあると語った。
Buenaventura社長、鉱業を取り巻く状況について意見
Buenaventura社
(本社:ペルー)
のBenavides社長は、
ペルー経済が減速傾向にあることは遺憾であり、より
多くの経済活動や投資が実施されるよう、政府や国会、
民間企業が共に社会的責任を果たし、信頼性を高める
ことが必要だとの考えを示した。一方、鉱業における
課題としては、許認可取得の煩雑性の改善や、過度に
厳しい環境基準等についての見直しが必要であると意
見した。また、
政府の違法鉱業取締り政策に関しては、
武力による取締りは最良の方策ではないとの考えを示
し、特に熱帯雨林地方のMadre de Dios州においては、
違法鉱業で使用される石油や化学物質等の採掘現場へ
の供給ルートを物理的に遮断すること、鉱区付与条件
の見直しを行うことを提案した。更に、主に銅のみを
生産するチリ等と異なり、ペルーには、金、銀、銅、
亜鉛、鉛等多くの鉱種に恵まれている状況を活用する
べきだとの考えを示した。
(5)
ボリビア
García大統領代理が新鉱業法を公布
García大統領代理は、2014年5月28日にOruro市に
おいて新鉱業法を公布し、
「新しいルールに賛成でない
ものは撤退してもよい」と述べた。同大統領代理は、
企業が政治に関与することを絶対に認めないと警告
118
2014.9 金属資源レポート
(337)
し、法律によって民間企業、国営企業、組合企業の三
つが認められ、各々にその権利が保証されるが、各々
に与えられた任務と機能があることを強調した。民間
企業にはボリビアで投資を行う権利が認められてお
り、投資を歓迎、保障するが、民間企業も労働者の権
利を保証すべきであるとともに、国家には高額の税を
払い、それら税収は学校や病院の建設に投資される予
定であると述べた。組合分野については、新鉱業法に
よって、重要なエリアと鉱床を占有する権利が生まれ、
恒常的に活動出来ることが保証されているが、
「この分
野の使命は鉱業技術を改善することにある。それが鉱
石価格の下落に耐える最も良い方法だからである。
」
と
述べた。国営企業の鉱業活動に関しては、新鉱業法の
枠内において国有鉱区を増やしていくが、民間企業に
よる鉱山の賃金労働者への配慮から、それらは今後開
発予定であるMallku Kota銀・インジウムプロジェク
トのような大規模な鉱業を経営するための価値がある
鉱床のみに限られると語った。
(6)メキシコ
<政府・政策に関する動向>
経済省、レアアース探査に対する資金提供を開始
経済省は、様々な分野で重要性が高まっているレア
アースの探査に対し資金提供を開始する旨を明らかに
した。メキシコ国内におけるレアアース埋蔵量は明ら
かではないが、太平洋側の海底に多くが賦存している
と見られている。鉱業専門家によると、レアアースに
関し海底からの採掘が現在の陸上鉱山に全て置き換わ
ることは考えにくいものの、世界的なレアアース不足
の問題に対し、実態上中国一国に依存する現状を打破
する上でレアアースの海底探査は必要である。
経済省確報発表、2014年Q1における金属鉱業への外
国直接投資額が大幅に増加
経済省は、本年5月に発表した本年Q1における外国
直接投資額の確報を発表し、本年Q1における金属鉱
業部門への外国直接投資額が前年同期の117百万US$
から259%の大幅増加となる420百万US$であったと報
告した。同省によると、本年Q1におけるメキシコへ
の外国直接投資総額は前年同期の49.9億US$から58.2
億US$へ増加し、そのうち金属鉱業部門が占める割合
は前年同期の2.3%から7.2%へと増加した。一方、本
年Q1における金属鉱業関連サービス部門への外国直
接投資額は、前年同期の30.3百万US$から20.1百万US
へと減少した。従前一部専門家の間では、金属市況下
落と本年1月に施行された鉱業特別税等の導入により
大幅な投資減少が警告されていたが、それに反し大幅
な投資増加という結果となった。
Chihuahua州知事、中国によるメキシコへの強力な鉱
業投資を言明
Chihuahua州のCésar Duarte知事は、中国企業はメ
2014.9 金属資源レポート
119
(338)
6
7
月)
大手鉱業企業、エネルギー分野やレアアースへの参入
に慎重を示す
メキシコで活動する大手鉱業企業3社は、エネルギ
ー分野への参入やレアアース生産による事業多角化が
新たな収入源になり得るとしながらも、鉱業企業とし
てこれまで行ってきた貴金属及びベースメタルの生産
を継続し、企業としてベストな選択をすべきとの見解
を 明 ら か に し た。Grupo México社 の 子 会 社 で あ る
Minera México社によると、全ての鉱業企業にとって
これら事業多角化が制限無しに実行に移すことは不可
能であり、自らが持ちうる能力と強みを考慮し、エネ
ルギー分野への参入やレアアースの生産に挑戦すべき
である。なお、Grupo México社は、自社のエネルギ
ーコストを削減するために、自社でエネルギーを生産
する又は他社と協力してエネルギーを生産する計画を
示しており、Minera México社も、これまで55年にわ
たりサービスを提供してきた石油生産の分野に参入す
る計画を示しており、両社は従前のような石油会社へ
のサービス提供や請負事業だけに留まるつもりはな
く、一定の期間を経て、石油生産も可能となる企業へ
と変貌していく計画を明らかにした。一方、加First
Majestic Silver社(本社:バンクーバー)によると、数
社の鉱業企業だけがガスや炭化水素を生産する能力を
有しており、メキシコ第4位の生産量を誇る同社は、
従前どおり金属生産に集中しレアアースやエネルギー
資源の生産に参入する計画はない。また、Fresnillo社
〜
Peñoles社、治安問題により鉱業プロジェクト推進に
障害
Peñoles社の持株会社であるGrupo BAL社は、少な
くともメキシコ国内の3つの州においてPeñoles社が保
有する鉱業プロジェクトや鉱山が、治安問題により開
発推進や事業遂行に支障を来している旨を明らかにし
た。Grupo BAL社によると、Peñoles社とその他鉱業
企業は、Michoacán州とGuerrero州ではプロジェクト
や鉱山へのアクセス道での治安問題に、Oaxaca州で
はその他の治安問題に遭遇している。これら治安問題
は、犯罪組織による米国への麻薬・覚醒剤の輸送やマ
リファナの栽培等に関連して発生している。一方、メ
キシコ政府はこれら治安問題を解決すべく対応に乗り
出しており、Michoacán州では鉄鉱石の違法採掘・輸
出 に 関 与 し て い る Caballeros Templarios( 又 は
Knights Templar)と称する麻薬カルテルに対する取
締りの強化を図っている。最近数週間で当局は貨物船
Fresnillo社、プロジェクト開発遅延が見込まれるも銀
生産は拡大の方針
Peñoles社の貴金属子会社であるFresnillo社は、金
属市況下落・低迷によりプロジェクト開発が遅延して
いるにもかかわらず、2018年までには年間約2,020tの
銀を生産することを明らかにした。同社によると、金
及び銀の市況下落及び鉱業特別税の施行により、3つ
のプロジェクトが一時中止又は開発延期となってい
る。具体的には、Durango州とChihuahua州との州境
に保有するSan Julian金・銀プロジェクトは、開発初
期段階の工事を進めているが完全に遅延している。ま
た、Sonora州に保有するCentauro Deep金プロジェク
トも開発が遅延しており、Chihuahua州に保有する
Orisyvo金・銀プロジェクトは予算の削減を行った。
そ の ほ か と し て は、 同 社 がDurango州 に 保 有 す る
SaucitoⅡ金・銀プロジェクトに集中するための戦略
計画の一部として探鉱予算の削減を実施し、現在操業
中の鉱山における効率改善に努める。一方、今後の金
属市況回復が不透明ではあるものの、現在遅延してい
るプロジェクトは開発可能であり、2018年までには年
間約2,020tの銀を生産する見通しである。
主要国の鉱業を巡る最近の動向(2014年
<企業・プロジェクトに関する動向>
Peñoles社、金属市況低迷に対し適切に対応
各アナリスト等業界関係者は、昨今の金属市況低迷
にもかかわらずPeñoles社は適切に対応しており、株
価予想変動率が安定している旨を明らかにした。各ア
ナリスト等業界関係者によると、同社は昨年の国際比
較プログラム
(ICP)における評価指数に関し対前年比
27%ダウンしており、また、本年Q1における当期利
益も前年同期と比べ42.3%減の95百万US$であった
が、各種課題に対し適切に対応しているため、現在の
金属市場価格が維持されるならば経営状況は安定する
見通しである。なお、同社によると、同社の貴金属子
会 社 で あ る Fresnillo 社 が Sonora 州 に 保 有 す る La
Herradura鉱山、Soledad鉱山及びNoche Buena鉱山
において火薬使用許可一時停止問題が解決したことに
よ り、2014年 に お け る 金 生 産 量 は14t、 銀 生 産 量 は
1,337.7tを見込む。
の強制捜査を行い、積載された鉄鉱石の産地を証明す
るための採掘許可に関する書類不備により、当該鉄鉱
石を押収している。
鉱業動向
キシコ特に同州を重要な投資対象としており、今後メ
キシコ鉱業企業と相当程度競合する見通しである旨を
明らかにした。一方、同知事によると、歴史的に古い
時代から現在に至るまで、鉱業の富
(利益)を税金とし
て徴収することを放棄していたため、州政府としてイ
ンフラ、
保健又は教育に対する投資が不十分であった。
しかしながら、昨年メキシコ議会で可決、承認された
鉱業税制改革によって本年1月から新たに鉱業特別税
等が導入されたため、今後は鉱業特別税等による税収
が鉱業活動を有する地域の政府に分配されることとな
り、これまで社会的に投資が不十分であった地域に対
する支援が期待できる。また、現在までに鉱業特別税
等の導入による鉱業投資の減少は確認されず、逆に旺
盛な鉱業活動が見受けられる。特にカナダの鉱業クラ
スターからは、同州との対話の推進と同州への更なる
投資を目的として積極的な接触が図られている。
によると、白金は需要が高い金属ではあるがメキシコ
には商業ベースに乗るほどの埋蔵量を有しないことか
ら、従前からの貴金属生産を継続することが同社とし
てのビジネスチャンスであり戦略である。
鉱業動向
主要国の鉱業を巡る最近の動向(2014年
〜
6
月)
7
カナダ中小鉱業企業、税金還付の遅延により事業経営
に影響
カナダ商工会議所の鉱業タスクフォース委員長
Rosalind Wilson氏は、メキシコで活動中のカナダの
中小鉱業企業が付加価値税
(IVA)の還付が5か月にわ
たり遅延しているため事業経営に影響が出ている旨を
明らかにした。同氏によると、大手鉱業企業に関して
はIVA還付遅延による事業経営への影響はほとんど見
られないが、
中小鉱業企業に対する影響は顕著であり、
特に地方政府による還付遅延が多く散見される。なお、
IVA還付遅延問題は今回が初めてではなく、5年前に
も同様の問題が発生している。
El Boleo多金属プロジェクトの操業開始が更に遅延
加Baja Mining社
(本社:バンクーバー)は、韓国コ
ンソーシアム
(韓国鉱物資源公社
(KORES)が筆頭)と
共に資本参画するEl Boleo多金属プロジェクト(Baja
California Sur州。権益比率は韓国コンソーシアム:
90%、Baja Mining社:10%)
に関し、開発工事に係る
労働者不足の問題が依然として解決されていないこと
と、資機材納入が遅れていることにより、操業開始が
更に遅延する旨を明らかにした。同社によると、銅抽
出プラントの完成が6月末までかかる見通しであるた
め、本年5月に銅生産開始時期を当初計画の3月から7
月中旬へと延期したにもかかわらず、再度10月初旬へ
と延期した。また、コバルトと亜鉛の生産開始時期に
関しても、コバルト・亜鉛抽出プラントの完成が8月
中旬までかかる見通しであるため、当初計画から延期
した9月末を更に延期し11月初旬となる見通しを示し
た。一方、仮に初期開発コストが17.5億US$を超えた
場合、
同社は権益比率に応じ追加で資金を拠出するか、
又は、権益比率を現在の10%から更に下げるかのどち
らかを選択することとなったが、本年5月、プロジェ
クト管理会社であるMinera y Metalurgica del Boleo
社の取締役会において、同プロジェクトの初期開発コ
ストを18.8億US$とすることが承認された。
Grupo México社、2014年末までにEl Arco銅・金プ
ロジェクトの開発工事を開始
Grupo México社は、Baja Carifornia州に保有する
El Arco銅・金プロジェクトに関し、環境保護NGOに
よる反対にもかかわらず本年末までに開発工事を開始
する方針である旨を明らかにした。同社によると、本
プロジェクトについては2010年にFSを終了し、精測・
概測資源量1,500百万t、銅品位0.42%、金品位0.14g/t、
銅生産量190千t/年、金生産量3.3t/年を見込むととも
に、2013年末までに調査、探鉱及び用地取得のための
120
2014.9 金属資源レポート
(339)
費用として40.9百万US$を投資した。本年は追加でボ
ーリングを実施するとともに詳細設計を行う等開発工
事に関する準備は着実に進展しており、また、想定さ
れる環境保護NGOによる抗議活動への対応策も遺漏
がない。
Grupo México社、自社保有鉱山におけるレアアース
採鉱の可能性を検討
Grupo México社 は、Sonora州 及 びChihuahua州 に
保有する鉱山においてレアアース採鉱の可能性を検討
する旨を明らかにした。同社によると、Oaxaca州及
びChiapas州においてもレアアースに係る予備探査を
実施し鉱床を捕捉しており、また、レアアース探査・
探鉱のための人材育成や技術的支援も検討している。
その他として、中期的には韓国向けのレアアース供給
の可能性も視野に入れている。一方、鉱業界の関係者
によると、パラジウムや白金といった貴金属やレアア
ースは新たな収入源となり得ることから、鉱業企業が
これらに注目することは良策と考える。また、鉱業企
業は、探鉱の収益性を向上させる技術や戦略的なパー
トナーとの協調により、商売となり得る新たな鉱床を
開発する可能性を有す。
<環境社会配慮・違法採掘関係の動向>
共有地利用に関する紛争が急増
最近数か月間において鉱業企業とエヒード又は土地
所有者との間で鉱山及び鉱業プロジェクトの共有地利
用に関する紛争が急増している。これら紛争は、初期
の探鉱段階のプロジェクトから操業中の鉱山に至るま
であらゆる鉱業活動に対し脅威となり、現在から将来
にわたる鉱業生産に対し重大な影響を与える。共有地
問題に関する具体的な事例として、メキシコ最大の金
生産企業である加Goldcorp社(本社:バンクーバー)
の
場合、Guerreo州に保有するLos Filos金鉱山において
エヒードとの間における共有地賃貸借契約の更新に関
する交渉が不調に終わり、本年5月までの1か月間の操
業停止を強いられた。また、Zacatecas州に保有する
Peñasquito多金属鉱山においては、エヒードとの間で
共有地賃貸借契約に関し現在も法廷協議中である。次
に、メキシコ最大の銀生産企業であるPeñoles社の場
合、同社の貴金属子会社であるFresnillo社がSonora州
に保有するDiplos金鉱山に関し、近隣の住民により共
有地賃貸契約に関する訴訟を起こされた結果、農地問
題担当高等裁判所が同社に対し共有地の返却を命じる
と と も に、 同 社 の 火 薬 使 用 許 可
( 同 鉱 山 の ほ か、
Soledad金鉱山、La Herradura鉱山及びNoche Buena
金鉱山を含む。
)の一時停止にまで発展した。また、加
MAG Silver社
(本社:バンクーバー)
の場合、Chihuahua
州に保有するCinco de Mayo多金属プロジェクトに関
し、2012年11月に農地法に基づく総会での地表権売却
を不可とする議決が下されたが、当該議決が不正によ
り無効とされたにもかかわらず、エヒードは同議決を
2014.9 金属資源レポート
121
(340)
7
月)
<その他の動向>
鉱業が2014年Q1におけるメキシコGDPの成長を牽引
国立統計地理情報院
(INEGI)は、本年Q1における
6
〜
メキシコ:CONANP委員長、自然保護地区指定によ
る鉱業への影響は無し
メキ シ コ国 家自 然 保護 地区 委員 会
(CONANP)の
Luis Fueyo委員長は、Zacatecas州北部の2.5百万haを
半乾燥砂漠生物圏保護地域として自然保護地区指定の
ための申請を行った件に関し、本申請により鉱業活動
には影響を及ぼさない旨を明らかにした。この背景と
して、CONANPは本年7月初旬に、同国の主要金及び
銀生産地であり、また、加Goldcorp社
(本社:バンク
ー バ ー)が 保 有 す る 同 国 最 大 の 金 鉱 山 で あ る
Peñasquito多金属鉱山や加Aura Minerals社
(本社:ト
ロント)が保有するAranzazu多金属鉱山等多くの鉱
山・探鉱プロジェクトが位置する地域を含む同州面積
の34.2%を半乾燥砂漠生物圏保護地域として設定する
計画を提案した。一方、本提案に対し鉱業界は、同地
域には主要な金及び銀生産拠点が含まれているため、
鉱業活動に深刻な影響を与えるとともに、将来の鉱業
成長を脅かすものであるとして反対を表明した経緯を
有する。同委員長によると、当局は、鉱業コンセッシ
ョンや現在の採鉱活動、今後30~40年における経済活
動や居住地域の成長等を踏まえた徹底的な分析に着手
する計画である。また、同分析では、鉱業を含めた経
済活動を損なわないよう自然保護地域を定義する一
方、地元の土地所有者、地域コミュニティや鉱業企業
とも協議を実施する。
また、
Miguel Alonso同州知事は、
生態系の保護と持続可能な開発の推進が実行されると
して本提案を支持する旨を明らかにした。一方、メキ
シコ鉱業会議所(CAMIMEX)は、本提案に対し法的
確実性の不足により、現在開発中のプロジェクトや新
規プロジェクトへの投資が危険に晒される旨を表明し
た。
なお、CONANPの報告によると、鉱業活動が自然
保護地区で禁止されることは明示されていないが、科
学的環境モニタリング活動や環境影響が低い観光分野
といった一定の経済活動だけが認められることにな
る。
主要国の鉱業を巡る最近の動向(2014年
メキシコ当局による本年の違法鉄鉱石押収量は72万t
環境保護連邦検察庁
(PROFEPA)は、麻薬カルテル
の取締りの一環として本年実施した違法鉄鉱石の押収
量 が 現 時 点 に お い て72万tに 達 し た 旨 を 報 告 し た。
PROFEPAによると、Michiocán州で麻薬カルテルが
扱 う 違 法 鉄 鉱 石 は、 単 価100US$/t、 輸 送 費11~14
US$/tで取引され、総額70百万US$に達している。当
局が押収した72万tの半分に当たる37.7万tは、積載さ
れた鉄鉱石の産地を証明するための採掘許可に関する
書類不備により合計5隻の貨物船から押収したもので
あ り、 残 り はMichoacán州Lázaro Cárdenas港 及 び
Colima州Manzanillo港において税関が差し押さえたも
のである。この中には、本年5月にManzanillo港にて
貨物船1隻から押収した10万tが含まれる。PROFEPA
のGuillermo Haro Bélchez長官は、国内1,252鉱山全て
に対し検査や査察を実施する計画である旨を明らかに
した。
また、当局は、Lázaro Cárdenas港から中国向けに
最 近3年 間 で 年 間100万t以 上 の メ キ シ コ 鉱 業 界 は、
Zacatecas州における2.5百万haの自然保護地区(PNA)
申請が鉱業に深刻な影響を与える可能性がある旨を警
告した。メキシコ国家自然保護地区委員会(CONANP)
は、 同 国 主 要 金 及 び 銀 生 産 地 で あ り、 ま た、 加
Goldcorp社
(本社:バンクーバー)
が保有する同国最大
の金鉱山であるPeñasquito多金属鉱山を含む同州面積
の34.2%を半乾燥砂漠生物圏保護地域として設定する
計画である。CONANPの報告によると、同州北部は
多様な動植物が絶滅の危機に瀕している重要な生息・
自生地域であるとともに、Goldcorp社が保有する鉱業
コンセッション地域、加Aura Minerals社(本社:ト
ロント)が保有するAranzazu多金属鉱山や多くの鉱
山・探鉱プロジェクトが位置する地域である。今回申
請されたPNAに位置する6つの郡の1つMazapil郡は、
同 州 で 最大の金生産量と2番目の銀生 産 量 を 誇 り、
2012年における金生産量は13.7t、銀生産量は852tであ
った。また、国立統計地理情報院(INEGI)によると、
同州はメキシコで最大の金、銀、亜鉛及び鉛の生産量
で、銅生産量も同国で2番目である。
一方、メキシコ鉱業会議所(CAMIMEX)、メキシ
コ鉱山・冶金・地質技師協会(AIMMGM)、Zacatecas
州中小鉱山協会や鉱業企業10社は、本申請に対し法的
確実性の不足により、現在開発中のプロジェクトや新
規プロジェクトにおける投資に更なるリスクを付与す
るものである旨明確な反対を表明した。
なお、CONANPの報告によると、鉱業活動がPNA
で禁止されることは明示されていないが、科学的環境
モニタリング活動や環境影響が低い観光分野といった
一定の活動だけが認められることになる。
鉱業動向
支持し、現在もなお同社とエヒードとの間で共有地賃
貸借に関する交渉が継続中となっている。最近の共有
地に関する紛争は、地域コミュニティが全ての規模の
鉱業プロジェクトに対して法的手段やその他の手段を
用いて抗議活動を展開し、共有地の賃貸借料や売却価
格等を利益配分として最大限要求する傾向になってい
る。なお、エヒードと鉱業企業側の弁護士との交渉に
より、鉱業企業がエヒードに対し高額な賃貸借料等利
益配分することで操業活動を維持している鉱業企業が
ある一方、重大な生産停止や地域コミュニティに対す
る過度な支払い等に発展する鉱業企業が増加してい
る。これは地域コミュニティ等に対し新たな鉱業ロイ
ヤルティを配分することによって、これら共有地問題
の解決に繋がる可能性があるとも考えられる。
鉱業動向
主要国の鉱業を巡る最近の動向(2014年
〜
6
月)
7
メキシコ鉱業のGDPが前年同期と比べ5.4%成長した
旨を発表した。INEGIによると、本年1月に鉱業特別
税及び貴金属鉱業特別税が施行されたにもかかわら
ず、鉱業のGDP成長率5.4%は、第一次産業の4.9%、
製造業の4.3%等を抑え全業種の中で最も高い成長率
であった。なお、本年Q1における同国GDPは、前年
同期と比べ1.8%の成長率であった。
鉱業関係者、エネルギー改革が金属・非金属鉱業との
土地利用問題をもたらすと警告
鉱業関係者は、本年6月第1週にメキシコ議会上院に
て審議予定のエネルギー改革に伴う2次法案(炭化水素
関連法案)に関し、石油・天然ガス以外の鉱物資源の
鉱区(鉱業コンセッション)内で炭化水素(石油・天然
ガス)が存在した場合、金属・非金属鉱業企業とエネ
ルギー企業との間で土地利用を巡る紛争を誘発する可
能 性 が あ る 旨 を 警 告 し た。 メ キ シ コ 鉱 業 会 議 所
(CAMIMEX) の Humberto Gutiérrez-olvera
Zubizarreta会頭によると、エネルギー改革による金
属・非金属鉱業への影響は不明であるが、金属・非金
属鉱物資源が賦存する場所で鉱業開発するために土地
を利用することは鉱業法において優先権が付与されて
いる。また、同会議所顧問弁護士は、鉱業関係法令と
エネルギー改革2次法案との間で双方のプロジェクト
を区別する明確な定義を定めなければ、金属・非金属
鉱業企業とエネルギー企業との間で紛争が生じる可能
性が高まるほか、既に鉱業権を付与されている鉱業コ
ンセッションに関しては、天然ガスの開発と言った新
たな経済活動から影響を与えられるべきではないとの
見解を示した。
一方、
エネルギー関連法律事務所の弁護士によると、
炭鉱企業は自らが所有する炭鉱における鉱業権の範囲
内においてのみ天然ガス抽出の権利を有するが、既存
炭鉱以外で天然ガスを抽出するためには、入札手続き
を経て当該抽出権を取得する必要がある。ただし、そ
の際には、鉱業企業とエネルギー企業との間で紛争が
生じる可能性がある。
鉱業反対団体、鉱業法による外国企業への開放を強く
懸念
鉱業活動に反対する多くの団体は、本年7月22日に
開催された有害な鉱業を反対する集会において、今般
Enrique Peña Nieto大統領がエネルギー改革を通じ
て、地域コミュニティが生活する土地の荒廃や水その
他天然資源の枯渇に繋がるような外国企業への開放を
行ったことに対し非難するとともに、現行鉱業法では
既に外国企業への開放が認められていることに対し強
い懸念を表明した。財団法人Francisco Cravioto分析・
調査センターの2012年公式報告によると、麻薬抗争等
による紛争危険地域、自然保護地域、牧畜地、農地や
工業地域を含まない国土の16%が鉱業コンセッション
の対象地となっている。また、1992年の鉱業法改正に
122
2014.9 金属資源レポート
(341)
より、同法で規定するところの公共の利益となる鉱物
又は物質の探査、採掘及び選鉱は、同法が規定する範
囲において他の如何なる土地の使用・利用にも優先す
ることとなっている。一方、外国鉱業企業によるメキ
シコでの鉱業活動は、同国経済活動人口全体の0.2%
に相当する僅か114千人の雇用創出に留まっており、
同国への貢献と言うには程遠い状況である。こうした
状況を踏まえ、同国内の8州からなる多数のコミュニ
ティーや鉱業活動に反対する団体は、鉱業企業が鉱業
権取得に際し先ず始めに地域コミュニティの承諾を得
ること、水銀やシアン等の使用による露天掘や汚染物
質や有害物質を排出する坑内掘を廃止すること等を盛
り込んだ新たな鉱業法案を提示した。また、非営利環
境団体Pro San Luis EcológicoのSergio Serrano氏は、
水を守るための新たな鉱業法案の策定に向け、少なく
とも110千人の署名を集めるためのキャンペーンを実
施すると発表した。
(7)ドミニカ
<政府・政策に関する動向>
議会上院、Falcondoニッケル鉱山拡張計画に位置す
る土地の一部を国立公園に指定
ドミニカ共和国議会上院の委員会は、Falconbridge
Dominicana社(Glencore Xstrataの現地法人)
の将来の
ニッケル生産事業を脅かすことが想定されるLoma
Miranda地区国立公園設置計画を支持する旨を明らか
に し た。 同 国 上 院 は、 昨 年 10 月 に 同 国 下 院 が
Falconbridge Dominicana社が保有するFalcondoニッ
ケル鉱山の拡張計画に位置するLoma Miranda地区を
国立公園に指定することを承認した案件に関し、賛成
25票、反対0票及び棄権1票により指定を承認した。こ
れにより、同社の同地区での鉱業活動が制限又は禁止
されることになるが、昨年10月に同社は環境問題に関
連したものではないと説明を加えた上で既に同鉱山を
一時閉鎖した一方、ニッケル市況の回復や埋蔵量枯渇
に伴う同地区拡張プロジェクトを踏まえ、同鉱山の操
業再開を計画している。一方、同社は顧問弁護士と検
討した結果、同地区の国立公園指定は同国法令に反し
ているとの見解を示した。また、仮に同地区を国立公
園とする計画が進められた場合、政府は同社に対し40
億US$を賠償金として支払うべきである旨が報道され
ているだけで、本国立公園内に土地を所有する者(同
社)に対し政府が賠償金を支払うことは言及されてい
ないとして抗議を行っている。また、ドミニカ共和国
工業協会は、同地区の国立公園指定に関し否定的な見
解を示すとともに、環境保護と鉱業開発とのバランス
をとる政策を立案するよう政府に要請した。また、鉱
業プロジェクトの環境規制に係る許可取得に関し莫大
な国庫納付を課すことは、憲法違反である旨を指摘し
た。
2014.9 金属資源レポート
123
(342)
7
月)
天然資源環境省、2014年における鉱業輸出額の大幅
増加を予測
Carlos Pineda天然資源環境副大臣は、2014年にお
ける鉱業輸出額が2013年の475百万US$を大幅に上回
る900百万US$に達する見通しである旨を明らかにし
た。天然資源環境省の報告によると、金及び酸化鉄の
市況価格下落にもかかわらず、ホンジュラスの主要鉱
業生産は急激な増加が期待される。一方、ホンジュラ
ス中央銀行が本年3月に報告した本年1~3月の鉱業輸
出額は、前年同期の277百万US$と比べ若干下回る273
百万US$であった。また、同中央銀行が本年4月に報
告 し た 本 年1月 に お け る 鉱 業 輸 出 額 は 前 年 同 月 比
23.3%減の18.3百万US$であったが、これは酸化鉄の
輸出額が増額したものの、金、銀及び亜鉛の輸出額が
6
〜
Pueblo Viejo金・ 銀 鉱 山、2013年 ド ミ ニ カ 共 和 国
GDPに12.1億US$も貢献
2014年7月8日付け業界紙等によると、シンクタンク
のAnalytica社は、加Barrick Gold社
(本社:トロント)
及び加Goldcorp社
(本社:バンクーバー)が権益比率
(8)ホンジュラス
<政府・政策に関する動向>
ホンジュラス中央銀行、2014年Q1における鉱業生産、
外国直接投資を発表
ホンジュラス中央銀行は、本年3月における鉱業生
産額は前年同月と比べ7.3%増加したが、本年Q1にお
ける鉱業生産額は前年同期と比べ0.4%減少した旨を
報告した。
同銀行によると、本年3月における非鉄金属生産額
は前年同月と比べ12.2%増加し、本年Q1では前年同期
と比べ7.9%増加した。なお、本年Q1における鉱工業
生産総額は、前年同期と比べ3.2%増加した。一方、
本年Q1における鉱業及び採石業への外国直接投資額
は、前年同期の12.1百万US$から減少し9.3百万US$で
あった。また、本年Q1における同国の外国直接投資
総額に占める鉱業及び採石業への投資額の割合は、前
年同期の4.0%から3.9%へと減少した。なお、本年Q1
における鉱業輸出額は、前年同期の74百万US$から69
百万US$へと減少した。
主要国の鉱業を巡る最近の動向(2014年
<企業・プロジェクトに関する動向>
加GoldQuest Mining社 がRomero及 びRomero South
多金属プロジェクトの予備経済性評価結果を発表
加GoldQuest Mining社
( 本 社: バ ン ク ー バ ー)は、
ドミニカ共和国に保有するRomero多金属プロジェク
ト及びRomero South多金属プロジェクトの予備経済
性評価結果を発表した。なお、2つのプロジェクトは
近接しているため、1つのプロジェクトとして見なさ
れている。
概要は、以下のとおり。
・ 初期開発投資額:334百万US$
・ 鉱山維持投資額:40.4百万US$
・ 鉱山寿命:15 年
・ 生産量:金2.8 t/年、銅7,076 t/年
・ 鉱山寿命期間中総収益:23.5億US$
・‌正味現在価値
(NPV)
・8%割引:318百万US$(税
引後176百万US$)
・ 内部収益率
(IRR)
:19.7%
(税引後15.1%)
60:40でドミニカ共和国に保有するPueblo Viejo金・
銀鉱山が、2013年における同国GDPに12.1億US$も貢
献した旨を報告した。Analytica社によると、同鉱山
は2013年1月に操業を開始し、2013年における輸出総
額は12.1億US$であった。また、2009~2012年におけ
る同鉱山への投資総額は44.8億US$で、1プロジェクト
に対する投資額としては同国最大である。その他とし
て、2009~2013年における同鉱山の納税額は422百万
US$、2013年8月時点における同鉱山の直接雇用者数
は2,120人、間接雇用者数は11,392人であった。一方、
本年5月の同国中央銀行の報告によると、2013年にお
ける同国GDPのうち鉱業部門が占める割合は0.5%で
あった。また、本年3月の同銀行の報告によると、本
年Q1における同国鉱業のGDPが前年同期から35.3%
と大幅に増加、2013年における同国鉱業の付加価値は
前年と比べ157%増加、金輸出額も前年と比べ582%増
の11.9億US$であった。
鉱業動向
政府、Falcondo鉱山拡張問題、国際仲裁での紛争解
決の可能性が高まる
Falconbridge Dominicana社
(Glencore Xstrata社の
現地法人)が保有するFalcondoニッケル鉱山のLoma
Miranda地域での拡張計画に対し、ドミニカ共和国議
会が同地域を国立公園に指定することを承認した結果
を受け、Glencore Xstrataが国際仲裁へ提訴する計画
であることを報じた。この背景として、2013年10月に
同鉱山の拡張計画が含まれる同地域に関し同国議会下
院が国立公園に指定することを承認し、その後、本年
6月に同国議会上院の委員会も下院の承認を指示する
採決を行った。また、下院による指定承認により、同
地域での鉱業活動の制限又は一部禁止措置が図られた
経緯を有する。一方、同社は2013年10月に、ニッケル
市況の低迷を理由に同鉱山を一時閉鎖するとともに、
閉鎖期間が当初3年間になる旨を発表、その後、ニッ
ケル市況の改善を理由に同地域での開発を通じ同鉱山
の採鉱再開を計画している。同社の顧問弁護士による
と、同社は正式には未だ国際仲裁への提訴を公表して
いないとする一方、同国議会による同地域の国立公園
指定は幾つかの法律違反を犯しており、また、本来で
あれば言及されるべき当該指定による同地域内の土地
所有者に対する補償金の支払についても言及されてい
ない。なお、一部報道によると、仮に同地域を国立公
園とする計画が進められた場合、同国政府は同社に対
し40億US$を賠償金として支払わなければならないと
されている。
減 少 し た も の に よ る。 な お、 同 国 で は、 ベ ル ギ ー
Nyrstar社 が 保 有 す るEl Mochito多 金 属 鉱 山 及 び 加
Aura Minerals社が保有するSan Andrés金鉱山が操業
中である。
鉱業動向
主要国の鉱業を巡る最近の動向(2014年
〜
6
月)
7
<企業・プロジェクトに関する動向>
加Aura Minerals社、Sun Andres金鉱山の最新資源量
を公表
加Aura Minerals社
(本社:トロント)は、ホンジュ
ラスに保有するSun Andres金鉱山の最新資源量を公
表した。同社によると、同鉱山の確定埋蔵量における
金含有量を7.3t、推定埋蔵量における金含有量を27.7
tとし、
合計金含有量が従前と比べ44%増加した。また、
選鉱場における粉砕工程に関し、高品質で十分かつ安
定的な生産を実現するため、従来の5百万t/年から7
百万t/年へと処理能力を増強したことから、本年中に
処理能力増強による効果としての利益が見込まれる。
地質鉱山研究所、死者8人の鉱山事故原因は爆発物取
扱ミスと断定
ホンジュラス地質鉱山研究所
(INHGEOMIN)は、
本年7月3日にCholuteca県San Juan Arriba金鉱山で発
生した崩落により11名が坑内に閉じ込められ、うち3
人は救出されるものの残り8人が死亡した鉱山事故に
関し、鉱山労働者による爆発物の取扱ミスによるもの
と断定した旨を報告した。同研究所の調査隊は、ホン
ジュラス政府に対し、鉱山労働者及び周辺住民の安全
確保のため同鉱山が所在する地域における全ての鉱山
の操業を一時停止するよう要請したとともに、鉱山労
働者が採掘許可を取得するよう要請した。この背景に
は、鉱山労働者による不法採掘が横行しており、2011
年に同研究所が実施した調査によると、鉱山労働者に
よる不法採掘の現場において少なくとも16人の死亡が
報告されたほか、このような違法採掘が犯罪組織と結
びついているとする経緯を有する。
(9)
グアテマラ
<環境社会配慮・違法採掘関係の動向>
Tambor金プロジェクト、抗議活動により負傷者多数
発生
米Kappes Cassiday & Associates社
(本社:ネバダ
州)がグアテマラに保有するTambor金プロジェクト
に関し、地元住民やNGO等によるデモ隊が抗議活動
の一環として資機材搬入を阻止するための実力行使を
行ったところ、警官隊と衝突し双方合わせて少なくと
も26人の負傷者が発生した。
この背景として、地元住民及びNGOは、同プロジ
ェクトの開発は周辺環境の破壊と水源の汚染を引き起
こすとして開発中止の抗議活動を行っており、2012
年初頭から続いていたデモ隊による同プロジェクトへ
のアクセス道路の違法封鎖を昨年12月に警察が排除し
たとともに、政府も当該違法封鎖に対し厳重な警告を
124
2014.9 金属資源レポート
(343)
発した経緯を有する。なお、同国にEscobal多金属プ
ロジェクト保有する加Tahoe Resources社
(本社:バ
ンクーバー)のRon Clayton最高執行責任者によると、
同国における鉱業に対する偏見は今後数年間で解消さ
れる方向に進むだろうが、今暫く時間が必要である。
国連人権理事会、鉱業に対する暴力的抗議活動を抑制
するための対話実施を要請
国連人権理事会は、鉱業に対する暴力的な抗議活動
を抑えるため、グアテマラ政府に対し鉱業関係者と地
域住民等抗議活動を実施している者との対話による交
渉を実施するよう要請した。国連人権理事会は、米
Kappes Cassiday & Associates社(本社:ネバダ州)
が
グアテマラに保有するTambor金プロジェクトにおい
て地元住民やNGO等が抗議活動の一環として資機材
搬入を阻止するために行った違法封鎖に関し、それを
排除しようとした警官隊との衝突により双方合わせて
少なくとも26人の負傷者が発生した事件を踏まえ、グ
アテマラ人権当局に対し同社と地元住民やNGO等と
が対話を実施するよう取りはからうとともに、当該対
話の証人として同人権当局も役割を果たすよう要請し
た。
また、最近同国を訪問したFlavia Pansieri国連人権
高等弁務官が同国に対し、国の開発は環境を尊重し地
域コミュニティをビジネスパートナーとして扱うべき
である旨のコメントを行ったが、今般国連人権高等弁
務官事務所は改めて同コメントを声明とした。なお、
国連人権高等弁務官事務所は、先の警官隊による地元
住民やNGO等の違法封鎖排除において、殺傷性が高
い武器の使用は認められなかったものの多数の負傷者
を出したことは、国連人権理事会による勧告に関し適
切な対応ができておらず、また、政府が当事者間によ
る対話を実行させていれば負傷者を伴う暴力行為が回
避できていた可能性を否定できないとして、同国政府
を批判した。
加Tahoe Resources社、Escobal多金属鉱山に対する
民事訴訟に反論
加Tahoe Resources社(本社:バンクーバー)は、グ
アテマラに保有するEscobal多金属鉱山において発生
した射殺事件に関し地域住民が起こした民事訴訟に対
して、根拠が無く事実誤認である旨を表明した。この
背景として、2013年4月に同鉱山近隣の地域住民7人が
抗議活動中に同社の警備員に射殺されたとして、同地
域住民達が同社を相手取って民事訴訟を起こした経緯
を有する。原告を支援するNGO法人カナダ国際司法
センター
(CCIJ)によると、事件当時射殺を命じた元
警備員の一人は別の事件での容疑者でもある。また、
本訴訟内容は、射殺事件は同鉱山への抗議活動を排除
するための計画的なものであり、同社は本射殺事件に
対し責任がある旨を強く訴えるものである。一方、同
社によると、当該訴訟内容は根拠が無く事実誤認であ
2014.9 金属資源レポート
125
(344)
7
月)
(11)ニカラグア
ニカラグア鉱業部門の外国直接投資が急増
ニカラグア投資振興機構(PRONicaragua)は、2013
年におけるニカラグア鉱業部門の外国直接投資(FDI)
が前年の158百万US$と比べ73%増の274百万US$であ
ったと報告した。PRONicaraguaによると、2013 年に
おける鉱業部門のFDIはニカラグアへのFDI総額13.9
億US$の20%を占め、工業部門に次ぐ第2位であった。
なお、2012 年における鉱業部門のFDIは同国へのFDI
総額12.8億US$の12.3%を占め、工業部門、商業部門、
サービス・エネルギー部門に次いで第4位であった。
また、エネルギー・鉱山省によると、2013年における
金生産量は前年の6.98 tから9.64 tへと増加し過去7年
間で最高の生産量を記録し、また2013年における銀生
産量は前年の10.2tから12.6tへと増加した。一方、ニ
カラグア輸出センター(CETREX)によると、2013年
における金輸出額は前年の423百万US$から増加し436
百万US$で、銀輸出額は前年の10.8百万US$から減少
し10.1百万US$であった。また、2014年1~5月におけ
6
〜
(10)
パナマ
Petaquilla Minerals社、Molejon金鉱山用地の一部売
却合意により債務削減を実現
加Petaquilla Minerals社
(本社:バンクーバー)は、
パナマに保有するMolejon金鉱山の用地の一部を加
First Quantum Minerals社
(本社:バンクーバー)に対
し売却する交渉が合意に達したことにより、当該売却
益をもって債務削減を実現する旨を明らかにした。同
社は、2013年下半期は生産コストの高騰及び金市況価
格の低迷により13.1百万US$の純損失を計上したが、
当該売却益による債務の大幅削減をもってバランスシ
ートを強化する旨を約束した。また、今後5年間は金
生産量を124㎏/月に維持するとともに、コスト削減策
として一般管理費及び人件費を抑制する計画を即時実
行に移す旨も合わせて明らかにした。
加First Quantum社、Cobre Panamá銅・金プロジェ
クトの開発工事が再開
加First Quantum Minerals社(本社:バンクーバー)
は、パナマに保有するCobre Panamá銅・金プロジェ
クトの開発工事が労働者による違法ストライキにより
一時停止した問題に関し、Luis Ernesto Carles労働大
臣が仲介を行った結果、工事が再開した旨を明らかに
した。同社によると、2014年6月27日に開発工事が一
時停止に追い込まれた問題に関して、同大臣が労使間
交渉の仲介役として参加し、今回の発端となった同社
が同国労働法に基づき勤務当番を従来の12日勤務で2
日休暇から21日勤務で7日休暇へと変更した件に関す
る話し合いを行わせ、最終的に双方合意に達した。
主要国の鉱業を巡る最近の動向(2014年
鉱業活動に反対する抗議団体が国内主要高速道路を封鎖
6月23日に鉱業活動に反対する抗議団体約1万人がグ
アテマラ国内での鉱業活動の中止を求め、同国からメ
キシコ、ホンジュラス及びエルサルバドルへそれぞれ
通じる主要高速道路を封鎖したと報告した。同国当局
は主に金及び銀を中心に少なくとも240か所の露天掘
鉱山に関するライセンスを認可したが、環境NGOや
先住民コミュニティはこれら鉱山が周辺環境に対し深
刻なダメージをもたらすとして抗議を行っている。な
お、環境NGOや先住民コミュニティは、保健サービ
スの組合員に対する給与改善とともに、電力部門の国
有化も訴えている。一方、抗議活動に参加するマヤコ
ミュニティの理事会は、国が行う鉱業規制に関する政
策の議論への参加を要求するとともに、鉱業当局が探
査及び探鉱の認可を付与する前に周辺住民等と協議を
行 う よ う 要 求 し た。 な お、2014 年5月 に 米 Kappes
Cassiday & Associates社
(本社:NV州
(ネバダ州)
)
が同
国に保有するTambor金プロジェクトにおいて、地元
住民やNGO等によるデモ隊が抗議活動の一環として
資機材搬入を阻止するための実力行使を行ったとこ
ろ、警官隊と衝突し双方合わせて少なくとも26人の負
傷者が発生した。一方、2013年夏にPérez Molina大統
領は、国民の多くが鉱業に反対しているとする世論調
査の結果を踏まえ、鉱業に関する国民的議論を実施す
るために2年間は新規鉱業ライセンスの付与を行わな
いとしたモラトリアムを議会に対し要求した。
加First Quantum社、Cobre Panamá銅・金プロジェ
クトの開発工事を一時停止
加First Quantum Minerals社(本社:バンクーバー)
は、パナマに保有するCobre Panamá銅・金プロジェ
クトの開発工事を労働者による違法ストライキにより
一時停止した旨を明らかにした。同社によると、本違
法ストライキは、同国労働法に基づき勤務シフトを従
来の12日勤務で2日休暇から21日勤務で7日休暇へと変
更したことに関係する。また、同社は株主に対し、本
違法ストライキを早期に解決することを約束した。ま
た、Minera Panamá社(本プロジェクトのためのFirst
Quantum Minerals社の現地子会社)によると、開発工
事の一時停止は労働者による本プロジェクトへのアク
セス道封鎖の2日間とし、本アクセス道封鎖を安全に
撤去し、開発工事の工程を維持し、同プロジェクトを
成功させる。なお、同プロジェクトは、鉱山寿命34 年、
年平均銅生産量320千tで、2017年下半期に商業生産開
始を見込んでいる。
鉱業動向
るとした上で、国連の
「ビジネスと人権に関する指導
原則」にある誠実かつ倫理的なビジネス慣行と国際的
な社会責任基準に則って企業活動を展開しており、暴
力行為を排除し全警備員に対する人権尊重のための研
修を課している。なお、同鉱山は本年1月から商業生
産に移行し、本年の銀生産量を622tと見込んでいる。
鉱業動向
主要国の鉱業を巡る最近の動向(2014年
〜
6
月)
7
る金輸出額は前年の164百万US$と比べ13%減少、銀
輸出額は前年の3.64百万US$と比べ28%減少であっ
た。 な お、 同 国 で は、 加B2Gold社 が 保 有 す るLa
Libertad金 鉱 山 及 びLimón金 鉱 山、 並 び に、Hemco
Nicaragua社が保有するBonanza金・銀鉱山が操業中
である。
(12)
キューバ
新外国投資法の施行により更なる外国投資を呼び込む
キューバ国営通信社は、キューバ政府が同国の経済
失速を回復するため、外国からのより多くの投資を誘
致することを目的とした新外国投資法を2014年3月に
国会で承認した旨を報じた。同通信社によると、新法
では外国企業は保健、教育及び軍事以外の全ての分野
でキューバへの投資が可能となり、1995年に外国投資
を初めて認めた旧外国投資法より更に外国投資家に対
し税制優遇措置や強力な法的保護が提供される。また、
新法により、同国の急速な経済成長、雇用創出、経済
の多様化及び高度な技術移転が期待できる。一方、
Rodrigo Malmierca外国貿易大臣は、同国国会へ新法
を提出した際、国内総生産
(GDP)成長率7%の経済成
長目標を達成するためには、年間の外国直接投資額を
20億US$以上にする必要がある旨を言及した。最近キ
ューバ政府は、外国直接投資を誘致する一環として開
催するCubaindustria2014というキューバで初めての
国際工業大会に、
多くの外国企業や投資家を招待した。
先週の大会では29か国約400の企業が技術移転、技術
革新及び技術管理に関し議論を行った。また、2014年
6 月27日に同国は、スペインとの間で開発のための国
際協力に関する協定に署名した。本協定は、キューバ
特使団がスペインの企業や投資家に対し新法をプロモ
ートするためにスペインを訪問した時に持ち上がった
ものである。
2.北米
(1)
カナダ
Oribite社、QC州
(ケベック州)政府による10百万C$
の出資が完了
2014 年 5 月 26 日、 加 Oribite Aluminae Inc.( 以 下、
Oribite社 )は、QC州 投 資 公 社 の 子 会 社Ressources
Quebecによる資本払込
(10百万C$)の完了を発表し
た。Oribite社はアルミナやレアアース、レアメタル
酸化物のような高価値製品を低コストで生産するプロ
セスを保有する企業として期待を集めている。同社は
QC州Cap-Chatに高純度アルミナの商業生産プラント
を建設中で、計画中のアルミニウム用のアルミナにつ
いても基本設計を終えているとしている。
QC州新政府、2014〜2015年予算を発表
2014年6月4日、QC州政府財務省は、2014〜2015年
予算を発表した。
「財政回復、支出抑制、歳入引上、民
間投資・中小企業への支援、海洋戦略、北部開発計画
126
2014.9 金属資源レポート
(345)
(Plan Nord)の再開、天然資源開発、地方自治体・地
域への支援、高齢者・家族・社会的弱者への支援」な
どを柱とした今回の予算は、2014年4月7日の州議会総
選挙でケベック党から政権を奪回したケベック自由党
(自由党)が、選挙後初めて示す政策の方向性や手法と
なることから、その内容が注目されていた。
同州は経済低迷により財政赤字に陥っており、自由
党は経済発展の促進と財政健全化を公約に掲げていた
が、会計検査の結果、財政支出が選挙前に前政権のケ
ベック党が示した金額の3倍以上となる56億C$と判明
した事から、大幅な緊縮予算を余儀なくされた。支出
抑制の多くは行政の生産性向上やコスト抑制で実現す
るが、今後10年間で150億C$の増加を公約していた北
部開発計画
「Plan Nord」も 見 直 し の 対 象 と な り、
Labrador Trough地域への新規鉄道敷設に関するFS
費用の負担
(最大20百万C$)は実施するものの、2014
〜2015年のインフラ投資の予定額は63百万C$にとど
まっている。また、近年の鉱業税制改正に関する不安
定さが原因となり、民間投資が大幅に減少している事
から、業界や投資家からの早期の信用回復が急務とな
っている現状に対し、既存の鉱業税制の維持を明らか
にした。
QC州政府、ラブラドル・トラフ地域への新たな鉄道
敷設のFS費用を支援
2014年6月4日、QC州財務省は審議中の2014〜2015
年予算において、民間投資をサポートするための支援
策を発表した。ラブラドル・トラフ地域の鉄鉱石が輸
出港へアクセスするために必要となる新規鉄道の敷設
に関する調査費用(最大20百万C$)はその1つ。
RB Energy社、Quebec Lithium鉱山でバッテリー品
質の炭酸リチウムの連続生産を達成
2014年6月5日、加RB Energy Inc.(RBE社)は、QC
州で操業開始したQuebec Lithium鉱山で、バッテリ
ー品質となる99.9%の炭酸リチウム
(Li2CO3)の連続
生産を達成したと発表した。品質の安定性が確認され
た後、主要オフテイクパートナーである中国Tewoo
社向けに初出荷される。2014年末までのフル生産(年
産20,000t)の達成に向けてランプアップは順調に進ん
でいるとしている。
連邦最高裁判所、ON州
(オンタリオ州)の先住民族の
伝統地域における森林伐採に関する州政府の許認可権
限を認める
2014年7月11日、連邦最高裁判所はON州政府による
森林伐採の許認可権限の無効を求め、加ON州北西部
に 居 住 す る 先 住 民 族Grassy Narrows First Nation
(GNFN)が起こしていた裁判において、GNFNの訴え
を退け、州政府の許認可権限を認める判決を下した。
GNFNは、自分たちの伝統的な土地で行われている森
林伐採が狩猟や飲料水の水質などに悪影響を及ぼすこ
米環境保護庁、AK州Pebble銅・金プロジェクトから
ブリストル湾の漁業を保護する提案をリリース
2014年7月18日、 米 環 境 保 護 庁(USEPA)は、 加
Northern Dynasty Minerals Ltd.(NDM社)
がAK州で
開発を計画しているPebble銅・金プロジェクトについ
て、世界で最も豊かなサケの漁場の1つであるBristol
Bayに対する脅威になるとして、その負の影響から漁
場を保護するための提案をリリースした。USEPAは、
科学的根拠に基づき、
(1)サケが生息する小川を5マイ
ル以上消失させる、もしくはその支流を19マイル以上
消失させる、
(2)それらにつながる水源を1,100エーカ
ー以上消失させる、等の条件に該当する場合、鉱山か
らの鉱滓等の排出を全て制限する事を提案し、2014年
2014.9 金属資源レポート
127
(346)
7
月)
(2)
米国
Teck社、AK州(アラスカ州)
Red Dog亜鉛鉱山の廃水
用パイプライン建設に関する調査結果を報告
2014年6月5日、加Teck Resources Ltd.は、世界最
大の亜鉛鉱山であるAK州のRed Dog鉱山を操業して
い る 子 会 社 の Teck Alaska Incorporated(Teck
Alaska)が、同鉱山から排出される廃水をChukchi海
へ運ぶパイプライン建設に関する調査報告書をアラス
カ連邦地方裁判所に提出したと明らかにした。Teck
Alaskaは当該報告書において、パイプラインの建設
を行わない選択を表明している。今回の調査は水質浄
化法
(Clean Water Act)
に基づく訴訟に関する2008 年
の和解契約と同意判決に基づき実施されたもの。様々
な方式のパイプライン敷設を調査・検討した結果、地
下埋設は技術的に実現が難しく、地上敷設は261百万
6
〜
QC州Plan Nord事務局、鉄道敷設のF/S調査に着手
2014年7月21日、QC州Plan Nord事務局は北部開発
計画
「Plan Nord」に関し、同州南部のSept-Îles港とラ
ブラドル・トラフ地域間の新規鉄道敷設に関するFS
の実施計画を発表した。Plan Nordはケベック自由党
が前回政権時の2年前に発表していたもので、2014年4
月の州議会総選挙において、その復活を選挙公約の1
つとしており、2014〜2015年予算でその再開を明確に
していた。特に、ラブラドル・トラフ地域をはじめと
した北部地域の資源開発を促進する鉄道新設に関し、
2014〜2015年予算で最大20百万C$のFS費用拠出を決
めている。
AK州知事、2つの資源開発プロジェクトに対して総額
270百万US$の財政支援法案に署名
2014年6月18日、加Ucore Rare Metals Inc.
(URM社)
及び加Heatherdale Resources Ltd.(HR社)は、AK州
南東部で開発を計画しているプロジェクトに対する財
政支援法案Bill 99が、AK州知事によって署名された
と発表した。同法案は両プロジェクトの開発に向けた
設備建設や関連インフラ整備を支援するためのもの
で、2014年4月28日に州議会が可決していた。URM社
はBokan-Dotson Ridgeレアアースプロジェクト、HR
社はNiblack銅・亜鉛プロジェクトの開発をAK州内で
それぞれ進めている。この署名により、アラスカ産業
開発輸出公社は、各プロジェクトのデュー・デリジェ
ンスを行った上で、URM社のBokan-Dotson Ridgeプ
ロジェクトに最大145百万US$、またNiblackプロジェ
クトに最大125百万US$の資金を供給するための公債
を発行する事が可能となる。
主要国の鉱業を巡る最近の動向(2014年
Cameco社、Cigar Lake鉱山の採掘を一時中止
2014年7月16日、加Cameco社はSK州
(サスカチュワ
ン州)北部で操業するCigar Lakeウラン鉱山の採掘作
業を一時的に中止すると発表した。同鉱山は人工凍結
採鉱法とジェット・ボーリング法を組み合わせた採鉱
方法を導入しているが、試運転中に行った地盤の凍結
状態の評価試験において、一部のエリアの凍結状態に
問題が発見された為、一時的な操業停止および修繕作
業を決定した。再開までの期間は数か月とみられる。
同鉱山は、Cameco社、仏AREVA社、出光興産、東
京電力が権益
(順に50.025%、37.1%、7.875%、5%)
を保有しており、2014年3月に鉱石生産を開始した。
US$と推定される巨額な投資が必要となる事から、同
社はパイプラインの建設を行わず、同意判決で要求さ
れているとおり、8百万US$の民事制裁金を支払う予定。
AK州民の62%がPebble鉱山の開発に反対
2014 年 6 月 12 日、 加 Northern Dynasty Minerals
Ltd.がAK州で開発を計画しているPebble銅・金プロ
ジェクトに関し、州民へのアンケート結果が公表され、
62%が開発に反対していることが明らかとなった。本
アンケートは、同州の先住民、水産業及びスポーツ・
フィッシング業界の関係者がPebble鉱山開発の反対
運動を目的として設立した「Bristol Bay United」が主
催したもので、2014年5月13~15日に600名のAK州民
に対して電話インタビューを行った。回答者は、民主
党員18%、共和党員26%、無所属他57%という構成と
なっている。同アンケートでは、強い反対を示した人
が47%に上る一方、積極的に開発を支持する人は16%
にとどまった。政党別では、民主党員の88%、無所属
他の63%、共和党員の42%が開発に反対しており、開
発に否定的なアクションを取る米国環境保護庁の対応
についても55%が支持している。
鉱業動向
とを懸念しており、連邦政府との間で締結した条約
「Treaty 3」
の範囲にある土地において、州政府の森林
伐採の許認可権限は無効であると主張していた。これ
に先立ち、同年6月30日、同じく連邦最高裁判所がBC
州( ブ リ テ ィ ッ シ ュ・ コ ロ ン ビ ア 州 )の 先 住 民
Tsilhqot'in First Nationに対して先住権限を認める歴
史的判決を下しており、今回のGNFNが主張する対象
地域にはGoldcorp社が操業する同国最大の金鉱山を
はじめ、多くの鉱山が操業を行っている事から、本裁
判の判決が注目されていた。
鉱業動向
9月19日までパブリックコメントを受け付ける。
これに対し、NDM社は、従来からの主張のとおり、
USEPAが許認可の申請前にもかかわらず、水質浄化
法第404条を根拠とする拒否権発動の行動を起こして
いる点、また、漁場保護の提案内容が科学的根拠に基
づいていない点を非難している。さらに、USEPAが
申請前の拒否権発動権限を有していない事を明らかに
する超党派による法案が連邦議会で審議中である事に
も触れている。
3. 欧州・CIS
主要国の鉱業を巡る最近の動向(2014年
〜
6
月)
7
(1)
ロシア
ロシア:Norilsk Nickel社、製錬部門を再編へ
Norilsk Nickelのパーヴェル・フョードロフ副CEO
によると、ノリリスクのニッケル製錬所
(1942年建造)
の早期閉鎖
(2016年)
を中心とした製錬所の再編に着手
する。製錬所自体の閉鎖のためには、2016年までに
110億ルーブル以上かかる上、他の拠点への生産移転、
製錬部門の構成変更に要する関連投資は700億ルーブ
ルを超える見込みである。ニッケル工場の操業停止と
閉鎖に伴い、能力喪失分を補填する他の生産施設の近
代化を行うべく、Nadezhdaプラントへの多数の生産
施設移転、
コラ半島の精錬施設への投資が予定される。
地質調査に3,200億ルーブル以上を投じると述べてい
た。
ロシア:政府、ニッケル及び銅の輸出関税廃止を前倒し
ロシア政府は、非合金ニッケル及び銅カソードの輸
出関税を廃止した。7月22日、メドヴェージェフ首相
が政府決定に署名し、公布日より30日経過後に発効す
る。現行の輸出関税率はニッケル3.75%、銅10%であ
る。当初2016年の廃止が予定されていたが、2014年5
月末、Norilsk Nickelの提案を受け、関税・非関税規制・
外国貿易保護措置小委員会が前倒しの実施を決定し
た。
ロシア:コラ採鉱冶金会社、電気ニッケル生産拡大へ
Norilsk Nickel子会社であるコラ採鉱冶金会社は、
ニッケル電解プラントの変電所PP-70の第5直流ユニ
ットの商業運転を開始し、電気ニッケル12万tへの生
産拡大に向けた電力面の整備を完了した。カソード金
属生産は電力消費が大きいため、発電能力の強化なく
して生産拡大は不可能であった。ニッケル電解プラン
トの発電能力拡大と直流ユニット全5基の稼働開始は、
Norilsk Nickel発展戦略における最重要プロジェクト
実現の必須条件でもある。
ロシア:Rusgeology社、国家コーポレーションに改
編予定
国営地質調査企業グループRusgeology社は、資産
拡充のため、これまで連邦地下資源利用庁の資産であ
った10社の地質調査・研究・生産企業を取得する。こ
れら企業の資産価値は13億ルーブルで、石油・ガス、
ウラン、石炭、固体鉱物、地下水の分野で研究開発と
地質調査を行っている。同社は今後2年以内にこれら
資産の編入、再編、最新機器の購入、一部人事刷新を
行う予定。
ロシア・カザフスタン:露Rosatom社、カザフスタン・
Kazatomprom社とレアアース生産分野の協力覚書に
調印
6月25日、ロシア国営企業Rosatom社のセルゲイ・
キ リ エ ン コCEOと カ ザ フ ス タ ン 国 営 原 子 力 会 社
Kazatomprom社のウラジーミル・シコリニク会長が
レアメタル・レアアース生産分野の協力覚書に調印を
行った。覚書に基づき、両国は代替エネルギー、レア
アース採掘、レアメタル加工、レアメタル・レアアー
スをベースとする高度加工製品の分野で、二国間協力
を発展させる予定。
ロシア:政府、Tomtor鉱床利用権をVostok Engineering
社に供与
Tomtor鉱床Burannyi地下資源鉱区の利用権(ニオ
ブ、レアアース、スカンジウム及び随伴鉱種の探査・
採掘目的)がモスクワのVostok Engineering社に供与
された。2014年5月に当該鉱床の利用権の競売が実施
され、Vostok Engineeriing社が入札開始価格を10%
上回る価格で落札した。
Tomtor鉱床は世界最大級の鉱床であり、予測資源
量は鉱石1億5,400万tとされている。
(2)カザフスタン
カザフスタン:金属及び石油探査に1兆KZT投資へ
カザフスタンが金、銅、多金属、石油、ガスの新規
鉱床探査に1兆KZTを超える投資を行う予定である。
カザフスタン産業新技術省地質・地下資源利用委員会
のバザルバイ・ヌラバエフ委員長は、アティラウ市に
おける地下資源利用者との会合で、
「今後5年間に国家
予算から1,200億KZTを地質調査に割り当てる。地質
調査には国営企業も積極的に参加し、9,000億KZTの
投資を行う。」と述べた。
ロシア:今後10~30年間は天然資源採掘分を埋蔵量
増加により補填
ロシアのセルゲイ・ドンスコイ天然資源環境相は政
府会議において、ロシアは今後10~30年間、天然資源
採掘分を埋蔵量増加によって100%補填すると述べた。
先般メドヴェージェフ首相は、ロシアは2020年までに
カザフスタン:Kazakhmys社、新規銅鉱床の買収成立
Kazakhmys社はKoksay銅鉱床の買収成立を発表し
た。買収額は2億6,000万US$で、2015年1月1日に3,000
万US$を支払い、第二回支払(3,500万US$)は、埋蔵量
確認後の2015年7月31日に予定されている。Koksay銅
鉱床はアルマトイ市から234㎞地点にあり、インフラ
128
2014.9 金属資源レポート
(347)
も整備されている。鉱床の銅埋蔵量は340万t(平均品
位銅0.48%)とされ、金、銀、モリブデンも含有して
いる。マインライフは、平均年産量を銅約8万t(銅カ
ソード換算)
、金6万oz、銀40万oz、モリブデン精鉱
1,000tとして20年以上と予想されている。
2014.9 金属資源レポート
129
(348)
7
月)
Ramaphosa副大統領、ストライキに関連する労働法
の改正を示唆
南アのCyril Ramaphosa副大統領が、ストライキを
開始する前に労働組合員による投票を義務付けるよう
労働法を改正すべきであると発言した。Ramaphosa
副大統領は
「ストライキがあれほど長期にわたり継続
したことを考えると、これ(労働法の改正)
は議論され
るべき事項である。
」とコメントした。これを受けて
Anglo AmericanのMark Cutifani CEOは「
(労働法の
改正による投票の義務化は)南アにとって大きな前進
6
〜
(4)
英国
ロンドン銀値決め、新手法はCME Group及びThomson
Reuters連合の提案に決定
銀価格の指標となっていた特定金融機関によるロン
ドン銀値決めが2014年8月14日をもって終了すること
を受け、
この銀指標価格に代わる新たな手法について、
2014年7月11日、ロンドン地金市場協会
(LBMA)は、
米 CME
(Chicago Mercantile Exchange)Group 及 び
Thomson Reutersコンソーシアムの提案を採用する
と発表した。採択理由として、電子取引、オークショ
ン方式、透明性
(auditable)
、拡大する市場参加者と
の取引が可能であること、といったLBMAが求める
要件を満たしていたためとしている。なお、これらの
要件は、市場参加者への聞き取り調査を基に設定され
た。CME Groupは価格のプラットフォームと価格設
定メカニズムを提供し、Thomson Reutersは運営管
理を行う。2014年8月15日からの新手法による銀指標
価格の提供開始に向けて、LBMA及び同コンソーシ
アムは試行を重ねるとしている。
4. アフリカ
(1)南ア
<政府・政策に関する動向>
Ramatlhodi鉱物資源大臣、Zuma大統領へ新鉱業法案
の取り下げを進言
南 ア の 新 鉱 物・ 石 油 資 源 開 発 法 案(Mineral and
Petroleum Resources Development Act、MPRDA)
に つ い て、2014年3月 に 国 会 を 通 過 し、 現 在Jacob
Zuma大 統 領 の 署 名 を 待 つ の み と な っ て い る が、
Ngoako Ramatlhodi鉱物資源大臣がZuma大統領に対
し署名しないよう進言したとして、同法案成立に反対
する動きが見られている。Ramatlhodi鉱物資源大臣
によると、いくつかの条項では検討が必要であり、ま
た石油、ガスと鉱物資源を切り離すべきだとしている。
また、最大野党のMmusi Maimane新民主同盟党首も、
同 法 案 は 国 の 開 発 計 画 に 相 反 す る も の だ と し て、
Zuma大統領に対し、同法案を取り下げるよう呼びか
けたと発言している。同法案には、石油の探鉱権・生
産権において政府が無償で20%の権益を取得できる
「フリー・キャリード・インタレスト(Free carried
interest)
」や、同国に戦略的に重要な鉱種については、
生産者に対し輸出に代わり国内での高付加価値化を強
制することを可能とする権限を鉱物資源大臣に与える
条項が含まれており、業界関係者は同国への投資が減
退すると警告していた。
主要国の鉱業を巡る最近の動向(2014年
(3)
ウズベキスタン
ウズベキスタン:AGMK、2014年は銅生産を10万t
に拡大
2014年6月4日付け地元報道によると、Almalyk採鉱
冶金コンビナート
(AGMK)
(ウズベキスタンの銅生産
独占企業)
は2014年、銅生産を2%増の10万tに拡大す
る予定である。現在AGMKは、
既存生産施設の近代化・
改修、原料基盤の拡充、新規施設建設等の多数の投資
プロジェクト
(総額約6億7,000万US$)を実施してい
る。AGMKは精製銅
(カソード)
、金属亜鉛、鉛精鉱
その他製品を生産しており、製品総額は年間3億US$
を上回る。製品の約60%を輸出し、うち5%をCIS諸
国向けに輸出している。
鉱業動向
カザフスタン:Kazchrome社の新規フェロクロム・
プラントが操業開始
Kazchrome社の新規フェロアロイ・プラント第一
溶鉱炉の火入れ式が2014年6月23日に行われた。プラ
ントの生産能力は高炭素フェロクロム年産44万tであ
り、今年末までに22万6,500tの生産を予定している。
新規プラントの操業開始により、アクトベ・フェロア
ロイ・プラントの生産量は2013年28万4,000t、2014
年28万2,000tに対し、2015年には68万tに拡大する
見込み。
LMEのリングメンバー、10社に減少へ
仏金融大手Société Généraleとデリバティブ・ブロ
ーカーのNewedgeは2014年7月15日付でLME
(ロンド
ン金属取引所)における両社のリング取引(立会場取
引)部門を合併する。Société Généralが2014年5月に
Newedgeを完全買収したことをうけ、論理的に業務
を 判 断 し た 結 果、 今 回 の 結 論 に 至 っ た と さ れ る。
Newedgeはリング取引への参加権がある
「カテゴリー
Ⅰ」会員の地位を維持する一方で、Société Généraleは
「カテゴリーⅡ」会員へと移行するので、LMEのリン
グメンバー企業数が10 社に減少する。なお、LMEは
2014年6月23日、LMEにおけるリング取引の継続に関
する6か月間にわたる見直し作業の結果、2015年以降
も伝統的なリング取引を継続し、機能強化のために投
資していくとの方針を発表している。
となるだろう。政府の代表者からこのような発言を聞
けるのは心強い。
」と述べ、Ramaphosa副大統領のコ
メントを歓迎した。
鉱業動向
主要国の鉱業を巡る最近の動向(2014年
〜
6
月)
7
「鉱物資源高付加価値化行動計画」
の策定を発表
南ア政府は産業政策行動計画の一部として
「鉱物資
源高付加価値化行動計画」を策定すると発表した。こ
れに関連してRob Davis貿易産業大臣は
「コモディテ
ィー価格の高騰時に企業が資源から得た莫大な利益
は、労働者に適切に共有されていない」
、
「労働力がグ
ローバル化する中で高付加価値化の追求に失敗すれ
ば、南アフリカ経済は収入及び雇用を生み出せなくな
るだろう」
と発言した。
<企業・プロジェクトに関する動向>
白金鉱山ストが終結
鉱山労働者建設組合連合
(AMCU)は2014年6月24
日、Anglo American Platinum(Amplats)、Lonmin
及びImpala Platinum(Implats)の3社が提示した3年
間の賃金条件に同意し、契約書に署名した。これによ
り、本年1月23日から白金鉱山3社で5か月間にわたり
継続していた大規模なストライキが終結した。合意さ
れた内容によると、月額基本給が12,500ZAR(ランド)
(約12 万円)未満の労働者に関しては、最初の2年間は
月 1,000 ラ ン ド
( 約 9,500 円 )増 で、3 年 は Amplats と
Implatsでは月950ランド
(約9,000 円)増、Lonminでは
引き続き月1,000ランド増となる。一方、月額基本給
が12,500ランド以上の労働者に関しては、Amplatsと
Implatsでは最初の2年間は8%増、3年目は7.5%増と
なる。またLonminでは最初の年は8%増、残りの2年
は7.5%増となる。なお、労働者は翌25日から仕事に
復帰することになっているが、これらの白金鉱山でフ
ル生産が再開できるのは数週間後になる見通しであ
る。
Amplats、Union鉱 山、Rustenburg鉱 山、Pandora鉱
山を売却へ
Anglo American Platinum( 以 下Amplats)は2014
年 7 月 21 日、Union 鉱 山、Rustenburg 鉱 山 そ し て
Pandora鉱山の売却を計画していることを明らかにし
た。加えてBokoni鉱山に関しても、売却を現在検討
中である。南アの主要白金鉱山で鉱山労働者建設組合
連合(AMCU)が5か月にわたって継続した大規模なス
トライキの影響で、Amplatsでは白金生産で44万ozの
ロスを計上した。そのため、同社は鉱業プロジェクト
のポートフォリオを見直し、利ざやが高く、低コスト
の鉱山資産に専念することを決定した。Amplatsによ
ると、南アの白金鉱山の売却プロセスはまだ初期段階
にあり、売却の完了時期の目安は特に設定されていな
いが、既に複数の企業が売却に興味を示しているとさ
れる。
130
2014.9 金属資源レポート
(349)
(2)ザンビア
財務大臣、2013年鉱業部門歳入が不十分として、既
存税制の見直しを提言
Alexander Chikwanda財務大臣は、鉱業部門から
の2013年の歳入が不十分だったとして、国会は現在の
税制度を見直す時期に来ていると2014年6月17日の国
会の場で発言した。2013年の鉱業部門からの歳入は全
体の18.8%を占めていた。
(3)DRコンゴ
米国紛争鉱物規制により武装勢力が関与する鉱山が減少
反ジェノサイド活動団体である米Enough Project
は、DRコンゴにおける大部分の鉱山が武装勢力の管
理下から外れ、鉱山収益が武装勢力の資金源となって
い た 時 代 は 終 焉 に 向 か っ て い る と 報 告 し た。 米
Enough Projectの報告書によると、米国ドッド・フ
ランク法施行以前の2010年の国連の報告において武装
勢力の管理下にあるとされていた同国東部の錫、タン
タル及びタングステンの鉱山のうち67%が武装勢力及
び同国軍部の関与が解消されたとしている。本調査は
5か月にわたりDRコンゴ東部地域の14もの鉱山及び町
の220人並びに米国、欧州の32人への聞き取り調査を
ベースに実施された。報告書はEnough ProjectのHP
から閲覧することが可能である。
Kolwezi銅プロジェクト、賃金未払いで労働者がスト
ライキ
Katanga州に位置するKolwezi銅プロジェクトで働
く国営鉱山公社Gecaminesの労働者が、賃金が3か月
間未払いであるとしてストライキに入った。翌週の6
月24日、同社のAhmed Kalej Nkand CEOは、
「同社は
労働者への賃金の支払いを始めており、労働者は職場
復帰を開始している」とコメントしたが、労働組合代
表のJackie Makong氏によると支払われた額は賃金1
か月分にも満たないとされる。Makong氏は
「ただ未
払い分の賃金の支払いを始めただけでは十分ではな
い。不足分は支払われるべきであるが、生産が必要で
あるので職場に復帰した。」とコメントした。
採取産業透明性イニシアティブ
(EITI)の遵守国として
認定
DRコンゴは2014年7月2日、採取産業透明性イニシ
アティブ(EITI:Extractive Industries Transparency
Initiative)の「遵守国(Compliant Country)
」に認定さ
れた。EITIは石油・ガス・鉱物資源等の採掘産業か
ら資源産出国政府への資金の流れに関する透明性を向
上するための国際的な取り組みで、現在29 か国が「遵
守国」、16か国が「候補国(Candidate Country)
」に認
定 さ れ て い る。DRコ ン ゴ は2013年4月、2010年 の
EITI報告書がEITIの要件を満たさなかったとして、
候 補 国 と し て の 資 格 を 停 止 さ れ て い た。 し か し、
EITIの発表によると、DRコンゴ政府はその後、2010
(5)ニジェール
仏Areva社、同国政府とウラン鉱山操業ライセンス更
新交渉で合意、新規鉱山生産開始は延期へ
仏Areva社がニジェールに保有するArlitウラン鉱山
及びAkoutaウラン鉱山の操業ライセンス更新交渉に
ついて、メディア報道によると、2014年5月26日に同
国政府とAreva社の間で合意に達した。両鉱山の10
年間の操業ライセンスは2013年12月31日に終期を迎え
ていたが、ロイヤルティ率引き上げを巡る両者間の交
渉は長期化し、2年間にも及んでいた。新たなライセ
ンス契約期間は5年間で、Areva社は2006年制定の鉱
業法に基づき、ロイヤルティ率を従来の5.5%から
12%に引き上げることに同意したとされる。さらに、
同社はArlitウラン鉱山北部の町の道路建設に9,000万
€、地域開発投資に1,700万€を支払うほか、首都ニア
メに鉱山操業のための新たな事務所を1,000万€を投じ
て建設することを約束している。
なお、同社が開発中のImourarenウラン鉱山の生産
開始時期については、ニジェール北部の情勢不安によ
2014.9 金属資源レポート
131
(350)
6
7
月)
現地化法、ジンバブエ人への51%権益譲渡を100%
に拡大する可能性を示唆
2008年にMugabe大統領の署名により制定された現
地化・経済権限拡大法
(The Indigenization Economic
Empowerment Act)に関して、Patrick Chinamasa財
務大臣は、経済発展に地域参画を促すためには資源権
益の100%を自らがControlすることが重要であるとし
て、同大臣は、内閣府がすでに青年開発・現地化・経
済権限拡大大臣に対して、法律改正の指示を出してい
ると発言した。現地化・経済権限拡大法では、株式
Bimha白金鉱山で大規模な落盤、生産の50%に影響
Zimplats社のBimha白金鉱山で2014年7月18日、大
規模な落盤が発生した。鉱山の運営チームが迅速に対
応し、全ての人員が直ちに避難できたため、怪我人も
移動式機器へのダメージもなかった。しかしながら、
今回の落盤は鉱山の採掘部分の半分に広がっているせ
ん断帯に関連する地盤の劣化により引き起こされたた
め、Zimplats社はこのエリアにおける採掘を断念し、
永 久 的 に 閉 鎖 す る こ と を 決 定 し た。 こ れ に よ り、
Bimha白金鉱山における生産が50%縮小されることに
なる。
〜
(4)
ジンバブエ
ロシア・Vi Holdingグループ、Darwendaleプラチナ
鉱床開発へ
Vi Holdingグ ル ー プ、Rostec及 び 対 外 経 済 銀 行
(VEB)は、 世 界 第2位 の 規 模 を 持 つ ジ ン バ ブ エ の
Darwendaleプラチナ鉱床開発のためのコンソーシア
ムを設立した。VEBが当該プロジェクト(ロシア側権
益50%)の幹事金融機関となり、30億US$を調達する。
見返りとしてジンバブエ政府はロシアに自国市場への
広範なアクセスを約束している。
今後は2014年末までに主要鉱区の探査を終了し、国
際基準に基づいた埋蔵量確認を行う。採鉱選鉱コンビ
ナ ー ト 第 一 期 建 設 は2015年 に 開 始 す る( 投 資 額5億
US$、最長3年を予定)
。プロジェクト投資総額は約30
億US$、回収期間は6年である。Darwendale渓谷の白
金族金属鉱床は世界第2位の規模を誇る。プラチナの
確認埋蔵量は19t、他の金属
(パラジウム、ロジウム、
金、ニッケル、銅)
を含む資源量はプラチナ換算で755
tであり、2055年までの開発投資総額は28億US$とさ
れる。N1鉱区のライセンスはRuschrome Mining社が
2006年から所有している。
英Mwana Africa社、Binduraニッケル製錬所を2015
年下期までに再開へ
2014年6月11日付で、英Mwana Africa社は、同社が
76.3%保有する子会社のBindura Nickel社のニッケル
製錬所について、操業再開のための第三者スタディを
完了し、2015年下期までに操業を開始すると発表した。
同製錬所は2008年以降メンテナンスのため操業を休止
していた。補修工事に要する資本コストは2,650万US$
で、同社によるとその半分は借り入れ、残り半分につ
いては同社のキャッシュフローや現金を充当するとし
ている。同製錬所の年産能力はニッケル精鉱量16万t
で、同社のTrojanニッケル鉱山の精鉱年産量は10万t
規模であることから、委託製錬も実施することが可能
である。なお、操業コストはニッケル精鉱1tあたり
251US$としている。また、同国鉱業協会によると、
同国の2010年のニッケル生産量は6,133tで全て白金生
産の副産物として生産された。
主要国の鉱業を巡る最近の動向(2014年
Kabila大統領、鉱山公社GecaminesのCEOを解雇
DRコンゴのJoseph Kabila大統領が2014年7月26日、
国営鉱山公社GecaminesのAhmed Kalej Nkand CEO
を
「重大な過失
(gross negligence)
」を 理 由 に 解 雇 し
た。重大な過失の詳細は明らかにされていないが、
Gecaminesの経営陣はこれまで鉱業契約や会社経営に
関する透明性の面で政府から警告を受けてきた経緯が
ある。翌7月27日、Augustin Matata Ponyo首相は「適
切な方法で監査が行われ、同社の経営審議会とのミー
ティングで、統治面での重大な誤りが明らかになっ
た。
」
とコメントした。
51%以上をジンバブエ人に譲渡することが義務付けら
れている。
鉱業動向
年の報告書での不備に対処し、資格取り消しから1年
余りたった今月、EITI認定要件を満たしたとして遵
守国として認定された。EITI役員会のClare Short委
員長は、
「DRコンゴの国民は、国が抱える様々な課題
にもかかわらず、自国の天然資源の管理における透明
性と説明責任を確立するために協力してきた。」とコメ
ントし、DRコンゴの取組みを評価した。
り2015年末に延期されていたが、現在のウラン価格で
は採算性が合わないとして、市場動向を待って生産開
始時期を決めるとしている。Mahamado Issoufou同国
大統領は、2016年の大統領選挙前の生産開始を熱望し
ていた。
鉱業動向
主要国の鉱業を巡る最近の動向(2014年
〜
6
月)
7
(6)
ナミビア
Glencore、Rosh Pinah鉛亜鉛鉱山の従業員を2割削減
Glencoreは、首都Windhoekから南西800kmに位置
するRosh Pinah鉛亜鉛鉱山について、全従業員の20%
に相当する124名をコスト削減のため解雇した。同社
は、2011年に南アExxaro社及び他の株式保有者から
80.1%権益を購入し、操業に関する評価を行っていた。
同社によると、解雇した従業員については同国鉱業協
会を通じて他の鉱山での就職活動を支援するとしてい
る。同鉱山は坑内採掘鉱山で、2013年生産量は亜鉛精
鉱11.4万t
(前年比20%増)
、鉛精鉱2.1万t
(前年比17.5%
増)
であった。
North River Resources、Namib鉛・亜鉛鉱山の再開
に向けて資金調達
英North River Resources plcは2014年7月4日、ナミ
ビアのNamib鉛・亜鉛鉱山の再開に向けて、新株発行
によってGreenstone Resources LPから1,200万US$の
資金調達を行うと発表した。両社は既に拘束力のある
投資契約書に署名したとされ、North River Resources
はNamib鉱山の再開に向けた建設計画の立案を直ちに
開始する予定である。North River ResourcesのMartin
French取締役社長は
「
(Greenstone Resourcesからの投
資により)
Namib鉱山の開発を急速に進めることがで
き、2015年に生産を再開するための道筋が明確になっ
た。
」
とコメントした。
(7)
タンザニア
Panda Hillニオブプロジェクト、Tremont Investments
社が2,000万US$拠出し50%権益取得へ
豪Cradle Resource社は、タンザニアのPanda Hill
ニオブプロジェクトについて、Tremont Investments
社が2,000万US$を拠出することにより50%権益を取
得する契約に合意したと2014年6月11日付で公表した。
Tremont Investments社から1,500万US$が拠出されれ
ばDFSは完了できるとしている。同プロジェクトは、
資源量5,600万t、ニオブ品位0.5%、五酸化ニオブ量28
万tで世界規模クラスとされる。なお、世界のニオブ鉱
石生産は9割がブラジルに集中しており、2011年の世
界生産量6.3万tのうちブラジルが5.8万tを占めている。
Mtonyaウラン探鉱プロジェクト、ウラン市場の低迷
によりボーリングプログラムを延期
Uranium Resources plcは2014年7月21日、タンザニ
ア南部に位置するMtonyaウラン探鉱プロジェクトに
関して、ボーリングプログラムの実施を延期すると発
132
2014.9 金属資源レポート
(351)
表した。ウラン市場のファンダメンタルズ(基本的条
件)が改善し、Mtonyaプロジェクトの経済性が市場に
より広く認識されれば再びボーリングプログラムが開
始される予定である。同社のAlex Gostevskikh社長は
「役員会はウランのISR
(原位置回収)が可能な世界ク
ラスの鉱床であるとしてMtonyaプロジェクトの経済
性を理解しているが、ウラン探鉱市場に対する悲観的
な認識が引き続き見られる。」とコメントした。
5. アジア
(1)中国
<政府・政策に関する動向>
2014年の省別立ち遅れた生産能力の淘汰計画を公表
安 泰 科 に よ れ ば、 工 業 情 報 化 部
(Ministry of
Industry and Information Technology)
が
「2014年の工
業業界における立ち遅れた生産能力及び過剰生産能力
の淘汰目標計画」
( 工信部産業
(2014)
148号)を発行し、
各省に2014年の立ち遅れた生産能力及び過剰生産能力
の淘汰目標を配布した。そのうち、鉄鋼業界の目標は、
製鉄1,900万t、製鋼2,870万t、コークス1,200万t、鉄合
金234.3万tである。
2014年5月31日まで、河北省、山東省、江蘇省など
を含む合計16の省・市・自治区がそれぞれ省別の目標
を発表した。また、17の省・市・自治区では、立ち遅
れた製鉄生産能力2,143.9万tを淘汰し、国家が通達し
た目標より243.9万tを上乗せし、また立ち遅れたコー
クス生産能力1,314万tを淘汰し、国家の目標より114
万tを上乗せする計画。
国土資源部、2014年度はアンチモン鉱石の採掘総量
規制を実施しない見通し、レアアース・タングステン
鉱石については継続
安 泰 科 に よ れ ば、 中 国 国 土 資 源 部(Ministry of
Land and Resources)が発表した情報によると、国土
資源部は近日、
「2014年度レアアース鉱・タングステン
鉱採掘総量規制指標に関する通知」
(以下、
「通知」
)
を通
達し、レアアース及びタングステン鉱石の採掘総量規
制指標管理を継続し、一方で2009年4月に設定されて
以来毎年行われてきたアンチモン鉱石への採掘総量規
制指標管理を取り消す見込み。
▶ レ アアース:10.5万t。そのうち、軽希土類鉱
石指標を1.12万t増やし、前年比15%増とする。
▶ タ ングステン:2013年とほぼ同水準の8.9万t。
そのうち主要採掘指標は71,000t、総合利用指
標は18,000tである。その具体的な内訳は、江
西省37,750t、湖南省23,100t、河南省6,000t、
雲南省6,000t、広東省3,260t、広西省3,000t、
福建省2,900t、甘粛1,710t、内モンゴル1,500
t、安徽省1,200t、黒竜江1,100t、浙江省450
t、湖北省300t、新疆300t、海南省190t、
青海省140t及び陝西100tとなっている。タン
グステン鉱石の総合利用指標については、
指標・
広西チワン族自治区国土資源庁、2014年レアアース
採掘総量規制指標を通達
安泰科によれば、広西チワン族自治区国土資源庁は
2014年7月1日、国のレアアース・タングステン鉱石に
対する採掘総量規制の要求、および「中国国土資源部
の2014年度レアアース・タングステン鉱石採掘総量規
制(公文番号:国土資発「2014」65号)」に基づき、
「2014
年レアアース・タングステン鉱石採掘総量規制指標に
関する通達」を発表した。
鉱業動向
査定審査を実施し、適切に制限を緩和する。
▶ アンチモン:2014年度は通達しない。
2015年6月30日まで、レアアース・タングステンの
探査・採掘に関する新規申請を停止する。各種重要・
支援プロジェクトに対しては、採掘総量規制や生産能
力バランスの要求に適合する条件下で新規申請を許可
する。
2014 年広西チワン族自治区レアアース鉱石採掘総量規制指標
レアアース
採掘権者
鉱山名
中国アルミ広西有色崇左
中国アルミ広西有色
開発有限公司六湯レアア
崇左開発有限公司
ース鉱
広西有色金属集団梧
芩渓市花崗岩鉱区随伴共
州レアアース開発有
生資源回収プロジェクト
限公司
中国アルミ広西有色 永賀高速道路及び貴広高
レアアース開発有限 速鉄道建設レアアース鉱
公司
山回収プロジェクト
合計
2,000
2014年採掘総量
規制指標
(REOt)
300
備 考
※
1,200
回収利用
500
回収利用
※同鉱山の採掘許可証の有効期限が満了し、延長更新手続きを実施中、その指標が、採掘許可証の期
限に基づき配置する。
国家備蓄局、酸化モリブデン生産能力過剰解消に初の
買上げ備蓄実施へ
安泰科によれば、2014年7月17日、中国国家備蓄局
2014年非鉄金属業界の旧式生産能力の淘汰任務を発表
安泰科によれば、工業情報化部はこのほど、2014
2014.9 金属資源レポート
133
(352)
6
7
月)
国家備蓄局、金属コバルトの買い上げ備蓄を実施
安泰科によれば、中国国家備蓄局は金属コバルトの
買い上げ備蓄を開始、この先数週間にわたってコバル
ト価格が断続的に上昇する傾向の中、国内10社の生産
および販売業者を含むコバルト関連企業に買い上げ備
蓄について文書を発信、意見を求めていた。招待され
た企業は2014年7月16日までに中国国家備蓄局に競争
入札計画を提出、最終結果は7月17日に決定する見込
み。中国国家備蓄局は数100t規模のLME登録ブラン
ドの金属コバルトの買い上げ備蓄を実施する可能性が
ある。
業界関係者の予想によると、短期的に国内の金属コ
バルト価格は24~25万元/tに、Chambishiコバルト
価格は23万元/tに上昇する見込み。現在、中国国内
のコバルト在庫数は相対的に低く、買い上げ備蓄の実
施によりコバルト価格の上昇が続く。
は国内の主要モリブデン生産企業の責任者を集めた会
議を開き、酸化モリブデンの買上げ備蓄について協議
した。実施されれば、中国国家備蓄局による初の酸化
モリブデン買上げとなる。
情報によると、今回会議に参加したのは、洛陽モリ
ブデン業
(China Molybdenum Co. Ltd.)
、錦州新華龍
(Jinzhou New China Dragon Moly Co., Ltd.)
、金堆城モ
リブデン株式
(Jinduicheng Molybdenum Co., Ltd.)
、栾
川龍宇モリブデン業
(Luanchuan Longyu Molybdenum
Industry Co., Ltd.)
など。金モリブデン株式の関係者の
話によると、今回の買上げ備蓄は4か月ごとに分けて実
施する可能性がある。
モリブデンは工業界で不可欠なレアメタルとして、
中国国内では主に鉄鋼業界で利用されている。2013
年の中国モリブデン精鉱の生産量は11.1万tで世界総
生産量の42%を占めるが、国内の年間消費量は約7万
tに過ぎず、生産能力過剰問題が深刻化している。
今回の買上げ備蓄の目標値が2,000tであるのに対
し、国内の年間フェロモリブデン生産能力は約8万~9
万t、
“焼け石に水”の状況であり、市場全体への影響
はほとんど生じないとの予想。
現在、中国国内で生産されるモリブデンのうち輸出
は僅か10%。今年初めより業界内では輸出割当制度の
廃止について議論が始まっているが、この政策につい
て依然として決着がついていない。
〜
2014年、江西省政府は28.2万t相当の旧式銅製錬能力
を淘汰
安泰科によれば、江西省工業情報化委員会は、国家
工業情報化部による
「2014年工業界の旧式生産能力と
過剰生産の淘汰任務の通達」に基づき、淘汰対象とす
る企業リストを発表した。うち銅製錬生産能力の淘汰
分は28.2万t相当とのこと。
主要国の鉱業を巡る最近の動向(2014年
保護性
採掘鉱種
鉱業動向
主要国の鉱業を巡る最近の動向(2014年
商務部、2014年第2期レアアース等輸出枠を発表
商務部は、2014年7月8日付(公表日14日)
で2014年第
2期非鉄金属輸出割当量を発表した。輸出枠の対象は
タングステン及び同製品、アンチモン及び同製品、銀、
レアアース、インジウム、モリブデン及び同製品、錫
及び同製品。今期の輸出割当量は、レアアースを除い
ては年間輸出割当総量の30%であり、各企業への割当
量は2011~2013年の生産量、輸出量、輸出額に基づき
計算された。
レアアースについては、軽希土類13,691t、中重希
土類1,809t、上期と併せて2014年計31,000tと前年比
とほぼ同量(前年比1t増)であった。レアアースの輸
出規制を巡っては、2014年3月のWTO違反判決を受け
輸出枠撤廃の可能性も言及されていたが、続行という
結果となった。中国政府は、4月末にWTO判決に係る
上訴文書を提出した模様。
年の各産業界における旧式の立ち遅れた生産能力およ
び過剰生産能力の淘汰任務
(第1期)に関する通達を発
布した。
同通達は、電解アルミニウム、銅製錬(再生銅を含
む)
、鉛製錬
(再生鉛を含む)
、鉛蓄電池
(極板および組
立)等、15の大規模業種に及んでいる。うち、鉛の淘
汰任務は35万6,000t、電解アルミニウム47万8,500t、
銅72万5,600t、鉛蓄電池極板848万kWh相当、鉛蓄電
池組立て531万kWh相当など。
2013年に実施された3期分の淘汰任務の達成状況は、
銅(再生銅を含む)製錬66万5,000t、電解アルミニウ
ム27万3,000t、亜鉛
(再生亜鉛を含む)14万3,000 t、
鉛( 再 生 鉛 を 含 む )製 錬87万9,000t、 鉛 蓄 電 池 極 板
1,420万kWh相当、鉛蓄電池組立ては1,067万kWh相当
となっている。
(単位:t)
2014 年中国非鉄金属輸出割当量
鉱種
品目名
APT
(パラタングステン酸アンモ
ニウム)
メタタングステン酸アンモニウム
タングステン 三酸化タングステン及び青色酸化
タングステン
タングステン酸及びその塩類
タングステン粉
酸化アンチモン
アンチモン
アンチモン(アンチモン合金含む)
及びその製品
銀
銀
軽希土類
レアアース
中重希土類
インジウム(2013年はインジウム
インジウム
及びその製品)
モリブデン鉱石
モリブデン
モリブデン化合物
モリブデン製品
錫
錫及びその製品
〜
6
月)
7
2014年
第1期
2014年
第2期
2014年
計
2013年
計
2013/2014
増減比
4,403
1,887
6,290
4,840
30%
6,643
2,847
9,490
9,745
-3%
328
2,208
41,477
141
947
17,775
469
3,155
59,252
631
3,850
55,906
-26%
-18%
6%
6,325
2,711
9,036
11,880
-24%
*3,170
*13,692
*1,808
2,053
13,691
1,809
5,223
27,383
3,617
5,387
27,382
3,617
-3%
0%
0%
162,000
69,000
231,000
231,000
0%
5,541
10,855
8,750
11,900
2,375
4,652
3,750
5,361
7,916
15,507
12,500
17,261
33,007
3,922
3,750
17,000
-76%
295%
233%
2%
* 安泰科によると、2014 年 2 月に追加輸出枠の配布があった模様(商務部公表資料を基に JOGMEC 作成)
(商務部公表資料を基に JOGMEC 作成)
134
2014.9 金属資源レポート
(353)
厦門タングステン・レアアース集団設立計画が認可
安泰科によれば、厦門タングステン・レアアース集
団の設立計画が福建省政府の承認ならびに中国工業情
報化部の認可登録を終え、正式に設立準備段階に入っ
た。設立されれば中国6大レアアース企業の1つとなる
同社は、福建省内に賦存する豊富なレアアース資源を
基盤とした同産業の先頭的な役割が期待される。
山東レアアース集団設立案が浮上、レアアース産業再
編に2社中央企業誘致
安泰科によれば、山東省経済情報委員会は、中国鋼
江西省、国家レベルのレアアース企業集団を年内設立へ
安泰科によれば、江西省委第13期第9回会議におい
て、2014年年内に国家レベルのレアアース企業集団の
設立を計画していることが明らかになった。江西省政
府は、現地の特色のある優位産業の強化・拡大を支援
し、贛南ソビエト地区(江西省南部の革命聖地)
におけ
る優位産業リストの早急な国家レベル認可の獲得、江
西タングステン株式会社の上場などを積極的に進め
る。
2014.9 金属資源レポート
135
(354)
7
月)
<レアアースの動向>
中鋁公司
(中国アルミ)傘下企業が
「レアアース業参入
許可条件」
合格企業リストに入選
安泰科によれば、中国工業情報化部より発表された
第五期「レアアース業参入許可条件合格企業リスト」
(2014年第41号)において、中国アルミ傘下の
「中鋁稀
土
(江蘇)
有限公司」
が製錬分離企業として、また「中鋁
広西有色崇左稀土開発有限公司」
および
「四川漢鑫鉱業
発展有限公司」
が鉱山企業として、それぞれ入選した。
政府、
「レアアース産業補助資金管理弁法」
を発表
安泰科によれば、財政部と工業情報化部はこのほど、
「国家物聯網発展及びレアアース産業補助資金管理弁
法」
を共同で発表した。同弁法によれば、中央財政予算
からの資金拠出により
「レアアース産業補助資金」
を創
設、財政部と工業情報化部の各部門が共同管理を行い、
レアアース産業の技術革新と健全な発展を支援する。
両部門が派遣する専門家が、2014年レアアース産業
調整・産業高度化特別資金に応募されたプロジェクト
に対し審査を実施し、支援予定プロジェクトリストを
提出した。2014年7月8日~7月16日まで7日間にわたり
公示を行う。
6
〜
蔡家営亜鉛・金鉱山、鉱石処理能力を2015年に150
万t/年に
安泰科によれば、英Griffin Mining社は、河北省に
位置する蔡家営
(Caijiaying)亜鉛・金鉱山の鉱石処理
能力を引き上げる工事を実施している。
2013年、同鉱山は、合計亜鉛精鉱39,724t、鉛精鉱
1,553tを生産した。2014年関連工事の完了に伴い、
2015年には鉱石処理量は150万t/年に達する見込み。
贛州レアアース集団、江西銅業と連携して中央企業に
挑む
安泰科によれば、江西省では、広東威華株式有限公
司(Guangdong Weihua Corporation)傘下の贛州希土
集団(Ganzhou Rare Earth Group Co. Ltd.:以下
「贛
州希土」)を主体とし、四川金攀西希土(集団)
有限責任
公司(以下「金攀西希土」)等との連携により、中国贛州
希土集団を設立する予定。設立計画案は現在上層部に
申請中とのこと。
情報によると、江西銅業集団は、中国国務院が承認
した国内大規模レアアース集団企業“1+5計画”
に含ま
れていないが、贛州希土が中国南部の大規模レアアー
ス集団企業の牽引役となりうるとして中国国務院より
重点的支援を受けている。
主要国の鉱業を巡る最近の動向(2014年
中国アルミ公司、中国石炭地質総局と共同で広西レア
アース産業基地を創設
安泰科によれば、2014年6月3日、中国アルミ公司
(Aluminum Corporation of China)は中国石炭地質総
局(China National Administration of Coal Geology)
と戦略協力協定を結び、中国アルミ広西有色レアアー
ス開発有限公司
(Chinalco Guangxi Nonferrous Rare
Earth)と徐州金石彭源希土類材料工場は協力協定を
締結した。
中国アルミ公司は、国務院が確定した整理統合レア
アース産業の6社の大手レアアース企業集団のうちの1
社である。
研 科 技 集 団 有 限 公 司(China Iron & Steel Research
Institute Group:以下「鋼研科技集団」)および中国希
有希土有限公司と
「山東レアアース企業再編促進に関
する趣意書」を締結、3 者が共同で
“山東レアアース集
団”を設立する案が浮上した。省経済情報委員会は既
に2 社との「趣意書」締結を終えているという。
統計によれば、山東省には採掘、製錬分離、高度加
工企業など3種類20社以上のレアアース関連企業があ
る。山東省経済情報委員会原材料産業処の情報による
と、山東省のレアアース産業において、高度加工プロ
ジェクトおよびハイレベル実用プロジェクト合計25
件が建設中、投資総額は65億元である。
鉱業動向
<企業に関する動向>
五鉱資源、亜鉛事業の拡大発展を計画
安泰科によれば、五鉱資源
(Minmetals Resources)
は、ペルーLas Bambas銅プロジェクトの権益を取得
した後、亜鉛事業を拡大する計画。同社の最近の主要
任務は、Las Bambas銅プロジェクトの事業推進及び
豪州東部のDugald River亜鉛・鉛・銀プロジェクトの
開発である。
鉱業動向
主要国の鉱業を巡る最近の動向(2014年
〜
6
月)
7
上海市、7件の希土類プロジェクトが工業情報化部の
特別項目支援を取得
安泰科によれば、上海市の7件のプロジェクトが国
家希土類産業調整・高度化特別プロジェクト資金の援
助計画リスト対象に選ばれた。これら7件のプロジェ
クトは中央政府より最大40%の無償援助金を取得す
る。
財政部、工業情報化部が共同で発表した「国家物聯
網
(モノのインターネット)
発展及び希土産業補助資金
管理方法」
( 財企
(2014)
87号)
、
「2014年希土産業調整・
産業高度化特別資金申請に関する通達」
(工業情報化庁
連原
「2014」
86号)
に基づくもの。申請された計画案は、
上海市レアアース協会などの団体組織が専門家を派遣
し、評価・審査を行った。
福建省経済情報委員会、希土類資源回収利用プロジェ
クトを整理規範化
安泰科によれば、
福建省経済情報委員会はこのほど、
希土類資源回収利用プロジェクトへの整理規範化事業
に着手した。具体的な事業は主に以下の三件。
○ 希土類資源回収利用プロジェクト整理
○ 希土類資源回収利用プロジェクトの管理を規範化
○ 希土類資源の回収利用計画の管理強化
工業情報化部、レアアース業界自由化せず、総量規制
依然として実施
安泰科によれば、中国国務院新聞弁公室は2014年7
月24日、2014年上半期中国工業・通信業の発展状況に
関する記者発表を行った。工業情報化部運行観測協調
局の黄利斌副局長は、2014年上半期の中国原材料等基
礎産業の発展状況について、積極的な動きに転じ、鉄
鋼、非鉄金属産業は回復基調と言及、レアアース総量
規制に対しての説明もあった。
今年に入り工業情報化部は、国土資源部などと共同
で、
国内外レアアース産業の近年の発展情勢を分析し、
2014年度レアアース鉱石の採掘総量規制指標を発表し
た。総体的に見て、引き続き規制を継続する状況であ
る。2014年度の採掘および生産計画は、昨年比10%の
上積みとなったが、理由として以下の状況が考察され
る。
○ 中国国内の戦略的新興産業が急成長し、例えば希
土類新材料、省エネ環境保護などの分野におけるレ
アアース需要が大幅に増加した。
○ 過去3年間にわたるレアアース産業の特別整理行
動の実施によって、数多くの違法・違反企業が閉鎖
または生産品目の変更を行い、同時に包鋼希土など
大規模企業が一連の小規模製錬分離企業を統合する
ことで大規模企業の比率が拡大、違反企業の生産量
ならびに市場占有率が縮小した。
○ レアアース業界自身の規範化の強化や市場におけ
る需要の拡大に伴い、レアアース採掘生産指標が継
続的に上昇する可能性を見せている。
136
2014.9 金属資源レポート
(355)
ただし、産業全体から見れば、レアアース業界は未
だ自由化されず、同業界に対しては依然として総量規
制の状態にある。
<その他の動向>
主要鉱産品の対外輸入依存度が全面的に大幅上昇
安泰科によれば、経済社会の急速な成長に伴い、中
国の主要鉱産品消費の対外依存度が急上昇し、最近10
数年でかつてないレベルに達した。
中国国土資源部情報センター(Information Center
of Ministry of Land and Resources)によると、2011
~2013年に、中国国内で新たに発見された大中規模鉱
徴地は466か所で、そのうち大規模鉱徴地が174か所で
ある。45種の主要鉱物資源の中で33種鉱種の確定埋蔵
量が新たに増加し、国内資源の保障能力を効果的に引
き上げた。
この期間に、国内主要鉱産資源消費の対外依存度も
急上昇している。概算統計によると、45種の主要鉱種
の中で、2012年には海外から23種を輸入していた。
2013年、石炭の純輸入量は3.2億t(2012年比13.4%増
加)、鉄鉱石の純輸入量は8.13億t(前年比9.4%増)
、
石油の輸入量は2.9159億t(2000年の4.18 倍)となっ
た。石油の対外依存度は2000年の32.59%から2013年
の61.5%に上昇し、鉄鉱石の対外依存度は2000年の
36%から2013年の58.7%に上昇した。2013年のニッケ
ル対外依存度は70%、ボーキサイトは74%、銅鉱石は
81.7%に高まった。
陝西省非鉄金属取引センターが運営開始
安泰科によれば、6月下旬、陝西省内で唯一となる
省レベルの非鉄金属取引プラットフォームとして、
「陝
西非鉄金属取引センター」が、西安市で正式に運営を
開始した。開業式の当日、同取引センターは計10行の
銀行との契約を締結し、1,400tの現物取引を行った。
初日の取引額で1億元を超えた。
中国有数の非鉄金属の生産量を誇る陝西省は、特に
バナジウム、チタン、モリブデン、マグネシウム、ニ
ッケルについて埋蔵量、年間生産量ともに世界上位に
位置する。
北京国際鉱業権取引所の再編に初の民間資本を導入
安泰科によれば、国内初の鉱業権取引管理プラット
フォームである北京国際鉱業権取引所は、7月17日、
正式に株式持分再編を行い、新たに第二株主となる川
谷匯投資
(集団)
有限公司
(Kawatani investment(Group)
Co. Ltd.)
が初の民間企業株主となる。
株式持分再編の後、北京国際鉱業権取引所は国内初
となる鉱業リスク探査資本市場(即ち探査権市場)
を設
置し、今後徐々に取引関連規則を整備し、今年末には
試験運営を行い、年明けにも正式にオンライン運営を
開始する予定。非上場鉱業企業を、探査段階において
効果的に社会資本とリンクさせる目的。
財務省、鉱山からの歳入分与資金を概算
一般的な鉱山からの税収によってもたらされる歳入
分与資金は、インドネシア財務省Chatib Basri大臣の
概算では18.90兆Rp
(インドネシアルピア)と見積もら
れ、各々の産出地域に分配される。2014年国家予算に
基づくと、概算された歳入のおおよそ18兆Rpは鉱業
2014.9 金属資源レポート
137
(356)
7
月)
Freeport Indonesia、政府から銅精鉱輸出許可を取得
Freeport McMoRanは2014年7月25日、 子 会 社 の
PT Freeport Indonesia
( 以下PT FI)がインドネシア
<その他の動向>
バンカ・ブリトゥン州政府、PT Koba Tinの株式60%
を取得
地元メディアによると、バンカ・ブリトゥン州政府
とPT Timah Tbkは2011年9月18日に契約が失効した
PT Koba Tinの所有権に関して合意に至り、同州政府
がPT Kota Tinの株式の60%を保持することとなっ
た。
Rustam Effendi州知事によると、
「州政府がPT Koba
Tinの60 % を コ ン ト ロ ー ル し、 残 り の40 % がPT
Timahのものとなる。
6
〜
次期大統領、鉱業政策を巡る問題について業界と話し
合う意向を示す
報道によると、次期大統領であるジョコ・ウィドド
氏
(
「ジョコウィ」
)
は、高付加価値化政策に基づく鉱石
輸出停止などについて鉱業界との対話を行う意向を示
した。
「まずステークホルダー、投資家、政府、本件に
ついて知見のある人間を話し合い、良い解決策を見出
したい。詳細を知りたい」とインタビューで語った。
具体的なことは明らかにしなかったが、現政権の下で
議論が激化しつつある中、鉱業界は再び交渉の余地が
できることに期待を寄せている。
ま た、 ジョコウィ氏の経済アドバイ ザ ー で あ る
Darmawan Prassodjo氏は、新大統領は
「鉱業を殺す」
ことはせず、政府と業界は共に問題に直面するパート
ナーであるとし、現政権の業界に取り経済性ある条件
を整えていない政策を批判した。
但し、他方で次期副大統領のYusuf Kalla氏はやや
異なる態度を示している。
「高付加価値化に基づく鉱石
禁輸は、2007年に議論し2009年に鉱業法として合意さ
れたこと。これは法律である。
」
同氏は鉱業法改正のさ
なかにあった2004~2009年にも副大統領を務めてい
た。
<COWの動向>
エネルギー・鉱物資源省、鉱業事業契約(COW)案の
修正を提示
2014年7月14日付地元メディアによると、エネルギ
ー・ 鉱 物 資 源 省 は、7つ のCoW(Contract of Work:
鉱業事業契約)ホルダー及び33のCCoWまたはPKP2B
(Coal contract of Work:石炭鉱業事業契約)
ホルダー
の契約修正案を最終決定し、これら40社に提示された。
修正点は、選鉱・製錬設備の建設、鉱山用地の削減、
特別鉱業事業許可
(IUPK)への変更、ロイヤルティ率
の引き上げ、外資の国内資本移転、国内の資材及びマ
イニングサービスの使用、の6点である。
主要国の鉱業を巡る最近の動向(2014年
(2)
インドネシア
<鉱物資源高付加価値義務化に関する動向>
政府、Newmontからの訴訟に備える
2014年7月4日付地元メディアによると、インドネシ
ア 政 府 は、PT Newmont Nusa Tenggara(PTNNT)
による国際仲裁裁判に対応する準備を行っている。
PTNNTは、精鉱輸出に厳しい制限を課す政策に対し
て、異議を申し立てていた。
同国エネルギー鉱物資源省のJero Wacik大臣は、政
府は法廷の場においてPTNNTに応じる専門家を有し
ており、この件については、Amir Syamsudin法律人
権大臣によって取り扱われる、と述べた。また、政府
はPTNNTによる訴訟の動きに遺憾の意を示してお
り、両者は精鉱の輸出再開を探る方策について未だ交
渉中であるとも述べた。
その後の報道によると、Yudhoyono大統領は提訴
を取り下げなければ鉱業権を取り消すと発言したとも
報じられている。
政府より銅精鉱輸出再開の承認を得たことを明らかに
した。PT FIは直ちにフル生産を再開し、8月には精
鉱輸出を再開する見込み。
PT FI の プ レ ス に よ る と、 同 社 と 政 府 は CoW
(Contract of Work:鉱業事業契約)の改定交渉につい
てMOUを締結し、本MOUの発効により同社は以下項
目について合意した。
▶ 2014年7月25日公布の新しい規則に基づく輸出
税支払
輸出税率:7.5%
(製錬所建設計画進捗率が7.5%
に達すれば5%、30%に達すれば税は免除され
る)
▶ 輸出税及び製錬所建設のための保証金
(115百万
US$)支払い
▶ ロ イヤルティ料率の引き上げ
(銅3.5%→4.0%、
金1%→3.75%)
PT FI及び政府はCoW改定交渉に入り、コンセッシ
ョンエリアの範囲、ロイヤルティ及び税、国内製精錬、
国内への資本移転、現地調達、2021 年以降の操業継
続について協議を行う予定。
鉱業動向
資本再編後の北京国際鉱業権取引所は、これまで3
社の株主が並立する持株構成を変更し、北京財産権取
引所が第1株主で35%、川谷匯投資
(集団)有限公司が
31%、中国アルミ業工業公司と中国光大投資管理有限
公司の2社の国有企業がそれぞれ17%の権益を保有す
る。
ロイヤルティから、残りは土地賃貸料と想定される。
歳入分与資金の概算は、2014年5月12日に署名され
た財務大臣令No84/PMK.07/2014に規定されている。
鉱業動向
主要国の鉱業を巡る最近の動向(2014年
〜
6
月)
7
ヤルティの未払いがあることが明らかとなった。未払
い額は総額5兆Rp
(430百万US$)に上ると見積もられ
る。KPKによると国内の鉱山会社の半分が納税者番
号(NPWP)を持っていない。
政府、違法採掘活動抑制の一環として、運送ライセン
スを一時停止
政府は違法な採掘活動抑制の一環として、鉱物・石
炭運送会社62社の運送ライセンスを一時停止してい
る。
これらの運送会社には、運送対象物の供給元及び運
送先の報告に30日の猶予を与えられ、報告がなされな
ければ、ライセンスは完全に無効となる。ライセンス
を一時停止された62社は、営業活動報告の不履行のた
め、第3次警告文書を交付された78社の一部であった。
また、他136社には、第1次及び第2次の警告文書が交
付された。
現在、運送ライセンスを保有している鉱物・石炭運
送会社はおよそ780社存在する。
地方政府、330のIUP鉱業許可を無効とする
2014年7月3日付地元メディアによると、
南スマトラ、
ジャンビ及び中央スラウェシ州の県事務所は、今年6
月30日までに330の問題ある鉱業事業許可(IUP)を無
効とした。
エネルギー・鉱物資源省の石炭鉱物計画局のPaul
Lubis局長は、特定のIUPは重複問題を含む様々な問
題によって許可が得られない状態となっている、と述
べた。Lubis局長は、地方政府によるこの動きは、過
去に県事務所によって発行されたclean and clearでな
い
(non-CnC)
IUPを一掃するという、中央政府と州政
府間の協力によるものであるとも述べた。
汚職撲滅委員会
(KPK)
、鉱業分野の取り締まりを強化
(Komisi Pemberantasan Korupsi:
汚職撲滅委員会
KPK)
はその機能を、鉱業契約
(CoW)
を有する鉱山会社
の業務監視を含む、鉱業分野全体の監理にまで広げる。
エネルギー・鉱物資源省
(MEMR)鉱物石炭総局の
Suhkyar総局長は、KPKはCoW及びCCoWの鉱業契約
の監理を開始し、MEMRの焦点は契約再交渉と国家
と環境への収入になる、と述べた。
この他、KPKは悪徳鉱山会社の背後にいる軍事関
係 者 に 取 り 締 ま り の 狙 い を 定 め て い る。Abraham
Samadリーダーによると、現役及び退役軍人の後ろ盾
が鉱業部門における税及びロイヤルティ滞納の理由の
一つであるとしている。
また、報道によると、インドネシア全国11の州で活
動する4,500以上の鉱山会社が、土地貸借料及びロイ
(3)モンゴル
モンゴル税務当局、Oyu Tolgoi銅・金鉱山の監査報告
で130百万$の不払いを指摘、Turquoise Hill社はモン
ゴル政府に対し異議申し立て
2014年6月23日付報道によると、モンゴル税務当局
はOyu Tolgoi銅・金鉱山に関しRio Tintoが総額130
百万$に上る税金、罰金及び税務上損金として計上さ
れない費用が不払いの状態であるとの監査報告を行っ
た。しかし、オペレーターのTurquoise Hill Resources
(Oyu Tolgoi LLC権益66%保有)はモンゴル政府
(同社
権益34%保有)との合意に基づき要求されている全て
の税および費用は支払済みで、投資協定および法律に
則っているとしており、25日にモンゴル政府を提訴し
た旨明らかにした。今後60日間の交渉を行う見通しで
あり、この間に紛争が解決しなければ国際仲裁に解決
を委ねられることになる。
(2014.8.15)
138
2014.9 金属資源レポート
(357)