-目にや さ し い点眼 薬を目指 して- 第68 回日本臨床眼科学会 ランチョンセミナー 11 演題Ⅰ 抗アレルギー点眼薬の使い分け 海老原 伸行 先生 現在日本で使用できる抗アレルギー点眼剤は 10 種類ある。それぞれの点眼剤に特徴があるが、 大きく肥満細胞膜安定化薬と抗ヒスタミン H1 受容体拮抗薬とに分けることが出来る。一般に後 者の方が痒みに対し即効性がある。クロモグリク酸ナトリウム(クモロール ®)は膜安定化薬だが 痒みの 神 経の活性化を 抑 制するので痒みに即効性がある。トラニラスト(トラメラス ®)は抗 TGF-β作用により、結膜線維芽細胞のコラーゲン産生・形質転換を抑制するので、微小乳頭を呈 する慢性アレルギー性結膜炎に効果的である。抗ヒスタミン H1 受容体拮抗薬の多くは H1 受容体 に対するインバースアゴニストであり、初期療法の効果の理論的背景になる。またオロパタジン (パタノール®)やエピナスチン(アレジオン®)は H1 受容体拮抗作用のみでなく肥満細胞膜安定化 作用を併せ持つので、頑固な痒みに効果的である。多くの抗アレルギー点眼剤は塩化ベンザルコ ニウムを含んでおり、重度のドライアイ・多剤点眼剤使用者・コンタクトレンズ装用者には注意 を要する。中性の点眼剤はしみないが、酸性点眼剤はしみる。 抗アレルギー点眼剤においても患者さんの症状・所見・コンプライアンスを考えて処方するこ とが大切である。 演題Ⅱ 防腐剤フリーアレルギー点眼薬と ソフトコンタクトレンズ 小玉 裕司 先生 ソフトコンタクトレンズ(SCL)装用上において点眼薬を使用してもよいか否かは議論の尽 きないところである。点眼薬には基剤をはじめとして様々な添加物が含まれており、それらの薬 剤がレンズ内に沈着あるいは貯留して角結膜障害をきたさないかという不安がある。特に塩化ベン ザルコニウムなどの防腐剤の影響は危惧されるところである。そのような不安や危惧を避けるた めには防腐剤フリーの点眼薬が望まれるわけであるが、防腐剤フリーの点眼薬においても、点眼 薬にSCLを浸漬した場合はレンズの含水率が変動したり、サイズが異なってくることが知られ ている。 一方、近年SCL市場は従来型のハイドロゲル素材のものから低含水性・高酸素透過性のシリ コーンハイドロゲル素材のものへと大きく変貌しつつある。 今回のセミナーでは従来型ハイドロゲル素材SCL2種類とシリコーンハイドロゲル素材SC L2種類を選択し、それらのレンズを装用させた上から防腐剤フリーアレルギー点眼薬を使用さ せて、角結膜障害の有無、レンズフィッティングの変化、レンズ内への基剤および等張化剤や緩 衝剤として使用されているホウ酸の吸着について検討したので、その結果を報告するとともに、 これまでに様々な点眼薬を種々のコンタクトレンズ装用上において使用し、その安全性について 検討した結果から得られた「より安全にコンタクトレンズ装用上において点眼薬を使用する方法」 について解説する。 共催:第 68 回日本臨床眼科学会 / 株式会社日本点眼薬研究所
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