表面プラズモンを利用した 一体集積型半導体光

東京農工大学 新技術説明会 平成26年6月17日 JST (市ヶ谷)
表面プラズモンを利用した
一体集積型半導体光アイソレータ
東京農工大学 大学院工学研究院
先端電気電子部門
准教授 清水大雅
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背景
・長距離光通信
光源:
半導体レーザ(LD)
伝送路:
光ファイバ(1~1000km)
電気信号
光信号
光検出器:
フォトダイオード(PD)
電気信号
光信号
・光インターコネクション
~装置間、集積回路内の電気配線を光配線化
CPU
CPU
RAM
RAM
CPU
CPU
RAM
RAM
集積回路内光配線
ボード間光配線
2
背景
半導体レーザ:干渉しやすいコヒーレント光
光源:
半導体レーザ(LD)
半導体レーザに -12dBの反射戻り光を導入。
光アイソレータ有無による光出力の推移。
光信号:干渉により不安定化
伝送路における反射戻り光
光アイソレータ
無 有 無 有 無
戻り光: -12dB
有 無
伝送路における反射戻り光
光アイソレータ
光通信における誤送信の基
半導体レーザからの光:通過
戻り光:カット
半導体レーザの安定動作に不可欠
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従来技術~実用化されている光アイソレータ
従来の光アイソレータ
・材料 ファラデー回転子:磁性ガーネット(鉄の酸化物、×半導体と相性が悪い)
・構造 自由空間を伝搬 (×レーザの出射光をレンズを使って集光する必要あり)
・性能 ○消光比=前進光と後退光の伝搬損失の差:40-50 dB
・○大きな消光比 (>50 dB)、透明、給電不要、長い実用化の歴史
・価格 $ 10-20 (半導体レーザより高い場合あり。組み立て費用は別)
J. F. Dillon, Jr. “Origin and Uses of the Faraday Rotation in Magnetic Crystals”, J. Appl.
4
Phys. 39, 922 (1968).
従来技術とその問題点
問題点: ・半導体レーザとは材料と素子構造が異なる。
・アクティブアライメント=半導体レーザを光らせながら、レンズで平行ビー
ム化し、フォトダイオードの出力が最大になるように位置を合わせる必要あり。
(海外工場で組み立て)
・結合損失が発生
Active alignment
3. Lens /
aligned
manually
2. Laser
emission
1.Current
injection
Optimized by
PD output
Ferrimagnetic garnet (oxide)
Free space optics
4. Optical isolator
/ aligned manually
LD (semiconductor, index guiding waveguide)
5
5
従来技術とその問題点 / 関連研究
光アイソ
レーション
レーザとの
集積化
偏波依存性
その他
文献
実用化されて
いる光アイソ
レータ
40-50 dB
人手による
組み立て
要偏光子
解決済み
結合損失に
伴う雑音
J. F. Dillon, Jr. J.
Appl. Phys. 39,
922 (1968).
従来の半導体
光アイソレータ
10 dB
容易(レー
ザと同じ導
波路構造)
実証済み
解決可能
要給電、光
増幅に伴う
雑音
H. Shimizu et al.,
IEEE J. Lightwave
Technol. 24, 38,
(2006).
特許第3054707
特許第4807404
プラズモン光ア
イソレータ
20-30 dB
容易(レー
ザと同じ導
波路構造)
解決可能
結合損失を
解決
特許出願中
本研究
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半導体光アイソレータの原理~横磁気カー効果
横磁気カー効果: 伝搬光の磁界ベクトルと強磁性体の磁化が平行
⇒
磁化された強磁性金属と半導体導波路間の反射率:前進光と後退光で異なる。
前進光伝搬損失 < 後退光伝搬損失
⇒半導体光アイソレータ動作
理論提案
M. Takenaka et al., IPRM,289 (1999).
W. Zaets et al., IEEE. Photon. Tech. Lett. 11, 1012-1014 (1999).
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従来技術とその問題点~半導体光アイソレータ
半導体光増幅器導波路+強磁性金属 +横磁気カー効果⇒
・○半導体基板上の光アイソレータ
・前進光伝搬損失 < 後退光伝搬損失
・偏光面の回転はない。○偏光子不要
・性能 消光比 < 10 dB/mm, 要給電(電流注入)
Ti/Au electrode
TiO2/ Fe /Al2O3
p+ InGaAs
Al2O3
p InP
MQW / SCH
Fe
TiO2
n+ InP sub
8
H. Shimizu and Y. Nakano, IEEE J. Lightwave Technol. 24, 38, (2006).
従来技術とその問題点~半導体光アイソレータ
Back
facet
Front
facet
Waveguide optical isolator DFB LD
L = 0.7mm
L = 0.3mm
Waveguide optical isolator DFB LD
w = 1.6m
w = 3m
・○半導体レーザと一体集積化可能。
⇒人手による位置合わせ不要
⇒リソグラフィー工程で位置合わせ、完全なパッシブアライメント
・問題点:消光比10 dBを達成するための素子長(~1 mm) ⇒ 半導体レーザの素子
長(~0.3 mm) 光アイソレータの方が長い
H. Shimizu et al., IEEE Photonics Technol. Lett. 19, 1973 (2007).
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新技術の特徴・従来技術との比較
・従来技術の以下の問題点を解決する
ファラデー回転による光アイソレータ: アクティブアライメントが必要
半導体光アイソレータ:給電が必要、半導体レーザより素子長が長い。
・新技術の特徴
強磁性金属と半導体導波路でプラズモン導波路光アイソレータを構成。
前進光:プラズモンとの結合が弱く、光導波路を透過。
後退光:プラズモンとの結合が強く、大きく減衰。
・強磁性金属と半導体導波路界面に励起されるプラズモン伝搬光:強
磁性金属との相互作用が大: ⇒ 100 dB/mmを超える大きな消光比
の実現。
消光比30dB ⇒ 素子長 0.3mm
半導体レーザ(~0.3mm)と同等の素子長にて実現可能。
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新技術の原理
表面プラズモンを利用した一体集積型半導体光アイソレータ
・半導体光アイソレータにプラズモン導波路を導入
金属と半導体/誘電体の界面に光を導く導波路。
・プラズモン導波路の金属に強磁性金属を使用
⇒前進光と後退光でプラズモンとの結合の大きさが異なる。
(横磁気カー効果+プラズモン光伝搬のカットオフ)
Evanescent coupling
プラズモン導波路
入力導波路
(レーザから光が入射) =光アイソレータ
100nm
SiO2
Si
SiO2
反射戻り光
出力導波路
Co
100nm
φ
Co
φ
前進光 =
後退光 =
Co / SiO2界面のプラズモンとの結合:弱い
Co / SiO2界面のプラズモンとの結合:強い
強磁性金属CoとSi / SiO2光導波路からなるプラズモン導波路光アイソレータの動作
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実施例
光強度分布と伝搬損失、光アイソレーションの計算結果
・各層厚 Co: 100 nm, Si: 57 nm, SiO2: 2 m
・波長1.55 m, TMモード光
x=0における光強度を1として表示。
・光アイソレーション : 0.798 ‐ 0.154 = 0.644 dB/m
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前進光
プラズモンとの
結合:弱
0.154 dB/m
1.0
0.8
0.6
12
10
8
後退光
プラズモンとの
結合:強
0.798 dB/m
6
空気
0.4
0.2
空気
4
2
SiO2
0.0
・2
Si
・1
0
Co
SiO2
1
2
SiO2
Si
SiO2
φ
Si
0
3
・2
・1
0
Co
SiO2
1
x [m]
層方向 x
100nm
SiO2
2
層方向 x
Co
100nm
φ
伝搬方向 z 伝搬方向 z
Co
3
x [m]
設計方針
前進光:
Siコア層を伝搬する光強度に対するCo/SiO2プラズモン導波路に結合される光強度の比>1
後退光:
Siコア層を伝搬する光強度に対するCo/SiO2プラズモン導波路に結合される光強度の比<1
光アイソレータの性能指数 Figure of Merit (FOM)
FOM 
b   f
 b   f  / 2
=後退光と前進光の伝搬損失b, fの差/後退光と前進光の伝搬損失の平均 (最大値は2)
を極大化するような素子構造を実現する
層方向 x
Co
SiO2
Si
SiO2
層方向 x
φ
Co
φ
伝搬方向 z 伝搬方向 z
デバイス構造の最適化
・各層厚 Co: 100 nm, Si: 57 nm, SiO2: 2 m
・波長1.55 m, TMモード光
SiO2層膜厚を変化させたときの光アイソレーションと性能指数
光アイソレーションでマイナスの場合は磁化を反転させることでプラスの光アイソレーションと
する。
想定される用途/業界
半導体レーザが必要とされる用途であれば必要
・光ファイバ通信分野における光信号送信装置用の半導体レーザに集積し
て搭載。
・装置間・装置内・集積回路内の光配線における光信号送信装置用の半導
体レーザに集積して搭載。
・外部磁界が変化すると光が透過/減衰することを利用した磁界センサー。
集積回路内、ボード間光配線
磁界センサー。
CPU
CPU
RAM
RAM
ボード間光配線
CPU
CPU
RAM
RAM
集積回路内光配線
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実用化に向けた課題
・現設計ではTM偏光のみに対して光アイソレータ動作。半導体レーザ
の多くはTEモードで発振。TE偏光に対して動作するように素子構造を
設計する必要あり。
・スライド12枚目のプラズモン光アイソレータを作製、実証する必要あり。
導波路の各層の膜厚を正確に制御して作製する必要あり。
・横モードの制御。今後、時間領域差分(Finite Domain Time Domain, FDTD)法を用いて横方向の光閉じ込めを解析し、素子作製に反映させ
る。
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企業への期待
・スライド12枚目のプラズモン光導波路構造を作製するためのSi on Insulator (SOI)基板の加工(リソグラフィ、エッチング、薄膜の製膜)技術
をもつ企業との共同研究を希望します。
・特にSOI基板上の光導波路、光変調器を開発中の企業との共同研究
を希望します。
本技術に関する知的財産権
発明の名称
出願番号
出願人
発明者
:
:
:
:
光アイソレータ
特許出願中 未公開
国立大学法人東京農工大学
清水 大雅
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お問い合わせ先
東京農工大学
先端産学連携研究推進センター
TEL 042-388-7550
FAX 042-388-7553
e-mail [email protected]