半導体レーザ 2.半導体レーザ 2-1 半導体レーザにおける光の遷移 2-2 半導体レーザの構造と発振原理 2-3 半導体レーザの縦モードと横モード 2-4 半導体レーザの特性 2-5 半導体レーザと自然放出雑音 2-6 複素感受率とαパラメータ 2-7 レート方程式 2-8 光の伝搬方向の定義 2-9 安定性解析と緩和振動 2-10 半導体レーザの変調 2-11 半導体レーザの駆動回路 半導体レーザ 活性層幅 LD ~2~3 µm 活性層厚 ~0.2 µm 光出力 ~300 µm 共振器長 端面発光半導体レーザ 特徴 ・短共振器長 ~100µm ・低端面反射率 ~10% ・高いエネルギー変換効率 ~50 % ・高速直接変調 ~GHz 半導体レーザにおける光の遷移 半導体レーザにおける光の遷移 半導体レーザの構造と発振原理 半導体レーザの発振原理と構造 ダイオードの基本、PN結合 n領域 接合部 p領域 伝導体 電子 レーザ光 荷電子帯 正孔 効率が悪い温室発振ができない ダブルへテロ接合 伝導体 荷電子帯 電子 正孔 キャリア閉じ込め 屈 折 率 分 布 光 強 度 分 布 光閉じ込め GaAs AlGaAs AlGaAs p型クラッド 活性層 n型クラッド これにより温室発振が可能に! pクラッド 活性層 nクラッド 半導体レーザ 半導体レーザの寸法 活性層幅 ~2~3 µm LD 活性層厚 ~0.2 µm 光出力 ~200 µm ~300 µm 共振器長 端面発光半導体レーザ 半導体レーザチップ 5.6 mm 活性層 いろいろな半導体レーザの外観 一般的カンタイプ 高出力温調付モジュール 反射防止用 高出力用バータイプ 通信用ファイバピグティル付 半導体レーザの縦モードと横モード 半導体レーザの縦モード 縦モードがレーザの発振周波数を決める 縦モード周波数 ν m = m c 2ηl c € 2L λ 2 周波数 レーザ共振器とモード ν レーザ媒質の利得分布とモード間隔 半導体レーザの横モード 横モードがレーザ発振の空間パターンを決める レーザ共振器 TEM 00 TEM 01 TEM 10 TEM 02 TEM 20 空間モード TEM 11 実際の半導体レーザでは、スラブ状導波路であるため、TEM01、02、11モードは発振しない 160 半導体レーザの利得 120 半導体レーザの利得は非対称 40 −80 1.424 1.46 [eV] 発振周波数 0 2.5×1018 cm−3 −40 cm 0 1 1.5× −3 0 18 実際のレーザ発振では 温度効果により、電流を 高くすると周波数は 低い方へ移動 Gain [cm−1] 周波数が高い方に利得大 利 80 得 1.50 半導体レーザの特性 自励発振型半導体レーザ(ソニー) AlGaInP系DVD用赤色レーザ 1.0 Intensity P 0.5 GaAs N 0.0 –40 デバイス構造(正面) –20 0 Angle [deg] 20 40 遠視野ビーム像 25 100°C 5.0 4.0 Power [mW] 25°C 70°C 100°C 3.0 2.0 1.0 0.0 0 50 100 Current [mA] 150 200 LI特性(温度依存特性) 650 655 Wavelength [nm] 660 スペクトル(多モード化) 相対雑音(RIN: Relative Intensity Noise) 光通信、光情報処理において使われる共通の雑音指標 DVD応用などでは125dB/Hz以下でなければならない 25 –120 70 °C RIN [dB/Hz] –125 –130 70 °C 60 °C –135 25 °C –140 0.001 0.01 0.1 1 [%] 10 半導体レーザビームの非点収差 上面の電極 (+) p 型クラッド層 0.25 (標準) p 型の活性層と 酸化絶縁層 出力側劈開面 n 型クラッド層 θX ≅ 10° n 型クラッド層 p out θy ≅ 30° 単位:mm p 型クラッド層 底面の電極 (-) LIとVI特性 DVD用赤色半導体レーザ(シャープ) V-I L-I 777 相対強度 相対強度 発振光スペクトル(縦モード) 787 波長 (nm) シングルモード 屈折率導波型 780 nm 797 668 670 波長 672 (nm) マルチモード 利得型導波型 670 nm レーザ発振の電流、温度特性 25 °C λ 6 λ 発振波長 T [°C] 温度による発振波長変化 LI特性 (LT024MDO No.1 at 25.0 ) 18 Optical Output [mW] 16 14 12 10 戻り光があるとき 8 6 戻り光なし 4 2 0 30 35 40 45 50 55 Injection Current [mA] 60 65 光の伝搬と偏光 電場の偏り 磁場の偏り 伝搬方向 偏光特性 光出力 LD 活性層 光出力 偏光0度方向 -90 0 90 偏光角度 [degree] 180 半導体レーザの構造 狭ストライプ半導体レーザ FP、MQW、DFBなど Conduction Band MQW (a) GaAs Eg Quantum Well Layer AlxGa1-xAs Eg Valence Band Conduction Band Fabry-Perotレーザ 活性層の厚み ~µm E1c E2c QD一層 (b) E1hh E2hh E1lh Valence Band Multi-Quantum Well QWレーザ 活性層の一層の厚み µm以下 レーザ出射端正面 バンド構造 DFB(Distributed-Feedback)レーザ DFBレーザは縦単一モード p-Clad B/4 eff DFB Structure Active Layer n-Clad 側面 利得導波路と屈折率導波路 p-Clad p-Electrode p-Electrode Dielectric n-Burying Layer p-Clad Active Layer Active Layer Current n-Clad p-Burying Layer Current n-Electrode (a) 利得導波路型 (b) 屈折率導波路型 n-Clad n-Electrode 半導体レーザと自然放出雑音 半導体レーザと自然放出雑音 レーザ発振では、自然発光が誘導放出の種になる 発振周波数に近い、いろいろな周波数がまざった自然発光 キャリア密度に対する自然発光の割合は10-5程度 すなわち、自然放出雑音係数 β ~10-5 自然放出 キャリア(電子-正孔対)の発生で生じる雑音もある この雑音の影響は、フォトン雑音より一般に小さい 複素感受率とα パラメータ 複素電気感受率とαパラメータ レーザ発振時の媒質の分極 P = χ(ω )ε 0E € χ0はレーザ発振前の感受率 χ =χ0+χlはレーザ発振時の感受率 χ は一般的に複素数 光の伝搬は exp(iηk 0 z) χ は-η (屈折率)に比例 € χの虚部が正であれば、光が増幅される Re[ χl ] α = χlの実部と虚部の比 をアルファパラメータという Im[ χ l ] αパラメータは、レーザの発振線幅に関係する € αパラメータは、ガスレーザなどでは零だが、 半導体レーザでは 2~7 の値を持つ すなわち、半導体レーザでは、 複素感受率の実と虚部が関連を持つ 半導体レーザの位相ダイナミクスに影響 レーザ発振線幅 半導体レーザにおける位相雑音の解析から Rsp (1+ α 2 ) 発振線幅 Δν = 4 πS Rspは自然放出光雑音、Sは平均フォトン数 € Rsp Δν 0 = は通常のレーザにおける発振線幅 4 πS (Schalow-Townes幅) € α~3に対して、半導体レーザの発振線幅は Δν0の10倍 実際には、Rspが他のレーザに比べ大きいので 半導体レーザでは、他のレーザに比べ線幅は100倍以上になる スペクトル特性 ファブリ・ペロ特性 発振線幅 〜10MHz RFスペクトル特性 レート方程式 半導体レーザにおけるレート方程式の導出 電場の方程式 共振器内一往復における利得を計算 ↓ 発振条件 → 一往復の電場 ( E(t) = G1E(t–tin) ) ↓ E(t–tin) = E(t) – tindE(t)/dt = E(t)/G1 から → 電場の方程式 キャリア方程式 (反転分布) キャリア注入と利得に対する現象論的に求められる釣り合い条件 (キャリアに対する量子論的な密度行列からも導出できる) 分極 分極の緩和は早いため電場に比例すると近似, P ∝ E see Ohtsubo, Semiconductor Lasers, 2013, Chap.3 Laser Medium 半導体レーザ発振レート方程式 Eb(z) Ef(z) 光電場 dE(t) 1 = (1− iα )Gn {n(t) − n th }E (t) dt 2 € キャリア密度 dn(t) J n(t) = − − Gn {n(t) − n 0 } | E (t) |2 dt ed τs キャリア密度は、反転分布の意味 € 物質分極方程式は、その時定数が早いため 比例関係として、Eとnの式に含まれる z=0 z=l パラメータ α : 線幅拡張係数 Gn: 利得 nth: しきい値キャリア密度 J : バイアス電流密度 e : 単位電荷 d : 活性層厚 τs: キャリア寿命 n0: 透明キャリア密度 z 光の伝搬方向の定義 光の伝搬方向の数学的定義 z: 伝搬方向, t: 時間 exp{i(kz–ωt)} 位相遅れ (ここでの定義!) exp{i(ωt–kz)} 位相進み 例 € For exp{i(kz − ωt)} → dE 1 = (1− iα )Gn (n − n th )E dt 2 For exp{i(ωt − kz)} → dE 1 = (1+ iα )Gn (n − n th )E dt 2 € € 二つの定義でそれぞれ時間位相項の符号が逆となっているが、 € 観測量についてはどちらも同じ式となる 安定性解析と緩和振動 安定性解析と緩和振動 振幅Aと位相φ にわける、E(t) = A(t)exp{−iφ (t)} レート方程式 dA(t) 1 € = Gn {n(t) − nth }A(t) dt 2 dφ (t) 1 = αG n {n(t) − nth } dt 2 dn(t) J n(t) = − − Gn {n(t) − n0 }A 2 (t) dt ed τs € € € dA dφ dn = = =0 定常解 dt dt dt J nth A = τph ( − ) 、 φs = 0 、 ns = nth ed τs 2 s € 定常解に小さな摂動 x(t) = x s + δx(t) 、 とおき x = A, φ, n dδA(t) 1 = Gn Asδn(t) 2 € dt € € dδφ(t) 1 = αG nδn(t) dt 2 dδn(t) 2A 1 = − s δA(t) − ( + Gn As2 )δn(t) dt τ ph τs € δx(t) = x 0 exp(γt) として、上記微分方程式がゼロでない解を €持つための条件となる特性方程式が導かれる 1 Gn As2 2 γ {γ + ( + Gn As )γ + }=0 τs τ ph € 2 € γ = ΓR + iω R γ を複素数として、 これから € 緩和振動の早さを表す 1 1 2 ΓR = − (Gn As + ) 2 τs 緩和振動の周波数を表す € € ω 1 νR = R = 2π 2π Gn As2 1 − ΓR2 ≈ τ ph 2π Gn As2 τ ph 半導体レーザの変調 ステップ入力時の光応答 ステップ入力 ΓRは減衰の早さの目安 減衰緩和振動 vRは減衰振動の周波数 ステップ応答 (減衰緩和振動が発生) 小信号変調の周波数特性 緩和振動ピーク周波数 変調応答 [dB] 減衰定数 小信号変調特性 変調周波数 [GHz] キャリアの変動が光の変動に追いつかない 直接電流変調 S 変調光出力 Sm 電流変調 t J J Jth 電流変調 Jm t 変調特性 半導体レーザの変調 振幅、位相 J m sin ωt 変調電流を として 光出力の変調は Sm ∝ F1 (ω )J m sin(ωt + θ S ) € θsは位相シフト € ν m = F2 (ω )αJ m sin(ωt + θν ) 位相の変調は θnは位相シフト € F1、F2は周波数依存関数 半導体レーザの駆動回路 電子部品としての半導体レーザ 基本的にダイオード アノードコモン カソードコモン 概観 ペルチェ LDヘッド コリメータ 実際のLDヘッドの例 半導体レーザ用定電流駆動回路 +12V 100 20k 100 10k PD LD 1µ - サージ防止用 ダイオード 200k 1µ + A CA3140 10 1k 1µ 2SC2235 変調入力 20k 5.1 Vout 出力モニタ 半導体レーザ用温度制御回路 +3V +15V 400k Tr1 50k 2k 100k AD581 基準電圧 5k 33p 33p 200k - 33k CP1.4-71-10L ペルチェ素子 250k - 250k + + LM308 LM308 V 100k AD590 温度トランスデューサ Tr3 -15V Tr2 100k Tr1~Tr4 2SD635 - + Tr4 +3V 250k LM308 33p 半導体レーザと 半導体レーザカオス 歴史 1962年 P-N 接合半導体レーザ 国際純正・応用化学連合(IUPAC) 推奨 1995 “Diode Lasers” A solid state laser in which the active medium is the p-n junction between p-type and n-type semiconductor host materials. This term is preferred over the sometimes-used term semiconductor laser. 日本では(JIS), 「レーザ・ダイオード」 Nick Holonyak, Jr. (GE) Holonyak and Bevacqua, APL 1, 1962 最初のPN結合・半導体レーザ The first red diode laser photographed in its own light. The yellow spot is overexposed. N. Holonyak, Jr. and S.F. Bevacqua. “Coherent (visible) light emission from Ga(As1-xpx) junctions,” Appl. Phys. Lett. 1, 82-3 (Dec. 1962). Herbert Kroemer 2000年ノーベル賞 1963年 ダブルヘテロ構造の提案 H. Kroemer, “A proposed class of heterojunction injection lasers,” Proc. IEEE 51, 1782-3 (Dec. 1963). 1970年の技術革新 光ファイバ(Corning Glass) DH レーザダイオード(AT&T) (Izuo Hayashi) Intel 4004 − 4ビットCPU 現象・原理から実用化への道 レーザの原理 1952、54 メーザ 1958、60 レーザ 温室発振 半導体レーザ 半導体レーザ実用化 情報を乗せる 光ファイバの原理 ガラス中の光の伝搬 17C 光ファイバ原理 1958、65 低損失光ファイバ 光ファイバ通信 インターネット 情報社会 情報を伝える 計算機のはじまり 情報理論 1948 ENIAC 1946 半導体 1947 原理 4bit CPU 16bit卓上計算機 情報を作る 1970年 1980年代 2000年 課題1:具体的レーザを例に取り、レーザの共振器構造、 反転分布の作り方(励起の方法)、レーザとしての特徴 (発振波長や構造)、それらの応用分野について調べよ。 平成26年2月4日(第3回特別講義のときに提出)
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