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Title
New genetic biomarkers predicting azathioprine blood concentrations in combination therapy
with 5-aminosalicylic acid
5-aminosalicylic acid 併用における azathioprine 血中濃度を予測する新規 genetic biomarker の
検討
Kazuhiko Uchiyama MD., PhD., Tomohisa Takagi MD., PhD., Yasunori Iwamoto PhD., Norihiko
Kondo PhD., Tetsuya Okayama MD., PhD., Naohisa Yoshida MD., PhD., Kazuhiro Kamada MD.,
PhD., Kazuhiro Katada MD., PhD., Osamu Handa MD., PhD., Takeshi Ishikawa MD., PhD.,
Hiroaki Yasuda MD., PhD., Junichi Sakagami MD., PhD., Hideyuki Konishi MD., PhD., Nobuaki
Yagi MD., PhD., Yuji Naito MD., PhD., Yoshito Itoh MD., PhD.
内山和彦、髙木智久、岩本恭典、近藤則彦、岡山哲也、吉田直久、鎌田和浩、堅田和弘、
半田 修、石川 剛、保田宏明、阪上順一、小西英幸、八木信明、内藤裕二、伊藤義人
PLoS ONE, 2014 in press.
【目的】
近年、潰瘍性大腸炎 (Ulcerative Colitis; UC) やクローン病 (Crohn’s Disease; CD) などの炎
症性腸疾患(inflammatory bowel disease:IBD)に対する薬物治療として azathioprine などの免疫
調節剤が IBD の病勢コントロールにおける中心的な役割を果たすようになってきている。それらの
免疫調節剤は白血球減少など時に重篤な副作用を認めることがあるため、薬剤の血中濃度を定
期的に測定することが必須である。しかし、高用量の 5-ASA(5-aminosalicylic acid)製剤との併用
によって血中濃度が予想以上に上昇したり、あるいは患者によって血中濃度が不安定であったり
など、薬剤のコントロールが困難な例も少なからず認められる。それら薬物の血中濃度を左右する
のは薬物代謝酵素の存在であり、これまでそれらの代謝酵素の遺伝子多型が薬物の血中濃度に
影響を与えることが知られている。しかし、IBD の治療において azathioprine を併用した際の他の薬
物の血中濃度とそれらの薬剤の代謝酵素やその応答性遺伝子の多型および病勢コントロールの
相関に関しての詳細な報告はない。そこで、本研究は IBD 患者における azathioprine の代謝酵素
を含む応答性の遺伝子多型を解析することで薬物の血中濃度との相関を検討し、最終的には遺
伝子多型ならびに併用薬剤から患者個人の免疫調整薬の至適投与量を決定することを主な目的
として検討した。
【方法】
本検討では HapMap 由来ヒトリンパ球細胞 30 株を用いて 5-ASA および azathioprine 刺
激にて発現誘導される遺伝子の EAI
(Expressing Allele Inbalance)を EG(Express Genotyping)
法を用いて測定し、複数の細胞株で SNP(Single Nucleotide Polymorphism:遺伝子多型(一
塩基多型))によって EAI を生じる遺伝子発現を同定した。さらに当院にて azathioprine
投与中の炎症性腸疾患患者の血液をもちいて、同定された遺伝子多型の genotype をそれぞ
れの患者で測定し、azathioprine の代謝産物である血中 6-TGN(6-thioguanine nucleotide)
濃度との相関を検討する。SNP の測定には、末梢静脈血から抽出されたゲノム DNA を用
い、シークエンス法もしくはマスアレイ法により実施した(Figure 1)。
【結果】
HapMap 由来ヒトリンパ球細胞に 5-ASA および azathioprine にて刺激した際に 2 倍以上の
EAI を検出できたプローブ数は全部で 7803 個であった。このうち、3 細胞株以上で共通し
て有意な EAI を検出できたのは 78 であった。そのうち上位 4 つのプローブについて患者血
液から同定した genotype とそれぞれの患者の血中 6-TGN 値との相関を検討した結果、細胞
表面のトランスポーターの一つである SLC38A9 の遺伝子多型の genotype が、azathioprine 投
与時の血中 6-TGN 濃度と非常に強い相関を示すことが分かった。
【考察】
ヒトリンパ球細胞に 5-ASA と azathioprine の刺激によって誘導される SNP を有する遺伝
子の EAI の測定が可能であった。本検討では候補遺伝子として SLC38A9 が同定され、その
genotyping は患者の血中 6-TGN 値と強い相関を示した(Figure 2)。今後、さらなる症例の
蓄積とともに、SLC38A9 の機能解析をおこなうことで、SLC28A9 の azathioprine 投与時の血
中濃度予測ジェネティックバイオマーカーとしての有用性、および炎症性腸疾患患者にお
ける病態への関与が明らかになると考えられる。
Figure 1
Azathioprine + 5-ASA
HapMap
30
(IBD
Extraction of
DNA and RNA
Detection of drug-inducible
EAI (Expressing Allelic
Inbalance)by
ExpressGenotyping (EG)
method
38
)
RNA
DAN
EG
EAI
Identification of clinical
data-related biomarker
Clinical data
AZA dose
5-ASA dose
Concentration of 6-TGN
SNP genotyping data
Figure 2
Results of SLC38A9 with Express Genotyping and clinical data
Genotypes
Genotypes
Genotypes
Genotypes
Correlation analysis
r = 0.72
p-value = 2.86E-06
Correlation analysis
r = 0.66
p-value = 3.64E-05
Correlation analysis
r = 0.71
p-value = 5.39E-06
SNP_A-2185114: rs3761769
SNP_A-1829868: rs16884436
Risk ratios
Risk ratios
SNP_A-8614938: rs7704138
SNP_A-2237603: rs6897117
Risk ratios
Correlation analysis
r = 0.72
p-value = 2.86E-06
SNP_A-4199808: rs16884434
Risk ratios
Risk ratios
Risk ratios
SNP_A-4264897: rs9687838
SNP_A-2275575: rs4865614
SNP_A-2203597: rs3846502
Risk ratios
SNP_A-4243628: rs4242056
SNP_A-4264898: rs2408030
SNP_A-8625068: rs13177722
SNP_A-1853810: rs3846503
SNP_A-2065674: rs13165328
Genotypes
Genotypes
Genotypes
Correlation analysis
r = 0.70
p-value = 9.78E-06
Correlation analysis
r = 0.70
p-value = 9.78E-06
Correlation analysis
r = 0.65
p-value = 5.11E-05