印刷用PDF(2.37MB)

NEUROINSIGHT
PROTÉGÉTM RXテーパードステントの使用経験
医真会八尾総合病院
放射線科・脳血管内治療科 部長
高山 勝年 先生
NEUROINSIGHT
はじめに
わが国でも2008年から頚動脈ステント(CAS)が保険認可された。認可当初は使用できるステントがPrecise(Johnson & Johnson)
ステントだけであったが、以後 Carotid Wallstent Monorail(Boston)も使用できるようになった。2012年より国内初のテーパー構造
のラインナップを有しているステントPROTÉGÉ RX(Covidien)が導入された。当施設では内頚動脈と総頚動脈に径差がある症例で
PROTÉGÉ RX テーパードステントを第一選択としている。
本レポートでは、PROTÉGÉ RX テーパードステントが有用と思われた症例を報告する。
症例 1: 対側内頚動脈閉塞を合併した無症候性左内頚動脈狭窄
PROTÉGÉTM RX テーパードステント、SpiderFXTMを用いた
頚動脈ステント留置術
症例
患者:71歳男性
病変:対側内頚動脈閉塞を合併した無症候性左内頚動脈狭窄
現病歴:糖尿病・陳旧性心筋梗塞・狭心症・慢性心不全・慢性腎不全
周術期抗血栓療法:循環器内科からアスピリン100mg/日、チクロピジン200mg/日、ワーファリン3mg/日の内服を継続。シース挿入後
のACTが460秒以上あり、ヘパリン3000単位のみ静脈内投与。
患者背景
約2年前から左上下肢脱力発作を認め、脳神経外科外来受診。頭部MRIで右内頚動脈閉塞、左内頚動脈高度狭窄が疑われ、脳血管
造影検査施行。左頚動脈起始部にNASCET 80%の高度狭窄が認められた。対側閉塞及び心エコーでEF30%と心機能低下のため
頚動脈内膜剥離術の高リスク群であり、頚動脈ステント留置術の方針となった。
手技
高度狭窄(症例1_Fig.1)であり対側内頚動脈閉塞であったため、プロテクションはSpiderFXを選択した。SilverspeedTM 14を使用し
てRapid Exchangeシステムによりデュアルエンドカテーテルをデリバリーした。高度狭窄病変であったがガイドワイヤーが先行している為、
デュアルエンドカテーテルの通過はスムーズであった。その後ガイドワイヤーを抜去しフィルターを病変遠位部に留置した(症例1_Fig.2)。
血管径は内頚動脈遠位部5.0mm、総頚動脈5.9mmであり、病変が比較的直線的であったため前拡張は行わず、ダイレクトステントで
PROTÉGÉ RXテーパードステント 8-6×40mmを留置した(症例1_Fig.3)。Aviator 4×20mmにて後拡張を施行し
(症例1_Fig.4)、血管
造影では狭窄部が良好に拡張されていることを確認した(症例1_Fig.5)。1年後、頚動脈超音波検査により確認した所、再狭窄は認めら
れずステント内の血流は良好であった(症例1_Fig.6)。
症例1_Fig.1 症例1_Fig.2 左内頚動脈に高度狭窄が
認められた
内頚動脈遠位部に
SpiderFX留置
症例1_Fig.3 PROTÉGÉ RX テーパードステント
(8-6×40mm)誘導
症例1_Fig.4 症例1_Fig.5 後拡張
左総頚動脈造影
症例1_Fig.6 術後1年後に施行された頚動脈超音波検査
使用器材
ガイドワイヤー:
Silverspeed 14(Covidien)
プロテクションデバイス:
SpiderFX 6mm(Covidien)
頚動脈用ステント:
PROTÉGÉ RX 8-6×40mm(Covidien)
後拡張用バルーン:
Aviator 4×20mm(Johnson & Johnson)
PROTÉGÉ RXテーパードステントの使用経験
症例 2: Mo.Ma Ultraプロテクション下で施行したPROTÉGÉ RX
テーパードステントを用いた頚動脈ステント留置術
症例
患者:78歳男性
病変:無症候性右内頚動脈狭窄症
既往症:特に無し
周術期抗血栓療法:頚動脈ステント留置の2 週間前から、アスピリン100mg 、クロピドグレル70mg/日の内服開始。術中はヘパリン
6000単位静脈内投与し、ACTを284秒に調整した。術後2日間、カタクロット160mg/日を投与。
患者背景
無症候性右内頚動脈狭窄症のため外来通院中、4ヶ月後のフォローアップ頚部 MRAで狭窄の進行が疑われた。脳血管造影検査で
右内頚動脈起始部にNASCET 81%の高度狭窄が認められた。病変が高位のためCEAの高リスク群であり頚動脈ステント留置術の方針と
なった。
手技
高度狭窄であり、ソフトプラークが疑われたため、Mo.Ma Ultraを選択しプロテクションを行った(症例2_Fig.1)。血管径は内頚動脈
遠位部5.1mm、総頚動脈7.6mmであった。Makeway 3×40mmにより前拡張後(症例2_Fig.2)、PROTÉGÉ RX テーパードステント 8-6
×40mmを留置した(症例2_Fig.3)。Aviator 4×30mmにて後拡張を施行(症例2_Fig.4)、血管造影では狭窄部が良好に拡張されて
いることを確認した(症例2_Fig.5)。その後、Mo.Ma Ultraを回収し(症例2_Fig.6)手技を終了した。Mo.Ma Ultra回収後もステント
近位部は血管壁に密着していることを確認した(症例2_Fig.7)。術後、軽度の低血圧を認めたため少量の昇圧薬を使用したものの2日
後には中止できた。血管へ過度のストレスが掛かりにくい血管走行に沿った形状であるテーパードステントが有用であったと思われた。
X2 距離:5.13mm
X2
X1
X1 距離:7.59mm
症例2_Fig.1 症例2_Fig.2 右内頚動脈に高度狭窄が
認められた
Mo.Ma Ultraによる
proximal protection下の
前拡張
症例2_Fig.3 PROTÉGÉ RX テーパードステント
(8-6×40mm)誘導
症例2_Fig.4 後拡張
PROTÉGÉ RXテーパードステントの使用経験
症例2_Fig.5 症例2_Fig.6 症例2_Fig.7 Proximal protection
解除直後右総頚動脈造影
Mo.Ma Ultra抜去
Mo.Ma Ultra抜去後、
総頚動脈にステントが
密着していることを確認
使用器材
プロテクションデバイス:
Mo.Ma Ultra(Medtronic)
前拡張用バルーン:
Makeway 3.0mm×40mm(Johnson & Johnson)
頚動脈用ステント:
PROTÉGÉ RX 8-6×40mm(Covidien)
後拡張用バルーン:
Aviator 4mm×30mm(Johnson & Johnson)
考察
通常内頚動脈と総頚動脈の径の差が大きい場合、ステントが浮かないように総頚動脈の内腔径よりもやや大きい径のステントを選
択する。しかし、内頚動脈遠位部や起始部に対して大きい径になるため、特に内頚動脈起始部に存在する頚動脈洞に過度にストレスが
かかり術後の徐脈、低血圧の発生が危惧される。またソフトプラークでは過度の拡張およびストレスはplaque protrusionを誘引する
ことになり、虚血性合併症の原因となる。
PROTÉGÉ RXテーパードステントのようなできるだけ正常血管径に近いステント径を選択することで周術期合併症の軽減に寄与する
のではないかと考えられる。
尚、当院ではテーパードステントを使用する際、基本的にはステントの中央が内頚動脈起始部に位置するように留置している。
また、Mo.Ma Ultraを使用した場合、プロテクション解除後にステントおよび総頚動脈との間に留置されたMo.Ma Ultraを抜去しなけれ
ばならないが、他のステントと比べてPROTÉGÉ RXは抜去時の抵抗感が少ない印象がある。
総括
PROTÉGÉ RX テーパードステントの使用経験について報告した。
血管走行に沿った形状であるテーパードステントは血管へ過度のストレスが掛かりにくく頚動脈洞反射及び合併症軽減の可能性が考え
られる。Mo.Ma Ultra抜去時の抵抗が少なく、
抜去後のステント近位部密着状態も良好であった。内頚動脈と総頚動脈に径差がある症例
ではPROTÉGÉ RX テーパードステントが有用であると考える。
COVIDIEN、COVIDIENロゴマーク及び"positive results for life"はCovidien AGの商標です。
TMを付記した商標はCovidien companyの商標です。
その他、掲載されている社名又は製品名は、各社の商標又は登録商標です。
@2014 Covidien.
mt-ni-pskt
(c1)1411.1000.col
お問い合わせ先
NV & EV 事業部
本 社
〒158-8615 東京都世田谷区用賀4-10-2
TEL : 0120-998-971 FAX : 03-5717-0525