酸化・還元法を用いた 金属表面への微細構造作製による 輻射熱吸収材料の創製 田村 直也 Tanaka Lab. 大阪大学 工学部 応用理工学科 マテリアル生産科学科目 マテリアル科学コース 背景 エネルギー資源の枯渇 再生可能エネルギーの利用が注目されている 代表例 半導体 原理 地上での太陽光スペクトル 太陽電池の感知領域 e- バンド ギャップ UV, VIS × e- e- 価電子帯 電磁波の種類 小 エネルギー 大 UV 見えない VIS UV e- 赤外線 見えない 赤外線 2000 1000 0 0 太陽光発電では VIS 赤外線 Intensity [W/ m2μm ] 伝導帯 太陽光発電 0.5 2.0 1.5 2.5 Wavelength [μm] 3.0 太陽光の約半分を占める赤外線領域の光を有効利用できていない TPV (Thermo PhotoVoltaic:熱光起電力 )発電 放射面 吸収面 吸収したエネルギーを 波長変換して放出 全波長域の電磁波を できる限り多く吸収 先行研究例 Yugami et al. : Appl. Phys. Lett. 2003 レーザーによる 周期加工 太陽電池 Yang, Wenming et al. : Energy Conversion and Management. 2014 変換前 赤外線 UV VIS 赤外線 Intensity UV VIS Intensity TPV発電 イメージ図 変換後 Wavelength [μm] Wavelength [μm] 赤外線領域の光 を有効利用可能 TPVを用いた製鉄所の未利用熱の利用 本研究では 太陽光は熱源として不安定 製鉄所の未利用熱に注目 夜間、雨天時など 年中、天候、昼夜を問わず鉄を生産 熱源に製鉄所の輻射熱 金属固体素子 INPUT OUTPUT 太陽電池 JFEスチール http://www.jfe-steel.co.jp/works/east/ keihin/process04.html 吸収面 輻射光の吸収量増加が課題 材料には TPV発電 吸収面に用いる 放射面 先行研究を用いる ことを想定 製鋼工程の輻射熱に耐えうる高融点金属Moを選択 高い光吸収率を持つMo系材料作製を試みる 目的 表面構造を変化させて Mo光吸収率を向上させる必要有り 一般に金属は光を反射 酸化・還元法 本研究室の研究結果 Porous Metal Metal 酸化 A. Absorbance of Cu [%] Cu基板表面の微細孔構造 M.Suzuki, T. Yamamoto et al. : Materials Transactions 自発的、簡易的かつ広範囲に 微細構造形成 還元 100 80 酸化・還元Cu 鏡面Cu 60 40 20 0 300 600 900 12001500180021002400 Wavelength [nm] 城谷勇介 大阪大学工学研究科 修論 鏡面Cuに比べて光吸収率向上 目的 酸化・還元法によって高融点金属Moに 表面微細構造を形成させ、光吸収率を向上させる Mo 酸化還元実験方法 酸化 Arガス 1073K 30分 (80% Ar, 20%O2) Mo線 Ar-O2またはH2ガス 還元 Mo基板 873K 60分 (100% H2) ヒーター 表面状態観察 SEM, XRD 排ガス 光吸収率測定 紫外可視光近赤外分光光度計 石英管 酸化還元炉 概略図 各Mo試料の表面状態 酸化.1073K 30分 酸化.1073K 30分 還元.873K 60分 表 面 S E M 画 像 3~10μmの棒状組織 結晶粒に針状組織存在 酸化物存在 金属のみ存在 ー X R D パ タ ン 各Mo試料の光吸収率測定結果 酸化.1073K 30分 還元.873K 60分 酸化.673K 30分 酸化.1073K 30分 酸化.1073K 30分 還元.873K 60分 鏡面 鏡面状態に比べて酸化・還元Moの光吸収率は最大7倍向上 再酸化Moの光吸収率は最大9倍向上 TPV発電 実験方法 TPV発電実験 暗室にて測定 冷却水シンク 放射温度計 太陽電池 雰囲気: 真空 アルミナ管 石英ガラス管 Mo基板 Mo箔 黒鉛 高周波炉 太陽電池 鏡面 TPV発電実験 概略図 Mo基板 ① 黒鉛を1343Kに昇温 鏡面 ② 放射温度計を用いてMo温度計測 ③ 300秒間、起電力測定 or 黒鉛 酸化・還元 or 再酸化 TPV発電によって得られた結果 Mo基板表面温度 (K) 黒鉛 1343K 試料名 鏡面研磨Mo 酸化・還元Mo 再酸化Mo 温度K 1053 1233 1287 180 234 鏡面Moとの温度差 酸化・還元処理を施したMo試料は鏡面Moよりも表面温度が約200K高い 黒鉛1343K 酸化・還元Moからは鏡面状態よりも最大1.5倍高い起電力を得られた エネルギー試算 本研究結果と先行研究結果を用いて TPV発電により得られる電力を計算 製鉄所の未利用熱を熱源 転炉 連続鋳造 JFEスチール http://www.jfe-steel.co.jp/works/east/keihin/process04.html 金属固体素子 太陽電池 ① 熱源からの輻射熱を計算 ② 金属Moの吸収率(本研究結果 80%)・ 放射率を用いて基板の温度を算出 ③ 先行研究結果を用いて太陽電池から取り出せる電気エネルギーを計算 熱源の温度 (K) 1773(溶鉄の温度) 1273(連続鋳造付近) Mo基板の温度 (K) 1470 1187 電気エネルギー (W/m2) 450 120 太陽光発電は100(W/m2) 太陽光発電の4.5倍 結言 酸化・還元処理したMoは微細構造を形成し、鏡面Moに 比べて光吸収率が大幅に向上した。 金属固体素子 太陽電池 TPV発電固体素子の吸収面として用いると、 鏡面Moよりも高い表面温度を示した。 同時に、より高い起電力が得られた。 酸化・還元処理の有効性 熱源を製鉄所に未利用熱と仮定してTPV発電エネルギー試算を 行った結果 、太陽光発電以上の電力が得られる試算結果を得た。 製鉄所の未利用熱利用への可能性
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