講義予定 - 美添泰人のホームページ

2014 年 9 月 3 日
美添 泰人
2014 年度 第 2 学期
ECO216 コンピュータによる統計分析
講義予定
月日
話 題
9/ 9
講義の紹介,基礎知識の確認,記述統計(度数分布,ヒストグラム)
9/16
記述統計(位置とちらばりの尺度,箱ヒゲ図)
30
10/ 7
記述統計(散布図,相関,回帰)
確率変数と確率分布,確率変数の和(期待値と分散)
21
大数の法則,二項分布と応用
28
中心極限定理,正規分布,推定(点推定)
11
Excel/HW(1,2)
Excel, R 入門/HW(3)
R:散布図,回帰直線/HW(4)
記述統計(重回帰),事象・命題と確率
14
11/ 4
Computer/HW 等
区間推定(平均,比率),仮説検定の考え方
仮説検定(応用,区間推定との関係),
確率/Quiz(1),HW(5)
simulation
simulation/HW(6)
QQ plot など/Quiz(2)
R によるデータ分析
Quiz(3)
教室 : H-170, I-104
教科書 : 中村・新家・美添・豊田『統計入門』東大出版会.
(参考書は講義用 Web サイトに提示)
成績評価 : 成績は教室での小テスト (Quiz) と宿題 (HW) によって判定する(期末試験は実施しない).
講義用 Website : http://www.yoshizoe-stat.jp/
E-mail: yasuto [email protected]
科目概要 Description (講義の依頼状に記された表現をわずかに修正した)
統計学の基礎は社会科学における数量分析のための基本的な知識であり,この講義は経済統計
や計量経済学を履修する学生のための予備的科目である.最近のグラフ機能を中心とするコン
ピュータの発達により,現代的な統計分析はコンピュータに大きく依存するようになった.講
義では,できるかぎり現実的な統計データを題材として統計学の基礎的な話題を扱う.具体的
には,グラフによる統計分析,確率の入門と初等的応用,区間推定・仮説検定などの統計的推
論を,講義およびコンピュータ課題を通じて学習する.
The statistical method is the most fundamental tool of quantitative analysis in the area of
Social Sciences. This course is a preliminary course for students considering to study Economic
Statistics and Econometrics. As a result of recent development of computer systems and
graphical procedures, modern statistical analysis depends heavily on computer software. Using
real examples, the lecture covers basic topics of statistics including graphical presentation of
data, introductory probability theory and its applications, and statistical inference, namely,
interval estimation and testing hypotheses. There will be some home work assignments that
reuqire considerable use of computers.
2014 年 9 月 3 日
美添 泰人
「コンピュータによる統計分析」履修上の注意事項
この講義では「統計学の理論」はほとんど扱いません.対象とする内容は「統計的なものの見方・考え
方」と「簡単なデータの統計分析」です.コンピュータは思考の代用品ではなく,補助するものです.
高等学校卒業程度の数学的理解は前提として講義を進めます.大学の講義としては,それ以上水準を下げ
ることはできません.大学で学ぶ水準の基礎的な数学(解析,代数)を身に着けていれば,さらに理解は深
まりますが,数学さえできれば統計学は簡単というものでもありません.統計学は数学とは違って,データ
の発生メカニズムを考えながら,現実的な問題解決の基礎を与えるものです.そのためにさまざまな事例を
通じて学習を深めます.
次の例を考えて下さい.統計検定に出題された問題の一部です.
ある大学では、新入生全員に対し 4 月の入学時に Listening (L) と Reading (R) からなる英語
の試験を受験させている。英語の S 講師はこの大学で文学部のクラスと経済学部のクラスを 1
つずつ受け持っている。この大学の英語クラスのクラスわけは学籍番号順である。S 講師が自分
の受け持っているクラスの学生で英語の試験の点数を調査したところ、以下の結果を得た。こ
のことから大学全体で、文学部の学生のほうが経済学部の学生よりも英語の試験の点数の平均
値が高いと考えてよいか。
学生数
平均
標準偏差
文学部クラス
32
520.5
140.0
経済学部クラス
30
490.5
130.0
この大学では、1 年間の授業終了時に再度英語の試験を実施している。S 講師の担当クラスで
各学生の 2 度の英語の試験の点数を調べたところ、入学時に実施した英語の試験の点数とくら
べて、1 年間の授業終了時に実施した 2 度目の英語の試験の点数のほうが平均 15 点上がってい
た。英語の試験の点数が上がったのは S 講師の授業の効果であると主張してよいか。
例年,受講者の準備状況に大きな違いがあり,可能な限り個別指導を実施しているとはいえ,限度があり
ます.この講義で想定している数学的知識の水準を知るには,指定している教科書の II 章を眺めてくださ
い.そこで扱っている記号などに大きな抵抗がなければ,その後の講義内容も消化できるはずです.一方
で,この部分で困難を感じる場合は,良い成績の取得は困難と考えて下さい.
教科書の内容は講義で紹介しますが,事前に予習することで講義の効果が高まります.特に III 章,IV
章の内容は確率を使わないデータ分析の基礎ですから,十分に身に着ける必要があります.
最後に一言.
「コンピュータによる」統計分析と言っても,ある程度の数学の知識は必要です.また,コ
ンピュータがあれば統計学は不要だという主張を聞くことがありますが,コンピュータの出力結果を正しく
読み取る力は統計学を学ぶことによって身に着くものですし,そもそも,コンピュータにどのような処理を
させることが適切であるかを判断するのは(今のところ)人間です.一部の人たちの言う「易しい統計学」
は見かけだけで,多くの場合は著者自身が手法を理解していません.教え方がうまい教師とは「易しく教え
る」のではなく,
「分かりやすく正確に教える」人たちです.この講義ではどうでしょうか.受講してから
判断して下さい.
2014 年 9 月 3 日
美添 泰人
統計入門,R,経済統計関連の参考文献など
以下,講義に関連する参考文献を,簡単なコメントとともに記しておきます.
[1] 日本統計学会(編)『データの分析』東京図書,2012
日本統計学会「統計検定」のために作成され,大学生として必須の知識が収録されています.ただし,
学習指導要領の改正で,今後は高校生に求められる水準の知識となります.
[2] 日本統計学会(編)『統計学基礎』東京図書,2012
「統計検定」の教材です.4 章と 5 章の内容を理解することが目標です.
[3] 森棟公夫他『統計学』 (New Liberal Arts Selection) 有斐閣,2008
記述統計の解説は少ないものの, Excel を利用する計算例が全編に多く含まれています.最後の二つの
章では,やや高度な話題として時系列分析と多変量解析の基礎が扱われています.
[4] ガットマン・ウィルクス『工科系のための統計概論』培風館, 1968
古くなりましたが,中級の教科書として,今でも安心して推薦できる本です.1–10 章(4 章と 8 章を除
く)および 15 章が経済統計分析に直接利用される手法です.
[5] Morris H. DeGroot Probability and Statistics, (2nd ed.), Addison-Wesley, 1986
入門段階から中級まで,これほどしっかり書かれた本は日本語では存在しません.学部上級の知識を確
実に身につけたい人にはお勧めの,中身の濃い本です.
[6] スネデカー・コクラン『統計的方法』岩波書店(G. W. Snedecor and W. G. Cochran, Statistical Methods,
3rd ed., Iowa State University Press の翻訳)
歴史的な名著で,入門段階から大学院初級までの範囲を扱っています.記述が正確であるとともに,豊
富な実例によって手法の意味がよく理解できます.
[7] M. J. Crawley (野間口・菊池訳)『統計学:R を用いた入門書』共立出版,2008
原著は 2005 年で,統計データの構造と対応させた R の基本的な解説の後,統計的分析の手法ごとに R
の例を示しています.初心者にもわかりやすく書かれていますが,上級者が学ぶべき内容も少なくあり
ません.実際のデータ分析にも参考になる R のプログラム例が収録されています.
[8] ムーア・マッケイブ(麻生・南條訳)『実データで学ぶ,使うための統計入門』日本評論社,2008
原著の部分訳ですが,記述統計の手法の意味が,統計データの読み方とともに解説されています.形式
的な推定・検定を学ぶ前に理解すべき基礎の修得に役立つ,優れた著書です.
[9] 橋本紀子・渡辺美智子・櫻井尚子 編著『Excel で始める経済統計データの分析』日本統計協会,2003
多くの興味深い題材を扱っています.この内容を R で実行してみれば,よい練習になるでしょう.
[10] 総務省統計局のホームページ
このページから国内・海外の主要統計データを入手できますし,必要な情報を含む統計を探すことが出
来ます.また主要統計を収録した『日本統計年鑑』も利用可能です.
[11] 廣松 毅他『経済統計』新世社, 2006
基本的な経済統計の解説ですが,農業,金融・保険などの産業に関する統計,財政・金融,貿易・経済
協力に関する統計なども扱っています.
[12] 中村・新家・美添・豊田『経済統計入門(第 2 版)』東京大学出版会, 1992
[13] 美添泰人・松原望『統計応用の百科事典』丸善,2011
[14] 統計解析システム R のサイト.RjpWiki: http://www.okada.jp.org/RWiki/