高温酸化物超伝導体とその応用:笛木和雄

説
解
2
.
高温酸化物超伝導体とその応用
東京大学工学部笛木和雄
はじめに
超伝導は低温において物質の電気抵抗がゼロとなる現象である
O
抵抗のある常伝導状態から,抵抗
イロの超伝導状態に転移する温度は臨界温度 (Tc左記す)と呼ばれるが,従来見出された超伝導体で
は Tcが低く,最高といわれた Nb3Geでも 2 6Kに過ぎなかった。従って超伝導を利用するとすればタ
沸 点 4.2Kの液体ヘリウムを寒剤とせねばならず
3
コスト面からも資源面からも問題があった。
しかし昨年秋から Tcの高い超伝導体が 酸化物系で次々と見出された。
p
二二
(Lal-XSrx)2CU04系が Tc
40K , YBa2CU3U7-y系が Tc二 90Kで 遂に液体窒素(沸点 77K )温度の超伝導体が発見され
9
た。ここで超伝導の利用可能性は一挙に拡大し大学
乗り出して来ている。その進歩は目ざましぐ
9
研究所はもとより,企業も一斉に研究開発に
まさに日進月歩である O 研究開発の現状を概観する。
9
2
. 従来の超伝導物賞
超伝導が最初に発見されたのは水銀についてであるが,ヲ│続いて単体金属について測定が行なわれ
Nb,
V,
Ta,
Pbなどが比較的高い臨界温度 Tcを持つことが見出された
O
9
ついで"
T
cの高い Nbの合金が研
Nb3Sn,
究され, Nb-Ti合金, Nb-Sn合金が見出され,金属間化合物として, A-15型構造の Nb3Ge,
Nb3Aeなど,また B - 1型構造の Nbや V の炭化物タ窒化物が高い Tc を持つ超伝導体であることが明
らかにされた。
セラミック超伝導体左しては,上記の炭化物 z 窒化物以外に酸化物,カルコゲン化物,開化物の研
究が行なわれ,有機物も取り上げられるよろになった。表 1に従来見出された主な超伝導体とその Tc
をまとめて示す。また 5 図 Iの下方の斜の点線が従来型超伝導体の Tcの推移であ::50 いかに Tcの上昇
が遅かったかがわかる。
超伝導状態、を出現させるためには Tc以下に冷却する必要がある。寒剤としては液体ヘリウム(沸点
2K ),液体窒素(沸点 7 7K ), ドライアイス(昇華温度 197K),などがあるが,用いられ
o度以上高い Tcが望まれる。従来の超伝導物質の
る超伝導材料は,寒剤の沸点または昇華温度ょっ
最高の TcはNb3Geの 23.6K であるから,液体ヘリウムが唯一の寒剤をいうこ土になる
アメリカ
がある
O
p
カナダの天然カ、、スから回収して得られ
p
O
ヘリウムは
わが国では産出しなし '
0 換言すれば資源的な制約
また値段も液化して 2000円 /g程度と高価である。加えて,低温になればなる程冷却効率
が悪くなって,設備も大型化する O こうした理由から液体ヘリウムを寒剤に用いる超伝導技術は,そ
の普及に多くの問題を内蔵し,高 Tcの超伝導体の出現がまたれていた。
←
3-
表 1
従 来 の 超 伝 導 体 の Tc
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3.72
NbC
Ti
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9
TaC
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Zr
0.55
WC
10.0
LiTi己04
Nb-Ti
bcc
9.5
Nb-Zr
bcc
.0
11
Nb:
lS
n
A-15型
13.7
スピネノレ
Ba(Bi.Pb)03
13
18.0
PbMo6SS
シェフ'レ J
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NbJGa
2O
.2
NbB
担
B- 1J
8.3
NbJGe
22.5
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プラスター
8.7
15
,
(98K)
YBa2Cu30y
9
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90
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図 1
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超 電 導 体 の Tcの推移
-4-
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I
. 2}
3 新超伝導材料
圃
3.1
La-Ba-Cu-O系酸化物超伝導体の発見
高温超伝導体の出現は強く望まれていたにも拘わらず,
1973年に Nb3Geの 2 :
3
.6K が見出されて
以来,これを上まわる Tcを有する超伝導体は見出されなかった。研究がなかったわけではない。高 Tc
の新物質発見左いうニュースが流れたこともあったが,再現性が悪く再確認ができなかったり,実験
ーターの解釈の誤りであったりしていずれも幻に終った。更に BCS 理論より Tc 二 30~50 K が限
界という話もあって,高 Tcイヒについては悲観的な見方する人も多く,それが新物質探索への意欲を減
退させていたことも否定できない。
Z.Phys.誌の 1986年 4月号に IBMのスイスチューリッヒ研究所からの一篇の論文が掲載され
た。著者は Bednorz と MUllerI)である。彼らはベロブスカイト組成の La-Ba-Cu-0系の酸化物をつ
くり,その抵抗率を測定して図 2の結果を得タ
3 0 K付近からの抵抗率の減少は超伝導によるもので
0.010
Ba--La-Cu-O系
.
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(Ba~ La)Cu03 ・ム .
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図 2
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4U
50
60
L.
a-Ba-Cu-O系の低温における抵抗率 (B叫 o
r
z
& Mul
1e
r)
1
あろうと指摘し,高温超伝導の可能性を示唆した。この論文はほとんど他の注意をひかなかった。一
つには抵抗率ゼロと見なされる Tcが 10K位と低く,またゼロとならない実験結果も多い上,超伝導
の確認に不可欠左いわれるマイスナー効果の実験がなされていなかったからである O
東大工学部の内田研,田中研,笛木研の数名がこの論文の内容を再確認する目的で実験に入った o
1986年 11月の上旬のことである。彼等は磁化率の測定により,超伝導に基因すると思われるシグナ
←
5
←
ルを見出し, シグナルの強くなる方向に製造条件を変えて,
X 線回折の結果と合わせて,
2)
図 3の K2
NiF4型 構 造 の (La,
Ba)
z
Cu04が 超 伝 導 物 質 で あ る こ と を 見 出 し た 。 図 4に抵抗率の測定結果を示す。
ー
§
銅
ランタン
ミリウム
J
O 酸素
図3
K2NiF4 構 造
T
(Lal-XBaX)2CU04
(EuqmlDH) 時 記 揺
1
5
四ロロロロロロ
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J竺山・......
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ロ
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ロ
(La.Ba)Cu031f
の還元処理
2
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K2 N2F4 単一相
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門ロロロロ
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0
温 度 (K )
図 4
(Lal-xBax)2Cu04 の 抵 抗 率 )
-6-
5
0
これからわかるように開始温度 33K,ゼロ抵抗温度 23Kは,これまでの最高であった。この発見
は田中教授より発表され,朝日新聞に掲載された口この報はいち早く海外に報ぜられ,たまたま同日
日本を発ってアメリカに向った北沢助教授は
9
現地の学会で多くの質問を受け,特別に機会を与えら
れてその内容を明らかにした。これを契機としてアメリカを始め各国での新超伝導物質の研究が一斉
に開始された。
3.2
(Lal-xSrX)ZCU04系及び (Lal-xCax)ZCU04系
内田
田中研では La-Ba-Cu-O系酸化物の物性研究を開始したが,筆者の研究室では KzNiF4型
p
(La, M )z CU04-~ の M に Sr , Ca の入った酸
構造の他の超伝導物質の探索を開始した。その結果,
化物も超伝導体であるこ土を見出した。)図 5にその結果を示す。 M 二 Caの系は Tcは 20K位と低か
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ロ (Lal-XCax)
oCL(La1-xSrx)2Cu04
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30
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二
(Lal-xSrx)
zC山
(Lal-xCax)
zC仙 の 抵 抗 率 ;
Srの 系 は ( La O• ¥
)
25 Sr0,
07
5 )zCU04-~の時最高の開始温度 37 K ,ゼロ抵抗温度
3 3K を示した。この Tc特にゼロ抵抗温度はこれまでの最高であり,筆者より新開発表を行なった。
12月 23日のこ左であった。一週間遅れてアメリカのベル研究所より同じ物質について発表があっ
た
。
図 3 のように K2NiF4 型の (Lal-xSrx)2Cu04-~ は正方晶 (x の小さい時は斜方品)で c Cu06J
の八面体がコーナーを共有する型で二次元的に配列して層を形成し,その層間に La叶, SrZ十のイオ
と 02ーの形成する平面が主要な導電面である口
ンが存在して,層同士を結びつけている。 Cu2ト
K2NiF4型 の 酸 化 物 AzB04はベロブスカイト型酸化物 AB03 (図 6)と構造的に類縁関係にあるので
ベロブスカイト型酸化物に特徴的な幾つかの性質を持ち合わせている。
その第一は A サイトイオンを大幅に置換固溶できることで
十で置換
La2Cu04の La叶の一部を Sr2
十が +2の電荷
十で一部置換すると十 3価の La3
zCU04-'-Sで、ある o La3
卜を SrZ
したものが (Lal-xSrx)
をもっアルカリ士類金属イオンで、置換されるので,十の電荷が一つ減少することになる。この電荷補
-7-
磁束量子
午斗r
p
t
パ
i ¥ ¥ h
Q
プイ
ι斗ク
I
b
ぺ
;~
~
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図 6 磁束量子と超伝導渦流
償は, Cu2十が Cu3
o+2e'の反応で酸素イオ巧~fLVõ が生成するかによって
十になるか ,0-2→地 02+V
行なわれる。
Sr2
+置 換 で は (Lal-xSrx)2Cu04一宮の X
二
0
.
0
7
5の時は, Cu3+の生成で電荷補償治前わ
CO,
Tc の 関 係
れている o (Lal-XSrx)2Cu04は 正 方 晶 が 超 伝 導 を 示 す 。 図 7に は こ の 系 の X と lα0 ,
を示した。
ぺ¥。国
伺
¥
。
U
o
0.05
0.1
0.15
0.2
x
図7
5)
(Lal-XSr
:x)2Cu04- C
'
の ao,
CO,
Tc
-8-
超伝導には磁性イオンの存在が悪い影響を与えるといわれる。その理由は 9 超伝導に重要な役割を
果すクーパ一対が, 電子と磁性イオンの相互作用によって壊わされるからである O 酸化物超伝導体の
場合についてこれを明かにする目的で,
Lae
:←の一部を磁性を有する他の希土類金属イオンで置換し,
Tcがいかに変化するかを調べた O その結果が図 8らある O
(LaO.85LnO.05 S
r
O
.
1)
zCu04-8
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図8
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(LaO.85LnO.05 S
r
O
.
Ih Cu04一宮のランタニド元素の種類と Tcの関係 6
)
これをみると第一次近似では Tcは希土類イオンの種類によって影響を受けないといえる。このこと
十と 02←のつくる導電面にはほとんど影響がないことを意味
は A サイトに磁性イオンがあっても Cu2
する。
しかし第二次近似では, Tcは磁性イオンのトータルスピン S とよい相関があり, Sが大きい程
Tcは {
s
よくなるといえる O
次は導電の主要な役割を果す金属イオン C U2-1 を他の 3d遵移金属イオンで置換した場合 Tcがどうな
7)
るかである。その結表を表 2にまとめて示す。 Bサイトイオンの置換は一般にかなり大きな影響を与え
表2
(LaO.9 Sr0
.
1
)2 CuI'-y My04 の臨界温度(開始温度 )
(
K
r
ivrneo--n
M一
一
TCMFCNZ
y
0.01
34
16
27
35
34
33
34
30
X ,検出されず
ヲー
0.05
31
0.1
×
×
×
×
31
23
24
28
×
×
×
×
る と い え る 。 し か も い ず れ も Tcを 低 下 さ せ る 方 向 で あ り , 高 Tc化 と い う 観 点 か ら は 逆 の 結 果 と な っ
。
た
8
)
凶 9に , 臨 界 磁 場 Hcz(T)の測定値の一例を示す。 Hcz(O)が 6 0 T位 に な る こ と が わ か る が , こ れ は
そ れ ま で 最 高 と い わ れ て い た PbMo6S
8の Hczに匹敵するか,それ以上である。
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C
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6
図 9
LaL85Sro.15Cu04の Hcz
3.3 YBaZCU3Oy 及び REBazCU3Oy 系
(Lal-XSrX)ZCu04系は 4 0K級 で あ っ た が
p
9
リ
本 年 2 月米圃のヒストン大学'とアラパマ大学ょ
に
90k級の酸化物超伝導体発見の発表があっ
た。その酸化物は YBazCU3Oyであることがやが
て明らかとなり,結晶構造もいくつかの機関で独立
に決定された O 図 10のように結晶は斜方晶(ノン
C u•
ストイキオメトリにより正方品)で,図 16のベ
の
スカイトの Aサイトを Y とBaが (Ba-Y-BaJ
.
c
順で規則的に占有する O 正規のベロブスカイトの
場 合 y の値は 9であるが, YBazCu30yの y の実
・
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e.
・
o : .:~. @ :
o:
l
.
υ
:
t
=
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T
.
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.
9
3
6
.
1 で9 酸素が欠損している O 若し
測値は 6
y
ム
c
ロブスカイト構造を基準にして説明すると,ベロプ
7 とすれば,欠損数は 2になる。 Y と同じ平
凶
O(占 有 期 金 目
l
.
O
(占 有 刺
10 YBazCu3Oyの 構 造
1
0
)
1
1
)
ハU
而内の酸素がすべて欠損することで欠損数は l となる。また Cu 1の面内にある O が半分欠損するとそ
の欠損数は 1左なる口
yが更に小さくなった時の欠損箇所 α軸と平行で Cu1を含んだ列の酸素が抜ける O
尊電面は Y の両側の CulIの面か, あるいは Cu1と0の一次元鎖であるかはよくわかっていない。
0
9
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一
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上
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2
)
図 11 Y Ba2CU30693ー守ぴフノンスト/キオメトリ g
Tcに最も影響が大きいのは,
yの値である
y
二
6.93-C' で宮は図 11のように, 酸素分圧と温
度によってきまり, 酸素分圧一定ならば 9 温度の高い程 yの値は小さい。空気中で一定温度に保持し
て平衡に達せしめたあとクエンチして, 抵抗率を測定した結果を図 12に示す。 これをみると,高温
1
1
0
一一一一一一
{三
マ- O F }
Hu-三
一O
8
6
時持
M制
4
2
(K )
図 12 一定温度でアニール後グエンチしたサンプルの抵抗率
で処理し,
500 o
cで処理したものが,抵抗率も低く, Tcも最も高
y の値の小さい試料程 Tcは低く,
十を他の希土類金属イオンで置換したものについて抵抗率を測定した結果は図 1
3
い
。 YBa2CuOyの y3
に示した通りで, 希土類金属イオンの種類によらず, Tcはほとんど 93Kと一定である。 このことは
REBazCU307-x
""'---Nd
3口
目
。
(EυdE)時目指割
2000
100目
目
。
I
•
1
0
0
図 13
300
日
日
REBazCU307-Xの 抵 抗 率 )
B サイトの Cu2
+
+イオンを Ni2
A サイトイオンは導電にほとんど影響を与えないことを意味する
イオンで置換した試料の抵抗率を図 14に示す口 Niz
十の量の増加とともに Tcは下がる傾向にある
J
マ
‘
,
,
(EυqE)
匂J s h E - -
,
ミ
4.
nU
ahEEE'EBEEvaJ azaa'EEBEBEE---E
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‘
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口
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1
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温度
図
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K- a O
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4
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戸
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・-沼
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1dFL
(gudg)時端組収岡、
•
O
200
250
T (K)
1
4)
14 YBa2CU3-yNiy07-Sの 抵 抗 率 '
図 15は YBazCU3Oyの Hczの値である
O
これより, H
c
z
(
O
)は 100T をはるかに超えるものもみ
られる口
cが小さいのではないか
また表 3は臨界電流密度の値をまとめたものである O 酸化物超伝導体は J
土の観測が初期にはなされていたが,単結晶薄膜 lでは 106A /
c
1
l
Iを上まわることが最近見出された。
-12
1
0
0
80
60
ト'
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4
u
主~tO
BYCO=#=I--!
b
B
Y
C
O
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O,~
O
一-L一一回ム
20
0
0
60
J~O
1
0
0
1
5
)
図 15
表3
Y BazCU3uyの Hcz
Y-Ba系酸化物超伝・導体の臨界電流密度
!ギム!日温屈をu
=(A/c
r
A
)
i線 材 l
1
塊状
ぢ
機
東
芝
101
1
塊状リ
発表年月
関
1
1
1
1
112 三 菱 電 機
1
1
ATTベ ル 研
1
1
塊状
77
1
,100
米
塊状
15
0.000
米ウエスチング
ノ、
多結晶薄膜
77
42
1987年 4月
105
5x106
I
ウ
ス
1987年 3月
B
恥f
1987年 5月
1
実用材料となるためには 1
06A/
令d以 上 の 臨 界 電 流 密 度 が 必 要 と い わ れ て い る が , 多 結 晶 に つ い て 今 後
この値にどの程度近ずくか大いに注目したい。
4
. 超伝導の応用
超伝噂は何よりもゼロ抵抗によって特徴付けられる。ゼロ抵抗であるから,大電流を流すことが可
能となる。大電流をコイルに流すと強磁場が得られ,また電流の流れているコイルの両端を短絡する
L 永久電流左なって減衰するこ左はない。これらの一連の特徴を組み合わせて使うことにより新ら
しい電力系統,輸送機関,測定機器をつくることができる。
先ずゼロ抵抗を利用したものに超伝尊送電がある O これまでの送電には抵抗のある電線が用いられ
19A
q
U
ていたためジュール熱の発生は避けられない。従ってジュール熱の発生をできるだけ抑える目的で,
大電力の遠距離輸送には超高圧送電が採用されている。しかし超伝導を用いればジュール熱の発生はな
いので,大電流を流すことも可能となる O 同 じ よ う に 発 電 機 , 変 圧 器 , モ ー タ ー , 調 相 機 な ど の 電 気
機器類も超伝導化により省エネルギー型にすることができる。
次は超伝導コイル,超伝導磁石である O コイルのつくる磁場の強さは,単位長さ当りの捲線数と線
に流す電流の大きさに比例する。超伝導線を用いると大電流を流すことが可能なので強磁場が得られ
る。更に超伝導コイルに電流を流した後,超伝導スイッチで両端を短絡すれば
y
コイルの中を永久電
流が流れ,磁場の強さは安定化する O 大型の強力磁石の利用分野としては,核融合炉, M HD発電加
速器などが挙げられる。小型の強力磁石の応用としては研究用磁石, NMRや ESRなどの磁気共鳴
装 置 , ま た NMRを利用した診断装置 NMR-CT,電子顕微鏡などが挙げられる。
永久電流 Iの流れているコイルのインダクタンスを L とすると,このコイル中に Eニ(弘)Li2のエ
ネルギーが磁気エネルギーの形で蓄えられる O 電気エネルギーは輸送,利用,環境性にすぐれたエネ
ルギーであるが貯蔵性がないのが欠点とされていた。現在では貯蔵用に揚水発電が用いられ 9 近 い 将
来 二 次 電 池 に よ る 貯 蔵 も 検 討 さ れ て い る 。 コ イ ル に よ る 電 力 貯 蔵 は 電 磁 気 系 と し て の 貯 蔵 で 効 率 90
%以上とすぐれ,また電力系統の安定化にも役立つといった長所がある O
超伝導を利用した輸送機関として陸上では磁気浮上車があり,海上では電磁推進船がある O 磁 気 浮
上車は,
レール側にコイルを並べ,車上に超伝導磁石をおき,超伝導磁石がコイル上を通り過ぎる時
コイル内に発生した磁束と超伝導磁石の磁束問の反壌によって車体を浮かせ,
リニアモータによって
推 進 を 行 な う も の で , 時 速 50O~6 00 k
mを出すことができる O 電磁推進船は船底に取り付けたダク
トに直角な方向から超伝導磁石で磁場をかけ,夕、、クト,磁場のいずれにも直角な方向に二つの電極を
取り付け,直流を流す。海水中には食塩などの塩類が溶解しているので導電性を有しているので,電
流が流れる O フレミングの左手の法則によって,
ダクトの中を海水が動き,この反動を利用して船が推進す
るO
以 上 は 電 力 ・ エ ネ ル ギ ー へ の 超 伝 導 の 応 用 で あ る が 9 エレクトロニグス関係への応用もいろいろあ
る。集積回路の集積化が進むt:,素子からの発熱を取り去ることが大きな問題となる。その配線に超
伝導体を用いる左発熱量が減り,高集積化が可能となる。また超伝導の薄膜にレーザ一光を照射する
と,照射された部分が常伝導化する。従って照射しない場合とした場合とで抵抗が変り,これを利用
するとスイッチング素子ができる口
10A程 度 の 薄 膜 を 挟 ん で 両 側 に 超 伝 導 体 を つ け る と , 超 伝 導 間 に ト ン ネ ル 効 果 に よ っ て 電 流 が 流
れる。この現象をジョセフソン効果といい,ジョセフソン効果を利用した素子をジョセフソン素子と
いう
O
ジョセフソン素子はスイッチング作用を有する他,徴弱な磁場に感ずるセンサーともなるので,
広い応用がある O ス イ ッ チ ン グ 素 子 と し て 利 用 す る と , ス イ ッ チ ン グ 速 度 が 半 導 体 を 利 用 し た も の の
100倍 程 度 大 き い の で , 高 速 コ ン ビ ュ ー タ を つ く る こ と が で き る O また磁気センサーとしては,新
-14-
超電導薄膜(S2)
サブストレート
図 16
トンネ/レ型ジ冨セブソン接合
g
j,脳磁波)へ応用できる。その
超伝導物質の探索,地磁気や岩石磁気の測定 9 生体磁気測定(心磁 I
但,電圧標準,赤外線センサーなど広い用途が考えられる。
5 おわりに
圃
高温超伝導体は 9 0 K級のものまで見出された。 Tcの上昇は目を見張るばかりに急であったが,何
しろ本格的に開始されたのは昨年暮からで,まだ半年しか経っていない。今後更に Tcの高いものが見
比される可能性は大いにあり,いまから取りかかっても決して遅くはない。推進するには化学の;音、欲
ある方の積極的な参加を望みたい。
文 献
1) J.G.Bednorz andK.Muller: Z.Phys. B64(1986)189
2) S.Uchida,H.Takagi,K.Kitazawa and S.Tanaka
J
a
p
.J
.Appl. p
h
y
s
. 26 (1986) L1
3) H.Takagi,S.Uchida,K.Kitazawa and S.Tanaka
J
p
n
.,
J Appl. p
h
y
s
. 26 (1987) L123
.Yasuda,N.Sugii,百.Takagi,S.Uchida,K.Fueki and
4) K.Kishio,K.Kitazawa,S.Kanbe,I
S.Tan
心
王a,Chem. Lett.1987
429
5) S.Kanbe,K.Kishio,K.Kitazawa,K.Fueki,H.Takagi and S.Tanaka,Chem. Lett 1987 547
6) K.Kishio,K.Kitazawa,T.Hasegawa,M.Aoki,K.Fuel
王 a
nd S.Tan
心
王a,J
p
n
.
J
.ApplPhys 26
(1987) L391
7) T.Hasegawa,K.Kishio,M.Aoki,N.Oolba,K.Kitazawa,K.Fueki,S.Uchida and S.Tan
討
王a,
﹁
﹁U
lpn.J.ApplPhys 26 (1987) 337
8)
S.Uchida,H.T油 a
g
i,S.Tanaka,K.Nakao,N.Miura,K.Kishio,K.K
itazawa and K.Fueki,
Jpn.
J.
Appl
.p
h
y
s
. 26 (1987) L196
9)
M.K.Wu, 1.R.As
huburn,C.J.
Torng,P.H.Hor,R.L.地 n
g
.L.Gao,Z.J• Huang,Y.Q•W時,
C.W.Chu.Phys.Rev.Lett. 58 (1987)
10)
908
F.Izumi.H.Asano,T.Ishigaki,A.Ono,祖d F.P.Okamura J
p
n
.,
J Appl p
h
y
s
. 26 (
1987)
ノ
転 5
L611
)
11
F.lzumi,H.Asano and T.I
s
h
i
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a
k
i,Jpn.J.Appl. p
h
y
s
. 26 (1987) 五 5
12)
KoKishio,J.Shimoyama.T.Hasegawa,K.Kitazawa and K.Fueki, Jpn.J.Appl. p
h
y
s
.に
L617
投稿中
13)
J
.M.Tarascon,W.R.McKinnon,L.H.Greene,G.W.Hull and E.M.Uogel,投稿中
14)
Y.Maeno,T.Nojima,Y.Aoki,M.Kato,K.Hoshino,A.Minami and T.Fujita,Jpn. J.
App1
.phys. 26 (1987)
15)
L774
c
h
i,A.Yamagishi,K.Sugiyama and M.Date,Jpn.J.
Appl.P
h
y
s
. 26
K.Okuda,S.N噌 u
(1987)
L822
-16-