称賛・叱責と学業成績およびその原因帰属の関係‡ 玉 瀬 耕 治榊 (心理学教室) 親の称賛・叱責が子どもに影響することは、多くの人が一般に認めていることである。しかし、 称賛・叱責の実態がどのようはものであり、その影響がどの程度のものであるかはそれほど明ら かではなく、それを明確にしていくことは、必ずしも容易ではない。本研究は、親の称賛・叱責 類型を分類し、子どもの発達に伴って称賛・叱責がどのように変化していくかを量的に捉え、さ らに、称賛・叱責類型と学業成績との関係、および学業成績の原因帰属との関係を明らかにしよ うとするものである。これらの個々の問題については、われわれの先の研究である程度明らかに されている。しかし、この種の研究では、単に1回の調査を行っただけで一般的な結論を導き出 すことは差し控えるべきである。くり返し同様の研究を行って、より確実な資料を得た上で、妥 当な結論を導くことが望ましいと考えられる。 ここで、先の研究において明らかにされた点を簡単に述べておくことにする。称賛・叱責の量 的測定は、玉瀬・藤田(1982)によって行われている。彼らは日常的な称賛・叱責の場面に関す る16の質問項目を作成し、小学2年、4年、および6年生を用いて調査した。その結果、称賛得 点は低学年で高く、学年とともに下降する傾向があり、叱責得点は低学年で低く、学年とともに 上昇する傾向がみられた。この研究では、称賛・叱責類型ごとの得点の学年による変化は調べら れていないので、本研究では主にこの点をさらに検討す乱 次に、称賛・叱責類型と学業成績との関係については、玉瀬(1983)によって検討されている。 彼は親の3つの称賛・叱責類型、すなわち、よくほめよく叱るRW型、よくほめるがあまり叱ら ないR N型、およびよく叱るがあまりほめないNW型ごとに学期末の学業成績(4教科の平均) を調べ、学年による違いを比較した。その結果、全体的にあまり大きな差はみられないが、2年 生ではRW群の成績がもっともよく、6年生ではNW群の成績がよい傾向がみられた。本研究は、 先の研究で用いられている調査対象とほぼ同じ対象者(昭和56年実施の2年生と4年生)につい て、2年後に調査したことになる。そこで類型の変動や類型別学業成績の差の変化についても注 目してみたい。 称賛・叱責と学業成績の原因帰属との関係については、玉瀬・杉村・藤田(1983)の報告があ る。彼らは小学4年生と6年生を用い、母親の称賛・叱責類型を調べるとともに、1学期の成績 (国語、算数、理科、社会)について、..よかった”か“わるかった”かを判断させ、その原因 ‡ The Re1ationships among Parents’Praise−Reproof,Chi1dren’s Academic Achieve− ment,and Causa1Attribution 榊 Koji Tamase(Department of Psycho1ogy,Nara University of Education,Nara) 93一 帰属を4つの選択肢(能力、努力、テストの難易、先生の教え方)の中から選ばせた。その結果、 成績がよかった場合は4教科とも“がんばったから”(努力)とする者がもっとも多く、RW群 と.R N群でその傾向が強かった。一方、わるかった場合は、RW群とR N群では、“テストがむ ずかしかったから”(テスト)とする者が多く、NW群では“なまけたから”(努力)とする者 が多かった。本研究では、1学期の成績の判断とともに、2学期の成績について、予想を立てさ せ、それらと称賛・叱責類型との関係についても検討する。 このように、先の研究では親の称賛・叱責類型との関係で別々に調べられてきた3つの問題 (称賛・叱責の量的変化、学業成績、および学業成績の原因帰属との関係)を、本研究では同一 対象者について調べ、それら相互の関連性を検討する。 方 調査対象 法 奈良県磯城郡の小学校ユ校の2年、4年、および6年生の男女児童421名が用 いられた。表ユは、学年別、男女別に人数の内容を示したものである。 表1 調査対象 2 年 4 年 6 年 男 児 72 77 74 女 児 合 計 67 139 69 62 ユ46 調査内容 ω 称賛・叱責の調査 ユ36 合 計 223 198 421 両親の称賛・叱責の類型を調べるために、次の質問と選択 肢を印刷して配布し、もっともあてはまるものに丸印をつけさせた。 あなたのお母(父)さんは、次のうちどれですか。 ユ.よくほめよくしかる 2.よくほめるがあまりしからない 3.よくしかるがあまりほめない 4.ほめもしかりもしない また、称賛・叱責の具体的内容を調べるために、玉瀬・藤田(ユ982)で用いられた16の質問項 目を用いた。このうち8項目は称賛に関する項目である。たとえば、 “あなたは、学校で良い成 績をとってきたとき、お母(父)さんにほめられることがありますか。”と尋ね、よくある(2点)、 ときどきある(1点)、あまりない(0点)の中から1つを選ばせた。他の8項目は叱責に関す るものである。たとえば、 ’‘あなたは、家の中でけんかをしたりあばれたりしたとき、お母(父) さんにしかられることがありますか。”と尋ね、上と同様に3つの選択肢の中から1つを選ばせ た。これらの質問項目は口頭で読み上げ、回答の選択肢は印刷して配布した。称賛得点(R)、 叱責得点(W)は、ともにO点から16点の範囲で分布する。 (2〕原因帰属の調査 1学期の国語の成績について“よかった”、‘‘わるかった”のいずれか で答えさせ、よかった場合は、①頭がいいから(能力)、②がんばったから(努力)、③テスト 一94 がやさしかったから(テスト)、および④先生の教え方がうまかったから(先生)の中から1つ を選ばせた。わるかった場合は、①頭がわるいから(能力)、②なまけたから(努ヵ)、③テス トがむずかしかったから(テスト)、④先生の教え方がへただったから(先生)の中からユつを 選ばせた。 次に、2学期の成績について“よくなると思う”、“わるくなると思う”のいずれかの予想を 立てさせ、さらに①かばり、②すこしのいずれかを選ばせた。算数についても、国語の場合と同 様に、成績の判断、その原因帰属、および予想を行わせた。これらの質問項目および回答の選択 肢はいずれも印刷して配布した。 13〕学業成績 学級担任の評価による1学期末の国語と算数の成績を借用した。 称賛・叱責および原因帰属に関する調査は、昭和58年10月に筆者と心理学教室の教官および学 生によって行われた。 結果と 考察 称賛・叱責1の類型と構点 表2は、各学年ごとに両親の称賛・叱責類型別出現頻数(%)を 示したものであり、図1は、学年をこみにした全体の値について図示したものである。全体の傾 向は、従来得られている結果(玉瀬・藤田、1982)とよく一致している。学年による違いに注目 してみると、母親の場合は、学年とともにR N型が減少してR W型が増えている。父親の場合は、 表2 親の称賛・叱責類型別頻数(%) RW 2 年 NW NN 母43,220.9 父39,637,4 31.7 4.3 1 8.0 5.0 父38.63712 1 9,3 母 4 年 RN 56,2 1 9.9 22,6 1 39 ユ.4 4.8 24.1 5.3 29,4 1 0.3 146 1 45 母60.9 9.8 父41.9ユ8.4 RW:よくほめよく叱る RN:よくほめるが叱らない 6 年 人数 ユ39 工 33 ユ 36 NW:よく叱るがほめない NN ほめも吃りもしない loo(%) 母 父 RW NW R N 図1 親の称賛・叱責類型(学年こみ) 一95■ 学年とともにR N群が減少してNW群が増えている。 ここで、同じようにRW型であっても、低学年の子どもが、よくほめよく叱られると感じてい るのと、高学年の子どもがそう感じているのとでは、内容的に違いがあると思われる。それを量 的1と捉えたものが表3である。以下の分析では、母親の類型にもとづいて群わけを行っている。 これは、 11〕従来の研究で、父親の場合も全体としてかなりよく似た結果が得られていること、 および12〕小学校段階では、母親との関係を検討することがより重要であると考えられることなど の理由による。 表3は、母親の3つの類型によって分類されたRW群、R N群、およびNW群について、称賛 得点(R)、叱責得点(W)、および称賛・叱責得点(R−W)の平均値と標準偏差をそれぞれ 学年ごとに示したものである。 表3 母親の類型別称賛・叱責得点 2年 群 R W群 得 点 6年 4年 S D S D 〃 〃 R9.64,210.73.8 W6.33.06.53.7 R−W 3.3 5.3 4.2 5.5 −0.2 R R N群 M 10.7 316 10.7 3.8 8.3 3,4 8.5 3.3 4.0 8.2 3.3 W4.84.44.43.34.6 5.2 6.3 5.3 R7.13.85.5 R−W 5.9 NW群 S D 3.4 3.6 W7.53,77.ユ R−W −O.4 5.6 −1.6 3.7 4.0 2.9 8.7 4.3 −4.7 5.9 3.2 2.4 4.ユ これらの値について、R,W,R−Wの各得点ごとに、類型131x学年(3〕の分散分析を行っ た。R得点に関しては、類型の主効果がF(2/368)=37.84、学年の主効果がF(2/368)= ユ0.58でそれぞれ有意であったが、交互作用はF(4/368)=ユ.09で有意ではなかった(〃Se =13.6ユ)。類型の主効果は、RW群とR N群の問には差がなく、RW群とNW群の間(ε=8,46)、 およびRN群とNW群の間(‘芒7.70)にそれぞれ差があることを示している。また、学年の主 効果は、2年と4年の間には差がなく、4年と6年の間(‘=4.96)、および2年と6年の間 (t=3.74)にそれぞれ差があることを示している。 W得点に関しては、類型の主効果がF(2/368)=21.03、学年の主効果がF(2/368)=3.71 でそれぞれ有意であったが、交互作用はF(4/368)=・1.09で有意ではなかった(MSe=l1.55)。 類型の主効果は、RW群とNW群の問には差がなく、RW群とR N群の間(ε=5.22)、および RN群とNW群の間(t=5.70)にそれぞれ差があることを示している。 R−W得点に関しては、類型の主効果がF(2/368)=51.24、学年の主効果がF(2/368) 一g6一 =13・60でそれぞれ有意であったが、交互作用はF<王で有意ではなかった(MSe=24195)。 類型の主効果は、R N群とR W群の間(t=4.67)、およびR W群とN W群の間(ε=7.20) にそれぞれ差があることを示している。また、学年の主効果は、2年と4年の間には差がなく、 4年と6年の間(t=6.98)、および2年と6年の間(t=5.60)にそれぞれ差があることを示 している。図2は、R−W得点1どついて各群の値を図示したものである。 __’’C」 〇一一’一 O R N群 3 2 称 賛 叱 責 ( 冗 2年 4年 6年 o R W群 :… 』 一! 得 一2 I3 一4 \。、w群 一6 図2 母親の類型別称賛・叱責得点 以上の結果は、次のようにまとめることができる。R得点に関しては、R N群とRW群がNW 郡よりも高く、全体的に4年から6年にかけて減少する。W得点に関しては、NW群とR W群が R N郡よりも高く、全体的に4年から6年にかけて増加する。R−W得点に関しては、R N群が もっとも高く、NW群がもっとも低く、RW群はその中問に位置する。そして全体的に4年から 6・年にかけて減少す乱 これらの結果は、単純に4つの選択肢の中から1つを選ばせることによって決定された類型が、 得点化された称賛・叱責の量における違いを十分反映しうるものであることを示している。また、 低学年におけるRW型はRをより多く含んでおり、高学年におけるRW型は、RとWの量がほぼ 同じであることを示唆している。 一97一 称賛・叱責と学業成績 表4は、母親の称賛・叱責類型別に、各学年における男女別児童の 学業成績(国語と算数)の平均値および標準偏差を示したものである。また、図3および図4は、 男女をこみにした値について図示したものである。表4の値について、それぞれの教科ごとに、 類型13〕×性12〕の分散分析を行った。 表4 母親の称賛・叱責類型別学業成績 RW M 男児 2年 女児 全体 男児 4年 全体 語 6年 M S D M ユ6,4 77,5 11,0 76,5 74,5 1 6.0 82,2 7,8 75,5 74.3 79.9 15,5 73,1 83,6 10,9 73,2 13,6 13,7 72.8 81.2 75.3 ユ1,9 73.6 1ユ.0 女児 79.1 1ユ.8 65.0 26,0 男児 2年 73,8 女児 全体 78,9 女児 全体 数 6年 77,8 1 7,6 78.9 14,5 1 ユ.5 72.5 男児 4年 71.ユ 84,1 73,2 79.8 7015 19,4 10.9 76,3 74,3 1 211 15,3 1 8.1 75.6 77.2 ユ7,9 76,8 10,6 73,7 79,8 17,0 12.2 77.7 75.5 81.7 13,4 76.8 78.4 1 3,1 14,4 8.1 78,5 78.8 17.4 ユ3,1 731ユ 78.2 S D 76.1 男児 全体 算 8D 74.2 71,8 女児 NW R N 男児 78.6 13,6 73,3 13,8 71.8 ユ7,9 女児 73.6 16.3 65.5 29,8 76,2 16.8 全体 76.2 70.5 74.2 国語の場合、2年では類型の主効果がF(2/l14)=ユ.22、性の主効果および交互作用はと もにF<一1で、いずれも有意ではなかった(M8e=229.09)。4年では、性の圭効果がF (1/131)=6.83で有意であったが、類型の主効果はF(2/131)=1.19、交互作用はF (2/131)=177で有意ではなかった(〃8e=169.88)。6年では、類型の主効果がF(2/ 工14)=3.17で有意であったが、性の主効果は、F<1、交互作用はF(2/ユ14)=ユ.89で有 意ではなかった(MSe=158.76)。類型の主効果は、RW群とR N群の間(ド2.05)に差が あることを示している。 算数の場合、2年生では、類型の主効果がF(2/l14)業1.08、性の主効果および交互作用 はともにF<1で、いずれも有意ではなかった(MSe=285.22)。4年では、類型の主効果が 一98一 F(2/131)=1.80、性の主効果はF<1、交互作用はF(2/131)=ユ.02でいずれも有 意ではなかった(MSe=169.50)。6年では、類型の主効果、性の主効果、および交互作用 はいずれもF<1で有意ではなかった。 RN 学80 業 成788 NW 績 6 の76 RW 平 4 均74 値 72 2 70O n 2年 4年 6年 図3 母親の称賛・叱責類型別学業成績(国語) 学800 RN 業 成788 績 NW の766 平 均74 一4 値 72 RW I2 n 2年 4年 6年 図4 母親の称賛・叱責類型別学業成績(算数) 一99一 図3と図4を比較してみると、各群の成績1順位はよく一致している。そして低学年ではR N群 がもっとも高く、高学年ではRW群とNW群の成績が高くなっている。しかし、上に分析したよ うに、統計的にはこれらの群差はほとんど有意にはならなかった。したがって、母親の称賛・叱 責と学業成績の間に、積極的な関係を認めることは、現段階ではさし控えるべきであろう。 ちなみに、転校生などによる若干の変動はあるが、玉瀬(1983)における図3の2年が本研究 の4年に、同4年が6年にほぼ対応している。これらを比べてみると、4年と6年の間では同じ 成績順位を示しているが、2年と4年では違いがみられる。そこで、群構成の変動を当該類型か ら他の類型に移動したかどうかで関連のある再検査を行って調べたところ、RW群の2年と4 年の問でのみπ211ト4.26の有意な変動がみられた。これは、2年ではRW型であった母親が、 4年になると他の類型(特にNW)に移行している可能性を示唆するものである。 称資・叱責と学業成積の自己判断 表5は、国語および算数について、工学期の成績が“よ かった”か’‘わるかったか”、また2学期の成績が.’よくなる’’か“わるくなる”かを答えさせ た結果を、母親の称賛・叱責類型別にまとめたものである。国語について、実数をもとにして4 ×3のκ2検査を行ったところ、川6〕=ユ7.07で有意であった。そこで、2群ずつの比較を試み たところ、R W群とR N群の間には差がなく(κ2:5.83,〃=3)、R N群とNW群の間(γ2 =13.95,d∫=3)、およびRW群とNW群の間(Z2=8.64,〃=3)にそれぞれ差がみら れた。表5から、NW群では、RW群、R N群に比べて“よかった一よくなる”とする者が少な く、“わるかった一わるくなる”とする者が多い傾向が読みとれる。 表5 母親の称賛・叱責類型別学業成績の判断と予想(%) 1学期 国 語 よかった わるかった 算 数 RW 2学期 NW R N よくなる 41.6 わるくなる 13,O 9..5 よくなる 32.4 1 g.1 34,7 わるくなる 13.O 15,9 60,3 22.5 50.0 よくなる 57.9 よかった わるくなる 9.7 よくなる 2ユ.8 わるかった わるくなる 1O.6 55,5 9,5 26.5 1 6.3 10,2 ユ 5.9 i 8,4 14,3 21.4 さらに、2学期の予想をこみにした1学期の自己判断について調べたところ、州2ト7,96で 有意であった。これは、図5に示されているように、RW群とR N群では、“よかった”とする者 がより多く、NW群では“わるかった”とする者がより多いことを示している。1学期の判断を こみにした2学期の予想については、γ212〕=5.9ユで有意ではなかった。 算数についても同様の分析を試みたところ、同じ傾向を示していることが明らかとなった。 一100一 □よかった 80 ■わるかった 70 60 50 40 30 20 10 RW R N NW 図5 母親の類型別学業成績(国語)の自己判断 称賛・叱責1と学業成績の原因帰属 表6は、国語および算数について、ユ学期の成績が“よ かった”または“わるかった”と答えた者の原因帰属要因について、母親の称賛・叱責類型別に 示したものである。全体の傾向として、両教科とも、“よかった”場合は,努力(がんばったから) に帰属する者がもっとも多く、“わるかった”場合は、努力(なまけたから)とテスト(むずかし かったから)とする者が多いといえる。この傾向は、前回(玉瀬・杉村・藤田、1983)の結果と 同様である。 表6 母親の称賛・叱責類型別原因帰属(%) 帰属要因 能 力 RW 0 わるかった よかった R N NW R W R N NW 12,2 2.4 10,2 9,1 25,0 50,0 40,9 44,6 国 発 カ 67.8 53.7 5711 語 テスト 9,3 2,4 14,3 33.7 45.5 30.4 先 生 22.9 31.7 26.2 6.1 4.5 0 能 力 3.4 13,6 6,8 7,1 ユ5.8 23,1 算 発 カ 5916 50.0 62,7 50,0 3116 48,7 数 テスト 14.4 9,1 10,2 42.9 47,4 23.1 先 生 2216 20.3 0 5.3 5.1 27.3 一101一 類型による違いを問題にするさい、4つの帰属要因を独立にすると実数が少なくなりすぎるの で、能力と努力を内的帰属要因、テストと先生を外的帰属要因としてまとめ、各教科の“よかっ た”、‘‘わるかった”別に2×3の再検定を行った。その結果、国語の‘‘よかった”では“λ212〕 =0.94、 “わるかった”では 212〕=2.86、算数の“よかった”ではλ2t2トO.80、.‘わるかっ た”ではγ212〕=4.ユ7で、いずれも有意にはならなかった。しかし、表6から、両教科とも、N W群は“わるかった”場合に、内的要因に帰属する傾向がやや高いと言えるかもしれない。 要 約 小学校2年、4年、および6年生を対象にして、母親の称賛・叱責類型によって群分けを行い、 称賛・叱責得点、学業成績(国語と算数)、学業成績の自己判断、およびその原因帰属について 検討した。その結果、称賛・叱責得点は、R N群がもっとも高く、R W群がまん中で、NW群が もっとも低いことが確められた。学業成績は、低学年ではR N群が高く、高学年になるとRW群 とNW群が高くなる傾向がみられたが、統計的には有意ではなかった。学業成績の自己判断に関 しては、RW群とR N群では1学期の成績が“よかった”とする者がより多く、NW群では‘‘わ るかった”とする者がより多かった。学業成績の原因帰属に関しては、全体の傾向として、国語、 算数とも“よかった”場合は努力(がんばったから)に帰属する者が多く、 “わるかった”場合 は、努力(なまけたから)とテスト(むずかしかったから)に帰属する者が多かった。しかし、 称賛・叱責の類型による群差はみられなかった。 引 用文献 玉瀬耕治 1983 称賛・叱責と知能および学業成績の関係 奈良教育大学教育研究所紀要 ユ9, 125−129. 玉瀬耕治・藤田正 1982 称賛・叱責と学習適応性 奈良=教育大学教育研究所紀要18,143−152. 玉瀬耕治・杉村健・藤田正 1983 称賛・叱責と学業成績の帰属における地域差奈良教育大 学教育研究所紀要 ユ9,153−16エ. <付記>本研究を行うにあたり、川西町立結崎ノ」・学校のご協力を得ました。資料の整理にあた っては、心理学専攻生、野村美樹、中村仁美、松本匡代、田中久美の皆さんのご協力を得ました。 記して厚く感謝の意を表します。 一102一
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