Internet of Thingsによる新ビジネスの可能性

ITロードマップセミナー SPRING 2014
Internet of Thingsによる新ビジネスの可能性
~モノのインターネットは、企業に何をもたらすか~
2014年5月27日
野村総合研究所
IT基盤イノベーション事業本部
基盤ソリューション企画部
主任研究員 武居 輝好
本日の講演内容
1.IoTを巡る状況
2.先行ユーザー企業の取り組み
3.IoTのシステム構築上の課題
4.モノのネットワーク化によるビジネス拡大に向けて
Copyright(C) 2014 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.
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1.IoTを巡る状況
2.先行ユーザー企業の取り組み
3.IoTのシステム構築上の課題
4.モノのネットワーク化によるビジネス拡大に向けて
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IoT(Internet of Things)とは?
IoTとは、モノがネットワークに接続されることで価値あるサービスを生み出すための
考え方。
類似の概念であるM2M(Machine to Machine)は、モノとモノの間に人が介在しない
場合に限定しているが、IoTは端末から収集したデータを人が活用する場合や人が
ネットワーク接続されたモノをコントロールする場合なども含む。
端末
ネットワーク
クラウド
機械
自動販売機
端末からの
データ収集
二次元バーコード
マーケティング分析
オペレーション改善
RFID
端末の
コントロール
各種センサ
コネクテッドカー
カーナビ
データ活用
ウェアラブル
デバイス
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新サービス/新機能
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背景:センサや通信モジュールの小型化とネットワークの多様化により、
モノのネットワークの対象範囲が拡大
これまでモノのネットワーク化の対象は、センサや通信モジュールの物理的制約や
コストが影響しにくい高価な機器や大型の機器(産業機械など)が中心。
センサの設置場所やコスト面での制約が緩和されてきたことで、モノのネットワーク
は、小型の機器にまで対象範囲を拡大。
ネットワーク化により、データの収集や
コントロールが可能に
センサや通信モジュールの小型化
・通信モジュールやセンサ1個当たり
のコスト低下
・センサの設置場所の制限の緩和
あらゆるモノにセンサ設置
何が?
(モノ)
いつ?
(時間)
どこで?
(位置)
ネットワークの多様化
・ BLEや3G/LTE、Wifiなど多様なネット
ワークが実装可能に
あらゆるモノがネットワーク化
(注)BLE:Bluetooth LE
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どうする?
(制御)
どうなった?
(状態)
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小型の機器におけるモノのネットワーク化例
歯ブラシやコンタクトレンズなど、従来ネットワーク化が難しかった機器からデータを
収集し、活用することが可能になってきた。
⇒Ciscoは、2020年に約500億のモノがネットワーク化されると予測している。
※Cisco ホワイトペーパー「Embracing the Internet of Everything To Capture Your Share of $14.4 Trillion」 より
コンタクト型デバイス:Smart Contact Lens
・コンタクトレンズの中に、センサとプロセッサ、通信
モジュールを格納し、涙に含まれるグルコースの量を
監視。
(出所)http://googleblog.blogspot.jp/2014/01/introducing-our-smartcontact-lens.html
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ネットワーク歯ブラシ:Kolibree
・歯ブラシに埋め込まれた加速度計、ジャイロ、デジタル
コンパスなどの計測データをBluetooth経由でスマホ
に転送
(出所)http://www.kolibree.com/
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モノのネットワークが生み出す新たなマーケットに多くのIT企業が参入
多数のモノがネットワーク化されることで発生する膨大なネットワークトラフィックに
多くのIT企業が期待。
Microsoft:
Oracle:
モノに対するWindowsのシェア
拡大
組み込み向けJava
ミドルウェア市場の拡大
端末
ネットワーク
OS、ミドルウェア
クラウド
Cisco
デバイスからの
データ収集
Microsoft
二次元バーコード
クラウド
Amazon Web
Services
RFID
各種センサ 半導体
ARM
Intel
Qualcomm
Freescale
ウェアラブル
コネクテッドカー
デバイス
カーナビ
チップ市場の拡大
ネットワーク機器
機械
Oracle
自販機
ネットワーク機器の高付加
価値化による新たな市場
の創出
デバイスの
ネットワーク回線
遠隔制御
Vodafone
AT&T
KDDI
活用
アプリケーション
IBM
マーケティング分析
GE
オペレーション改善
分析SW
SAS
Salesforce
NTTドコモ
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アプリケーション
Microsoft
softbank
安定した収益源
の獲得
産業分野市場拡大
公益分野市場拡大
自社クラウドへのモノのデータ
の取り込み
Oracle
Microsoft
新サービス/新機能
SAS:
BI以外の収益源の確保
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モノから得られるデータを押さえることで、サービスビジネス拡大を図る
Microsoft
 Microsoftは、2014年4月開催の開発者向けイベント「Build2014」にて、「Windows for IoT」と
画面サイズ9インチ未満の端末に対する「Windows」、「Windows Phone OS」の無償化を発表。
 あわせて、IoTからのデータを収集し、クラウド上で管理する「Microsoft Azure Intelligent Systems
Service(ISS)」の限定パブリックプレビューを公開。
⇒モノから得られるデータを押さえることで、データ管理や分析などのサービスビジネスの拡大を図る。
分析やデータ
管理等のサービス
ビジネスの拡大
MicrosoftのIoTへの取り組みの全体像
Windows for IoTの無償化
Azure Intelligent
Systems Service
Windows、Windows Phone OS
の無償化
iOS、Android
OSの台頭で
失った
クライアントOS
シェアの回復
モノから
発生するデータ
を押さえる
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(出所) http://japan.zdnet.com/cio/sp_14iot/35046440/
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「Internet of Everything」を提唱し、プラットフォームビジネスを展開する
Cisco
Ciscoは、「Internet of Things」を拡張し、モノだけでなく人やサービスも含めすべて
がネットワークでつながる概念「Internet of Everything(IoE)」を提唱。
2012年11月に、IoTソリューション開発専任組織である「IoTインキュベーションラボ」
を設置、2014年2月に具体的なソリューション「Cisco IOx」を発表。
Internet of Everythingの全体像
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(出所) http://www.cisco.com/web/JP/event/es/141/cpcj/pdf/3_internet_of_everything_20131126.pdf
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活発化する標準化活動
民間企業によるIoTのイニシアティブをめぐる動きが活発化
2012年頃より、標準化団体に加え、クアルコムやCisco、GEなど民間企業によるIoTに関
するアライアンスやコンソーシアムの設立が相次ぐ。
自社の技術やノウハウを共通仕様化することでイニシアティブをとることが狙い。
~2004年
2006年
2008年
2010年
2012年
2014年
標準化団体による活動
IETF
6Lowpan
roll
Core
Iwig
3GPP
MTC
IoT-GSI/
JCA-IoT
ITU
ETSI
oneM2M
FG-M2M
TC ITS
TC M2M
・ETSIが中心となり、団体横断的な
標準策定を目指し設立
民間企業による活動
ALLSEEN
ALLIANCE
Industrial Internet
CONSORTIUM
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・オープンソースのデバイス間P2P通信技術「AllJoyn」を
ベースとしたフレームワーク策定を目的として設立
(Qualcomm、LG、シャープ、パナソニック、Ciscoなど)
・機器間での互換性を保つための共通アーキテクチャ策定を
目的に設立(AT&T、Cisco、GE、IBM、Intel)
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1.IoTを巡る状況
2.先行ユーザー企業の取り組み
3.IoTのシステム構築上の課題
4.モノのネットワーク化によるビジネス拡大に向けて
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IoTの対象は、より安価で大量の端末へと拡大
端末へのセンサの設置やネットワーク化が容易になってきたことで、IoTの対象は、
単価が高い大型の機器(産業機械等)から、より安価で大量の機器(消費者向け
機器等)へと拡大。
IoTの役割もモノの制御だけでなく、大量のモノから得られるデータの活用へと
広がっていく。
低い
今後のIoTの対象領域
(大量、安価:消費者向け機器等)
端末の単価
役割:モノから得られるデータの活用
これまでのIoTの対象領域
(少数、高価:産業機械等)
拡大
役割:モノの遠隔制御
高い 少ない
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数量
多い
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企業によるIoTの活用事例の類型
小物機器メーカーでは、ネットワーク化による製品の付加価値向上(新機能など)。
大規模機器メーカーでは、ネットワーク経由でのアフターサービスの充実。
利用シーン
IoTの役割
モノから
得られる
データ
の活用
①製品・サービスの
付加価値向上
②アフターサービス
の充実
(主に小物機器メーカー。
消費者向け製品など)
(主に大規模機器メーカー。
重機、機械、自動車など)
・使い方アドバイス
・状況可視化
など
-可視化
-分析
・故障の予兆発見、故障
時期の予測
・メンテナンスの自動化
-部品交換スケジュール
など
・遠隔操作
モノの
遠隔制御
・遠隔操作
-オン・オフ、設定変更
など
-緊急時の停止、ロック
・遠隔アップデート
-機能、SW、設定
など
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③オペレーションの改善
(主に店舗や工場など)
・オペレーションの最適化
-設備の稼働
-社員の業務手順
-顧客動線
など
・遠隔からの設備機器/
什器の最適化
-設定パラメータ
-稼働スケジュール
など
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事例) ①製品・サービスの付加価値向上
スーツケースのネットワーク化でロストバゲージを削減 Airbus 「Bag2Go」
データ活用
スーツケースに2Gモバイル通信ユニット、GPS、RFID、重量センサを埋め込み、空港の管理
システムと荷物の重量や位置データを連携。
利用者は、荷物のチェックイン日時や行き先、現在位置、ケースの開封有無などをスマホ
アプリから閲覧することができるため、ロストバゲージを未然に防ぐことができる。
空港での短期レンタルビジネスを想定、長期的には、ドアツードアの配達サービスを検討中。
※IATAによれば、ロストバゲージは年間約2600万件発生し、航空会社の損失は25億ドルにも上る。
※Airbusによれば、通常のスーツケースの20%増しのコストで、スーツケースへの機能の実装が可能。
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(出所)http://postscapes.com/smart-luggage-bag2go
※IATA(International Air Transit Association):国際航空運送協会
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データ活用
事例)①製品・サービスの付加価値向上
モニタリング機能を付加することでボールを高付加価値化 InforMotion Sports Technologies
バスケットボールに、9つのセンサーとバッテリー、通信モジュールを内蔵することで、利用者
のシュートのフォームを数値化し、スマートフォンに表示。
利用者は、シュート時の速度や角度、バックスピン回転数、ゴールの成功率を可視化すること
で、フォーム改善等トレーニングサポートに活用できる。
※センサのない通常のボールは25ドル程度だが、同製品は約250ドルで販売。
シュートの速度や回転数、角度を表示
ボールにセンサーを内蔵
・計測値および適正範囲をスマホに表示
シュートの速度
・9つのセンサーをボール内に内蔵
(出所)http://weartesters.com/94fifty-sensor-basketball/
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バックスピン回転数
シュートの角度
(出所) http://shop.94fifty.com/pages/learn-more
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事例)②アフターサービス
ネットワーク経由のリコール対応で顧客の来店の手間を削減 Tesla Motors
データ活用
遠隔制御
Tesla Motorsは3G携帯電話網経由でのソフトウェアアップデートによるリコール対応を実施。
例: 2014年1月に29,222台を対象に実施した大規模リコールを実施
利用者は、車のダッシュボードモニタで、通知の受け取りやリコール対応を実施でき、来店の
手間を削減できる。
一方、販売店では、リコール対応に対する人件費を削減できる。
ネットワーク経由での部品の異常診断や車の機能強化、設定変更等も可能。
リコール通知
・ダッシュボードモニタに
リコール案内を表示
サービスマン
⇒遠隔からの
部品の異常診断
ソフトウェアアップデート(3G経由)
・アダプタプラグ制御プログラム
・サスペンションのセッティング など
Tesla Sシリーズ
⇒都合のよい時、場所
にてリコール対応
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部品の状態
Tesla Motors
サーバ
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事例)③オペレーションの改善
コーヒーメーカーをリモート管理し、品質を安定化 Starbucks「Clover」
データ活用
遠隔制御
Starbucksは、年間14種程度の高級豆を1杯毎に抽出して提供する高級商品ライン
「Starbucks Reserve」にて、ネットワーク接続されたコーヒーメーカー「Clover」を導入。
ネットワーク経由でコーヒーメーカーの稼働情報を収集・分析するとともに、豆毎設定パラメー
タ(水の温度、滞留時間)をダウンロードすることで、人に依存せず安定した品質での商品
提供が可能になった。
Starbucks 店舗内
高級商品ライン用
コーヒーメーカー「Clover」
・商品毎の利用傾向
・パフォーマンス
本部
利用状況
ダウンロード
・豆毎の設定パラメータ
-水の温度
-滞留時間
(出所)http://www.starbucks.com/coffee/learn/clover
最適な設定で
コーヒーを抽出
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豆毎に最適な
パラメータを作成し、
随時アップデート
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事例)③オペレーションの改善
顧客数からレジの稼働台数を予測することでレジの待ち時間を削減 Kroger
データ活用
店舗の入り口とレジに設置した赤外線カメラで取得した顧客人数のデータと曜日や時間帯
に関するデータを分析し、現在のレジ稼働数、今稼働が必要なレジ台数、30分以内に稼働
が必要となるレジ台数の予測をディスプレイに表示。
店舗マネージャは、ディスプレイに表示された情報をもとに、稼働するレジを常に最適な台数
に調整することで、レジ要員配置を効率化できる。
本システムの導入により、顧客のレジでの平均待ち時間は4分から26秒へ短縮。
(出所) http://www.informationweek.com/strategic-cio/executive-insights-and-innovation/kroger-solves-top-customer-issue-long-lines/d/d-id/1141541
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事例まとめ:
モノのネットワーク化によりリアルタイムな状態把握やサービス提供が可能に
モノをネットワーク化することで、従来取得できなかったモノの状態をリアルタイムに把握
可能に。
ネットワークを通じて遠隔から制御することで、従来は現場でのみ実施していたサービスを
遠隔から実施可能に。
小物機器メーカーなど
大規模機器メーカーなど
店舗や工場など
①製品・サービスの付加価値向上
②アフター
サービスの充実
③オペレーションの改善
Airbus
「Bag2go」
InforMotion Sports
Technologies
「94Fifty Sensor
Basketball」
Tesla Motors
「Model S」
Starbucks
「Clover」
Kroger
「Que Vision」
・ロストバゲージの
低減
・他社製バスケット
ボールとの差別化
・リコール対応における
顧客の負担削減
・リコール対応コストの
削減
取得可能な
データ
・スーツケースの開閉
有無
・スーツケースの位置
・スーツケースの重量
・シュートの速度
・シュートの角度
・回転数 など
・コーヒーメーカーの
・顧客の数
利用状況
・車内の各センサデータ
-店舗入口
-パフォーマンス
-レジ
-商品毎の利用傾向
IoTによる
付加価値
・機内に預けた
スーツケースの追跡
・ボールの投げ方の
数値化による
トレーニング支援
・遠隔からの故障診断 ・設備パラメータの
・遠隔からのSWアップ 遠隔設定
デート
・マーケティング分析
課題
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・店員に依存する商品
・レジ待ち時間の短縮
の品質の安定化
・レジ要員配置の
・リアルタイムな稼働
効率化
状況の把握
・稼働が必要なレジ
台数の予測
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1.IoTを巡る状況
2.先行ユーザー企業の取り組み
3.IoTのシステム構築上の課題
4.モノのネットワーク化によるビジネス拡大に向けて
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IoTを実現するためのシステムアーキテクチャと課題
IoTを実現するための課題は、他システムとの連携とリアルタイムなデータの収集・処理。
端末ではセキュリティの確保が課題に。
アプリケーション
産業別アプリ
公共
エネルギー
工業
ヘルスケア
交通
店舗
スマート
シティ
医療
コンシューマ
サービス
農業
プラットフォーム
データ分析
データ蓄積
上位API
セキュリティ管理
接続管理
デバイス管理
ネットワーク
コアネットワーク
インターネット
①IoTと他
システムの連携
②リアルタイムな
データの収集
と処理
・・・
専用線
ローカルネットワーク
ゲートウェイ 近距離無線
端末
スマート
メーター
ウェアラブル デジタル
端末
サイネージ
機械
電力線通信
有線通信
カメラ
医療機器
ATM/POS
スマート
デバイス
RFID
スマート
家電
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・・・
自販機
③組み込み機器に
対する
セキュリティ対策
・・・
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IoTのシステム構築上の課題①
IoTと他システムの連携
IoTのシステムは、通信方式やプロトコル、端末の管理方法が、接続される端末に依存する
ため、データ方式やデータ管理の仕方が固有の仕様となりやすい。
そのため、CRMやSCMなど既存のシステム仕様とIoTのシステム仕様を合わせることが難しく、
データ連携がしづらい場合がある。
IoTのシステム
⇒仕様が端末に依存、固有仕様になりやすい
端末
ゲートウェイ
サーバ
他システム
(CRM、SCMなど)
データ形式等が
異なり、連携しづらい
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マシンデータ管理用システムと顧客データ管理用のシステムをクラウド上で連携
Salesforce.com 「Salesforce1」
マシンデータ管理用クラウド(Heroku1)と、顧客データ管理用クラウド(Force.com)を同一
プラットフォーム上に統合。
クラウド間でのデータ同期やAPIによる相互アクセス機能を持ち、Heroku1とForce.com間
でデータ連携が可能。
事例:冷凍庫状態管理システムとCRMを連携 NEB(New England Biolabs)
・顧客の研究室内に設置した冷凍庫の管理システム(Heroku1)とCRMシステム(Force.com)間
でデータ連携。
・冷凍庫の開閉状況や試薬の持ち出し状況を営業マンのモバイル端末で閲覧したり、商品の補充
管理システムに連動させることが可能。
マシンデータ管理
顧客データ管理
Salesforce1
冷凍庫
(顧客研究室内)
研究用
試薬、酵素
冷凍庫状態
CRM
管理
・持出状況 データ同期
・顧客データ
・温度 (Heroku Connect)
Heroku1
・利用者認証
・ドアの開閉処理
・商品持ち出し管理
(スキャン)
冷凍庫備付
タブレット
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Force.com
既存のERPシステム
(商品の補充管理)
・顧客情報
・商品利用状況
営業マン
(モバイル)
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IoTのシステム構築上の課題②
リアルタイムなデータの収集と処理
端末のコントロールや即時アラートが必要なアプリケーションでは、収集したデータを即時に
処理し、端末へフィードバック、その後のアクションへとつなげる必要がある。
例:設備監視、カメラによる犯罪検知、自動販売機の機内温度管理など
ネットワークに接続される端末の数は、多い場合で数万~数百万になる場合もあり、サーバ
で一括処理する企業情報システムの考え方では処理が間に合わない。
端末
コア
ネットワーク
ローカルネットワーク
ゲートウェイ(GW)
サーバ
データ収集
ネットワークに
よる遅延
サーバでの大量
データ処理に
よる遅延
フィードバック
⇒データの処理とフィードバックが間に合わない。
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解決策の一つは端末やゲートウェイへのデータ処理や管理機能の分散
サーバで集中処理していた機能の一部をゲートウェイや端末などに分散することで、
ネットワークやサーバの負荷や処理の遅延を減らす考え方が登場。
端末
ゲートウェイなど
(エッジ)
サーバ
■取得データの二次処理
統計処理
複雑なデータ処理
■取得データの一次処理
■取得データの一次処理
■取得データの一次処理
アグリゲーション
アグリゲーション
アグリゲーション
フィルタリング
フィルタリング
フィルタリング
アラート
アラート
アラート
■ローカル側の管理機能
端末側フィードバック処理
■ローカル側の管理機能
端末状態管理
端末状態管理
ローカルネットワーク管理
ローカルネットワーク管理
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エッジ分散処理:
データセンターと端末の中間でデータ処理するためのアーキテクチャ
クラウドと端末の中間(エッジ)にデータ処理機能を配置し、クラウドとエッジ間で
処理を分散。
ネットワークにかかる負荷を削減するとともに、フィードバック処理を高速化。
エッジ分散処理の例:Cisco フォグコンピューティング
・クラウドと端末の間にフォグと呼ばれる分散環境を配置し、管理機能やデータ処理を分散する考え方
・実現のためのプラットフォームとして「Cisco IOx」を発表、自社製ルータ製品に搭載。
Cisco IOx
クラウド
・分散DB
・統計解析など
フォグ ・ストリームデータ処理
IOx搭載
機器
・ゲートウェイ ・機械学習
・ルータ 等 ・予測、フィルタリング
端末管理、
データ処理
をフォグに
分散
・ネットワークOSである「Cisco IOS」と
Linuxを統合
・自社製ルーターに搭載し、ルータ上
でのデータ処理を可能とする。
Linux用
アプリ管理
IOx
Cisco IOS
Linux用
アプリケーション
Linux
分散アプリケーション
IOx SDK
エッジデバイス
端末
(出所)http://www.cisco.com/web/JP/product/hs/routers/cgr1000/prodlit/datasheet_c78-696278.htmlを参考に野村総合研究所作成
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端末分散処理:
データ処理エンジンが組み込まれた組み込み向けミドルウェア
端末側にデータ処理エンジン(CEP)を組み込み、データ処理の機能の一部を実装
端末側でデータ発生の都度、一次処理を行うことで、ネットワークへの負荷を減ら
すとともに、リアルタイムなフィードバック処理を実現。
CEPが組み込まれたミドルウェアの例:Oracle Event Processing for Oracle Java Embedded
処理イメージ
ミドルウェアのアーキテクチャ
端末
CEP
ゲートウェイ
サーバ
CEP
CEP
一次加工
データ
⇒基本的なフィルタリングと集約
(ローカルでの決定、ノイズや
誤検出の除去等)
⇒複雑な処理や
サマリデータの処理
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(出所) http://otndnld.oracle.co.jp/ondemand/javaday/C-3.pdf
※CEP(Complex Event Processing):複合イベント処理
※OEP:Oracle Event Processing
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分散処理方式比較
端末分散処理は、ネットワーク帯域がシビアな場合や端末毎にリアルタイムな判断が必要な
場合に適している。
エッジ分散処理は、地域特性に基づくデータ処理が必要な場合や端末の管理を分散する
場合などに適している。
分散処理
処理方式
参考:クラウド集中処理
端末分散処理
エッジ分散処理
(Oracleなど)
(Cisco、NTT、富士通など)
・端末側で一次処理した
データをクラウドで処理
・クラウドとエッジで処理を
分散
・すべてのデータをクラウド
で集中処理
クラウド
分散処理
分散処理
コアネットワーク
端末 エッジサーバ・
GW
ローカルネットワーク
コアネットワーク
クラウド
端末 エッジサーバ・
GW
ローカルネットワーク
コアネットワーク
ローカルネットワーク
端末 エッジサーバ・
GW
(Amazon、Salesforce、
Microsoftなど)
クラウド
集中処理
クラウドデータ処理量
少量(サマリ等)
少量(サマリ等)
大量
データの一次処理範囲
端末
地域、地区
広域(街)
処理のリアルタイム性
高
中
低
必要なネットワークの帯域
ローカルネットワーク:小
コアネットワーク:小
ローカルネットワーク:中~大
コアネットワーク:小
ローカルネットワーク:中~大
コアネットワーク:中~大
主な用途
・端末毎にリアルタイムな判断
が必要なもの
・地域特性に基づく処理が
必要なもの
・広域にわたるデータ処理が
必要なもの
例:自販機、設備監視など
例:社会インフラ(電力、ガス、
交通等)など
例:環境モニタリング、小売、農業、
消費者向けサービスなど
データ
処理
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27
IoTのシステム構築上の課題③
組み込み機器に対するセキュリティ対策
2012年頃より組み込み機器の脆弱性に関わる事例が多発。
例:ネット接続型防犯カメラの映像へのリンクの不正公開(2012年)
電気自動車のAPIのセキュリティ欠陥の発覚(2013年)
組み込み機器は、CPUやメモリなどのリソースが限られており、一般的な企業情報システムと
同様の対策ができないため、完璧なセキュリティ対策を行うのは困難。
セキュリティ対策上の課題
詳細
ソフトウェア(SW)の
セキュリティアップデート
が困難
・ソフトウェアのアップデート手段を機器に搭載するための
メモリやCPUのリソースがない。
・ローカルネットワークの帯域が十分でない場合、パッチの
提供手段がない。
・端末が数万以上の場合、アップデート手段を用意できても、
すべての機器のアップデートを管理するのは非現実的。
侵入防止策の不備
・ネットワークアクセスのための認証の仕組みが不十分。
・消費者用機器では、認証のためのIDやパスワードを
デフォルトの状態で利用するユーザーが多い。
セキュリティ対策SW
の不在
・ウイルス対策SW等汎用的なセキュリティ対策SWがほとんど
存在しない。
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28
組み込み機器に対する画一的なセキュリティソリューションは存在しない
組み込み機器に対しては、以下のようなセキュリティ対策が考えられるが、機器の
持つリソースやネットワーク帯域などにより対策の仕方は異なるため、個別に対応
する必要がある。
組み込み機器に対するセキュリティ対策の例
詳細
セキュアブート
・ブート時にソフトウェアが正規版かチェック
SWアップデート
・SWアップデート時のソフトウェアの認証処理
・アップデートによるネットワーク帯域への影響の極小化
伝送データ
保護
・伝送データの暗号化
・暗号化/復号化のためのキーの管理
機器認証と
アクセス権限
・機器のネットワーク接続時の認証処理
・機器毎のネットワークへのアクセス権限の付与
侵入防御(IPS) ・悪意のあるパケットの識別と分類、阻止
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機器のリソース環境により、
対策の仕方は異なる
対策
29
1.IoTを巡る状況
2.先行ユーザー企業の取り組み
3.IoTのシステム構築上の課題
4.モノのネットワーク化によるビジネス拡大に向けて
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30
モノのネットワーク化によるビジネス拡大のシナリオ
モノのネットワーク化によるビジネス拡大の方向は、蓄積されたデータの活用による
サービスの高度化と、他社製品・サービスとのリアルタイム連携の2つ。
最終的にはモノのネットワーク化を中心とした新たなエコシステムの構築を目指す。
活用の仕方
他社連携
自社製品・サービス
ストック
適用範囲
⇒蓄積された
データの活用
①蓄積されたデータの
活用による
サービスの高度化
③モノのネットワーク化
を中心とした新たな
エコシステムの構築
・故障の予測
・メンテナンスの自動化 など
高度化
⇒リアルタイム
な連携
自社製品・サービス
のネットワーク化
・モノからのデータの取得
・遠隔からのモノの制御 など
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分野拡大
フロー
②他社製品・サービスとの
リアルタイム連携
・異業種間のサービス連携
・データの相互連携
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①蓄積されたデータの活用によるサービスの高度化
モノのネットワーク化を通じて大量のデータを蓄積。
蓄積された大量のデータをより高度に分析していくことで、価値の高いサービスを
提供。
分析の高度化により得られる価値
提供価値
自動化
最適化
予測
可視化から
予測を経て
自動化へ
⇒分析結果にもとづく最適制御
例:経験の数値化による設備パラメータの
最適化
⇒時系列分析やデータ間の相関
分析による状態の予測
例:設備機械の故障の予兆検知等
情報の
可視化 ・状況の可視化
例:設備パラメータや故障有無等の可視化
活用する
データの量
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②他社製品・サービスとのリアルタイム連携
モノをネットワーク化することで、既存ビジネスの範疇を超えたさまざまな分野へ
サービスを展開できる可能性がある。
一方、自社のみで新たな分野にサービスを展開するには限界があり、異業種を
巻き込んだ連携が重要になる。
歯ブラシのネットワーク化と異業種連携による新たなサービスの例
サービス
連携先
医療機関
口蓋診断サービス
歯ブラシのネットワーク化
・磨き方に関するデータの収集と
可視化
×
医療カルテ
教育事業者/地域の歯医者等
磨き方指導サービス
×
磨き方に関するデータ
-歯磨きの頻度
-歯磨きをする時間
-磨いている箇所
(出所)http://www.kolibree.com/
フィットネス事業者
×
歩数、睡眠時間、
摂取カロリーなど
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総合健康管理
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③モノのネットワーク化を中心とした新たなエコシステムの構築
自社サービスを通じて蓄積されたモノのデータ、蓄積されたデータの分析から
得られた知見を元にエコシステムを構築し、新たなマーケットの創出を目指す。
パートナー企業(異業種含む)
金融
家電
・自社のサービスや
データを他社と連携
保険
医療
流通・
小売
ヘルケア
蓄積
製品・サービス
データ
のAPI
機器
製造
運輸
自動車
情報
サービス
分析結果・
知見
・・・
・自社にない機能の獲得
・異分野への進出
自社
自社製品・
サービス
モノのデータ
の収集
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蓄積された
モノのデータ
蓄積データ
の分析
分析結果
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モノのネットワークを通じた連携パターンと例
自社製品・サービスの連携
データ分析結果の連携
■蓄積されたモノのデータの分析から得られた
知見を他社と連携。
■製品・サービスのAPIを他社に提供し、
サービスを連携。
例:GM OnStarAPIの他社連携
・GMは、同社のテレマティクスサービスであるOnStarのAPIを
RelayRides社に提供。
・RelayRides社は、同APIを通じて得られる位置情報や車の
ロック機能を活用し、P2P型カーシェアリングサービスを展開
GM
フィットネス
事業者
・歩数、睡眠時間、摂取
カロリー等の分析
RelayRides
×
RelayRides
date
API
A
Carl’s Chevrlet
$7.00/hour
2011 Chevrolet SONIC $35.00/day
B
Jeral’s Cadillac
2010 Cadillac CTS
$20.00/hour
$100.00/day
・
・
・
・車の位置情報取得
・遠隔からの車の制御
(エンジン、ロック)
・運動量と連動した交通
ルート検索サービス
ネットスーパー
time
Cars for rent near サンノゼ カリフォルニア
OnStar
情報サービス
・車の位置情報を表示
・契約時に遠隔から車
のロックを解除
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人の生活
パターン
・生活パターンに合わせた
メニューの提案サービス
※ただし、プライバシーの扱いについては注意が必要
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まとめ
メーカーの方へのアドバイス
まずは、どこでマネタイズできるかを検討する
• 製品・サービス自体の付加価値向上(スーツケース、バスケットボールなど)
• アフターサービスの充実(緊急時対応、異常監視、予防保全など)
場合によっては、マネタイズを目的とせず、顧客との長期的な関係構築を目的としても可
次に、データの蓄積とともに、蓄積されたデータを活用したサービスの高度化、他社製品・
サービスとの連携拡大を目指す
最終的には、他社との連携によるエコシステムを構築し、新たな市場の創造を狙う
ユーザー企業の方へのアドバイス
 遠隔からモノの状態を継続的にセンシングできることのインパクトを考え、適用業務を
検討する
 用途に応じた適切なアーキテクチャを選択する(エッジ分散、端末分散、集中処理)
 IoTならではの課題を軽視しない(既存の業務システムとの連携、セキュリティ)
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