Cortex-A9対応! ARM純正軽量リアルタイムOS RTX

第3部
特集 定番プロセッサ徹底研究! ARM Cortex-A
Cortex-M からの乗り換えも OK!
第 11 章
Cortex-A9対応 !
ARM純正軽量リアルタイムOS RTX
萩本 良平
ユーザ・
アプリケーション
どのリアルタイム
OSでも同じ
インターフェース
CMSIS
インターフェース
CMSIS
インターフェース
CMSIS
インターフェース
XXX OS
RTX
YYY OS
図 1 ARM 社がリアルタイム OS のインターフェースを定義して
いる…CMSIS-RTOS
▶実装の事例も別の機会に紹介していく予定です
本章では誌面の都合で,RTX の特徴を紹介するに
とどめますが,ARM Cortex-A9 プロセッサ RZ/A1L
(ルネサス エレクトロニクス)搭載ボード CEV-RZ/
A1L(コンピューテックス)で動かし,リアルタイム
制御を行う方法についても別の機会に紹介していく予
定です.
ARM 純正リアルタイム OS
CMSIS-RTOS RTX
● 基本は Cortex-M 向け
MMU やキャッシュをシコシコと設定して,My プ
ログラムからのメモリ・アクセスを自分で管理しても
かまいませんが,アクセスの管理などは OS の得意分
野です.OS を使えば,ミドルウェアを使ったり,機
能を追加したりすることも容易になります.
ARM Cortex-A で定番として使われている Linux な
どの情報系 OS は,ROM/RAM 消費量が大きく,割
り込みの応答速度が遅く,プロセスの切り替えに時間
が ms オーダでかかります.ワンチップ・マイコンの
ファームウェアのように,メイン・ループを回してイ
ベントが起きたときだけ約束された時間内で処理を行
う必要がある,リアルタイム用途にはあまり適してい
るとはいえません.
このような用途では,ROM/RAM は数十 K バイト
ていどで済み,タスクの切り替え時間は数μs ていど
で,MMU の設定やメモリ・アクセスの管理を任せら
れる,軽量リアルタイム OS が適していると思います.
本章では,
①無料で使用できる
② ARM 社純正
③ Cortex-M シリーズからの移行を重視している
という特徴を備えた,軽量リアルタイム OS である
CMSIS-RTOS RTX を 紹 介 し ま す.ARM Cortex-A9
プロセッサを使ったハードウェア制御などを行いたい
ときに便利に使えるのではないかと思います.
100
本章では ARM 社純正軽量リアルタイム OS CMSISRTOS RTX の特徴を紹介します.まずは名前を分解
してみます.
CMSIS とは,Cortex-M コアのマイコン用のソフト
ウェア・インターフェース規格です.CMSIS に準拠
しているソフトウェアは,Cortex-M コアのどのマイ
コンでも使用することができます.
RTOS とは,リアルタイム・オペレーティング・シ
ステムの略語です.イベントが発生したときの応答時
間を約束できるしくみを備えた(応答時間の短い)OS
のことをいいます.
RTX は OS の名称です.つまり,CMSIS-RTOS RTX
は「Cortex-M コアにおいて共通に使用することので
きる OS インターフェースを実装している RTX とい
う OS」ということです(図 1)
.
● Cortex-A9 で使えば高性能とリアルタイム性
のいいとこどり OK!
もともと CMSIS-RTOS RTX は,Cortex-M 系のリア
ルタイム OS でした.ARM 社はそれを Cortex-A9 向け
に移植していく方針のようです.第 1 弾として RZ ファ
ミリ(ルネサス エレクトロニクス)に CMSIS-RTOS RTX
が対応しました.
CMSIS-RTOS を Cortex-A で使用すれば,ワンチッ
プ Cortex-M マイコンのようなリアルタイム性を保ち
つつ,高性能な Cortex-A を使用することが可能です.
Cortex-M で作成した RTX アプリケーションをより高
2014 年 7 月号