資料1 タブレットPCの活用と学習者の行動

H25 揖斐小学校 ICT 活用報告会
資料1
タブレット PC の活用と学習者の行動
資料1
タブレット PC の活用と学習者の行動
25
H25 揖斐小学校 ICT 活用報告会
タブレット PC の活用と学習者の行動
1
はじめに
タブレット PC は,2010 年度から開始されたフューチャースクール推進事業等を契機として,小
中学校において本格的に活用され始めた。全児童生徒1人1台のタブレット PC,全ての普通教室へ
の電子黒板(インタラクティブ・ホワイト・ボード:IWB)の配備,無線 LAN 環境,クラウド・コンピ
ューティング技術の活用等による ICT 環境の構築を行ったフューチャースクール推進事業以降,小
中学校にネットワークに接続された1人1台のタブレット PC の学習環境が整備され始めている。フ
ューチャースクール推進事業では,互いに学び合い,教え合う協働教育の推進をめざして研究 (1)(2)が
行われ,その成果が報告 (3)(4)されている。しかし,タブレット PC の活用が協働学習に対してどのよ
うな効果をもたらしたかについては実証的な研究成果が必ずしも明らかにはなっていない。そこで,
2010 年度から大学・小中高等学校教員等が参加するタブレット PC 教育利用研究会を立ち上げて,
小中学校の算数・数学,理科を中心に,タブレット PC の有無により学習者の行動にどのような変化
を生じるかについての実証的な実践研究を開始した。
タブレット PC が一部の教育現場で活用され始めたのは,OS 用のタブレット PC 用拡張ソフトウ
ェアが登場した 2002 年以降であり,当時はカメラ機能や各種センサー等も搭載されていなかったこ
ともあり,可搬性や操作性に着目した学習支援システムや手書き入力教材等 (5) (6)が研究された。その
後,協同的な学びという社会的構成主義の学習観に基づいた学習活動への転換とともに,協働教育と
の関わりでタブレット PC 導入が議論され,フューチャースクール推進事業の推進やデジタル教科書
の登場とも相まって高い関心を集めている。一方ではタブレット PC は子ども同士が教え合い学び合
う協働的な学びの推進に必要とされるが,他方では情報端末を持つことが授業のどの部分をどのよう
に変えていくのかについて,今後十分な検証が必要である (7)という指摘がある。また,フューチャー
スクール推進事業実証校の堀 (2011)は,「一人ひとりの子どもの思考が多くの児童に共有され,検討
されて,新しい智を創造する授業が実現したときは,未来の教育への大きな可能性を垣間見るようで
あった。…画面を回して見せ合うことでペアやグループでの話し合いに効果を発揮する (8)」として,
授業場面での学習者の行動として「見せ合う」ことに着目した。佐藤 (1995)は,「対話的学びの三位
一体論」において「対象との対話」「自己との対話」「他者との対話」の3つの対話関係を相互に発
展させる実践を学びの実践 (9)とした。堀の「見せ合う」という学習者の行動の意味するものが対話的
学びにつながるのであれば,タブレット PC を協同的な学びの場をデザインする環境の一部に組み込
むことが可能となろう。
タブレット PC を活用した授業
2
(1)実証授業
タブレット PC は,平板状の外形,タッチパネル式の入力部を持った携帯可能な PC である。マウ
スとキーボード入力操作のノート PC に比べて,タブレットペンや指による入力動作が画面表示に対
応しており操作が直感的で分かりやすいだけでなく,平板状であるため水平に置いて複数の学習者が
覗き込むこと (10)ができる。タブレット PC の特性が生かされる授業では,複数の学習者が覗き込むこ
とができるため,教え合い学び合う機会が増えたり話し合いが深まったりする効果が期待できる。し
かし,授業のどのような場面でどのような活用すればいいのかは明らかになっていない。そこで,
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資料1
タブレット PC の活用と学習者の行動
H25 揖斐小学校 ICT 活用報告会
表1 タブレット PC 教育利用研究会活動計画および実施内容
年度
2010
2011
2012
2013
活動計画/実施内容
タブレット PC の活用場面,教科,調査対象等の検討,プレ実証授業,学習者の行動の抽出とカテゴリ
化の検討,実証授業校の研修
第1回実証授業(中学校)の実施,意識調査・評価問題・学習者の行動の分析,意識調査・評価問題の検
討,学習者の行動の記録方法の検討,タブレット PC あり・なしの比較
第2回実証授業(小学校)(1)(2),第3回実証授業(中学校)の実施,意識調査・評価問題・論述問題・学
習者の行動と発話分析,タブレット PC あり・なし・選択可の比較
第4回実証授業(小学校),第5回実証授業(中学校),第6回実証授業(小学校)の実施,意識調査・論述
問題・学習者の行動と発話分析,タブレット PC あり・なし・選択可の比較
本校はタブレット PC 教育利用研究会に参加
し,実証授業を通して,タブレット PC の活
用と佐藤の言う学びの実践との関係を明ら
かにしようと考えた。タブレット PC 教育利
用研究会は,タブレット PC の学習者に及ぼ
す影響を調べるため,表1に示す活動計画に
表2 実証授業の実施時期・対象等
○第1回実証授業(池田中学校)
実施時期
2011年12月
対象
3年生(7学級,268人)
有効回答数
225人(A群131人,B群94人)
教科・単元
理科・地球と宇宙
コンテンツ・機能 ステラナビゲータver.9
タブレット PC
資料1
Fujitsu Q550/C 40 台
○第2回実証授業1(揖斐小学校)
実施時期・場所
2012年7月
対象
5年生(1学級,28人)
査,学習者の行動,発話を記録し,分析する
有効回答数
27人
ことにした。学習者の行動に影響を与える要
教科・単元
理科・台風と天気の変化
コンテンツ・機能
高知大学気象情報頁
因をタブレット PC の有無のみとするため,
タブレット PC
Fujitsu Q550/C 20 台
より実証授業を実施して,評価問題,意識調
無線 LAN や IWB の整備された教室で,同
じ授業展開で,タブレット PC 活用した授業
(写真1)とタブレット PC を活用しない授業
を行い,比較した。これまでに実施した実証
授業の校種,実施時期・場所,対象,有効回
答数,教科・単元,活用したコンテンツ・機
能を表2に示す。研究成果を小中学校に広げ
るという本研究の性格上,本校が参加するタ
ブレット PC 教育利用研究会の実証授業結果
も併記する。
○第2回実証授業2(揖斐小学校)
実施時期・場所
2012年7月
対象
6年生(2学級,50人)
有効回答数
50人(A群25人,B群25人)
教科・単元
理科・植物のからだのはたらき
コンテンツ・機能 カメラ機能
タブレット PC
Fujitsu Q550/C 20 台
○第3回実証授業(池田中学校)
実施時期・場所
2012年11月
対象
3年生(4学級,156人)
有効回答数
141人(A群70人,B群71人)
教科・単元
数学・2次関数
コンテンツ・機能 岐阜県中数研シミュレーション
タブレット PC
Fujitsu Q550/C 20 台
○第4回実証授業(揖斐小学校)
実施時期・場所
2013年6月
対象
6年生(1学級,28人)
有効回答数
28人
教科・単元
理科・植物のからだのはたらき
コンテンツ・機能
WEBカメラ(CMS-V34BK)
タブレットPC
Fujitsu Q550/C 20台
(写真1)
資料1
タブレット PC の活用と学習者の行動
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(2)タブレット PC を活用する学習者の行動
タブレット PC 活用場面での学習者の行動を調べるために,学級全体と班毎に設置したビデオカメ
ラで撮影して分析する行動観察の手法を用いた。学習者の行動の評価観点として,①言語的,②非言
語的,③対人的,④情意的等を設定して,小学校5年生授業の IT を活用している場面は,IT を活用
していない場面と比較して集中度が有意に高まる (11)との報告がある。また,オープンエデュケーショ
ンの学習者の勉強に関する行動のカテゴリとして,①課題に即した作業を行う,②課題について友だ
ちと相談する,③課題について先生の指導を受ける,④他の人の作業を観察する,⑤コーナーを選択
する,⑥挙手して意見を発表する,⑦先生の質問に答える,⑧その他を設定 (12)した分析も行われてい
る。実証授業では学習者が課題追究を行う場面でタブレット PC を活用している。実証授業のビデオ
記録と授業観察者の意見から,オープンエデュケーションの行動のカテゴリを参考に,学習者の特徴
的な行動を抽出した。表3に示すとおり,学習者
分類
を操作する,R:ノートを書く,S:教科書やプリン
ト等の資料を見る等,仲間と行う特徴的な行動と
TPC 学習行動カテゴリ
表3
が一人で行う特徴的な行動として,A:タブレット
個人行動
して,M:相談する,N:覗き込む,教師に対する行
動として,Q:先生に質問するといった行動のカテ
対仲間行動
ゴリ(TPC 学習行動カテゴリ)が抽出された。
対教師行動
記号
A
R
S
T
M
N
Q
F
TPC 学習行動カテゴリ
タブレットを操作する
ノートを書く
資料を見る(教科書,プリント等)
A,R,S 以外
相談する
覗き込む
先生に質問する
その他
(3)第1回実証授業
a)実施内容
実施時期
対象
有効回答数
活用ソフト
タブレットPC
2011 年 12 月
池田中学校 3 年生(7 学級)
225 人 A群 131 人 B群 94 人
ステラナビゲータ ver.9
Fujitsu Q550/C 40 台
タブレットPCの活用と学習者の行動
第1回実証授業の評価方法
A群
B群
タブレットPC
あり
タブレットPC
なし
評価問題1
評価問題1
タブレットPC
なし
タブレットPC
あり
評価問題2
評価問題2
ICT 機器活用の効果が見込める学習 (13) (14)である。タ
意識調査
意識調査
ブレット PC は観察実験の場面で活用し,電子黒板の
図1
第1回実証授業は中学校 3 年理科「地球と宇宙」単
元で,1 人 1 台のタブレット PC を活用し,学習者が
夜間に観察した星空の動きを透明半球やモデルを使
第
1
時
第
2
時
って表し,天体の動きを空間的にとらえる学習であり,
客観式評価問題と
論述式評価問題
(評価問題1,評
価問題2)
意識調査(理科の
授業、タブレット
PC操作)
第1回実証授業の流れ
活用によって得られる学習効果等で報告 (15)されてい
る手法を参考に,図1に示すように学年を 2 群に分け,第1時
はA群がタブレット PC ありB群がタブレット PC なし,第 2
時はA群がタブレット PC なしB群がタブレット PC ありの授
業を行い比較した。タブレット PC ありの授業では全員がタブ
レット PC を活用した。第 1 時の授業後に図2に示す評価問題
1,第 2 時の授業後に評価問題2と意識調査を実施した。評
価問題1は,問題 1_A から 1_D までが知識を語句で,問 2 は
語句と理由の記述で解答させた。評価問題2は,問題 1(A か
写真2
授業の記録
ら D)問題 2(A から B)問題 3(A から B)の小問 8 問すべて選択肢で解答させた。
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資料1
タブレット PC の活用と学習者の行動
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タブレット PC を活用した場合
タブレットPCの活用と学習者の行動 回転後の因子行列(a)
評価問題1
の学 習者の行 動を記録 するため
に,1 つの班に 1 台のビデオカメ
ラを設置 (写真2)した。ビデオカメ
ラの映像を分析して,学習者の行
評価問題2
動を時系列に沿って TPC 学習行
動カテゴリで類型化した。授業を
科学的な
思考
ビデオ撮影したが,ビデオの角度
によ って学習 者の様子 が確認で
きな かったも のや手元 しか映っ
資料1
知識・理解
てい ないため 分析が困 難なもの
は分析対象から除外した。分析は
学習 者が探究 的に活動 した時間
図2
を対象とした。A 群,B 群ともに
評価問題1と評価問題2
1 秒間隔で学習者の TPC 学習行動の移り変わりについて分析をした。
b)評価問題
問
1_A
問
1_B
問
1_C
問
1_D
問2の
語句
問2の
理由
表4 評価問題 1 の正答率
A 群・TPC 有
B 群・TPC 無
n=141
n=108
正答
誤答
正答
誤答
104
37
72
36
73.8% 26.2%
66.7% 33.3%
119
22
91
17
84.4% 15.6%
84.3% 15.7%
99
42
81
27
70.2% 29.8%
75.0% 25.0%
100
41
72
36
70.2% 29.8%
66.7% 33.3%
122
18
91
16
87.1%
12.9%
85.0% 15.0%
87
53
44
63
62.1% 37.9%
41.1% 58.9%
問
1_A
問
1_B
問
1_C
問
1_D
問
2_A
問
2_B
問
3_A
問
3_B
表5 評価問題 2 の正答率
A 群・TPC 無
B 群・TPC 有
n=141
n=108
正答
誤答
正答
誤答
134
7
102
6
95.0%
5.0%
94.4%
5.6%
136
5
102
6
96.5%
3.5%
94.4%
5.6%
136
5
100
8
96.5%
3.5%
92.6%
7.4%
135
6
100
8
95.7%
4.3%
92.6%
7.4%
121
20
92
16
85.8% 14.2%
85.2% 14.8%
109
32
88
20
77.3% 22.7%
81.5% 18.5%
112
29
77
31
79.4% 20.6%
71.3% 28.7%
109
32
79
29
77.3% 22.7%
73.1% 26.9%
授業の終わりに実施した評価問題の結果
を,表4及び表5に示す。タブレット PC の活
用の有無及び A 群と B 群の間では,問 2 の
理由を除いて正答率に有意な差はみられな
かった。このことからタブレット PC の活用
の有無は基礎的な内容の理解に影響しない
と考えられる。
正答率に差を生じた問 2では,
北の空の北極星を語句で解答するとともに,
北極星が動かない理由を記述させている。語
句については,差はみられないにもかかわら
ず,理由のみにタブレット PC の活用による
差異が認められる。タブレット PC を活用し
た群の正答率は 62.1%,活用していない群は
41.1%であり,タブレット PC を活用した群
の方が高く (χ 2 =10.76, df=1, p<.01) なっ
ていた。記述状況を詳細に分析するために,
正誤に無答を加えた 3 パターンの出現率を求
めた結果を,表6に示す。タブレット PC を
活用した群の無答率が 11.4%,タブレット
PC を活用していない群は 31.8%となり,タ
ブレット PC の活用群では正答率が高く,無
答率が低い
(χ 2
=17.47, df=2, p<.01) こと
が明らかとなった。
資料1
表6
タブレット PC の活用と学習者の行動
正答
誤答
無答
χ2
p<
1.48
n.s.
0.01
n.s.
0.70
n.s.
0.52
n.s.
0.22
n.s.
10.76
<.01
χ2
p<
0.04
n.s.
0.58
n.s.
1.84
n.s.
1.14
n.s.
0.02
n.s.
0.06
n.s.
2.21
n.s.
0.05
n.s.
評価問題 1 の問 2 理由の正誤及び無答
A 群・TPC 有
B 群・TPC 無
χ2
n=140
n=107
p<
87 (62.1%)
44 (41.1%)
17.47
37 (26.4%)
29 (27.1%)
<.01
16 (11.4%)
34 (31.8%)
29
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c)意識調査
ICT を活用した授業の意識調査
タブレットPCの活用と学習者の行動
意識調査
では,学習に対する積極性,学習に
関する意欲,学習の達成感の3つの
因子とともに,ICT を活用しない授
学習
業と比較して高い効果が得られた
タブレットPC
(16) ことが報告されている。第1回
実証授業においては,この報告の意
識調査を参考に質問項目を設定し
た。図3に示す意識調査は,第2時
終了後実施し,関心・意欲・態度,
思考・判断・表現,技能,知識・理
理科
解,使いやすさ,授業への影響,話
し合い,視認性に係る意識について
図3
調べた。意識調査の質問1は理科の
学習に関する調査項目で,A)関心・意欲・
態度,B)思考・判断・表現,C)技能,D)
知識・理解に関するもの,質問2はタブレ
ットPCが授業に与える影響についての
調査項目で,E)使いやすさ,F)授業への影
響,G)話し合い,I)視認性に関するもので
ある。意識調査結果を因子分析(因子抽出
法:最尤法,回転法:Kaiser の正規化を
伴うバリマックス法)すると5つの因子が抽出
された。それぞれの因子を,1)天体の学
習,2)授業への態度,3)理科への態度,
4)使い勝手,5)視認性と名付けた。因子
と調査項目との関連を表7に,各因子の質
問項目を図4に示す。
因子1)天体の学習については,調査項
目の A)関心・意欲・態度,B)思考・判断・
表7 因子と調査項目
抽出された因子
調査項目
A)関心・意欲・態度
B)思考・判断・表現
1)天体の学習
C)技能
D)知識・理解
2)授業への態度
A)関心・意欲・態度
3)理科への態度
A)関心・意欲・態度
E)使いやすさ
4)使い勝手
F)授業への影響
G)話し合い
5)視認性
I)視認性
30
意識調査
タブレットPCの活用と学習者の行動
意識調査 因子1
1(15)星の動きについて、自分なりに工夫して表現できたと思いますか
(17)星の動きについて、調べ方を理解することができたと思いますか
(13)学習した内容を覚えることができたと思いますか
(16)星の動きについて、いろいろな方法で調べることができたと思いますか
(19)学習のめあてをしっかりつかむことができたと思いますか
(14)学習した内容を仲間や先生に正しく説明できると思いますか
( 8)じっくりと考えて、自分の考えを深めることができたと思いますか
(18)自分にあった方法やスピードで進めることができたと思いますか
(11)観察や実験からわかったことや考えたことを、わかりやすく伝えることができたと思いますか
( 7)他の考えと比べて、同じ点や違う点を見つけることができたと思いますか
(10)星の動きについて、順序立てて考えることができたと思いますか
( 2)進んで参加することができたと思いますか
( 9)調べ方を工夫することができたと思いますか
(12)わかったことや考えたことを、ノートなどにわかりやすくまとめることができたと思いますか
( 1)楽しく学習することができたと思いますか
( 6)学習したことをもっと調べてみたいと思いますか
( 4)今日の学習は満足できたと思いますか
( 3)仲間と協力して参加することができたと思いますか
(20)学んだ内容をこれからの学習に役立つと思いますか
学習
(タブレットPCの活用と学習者の行動
5)授業に集中して取り組むことができたと思いますか
意識調査 因子2
3.タブレットPCを使った授業について
タブレットPC
( 3)タブレットPCを使った授業をもっと受けてみたいと思いますか
(理解度・意欲
( 4)タブレットPCを使うと授業が楽しいと思いますか
話し合い)
( 2)タブレットPCを使うと授業がわかりやすくなると思いますか
( 7)タブレットPCを仲間の考えがよく分かると思いますか
( 6)タブレットPCを仲間に質問しやすいと思いますか
( 1)タブレットPCは使いやすいと思いますか
( 5)タブレットPCを使うと班内での話し合いがしやすいと思いますか
( 8)タブレットPCを使うと学習したことがよく頭に入ると思いますか
(12) タブレットPCにペンや手で文字や絵などを書くのは、書きやすいと思いますか
(13) タブレットPCにペンや手で書くのは、何度も書き直すことができて便利だと思いますか
意識調査 因子3
(21)あなたは理科が好きだと思いますか
理科
(22)理科の勉強は、得意な方だと思うことがありますか
(23)理科の勉強ができるようになりたいと思いますか
(24)理科の授業で、「勉強してよかったな」と思うことがありますか
意識調査 因子4
3.タブレットPCを使った授業について
タブレットPC
( 9)タブレットPCの写真や絵、図などは、きれいで見やすいと思いますか
(描画・視認性)
(10)タブレットPCの写真や絵、図などは、大きくて見やすいと思いますか
(11) タブレットPCの画面は、明るくて、見やすいと思いますか
図4
因子と質問項目
表現,C)技能,D)知識・理解が該当し,同じ傾向の回答と
なっていた。また因子2)授業への態度, 3)理科への態度は,
調査項目の A)関心・意欲・態度が該当し,異なる傾向の回
答となっていた。このことから,学習者は理科の4観点を
資料1
タブレット PC の活用と学習者の行動
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区別して評価しているのではなく,天体の学習,授業への態度,
4.00
3.15
理科への態度について感じていることを回答していると考え
3.43
3.59
3.22
大変
3.31
3.00
少し
られる。タブレットPCが授業に与える影響の因子4)使い勝
平均
2.00
手については,E)使いやすさ,F)授業への影響,G)話し合い
の調査項目が該当し,同じ傾向の回答をしていた。タブレット
あまり
1.00
まったく
1
天
体
の
学
習
PC を活用することで話し合いが増えたり,天体の運動が理解
しやすかったりしたと感じていることがわかる。また,タブレ
ットペンの操作,天体シミュレーションソフトの使い方が簡単
で,すぐに慣れて天体の運動について考える活動ができたとい
2
授
業
3
理
科
へ
の
態
度
へ
の
態
度
図5
4
使
い
勝
手
5
視
認
性
各因子の平均
うことがわかる。
因子5)視認性は調査項目 I)視認性に該当し,図5
4.00
3.49
3.34
に示すように平均が最も高くなっている。これは1人
1台のタブレット PC を使用しているため,画面が見
やすかったためと考えられる。因子4)使い勝手に分
3.00
因子4,使い勝手
3.24
3.23
資料1
大変
少し
平均
2.00
あまり
類された質問項目をア)意欲,イ)理解,ウ)話し合い,エ)
使いやすさに分類して平均を求めると,図6に示すと
1.00
まったく
意欲
おり,意欲が最も高く,理解,話し合い,使いやすさ
理解
図6
話し合い 使いやすさ
因子4の内訳
の順になった。使いやすさが最も低かったのは,タブ
レットペンによる入力の煩わしさと,細かな条件設定ができ機能が高いシミュレーションソフトであ
るステラナビゲータの操作性が影響を与えていたと考えられる。
意識調査の分析から,タブレット PC の視認性や操作性のよさが,意欲,理解,話し合いに影響を
与えており,これらのことが理科への態度,授業への態度,天体の学習への態度につながって,平均
が 3.15 以上となっていることがわかった。
d)行動
行動分析は第 1 時,第 2 時の両方の授業ともに
共通して分析が可能であった学習者を対象として,
A 群・TPC 有
1032s/人
B 群・TPC 無
379s/人
A 群では 19 人,B 群では 36 人の分析を行った。
探究的活動の時間は,第 1 時のタブレット PC 有
では 1032s/人,TPC 無では 379s/人,
第2時の TPC
無では 541s/人,TPC 有では 1179s/人であった。
タブレット PC を活用した授業と活用しない授業
図7
第 1 時の TPC 学習行動の割合
の比較から,タブレット PC を活用することで学
習者が探究的に活動する時間が長くなることがわ
かった。また,第 1 時および第 2 時では,クラス
A 群・TPC 無
541s/人
B 群・TPC 有
1179s/人
が異なる A・B 群間と,タブレット PC 活用の有・
無群間の 4 パターンで学習行動の傾向を分析でき
る。図7及び図8から,探究活動においてはクラス
が異なってもタブレット PC を活用した場合と活
図8
第 2 時の TPC 学習行動の割合
用しない場合の学習行動は類似している。
資料1
タブレット PC の活用と学習者の行動
31
H25 揖斐小学校 ICT 活用報告会
TPC を活用する場合は,「A: タブレットを操作する」が主な TPC 学習行動となり,活用しない
場合には「R:ノートを書く」「S:資料を見る」「T:A,R,S 以外」が主な TPC 学習行動となる。対仲
間行動の「M:相談する」の割合は,TPC の有無で異なるとは言えないが,「N:覗き込む」の割合は
TPC を活用した場合に高くなる傾向がある。
以上のことから,評価問題の分析から,TPC を活用した群では事象の理由を説明するような思考
や理解ができていることが明らかとなった。また,TPC 学習行動の分析から TPC を活用した群では
探究的な活動時間が増大し,「N:覗き込む」などの対仲間行動の割合が増加し,「M:相談する」の
時間が長く確保できていたことがわかった。
e)課題
第1回実証授業から上記のことが明らかになったが,第2回実証授業で明らかにしなくてはならな
いこととして,次の4点がある。①評価問題として論述問題を用いて思考力とタブレット PC 活用と
の関連を明らかにする,②意識調査の項目を精選して他の実証授業においても同様の因子が抽出でき
るのかを調べる,③学習者の言動の動機や意識調査などを行動と発話分析から推定する,④小学校に
おいても今回の中学校での実証授業と同様の結果が得られるのかを明らかにする。
(4)第2回実証授業
a)実施内容
第1回実証授業の成果と課題を解決するため,①タブレット PC の活用が思考力に及ぼす影響を論
述問題で調べる,②意識調査の質問項目を精選して調査し因子を抽出し比較する,③学習者の動機や
意識などを行動と発話分析から推定することにした。また,第1回実証授業で得られた中学校での知
○第2回実証授業1(揖斐小学校)
実施時期・場所
2012年7月
とにした。
対象
5年生(1学級,28人)
有効回答数
27人
理科授業は,学習者が知的好奇心や探究心をもっ
教科・単元
理科・台風と天気の変化
て,自然に親しみ,目的意識をもった観察実験を行
コンテンツ・機能 高知大学気象情報頁
タブレット PC
Fujitsu Q550/C 20 台
うことにより,科学的に調べる能力や態度を育てる
○第2回実証授業2(揖斐小学校)
とともに,科学的な認識の定着を図り,科学的な見
実施時期・場所
2012年7月
対象
6年生(2学級,50人)
方や考え方を養うことをめざしている。そのため,
有効回答数
50人(A群25人,B群25人)
教師が提示したり学習者が見つけたりした事象か
教科・単元
理科・植物のからだのはたらき
コンテンツ・機能 カメラ機能
ら学習者が課題をつくりだし,予想を立てて観察実
タブレット PC
Fujitsu Q550/C 20 台
見が小学校においてもあてはまるのかを調べるこ
験を行い,考察し,交流して課題解決する授業が多
く行われている。理科の授業は記録する活動と記録
を整理する活動を含む観察実験と考察に多くの時
タブレットPCの活用と学習者の行動
第2回実証授業の評価方法
間をかけている。日本の理科授業に見られた主な特
徴は,データや現象を解釈する活動,データを収集
し記録する活動,および,教師の指示や教科書に従
第
1
時
評価問題1
ってデータを整理し処理する活動が,より高い割合
で行われているが,データの整理と処理を学習者が
独自に考えて行う活動は見られない (17)との報告が
ある。実証授業においても観察実験の時間を 20~
25 分確保している。理科授業では,教師による提
32
タブレットPCなし
第
2
時
意識調査
タブレットPCあり
評価問題2
図9
資料1
意識調査
客観式評価問題と
論述式評価問題
(評価問題1,評
価問題2)
意識調査(理科の
授業、タブレット
PC操作)
第2回実証授業の流れ
タブレット PC の活用と学習者の行動
H25 揖斐小学校 ICT 活用報告会
示,課題づくり,学級で
タブレットPCの活用と学習者の行動
の話し合いは一斉学習で
第1時
行い,観察実験と考察は
第2時
個人で追求したりペアや
グルーブで行ったりする
活動となる。このような
学習展開ではタブレット
PC は 観察実験と 考察の
場面で用いることが多い。
ほぼ同様の展開
実証授業では観察実験の
資料1
場面でタブレット PC を
活用するので,学習者は
ペアでタブレット PC を
利用し,カメラ機能を使
図 10 6年理科学習指導案
って観察実験の記録をし
たりインターネットを使
った調べ学習で気象衛星
画像を利用したりする。
実証授業は小学校5年
生と6年生で行った。図9
に示すように,タブレット
タブレットPCの活用と学習者の行動
調査用紙
意識調査
・平均の比較
理解、楽しさ、
発表、集中、学
習進度、比較
(検定)
・因子の抽出
PC を活用しない第1時の
後で意識調査と論述問題
(中学校との比較)
操作性
を実施し,タブレット PC
を活用した第2時の後で
意識調査と論述問題を実
施した。第2時は第1時に
連続する授業である。図 10
に示すように,6年生では
観察実験手順
具体的に記述
論述問題
・思考力
観察実験方法
考察の過程
対照実験、ヨウ
素デンプン反応
の結果と結論
第1時と第2時は,ほぼ同
じ展開である。異なる点は,
第1時では日光を当てたジャガイモの葉の
デンプンを調べ,第2時では日光を当てたジ
ャガイモ以外の葉のデンプンを調べている
ことである。タブレット PC はデンプンを調
タブレットPCの活用と学習者の行動
図 11 意識調査と評価問題
評価
質問紙
黒板
IWB
第1次
授業:タブレットPCなし
論述問題
ビデオ
視覚的に
捉えられ
る行動
意識調査
べる場面で活用しており,どちらもヨウ素デ
ンプン反応の実験である。5年生の第1時と
第2時もほぼ同じ展開となっており観察実
第2次
ICレコーダ・マイク
授業:タブレットPCあり
論述問題 ビデオカメラ
意識調査
験の場面でタブレット PC なしの授業とあ
りの授業を比較した。
資料1
タブレット PC の活用と学習者の行動
図 12 行動の記録
発話
マイク
ICレコーダ
33
H25 揖斐小学校 ICT 活用報告会
授業後に実施した6年生の意識調査と評価問題用紙を図 11 に示す。意識調査では,理解,楽しさ,
集中,学習進度,比較,操作性について調べ,平均の比較と因子分析を行った。評価問題は思考力を
調べるため論述問題とし,観察実験方法,考察の過程について記述させた。
実験班ごとに学習者の行動をビデオカメラと IC レコーダ,マイクで記録した。ビデオカメラは図
12 に示すように理科室の四隅の天井近くに設置し,IC レコーダとマイクは実験台と実験台の間の蛇
口付近に設置して,学習の妨げにならないよう配慮した。写真3に6年と5年の授業の様子を示す。
タブレットPCの活用と学習者の行動
タブレットPCの活用と学習者の行動
第1時
第2時
写真3
第1時
第2時
5年と6年の実証授業の様子
b)評価問題の分析
タブレット PC の活用が思考力に及ぼす影響を調べるため実施した論述問題の結果を表8および図
13 に示す。問2の観察実験方法は,5年生では「台
表8
風の進み方を調べる方法」,6年生では「光があ
たったときだけデンプンができることを調べる方
問題
法」について解答させた。5年生問2「観察実験
5年
24 人
方法」では,複数の気象衛星画像から台風の進路
正答 タブレット
PC なし
問2
6人
方法
25.0%
問3
10 人
考察
41.7%
問2
15 人
方法
31.9%
問3
27 人
考察
57.4%
を1枚の地図にまとめて,進んできた方向,進む
6年
47 人
方向を変える場所,遠ざかる方向を調べる方法を
正確に記述できた学習者は第1時が 25.0%,第2
論述問題の正答率
タブレット
PC あり
9人
37.5%
20 人
90.9%
27 人
57.4%
33 人
70.2%
t検定
n.s.
p <.01
p <.01
n.s.
時が 37.5%,観察実験の手順のみを書いた学習者
は第1時が 75.0%,第2時が 62.5%,観察実験に使用する機器や道具のみを記述していた学習者は第
1時,第2時とも 0%で
あった。第1時と第2時
の 正答 率に 有意 な差は
み られ なか った 。問3
「わかったこと」では,
台 風の 進路 の変 化を方
31.9%
25.0%
37.5%
実験方法
実験手順
0%
0%
0%
0%
薬品器具
無解答
57.4%
68.1%
実験方法
75.0%
62.5%
実証授業1
第1時
実証授業2
第2時
実験手順
無解答
6年 わかったこと
41.7%
方位
7%,第2時が 90.9%,
方向
台 風は 日本 付近 で北東
位置
無解答
0%
0%
57.4%
70.2%
考察
90.9%
4.5%
16.7%
4.5%
実証授業1
第1時
実証授業2
第2時
0.0% 20.0% 40.0% 60.0% 80.0% 100.0%
5年 わかったこと
学習者は第1時が 41。
40.4%
0.0%
2.1%
0.0%
0.0%
薬品器具
0.0% 20.0% 40.0% 60.0% 80.0%100.0%
位 で正 しく 記述 できた
方 向に 進む こと だけを
6年 観察実験方法
5年 観察実験方法
40.4%
41.7%
結果
実証授業1
第1時
第2時
実証授業2
一部事実
0.0% 20.0% 40.0% 60.0% 80.0%100.0%
無解答
0.0%
4.3%
2.1%
2.1%
23.4%
実証授業1
第1時
第2時
実証授業2
0.0% 20.0% 40.0% 60.0% 80.0% 100.0%
図 13 論述問題の結果
34
資料1
タブレット PC の活用と学習者の行動
H25 揖斐小学校 ICT 活用報告会
記述した学習者は第1時が 41.7%,第2時が 4.5%,台風の位置だけを記述した学習者は第1時が
16.7%,第2時が 4.5%であった。正答率は第2時のタブレット PC ありの群が第1時のタブレットな
しの群より有意に高くなった。これは5年生では,隣の学習者が操作しているタブレット PC 画面を
覗き込んで見つけた事実や考えたことについて話し合う行動が増えたことで,互いの考えを確かめる
ことができ,より正確な考察が記述できたからだと考えられる。また,観察実験方法は第1次に教師
が提示したため,方法についての話し合いが行われず,「透明シートに写す」などと詳しい観察実験
方法を省略して書いた学習者が多く,差が出なかったためと思われる。
6年生問2「観察実験方法」では,薬品,観察実験の手順,対照実験の方法を正確に記述した学習
者は第1時が 31.9%,第2時が 57.4%,薬品や観察実験の手順だけを記述した学習者は第1時が 68.1%,
第2時が 40.4%であった。正答率は第2時のタブレット PC ありの群が第1時のタブレットなしの群
より有意に高くなった。問3「わかったこと」では,ヨウ素デンプン反応の結果から日光を当てた部
分と当てなかった部分を比較して考察を正確に記述できていた学習者は第1時が 57.4%,第2時が
70.2%,ヨウ素デンプン反応の結果のみを記述した学習者は第1時が 40.4%,第2時が 23.4%であっ
た。第1時と第2時の正答率に有意な差はみられなかった。6年生では光合成の実験方法を正確に記
述できる学習者はタブレット PC ありの群が有意に高くなったが,これはタブレット PC のカメラ機
能を使ってヨウ素デンプン反応の結果を撮影したため,日光を当てた部分と当てなかった部分を比較
する対照実験の意味や観察実験方法について自然に話し合いが行われたためと思われる。実験観察の
考察で有意差がなかったのは,観察実験方法の欄に対照実験の結果を書いてしまい考察欄に書くこと
を省略してしまった学習者がいたため思われる。
c)意識調査
第1時と第2時の授業直後に意識調査を行った。思う→4, 少し思う→3, あまり思わない→2,思
わない→1の4件法で回答を求めた。5年生と6年生の結果を 表9に示す。「思う→4, 少し思う→
3」の合計は,5年生では「4 観察や実験からわかったことや考えたことを,わかりやすく伝えるこ
とができましたか」が第1時で60%,第2時で76%,「5 他の人の考えと比べて,同じ点や違う点を
見つけることができましたか」が第1時で64%,第2時で80%である。他の項目は第1時,第2時と
表9
学年・タブレットPC(TPC)の
有無
5年生と6年生の意識調査
TPC なし
思う+
平均 少し思う
質問内容(項目)
1 理科の授業の課題は,わかりましたか 3.44 88%
2 実験方法は,わかりましたか
3.60 100%
3 仲間と協力して実験ができましたか
3.60 96%
4 観察や実験からわかったことや考えた
ことを,わかりやすく伝えることができ 2.76 60%
ましたか
5 他の人の考えと比べて,同じ点や違う
2.96 64%
点を見つけることができましたか
6 自分にあった方法やスピードで進める
3.24 84%
ことができましたか
7 授業は,よくわかりましたか
3.44 84%
8 楽しく学習できましたか
3.68 100%
9 進んで学習に参加できましたか
3.16 84%
10 授業に集中して取り組むことができ
3.16 80%
ましたか
11 理科が好きですか
3.52 88%
資料1
タブレット PC の活用と学習者の行動
5年
TPC あり
平均
平均の
TPC なし
6年
TPC あり
平均の
思う+
思う+
思う+
少し思うt検定 平均 少し思う 平均 少し思う t検定
3.60
3.80
3.80
100% n.s. 3.78
100% p<.05 3.83
96% n.s. 3.76
96%
98%
93%
3.85
3.87
3.76
3.16
76% p<.05 3.15
85%
3.37
87% p<.05
3.20
80%
n.s.
3.33
93%
3.41
91%
n.s.
3.48
92%
n.s.
3.57
93%
3.65
96%
n.s.
3.56
3.80
3.64
96% n.s. 3.74
100% n.s. 3.83
96% p<.01 3.65
98%
98%
93%
3.86
3.70
3.72
98%
96%
98%
n.s.
n.s.
n.s.
3.56
96% p<.01 3.71
98%
3.78
100%
n.s.
3.64
92%
80%
3.44
n.s.
3.24
100%
100%
96%
n.s.
n.s.
n.s.
87 p<.05
35
資料1
H25 揖斐小学校 ICT 活用報告会
も80%以上となっている。6年生では,第1時と
タブレットPCの活用と学習者の行動
第2時とも全ての項目が80%以上と高い。
意識調査から
意識調査のt検定で「タブレットPCあり」が有
同じ回答の傾向を示す項目
意に高かった項目は,5年生では「2 実験方法は,
タブレットPC活用の有無、5年生と6年生の比較して、
共通する因子を見出すことはできない
わかりましたか」「4 観察や実験からわかったこ
タブレットPCを活用した場合としない場合の比較
示唆
タブレットPCを使った授業
とや考えたことを,わかりやすく伝えることがで
きましたか」
「9 進んで学習に参加できましたか」
6。 自分にあった方法やスピードで観察実
験を進めること
「10 授業に集中して取り組むことができました
9。 進んで学習に参加できた
10。 授業に集中して取り組むことができた
か」であった。6年生では「4 観察や実験からわ
かったことや考えたことを,わかりやすく伝える
図 14 意識調査から
ことができましたか」
「11 理科が好きですか」で
あった。5年生と6年生に共通している項目は「4 観察や実験からわかったことや考えたことをわか
りやすく伝えることができましたか」であった。5年生ではタブレットPCでネット上の台風のデー
タを選択し,透明シートに書き写して,複数の台風の進路から台風の進路の共通性を見出している。
6年生では学習者が用意したいろいろな植物の葉のヨウ素デンプン反応から光のあたる部分だけで
デンプンが作られていることを見つけている。どちらの学年も学習者によって見つけた事実が異なっ
ており,このことがタブレットPCを覗き込んで質問したり説明したりすることなどの「分かりやす
く伝えることができた」という意識につながっていると考えられる。タブレットPCありの群では,
相関 (1%水準,両側) の高い項目として「自分にあった方法やスピードで進めることができた」「進
んで学習に参加できた」「授業に集中して取り組むことができた」が取り出された。 図14に示すとお
り,自分にあった方法やスピードで進めることができたことが,進んで学習に参加できたり,授業に
集中して取り組むことができたりしたという意識につながっていることが示唆された。
5年理科
因
子
1
実証授業1
5 他の人の考えと比べ
て,同じ点や違う点を
見つけることができま
したか
6 自分にあった方法や
スピードで進めること
ができましたか
4 観察や実験からわか
ったことや 考えたこと
を,わかりやすく伝え
ることができましたか
実証授業2
3 仲間と協力して実験
ができましたか
2 実験方法は,わかり
ましたか
6年理科
因
子
1
7 授業は,よくわかり
ましたか
8 楽しく学習できま
したか
因
子
2
9 進んで学習に参加で
きましたか
7 授業は,よくわかり
ましたか
3 仲間と協力して実験
ができましたか
10 授業に集中して取
り組むことができまし
たか
9 進んで学習に参加で
きましたか
2 実験方法は,わかり
ましたか
10 授業に集中して取
り組むことができまし
たか
6 自分にあった方法や
スピードで進めること
ができましたか
1 理科の授業の課題
は,わかりましたか
因
子
3
因4
子
36
8 楽しく学習できま
したか
11 理科が好きですか
5 他の人の考えと比べ
て,同じ点や違う点を
見つけることができま
したか
4 観察や実験からわか
ったことや 考えたこと
を,わかりやすく伝え
ることができましたか
11 理科が好きですか
因
子
3
実証授業2
8 楽しく学習できま
したか
3 仲間と協力して実験
ができましたか
11 理科が好きですか
11 理科が好きですか
3 仲間と協力して実験
ができましたか
4 観察や実験からわか
ったことや 考えたこと
を,わかりやすく伝え
ることができましたか
4 観察や実験からわか
ったことや 考えたこと
を,わかりやすく伝え
ることができましたか
2 実験方法は,わかり
ましたか
2 実験方法は,わかり
ましたか
1 理科の授業の課題
は,わかりましたか
6 自分にあった方法や
スピードで進めること
ができましたか
10 授業に集中して取
り組むことができまし
たか
1 理科の授業の課題
は,わかりましたか
因
子
2
実証授業1
9 進んで学習に参加で
きましたか
9 進んで学習に参加で
きましたか
6 自分にあった方法や
スピードで進めること
ができましたか
10 授業に集中して取
り組むことができまし
たか
7 授業は,よくわかり
ましたか
1 理科の授業の課題
は,わかりましたか
8 楽しく学習できま
したか
5 他の人の考えと比べ
て,同じ点や違う点を
見つけることができま
したか
7 授業は,よくわかり
ましたか
5 他の人の考えと比べ
て,同じ点や違う点を
見つけることができま
したか
因子間の移動は実線、移動がない場合は点線
因子抽出法: 最尤法
回転法: Kaiser の正規化を伴うバリマックス法
図4
図
15 5年生と6年生の因子分析
5~6年生の意識調査の因子分析
資料1
タブレット PC の活用と学習者の行動
H25 揖斐小学校 ICT 活用報告会
小学校理科の意識調査の因子分析を行った。第1時と第2時の意識調査結果の因子分析を行い,抽
出された因子に属する項目の位置を第1時と第2時で比較した。図15に,因子間での移動があった項
目は実線,移動がなかった項目は点線で示す。5年生理科では,第1時で因子1に属していた項目5,
4は第2時の因子3へ移動し,項目6,9,1は因子2へ移動した。第1時で因子2に属していた項目
3,2は第2時の因子1へ移動した。移動しなかった項目は,第1時で因子1に属していた項目7,
因子2に属していた項目10,因子4に属していた項目11であった。6年生では,第1時で因子1に属
していた項目9が第2時の因子2へ移動し,第1時で因子2に属していた項目1が第2時の因子3へ
移動し,第1時で因子3に属していた項目8が第2時の因子1へ移動した。第1時で因子1に属して
いた項目3,11,4,因子2の項目2,10,16,因子3の項目7,5は移動しなかった。小学校理科の意識
調査の因子分析からは,中学校理科の意識調査で取り出された「2)授業への態度」
「3)理科への態度」
資料1
といった因子は取り出すことができなかった。
タブレットPCの使い勝手について調査した。
図16に示すとおり,全ての項目で「思う→4,
少し思う→3」の合計は80%以上と高くなって
いる。ほとんどの学習者がタブレットPCを活用
した授業は,
「12授業がわかりやすくなる」
「13
班内での話し合いがしやすくなる」
「 14仲間の考
え方がよく分かる」と感じていることが分かる。
また,
「15写真は見やすい」
「16タブレットペン
タブレットPCの活用と学習者の行動
授業での活用
思う
少し思う
12.0%4 .0%
0.0%
6年授業がわかりやすくなる
65.2%
26.1%
6.5% 2.2%
5年班内での話し合いがしやすくなる
64.0%
28.0%
4.0%
6年班内での話し合いがしやすくなる
63.0%
ていない。しかし, 図17に示すように5年生と
0%
24.0%0.0%
54.3%
32.6%
64.0%
5年ペンは使いやすい
32.0%
40%
10.9%
2.2%
0.0%
60%
80%
0.0%
0.0%
4.0%
0.0%
21.7% 4.3%
69.6%
20%
4.0%
17.4% 8.7% 2.2%
76.0%
6年写真は見やすい
8.7%
32.0% 0.0%
71.7%
6年仲間の考えがよく分かる
気象衛星画像
台風→ 5年写真は見やすい
光合成→
26.1%
68.0%
5年仲間の考えがよく分かる
6年ペンは使いやすい
6年生の平均を比較し,t検定で有意な差が認め
思わない
84.0%
カメラ機能
は使いやすい」と操作性についての問題を感じ
あまり思わない
5年授業がわかりやすくなる
4.3%
100%
図 16 タブレット PC の使い勝手
られた項目は「15 タブレットPCの写真は,見
やすいですか」である。気象衛星画像を資料と
して利用した5年生が高くなっていた。他の項
目では有意な差は認められなかった。これは,
5年生はWeb上にある高知大学気象情報頁のク
リアな気象衛星画像を利用しており,6年生は
タブレットPCのカメラ機能を利用して葉のヨ
ウ素デンプン反応写真を撮影したからであると
考えられる。タブレットPCのカメラ機能では,
ヨウ素デンプン反応の色の濃淡がわかりにくか
ったり,逆光で撮影したため蛍光灯や窓から差
し込む光の影響を受けてしまったりしたからで
タブレットPCの活用と学習者の行動
意識調査から
「思う+少し思う」で80%を超える項目
12. 授業が分かりやすい
13. 話し合いがしやすい
14. 仲間の考えがよくわかる
授業での活用につい
て肯定的
15. 写真が見やすい
16. タブレットペンが使いやすい
操作性について問題
点を感じていない
5年生と6年生の比較
5年 Webの画像 気象衛星画像
15. 写真が見やすい 6年 カメラ機能 ヨウ素デンプン反応
対話的学びへの影響は意識調査からはわからない
図 17 意識調査
ある。
d)行動
5年生の実証授業を記録したビデオを授業の観察者が分析した。観察実験時間は,タブレットPC
なしの第1時では16分21秒,タブレットPCありの第2時では20分13秒である。観察実験時間が異な
るため60秒あたりのTPC学習行動時間を求めた。7名の抽出児ア)~キ)のTPC学習行動の時間を表10
資料1
タブレット PC の活用と学習者の行動
37
H25 揖斐小学校 ICT 活用報告会
に,TPC学習行動の時
表 10
60 秒あたりの TPC 学習行動
60 秒あたりの TPC 学習行動(秒)
S
T
M
N
15.00
4.04
3.07
3.07
7.02
12.20
1.98
14.24
3.46
15.33
1.17
0.20
4.58
11.03
4.37
9.76
7.57
3.13
3.46
4.70
1.68
6.56
2.19
6.76
6.78
10.17
3.20
4.04
2.85
8.75
6.46
13.07
26.80
4.57
5.28
3.13
13.88
7.88
7.88
8.03
15.91
4.43
5.61
3.91
8.90
9.25
10.47
10.42
21.20
9.52
1.89
1.76
11.34
19.47
3.61
9.76
間 の 平 均 を 図 18 に 示
す。タブレットPCあ
学習者
TPC
なし
あり
なし
あり
なし
あり
なし
あり
なし
あり
なし
あり
なし
あり
ア)
りの 第2時は タブレ
ットPCなしの第1時
イ)
に比べて,R:ノートを
ウ)
書く時間,S: 教科書
やプ リント等 の資料
エ)
を見る時間が減って,
オ)
A:タ ブレット を操作
カ)
する時間,隣の学習者
のタブレットPCをN:
キ)
A
0.00
4.02
0.00
4.68
0.00
7.02
0.00
6.41
0.00
3.15
0.00
2.69
0.00
2.39
R
33.13
19.22
36.78
23.03
39.59
30.61
33.78
16.27
18.85
13.47
28.83
13.02
19.83
12.31
Q
0.78
0.51
0.98
1.42
0.00
1.17
0.00
1.78
0.00
0.97
0.07
0.00
0.39
0.00
F
0.91
0.81
2.09
1.12
1.57
4.02
2.02
4.42
1.37
4.73
1.24
5.24
5.41
1.12
覗き込む時間,M:相
談している時間が増えていた。第1時では印刷配布
(秒)
された気象衛星画像から台風の進路を調べ,第2時
60秒あたりのTPC学習行動・平均(秒)
35.00
30.11
30.00
ではタブレットPCで台風の進路を調べているため,
TPCなし
TPCあり
25.00
S: 教科書やプリント等の資料を見る時間が減って,
18.28
20.00
その時間がA:タブレットを操作する時間となってい
13.82
15.00
た。第1時は個人で課題を追究して自分の考えをノ
10.74
10.29
7.18
7.31
5.28
3.07
3.38
2.97
2.09
0.84
0.32
10.00
ートにまとめる時間(R:ノートを書く時間)が多い
5.00
が,第2時では隣の学習者のタブレットPC画面を自
0.00
然に覗き込んで相談したり質問したりする行動が起
4.34
0.00
A
R
S
こりやすいため,N:覗き込む時間,M:相談している
図 18
時間が増え,その分R:ノートを書く時間が減ってい
70%
60%
名で構成されている。
50%
1班に所属する4名
30%
の学習者ア)~エ)の
TPC学習行動時間の
割合のグラフを 図19
に示す。4人の学習
者に共通するのは,
20%
10%
R
20%
5%3% 5%
1%1% 2%1%
S
T
M
Q
61%
70%
13%
12%
11%
11%
7%
6%4% 8%
3% 5%
0%2% 3%
0%
T
M
20%
2%2% 3%2%
10%
N
Q
F
エ) (ICTなし)
エ) (ICTあり)
27%
30%
16%
7%
2% 0%
S
50%
40%
18%
6%8%
R
56%
60%
26%
8%
0%
A
70%
38%
40%
10%
10%
F
イ) (ICTあり)
50%
20%
N
イ) (ICTなし)
60%
ノートを書く時間が
A:タブレットを操作
30%
0%
A
第1時で多かったR:
ウ) (ICTあり)
40%
24%
20%
12%
7%
7%
0%
51%
50%
0%
30%
減って,第2時では
32%
25%
40%
F
ウ) (ICTなし)
60%
ア) (ICTあり)
Q
66%
70%
ア) (ICTなし)
55%
N
60 秒あたりの TPC 学習行動の平均
た。
理科の実験班は4
T
M
TPC学習行動
11%
5%
11%
0%
22%
17%
15%
11%
7%
5% 7%
3%
0%3%
0%
0%
A
R
S
T
M
N
Q
A
F
R
S
T
M
N
Q
F
図 19 1班の学習者ア)~エ)の TPC 学習行動のカテゴリによる行動の割合
する時間とN:覗き込
む時間が増えていることである。ア)~ エ)のいずれの学習者も一人でA:タブレットを操作している
割合は7~12%と1割程度である。 ア) ~ エ) のいずれの学習者もN:覗き込む時間が増えているが,
38
資料1
タブレット PC の活用と学習者の行動
H25 揖斐小学校 ICT 活用報告会
M:相談している時間はイ)エ)が増えて,ア)ウ)が減っている。これは,図20に示すとおりビデオカ
メラと実験台の横に置いたマイクによる記録では,N:覗き込む時間,M:相談している時間の区別が
難しいためで,記録方法の改善が課題となった。N:覗き込むと,M:相談しているは,隣同士の学習
タブレットPCの活用と学習者の行動
対
人
行
動
タブレットPCの活用と学習者の行動
A. タブレットPC操作
R. ノートプリントへの記入
タブレットPC用のペンを持って画
面にタッチ
S. 資料を見る
(ビ
カデ
メオ
ラ映
3像
)か
ら
プリント・透明シートへの記入
ペンがシート・プリントに接触
T. A、R、S以外の行動
プリントやシートを見ている
シートを重ねて見ている状態
対
仲
間
行
動
授業に関係のない動きなど
対
教
師
行
動
M. 相談
N. 覗き込み
仲間と会話している状態
他の行動と同時に発生→他の
行動優先で分析
Q. 先生に質問
他の児童のノートやシートを覗く
行動の確認
T. 分析不能
資料1
先生に質問している状態
先生に成果を伝えている場合は、
Mとして計算
席から離れる
カメラの死角に入る
図 20 ビデオカメラで記録した学習者の行動
者間でのみ起こるのではなく,実験台に向き合って座っている学習者間でも起こっていた。このとき
タブレットPCの画面の回転やピンチイン・ピンチアウト,スワイプといった操作を効果的に利用し
ていた。また,M:相談するは,N:覗き込む,A:タブレットを操作する,S:資料を見る(教科書,プリ
ント等)
と同時に起こることがあることがわかっ
た。
小学校におけるタブレットPCの学習に与える影響
発話の分析
e)発話
意識調査からタブレット PC ありの授業では
学習者の意欲が高まっており,
内容関与的動機が
学習方法の改善
(19)
につながっていると推測し
た。また,同一授業者による授業であるためベテ
文字起こし
発話者の特定
発話時間の測定
文字数カウント
対話的学び?
・覗き込む
発話 ・相談する
・タブレットPCの操作
発話内容
A.手順
B.作業
C.事実
D.疑問
E.考察
F.助言
文字数には句読点含む
聞き取れなかった会話の文字数は0としてカウント
ただし、発話回数及び時間には反映
発話の時間は動画プレーヤーの再生時間から算出
会話時間は会話「開始時間」←→「終了時間」で算出
開始時間と終了時間が同じ場合は0秒としてカウント
ランと若手教授者の間の違い (20)はなく,教授者
による学習者の行動の差はないものとして,
学習
者の発話分析から TPC 学習行動カテゴリに示さ
れる行動を引き起こす学習者の動機を調べるこ
とにした。教員は学習者の「楽しい」「わかりま
した」
という発話を理解が進んでいるものとして
捉えがちであるが当てにできない (21)といった報
告があり,
ビデオの分析から学習者間のコミュニ
ケーションがジェスチャーなどを交えて行なわ
れていることがわかっているため,
授業観察者が
ビデオ画像と音声記録を組み合わせて発話を分
類することにした。 図 21 に示すとおり,分類の
結果,取り出されたのは,a: 手順(観察実験手順
に係る発話),b: 作業(観察実験操作に係る発話),
c: 事実(観察実験から見つけた事実に係る発話),
資料1
タブレット PC の活用と学習者の行動
日本語の一文 指示語 単語 擬音語 擬態語
タブレットPC画面や資料などを指し示す
ジェスチャー
+ ビデオ画像
図 21 発話内容カテゴリ
タブレットPCの活用と学習者の行動
5年1部1班(26:00-28.59)
開始時刻 終了時刻 継続時間 発話者 分類 発話内容
26:0
26:01 0:01:00
A
C つながってるし
26:01
26:02 0:01:00
A
C 黒の場所が違う
26:02
26:04 0:02:00
B
C ほんとだ、黒が反対向きになっとるよ
26:19
26:20 0:01:00
B
C どっちでもいい、重なっとるよ
気象衛星画像から
26:22
26:23 0:01:00
A
C ちょう、ちょちょちょ
26:26
26:27 0:01:00
B
C どこでもいいんや
見つけた事実につ
26:32
26:32 0:00:00
B
C あ?
タブレットPCの画面を
いての発話
26:37
26:37 0:00:00
B
C ほんで7
指し示しながら
26:38
26:42 0:04:00
B
C 7月,7月
26:42
26:42 0:00:00
B
C じゃん
27:11
27:12 0:01:00
A
C わぁすごい
27:45
27:46 0:01:00
B
E もう終わったの
27:47
27:47 0:00:00
A
E うん
27:51
27:52 0:01:00
D
E ねぇ、これおもしろそう
タブレットPCの画面を
27:52
27:54 0:02:00
D
E これ7月、んでこれ10月に…
指し示しながら
27:53
27:55 0:02:00
C
反対からきたら
27:58
28:0 0:02:00
C
E みんな南からきてそう
28:01
28:02 0:01:00
B
E ○○君、全部反対からや
28:04
28:05 0:01:00
C
E うち、あと7月すごいよ
見つけた事実から
28:06
28:10 0:04:00
D
E ほんとの反対向きや、ほんとの反対向きから。
28:10
28:10 0:00:00
B
こっからきとる
考えられることに
28:12
28:13 0:01:00
B
E うわ
28:15
28:17 0:02:00
B
E ねぇねぇ、〜〜
ついての発話
28:18
28:18 0:00:00
D
E いいよー
来た方位・進む方位
28:19
28:22 0:03:00
B
E これさ、これ南東や、南東から来とる
28:23
28:24 0:01:00
A
E 22,23…
比較
28:27
28:29 0:02:00
B
E 西東北とか南とかどうしよう、まあいいや書くとこないからやめとこう
28:39
28:41 0:02:00
B
E 先生、台風が反対側からきてる
28:43
28:47 0:04:00
T
E 「ええっすねー、あれ、それおかしくない。そんな風になるもん」
28:48
28:49 0:01:00
B
E だってここ
作成したシートを
28:48
28:49 0:01:00
T
E 「どれどれ」
28:49
28:50 0:01:00
B
E 7月のこれ
指し示しながら
28:51
28:53 0:02:00
B
E こっちも
28:53
28:59 0:06:00
T
E 「ふーんほんとや、こっちからこう来て、こう回ってることにはまわってるね」
図 22 発話のカテゴリ化
39
H25 揖斐小学校 ICT 活用報告会
d: 疑問(観察実験から生まれた疑問に係る発話),e: 考察(得られた結果から課題解決を図る考察に係
る会話),f: 助言(操作や手順のアドバイスに係る会話)の6つの発話内容カテゴリである。図 22 に示
すとおり,時系列に沿った発話の文字起こしから,学習者の発話は文章として意味をなすものだけで
なく,タブレット PC 画面や資料などを指し示しながら擬音語や擬態語,指示語,ジェスチャーなど
を交えて行われていた。そのため,授業者または授業観察者以外では,発話記録だけから発話をカテ
ゴリ化することはできなかった。そこで,授業者または授業観察者が発話の文字起こしと,ビデオか
らカテゴリ化の作業を行った。
1班の学習者ア)~エ)の発話内容カテゴリの
タブレットPCの活用と学習者の行動
発話内容カテゴリ出現回数(5年の観察実験)
出現回数を調べた。第1時は全員が同じ台風の
気象衛星画像から台風の進路を調べ,第2時は
複数の台風の進路を調べており,観察実験の時
手順
作業
事実
疑問
考察
助言
間が第1時では 981 秒,第2時では 1,213 秒で
ある。 図 23 に示すとおりタブレット PC なしの
第1時に比べて,タブレット PC ありの第2時
では e: 考察の出現回数が増えていた。
図 24 の表に学習者ア)の発話カテゴリの出現回
第1時 16分21秒 (981秒)
第2時 20分13秒 (1213秒)
数と時間(秒)を示す。観察実験の時間が第1時と
図 23
第2時では異なるため,図 24 のグラフに 60 秒
あたりの学習者 ア)の発話カテゴリの出現時間
第1時 TPCなし
第2時 TPCあり
ア) イ) ウ) エ) ア) イ) ウ) エ)
5
3
2
2
5
3
4
2
6
7
2
4
2
6
5
7
5
7
2
3
3
4
3
2
1
2
1
1
2
1
1
3
2
2
1
1
1
1
1
2
1班
60 秒あたりの発話内容カテゴリ出現回数
タブレットPCの活用と学習者の行動
(秒)を示す。第1時では,配布された気象衛星写
1班の発話内容
真資料から台風の進路を調べる b: 作業の時間
エ)
が最も多くなっていた。第2時では,e:考察の
イ)
ウ)
第1時
第2時
回数 時間(s) 回数 時間(s)
ア)
手順
時間が最も多く,1班では第1時に比べて第2
時が 2.4 倍となっていた。タブレット PC で気
作業
象衛星写真を選択するため学習者によって調べ
b:作業
る台風が異なり,見つけた事実を比較したり質
d:疑問
0.00
考察
18.00
第1時
第2時
実証授業2
第2時
203
317
197
0
124
26
5
2
3
1
3
1
16分21秒
20分13秒
276
55
306
47
364
8
(981秒)
(1213秒)
5.00 10.00 15.00 20.00
1分あたりの発話内容
傾向で e:考察が増えていた。
ア)~エ)の学習者の発話と行動を観察すると,
疑問
助言
7.58
1.59
第1時
0.40 実証授業1
f:助言
が多くなることが分かった。他の班でも同様の
12.05
15.14
0.00
2.32
e:考察
(S)
19.39
2.72
c:事実
問したり互いの考えたこと交流したりする時間
事実
12.42
13.65
a:手順
5
6
5
0
1
1
図 24
60 秒あたりの発話内容カテゴリ
タブレットPCの活用と学習者の行動
4名の会話中は,ほぼ同じ発話カテゴリとなる。
1分あたりの発話回数,発話した文字数,発話時間
しかし,個人の操作や作業を行っているときは
異なる行動をとっていることがある。そこで,
1班の4名の学習者の発話の回数,文字起こし
をした文字数,発話時間について調べた。図 25
は1班の学習者ア)~エ)の1分あたりの発話回
数,発話した文字数,発話時間である。ア),イ)
の学習者とウ),エ)の学習者の席は隣り合ってい
1.47
ア)
3.36
風の進路の特徴を読み取ろうとしていた。どの
40
発話回数
(回)
ア)
10.28
27.95
5.50
1.83
1.83
ウ)
0.00
2.00
発話文字数
(文字)
発話時間
1.65
7.58 (秒)
ア)
25.38
2.81
イ)
エ)
る。第1時では学習者は配布された資料から台
第2時
第1時
4.00
6.00
5.75
53.52
イ)
実証授業1
第1時
ウ)
実証授業2
第2時
3.91
エ)
3.36
実証授業1
第1時
実証授業2
第2時
12.91
15.11
32.72
29.42
0.00
20.00
40.00
イ)
ウ)
エ)
60.00
8.50
3.36
2.39
0.00
実証授業1
第1時
実証授業2
第2時
5.02
3.79
5.00
10.00
図 25 発話回数・文字数・発話内容
資料1
タブレット PC の活用と学習者の行動
H25 揖斐小学校 ICT 活用報告会
学習者も台風4号の資料を使っていたので,覗き込む行動は少なかった。第2時ではタブレット PC
を介して覗き込む行動が増えていた。覗き込む行動は隣に席の学習者との間で起こっており,ウ),エ)
の学習者は覗き込みながら相談する行動が増えていた。なお,発話文字数は学習者の発話が指示語,
擬音語や擬声語,ジェスチャーなどを含んで完全な文章となっていないため文字数に含まれず, ウ)
の学習者の発話文字数が発話時間に比べて少なくカウントされている。ア),イ)の学習者は,第1時
では,台風の位置を1枚の透明シートに写し取って比較するという作業に係る発言が多かった。第2
時では作業内容が明確になっていたため,作業に係る発言が減っており,ア),イ)の学習者の発話時
間が短くなり,覗き込んで相談する時間が増えていた。
f)課題
第2回実証授から,小学校理科観察実験にタ
タブレットPCの活用と学習者の行動
ブレット PC を活用した授業では,タブレット
学習者の行動から
PC を介してペアやグループでの会話が生まれ,
タブレットPC
会話の内容は本時の課題解決に結びつく考察の
タブレット PC 画面の絵図や写真,資料,動きや
大きさや形を表す擬音語や擬態語,ジェスチャ
ーがコミュニケーションの手段として用いられ
ていた。論述問題で観察実験方法を正確に記述
できたり,本時の学習内容を課題と関わらせて
ペアやグループでの会話
本時の課題解決に結びつく考察の時間の割合が多くなる
コミュニケーションの手段
発話文,指示語、単語,タブレットPC画面の絵図や写真,
資料,擬音語や擬態語,ジェスチャー
時間の割合が多くなることがわかった。その際,
意味をなす発話文だけでなく,単語,指示語,
理科室で行われる小学校
理科観察実験の場面
観察や実験からわかったことや考えたことをわかりやす
く伝えることができるという児童の意識
論述問題で観察実験方法を正確に記述できたり,本時の
学習内容を課題と関わらせて的確に記述できたりする
推定:
タブレットPCを使った授業と対話的学びとが関連
図 26 タブレット PC を使った授業と対話的学
び
的確に記述できたりすることが,対話的学びと関連しているとの示唆が得られた。また,タブレット
PC を使った授業では観察や実験からわかったことや考えたことをわかりやすく伝えることができる
という学習者の意識と対話的学びとが関連しているとの示唆が得られた。そこで,図 26 に示すように
タブレット PC を介して隣の学習者や同じ班の学習者との対話的学びがあると推定した。
しかし,
個々
の学習者について分析すると,学習者によってはタブレット PC 活用の有無が意識調査等に影響を与
えない場合があることも明らかになった。学習内容によってタブレット PC を使わなくても解決でき
ると考える学習者の場合,タブレット PC 活用を選択できるようにした授業の方が望まし学習形態と
なるため,第3回実証授業で検証することにした。
(5)第3回実証授業
a)実施内容
これまでの実証授業により,タブレット PC を活用しても意識調査の結果や論述問題の正答率が変
化しない学習者がいることがわかり,タブレット PC を活用しなくても課題解決の見通しがもてる学
習者にとってはタブレット PC 活用の必然性がないことが示唆された。そこで,タブレット PC 活用
を選択可とする実証授業を計画した。中学校3年数学二次関数単元では,学習者が表,式,グラフを
相互に関連付けて二次関数を理解し,具体的な事
それらの変化や対応を調べて y=ax 2について理
実施時期・場所
対象
有効回答数
教科・単元
コンテンツ・機能
解する。表,式,グラフを相互に関連付けて理解
タブレット PC
象をとらえ説明することをめざしている。授業で
は具体的な事象の中から二つの数量を取り出し,
資料1
タブレット PC の活用と学習者の行動
2012年11月
池田中学校3年生(4学級,156人)
141人(A群70人,B群71人)
数学・2次関数
岐阜県中数研シミュレーション
Fujitsu Q550/C 20 台
41
資料1
H25 揖斐小学校 ICT 活用報告会
することが苦手で,立式できない学習者には,繰
タブレットPCの活用と学習者の行動
り返しシミュレーションできたり,表,式,グラ
第3回実証授業の評価方法
フの関係を説明したりするなど,
学習者に応じた
適切な対応が必要である。そこで,導入で提示す
る具体的な事象として,
第1時では車と電車の動
第
1
時
A群
B群
タブレットPC
選択可
タブレットPC
なし
評価1
評価1
意識調査
意識調査
タブレットPC
なし
タブレットPC
選択可
評価2
評価2
意識調査
意識調査
きを,
第2時では図形の動く様子をシミュレーシ
ョンで提示した。導入は一斉授業で,IWB を活
用した。学習者の中には,IWB による提示を見
第
2
時
ただけで,表,式,グラフを使って課題解決がで
評価1として第1
時のワークシート
を利用
評価2として第2
時のワークシート
を利用
意識調査(理科の
授業、タブレット
PC操作につい
て)
きる学習者もいれば,
自分でシミュレーションソ
図 26 第3回実証授業の流れ
フトを操作して具体的な事象と表やグラフの関
タブレットPCの活用と学習者の行動
係を納得してから立式したいと考える学習者も
実証授業の流れ
いる。自分の手でシミュレーションするためには,IWB で
視聴したシミュレーションソフトをタブレット PC で操作
80名
80名
A群
B群
する必要がある。そこで,
学習者に教室の隣のワークスペー
第1次
スに用意されたタブレット実証授業1
PC の活用を選択できることを
実証授業1
タブレットPC選択可
タブレットPCなし
ワークシート
ワークシート
伝えた。授業後半の教室での話し合いの場面では,課題解決
に取り組んだ結果を IWB に提示したり,タブレット
PC の
意識調査
意識調査
画面を提示したりして交流した。
第2次
実証授業2
実証授業2第2時
実証授業は4クラスをA群とB群に分け,
第1時,
タブレットPCなし
タブレットPC選択可
ワークシート
ワークシート
の2時間の授業を行った。図 26 に示すとおり,A群は第1
時でタブレット PC 選択可とし,第2時でタブレット
PC な
意識調査
意識調査
しとした。B群は第1時でタブレット PC なしとし,第2時
タブレットPCを活用した子ども
A群 20名
B群 29名
では選択可とした。実施時期は
2012 年 11 月である。A群
2012年11月実施
では 20 人がタブレット PC を活用し,
B群では 29 人が活用
した。実証授業は二次関数単元で,第1時は一定の速度で走
る車に一定の加速度の電車が追いつくまでの時間と距離を
図 27 第1時と2時のワークシート
求める問題であり,第2時は移動する図形がもう一つの図形と重なる部分の面積と時間の問題である。
第2時の問題は難易度が高く,第1時,第2時ともほぼ同じ授業展開である。導入は一斉授業で実施
タブレットPCの活用と学習者の行動
し,IWB で図形のシミュレーションを提示した。課題提示後,タブレット
PC の使用を希望した学習
行動の記録
者は隣のワークスペースに用意されたタブレット
PC を活用した。希望しない学習者は,教室で図 27
タブレットPCの活用と学習者の行動
タブレットPC活用を選択できる習熟度別指導の効果
に示すワーク
シートを使っ
て課題解決に
選択可とする
タブレットPCを活用しなくて
も、課題が解決できると考える
子ども
上方から撮影
黒板
タブレットPCの活用によって
より速く正確に課題が解決でき
ると考える子ども
IWB
タブレット
PC
あたった。タブ
レット PC には,
導入で利用し
たシミュレー
ションソフト
がインストー
42
ワークシートで考える
・VTRで記録
・音声を記録
・タブレットPCで画面
(操作)を記録
タブレットPCを活用する
学習者の行動・意識調査・ワークシート
ビデオカメラ
普通教室
ワークスペース
図 28 選択可として行動を記録
資料1
タブレット PC の活用と学習者の行動
H25 揖斐小学校 ICT 活用報告会
ルしてあり,繰り返しシミュレーションしたり,途中で止めて表やグラフと比較したりした。学習者
の活動の様子を記録するため,図 28 に示すように教室とワークスペースの高所にビデオカメラを設置
した。また,操作したタブレット PC で学習者のタブレット PC 操作と会話を記録した。
b)評価問題
ワ ーク シート には学
習者の 課題解決の手 順
ワークシートの分析
や考え が記載されて お
グラフ
り,第3回実証授業では
タブレット PC が学習
者の思 考力に及ぼす 影
資料1
響をワ ークシートの 分
析から 調べることに し
た。ワークシートには図
式
ワークシート
の感想欄の
記述を分析
29 に示す表,グラフ,
式,感想欄を設けた。図
30 に示す表,グラフ,
式の記 載内容の評価 の
観点で,ワークシートに
書かれている表,グラフ,
表
図 29 ワークシート
式の記 述について授 業
観察者が点数化した。各評価の観点を1点とし,
4つの評価の観点を全て満足していれば4点,
無記入の場合は0点である。
表 11 に,第1時でタブレット PC を活用し,
第2時で活用しなかった学習者 20 人(有効回答
数 18 人)の平均値を示す。式,表,グラフとも
第1時と第2時の平均値に有意な差はみられな
かった。表 12 に,第2時でタブレット PC を活
用し,第1時では活用しなかった学習者 29 人
(有効回答数 27 人)の平均値を示す。式と表は平
タブレットPCの活用と学習者の行動
ワークシートの各項目の評価の観点
上位群・下位群で分析
・車の距離と時間の関係を立式
する
・電車の距離と時間の関係を立
式する
・正しく計算できる
・答えを正しく記述できる
グラフ
・縦軸,横軸の数値,単位,原点を
記入する
・1分ごとのxとyのプロットする
・なめらかな線で各点を結ぶ
・2本の線の交点を求める
子どもにも既知の評価の観点
式
・適正な時間(x)の値をとれる
・電車の動いた距離(y)を求め
る
・車の動いた距離(y)を求める
・値の一致した所を見つける
表
均値に有意な差はみられなかったが,グラフの
平均値は第2時が有意に高くなっていた。第1
時,第2時ともタブレット PC を選択した学習者は数学
の成績下位の学習者であった。式,表に比べてグラフの
平均値は有意に低くなって(p<.01)おり,タブレット PC
ワークシート
の感想欄の
記述を分析
・文意
・テキストの分析
(同じセンテンス内
で、グラフ、式、
表の文字と同時に
と同時に現れる文
字・単語)
図 30 ワークシートの評価の観点
表 11 第1時でタブレット PC 活用
平均値
t 検定
第1時
第2時
式
3.21
3.37
n.s.
表
3.68
3.84
n.s.
グラフ
2.79
2.74
n.s.
を選択した学習者にとって,二次関数のグラフを正確に
書いて課題解決を図ることの難易度が高いことが分か
る。第1時でタブレット PC 活用のコースを選択した数
学の成績下位の学習者の平均値はタブレット PC を使わ
資料1
タブレット PC の活用と学習者の行動
表 12 第2時でタブレット PC 活用
平均値
t 検定
第1時
第2時
式
3.36
3.25
n.s.
表
4.00
4.00
n.s.
グラフ
2.61
3.68
p<.001
43
H25 揖斐小学校 ICT 活用報告会
ない第2時の平均値と変わらないことから,タブレット
PC を活用しないと数学の成績下位の学習者の平均値が
上がらないことが分かる。また,第1時でタブレット
PC を使わなかった学習者が第2時でタブレット PC を
活用すると式と表の平均値は変わらないが,グラフの平
表 13 第1~2時でタブレット PC なし
平均値
t 検定
第1時
第2時
式
3.50
3.59
n.s.
表
3.71
3.80
n.s.
グラフ
3.46
3.01
p<.01
均値が有意に高くなる。このことから,数学の成績下位
式
表
グラフ
表 14 第1時
平均値
活用しない
活用する
3.42
3.17
3.77
3.67
3.39
2.67
式
表
グラフ
表 15 第2時
平均
活用しない
活用する
3.64
3.17
3.93
4.00
3.55
3.69
の学習者がタブレット PC を活用すると,グラフを正確
に書けるようになり,グラフを使って課題解決ができる
学習者が増えることが分かった。
t 検定
n.s.
n.s.
p<.05
第1時でも第2時でもタブレット PC を選択しなかっ
た学習者(有効回答者 88 人)の第1時と第2時の平均値
を表 13 に示す。式と表は平均値に差は見られなかったが,
グラフの平均値には有意な差がみられ,第2時が第1時
より低くなっていた。第2時の課題は難易度が高く,第
2時の方が正確にグラフを書くことができる学習者が
t 検定
n.s.
n.s.
n.s.
PC の活用,または教師の助言が必要であったことが
グラフ
表 16 抽出された語彙
第1時 第2時 計
イメージしやすい
19
29 48
グラフ
簡単に分かる
17
27
44
分かる。
グラフ
特徴が分かる
18
26
44
15
2
28
13
43
15
2
7
9
少なくなっている。これらの学習者には,タブレット
A群の第1時でタブレット PC を選択した学習者
(18 人)と選択しなかった学習者(56 人)の平均値を表 14
に示す。式と表は平均値に有意な差はみられなかった
表
分かりやすい
仲間の意見
分かった
電子黒板
理解できた
が,グラフの平均値には有意な差がみられ,タブレット PC を活用しない学習者が高くなっていた。
数学の成績下位の学習者がタブレット PC を選択しており,二次関数のグラフを正確に書いたりグラ
フを使って課題解決を行ったりすることに困難さがあることが分かる。
B群の第2時でタブレット PC を選択した学習者(42 人)と選択しなかった学習者(27 人) の平均値
を表 15 に示す。式,表,グラフの平均値に有意な差はみられなかった。数学の成績が下位の学習者は,
タブレット PC を活用すると成績の上位や中位の学習者と同じくらい正確なグラフを書くことができ
たと考えられる。
ワークシートの感想欄の自由記述から,課題解決に関係する語彙を抽出した。抽出に用いたテキス
トは,第1時でタブレット PC を活用するコースを選択した学習者 20 人と第2時でタブレット PC
を活用した学習者 29 人である。抽出された語彙を表 16 に示す。抽出された語彙はグラフに関するも
のが最も多く,イメージしやすい=48,簡単に分かる=44,特徴が分かる=44 となっており,グラフ
が「イメージしやすい」ことが学習者にはわかりやすさにつながっていた。続いて多かった語彙は,
表が分かりやすい=43 となっており,事象と表の数字の関係を関連付けて理解できたことがわかりや
すさにつながっていた。次に多かったのは,仲間の意見=15 である。タブレット PC を介して隣の学
習者との会話が自然に行われ,課題解決につながる考察や教え合いが行われていたことがわかる。グ
ラフのイメージのしやすさに加えて,他の学習者との話し合いが課題解決につながっていることが分
かった。
44
資料1
タブレット PC の活用と学習者の行動
H25 揖斐小学校 ICT 活用報告会
c)意識調査
表 17 選択した学習者としなかった学習者の意識の比較
第1時または第2時で,タブレ
ット PC を活用するコースを選択
問
した学習者(45 人)と,一度も使わ
(1)楽しく学習することができたと思いますか
(2)進んで参加することができたと思いますか
(3)仲間と協力して参加することができたと思い
ますか
(4)今日の学習は満足できたと思いますか
(5)授業に集中して取り組むことができたと思い
ますか
(6)学習したことをもっと調べてみたいと思いま
すか
(7)他の考えと比べて,同じ点や違う点を見つけ
ることができたと思いますか
(8)じっくりと考えて,自分の考えを深めること
ができたと思いますか
(9)解き方を工夫することができたと思いますか
(10)問題の解き方について,順序立てて考えるこ
とができたと思いますか
(11)考えたことを,わかりやすく伝えることがで
きたと思いますか
(12)わかったことや考えたことを,ノートなどに
わかりやすくまとめることができたと思いま
すか
(13)学習した内容を覚えることができたと思い
ますか
(14)学習した内容を仲間や先生に正しく説明で
きると思いますか
(15)自分にあった方法やスピードで進めること
ができたと思いますか
(16)学んだ内容はこれからの学習に役立つと思
いますか
(17)あなたは数学が好きですか
なかった学習者(98 人)の意識調
査の結果を表 17 に示す。意識調
査は,4:大変,3:少し,2:
あまり,1:まったくの4件法で
回答させた。タブレット PC を選
択した学習者と選択しなかった
学習者の意識調査に有意な差は
認められなかった。また,タブレ
ット PC を選択した学習者の感想
には,「タブレットで簡単に分か
るし,グラフが正確になっている
から分かりやすかった」「タブレ
ットを使ってグラフがどんな感
じかイメージし,表がわかりやす
かった」など,グラフの理解に有
効であるとの記述がみられた。ビ
デオ記録から,タブレット PC を
活用したほぼ全ての学習者は,シ
ミュレーションを繰り返してグ
ラフや表を繰り返し表示したり
平均値
TPC TPC t 検定
なし 選択
3.35 3.44
n.s.
3.38 3.40
n.s.
3.58 3.58
n.s.
3.43 3.42
n.s.
3.55 3.56
n.s.
3.00 3.00
n.s.
3.26 3.20
n.s.
3.33 3.34
n.s.
3.09 2.91
n.s.
3.22 3.04
n.s.
3.04 2.91
n.s.
3.32 3.40
n.s.
3.35 3.18
n.s.
3.13 2.87
n.s.
3.24 3.12
n.s.
3.30 3.38
n.s.
2.90 2.73
n.s.
隣の学習者のタブレット PC を覗
き込んで相談したりしていた。タブレット PC を選択しなかった学習者は上位・中位の学習者がほと
んどで,タブレット PC を使わなくても課題解決ができ,意識調査の平均値が高い。タブレット PC
を選択した学習者は数学の成績が下位の学習者がほとんどだが,タブレット PC を活用することで二
次関数のグラフを理解することができ,全員が課題を解決することができた。その結果,意識調査の
平均値も高くなり,タブレット PC 選択の有無による有意な差がみられないものと思われた。
学習者は 1 時間の授業で考えたりわかったりしたことをワークシートに記載する。そこで,学習者
が 1 時間の授業で習得したことをワークシートの記載から推定することにした。表,グラフ,式の評
価の合計が 0~9 のものを下位群,10~12 のものを上位群とした。意識調査の有効回答数は,A群の
上位群 41 名,下位群 30 名,B群の上位群 50 名,下位群 16 名である。A群とB群の第1時と第2
時の上位群と下位群の意識調査の平均値を表 18 に示す。A 群は,タブレット PC の活用を可能とした
第1時では,(2),(3),(4),(8),(9),(10),(11),(12),(13),(14),(15)の質問項目について,上位
群の方が下位群より有意に高かった。タブレット PC を活用しなかった第2時で,上位群の方が下位
群より有意に高い質問項目は,(2),(3),(4),(5),(6),(7),(8),(9),(10),(11),(12),(13),(14),
(15),(16)であった。B 群は,タブレット PC を活用しなかった第1時では,(1),(2),(6),(7),(8),
(9),(17)の質問項目について,上位群の方が下位群より有意に高かった。タブレット PC の活用を可
資料1
タブレット PC の活用と学習者の行動
45
資料1
H25 揖斐小学校 ICT 活用報告会
表 18 意識調査
意識調査質問項目
(1)楽しく学習することができ
たと思いますか
(2)進んで参加することができ
たと思いますか
(3)仲間と協力して参加するこ
とができたと思いますか
(4)今日の学習は満足できたと
思いますか
(5)授業に集中して取り組むこ
とができたと思いますか
(6)学習したことをもっと調べ
てみたいと思いますか
(7)他の考えと比べて,同じ点や
違う点を見つけることができた
と思いますか
(8)じっくりと考えて,自分の考
えを深めることができたと思い
ますか
(9)解き方を工夫することがで
きたと思いますか
(10)問題の解き方について,順
序立てて考えることができたと
思いますか
(11)考えたことを,わかりやす
く伝えることができたと思いま
すか
(12)わかったことや考えたこと
を,ノートなどにわかりやすく
まとめることができたと思いま
すか
(13)学習した内容を覚えること
ができたと思いますか
(14)学習した内容を仲間や先生
に正しく説明できると思います
か
(15)自分にあった方法やスピー
ドで進めることができたと思い
ますか
(16)学んだ内容はこれからの学
習に役立つと思いますか
(17)あなたは数学が好きですか
A群
B群
第1時
第2時
第1時
第2時
平均値
平均値
平均値
平均値
t検
t検
t検
t検
上位群 下位群 定 上位群 下位群 定 上位群 下位群 定 上位群 下位群 定
3.51
3.23
3.56
n.s.
3.58
3.34
n.s.
3.42
2.81 p<.01 3.50
2.94 p<.01
3.20 p<.05 3.77
3.21 p<.01 3.32
2.81 p<.05 3.46
3.12
n.s.
3.83
3.37 p<.01 3.62
3.21 p<.05 3.58
3.06
n.s.
3.64
3.24
n.s.
3.73
3.27 p<.01 3.53
3.07 p<.05 3.50
3.19
n.s.
3.42
3.06
n.s.
3.66
3.43
n.s.
3.79
3.43 p<.05 3.55
3.50
n.s.
3.63
3.29 p<.05
3.07
2.77
n.s.
3.38
2.75 p<.01 3.08
2.63 p<.05 3.13
2.82
n.s.
3.44
3.13
n.s.
3.51
3.16 p<.05 3.08
2.67 p<.05 3.23
2.94
n.s.
3.59
3.07 p<.01 3.62
3.09 p<.01 3.29
2.56 p<.01 3.38
3.00
n.s.
3.22
2.47 p<.01 3.36
2.84 p<.05 3.02
2.38 p<.01 3.29
2.82 p<.05
3.39
2.90 p<.01 3.59
2.79 p<.01 3.08
2.81
n.s.
3.27
2.82
3.12
2.57 p<.01 3.28
2.67 p<.01 2.96
2.44
n.s.
3.25
2.65 p<.01
3.56
3.07 p<.01 3.46
2.81 p<.01 3.37
3.00
n.s.
3.50
2.82 p<.01
3.51
3.07 p<.01 3.49
2.96 p<.01 3.35
3.13
n.s.
3.38
3.00
n.s.
3.22
2.77 p<.05 3.26
2.54 p<.01 2.88
2.60
n.s.
3.17
2.75
n.s.
3.41
2.93 p<.01 3.51
2.78 p<.01 3.18
2.87
n.s.
3.32
2.82 p<.01
3.49
3.20
n.s.
3.63
2.98 p<.01 3.20
3.13
n.s.
3.35
3.00
2.85
2.50
n.s.
3.00
2.56
1.94 p<.01 3.25
n.s.
3.02
n.s.
n.s.
2.35 p<.01
能とした第2時で,上位群の方が下位群より有意に高い質問項目は,(1),(5),(9),(11),(12),(15),
(17)であった。意識調査の結果は,下位群に比べて上位群の平均値が高くなる傾向があることを示し
ている。A群とB群の上位群と下位群の第1時と第2時の平均値の比較では,上位群,下位群とも,
第1時と第2時の意識調査の結果に有意な差はみられなかった。「(2)進んで参加することができたと
思いますか」は,A群の第1時と第2時では上位群の方が有意に高いが,B群の第1時では上位群が
有意に高く,第2時では下位群の平均値が高くなって上位群との有意な差がみられない。タブレット
PC を活用できるコースを用意しておくと,数学の成績が下位の学習者にとって二次関数のグラフの
書き方や意味が理解しやすくなり,第1時で二次関数のグラフを理解すると第2時はタブレット PC
がなくてもグラフを使って課題解決がしやすくなるため,A群では第1時でタブレット PC を活用し
て第1時から上位群の意欲が高かったのに対して,B群では第2時でタブレット PC を活用したため
46
資料1
タブレット PC の活用と学習者の行動
H25 揖斐小学校 ICT 活用報告会
第2時で下位群の平均値が高くなったものと思われた。「(15)自分にあった方法やスピードで進める
ことができたと思いますか」は,A群の第1時と第2時では上位群の方が有意に高く,B群の第1時
では上位群との有意な差がみられないが第2時では上位群が有意に高くなっている。第1時でタブレ
ット PC を活用して自分にあったスピードで学習ができたA群に対して,第2時でタブレット PC を
活用したB群の上位群の平均値が高くなったためと考えられた。(5)の「授業への集中」は,A群,B
群ともに第1時では上位群と下位群との有意な差は認められないが,第2時では上位群の平均値が有
意に高くなっている。これは,第1時で初めて二次関数のグラフの書き方や立式の方法を学んだ学習
者が難易度の高い問題の解決にあたった第2時で,長い時間をかけた考察に集中して取り組んだこと
を示している。タブレット PC の活用と授業への集中との関係は見いだせなかった。「(6)学習したこ
とをもっと調べてみたいと思いますか」と「(7)他の考えと比べて,同じ点や違う点を見つけることが
できたと思いますか」は,A群の第1時では上位群と下位群の差がないのに対して,第2時では上位
群が有意に高くなっていた。B群では第1時では上位群が有意に高いのに対して,第2時では差は認
められなかった。これは,難易度の高い問題の解決にあたった第2時で課題を解決することができた
上位群の学習者が二次関数に興味を持ち,「もっと調べてみたい」「話し合いで仲間の意見を真剣に
聞いて比較した」と感じているのに対して,B群では第2時でタブレット PC を活用したため,下位
群の平均値が高くなったのに対して上位群の平均値がさほど高くならなかったためと思われた 。
「(11)考えたことを,わかりやすく伝えることができたと思いますか」と「(12)わかったことや考え
たことを,ノートなどにわかりやすくまとめることができたと思いますか」は,A群では,第1時,
第2時とも上位群が有意に高いのに対して,B群では第1時では上位群と下位群の差が認められない
のが第2時では上位群が有意に高くなっている。これは,タブレット PC の画面にグラフ,表,図形
の位置を表示できることから,画面を参考にしてグラフを作成したり,タブレット PC の画面を示し
て説明できたりしたことが影響していると考えられた。因子分析から,(8),(15),(10),(13),(9),
(14),(4),(2),(11),(7),(12),(3),(1)は,第1因子として取り出され,対象や他者との対話的な
学びに係る因子とした。第1因子のA群の平均値は,上位群が 3.47,下位群が 3.00 であり,B群の
平均値は,上位群が 3.51,下位群が 2.96 である。上位群の意識は高く,下位群の意識は有意に低く
なっている。
d)発話
タブレットPCの活用と学習者の行動
発話内容カテゴリによる分類
分類 発話内容カテゴリ
実証授業3ではタブレット PC を活用した学
1
a:手順
習者のビデオ記録,タブレット PC に記録された
2
b:作業
3
c:事実
4
d:疑問
5
発話
No
発話記録 11-14-4-43 96~108
発話 文字起こし
者
分
類
96
a
なに,その丸
6
97
b
600って
6
98
a
見やすいところで見たら
6
99
b
ここやな
6
e:考察
100
a
600メートルで60秒のところや
5
6
f:助言
101
b
なんで(確認)
5
7
その他
102
a
600メートル
5
103
b
これに代入してみればいいんじゃね
5
104
a
思ったけど,これに代入すればいいんじ
ゃね
5
28 に示す。タブレット PC を活用している学習
105
b
ワイイコール6分の1エックスの二乗に
5
106
a
代入するの
5
者は,画面を指し示したりタブレット PC を操作
107
b
ワイイコール6分の1かける6,6ね
5
108
a
だから,6を代入・・・
5
発話と操作記録を元にして,学習者の発話を分
析した。ワークスペースに設置したタブレット
PC で記録した学習者の発話の文字起こしを 表
したりして発話しているため,発話だけでは発
話の内容が明確にはならない。そこで,文字起
図 28 学習者の行動の記録
こしとタブレット PC 画面の記録,ビデオ記録を組み合わせて学習者の発話を分類した。分類は図 28
の左表に示す発話内容カテゴリに従った。図 28 の写真一番手前のタブレット PC で記録した学習者 a
と学習者 b の間で交わされた発話 No.96~108 の発話記録の文字起こしを 図 28 の右表に示す。タブレ
ット PC を操作している学習者の発話と画面を記録できたタブレット PC は 21 台である。全てのタ
資料1
タブレット PC の活用と学習者の行動
47
資料1
H25 揖斐小学校 ICT 活用報告会
タブレットPCの活用と学習者の行動
ブレット PC の発話記録を分類した。1人 1 台
発話内容カテゴリとTPC学習行動のカテゴリ
のタブレット PC を使っている学習者は 18 名,
分類
記号 TPC学習行動のカテゴリ
2人 1 台のタブレット PC を使っていた学習者
対人行動
は 6 名である。1人 1 台のタブレット PC を使
っている学習者同士で互いのタブレット PC を
対仲間行動
覗き込んで会話が行われていた。
対教師行動
A
タブレットを操作する
R
ノートを書く
S
資料を見る(教科書,プリント等)
T
A,R,S以外
M
相談する
N
覗き込む
Q
先生に質問する
発話内容カテゴリ
a: 手順(操作手順に係る発話)
b: 作業(タブレットPCの操作に係る発話)
c: 事実(操作から見つけた事実に係る発話)
d: 疑問(見つけた事実から生まれた疑問に係る発話)
e: 考察(得られた結果から課題解決を図る考察に係る会話)
f: 助言(操作や手順のアドバイスに係る会話)
図29に示すとおりタブレットPCで記録された
学習者の発話のほとんどは,TPC学習行動カテ
ゴリの対人行動の「A:タブレットPCを操作す
る」,対仲間行動の「M:相談する」「N:覗き込
タブレットPC教育利用研究会
図 29 発話内容カテゴリと TPC 学習行動カテゴリ
む」に該当していた。図30に全タブレットPCに
記録された発話内容カテゴリの割合の平均を示
タブレットPCの活用と学習者の行動
す。シミュレーションソフトを使ってxの値を細
発話内容カテゴリの割合
発話内容カテゴリの割合
かく変化させながらyの値やグラフの変化を読
み取る「c:事実」に係る発話が最も多く27.2%で
1
a:手順,
12.4%
あり,次に見つけた事実に基づいて式を考えた
り答えを求めたりする「e:考察」に係る発話が
0%
e:考察,
26.7%
その他,
7.2%
f:助言, 6.1%
20%
40%
60%
80%
100%
対人行動
18.4%
対仲間行動
74.4%
シミュレーションソフトを
使ってxの値を細かく変
化させながらyの値やグ
ラフの変化を読み取る
見つけた事実に基づ
いて式を考えたり答え
を求めたりする
業で「c:事実」「e:考察」の割合が多くなること
る発話の割合(第2回実証授業)の「e:考察」34.5%,
d:疑問,
14.4%
b:作業, 6.0%
26.7%となっていた。タブレットPCを使った授
は,全員がタブレットPCを活用した理科におけ
c:事実,
27.2%
「c:事実」28.9%と同じ傾向となっている。また,
二次関数の表やグラフ
の基本的な理解のため
に活用
図 30 学習者の行動の記録
理科では4.4% しかない「d:疑問」に係る発話が,
タブレットPCを選択した今回の数学では14.4%
となっている。数学と理科では学習内容が異な
るため比較は困難である。しかし,xの値を1増
加した場合のyの値は簡単に求めることができ 1
タブレットPCの活用と学習者の行動
タブレットPC活用を選択した学習者の発話内容
二次関数に係る発話の内容
グラフ, 表, 23.1%
16.9%
式, 21.0%
ても,0.1増加させた場合のyの値を求めることに
時間がかかるため,点と点を滑らかな曲線で結
ぶ意味がわからなかったり,表と立式の関係が
理解できなかったりする学習者が疑問を解決す
るためにタブレットPCを活用していることがわ
0%
20%
40%
関連付け
た, 31.8% その他,
7.2%
60%
80%
100%
グラフと表を関係づけて話し
ていたり表と式を関係づけて
話していたりした生徒
•二次関数の基本についての会話
•課題解決に向けた会話
かった。
発話の内容をグラフに関する発話,表に関す
図 31 学習者の行動の記録
る発話,式に関する発話に分類すると,図31に示すように,表は23%,式は21%,グラフは17%で,
グラフと表を関係づけて話していたり表と式を関係づけて話していたりする割合が32%と最も多く
なっていた。これは, 発話内容カテゴリの割合で,シミュレーションソフトを使ってxの値を細かく
変化させながらyの値やグラフの変化を読み取ったり,見つけた事実に基づいて式を考えたり答えを
求めたりする発話の割合が多くなっていたことからも明らかなように,二次関数の基本について理解
しながら,グラフ,表,式を関連させて課題解決を図っていたことが分かる。
48
資料1
タブレット PC の活用と学習者の行動
H25 揖斐小学校 ICT 活用報告会
d)課題
学習者がタブレットPCを活用したのは,観察実験と考察をお
タブレットPCの活用と学習者の行動
タブレットPCが学習に及ぼす影響
こなった課題解決の20~24分である。タブレットPCを選択した
発話等の分析
•グラフの意味や書き方がわからない生徒
•何度もシミュレーションを行ってグラフを描画
•グラフを対比して、表や式との関係を理解
学習者は数学の成績が下位の学習者がほとんどで,タブレット
PCのシミュレーションを繰り返してグラフと表,式との関係を
有効な支援として機能
•数学の成績下位の生徒がタブレットPCを活用するコースを選
択する傾向
•グラフのイメージを正確につかもうとしたり,事象と表やグラ
フの関係をつかんでから課題解決にあたろうとした
理解しようとしており,タブレットPC活用がグラフの理解や作
成に有効であった。発話記録からも,グラフの描き方や意味,
グラフの理解は第1時から活用した方が効果的
•第1時でタブレットPC活用のコースを選択した生徒はタブレ
ットPCを使わない第2時においても課題解決できる
表の数値とグラフの関係,問題に書かれている自動車や電車,
タブレットPCの活用と学習者の行動
図形の位置関係に係る「c:事実」,そこからわかることや考え,
タブレットPCを介した対話的学び
発話の割合
立式との関係に係る「e:考察」,グラフの描き方や意味,表の数
c:事実 グラフの描き方や意味,表の数値とグラフの関
係,問題に書かれている自動車や電車,図形
の位置関係
e:考察 時事からわかることや考え,立式との関係
d:疑問 グラフの描き方や意味,表の数値とグラフの関
係等の疑問
値とグラフの関係等の疑問を隣の学習者に尋ねたり疑問に回答
したりする「d:疑問」の発話が多くなっていることが分かり,中
学3年二次関数の学習においてはタブレットPCを介して教材や
仲間との出会いがあり,対話的学びがあると推論した。
二次関数の基本
資料1
•タブレットPCを選択した生徒は数学の成績が
下位の生徒がほとんど
•タブレットPCを活用した20~24分の分析
今回は,中学校において,タブレットPCを活用しない授業と
図 32 タブレット PC 活用の効果
選択できる授業を比較した。そこで,小学校において,タブレ
ットPCなし,選択可,全員タブレットPC活用の授業の比較を行い,中学校3年二次関数の学習と同
様の結果が得られるかを調べることにした。
(6)第4回実証授業
a)実施内容
第4回実証授業は,TPC 学習行動カテゴリと発話内容
第1時
カテゴリの割合を比較するため小学校理科植物「からだ
のはたらき」単元で,タブレット PC なし,タブレット
PC あり,タブレット PC 選択可の授業を実施し,学習者
の行動と発話について調べた。
実施時期・場所
対象
有効回答数
教科・単元
コンテンツ・機能
タブレット PC
2013年6月
揖斐小学校6年生(1学級,28人)
28人
理科・植物のからだのはたらき
WEBカメラ(CMS-V34BK)
第2時
Fujitsu Q550/C 20 台
写真4に示すとおり,第1時は日光を当てなかった植物
の葉と日光に当てた葉を比較する実験である。光を当て
た葉と当てなかった葉のヨウ素デンプン反応を IWB で
拡大提示することができる。そのため,タブレット PC
第3時
のカメラ機能を利用する必要がないため,タブレット PC
なしの授業として実施する。第2時は,植物のからだの
中には水を運ぶ管があることを確かめる実験である。赤
く染まった水の通り道をルーペで観察するだけでなく,
画像として残すためタブレット PC に接続されたマイク
資料1
タブレット PC の活用と学習者の行動
写真4
第1~3時の授業の様子
49
H25 揖斐小学校 ICT 活用報告会
第1時
第2時
第3時
ロスコープカメラを利用するタブレット PC
ありの授業である。グループ全員が同時に結
果を確かめることができ,交流が活発に行わ
れ事実の把握,考察がより効果的に行われる
と考えられる。また,実物では計測が難しい
導管(維管束)の数や直径の計測を行うこと
も可能となる。第3時は,葉から水蒸気が蒸
散していることを確かめる実験である。植物
にビニル袋をかけた直後の様子を画像に残す
ことで数時間後の様子と客観的に比較ができ
るタブレット PC 選択可の授業である。また,
グループによっては教室外の植物で実験を行
うことが考えられ,全体での交流の際に結果
を画像として提示することで伝わりやすい発
表となる。
第1~3時の指導案を図 33 に示す。
教室全体を撮影するビデオカメラと班毎に
設置したビデオカメラで学習者の行動を記録
した。発話とタブレット PC の操作はタブレ
ット PC で記録した。
50
図 33 植物のからだのはたらきの指導案
資料1
タブレット PC の活用と学習者の行動
H25 揖斐小学校 ICT 活用報告会
b)行動と発話
タブレット PC を全ての班が活用した第2時の授業とタブレット PC を選択可能とした第3時の授
業の様子を写真5に,TPC 学習行動と発話内容カテゴリのグラフを図 34 に示す。第2時では,児童
はタブレット PC に接続したマイクロスコープカメラを使ってジャガイモの茎や葉を拡大して,水の
通り道を調べた。観察実験に要した時間は 25 分 12 秒である。第3時では,屋外の観察園にて班で用
意した植物の蒸散を観察,理科室に戻って水が蒸散するための水の出口を調べた。観察実験に要した
時間は観察園での 1 分 06 秒と理科室での 11 分 26 秒の合計 12 分 32 秒である。第2時と第3時の観
察実験の児童の行動と発話を分析した。
資料1
エ)
イ)
ウ)
ア)
写真5
0%
20%
児童ア 60
75
1班の第2時(左)と第3時(右)の観察実験とタブレット PC 画面の記録
40%
60%
728
65
80%
0%
100%
373
A:タブレット操作
211
00
R:記録・ノート
20%
児童ア
21
69
児童イ
109
40%
229
0
60%
80%
310
100%
A:タブレット
210
00
S:観察実験
S:観察実験・試料
児童イ 0 231
999
児童ウ
813
0 245 0
0 253 26
0
3
T:A,R,S以外
452
N:覗き込む
2
0
0
304
177
0
180
68
10
T:A,R,S以外
25
60
N:覗き込む
M:相談・話し合い
児童ウ
365
53 59
Q:質問
331
0
210 173
730
0
329
児童エ
70
00
301
324
24
(秒)
0%
20%
児童ア
40%
81
60%
0
80%
71
0%
100%
20%
児童ア
0 18 0
40%
60%
25
02
a:観察実験操作手順
190
27
0
41
0 8 0
c:事実
0
(秒)
80%
100%
10
0
0
a:観察実験操
b:タブレットPC
児童イ 0
6
0
4
4
c:事実
0
d:疑問
d:疑問
児童ウ
59
8
49
0 24 0
e:考察
児童ウ
32
6
16
29
e:考察
34
0
f:助言
児童エ
61
0
31
0 17 0
児童エ 0 7
9
5
(秒)
31
f:助言
0
(秒)
図 34 第2時(左)と第3時(右)の TPC 学習行動カテゴリと発話内容カテゴリ
資料1
タブレット PC の活用と学習者の行動
Q:質問
0
00
b:タブレットPC操作
児童イ
M:相談・話
F:その他
F:その他
児童エ
R:記録・ノー
51
H25 揖斐小学校 ICT 活用報告会
マイクロスコープカメラの接続されたタブレット PC は班に1台である。 表 19 に TPC 学習行動カ
テゴリと発話内容カテゴリの割合を示す。
タブレット PC やマイクロスコープカメラの操作をする A:タブレット操作の時間は,第2時では児童
ア: 4.0%,イ: 0.0%,ウ: 53.8%,エ: 13.9% ,第3時では児童ア: 2.5%,イ: 13.0%,ウ: 43.5%,
エ: 35.9%となっている。水の通り道を観察するために茎や葉の切片を作ったり葉の表面を観察した
りする観察実験の S:観察実験・資料の時間は,第2時では児童ア:48.1%,イ:66.1%,エ:48.3%,第3時
では児童ア:27.3%,イ:21.1%となっている。用意されたジャガイモの茎や葉の観察をした第2時では
主に児童ウがタブレット PC とマイクロスコープカメラ操作を担当し,観察園での蒸散の観察と理科
室での水蒸気の出口の観察を行った第3時では,主に児童ウがマイクロスコープカメラ,児童エがタ
ブレット PC を担当した。班に1台のタブレット PC を活用する場合,タブレット PC やマイクロス
コープカメラ操作を担当する児童の A:タブレット操作の時間が多くなり,操作しない児童では観察実験
の S:観察実験・資料 の時間が長くなっていることが分かる。
M:相談・話し合いの時間は,第2時では児童ア: 24.7%,イ: 16.7%,ウ: 29.9%,エ: 21.8% ,第2時
では児童ア: 36.9%,イ: 21.5%,ウ: 39.5%,エ: 22.6%となっている。N:覗き込むの時間は,第2時
では児童ア: 14.0%,イ: 1.7% ,ウ: 0.1%,エ: 4.6% ,第3時では児童ア: 25.0% ,イ: 8.1%,ウ:
3.0%,エ: 0.0%となっている。相談したり話し合ったりする時間は第2時が 23.3%,第2時 30.1%で
あり,観察実験での役割に関係なく観察実験全体の2~3割の時間となっている。タブレット PC を
全ての班が活用した場合も選択して活用した場合も,観察実験全体の2~3割の時間を使って茎や葉
の観察から分かったことを班の4人で話し合って課題解決を図っていることが分かる。 N:覗き込むの
時間は,第2時ではタブレット PC を操作している児童ウを除く児童アにはあるが,児童イとエでは
ほとんど見られない。
第3時ではタブレット PC を操作している児童ウとエを除く児童アにはあるが,
児童イにはほとんど見られない。これは,今回の観察実験は役割を分担して行うためタブレット PC
操作,観察する植物の薄片を作る操作といった具合に一人一人の手順が決められていることと,相
談・話し合いはタブレット PC に記録された植物の拡大画像を見ながら行われるためである。
表 19
TPC 学習行動カテゴリと発話内容カテゴリの割合
第2時 (6 月 28 日)
1512秒
A:タブレット操作
児童
ア
4.0%
児童
イ
0.0%
児童
ウ
53.8%
児童
エ
13.9%
第3時 (7 月 2 日)
839秒
A:タブレット操作
児童
ア
2.5%
児童
イ
13.0%
児童
ウ
43.5%
児童
エ
35.9%
R:記録・ノート
S:観察実験・資料
5.0%
48.1%
15.3%
66.1%
0.0%
16.2%
11.4%
48.3%
R:記録・ノート
S:観察実験・資料
8.2%
27.3%
36.2%
21.1%
6.3%
7.0%
38.6%
2.9%
T:A,R,S 以外
M:相談・話し合い
4.3%
24.7%
0.0%
16.7%
0.0%
29.9%
0.0%
21.8%
T:A,R,S 以外
M:相談・話し合い
0.0%
36.9%
0.0%
21.5%
0.0%
39.5%
0.0%
22.6%
N:覗き込む
Q:質問
14.0%
0.0%
1.7%
0.2%
0.1%
0.0%
4.6%
0.0%
N:覗き込む
Q:質問
25.0%
0.0%
8.1%
0.1%
3.0%
0.7%
0.0%
0.0%
F:その他
0.0%
0.0%
0.0%
0.0%
F:その他
0.0%
0.0%
0.0%
0.0%
6月28日
1512秒
a:観察実験操作手順
児童
ア
5.4%
児童
イ
1.8%
児童
ウ
3.9%
児童
エ
4.0%
7月2日
839秒
a:観察実験操作手順
児童
ア
3.0%
児童
イ
0.0%
児童
ウ
3.8%
児童
エ
0.0%
b:タブレット PC 操作
c:事実
0.0%
4.7%
0.0%
2.7%
0.5%
3.2%
0.0%
2.1%
b:タブレット PC 操作
c:事実
0.0%
0.0%
0.7%
0.0%
0.7%
1.9%
0.8%
1.1%
d:疑問
e:考察
0.0%
1.2%
0.0%
0.5%
0.0%
1.6%
0.0%
1.1%
d:疑問
e:考察
0.2%
1.2%
0.5%
0.5%
3.5%
4.1%
0.6%
3.7%
f:助言
0.0%
0.0%
0.0%
0.0%
f:助言
0.0%
0.0%
0.0%
0.0%
52
資料1
タブレット PC の活用と学習者の行動
H25 揖斐小学校 ICT 活用報告会
発話は第2時では観察実験時間の 32.7%,第3時では 26.2%であった。第2~3時は植物体の茎や
葉の道管の観察をするため試料の切片を作成する時間が多くを占めていた。第2時の発話では, a:観
察実験操作手順は,児童ア: 5.4%,イ: 1.8%,ウ: 3.9%,エ: 4.0%,観察実験から見つけた c:事実は,
児童ア: 4.7%,イ: 2.7%,ウ: 3.2%,エ: 2.1%, e:考察は児童ア: 1.2%,イ: 0.5%,ウ: 1.6%,エ: 1.1%
となっており,a:観察実験操作手順,c:事実 ,e:考察の順で多い。第2時では,児童は植物体をルーペや
双眼実態顕微鏡,マイクロスコープカメラの接続されたタブレット PC で観察するにあたり,観察実
験の手順について話し合う必要がある。そのため,観察実験の前半では植物体の観察する部分,切片
作成や機器操作の分担や手順についての発話が多く,観察実験の後半ではこれらの機器を活用して見
つけた事実についての発話や考察の発話が多くなっていた。タブレット PC の操作は習熟しており b:
タブレット PC 操作に関する発話はほとんどなかった。また,水の通り道を予想してから観察を行って
いたため, d:疑問 に関する発話もほとんどなかった。第3時の発話では,a:観察実験操作手順 は,児童
ア: 3.0%,イ: 0.0%,ウ: 3.8%,エ: 0.0% ,c:事実は,児童ア: 0.0%,イ: 0.0%,ウ: 1.9%,エ: 1.1%,
e:考察は,児童ア: 1.2%,イ: 0.5%,ウ: 4.1%,エ: 3.7%,d:疑問は,児童ア: 0.2%,イ: 0.5%,ウ: 3.5%,
エ: 0.6%,b:タブレット PC 操作は,児童ア: 0.0%,イ: 0.7%,ウ: 0.7%,エ: 0.8%であった。観察実験
の前半では,向かい合って座っている児童アとウの間でマイクロスコープカメラを使って調べる方法
についての発話があった。観察実験の後半では一人一人の児童が見つけた事実に基づいて水蒸気の出
口についての話し合いが行われ,タブレット PC に保存された画像を見ながら見つけた事実に基づい
て考察が行われていた。
第4回実証授業では班に1台のタブレット PC を使い,これまでの1人1台や2人に1台のタブレ
ット PC を使った授業との比較を行った。その結果,4人の班に1台のタブレット PC を使った場合
N:覗き込む 時間が少ないことが分かった。このことは班で観察実験を行う場合,役割を分担して観察
実験が行われるため,一人一人に分担された操作などを行っているときは「覗き込む」時間がないこ
とを示している。また,タブレット PC とマイクロスコープカメラを別の児童が操作している場合は
マイクロスコープカメラを操作している児童が「覗き込む」ことを示している。観察実験後半の班で
の話し合いの場面で,タブレット PC の画面を4人で確認しながら話し合いが行われるため,観察実
験前半での覗き込みは少なくなっていることがわかった。
c)課題
第4回実証授業では,1人1台のタブレット PC,2人に1台のタブレット PC,班に1台のタブ
レット PC を活用した場合の比較を行うと同時に,第1時:タブレット PC を使わない授業,第2時:
使った授業,第3時:選択した授業を比較する予定であった。しかし,第3時で全ての班がタブレッ
ト PC を選択したため,比較できなかった。そのため,第5回実証授業では,タブレット PC を選択
した場合の比較を行う予定である。
3
おわりに
タブレット PC が授業に活用されるようになり,その成果が問われている。タブレット PC も他の
ICT 機器と同様,道具の一つであり,本時のめあてを達成するために効果が見込める場合に使用すべ
きである。また,授業のどの場面でどのように用いるのが効果的であるのかを知ってから活用すべき
である。
今回の実証授業ではタブレット PC の活用が効果的であると予想される場面で活用している。
その場合,学習者の意欲が高まり,その背景に,自分にあった方法やスピードで進めることができた
資料1
タブレット PC の活用と学習者の行動
53
資料1
H25 揖斐小学校 ICT 活用報告会
ことが,進んで学習に参加できたり,授業に集中して取り組むことができたりしたという意識につな
がっていることが示唆された。また,論述問題の分析から,繰り返し調べたり,納得できるまで繰り
返したり,隣の児童生徒のタブレット PC を覗き込んで自然に話し合いが行われたり考察の時間が増
えたりすることが,論述問題の正答率を高くしていることが示唆された。さらに,成績上位の児童生
徒がタブレット PC 活用の必要性を感じない場合,成績上位の児童生徒の意識調査や論述問題の結果
への影響はみられないが,成績下位の学習者がタブレット PC を活用する場合には意識調査と論述問
題の正答率が高まることが明らかになってきた。今後,タブレット PC を選択する授業についての調
査を行う予定である。
また,タブレット PC 活用の効果が見込める授業と効果が見込めない授業についての調査を行い,
学習指導計画に反映する予定である。
参考文献
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調査研究報告書
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小学校版 ~実証事業 3 年間の成果をふまえて~
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(8) 堀達司(2011),情報通信技術で学びは変わるのだろうか,日本教育情報学会第 27 回年会論文集, pp.18-19.
(9) 佐藤学(1995),学びの対話的実践へ,学びへの誘い,東京大学出版
(10) 角方寛介,加藤直樹,山崎謙介(2008),タブレット PC を用いた他の生徒のノートを覗けるノートシステムの開発,
情報処理学会第 70 回全国大会講演論文集, pp.4-739-740.
(11) 山本朋弘,清水康敬(2006),IT を活用した学習場面における集中度と行動分析に関する検討-小学校5年社会科
で IT を活用した授業の分析から-,日本教育工学会論文誌 30(Suppl.), pp.93-96.
(12) 野嶋栄一郎(1998),授業を分析する力-授業の記述,分析の意義-,成長する教師,金子書房
(13) 文部科学省 (2009) 教育の情報化に関する手引
(14) 横山隆光 他(2012) 中学校理科・数学における電子黒板等 ICT 機器の活用事例の収集・分析と電子黒板等 ICT 機
器を効果的に活用する指導計画の作成.上月情報教育研究助成事業報告書
(15) 文部科学省(2009),電子黒板の活用により得られる学習効果等に関する調査研究
(16) 文部科学省(2005),教育の情報化の推進に資する研究報告書(IT を活用した指導の効果等の研究等)
(17) 小倉康ほか(2007) 優れた小中学校理科授業構成要素に関する授業ビデオ分析とその教師教育への適用.国立教育
政策研究所
(18) 市川伸一(2001) 学ぶ意欲の心理学. PHP 研究所
(19) 村井護晏,水越敏行(1982),教授学習過程のコミュニケーション相互作用分析,日本教育工学雑誌 6, pp.99-113.
(20) 塚本栄一 他1名(2001) 学習者の理解変容に関与する発話分析,日本教育情報学会誌 17(2),25-34
(21) 赤堀侃司 他1名(2012),学習教材のデバイスとしての iPad・紙・PC の特性比較,白鴎大学教育学部論集 2012,6(1) ,
pp.15-34
(22) 齋藤陽子,久世均ほか(2010) 我が国と諸外国における授業のビデオ分析と教員養成への活用効果に関する研究
【Ⅰ】 ~英国の授業デザイン分析手法の開発~. 日本教育情報学会第 26 回年会論文集, 187-188
(23) 横山隆光ほか(2012) タブレット PC を活用した中学校理科授業における評価手法の検討. 日本教育情報学会第 28
回年会論文集, 258-259
(24) 横山隆光ほか(2012) 小学校理科におけるタブレット PC の学習に及ぼす影響,日本教育工学会研究報告集
JSET12-5,pp.147-154
(25) 加藤直樹ほか(2012) 中学校におけるタブレット PC 活用に関する実践研究の検討,日本教育情報学会第 28 回年会
論文集, pp.254-255
(26) 下田淳ほか(2012) 中学校理科授業におけるタブレット PC 活用場面の効果分析,日本教育情報学会第 28 回年会論
文集, pp.256-257
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資料1
タブレット PC の活用と学習者の行動