無機-有機コンポジット電解質 を用いた中温無加湿作動 燃料電池 豊橋技術科学大学 豊橋技術科学大学 電気・ 電気・電子情報工学系 教授 松田 厚範 豊橋技術科学大学 新技術説明会 2014.7.15 1 新技術の概要 固体高分子形燃料電池(PEFC)において 新規の電解質の開発に成功 ・本電解質は、無機固体酸ミリング複合体を 含むコンポジット膜で構成され、優れた膜強 度、可撓性、熱安定性を有する ・本コンポジット膜は、中温(150℃前後)、 無加湿条件でPEFCの運転を可能とする ・本コンポジット膜を用いた燃料電池にて160℃無加湿条 件で、世界トップレベルの高出力発電が可能であること を実証した ・中温・無加湿条件でPEFCの1000h連続発電試験に 成功した 豊橋技術科学大学 新技術説明会 2014.7.15 2 想定される用途 • 中温領域(150℃前後) ・無加湿での運転を可能 とする新型の固体高分子形燃料電池(PEFC) • まずは、家庭用(定置型)燃料電池 への普及が期待される。 • 将来的には、自動車への搭載も可能 と思われる。 定置型燃料電池 出典; http://home.osakagas.co.jp/search_buy/e nefarm/story/index.html • 想定される利用者・対象・業界(市場)など 定置型燃料電池製造メーカー 自動車用燃料電池製造メーカー トヨタ・日野 バス トヨタ・日野・ 日野・FCHVバス 燃料電池用部材供給メーカー 愛知万博シャトルバス http://ja.wikipedia.org/TOYOTA_FCHV_Bus.jpg 豊橋技術科学大学 新技術説明会 2014.7.15 3 研究背景 燃料電池 燃料と酸素の燃焼反応を利用して電気を作る 我が国のエネルギー環境において、燃料電池は革新的なエネルギー高度利用技術として位置づけられて いる。燃料電池は、化学エネルギーを電気エネルギーへ直接的に変換する発電装置で、火力発電装置に 比べ発電効率が高く、発電過程でNOx やSOx を排出しないクリーンなエネルギー源である。 プロトン伝導性電解質形燃料 プロトン伝導性電解質形燃料電池 伝導性電解質形燃料電池 (Proton exchange fuel cells (PEFCs)) H2 H+ O2 e- H+ e- H+ eアノード H+ 電解質 e出展:特許庁平成23年度 特許出願技術動向調査 報告書(概要)燃料電池 e- eカソード 膜電極複合体 MEA : Membrane Electrode Assembly H2O 出力密度とエネルギー効率が高い 自動車、携帯機器、家庭用発電源 有害物質を生成しないクリーンシステム : H2 2H+ + 2e: ½O2 + 2e- O2: H2 + ½O2 H2O アノード カソード 全反応 豊橋技術科学大学 新技術説明会 2014.7.15 4 研究背景 各燃料電池の使用温度領域と想定発電出力の違い 想定発電出力 / kW 1000 100 中温領域 100~ ~200oC 本研究開発が 目指す温度領域 固体酸化物形 SOFC りん酸形 PAFC 10 1 0.1 固体高分子形 PEFC 100 装置の小型化 900 500 発電効率 大 使用温度 / oC 豊橋技術科学大学 新技術説明会 2014.7.15 5 従来技術とその問題点 都市ガス・LPガス・灯油 部材に過酷 な環境 水素 白金被毒防止 の為、CO除去 が必須 加湿器 必須 排熱利用効率 が低い 定置型燃料電池基本構造 出展:特許庁平成23年度特許出願技術動向 調査報告書(概要)燃料電池より ・電解質膜(フッ素系)が高価、耐久性・強度に難 ・水がないとプロトン伝導不能 運転(発電)には加湿が必須/運転温度は100℃未満 豊橋技術科学大学 新技術説明会 2014.7.15 6 従来技術とその問題点 加湿せずに運転(プロトン伝導)できれば・・・ BASF社 Danish Power Systems社 リン酸によるプロトン伝導 中温・無加湿での発電可 ただし・・・ PBI:ポリベンズイミダゾール 出力を確保するためには 大量のリン酸ドープが必要 成膜 運転中のリン酸の浸出 リン酸ドープ 連続運転不能 連続運転不能 周辺部材の 周辺部材の腐食 発電特性の 発電特性の低下 豊橋技術科学大学 新技術説明会 2014.7.15 7 新技術の特徴・従来技術との比較 無機固体酸ミリング複合体(新規の固体電解質)をPBI に分散させた電解質(コンポジット膜)を開発 本コンポジット膜/リン酸ドープ電解質膜を用いることで 中温無加湿で作動するPEFCの開発に成功 リン酸ドープ量の大幅低減と、高い発電性能との両立 に成功 リン酸浸出が殆どない PEFCの PEFCの 中温無加湿での長期運転を実現する 加湿器不要 CO除去器不要 白金被毒の回避 排熱利用効率向上 小型化 長寿命化 製造コスト低廉化 ランニングコストの低廉化 豊橋技術科学大学 新技術説明会 2014.7.15 8 新技術の内容 無機固体酸プロトン伝導体: 導電率測定 CsHSO4など-高プロトン伝導性(>140oC) H3PW12O40 など-耐水性が低い Temperature / C o 160 140 120 100 80 メカノケミカル処理 -2 新しいプロトン伝導性電解質 遊星型ボールミル 遊星型ボールミル ポット 台盤 ボール 試料 -1 広い温度領域温度領域-無加湿で 無加湿で高いプロトン伝導性 いプロトン伝導性を 伝導性を発現 95KHS5WPA -3 log(σ σ / S cm ) Csx H3-xPW12O40 など 40 60 95NHS5WPA -4 90CHS10WPA -5 WPA・ ・6H2O KHSO4 -6 NH4HSO4 -7 -8 in dry N 2 atmosphere 2.3 2.5 2.7 3 10 T / K 大きな衝撃 で最大33.4 G きな衝撃 : 700 rpmで 最大 豊橋技術科学大学 新技術説明会 -1 2.9 2014.7.15 CsHSO4 3.1 -1 9 新技術の内容 メカノケミカルミリング合成 メカノケミカルミリング合成 PBI(ポリベンゾイミダゾール ポリベンゾイミダゾール) ポリベンゾイミダゾール 合成 無機固体酸複合体 PBI 膜 N N N H N H PBI 合成装置 遊星ボールミル 触媒付電極 n polybenzimidazole (PBI) 120℃以上で高いプロトン伝導性 (リン酸ドープ)PAPBI 無機-PBI コンポジット電解質 高い機械安定性 MEA [A]名称:「電解質膜、燃料電池、及び電解質膜の製造方法」,出願人:豊橋技術科学大学, 発明者:松田厚範 他, 出願日:2010年11月26日, 出願番号:PCT/JP2010/071131 豊橋技術科学大学 新技術説明会 2014.7.15 10 新技術の内容 3モル( モル(100wt%) 100wt%)までのリン wt%)までのリン酸 までのリン酸はPBIの PBIの構造中窒素と 構造中窒素と化学的に 化学的に結合 従来 PBI-リン酸系 新技術 プロトン伝導パス 過剰にドープされたフリーのリン酸によって プロトン伝導を行う リン酸浸出 H+ O HO P HO OH N N N N H H HO O PBIPBI-ミリング複合体系 ミリング複合体系 PBIに化学的に結合されたリン酸-リン酸の間に、 飛び石のように、開発した無機固体酸ミリング複 合体(固体電解質)が導入される。 低リン酸ドープ率の状態で高導電率を実現 O OH P HO H+ HO P OH OH リン酸浸出 リン酸浸出 豊橋技術科学大学 新技術説明会 2014.7.15 11 新技術の内容 1.0 400 Potential / V 0.8 300 0.6 200 0.4 100 0.2 0 0 0 1500 500 1000 Current density / mA cm-2 Power density / mW cm-2 電流-電圧曲線 H2/O2システム 、150 oC-無加湿 電極:Pt/C (Pt=0.5 mg cm-2) 電解質:50Si50Cs-PBI PADL=3 mol 340 mWcm-2以上を達成 [A]名称:「電解質膜、燃料電池、及び電解質膜の製造方法」,出願人:豊橋技術科学大学, 発明者:松田厚範 他, 出願日:2010年11月26日, 出願番号:PCT/JP2010/071131 豊橋技術科学大学 新技術説明会 2014.7.15 12 新技術の内容 Current density -2 / mA cm at 0.5 V H2/O2システム・電極 : Pt/C (Pt=0.5 mg cm-2)・150 oC-Anhydrous 0.5 V固定→電流値測定 600 電解質:PA composite PADL=3mol 開放電圧, 電流-電圧曲線測定 400 140mW cm-2 200 0 0 200 400 600 800 Time / h 0.5 Vの定電位で800時間以上の連続運転を達成 (約34日間) 豊橋技術科学大学 新技術説明会 2014.7.15 13 新技術の内容 H2/O2システム・電極 : Pt/C (Pt=0.5 mg cm-2)・150 oC-Anhydrous 1.0 300 Potential / V 0.8 0.6 200 0.4 0.2 0 0 0h 192h 24h 48h 72h 168h 576h 300 600 900 1200 Current density / mA cm-2 100 0 1500 Power density / mW cm-2 電解質:PA composite PADL=3mol 約72時間でほぼ物質拡散が完了していることを確認 約600時間の間 最大値と同等の出力が得られた 豊橋技術科学大学 新技術説明会 2014.7.15 14 300時間以上の間、0.2Aで3V程度の値を維持し、OCVも4.6V程度の安定した値を示し続けた。 新技術の内容 5スタックセルを作製し発電試験を実施 作製したコンポジット膜がスタックセルによる発電が可能 であり、実用的に連続運転可能であることが実証された。 300ml 2 1 0 100ml 200ml 200 400 600 Current density / mA cm-2 500 0 /V 3 OCV 5 at 0.2A 1000 300時間以上 時間以上の 程度の 時間以上の間、3V程度 程度の値を維持 Potential Potential / V 4 Power density / mW cm-2 5 300ml min-1の流量で 流量で1182mW cm-2の最大出力 最大出力 4 3 2 ※ 電流:0.2A固定 燃料:300ml min-1 1 0 100 200 300 Time / h 400ml I-V curves of fuel gas flow dependence for 5 stack cell using 2.8mol PA doped 50CHS50WSiA-PBI at 150℃ and anhydrous. ※ 燃料供給停止 Constant current measurement for 5 stack cell using 2.8mol PA doped 50CHS50WSiA-PBI at 150 ℃ and anhydrous. 豊橋技術科学大学 新技術説明会 2014.7.15 15 新技術の内容 H+ Od Oc S Oa H Od' Oc' S Ob プロトンホッピング CsHSO4(CHS) O Ob' O S メカノケミカル処理 O H H N + N N H N H H トリアゾール 系(Tz) N N O H H+ H H+ Oa' H+ H プロトン自己拡散 HCHS HNH in Tz Intensity (a.u.) CHS x=90 x=80 x=70 x=60 無機固体酸とアゾール 無機固体酸とアゾール化合物 とアゾール化合物 が複合化した 複合化した全 した全く新しい プロトン伝導体 プロトン伝導体の 伝導体の開発に 開発に成功 x=50 Tz 16 15 14 13 12 Chemical shift / ppm 11 10 ※CHS(x)-Tz(100-x) CHSとTzの間で新しい酸-塩基クラスタが形成 [B]名称:「プロトン伝導体及びプロトン伝導体の製造方法」, 出願人:豊橋技術科学大学, 発明者:松田厚範 他,出願日:2011年7月22日, 出願番号:PCT/JP2011/066666 豊橋技術科学大学 新技術説明会 2014.7.15 16 新技術の内容 CHS 相転移(140℃)から急激に増加 x=80 x=70 x=90 CHSの 相転移 Tz 融点(121℃)から急激に増加 x=60 x=50 CHS Tzの融点 Tz CHS-Tz複合体 複合体 低温から 低温から高 から高い導電率を 導電率を示す 新たなイオン伝導 たなイオン伝導パスの 伝導パスの形成 パスの形成 ※CHS(x)-Tz(100-x) 豊橋技術科学大学 新技術説明会 2013.7.23 17 実用化に向けた課題 • 無機固体酸ミリング複合体、合成ポリマー、リ ン酸ドープ量の最適化 • 触媒白金使用量の低減 • 構築した膜・電極複合体(MEA)を用い、更に 長期の定電位連続発電試験の実施 • 連続発電試験時の信頼性評価 豊橋技術科学大学 新技術説明会 2014.7.15 18 企業への期待 • 長期運転試験など、実用化に向けての電池性 能評価を企業に担って頂きたい。 • 高分子合成およびコンポジット膜の成膜技術を 持つ企業、燃料電池用触媒材料技術を持つ企 業との共同研究を希望。 • また、燃料電池および燃料電池関連材料を開 発中の企業、本分野への展開を考えている企 業には、当該技術の導入が有効と思われる。 豊橋技術科学大学 新技術説明会 2014.7.15 19 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称:電解質膜、燃料電池、及び電解質膜の 製造方法 • 出願番号 :PCT/JP2010/071131 • 出願人 :豊橋技術科学大学 • 発明者 :松田 厚範、呉 松烈、吉田 敏宏他 • • • • 発明の名称:プロトン伝導体及びプロトン伝導体の製造方法 出願番号 :PCT/JP2011/066666 出願人 :豊橋技術科学大学 発明者 :松田 厚範、呉 松烈、吉田 敏宏他 お問合せ先:(株)豊橋キャンパスイノベーション(とよはし とよはしTLO) とよはしTLO) Phone: 0532 - 44 - 6975 FAX: 0532 - 44 - 6980 Mail: [email protected] 担当: 白川正知 豊橋技術科学大学 新技術説明会 2014.7.15 20 産学連携等の経歴 • • • • • • 平成22年度 平成23年度 平成24年度 平成23年度 平成24年度 平成26年度 JST A-STEP【FS】探索タイプ JST A-STEP【FS】探索タイプ JST 大学特許価値向上支援 JSPS 科研費 基盤研究B JSPS 科研費 挑戦的萌芽 JSPS 科研費 基盤研究A 豊橋技術科学大学 新技術説明会 2014.7.15 21
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