ピロール・イミダゾール(PI)ポリアミドを用いた 前立腺癌新規治療薬の開発 日本大学 医学部 助教 医学科 大日方 大亮 前立腺癌は日本において近年増加傾向にある 癌年齢調整別罹患率年次推移 前立腺癌 国立がん研究センターがん対策情報センター 前立腺癌の発癌・進行において、アンドロゲン 受容体(AR)は重要な役割を担っている Dihydrotestosterone (DHT) AR ARE Pol Ⅱ Activation of its target genes アンドロゲン除去療法が標準的な治療法であるが 長期使用により治療抵抗性(去勢抵抗性)前立腺癌へと進行する アンドロゲン除去療法 Bicalutamide Flutamide 治療抵抗性前立腺癌 大日方大亮, 高橋悟.日大医誌 73 (3): 134–139 (2014) 去勢抵抗性前立腺癌において ARは依然として重要な役割を担っている 低アンドロゲン状態 AR転写協調 因子異常活性化 ARの過 剰発現 アンドロゲ ン以外のリ ガンド結合 AR 去勢抵抗性 前立腺癌細胞 アンドロゲン応答遺伝子の発現 染色体転座による融合遺伝子の発生 前立腺癌特異的融合遺伝子 TMPRSS2-ERG 前立腺癌特有の染色体異常として、TMPRSS2 を5’上流に ETSファミリー遺伝子群 のうち一つが3’下流に融合することが2005年に報告された。 (Tomlins et al. Science 2005) 5’ AR / DHT 3’ Enhancer / promoter TMPRSS2 ETS family 増殖因子の発現 Enhancer / promoter TMPRSS2 ETS family 標的遺伝子 Androgen-regulated trans-membrane protease. (Lin et al. Cancer Res 1999) ETS family 細胞増殖、遊走能に関連する転写因子 (Kumar-Sinha et al. Nat Rev Cancer 2008) アンドロゲン応答遺伝子ACSL3は前立腺癌細胞株LNCaPならびに 前立腺癌組織に高発現している (n=55) 次世代遺伝子制御薬PIポリアミドの特徴 RNA polymerase transcription factor PI polyamide PIポリアミド • 自然の抗生物質ディスタマイシンをモデル とする。 • 配列特異的にDNA配列に結合する • 生体内で安定性が高く、siRNAのように特 殊なデリバリー試薬を要さない。 • 転写因子結合配列特異的PIポリアミドを作 成することにより、その転写因子の作用を 抑制させる 従来の技術(干渉性RNAやアンチセンス核酸) •生体内で分解され易いため安定性が低い。 •生体内において細胞毒性遺伝子産物を発 現させる方法も必ずしも安全とはいえない。 前立腺癌の進行に関与する 前立腺癌特異的融合遺伝子TMPRSS2-ERGとアンドロゲン応答 遺伝子ACSL3を標的としたPIポリアミドの開発 AR 前立腺癌細胞 1. TMPRSS2-ERG抑制 PIポリアミド 2. ACSL3抑制 PIポリアミド 染色体転座による融合遺伝子の発生 アンドロゲン応答遺伝子の発現 1.特願12-106382, 2.特願 13-048126 前立腺癌特異的融合遺伝子 TMPRSS2-ERG抑制ポリアミドの開発 • TMPRSS, ERGのイントロン内において、ある共通の配列 が存在する。 • ARがその配列を認識し、それぞれを切断し、お互いを連 結させ、染色体転座が発生する。 • 両遺伝子共通の切断配列特異的PIポリアミドを開発し、 融合遺伝子の発現を抑制させた。 TMPRSS2 Exon 1 ERG Exon 3 AR PI polyamide TGAGGGT TGAGGGT PI polyamide Exon 2 Exon 4 repression of DNA translocation 開発した融合遺伝子TMPRSS2-ERG抑制ポリアミドは 前立腺癌細胞増殖を抑制させた Negative control polyamide Negative Control Polyamide 融合遺伝子抑制ポリアミド Tumor volume (mm3) 1500 1500 Fusion Polyamide 1000 1000 P < 0.05 500 500 0 1 1 22 33 44 (week) ACSL3抑制ポリアミドの開発 • 高悪性度の前立腺癌に発現するアンドロゲン応答遺伝 子ACSL3の転写調節領域を同定し、Keyとなっている転 写因子を見出した。 • 同転写因子が結合する配列に特異的なポリアミドを開 発し、ACSL3の発現を抑制させた。 転写調節領域 Oct1 ARE Oct1 ARE ACSL3 polyamide GATA ACSL3 ACSL3抑制ポリアミドの治療薬としての可能性 〜in vitroならびにin vivoによる検討〜 (A) Negative control polyamide (B) Negative control polyamide ACSL3抑制ポリアミド Tumor volume (mm3) ACSL3抑制ポリアミド 1 Representative photograph of intra-venous injection of polyamides for 4 weeks 2 3 4 (週) 想定される用途 • 本発明のPIポリアミドを提供することによって、 前立腺癌の予防、治療に有用かつ安全で安定 した薬剤を開発することが容易となる。 • 開発した2種類のポリアミドを組み合わせること により、前立腺癌の網羅的な治療等も可能とな る。 実用化に向けた課題 • 高効率および安価な大量合成技術の開発 • 指摘投与量の決定 • オフターゲティング効果の確認 • GLPに則した安全性試験、発癌試験 企業への期待 • 共同開発を、物性規格、毒性試験、発癌試験 をGLPにて行う。 • PIポリアミドをGMPグレードで安価、かつ大量 に合成し、次世代のバイオ医薬マテリアルと しての確立を目指す。 本技術に関する知的財産権 • • • • 発明の名称: 出願番号: 出願人: 発明者: 新規PIポリアミド 特願2012-106382 日本大学 大日方大亮,髙橋悟, 福田昇, 藤原恭子 • • • • 発明の名称: 出願番号: 出願人: 発明者: 新規PIポリアミド 特願2013-48126(PCT/JP2014/056251) 日本大学 大日方大亮, 髙橋悟, 藤原恭子, 井上聡, 高山賢一 お問い合わせ先 日本大学 研究推進部 知財課(NUBIC) コーディネーター 松岡 義人 TEL 03‐5275‐8139 FAX 03‐5275‐8328 e-mail [email protected]
© Copyright 2024