【電流と磁場】 ☆磁場 マクスウェル方程式 (ii) 単磁荷は存在しない N ,S は単独では存在しない必ず磁石の形態をとる。N, S 極がセットで存在。 ・磁場の性質 N から出て S に入る場 ・電磁気力 − → − → → − 電荷 q は電場 E からは静電気力 F = q E を受けた。 磁場からの力は電荷が速度をもって初めて現れる。 その力はローレンツ力と呼ばれ, B v +q F − → − → − ローレンツ力: F = q(→ v ×B ) − 向きは右手の法則 (親指:速度,その他指:磁場,手のひらの進む向き:力), 大きさは → v → − と B で形成される平行四辺形の面積と等しい。 大事な点は次の2点 ・v と B が直交しないときは必ずどちらかを直交成分に分解する。 ・F は v と常に直交するので電荷に対して仕事をしない。 静電気力とローレンツ力をまとめて電磁気力と呼ぶ。 例1 運動方程式 V qE E l max = 0 may = qE ax = 0 ay = qE m vx = v0 vy = qE t m 1 θ x = v0 t y = qE 2 t 2m コンデンサーの幅を l とするとき飛び出すときの水平面とのなす角 θ を求めてみよ。 例2 v qvB B ローレンツ力は必ず速度と直交するため仕事は0。よって速さが変わることはないが一定 の力がはたらく。→電荷は円運動をする 運動方程式 m v2 = qvB r また周期は T = 2πr 2πm = v qB 例3 z B y v sinθ x θ v y z v cosθ x x − y 平面だと等速円運動 z 軸方向は vcosθ で等速直線運動 よって電荷は円運動をしながら z 軸を上っていく螺旋運動となる。 2 ☆電流が磁場から受ける力 電流は電荷の流れであるから速度を持った 電荷の流れである。よってローレンツ力が生じる。長さ l の導線全体に対しこの力の和を とったものが電流が磁界から受ける力である。 B l v I S F 電子数密度 n, 電気素量 e とすれば − → → − − → − → − → → → F = e(− v × B )nSl = l(− v Sne) × B = l I × B ※先ほど同様 I と B が直交しないときは必ずどちらかを直交成分に分解する。 ☆電流が作る磁場 マクスウェル方程式 (iii) アンペールの法則 磁場は電流,(電場の時間変化)のまわりに取り囲む まずは磁場 H と磁束密度 B の関係を押さえよう。 − → − → B = µ0 H , µ0 : 真空の透磁率 と呼ばれる。 アンペールの法則を式で表すと H ×周回りの長さ = I となるが数学的には大学レベルになってしまう。 なので次の3つの例は暗記すること (i) 直線電流が作る磁場 電流 I が距離 r のところに作る磁場は 3 I r H H × 2πr = I より H= I 2πr 向きは右ねじの法則に従う。 (ii) 円電流が中心に作る磁場 H a I これは覚えよう。証明にはビオ・ザバールの法則といって,微少電流が作る磁場を積分計 算で足し合わせる必要がある。半径 a H= I 2a 4 (iii) 無限に長いソレノイドコイルに流れる電流が内部に作る磁場 H n I 単位長さ当たりの巻き数を n とするとコイル内部どこでも(外部磁場は0) H = nI ※ソレノイドの端の磁場は,左右の効果のどちらか一方がない状態なので, H となる。 2 証明は断面を考えるとアンペールの法則より, 電流の単位長さ当たりの巻き数を n として, x y nx I H Hx + Hy + 0・x − Hy = nxI ∴ H = nI 5 (iv) 環状ソレノイドに流れる電流が作る磁場 環状ソレノイドの周長を l(= 2πr) として環の中央を含む閉曲面 (図の点線) でのアンペー ルの法則より, 2πrH = N I H= NI NI = 2πr l 上の回路でも,環の中央を含む閉曲面 (図の点線) でのアンペールの法則は不変である。 右コイルには回路が生じていないとして,内部磁場は, H= N1 i1 l なお,コイル中の磁束は無限長ソレノイドと近似することもある。左コイルの長さを l1 として,l1 ≈ l と見なして, H= NI i1 l1 とすることもある。 6 映像: (典型)電流と磁場 荷電粒子の運動 ★★★★ 図のような装置があり電荷 −e と質量 m の電子が初速0で陰極から飛び出してきて電圧 V により加速され領 域 I に到達する。領域 I では −y 方向に電場 E がかかっており,領域 I の +z 方向の長さは l である。その 後,磁束密度 B で +z 方向に一様な磁場中を通過してスクリーンに達する。ただし,電子にはたらく重力は 無視できるものとする。なお領域 II の +z 方向の長さは L であり,x 軸を紙面垂直の表から裏向きにとる。 I II E B y x z V L l (1) 領域 I に到達するときの電子の速さ v0 を求めよ。 以下の問いでは v0 を用いてよい。 (2) 領域 I.II の境界に達するときの速さと y 座標を求めよ。さらに領域 II からスクリーンに達するときの時間 を求めよ。 (3) 領域 II での電子の運動をスクリーンに射影すると円軌道を描く。このときの円運動の半径と周期を求め よ。 (4) 円軌道が閉じた軌跡を描くための条件を記せ。ただし,閉じた軌跡とは電子が領域 II を通過し終えたと き,同じ x, y 座標に戻ってくる状態のことである。また,II を通過し終える時間は円運動の周期より長いも のとする。 (5) 軌跡が y 軸上の直線となるようにするにはある方向に電場をかけるとよい。このときの電場の向きと大き さを求めよ。 (慶應大) 1 電流と磁場 ★★★ 滑らかな水平面上に十分長い導線があり,2a の距離離されて固定されている。図のように座標軸を設定する とする。今ともに +y 方向に大きさ I の電流が流れているとする。透磁率を µ として以下の問いに答えよ。 y I I z -a a 0 x (1)−a < x < a を満たす位置 x での合成磁場の磁束密度の大きさと向きを求めよ。 (2) 次に,位置 x に y 軸な平行に長さ l, 質量 m の導線を置き,−y 方向に一定電流 I を流す。この導線はど の向きにいくらの大きさの力受けるか求めよ。 (3)x << a ならばこの棒は単振動をした。このときの単振動の周期を求めよ。 (創作問題) 2 ホール効果 ★★★ 図の +z 方向に磁束密度 B の一様な磁場をかける。+x 方向に電流 I を流す。導体棒の厚みを a, 幅を b, 電子 数密度を n とする。電子の電荷は −e, 電子が速度 v で −x 方向に進んでいるものとして以下の問いに答えよ。 B z v I a y b x (1) 電流の大きさを求めよ。 (2) 電子1個が磁場から受けるローレンツ力を求めよ。 (3) ローレンツ力の影響で導体内では電子が偏る。その結果電場 E が形成され,ローレンツ力とつり合うとこ ろで定常状態となる。このときの電場 E の大きさを求めよ。 (4) 今 +y 方向の b の幅間の電位差が V と分かった。これより電子数密度を e, B, I, V, a を用いて表せ。 (5) 流れているものが電子でなく + の電荷である正孔(ホール)かどうか確かめたいならばどこで以上の実験 のどの点で判別できるか述べよ。 (創作問題) 3 ローレンツ力 ★★★★★ 図のように、水平面上の、距離 a だけ離れて固定された平行な導体レールの上に、レールに垂直に、質量 m, 長さ a の導体棒がのせてある。レールは抵抗と電池の+、ー端子につないであり、導体棒には矢印の方向に電 流 I が流れている。導体棒にはばね定数 k の絶縁体でできたばねが取り付けられ、ばねの他端は固定されてい る。導体棒は導体レールに平行な方向に、レール上を摩擦なしで運動することができる。また a よりも十分長 い 2 本の平行導線 C がレールと同じ水平面上に距離 a だけ離れて固定されている。ばねが自然長になったと き、導体棒は平行導線の真ん中にくるようになっている(平行導線はレールに垂直である)。スイッチによっ て、平行導線 C 以外の導線を流れる電流が作る磁場の影響は無視できるものとして以下の設問に答えよ。地 磁気の影響、導体棒とレールの太さおよび抵抗は無視できるものとする。真空の誘電率を ε0 , 真空の透磁率を µ0 とする。 C a a a C I (1) 最初、平行導線 C はスイッチによって電池と抵抗に接続されていて、導体棒と同じ大きさの電流 I が流 れている。このとき、導体棒は図の点線の位置から x だけずれて静止している。ばねは自然長から伸びている か縮んでいるかを答えよ。また、I を与えられた量と x で表せ。x は a に比べて無視できるほど小さいとして よい。 (2) スイッチを切って平行導線 C の電流を止めると、導体棒は振動を始めた。その周期 T を求めよ。 II 上記設問 (2) の導体棒を静止させた後、以下の実験を行った。 (1) 図のコンデンサーは極板の面積 S 、極板間の距離 d の平行板で、電荷 Q が蓄えられている。Q を一定に したまま、極板に力 F を加えてゆっくりと微小距離 ∆d だけ引き出すために仕事 F ∆d を必要とした。Q を 与えられた量と F で表せ。 (2) スイッチをコンデンサー側に入れ、コンデンサーに蓄えられた Q を平行導線 C に流すと、微小時間 ∆t ですべて放電した。導体棒が受け取った力積 ∆p を求めよ。I, Q をそのまま残す形で表せ。時間 ∆t の間に流 1 れる電流は、その間一定であるとして計算せよ。 (3) 電荷 Q の放電後、静止していた導体棒は振動を始めた。その振幅 A を ∆p を用いて表せ。 III この装置を用いた実験で、電流や電荷などの電気的な量を直接測定せず、真空中の光速度 c の値を決め ることができる。設問 II-(3) で求めた A の中の ∆p に含まれる I, Q をそれぞれ設問 I-(1), 設問 II-(1) の結果 を用いて消去し、 c= f A の形に表したとき、係数 f は I, Q, ε0 , µ0 を含まない。f を力学的に測定した F, x を用いて表せ。ただし、c は ε0 , µ0 を用いて c= √ 1 ε0 µ0 と表せることが知られている。 (00 東大) 2 映像: (難問)電荷と磁場1 荷電粒子の運動 ★★★★ 電気量 q(> 0),質量 m をもつ荷電粒子の電磁場中での運動について考える。真空中に設定した xyz 座標に対 し,図1のように,大きさ E の一様な電場を y 軸正方向に,大きさ B の一様な磁場を,z 軸正方向にかける ものとする。時刻 t = 0 において荷電粒子は原点 O にあり,y 軸方向に速さ v0 で動いているものとし,その 後の xy 面内での運動を考察する。荷電粒子の運動に伴う電磁波の放出や重力は無視できるものとして,以下 の問いに答えよ。なお,ここでは速度などを (vx , vy ) のように x, y 成分で表すことにする。 y E B v0 O x (1) 電場のみが存在する。すなわち B = 0 の場合について,時刻 t(> 0) における荷電粒子の y 軸方向の速度 成分 vy (t) と y 座標 y(t) を求めよ。 (2) 磁場のみが存在する。すなわち E = 0 の場合,荷電粒子は xy 面内で円運動するが,荷電粒子の速さは v0 に保たれる。その理由を句読点も含めて50字以内で述べよ。 (3)(2) の場合について,荷電粒子にはたらく力の大きさ F と円軌道の半径 R を求めよ (4) 電場と磁場の両方が存在する場合について,荷電粒子の速度を (vx , vy ),加速度を (ax , ay ) として,荷電 粒子に対する x 軸方向,y 軸方向に運動方程式をそれぞれ示せ。 3 y y V O O x x (5)(4) の運動方程式をもとに荷電粒子の電磁場中での運動を考える。そのため,図2のように t = 0 で xy 座 標軸と一致し,x 軸正方向に一定の速さ V で動く x y 座標軸(原点は O )を導入する。次の文章の空欄(あ) ! ! ! から(う)に適切な式を入れよ。 「x y 座標系,および xy 座標系に対する粒子の速度をそれぞれ (vx , vy ), (vx , vy ) と表すと,速度の合成を考え ! ! ! ! ることにより,vx = ( あ ),vy = ( い ) の関係が成り立つ。一方,x y 座標系に対する粒子の加速度 ! ! ! ! (ax , ay ) は xy 座標系に対する加速度 (ax , ay ) と同じになることが知られている。そこで,(4) の運動方程式に ! ! 注意して V = ( う ) と選べば,x y 座標系に対する荷電粒子の運動方程式は,ちょうど磁場のみが存在す ! ! る場合の円運動を表すことになる。」 (6)(5)の考察をもとに,電場,磁場の両方が存在する場合について,xy 座標系に対する荷電粒子の運動の 様子(軌道)を図示せよ。なお,ここでは簡単のため v0 = 0 とせよ。 (大阪府立大) 4 荷電粒子の運動 ★★★★★★ 図のように z 軸方向に磁束密度の磁界がかけられる装置を用意する。t = 0 で B = 0 の状態から半径 a の場 所に質量 m, 電荷 q の荷電粒子を静かに置く。今 t = 0 から磁束密度を増加させていく。なお同時刻において 磁束密度は x − y 平面での原点0からの距離が同じ点ならば同じ値となる。 z B y 0 a q x 図 I 磁束密度を調整すると荷電粒子は加速しながら半径 a を保ったまま円運動を行った。荷電粒子が作る磁場の影 響は無視できるとしてよい。 (1) 誘導される電場による 1 周当たりの仕事が生じる起電力に等しいことを考えて,時刻 t のとき半径 r = a の円軌道内を貫く磁束 Φ の ∆t 間の変化である めよ。 ∆Φ ∆t が発生させる誘導電場の大きさを a, ∆Φ, ∆t を用いて求 (2) 時刻 t のとき半径 r = a を荷電粒子が速さ v で円運動しているとして,∆t での速さの増加である ∆v を 用いて荷電粒子の円運動の接線方向の運動方程式を m, q, ∆v, a, ∆Φ, ∆t 記せ。 ヒント:円運動の接線方向の加速度は ∆v ∆t である。 (3)t = 0 で荷電粒子の速さ 0,磁束密度 0 に注意して荷電粒子の速さと磁束 Φ が比例していることを示せ。ま た時刻 t での平均磁束密度 B (磁束を面積で割った値)を m, v, a, q を用いて求めよ。 (4) 時刻 t で荷電粒子が速さ v で円運動をしているとき r = a にかかっている磁束密度 Ba を a, q, m, v を用 いて求めよ。またこの時刻での磁束密度と半径 B − r の依存性のグラフを描け。ある時刻における磁束密度 B と半径 r との関係は定数 p, q を用いて B = pr + q と表されるものとする。 1 II 今 xy 上のすべての点での磁束密度は時間に比例して増加しているとする。平均磁束密度 B の時間依存性は B = kt(k > 0) となり時間に比例して増加しているとする。 (5)r = 0, r = a での磁束密度の時間依存性を k, t を用いて求めよ。 (6) 磁束密度の半径 r,時間 t の依存性を k, a, r, t を用いて求めよ。 III この後,t = t0 になった瞬間,そのときの磁束密度の状態で磁束の増加をとめる。 (7) このときの荷電粒子の速さを a, q, k, m, t0 を用いて求めよ。 (8) このときの荷電粒子自身が原点0に作る微弱な磁束密度の大きさを mu0 , q, m, a, k, t0 を用いて求めよ。た だし真空の透磁率を µ0 とする。 IV III の状態で荷電粒子を取り除き,代わりに導体棒を置き,一定角速度 ω で回転させた。 (9) このとき誘導される起電力の大きさを k, a, ω, t0 を用いて求めよ。 (創作問題) 2
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