航空会社の路線撤退と乗継割引制度導入が社会に与える影響

航空会社の路線撤退と乗継割引制度導入が社
会に与える影響
神戸夙川学院大学観光文化学部 講師
萬谷和歌子
国内線 50 路線の運航を廃止した。現在、各種補助
【目次】
制度を活用した路線の採算性を検討、
「代替手段が
1.はじめに
ない路線」は運航を再開する予定だが、地方の不
2.問題意識および先行研究
採算路線に関しての運航再開はしない方針である。
3.モデル設定
通常海外の国内線は乗り継ぎがある場合、直行
3.1. 路線撤退前
便よりも運賃が安くなる。しかし日本国内では直
3.2. 路線撤退後
行便よりも乗り継ぎ便のほうが高い。図1でⒶ-
3.3. 撤退後、乗継割引制度を導入した場合
Ⓑを直行便とし、Ⓐ-Ⓑの直行便が撤退した場合、
4.分析結果
ⒶからⒷへ移動するのにⒽを経由すると旅客はⒶ
4.1. 路線撤退前後の比較
-Ⓗ、Ⓗ-Ⓑの運賃を払う必要がある。この場合、
4.2. 撤退後、乗継割引制度を導入した場合
運賃は片道で二路線分となり、また時間費用を考
5.まとめと課題
慮すると、乗り継ぎ旅客の利便性は損なわれる。
これは日本特有の問題であるといえる。
1.
はじめに
現在全日空は「乗り継ぎ特割」を導入している
が、この制度は指定された同一日中の便の組み合
5.まとめと今後の課題
近年の航空産業は,世界的な規制緩和と自由化
わせを搭乗 28 日前までに一括で予約・購入する場
の流れの中、航空会社間の競争激化と国境を越え
合にのみ利用可能であり、運賃は二路線分よりは
た合併・再編成が進んでいる。80 年代後半の段階
安くなるものの、依然として片道分よりは 3 割程
的な需給調整規制廃止により始まった日本の規制
高い運賃設定である。
緩和は路線の参入・退出の自由化をもたらし、航
以上の背景に基づき、本研究では国内航空会社
空運賃は認可制から事前届出制へ移行された。国
が地方を結ぶ独占路線から撤退し、地方在住者に
土交通省発行「政策レビュー『国内航空における
とって直行便という選択がなくなり乗り継ぎを余
規制緩和』
」によると、1997 年から 2003 年までの
技なくされた場合、撤退がどのように消費者余剰、
小規模路線(1 日 1~3 便)は 228 から 177 路線へと
企業利潤、社会厚生に影響を与えるか、また航空
約 22%減少しており、便数に関しては 332 便から
会社の撤退が不利便性を生む場合、どう消費者に
267 便へと約 20%減少している。一方運航は高需
補償をすればよいかを検証する。以下、2章では,
要路線に集中するようになり、1 日 10 便以上の路
既存の研究概要をレビューし,問題意識を整理す
線は 13 路線から 24 路線と約 2 倍に増加、企業努
る。3章では、独占の航空会社が路線を撤退した
力によっても採算性が確保できない地方路線につ
場合と、乗継割引制度を導入するモデルを定式化
いては各社撤退を決定する傾向にある。
する.4章では結果を提示し、5章では本研究をと
日本航空では経営破綻後の 2010 年 10 月以降、
りまとめ,今後の課題について示す。
73
2. 問題意識および先行研究
財を供給する市場では総供給量の増加に伴い価格
が低下するものの、航空産業においては運航頻度が
公共交通機関であるバス、鉄道や新幹線の乗継
増加しても価格が低下しないことに注目し、製品差別
割引制度に関しては、すでに膨大な研究が蓄積さ
化の価格競争理論を用いて路線参入が社会的に最
れている一方で、全日空が導入しているような
適かどうかを分析した。その結果、過度な路線参入は、
航空における乗継便割引制度に関する分析がな
差別化の度合い(距離)が小さい場合に起こり、距離
く、また日本国内の現状に合わせた研究および
が適切な場合には過度な路線参入は旅客数とセット
政策提言がなされていない。
アップ費用に依存、また差別化の度合いが大きい場
Brueckner and Spiller (1990) は、航空輸送で密度
合にはセットアップ費用にのみに依存することを証明
の経済性が働くと設定し、需要関数に線形需要関
した。
数を用いてハブアンドスポーク型のネットワーク
本稿では、Brueckner and Spiller (1990) と同様、
における競争を分析。都市間の競争が他市場にお
ネットワークにおける航空会社の運航形態に線形
ける独占のハブアンドスポーク型ネットワークに
の需要関数を用い、Kawasaki 同様に直行便が廃
よってもたらされている場合、競争は運賃を上昇
止された場合の消費者に与える不利便性(δ)を
させる効果があり、この場合航空会社のネットワ
加え、費用はネットワークの経済性が働くと仮定
ークにおける合併は社会厚生を改善させる可能性
した Shy (2000) The Economics of Network Industries.
があるため、合併が必ずしも社会厚生を悪化させ
pp216-217 の費用関数を用いた。
るとは言えず、反トラスト法上の方法論を適用す
今回の分析ではある独占の航空会社が地方路線
るのは誤りであると指摘。Zhang and Xin (1993)
を撤退した場合の路線撤退前後の消費者余剰、企
は需要の価格弾力性を用いた分析で、一市場での競
業の利潤及び消費者余剰の変化を検証し、乗り継
争がネットワーク外部性に負または正の影響を与える
ぎ便割引制度の導入と割引率がどのように消費者
かは需要の価格弾力性に依存、価格弾力性が1<ε
余剰、企業利潤及び社会厚生に影響を与えるかを
<2.73であれば正の影響を与えるとした。一市場の
分析する。また分析結果より、航空会社の撤退が
競争が外部性にどう影響を与えるかは、需要をどう定
不利便性を生む場合、どのように消費者に補償を
義するかによるとしている。Kawasaki (2006)は一般
すればよいかを検証する。
Ⓗ
Ⓐ
Ⓗ
Ⓑ
Ⓐ
路線撤退前
Ⓑ
路線撤退後
図1.モデル
74
となる。
3.モデル設定
また撤退後の企業利潤πA は、
 A  Pa  qa  Pb  qb  ( Pa  Pb)(qc   )
 Pa(a  Pa)  Pb(a  Pb)
図1より、撤退前にはⒶ-Ⓑの直行便が存在、
Ⓐ-Ⓗ、Ⓗ-Ⓑにも便が存在するとする。ただし、
 ( Pa  Pb)b  h( Pa  Pb   )  TCA
Ⓐ-Ⓗ、Ⓗ-ⒷにはⒶ-Ⓑ旅客は搭乗しない。撤
となる。
退後はⒶ-Ⓑの直行便はなくなり、Ⓐ-Ⓑ旅客は、
Ⓐ-Ⓗ、Ⓗ-Ⓑと移動(Ⓗで乗り換え)するとす
撤退後に,乗り継ぎ便割引制度乗継便割引λ
(   (0,1) )を導入した場合の企業利潤π は、
る。
 A d  Pa  qa  Pb  qb   ( Pa  Pb)(qc   )
以上より、需要関数は A-H 間を
H-B 間を qb  a  Pb 、A-B 間
Ad
qa  a  Pa 、
qc  b  hPc
(6)
 Pa(a  Pa)  Pb(a  Pb)
とする。
a は、Ⓐ-Ⓗ、Ⓗ-Ⓑ間の定数であり、a=1(基準
  ( Pa  Pb)b  h( ( Pa  Pb)   )  TCA (7)
となる。
化)とし、 A-H、H-B は対称、b はⒶ-Ⓑ間の
定数とする。pは運賃、φは固定費用、  は所与
3.1
の人口規模を表す。
路線撤退前
企業が運航に要する総費用は、
TC( AH, BH, AB)  c(1)  c( 2)  c( 3)
c( )    
2
(1)
路線撤退前の企業利潤πB は、
(2)
 B  Pa  qa  Pb  qb  Pc  qc
 Pa(a  Pa)  Pb(a  Pb)  Pc(b  hPc)  TCB (8)
とする。
撤退前の総費用 TCB は、
とし、また路線撤退前の総費用 TCB は
TCB  3  (1) 2  ( 2) 2  ( 3) 2  3  3 2
(3)
TCB  3  (1) 2  ( 2) 2  ( 3) 2 。
とし、撤退後の総費用 TCA は
TCA  2  (1   3) 2  (1   3) 2  2  2 2
利潤最大化行動の 1 階条件式から、
(4)
とする。ただし,1   2   3   、
TCB  TCA if and only   5
2
(9)
B
 1  Pa
Pa
B
 1  Pb
Pb
B
 b  hPc
Pc
を満たす。
この分析ではネットワークの経済性が働くと
仮定、撤退により運航コストが下がるため、総費
(10)
(11)
(12)
用は撤退前の方が高いとする。φは固定費用を表
し、十分に小さいとする。1
となり、以上より、均衡での価格は、
δは乗り継ぎによる不効用度で、 δ> 0 , b-hδ
1
2
1
*
Pb 
2
b
Pc * 
h
Pa * 
> 0 とする。また b  a  b / h を満たし、直行便に
対する本来的な支払額が高いとする。
(b 1 b / h)
企業の目的は利潤最大化であり、撤退前の企業
利潤をπB とすると、
 B  Pa  qa  Pb  qb  Pc  qc
 Pa(a  Pa)  Pb(a  Pb)  Pc(b  hPc)  TCB (5)
となる。このとき、均衡での需要は、
1 費用関数は Shy (2000) pp216-217 参照
75
(13)
(14)
(15)
1
2
1
qb*  1  pb 
2
b
qc*  b  h   0
h
qa*  1  pa 
1
qa*  1  Pa 
(30)
2
1
qb*  1  Pb 
(31)
2
qc*  b  h( Pc   )  b  h(1   )
(16)
(17)
(32)
(18)
ただし、δは乗り継ぎによる不効用度δ> 0 , b-h
また撤退前の消費者余剰 CSB は、
CSB= 1 / 8  1 / 8  1 / 4
δ> 0 を満たす。
(19)
撤退後の消費者余剰 CSA は、撤退前の消費者余
となり、撤退前の企業利潤πB は、
B 
1
 3  3 2
2
剰 CSB を引いた差であるため、
(20)
となる。
CS A 
以上より、撤退前の社会厚生 SWB は
SWB 
3
 3  3 2
4
(33)
(21)
CS A  CS B  1/ 2{b  h(1   )}
と表される。
3.2
1 1 1
1 1
  b  h(1   )}   b h(1   )
8 8 2
4 2
(34)
とあらわすことができる。
また同様に、撤退後の企業利潤πA は、撤退前の
路線撤退後
企業利潤πB を引いた差であるから、
1
2
 A  Pa  qa  Pb  qb  ( Pa  Pb)(qc   )
 Pa(a  Pa)  Pb(a  Pb)
 ( Pa  Pb)b  h( Pa  Pb   ) TCA . (22)
Pc  Pa  Pb
利潤最大化行動の 1 階条件式から、
 A
 1  2 Pa
Pa
 A
 1  2 Pb
Pb
 A   B  {b  h(1   )}    5 2
1
Pa 
2
1
Pb * 
2
*
Pc  Pa *  Pb *  1
(36)
生 SWA は、
(24)
SWA 
3
 b  h(1   ) 2  8 2
(37)
4
。
撤退後の社会厚生と撤退前の社会厚生 SWB の
差は
(26)
SWA  SWB 
以上より、均衡での価格は、
*
(35)
となる。また割引制度導入なしの撤退後の社会厚
(23)
(25)
。
( 0) ,
以上より、撤退後の企業利潤差は
また、撤退後の総費用 TCA、運賃は
TCA  2  (1   3) 2  (1   3) 2
1
2
 A =  {b - h(1 +  )} - 2  8 2
路線撤退後の企業利潤πA は、
3 1
 b  h(1   )   5 2
4 2
(38)
と表すことができる。
(27)
3.3
(28)
撤退後、乗継割引制度を導入した場
合
(29)
ここで、航空会社が乗継便割引λを導入し、
このとき、均衡での需要は、
76
航空会社が路線を撤退し、割引制度を導入した
  (0,1) の条件を満たすとする。
際の企業利潤πAd は、
航空会社が路線を撤退した後の企業利潤πAd、
 Ad 
総費用 TCA、運賃は以下のようにあらわす。
1 1
2
 b  h(   )  2  8
2 2
となり、πAd >0 を満たすこととする。
 Ad  Pa  QA  Pb  QB  Pc  QC  TCA (39)
TCA  2  (1   3)  (1   3)
2
2
Pc  Pa  Pb
割引制度導入後から割引制度導入なしの企業利
潤を引いたもの(撤退後の企業利潤)は、
(40)
。
(41)
また撤退後の需要は、以下の通りとなる。
Q A  1  Pa
(42)
Q B  1  Pb
(43)
Qc  b  h( Pc   ) 。
1
2
となる。
1
2
1
Pb * 
2
1 1
Pc *  (  )  
2 2
は
(44)
SW Ad 
1
2
1
*
QB  1  Pb 
2
*
Qc  b  h( Pc   )  b  h(   )
*
(57)
と表され、撤退前後の社会厚生差(撤退後:乗り
(46)
継ぎ割引有―撤退前)は
SWAd  SWB  b  h(   )    5 2
(58)
となる。
撤退後の社会厚生(撤退後:乗り継ぎ割引有-
(47)
乗り継ぎ割引無)は
(48)
SWAd  SWA  {b  h(   )}  {b  h(1   )}
となる。
(49)
(59)
4.分析結果
4.1. 路線撤退前後の比較
(50)
(34)から(38)より、消費者余剰、企業利潤、社会
(51)
厚生ともに撤退後の方が改善される。理由として
(52)
は独占企業の 3 市場における価格設定が影響を与
が導かれる。ただし、Qc>qc とする。
えていることが考えられる。独占企業であるため、
割引制度導入後の、撤退後の消費者余剰 CSAd
撤退前は自由に 3 市場で異なった価格付けが可能
だったが、撤退後は 2 市場でのみ価格設定可能な
は、
CS A d 
3
 b  h(   )  2  8 2
4
(45)
となる。また均衡での需要は
Q A  1  Pa 
(56)
以上より、撤退後の社会厚生(割引制度有)SWAd
となり、以上より、均衡での価格は
Pa * 
1
2
 Ad   A  {b  h(   )}  {b  h(1  d )}
利潤最大化行動の 1 階条件式から、
 A
 1  2 Pa
Pa
 A
 1  2 Pb
Pb
(55)
環境となり、価格設定に制約がかかるようになっ
1 1 1
1 1
  b  h(   )   b  h(   )
8 8 2
4 2
であらわされる。
た。この設定では価格が需要量を決定するため、
(53)
撤退前の Pc の値段設定は需要量0になる結果を
また割引制度導入後と前の消費者余剰差は、
CS Ad  CS A 
となる。
もたらしたが、撤退後の運賃改定により需要量は
1
1
{b  h(   )}  {b  h(1   )}
2
2
増加した。
撤退後は乗り継ぎ市場の価格を Pa+Pb に設定
(54)
77
することを確約した条件下で、Pa と Pb を決定す
ービスの提供の促進を目指したもので、1985 年よ
る状況に変化し、撤退後の均衡での価格 Pc=1は
り段階的に規制が緩和され、最終的に 2000 年 2 月
撤退前の価格(b/h)よりも低下している。これら
航空法改正により需給調整規制が完全に廃止され
の理由により、消費者余剰が撤退後に上昇したと
た。それに伴い路線の参入・退出は自由化され、
考えられる。企業利潤の上昇の理由としては一路
航空運賃は認可制から事前届出制へ移行された。
線から撤退したことにより運航費用が低下したこ
以降、運航は高需要路線集中が促進、企業努力に
と、また需要量の増加に伴い利潤が増加したこと
よって採算性が確保できない路線は各社撤退を余
が要因であり、消費者余剰と企業利潤の双方を合
儀なくされることになった。
計した社会厚生は撤退後に上昇する結果となった。
以上より、命題1が得られる。
航空輸送は公共交通機関である為、路線によっ
ては国による公的支援が行われており、例として
は離島路線に対する支援措置(航空機購入費補助
命題 1
消費者余剰、企業利潤、社会厚生とも
(資本費補助)、空港使用料の軽減、固定資産税の
に路線撤退後の方が改善される。
軽減)がある。国管理空港では那覇空港が 2014 年
度より、航空会社が新たな路線を就航または増便
4.2.
場合
撤退後、乗継割引制度を導入した
する際、地方自治体と共同で集客策を取ることを
適用要件として、2016 年度までの 3 年間にわたり
着陸料を 30~80%軽減する。自治体レベルでは、
(52)から(57)より、割引制度を導入した場合、価
青森県が 2014 年 7 月に青森-大阪(伊丹)線と青
格 Pc は制度導入前より低下するのに伴い需要量
森-札幌(新千歳)線を開設する全日本空輸に対
は増加する(Qc>qc)。消費者余剰、企業利潤とも
し、青森空港の着陸料を約 93%(15 分の 14)減
に割引後のλ値に依存し、λの値が大きいほど、
免する措置を決定した。
余剰差が増える。つまり、割引後の価格が高いほ
航空会社の不採算路線からの撤退は、代替交通
ど、消費者余剰、企業利潤それぞれ割引制度を導
機関のない路線において地域住民の日常生活に支
入するメリットがある。また割引率が低いほど企
障をきたす可能性が高い。当該地域住民の日常生
業利潤は増える環境となっているため、企業は1
活に不可欠な路線からの撤退に関しては、公共政
に近い価格を設定しようとするインセンティブが
策の観点より何らかの措置を取る必要がある。
ある。以上より、命題2が得られる。
一般的には利用者にとって、乗り継ぎよりもチ
ェックインを複数回する必要のない直行便利用の
命題 2
航空会社が路線撤退した場合、乗継割
方が好ましいと思われる。ただし、今回の考察の
引制度を導入した方が社会的に望ましい。
結果を見ると直行便撤退による乗り継ぎの発生が
必ずしも消費者及び企業、社会厚生に負の影響を
5.まとめと課題
与えるとは限らないことがわかった。消費者余剰、
企業利潤、社会厚生は企業が参入している市場(路
1978 年航空産業の規制緩和が行われた米国に続
線数)と価格設定に依存し、企業が撤退をした場
き、80 年代後半より日本においても航空産業保護
合には割引制度を導入したほうが消費者・企業の
体制が見直されるようになった。日本の規制緩和
双方にメリットがあるという結果になった。
は、航空会社の経営の効率化、競争による利用者
航空運賃は就航企業数の少ない路線ほど特定便
の利便性向上、事業への参入の容易化、多様なサ
割引運賃が全便に設定される割合及びその割引率
78
が低くなっており、参入企業数の減少は競争に重
Brueckner, Jan K. and Spiller, Pablo T. (1990)
“Competition and mergers in airline networks,”
International Journal of Industrial Organization,
pp323–342
(1)
大な影響を及ぼす。
また旅行会社に対する取引
価格は旅行会社ごとの交渉によって異なっている
のに対し、一般消費者向けの航空運賃は一般消費
Kawasaki, Akio (2006) “Price competition and
inefficiency of free network formation in the airline
market,” Transportation Research Part E 43, pp 479–494
者に価格交渉の余地がなく、一律に適用されるも
のであることから、一般消費者は、航空会社の設
(2)
定した運賃を受け入れざるを得ない。
以上より、 Matsumura, Toshiro and Matsushima, Noriaki (2012)
“Airport Privatization and International Competition”,
航空会社が採算性の確保できない地方路線から撤
退、地方在住者が乗り継ぎを余儀なくされる場合には、
不利便性に応じた乗り継ぎ便割引やキャッシュバ
Mantani, Wakako (2010) “Network Structure and Airline
Scheduling with Asymmetric Travel Demand”,
International Public Policy Studies, VOl.15, No.1.,
(No.27), pp227‐242
ック制度、ボーナスマイレージの付与等、地方在
住者の便益を重視した補償制度を導入することが
望ましいと言える。
Lin, Ming Hsin (2013) “Airport privatization in
congested hub–spoke networks”, Transportation
Research Part B, Volume 54, pp 51–67
今回の分析は独占の航空会社が地方路線を撤退
した場合の消費者余剰、企業利潤、社会厚生の変
化を取り扱ったが、今後は現状に合わせた複数社
Shy, Oz (2000) The Economics of Network Industries.;
Cambridge University Press
が運航する寡占市場における影響の検証を行う必
要があり、以上を今後の課題とする。
Tirole, Jean (1988) The Theory of Industrial
Organization.; Cambridge, Massachusetts, The MIT Press
【引用】
(1)、(2)
Zhang, Anming and Wei, Xin (1993) “Competition in
airline networks,” Economic letters, pp 253–259
戸崎肇(2002)
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(2014 年 7 月 6 日)
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79