KOA-Facility利用報告書 ■利用者名 株式会社DNAチップ研究所 ■課題名 自己免疫疾患におけるスプライス•ヴァリアントの網羅的解析とその発現機序解明に 関する研究 【概要】 1)本課題で得られた具体的な成果 今回、全身性エリテマトーデス(SLE)および関節リウマチ(RA)患者におけるスプライス•ヴァリアントの網羅的 解析とその発現機序解明を行った。分類基準を満たす活動性SLE3例、RA3例、HC6例のミクスチャーの末梢血 を採取ののち、比重遠心法で単核球に分離した。 表1 サンプル レーン 総リードペア QFリードペア SLE-1 1 58,445,667 34,206,176 SLE-2 2 48,590,454 36,594,797 SLE-3 3 62,757,986 34,321,968 RA-1 5 63,071,805 30,885,159 RA-2 6 55,635,996 37,222,254 RA-3 7 59,621,823 33,441,897 HC 8 58,583,146 33,300,226 そこからtotalRNAを精製した。Illumina GAIIx を用いHigh throughput sequencing(mRNAseq)を行うため、ライ ブラリーの準備をし、クラスターを作成し、ペアエンドシークエンスを行った。計7レーン (SLE-1,2,3, RA1,2,3, HC)の検体およびコントロールとしてファイエックスを置いた。総リードペア、QFリードペアを表1に示 す。いずれも5000-6000万リードのデータが取得されており、平均depthも30前後と十分なカバレッジを持つ データが得られた。 各リードよりアダプタ配列を探索、トリミングののちTopHatによりヒトゲノムにマッピングを行った。ゲノム 配列はUCSC hg19を使用した。エキソンごと、サンプルごとにリードカバレッジを算出。エキソン情報は、 UCSC RefGene (RefSeq由来)を参照した。 サンプル特異的な領域の探索を行ったところ、一例としてHAUS5遺伝子のエクソン5領域にRA例で著明な発 現低下が確認された。SLEおよび健常人プールにおいては上記の変化は認めなかった。HAUS5は、19番染色体 に位置し、Augmin複合体を形成する分子のサブユニットで、紡錘糸形成過程における微小管形成に関与してい ることが報告されている。しかししながら RAを含めた自己免疫疾患におけるHAUS5の役割は明らかではない 。本解析より得られたスプライス•ヴァリアントがRAにおいてどのような役割をしているかは、深いところであ り、他のRAのmRNAにおいて同様のことが起こっているか確認中である。 また各遺伝子ごとの発現量の解析を、各エクソンごとに行い、スプライスバリアントの生成がどのような分 布になっているかについて引き続き詳細な解析を行っている。 2)社会・経済への波及効果の見通し 本研究課題は、これまで全く手つかずであった領域に関して、最先端テクノロジーの導入によりようやく近づ くことができている。予算はかかるかもしれないが、最先端の研究を進めていくことが、優秀な人材確保、新 規薬剤開発等を進めていく上で必須であり、社会、経済におけるインパクトは多大であると考えている。今後 も継続していくことが重要であると考えている。
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