ロキソプロフェンナトリウム水和物含有貼付剤 (ロキソプロフェンNaテープ

《作業者:臼田》 Title:14-03_原著_今本.ec5 Page:91
:
∼
原 著
ロキソプロフェンナトリウム水和物含有貼付剤
(ロキソプロフェンNaテープ50mç/100mç
「科研」)の
使用感に関する患者満足度アンケート調査結果
今本 雅彦*
要 旨
整形外科疾患(変形性関節症,筋肉痛,外傷後の腫脹・疼痛)患者を対象に,ロキソプロフェン
Naテープ
「科研」の使用感に関する患者満足度についてアンケート調査を実施した.調査票回収症
例61例のうち,前治療薬なしは2
0例,前治療薬ありは4
1例であった.使用感に関する
“全体的な
満足度”では,64%の患者が「非常に良い」または「良い」
と回答した.「貼りにくかった」と答えた
患者は7%にすぎず,“4がすときの痛み”を感じなかったと回答した患者が66%を占め,貼付部
位における“痛みへの効果”も64%の患者が「良くなった」と回答した.また,年齢別に使用感に関
する“全体的な満足度”
を検討した結果
「非常に良い」
または「良い」と答えた患者は,6
0歳未満で
61%,6
0歳以上で68%であった.貼付部位別の検討では肩66%,腰6
9%,その他61%であり,膝
では55%とやや少ない傾向がみられるが,腰の69%と比べても統計的には差はみられなかった.
また,前治療薬(他のテープ剤より切り替え使用)有無別の検討では,前治療薬あり群では57%,
前治療薬なし群では80%であり,貼付部位における“痛みへの効果”も含めて高い満足度が得られ
ていることが明らかとなった.ロキソプロフェンNaテープ
「科研」は,先発医薬品を含む前治療薬
の有無にかかわらず,使いやすさ,効果ともに患者満足度が高く,整形外科疾患の治療薬として
有用であると考えられた.
Key words:ロキソプロフェン,貼付剤,患者満足度,アンケート調査
医薬品として20
1
3年2月に製造販売が承認され,「変
はじめに
形性関節症,筋肉痛,外傷後の腫脹・疼痛並びにその
ロキソプロフェンナトリウム水和物は,フェニルプ
症状の消炎・鎮痛」
として適応を有している.
ロピオン酸系の非ステロイド性消炎鎮痛剤(non―ste-
貼付剤においては,消炎・鎮痛効果だけでなく貼付
roidal anti―inflammatory drugs:NSAIDs)で,カルボ
時の使用感が,薬剤を選択する際に影響することが報
ニル還元酵素によって活性代謝物のtrans―OH体に変
告4,5)されており,本薬剤の先発医薬品
(テープ剤)にお
換されて効果を示すプロドラッグである1,2).カルボニ
いては,既に患者満足度の高い薬剤であることが報
ル還元酵素は,肝臓以外に皮膚や筋肉中にも存在する
告6―8)されている.一方で,後発医薬品使用に関する患
ことが確認され3),ロキソプロフェンナトリウムの貼
者意識アンケート調査
(文献報告)によれば,先発医薬
付剤への応用が可能になった.
品よりも効果が劣る,副作用が現れるといった患者の
ロキソプロフェンNaテープ
「科研」
は,有効成分とし
不満,特に貼付剤に関しては貼り心地や使用感が先発
てロキソプロフェンナトリウム水和物を含有する後発
医薬品と異なるといった認識が存在することが知られ
ている9―11).しかし,ロキソプロフェンNaテープ
「科
*
あやせ慶友整形外科院長
研」
には,伸縮性に富み,膝,肩,足などの関節部にも
― (467)
―
《作業者:臼田》 Title:14-03_原著_今本.ec5 Page:92
適用できる,貼付部の冷感が強くないなどの特徴があ
り,先発医薬品と同等の患者満足度が期待できる.
結
果
そこで今回,本院を受診しロキソプロフェンNaテー
1.対象患者
プ
「科研」
が処方された患者を対象に,本薬剤の使用感
対象患者の背景を表2に示す.最終的に回収された
に関する満足度と前治療薬の有無による影響を定量的
アンケート調査票
(はがき)
は61例であった.男性12例
に把握することを目的としてアンケート調査を実施し
(1
97
. %)
,女性3
8例(6
23
. %)
,無記入1
1例(180
. %)で,年
齢は6
0歳未満23例
(377
. %),6
0歳以上37例(6
07
. %),無
たので報告する.
記入1例
(16
. %)
であった.貼付部位別(複数回答)では,
肩1
8例(295
. %),腰22例
(361
. %),膝2
0例(328
. %),そ
対象と方法
の他18例
(295
. %)であった.前治療薬については,前治
1.対象患者と被験薬剤
療薬なし2
0例(3
28
. %)
,前治療薬あり41例(672
. %)で,
対象患者は,整形外科疾患
(変形性関節症,筋肉痛,
前 治 療 薬(テ ー プ 剤)の 内 訳 は 先 発 医 薬 品 が36例
外傷後の腫脹・疼痛)
に罹患し,ロキソプロフェンNa
テープ「科研」
が処方された患者とした(調査対象期
(878
. %),その他が5例
(122
. %)であった.
2.調査結果
間:2
0
1
3年7月から1
1月).
1)全体解析
被験薬剤としては,ロキソプロフェンNaテープ5
0
全体
(n=6
1)の調査結果を 図1 に示す.“貼りやす
mg
「科研」
またはロキソプロフェンNaテープ1
0
0 mg
さ”
に関しては,
「貼りやすかった」
49%,「普通」
44%
「科研」
(患部に1日1回貼付)
を用いた.なお,ロキソ
で,
「貼りにくかった」
と答えた患者は7%にすぎな
プロフェンNaテープ5
0 mg
「科研」
は,膏体質量1g中
にロキソプロフェンナトリウム水和物を5
67
. mg
(無水
かった.
“4がれやすさ”
では,「4がれなかった」
48%,
「少し4がれた」
38%で,
「かなり4がれた」は10%にと
物として50 mg)
含有,ロキソプロフェンNaテープ10
0
どまった.
“4がすときの痛み”
では,「感じなかった」
mg
「科研」
は,膏体質量2g中にロキソプロフェンナト
6
6%,
「少し感じた」
2
6%,「痛かった」5%であった.
リウム水和物を11
34
. mg
(無水物として100 mg)
含有
“痛みへの効果”
では,
「良くなった」
64%,「変わらな
する.
か っ た」
3
4%で,「悪 く な っ た」
と回答した患者はな
2.調査方法
かった.
“全体的な満足度”
では,
「非常に良い」
16%,
調査方法はアンケート
(はがき回答)
形式とした.ロ
キソプロフェンNaテープ
「科研」を処方した患者に対
「良い」
48%,
「普通」
34%,
「非常に悪い」2%で,64%
の患者が
「非常に良い」
または
「良い」と回答した.
し,個人を特定せずに調査結果が公表される可能性な
2)患者背景別解析
どについて患者の同意を得たのち,前治療薬が確認で
a)年齢
きるように事前に医師側でチェックを入れた「使用感
年齢別調査結果を図2に示す.
“貼りやすさ”では,
についてのアンケート調査票」
(はがき)
(表1)
を患者
「貼りやすかった」
と答えた患者は,60歳未満の39%に
に手渡し,アンケートに対する回答を記入後,郵便ポ
比べ6
0歳以上の高齢者の方が多く5
7%であり,60歳未
ストに投函するよう依頼した.質問項目は,患者背景
満と6
0歳以上との間に有意差がみられた
(χ2検定,p
(性別,年齢,貼付部位)
および評価項目
(“貼りやすさ”
=00
. 14
3)
.“4がれやすさ”
では,60歳未満,60歳以上
“4がれやすさ”
“4がすときの痛み”
“痛みへの効果”
ともに,約半数の患者が
「4がれなかった」と答える一
“全体的な満足度”
)
とした.
方で,「かなり4がれた」
と答えた患者は約10%にとど
3.評価方法
まった.
“4がすときの痛み”
では,「感じなかった」と
“貼りやすさ”
“ 4がれやすさ”
“4がすときの痛
答えた患者は6
0歳未満の5
7%に比べ,60歳以上の方が
み”
,および
“痛みへの効果”
について3段階で評価し,
やや多く70%であった.“痛みへの効果”では,
「良く
これらを踏まえた
“全体的な満足度”
を5段階で評価し
なった」と答えた患者は60歳未満の52%に比べ,60歳
た.各調査項目は,調査票を回収した全患者について
以上がやや多く7
0%であった.
“全体的な満足度”では,
2
集計し,患者背景による違いについてχ 検定を用いて
「非常に良い」
または「良い」
と答えた患者は60歳未満で
検討した.検定の有意水準は両側5%とした.
6
1%に対し,60歳以上でやや多く6
8%であった.ただ
し,いずれも統計学的な有意差はみられなかった.
― (468)
―
《作業者:臼田》 Title:14-03_原著_今本.ec5 Page:93
原 著
表1 アンケート調査票(はがき)の内容
本日出された貼り薬についてのアンケートにご協力をお願いいたします.
★該当するものを○で囲んでください.
年齢:30歳以下・40歳代・5
0歳代・60歳代・70歳代・80歳代以上
性別:男性・女性
貼った場所:肩・腰・ひざ・その他
★今回の貼り薬について,最も当てはまるものを○で囲んでください.
①貼りやすさ
貼りやすかった・ふつう・貼りにくかった
②4がれやすさ
4がれなかった・少し4がれた・かなり4がれた
③4がすときの皮膚の痛み
感じなかった・少し感じた・感じた(痛かった)
④痛みへの効果
良くなった・変わらない・悪くなった
⑤全体的な満足度
非常に良い・良い・ふつう・悪い・非常に悪い
表2 患者背景
b)貼付部位
症例数
割合(%)
貼付部位別調査結果を図3に示す.
“貼りやすさ”で
61
10
00
.
は,「貼りやすかった」
と答えた患者は,肩,腰および
男 性
12
197
.
その他はそれぞれ5
0%であったのに比べ,膝は30%と
女 性
38
623
.
少なかった.
“4がれやすさ”
では,「4がれなかった」
不 明
11
180
.
と答えた患者は,肩5
6%,腰5
0%に比べ,膝,その他
0∼39歳
40∼49歳
8
7
131
.
115
.
はそれぞれ35%,2
8%でやや少なかった.“4がすと
50∼59歳
8
131
.
年齢(1) 60∼69歳
10
164
.
70∼79歳
21
344
.
た.
“痛みへの効果”
では,「良くなった」と答えた患者
80歳∼
6
98
.
は,肩6
7%,膝60%に比べ,腰では77%でやや多く,
不 明
1
16
.
その他は5
0%で少なかった.
“全体的な満足度”では,
60歳未満
23
377
.
「非常に良い」
または
「良い」
と答えた患者は,肩66%,
年齢(2) 60歳以上
37
607
.
腰6
9%,その他61%に比べ,膝は5
5%とやや少なかっ
不 明
1
16
.
肩
18
295
.
腰
22
361
.
膝
20
328
.
その他
18
295
.
前治療薬
(有無,種類)
別調査結果を図4に示す.“貼
な し
20
328
.
りやすさ”
に関しては,「貼りやすかった」と答えた患
あ り
41
672
.
者は,前治療薬なし群で5
5%,および前治療薬あり群
先発医薬品
36
878
.
4
6%で,
「貼りにくい」
と答えた患者は前治療薬なし群
その他貼付剤
5
122
.
で0%,および前治療薬あり群で1
0%であった.
“4
総 計
性 別
貼付部位a)
前治療薬
内 訳
a)
:1症例で複数貼付部位あり.
きの痛み”では,
「感じなかった」と答えた患者は,肩
67%,膝60%,その他6
7%に比べ,腰では77%と多かっ
た.いずれにおいても,統計学的な有意差はみられな
かった.
c)前治療薬
がれやすさ”については,
「4がれなかった」と答えた
患者は,前治療薬なし群で5
5%,および前治療薬あり
群で4
4%で,前治療薬なし群の方が
「4がれなかった」
と答えた患者が多かった.
“4がすときの痛み”では,
「感じなかった」
と答えた患者は,前治療薬なし群で
― (469)
―
《作業者:臼田》 Title:14-03_原著_今本.ec5 Page:94
4がれやすさ(n=61)
貼りやすさ
(n=61)
7%
5%
10%
全体的な満足度(n=61)
貼りやすかった
普通
貼りにくかった
無記入
49%
44%
2%
16%
非常に良い
良い
普通
悪い
非常に悪い
34%
48%
48%
38%
4がすときの痛み(n=61)
5% 3%
痛みへの効果(n=61)
2%
感じなかった
少し感じた
痛かった
無記入
26%
66%
4がれなかった
少し4がれた
かなり4がれた
無記入
良くなった
変わらなかった
悪くなった
無記入
34%
64%
図1 患者満足度(全体)
全体的な満足度
60歳以上
(n=37)
19
60歳未満
(n=23)
49
13
0
32
48
20
非常に良い
4
35
40
良い
60
普通
80
悪い
100
(%)
非常に悪い
4がれやすさ
貼りやすさ
60歳以上
(n=37)
57
32
11
2
p=0.0143
(χ 検定)
60歳未満
(n=23)
39
61
0
50
貼りやすかった
普通
貼りにくかった
無記入
60歳以上
(n=37)
46
60歳未満
(n=23)
48
100
(%)
70
60歳未満
(n=23)
22
57
0
35
50
11 8
43
0
4がすときの痛み
60歳以上
(n=37)
35
9
50
4がれなかった
少し4がれた
かなり4がれた
無記入
100
(%)
痛みへの効果
5 3
44
感じなかった
少し感じた
痛かった
無記入
60歳以上
(n=37)
70
60歳未満
(n=23)
100
(%)
52
0
図2 患者満足度(年齢別)
― (470)
―
30
43
50
4
良くなった
変わらなかった
悪くなった
無記入
100
(%)
《作業者:臼田》 Title:14-03_原著_今本.ec5 Page:95
原 著
全体的な満足度
肩
(n=18)
腰
(n=22)
22
44
14
55
膝
10
(n=20)
その他
(n=18)
20
5
45
44
非常に良い
6
27
45
17
0
28
33
40
60
良い
普通
6
80
悪い
100
(%)
非常に悪い
4がれやすさ
貼りやすさ
肩
(n=18)
50
50
腰
(n=22)
50
45
膝
(n=20)
その他
(n=18)
30
肩
(n=18)
5
55
50
15
44
0
貼りやすかった
普通
貼りにくかった
無記入
50
腰
(n=22)
膝
(n=20)
その他
(n=18)
6
56
100
(%)
50
67
腰
(n=22)
膝
(n=20)
35
28
その他
(n=18)
35
0
50
4がれなかった
少し4がれた
かなり4がれた
無記入
11 6
50
肩
(n=18)
5
感じなかった
少し感じた
痛かった
無記入
100
(%)
67
腰
(n=22)
膝
(n=20)
その他
(n=18)
11 11 11
67
20 10
56
0
66
14 5 5
60
9 9
痛みへの効果
22
77
17
32
35
4がすときの痛み
肩
(n=18)
28
77
6
良くなった
変わらなかった
悪くなった
無記入
23
60
40
50
0
100
(%)
28
44
50
6
100
(%)
図3 患者満足度(貼付部位別)
6
0%,および前治療薬あり群で6
8%で,前治療薬あり
治療薬が先発医薬品の場合において満足度が高かった.
群で4がすときに痛みを感じなかった患者がやや多
いずれにおいても,統計学的な有意差はみられなかっ
かった.また,前治療薬別では,4がすときに
「痛みを
た.
感じなかった」
と答えた患者は先発医薬品
(テープ剤)
6
9%,その他のテープ剤6
0%で,前治療薬が先発医薬
品の患者で
「痛みを感じなかった」
と答えた割合がやや
考
察
高かった.
“痛みへの効果”
では,
「良くなった」
と答え
ロキソプロフェンNaテープ
「科研」の使用感に関す
た患者は前治療薬なし群8
0%,および前治療薬あり群
る患者満足度を,“貼りやすさ”“4がれやすさ”“4
5
6%で,前治療薬なし群の方が効果を強く感じる傾向
がすときの痛み”
および“痛みへの効果”
を指標に調査
2
がみられた
(χ 検定,p=00
.8
50)
.また,
“全体的な満
した.アンケートはがきを回収した6
1例のうち,60歳
足度”
に関して,「非常に良い」または「良い」
と答えた
以上の高齢者が6割を占めていた.本調査では,前治
患者は,前治療薬なし群8
0%,および前治療薬あり群
療薬なしの新規患者のみでなく,他のNSAIDs貼付剤
5
7%で,前治療薬なし群で満足度が高く,8割の患者
(テープ剤)
から本薬剤へ切り替えを行った患者も評価
が満足していた.前治療薬の使用薬剤別では,
「非常
対象とした.前治療薬あり41例のうち,先発医薬品
に良い」
または
「良い」
と答えた患者の内訳は先発医薬
(テープ剤)
が処方された患者は3
6例(878
. %)で,前治
品
(テープ剤)
が58%,その他のテープ剤が4
0%で,前
療薬ありの患者のほとんどを占めていた.
― (471)
―
《作業者:臼田》 Title:14-03_原著_今本.ec5 Page:96
全体的な満足度
前治療薬なし
(n=20)
10
70
前治療薬あり
(n=41)
20
前治療薬:先発医薬品
(n=36)
22
20
37
36
前治療薬:その他
(n=5)
40
0
2
39
3
60
20
非常に良い
41
40
良い
60
普通
80
悪い
100
(%)
非常に悪い
4がれやすさ
貼りやすさ
前治療薬なし
(n=20)
55
前治療薬なし
(n=20)
45
前治療薬あり
(n=41)
46
44
10
前治療薬:先発医薬品
(n=36)
47
42
11
前治療薬:その他
(n=5)
40
貼りやすかった
普通
貼りにくかった
無記入
前治療薬あり
(n=41)
44
前治療薬:先発医薬品
(n=36)
44
前治療薬:その他
(n=5)
60
0
55
50
100
(%)
60
35
0
22 7 2
前治療薬:先発医薬品
(n=36)
69
19 8 3
0
感じなかった
少し感じた
痛かった
無記入
33
14 8
60
100
(%)
80
20
前治療薬あり
(n=41)
56
41
2
前治療薬:先発医薬品
(n=36)
58
39
3
前治療薬:その他
(n=5)
40
50
4がれなかった
少し4がれた
かなり4がれた
無記入
12 7
50
前治療薬なし
(n=20)
5
68
60
5
痛みへの効果
前治療薬あり
(n=41)
前治療薬:その他
(n=5)
37
40
4がすときの痛み
前治療薬なし
(n=20)
40
40
0
100
(%)
良くなった
変わらなかった
悪くなった
無記入
60
50
100
(%)
図4 患者満足度(前治療薬(他の貼付剤より切り替え使用)有無別)
6
1例全例の使用感に関する
“全体的な満足度”
では,
度”
が「非常に良い」
または
「良い」と答えた患者は,6
0
6
4%の患者が
「非常に良い」
,または
「良い」
と回答し,
歳未満が6
1%,60歳以上でも6
8%と,年齢を問わず満
本薬剤の使用感に満足している様子がうかがえた.
足度が高いことがうかがえた.
「貼りやすい」と答えた
「貼りにくかった」
と答えた患者は7%にすぎず,
“4
患者は,6
0歳未満の3
9%に比べ,60歳以上の高齢者で
がすときの痛み”を
「感じなかった」と答えた患者が
は5
7%と多かった(χ2検定,p=00
. 143).
“貼りやす
6
6%を占めており,本薬剤は伸縮性や粘着力などの点
さ”
“4がすときの痛み”
および
“痛みへの効果”につい
で優れていると思われた.
“4がれやすさ”
に関しては,
ても高齢者における満足度が高かった.貼付部位によ
「かなり4がれた」
は1
0%にとどまった.一方,「少し
る
“全体的な満足度”
は,肩,腰,その他に比べて,膝
4がれた」
が3
8%であったが,その理由をアンケート
で低いことがうかがえた.その理由として,膝では「貼
実施時期
(7∼8月 1
5例,9月 3
3例,10∼1
1月 1
3例)
りやすかった」と答えた患者が少なかったのに対し,
別に検討したところ,
「4がれなかった」
と回答した患
腰では4がすときに痛みを感じなかった患者や,痛み
者はそれぞれ4
0%,5
2%,46%であり,7∼8月の夏
への効果を実感した患者が多かったことが挙げられる.
期に調査した群において
「4がれなかった」
と回答した
なお,
“痛みへの効果”
を前治療薬“有無”別に検討す
患者が少ない傾向がみられ,汗などで4がれやすく
ると,前治療薬なし群において
「良くなった」と答えた
なった可能性が考えられる.
患者が8
0%を占めている一方,他のテープ剤から切り
さらに,年齢別に検討してみると,“全体的な満足
替えた症例において
「良くなった」と答えた患者は56%
― (472)
―
《作業者:臼田》 Title:14-03_原著_今本.ec5 Page:97
原 にとどまった.このようなことは他の文献においても
9,
11)
既に報告されているように
,後発品に対する先入
観が影響しているものと思われ,前治療薬の使用感を
念頭に入れたうえでの回答であることを考慮すると,
本薬剤は全体として先発医薬品と同じく高い患者満足
度が得られる製剤であると考えられる.
先発医薬品
(有効成分:ロキソプロフェンNaのテー
プ剤)については使用感に関する患者調査の結果が報
告されており,既に市販されている他の有効成分の貼
付剤に比べて患者満足度の高い製剤であることが確か
められている6―8).本調査において,先発医薬品から本
薬剤へ切り替えた患者群では,
“4がすときの痛み”
を
「感じなかった」
と答えた患者が6
9%,
“痛みへの効果”
で「良くなった」と答えた患者が58%,ならびに“全体
的な満足度”で
「非常に良い」または「良い」
と答えた患
者が5
8%と,いずれも高い割合を示した.また,前治
療薬が先発医薬品であった場合においても高い患者の
満足度が得られたことは,本薬剤による治療が使用感
(満足度)
の観点から有用であることを示唆している.
後発医薬品に対する認識調査12)によると,患者が後
発医薬品に対して強い興味を示しているにもかかわら
ず,後発医薬品の処方はなかなか伸びていないのが現
状である.この状況を改善するためには,医療従事者
への情報提供を強化し後発医薬品に対する不信感を払
拭し,患者の製剤に対する先入観や不安を取り除くこ
とが必要と考える.また,本アンケート調査は,対象
患者を限定せずに実施した.本調査により,ロキソプ
ロフェンNaテープ
「科研」
は,前治療薬
(先発医薬品を
含む)
の有無にかかわらず,使いやすさや効果を加味
した患者満足度において優れていることが明らかと
なった.その点で,今回のアンケート調査結果は患者
の利益に貢献できるものと考える.
文
著
60
0のプロスタグランジン生合成阻害を中心とする薬
66.
効作用機序.炎症 1982;2:2
6
3―2
2)田中頼久,西川優子,菅野修治ほか:新抗炎症薬CS―
60
0の研究 Ⅲ 立体特異的体代謝およびケトン還元
5.
酵素.炎症 198
3;3:1
51―15
3)松澤孝泰,斉藤晴夫,栗原 厚ほか:ロキソプロフェ
ンナトリウム含有水性貼付剤(LX―A)の動態試験―
ラットにおける吸収,分布,代謝,排泄―.臨床医薬 3.
2
0
06;22:1
87―20
4)生山祥一郎,白土基明,谷口 晋ほか:リウマチ患者
を対象とした経皮吸収型鎮痛消炎貼付剤(フェルビナ
クP
「EMEC」)の使用感および効果.Prog Med 2
0
0
2;
67.
2
2:315
8―31
5)古田聖二,身深晃一,池田美穂ほか:経皮吸収型鎮痛
34
8.
消炎貼付剤の使用感.整形外科 20
0
1;5
2:1
34
3―1
6)和田孝彦,尾崎吉郎,小室 元ほか:ロキソプロフェ
ンナトリウム水和物含有貼付剤(ロキソニンÑパップ)
の使用感に関する患者調査―アンケート調査における
他剤貼付剤との比較検討―.新薬と臨牀 2
0
0
9;58:
57.
1
250―12
7)大須賀友晃,牛田享宏,本庄宏司ほか:ロキソプロ
フェンナトリウム水和物含有貼付剤の使用感について
1.
のアンケート調査.新薬と臨牀 20
1
0;59:2
2―3
8)箕輪 剛,渡邉耕太,武田真太郎ほか:ロキソプロ
フェンナトリウム水和物含有貼付剤
(ロキソニン Ñ
テープ100mg)の使用感に関する患者調査―アンケー
ト調査による他剤貼付剤との比較検討―.新薬と臨牀 45.
20
10;5
9:14
37―14
9)大滝康一,麻下智加,綱川智之ほか:後発医薬品使用
促進における問題点―「後発医薬品への変更不可」
処方
せんの実態と患者意識の調査―.日病薬誌 2
0
10;4
6:
3.
20
9―21
10)横井正之,大崎祥子,寺倉宏美ほか:ジェネリック医
薬品の使用促進が進まない地域における要因の調査.
1.
ジェネリック研究 20
11;5:14―2
11)山崎元気,図師清二,井上真理ほか:後発医薬品使用
に対する患者の意識調査―後発医薬品から先発医薬品
への変更―.日本薬学会年会要旨集 201
1;
(1
3
1st,4)
p.27
7.
12)近藤憲昭,大橋広幸,落合賢一:ジェネリック医薬品
数量ベースと処方せん枚数.日本薬学会年会要旨集
20
11;(1
3
1st, 4)
p. 310.
献
1)松田啓一,大西清方,謝 知恵ほか:新抗炎症薬CS―
―
― (473)
《作業者:臼田》 Title:14-03_原著_今本.ec5 Page:98
Masahiko Imamoto*
*
Ayase Keiyu Orthopedics Clinic
To evaluate the effectiveness of LOXOPROFEN Na Tape“KAKEN”,a generic product of transdermal loxoprofen, from a patient s perspective, a questionnaire survey was conducted on patients
treated for any orthopedic condition(osteoarthrosis, myalgia, post―traumatic swelling and/or
pain).Of 61 respondents, 41 had some prior treatment and 20 did not. With regard to overall satisfaction with the product, more than 6
0% answered“very good”or“good”.Only 7% admitted
some difficulty in applying the patch and about 70% felt no pain while removing it. More than
60% experienced pain relief. Subgroup analysis showed that the product left a“very good”or
“good”overall impression on more patients aged ≧60 compared to patients aged <60 years
(6
8% vs. 61%),on more patients treated at the shoulders, the lower back, and other body parts
compared to patients treated at the knees(66%, 6
9% and 61% vs. 5
5%),and on more patients
without any prior treatment compared to patients with some prior treatment(8
0% vs. 5
7%)
.
From an orthopedic patient s perspective, the ease of use and the effective pain relief, regardless
of prior treatments(including those from branded counterparts)
, makes LOXOPROFEN Na Tape
“KAKEN”a very satisfying product.
Key words:Loxoprofen, Transdermal, Patient s evaluation, Questionnaire survey
― (474)
―