5.5.1 RC耐力壁 - 構造設計システムBRAIN

5.5 耐力壁の設計
5.5.1 RC 耐力壁
5.5 耐力壁の設計
5.5.1 RC耐力壁
INDEX: せん断力に対する計算・曲げモーメントに対する計算・軸力に対する計算・設計用応力
検定計算・開口補強筋の算定・分割された壁の扱い
(1)せん断力に対する計算
壁の短期許容せん断力は下記による。
(RC 規準式)
Qa= max( Q1、Q 2 )
Q1  r 2・t・・fs
Q2  r 2Qw   Qc 
r2  1  max r01 , r02 , r03 
Qw  ps  t  'ft
Qc  1.5 fs  0.5 wft pw  0.002 b  j
ps 
at
x t
長期(中期)許容せん断力は、上式のうち Qc の算定を下式による。
Qc  fs  b  j
Qw は無開口壁の壁筋が負担できる許容水平力で、ps の値が 1.2%以上の場合は 1.2%として計算する。
Qc は壁周辺の柱 1 本が負担できる許容せん断力で、
pw の値が 1.2%以上の場合は 1.2%として計算する。
壁周辺の柱のせん断耐力 Qc は壁が水平方向に連続する場合、耐力を重複計算しないよう 1/(共有壁
数)とする。
開口がある場合,耐力壁の適用範囲の判定は開口周比 r02 で行い、r02  0.4 の場合に適用範囲外のメッ
セージを出力する。耐力算定における開口低減率r2 には下式の r01 、 r02 、 r03 を用いる。なお,複数の開
口の評価方法は、4.1.3 耐力壁の剛性計算 (3) 2)複数開口の扱い に従う。
r01 
r02 
r03 
0

 0  h0
h
h0
h
ここで
t
:壁の厚さ
at
:壁筋 1 組の断面積
x
:壁筋の間隔
fs
:壁板のコンクリート短期許容せん断応力度
ft
:壁筋のせん断補強筋用短期許容引張応力度
ps
:縦筋・横筋の小なる方の値
B-5.5.1-1
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5.5.1 RC 耐力壁
'
hh
h
0
00

図-5.5.1.1 耐力壁の諸寸法
不整形な壁の場合の、’は下図による。
n+1FL
nFL

'

図-5.5.1.2 変形壁の寸法基準
(2)曲げモーメントに対する計算
耐力壁が負担する曲げモーメントは、付帯柱への付加軸力として検討することができる。
(5.3.1 (11)
耐力壁付帯柱の付加軸力 参照)
B-5.5.1-2
5.5 耐力壁の設計
5.5.1 RC 耐力壁
(3)軸力に対する計算
許容引張軸力
tNa=γ・av・ft
許容圧縮軸力
cNa=min(cNac1,cNac2)
cNac1=γ{t・Lo+(n-1)・av}・cfc
cNac2=γ{t・Lo+(n-1)・av}・fc/n
ここで
cfc
:壁コンクリートの許容圧縮応力度
fc
:壁縦筋の短期許容圧縮応力度
ft
:壁縦筋の短期許容引張応力度
γ
:開口低減率・長さ比
t
:壁厚
Lo
:壁の内法長さ
n
:ヤング係数比
av
:壁縦筋の断面積
(4)設計用応力
1)設計用せん断力
壁の設計用せん断力は長期荷重時せん断力+n×地震荷重時せん断力(応力解析結果)である。
nの値は下表による。なお、多スパンにまたがる壁を 1 スパン毎の耐力壁としてモデル化した場合は各
壁のせん断力の合計値を設計用せん断力とする。
設計用せん断力の「構造関係技術基準」との比較を下表に示す。
表-5.5.1.1 設計ルートによる設計せん断力の扱い
ルート 1
耐力壁
構造関係技術基準
本システム
Qd=nQE
nは 2.0 以上
Qd=QL+nQE
nは入力値(ルート 1 用、デフォルト
2.00)
ルート 2-1・2-2
耐力壁
Qd=nQE
nは 1.5 以上
ルート 3
耐力壁
Qd=nQE
nは 1.0 以上
Qd=QL+nQE
nは入力値(ルート 2 用、デフォルト
2.00)
Qd=QL+nQE
nは入力値
(ルート 3 用、
デフォルト 1.00)
2)設計用軸力
壁の設計用軸力は、長期荷重時軸力+地震荷重時軸力である。なお、多スパンにまたがる壁を 1 スパン
毎の耐力壁としてモデル化した場合は、各壁の軸力と中間通りにある各柱の軸力の合計値を設計用軸力
とする。
B-5.5.1-3
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5.5.1 RC 耐力壁
(5)検定計算
1)最小せん断補強筋比
最小せん断補強筋比は設計ルート別に下表とする。
表-5.5.1.2 設計ルートと最小せん断補強筋比
設計ルート
最小せん断補強筋比(%)
ルート2-1,2-2
0.4
それ以外
0.25
2)耐力壁周り pt 制限の検定
耐力壁周り pt 制限の検定を行う場合、耐力壁周りの大梁の主筋の、スラブ部分を除く梁のコンクリート
全断面積に対する主筋断面積の割合が 0.8%以上であるかの検定を行う。
3)耐力壁厚さの検定
耐力壁厚さが 120mm 以上かつ内法高さの 1/30 以上であるかを検定する。これを満たさない場合は、断
面検定表には表示されず、適用範囲外メッセージが出力される。
4)耐力壁の付帯ラーメン条件の検定
柱なら柱頭、柱脚、梁なら始・終端、中央の中で最も条件が厳しいものについて下式により検定を行う。
min(D_柱(柱頭)×b_柱(柱頭)、D_柱(柱脚)×b_柱(柱脚)) ≧ st/2
min(D_梁(始端)×b_梁(始端)、D_梁(中央)×b_梁(中央)、D_梁(始端)×b_梁(始端)) ≧ st/2
min(D_柱(柱頭)、D_柱(柱脚)、b_柱(柱頭)、b_柱(柱脚))≧max(
st
3
、 2t )
min(D_梁(始・終端部)、D_梁(中央)、b_梁(始・終端部)、D_梁(中央))≧max(
s
: 壁板(h’×l’
)の短辺長さ = min(h’
、l’)
t
: 壁板の厚さ
B-5.5.1-4
st
3
、 2t )
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5.5.1 RC 耐力壁
例 1(一般的な付帯フレーム)
b_梁
梁
D_梁
h'
壁
t
柱
l’
D_柱
t
b_柱
図-5.5.1.3 一般的な付帯フレームの事例
例 2(壁が階等で区切られる場合)
:
梁
柱
▽n+3FL
h'(n+2)
柱
l’ (n+2)
▽n+2FL
h'
h'(n+1)
l’ (n+1)
l’
壁(t=t)
▽n+1FL
l’ (n)
h'(n)
▽nFL
梁
壁面積 A
梁
図-5.5.1.4 フレームの事例(壁が階等で区切られる場合)
付帯ラーメン条件の、s および t は、一つの壁(層や通をまたいでいても、柱・梁では分割れていない
壁)については、各々一つずつの値しか持たない。従って、一つの壁の付帯フレームをチェックする場
合、全ての付帯フレームは同じ s および t に対して検討することになる。
上記のような壁の h’および l’の決定方法:
l’・・・各層の壁の内法長さの単純相加平均。上図では l’ = (l’(n) + l’(n+1) + l’(n+2)) / 3
h’・・・内法面積と l’から逆算する。上図では h’ = A / l’
B-5.5.1-5
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5.5.1 RC 耐力壁
:
例 3(複数の壁の付帯フレームとなる場合)
梁
柱
▽n+3FL
h'(n+2)
l’ (n+2)
柱
h'’’(n+2)
柱
梁
▽n+2FL
壁(t=t1)
h' h'(n+1)
▽n+1FL
l’ (n+1)
l’
壁(t=t2)
l’’(n+1)
柱
梁
梁
h'(n)
h'’(n+1)
壁(t=t3)
l’ (n)
l’’(n)
▽nFL
梁
h'’ (n)
柱
図-5.5.1.5 フレームの事例(複数の壁の付帯フレームとなる場合)
:
上図のこの柱
では、左側の壁については h’、l’、t1、右側の壁については h’’(n+1)、l’’(n+1)、t2
の 2 つの場合について付帯フレームのチェックをする。
上図のこの梁
では、上側の壁については h’’(n+1)、l’’(n+1)、t2 の、下側の壁については h’’(n)、
l’’(n)、t3 の 2 つの場合について付帯フレームのチェックをする。
なお、上記の h’および l’の決め方は例 2 に示した方法による。
例 4(付帯フレームのチェック方向)
:
図-5.5.1.6 付帯フレームのチェック方向
B-5.5.1-6
5.5 耐力壁の設計
5.5.1 RC 耐力壁
付帯ラーメンのチェックは柱に取り付く全ての方向の壁について行う。一つの柱については最大 8 方向
の壁について検討することになる(図 5.5.1.6 参照)
。
付帯ラーメン条件の検討は、建物共通および柱または大梁の指定との関係により実行する場合としない
場合がある。その関係を表-5.5.1.3 に示す。
表-5.5.1.3 付帯ラーメン条件検討まとめ表
架構種別
通常ラーメン
部材
柱
付帯ラーメン
大梁
柱
大梁
図
断面設計検定指定
しない
する
しない
する
しない
する
しない
する
断面設計表の
画面表示および
計算書出力
×※1
○
×※1
○
×※1
○
×
×
構造規定
×※1
○
×※1
○
×※1
○
×※1
○
有
-
-
-
-
○※1
○※1
○※1
○※1
無
-
-
-
-
×※2
×※2
×※2
×※2
有
-
-
-
-
-
-
○※2
○※2
無
-
-
-
-
-
-
×※3
×※3
付帯ラーメンの断
面形状の検討
[建物共通]
耐力壁周りPt
制限の検討
[建物共通]
凡例:
「○」・・・設計/検定する。検定結果 NG 時、適用範囲外メッセージを出力。
「○※1」・・・付帯ラーメンの断面形状の検討をする。検定結果 NG 時、警告メッセージを出力。
「○※2」・・耐力壁周りの pt 制限を検討する。検定結果 NG 時、警告メッセージを出力。なお、断面設計
表の画面表示および計算書出力はしない。
「×」・・・設計/検定しない。断面設計表の画面表示および計算書出力もしない。
「×※1」・・・設計/検定しないが、警告メッセージを出力。
「×※2」・・・付帯ラーメンの断面形状の検討をしないが、注意メッセージを出力。
「×※3」・・・耐力壁周りの pt 制限を検討しないが、注意メッセージを出力。
「-」・・・該当しない(スキップされ実行されない)
。
B-5.5.1-7
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5.5.1 RC 耐力壁
(6)開口補強筋の算定
1)許容耐力
各補強筋の許容耐力は下式による。
開口隅角部付加斜張力
Tda  atd  a ft
開口隅角部鉛直縁張力
Tva  atv  ft
開口隅角部水平縁張力
Tha  ath  ft
a
atv ' ath '
2
ここで
atd、atv、ath
:開口補強斜め筋、縦筋、横筋
ft
:開口補強筋許容引張応力度
atv’、ath’
:実配筋量からそれぞれ壁筋の開口縁部に相当する断面積を除いた値
2)設計用応力
各補強筋の設計応力は下式による。
h0   0
開口隅角部付加斜張力
Td 
開口隅角部鉛直縁張力
Tv 
h0
Q
2   0 
開口隅角部水平縁張力
Th 
0
h
Q
2h  h 0  
2 2
Q
壁のせん断力Qは耐力壁の設計用せん断力を用いる。ただし、Q 1 の値を超す場合はQ 1 または(1-
max(r01,r02,r03)×Qw)のうち大なる値をとる。また、Qdとして(1-max(r01,r02,r03)×Qw)をとる場
合は開口隅角部応力の式においてh、をそれぞれ梁内法高さ h’、柱内法スパン’ に置き換える。
開口寸法h 0、 0は複数開口がある場合は 4.1.3 耐力壁の剛性計算 (3) 2)複数開口の扱いを参照する。
また、開口補強筋設計用の開口寸法を直接入力した場合は、警告メッセージが出力される。
(7)分割された壁の扱い
耐力壁の応力解析モデルは 1 枚の壁が複数の壁要素に分割されることがある。
1)通をまたぐように配置された耐力壁
通をまたぐように配置された耐力壁は、中間の通は無視して 1 枚の壁として設計する。この壁に開口が
存在する場合も 1 枚の壁として開口に対する検討(開口周比のチェック、開口補強筋の検討、開口によ
る低減率など)を行なう。図-5.5.1.7 の 1WA3G と 1WA5G は同じ形状の耐力壁である。開口の大きさも
位置も同じである。両者の違いは1WA3G は中間に通をまたいでいるが、1WA5G は通りをまたいでいな
い。両者の壁は、1 枚壁として断面設計する。1WA3G は壁の上下大梁の統合しているか否かには無関係
に、3a 通を無視して 1 枚壁として断面設計を行なう。
B-5.5.1-8
5.5 耐力壁の設計
5.5.1 RC 耐力壁
2)階をまたぐように配置された耐力壁
階をまたぐように配置された耐力壁は各層毎の分割壁単位で設計する。図-5.5.1.7 の 1WA1G と RWA1G
は同じ形状の耐力壁である。開口の大きさも位置も同じである。両者の違いは 1WA1G は中間に階をま
たいでいるが、RWA1G は階をまたいでいない。RWA1G は一枚の壁として断面設計を行うが、1WA1G
は壁の両側柱を統合しているか否かには無関係に、中間階の FL で区切られた 3 枚の壁として設計を行な
う。開口もその中間階ごとに区切られて、各階に配置された開口とみなして設計する。そして、開口周
比のチェックは各階ごとの壁について行なう。下図の例では、2F 部分だけがr02=0.55>0.4 となるが、
メッセージは1WA1G の壁が「開口周比 r02 が 0.4 を超えています」と出力する。
このように階をまたぐ壁を配置し、開口がある場合は、同じ形状の階をまたがない壁とは異なる結果と
なるので注意が必要である。このような場合は、開口を形状で入力せずに、数字の直接入力をお勧めす
る。
は、断面設計する壁単位
1WA1G のうち 3F 部分は開口無壁。
開口周比 r02=√(ho×lo/(H×L))は
1.0。
1WA1G のうち 2F 部分は開口無有。
開口高さは 2FL まで。
2 階開口
開口周比r02=0.55
1 階開口
1WA1G のうち 1F 部分は開口無有。
開口高さは 2FL まで。
開口周比r02=0.32
図-5.5.1.7 通、階をまたぐ耐力壁
B-5.5.1-9