NADH センサーを用いた 風量制御による 窒素除去法に関する調査研究 1. 研究目的 福岡市は,博多湾の環境基準達成を目的として, 平成 9 年度に「博多湾水質保全計画」を策定すると 共に,平成 10 年度に県と共同で「博多湾特定水域高 度処理基本計画」を策定した。 りん除去については,平成 5 年より高度処理事業 を実施し,平成 11 年度に整備完了している。 窒素除去については,平成 10 年から調査研究を開 始し,平成 19 年度より窒素・りん同時除去高度処理 施設(担体 A2O 法)を一部導入し,運用しているが, 施設改造費と維持管理費が少しでも低コストで目標 水質を達成しうる処理技術が,さらには,近年の CO2 排出量の低減に寄与するような処理技術が,求めら れている。 本業務では,NADH センサーを用いた風量制御によ る窒素除去法により得られた処理水質が目標水質 である博多湾特定水域高度処理基本計画の計画処 理水質を確保できること,NADH 風量制御が消費電力 量の低減に寄与するかどうかを確認・検証すること を目的とした。 2. 研究体制 本研究は,福岡市からの受託研究として,平成 21 年度~平成 24 年度に実施した。平成 24 年度は,現 在,福岡市の主要処理方式である嫌気好気活性汚泥 法に,NADH を指標とした風量制御システムによる窒 素除去機能を組み込んだ「高精度風量制御システム」 の実証実験を行った。 3. 研究内容 3.1 NADH システム技術概要 3.1.1 NADH センサーを用いた制御手法 活性汚泥微生物の呼吸反応に関与する補酵素 NADH(還元型のニコチンアミド-アデニン-ジヌクレ オチド,nicotinamide adenine dinucleotide)を指 標として送風量制御を行い,硝化槽と脱窒槽の区別 のない一つの反応槽で同時硝化脱窒を行う生物学的 窒素除去法である。NADH を測定する光学センサーと 送風量をフレキシブルに制御できる送風システムで 構成される。 3.1.2 NADH と NADH センサー 異化代謝に関わる NAD は水素キャリヤとして細胞 内に一定量存在する補酵素であり,次の反応式 NAD+ + 2H+ + 2e- ⇔ NADH2+(以下 NADH と略) に従い代謝過程に応じて電子受容体として働く酸化 型 NAD+と電子供与体として働く還元型 NADH のいず れかの形態をとる。解糖系で ATP が生産されながら NADH 生成(NAD+の還元)の方向に進み,好気呼吸と 硝酸塩呼吸(脱窒反応)では電子伝達系で酸素を使 って酸化され NAD+となり共役的に ATP 生産も生ずる。 嫌気呼吸では電子伝達系が停止しており,発酵によ り NADH が NAD+へ酸化される。その後,NAD+は再び 解糖系で利用される。NADH の酸化速度は, 「嫌気呼吸時<硝酸塩呼吸時<好気呼吸時」 の関係となるので,NADH の濃度は次に示すように, 上記の酸化速度と逆の関係となる。 好気反応時 の測定値 脱窒反応時 嫌気反応時 < の測定値 < の測定値 次に,制御フローの概念を図-4に示す。図-2 に示された各センサー信号から硝化・脱窒領域のバ ランスを判断し,ブロワの台数及び出力を制御する と同時に,それに見合った電動バルブの開閉を行う ことを基本としている。 以上の機構によって活性汚泥法においても微生物 中の NADH 濃度が変化することから,その濃度変化を モニタすることは,生物の代謝状態と酸素要求に関 するリアルタイムの情報(好気,無酸素,嫌気など の反応槽の状態情報ではない。 )を得ることに役立つ。 + NADH2 は 340nm の励起波長を吸収し,波長 460nm の 蛍光を発することから,この特性を利用した光学式 の NADH センサーで測ることが可能となっている。図 -1に NADH センサーによる測定イメージを示す。 図-4 微生物 フロック 励起波長 340nmUV NADH センサー 460nm(蛍光) 図-1 NADH NADH センサーによる測定イメージ 3.2 評価項目 評価項目とその内容を表-1に示す。 表-1 評価項目 項 3.1.3 制御手法の概要 基本的な処理フローを図-2に示す。 流入水 DO 嫌気 嫌気 DO NADH pH DO DO NADH pH DO M M M 連続する1年間以上 2 実証実験場所 実施設 パイロットプラント (今回は実施設) ― パイロットプラント 設計値 水質条件等 一般的な流入水質,負荷変動等との 類似性を確保 日間平均:月2回以上 3 流 M 4 送風機 図-2 入 測定頻度 水 測定項目 質 NADH システム適用の基本型 制御判断の概念を図−3に示す。至適領域を含め 9 つの状態を想定し,中央からのズレの傾向を NADH 軸と pH 軸で構成されるマトリックス上で判断し,中 央の状態を維持するよう風量調節(バルブ開閉とブ ロワ群の台数と出力制御)が行われる。 評価内容 実証実験期間 処 理 水 M 目 1 流入水量 PLC 制御フローの概念 測定頻度 水温,pH,BOD,SS T-N,T-P 外部評価委員会が要求する項目 日間平均:月2回以上 5 放 流 水 質 6 外部評価 必要 評価方法 測定した放流水質の日間平均値が 測定しようとする計画放流水質を 超えないこと,かつ,外部委員会の 評価を受けること 7 測定項目 水温,pH,BOD,SS T-N,T-P 外部評価委員会が要求する項目 3.3 実証実験内容 3.3.1 実証実験期間 実証実験は平成 23 年 12 月~平成 25 年 1 月末の 14 ヶ月間に実施した。 図-3 制御判断の概念 3.3.2 実証実験施設 実証実験は,福岡市東部水処理センターの第 3 系 列(既設:嫌気好気法)を一部改造して実施した。 表-3 実証実験 対象系列 水質項目 T−N 計画処理水質 目標水質 備 考 9 mg/L以下 博多湾特定水域高度処理基本計画の 0.4 mg/L以下 目標値(年平均値) T−P CODMn 10 mg/L以下 博多湾特定水域高度処理基本計画の 暫定目標値 2 池直列の矩形沈殿池 表-4 図-5 東部水処理センター配置図 3.3.3 実験対象系列の概要 第 3 系列に制御用計装,仮設送風機を設置した。 表-2 対象系列の概要 対象系列 東部水処理センター 第3系列 処理方法と 従来:嫌気好気法 改造内容 改造:好気槽へNADH風量制御の導入 計画処理水量 日最大:16,700m3/日(HRT 水質項目 目標水質 T−N 13.5 mg/L以下 T−P 3 mg/L以下 BOD 15 mg/L以下 計画放流水質 備 考 「平成19.11.9流域管理官付補佐事 務連絡」②の手法を用いて算出※ 現認可における計画放流水質と同値 ※暫定値 3.4 実証実験運転条件 3.4.1 基本的運転操作条件 実証実験の原水は,実施設の最初沈殿池流出水を 使用した。処理状況,流入水質等によって,運転条 件(返送率,MLSS 等)を変更した。 5.5hr) 改造において NADHセンサー,DOセンサー,pHセンサー, 設置された MLSSセンサー,風量制御システム制御盤, 主な機器 仮設送風機(実験系専用),電動弁, 3.3.4 改造内容 実証実験のフローを図-6に示す。ブロワは実証 実験系列専用として 3 台設置した。好気各槽に DO 計を,好気第 2,4 槽に NADH 計,pH 計,MLSS 計を設 置した。 3.4.2 流入水流量及び流量変動の設定 評価は平均的な水量での通年の処理安定性,及び 計画 1 日最大水量での負荷適応性が対象となるため, 表-5に示すように流入水量を設定した。運転実績 を表-6,7に示す。尚,反応槽容量は 4,025m3(嫌 気槽 1,150m3,好気槽 2,875m3)である。 表-5 流入水量 一日当たり平均流入下水量 風量制御 システム 制御盤 9,000m3/日 3ヶ月に1回の流入水量(冬期以外) 14,000m3/日 最初沈殿 池より 嫌気槽 嫌気槽 DO計 第1領域 NADH計 pH計 MLSS計 DO計 第2領域 DO計 第3領域 NADH計 pH計 MLSS計 DO計 第4領域 3ヶ月に1回の流入水量(冬期) DO計 第5領域 ブロワ B B フィルタ F 電動弁 M M M M B 図-6 NADH システム系統図 3.3.5 処理目標値の設定 実証実験の処理目標水質は以下の通り設定 した。 M 最終沈殿 へ 池より 表-6 11,000m3/日 馴致,調整期間の実績値 時期 H23 年 6 月 反応槽水温(℃) 25.5~26.2 流入水量(m3/日) 6 月~9 月 9 月~11 月 23.4~29.7 23.0~30.2 12,000~ 8,000 5,000~6,000 6,000~ 12,000 嫌気槽 5.52~4.60 4.60~2.30 2.30~3.45 好気槽 13.8~11.5 11.5~5.75 5.75~8.62 返送率(%) 50 50~70 60~100 MLSS(mg/L) 2,600~2,900 1,900~2,900 2,300~2,900 日最大下水量 (m3/日) 計画値 【実績値】 「実績値の流入期間」 9,000 【6,000】 「6/6~13 日」 14,000 【12,000】 「7/7~8/2」 14,000 【12,000】 「8/22~9/5」 日間変動水質分析 3 カ月に 1 回以上 適宜 ― 9/27-28 11/29-30 HRT 【馴致期間:H23 年 6/6~13】 ○Run-1(平成 23 年 6 月)馴致・試運転 流量 5,000m3/日から開始し,6,000m3/日まで増加 させた。1 週間程度で完全硝化まで達成した。 表-7 実証期間の実績値 時期 H23 年 12 月 H24 年 1~3 月 4 月~5 月 6 月~8 月 9~10 月 反応槽水温(℃) 21.3~24.2 12.1~21.6 21.4~26.6 24.2~29.8 25.8~29.7 25.9~16.7 9,000 8,000※1 ~11,000 8,000※1 ~11,000 8,000※1 ~15,000※2 9,000 8,000※1 ~10,000※3 嫌気槽 3.06 3.45~2.50 3.45~2.50 3.45~1.84 3.06 3.45~2.76 好気槽 7.66 8.62~6.27 8.62~6.27 8.62~4.60 7.66 8.62~6.90 流入水量 (m3/日) HRT * 11~H25 年 1 月 返送率 (%) 90~100 90~100 60~100 45~50 、60~100 50~85 50~100 MLSS(mg/L) 2,600~3,000 2,600~3,000 2,500~3,400 2,000~2,800 1,900~2,900 1,800~3,600 11,000 (冬期 1 日最大下水量) 【11,000】 「2/13~15」 14,000 (冬期以外 1 日最大下水量) 【11,000】※※ 「5/7~8」 14,000 (冬期以外 1 日最大下水量) 【14,000】 「7/3~4、7/13~14」 【15,000】 「7/4」 11,000 (冬期 1 日最大下水量) 【9,000】 「11/1~H25 年 1/31」 11,000 (冬期 1 日最大下水量) 【9,000】 「12/1~31」 1/17-18 2/21-22 5/29-30 日最大下水量 11,000 (m3/日) (冬期 1 日最大下水量) 計画値 【9,000】 【実績値】 「12/1~31」 「実績値の流入期間」 日間変動水質分析 3 カ月に 1 回以上 ― 8/28-29 11/20-21 ○ ○ ○ ○ 日最大下水量は、流入水質の類似性を確保する目的で雨天時に流入させることを基本とした。 ※※は晴天時に流入させた。 *は雨天時の返送率である。 ※1 は流量変動時の低流量(20 時~翌日 8 時)8,000m3/日,※3 は流量変動時の高流量(8 時~20 時)10,000m3/ 日である。 ○ ※2 は正午~16 時のみ流入させた。 【調整期間:H23 年 6/13~11/30】 NADH システムにおいて重要な指標である NADH 値 は処理場毎に異なるため,Run-2,-3 の期間で,pH 値,MLSS,DO 値等のデータ収集を行い東部水処理セ ンターでの適正値を探った。 ○Run-2(平成 23 年 6 月~9 月) 流量を 6,000m3/日から 12,000 m3/日に徐々に増加 させた。 ○Run-3(平成 23 年 9 月~11 月) 流量を 12,000 m3/日から 10,000m3/日に徐々に減少 させた。 【実証期間:H23 年 12/1~H25 年 1/31】 ○Run-4(平成 23 年 12 月~平成 25 年 1 月) 調整運転を通して得られた最適な運転操作条件の 下で,実証運転を行った。 【流量変動の設定】 流入水流量の負荷変動としては,変動の類似性を 確保するため,東部水処理センターの水質日報に基 づき,平均流量 9,000m3/日を中心に上下 10%の変動 を与えることを基本とした。 3.5 実証実験結果 以下の本文・図の記載では,嫌気 1,2 槽を K1, K2 と記し,NADH で制御された好気 1 から 5 槽までを N1~N5 と記す。初沈流出水を「流入水」,終沈流出 は冬期 水を「処理水」と記す。また,図中の 3 , は晴天 一日最大下水量 11,000m /日(48hr) 3 , は冬期以外一日最大 日 11,000m /日(48hr) 下水量 14,000m3/日(24hr)及び 15,000m3/日(4hr) を通水させた期間として, は硝化優先運転時 として表記する。 なお,2 月下旬~5 月初旬は,汚泥処理プロセス変 更作業に伴い返流水の影響を受け,流入水の ATU-BOD や SS 濃度が上昇し,窒素やりんも通常より 5~10mg/L 程度高くなった。その期間を以下の各図 において で囲った。最も大きな影響として, 余剰汚泥引抜が制限され不必要に MLSS が上昇し,そ の結果として風量不足のため未硝化がみられた。し かし,計画処理水質や計画放流水質に著しい不都合 を与えるには至らなかった。 3.5.1 処理特性 (1)活性汚泥の沈降性状 表-7に示すように, 冬期は MLSS 2,900mg/L 程度, 返送率 50~100%で運転した。標準活性汚泥法とし て建設された既設の最終沈殿池では,標準法より高 濃度かつ流量もやや多い条件で固液分離する必要が ある。従って,NADH 法にとって活性汚泥の沈降性が 良好なことは重要である。 実証期間の SVI は平均 130 程度,処理水 SS は概ね 3mg/L 以下,透視度は数日を (2)有機物と SS 除去特性 有機物と SS を図-7(流入水),図-8(処理水) に示す。流入水について,本処理場では,原因は明 らかになっていないが,流入水に N-BOD のあること が特徴である。また,冬期に ATU-BOD が低下し,脱 窒に必要な有機物の不足の原因となる可能性が読み 取れる。 mg/L 流入水 ATU-BOD BOD COD(Mn) SS 360 320 280 240 200 160 120 80 40 0 12 1 2 3 図-7 4 5 6 8 9 10 11 12 1 月 有機物とSS(流入水) ATU-BOD COD計画処理水質 BOD(塩素滅菌前) SS 処理水 7 COD(Mn) BOD計画放流水質 30 流入水T-N 処理水T-N 流入水NH4-N 処理水NH4-N 処理水NO3-N TN計画処理水質 TN計画放流水質 ATU-BOD/TN 50 10 40 8 30 6 20 4 10 2 0 ATU-BOD/TN比 N mg/L 除いて 1m以上であった。また,冬期 1 日最大下水 量 11,000m3/日(雨天日・48hr),冬期以外 1 日最 大下水量 14,000m3/日(雨天日・24hr),晴天日 11,000m3/日(48hr)を通水させたが,最終沈殿池に おける固液分離に特段の不都合は認められなかった。 0 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 月 図-9 窒素除去の推移 処理水について,H24 年 1 月に 2 回,硝化優先運 転の結果,計画放流水質 13.5mg/L(暫定値)を超過 した。以降,返流水の影響など流入水 T-N40mg/L 以 上の高負荷条件においても,計画放流水質を超過す ることはなかった。計画処理水質目標 9mg/L に対し て,実証期間(H23 年 12 月~H25 年 1 月の 14 ヶ月・ 冬期 2 回)の平均値は 9.36mg/L となった。この原因 としては,低水温期における有機分不足や流入窒素 負荷が高いとき(流入 T-N40mg/L 以上)の空気量の 不足等の影響によるもので,直近一年間の平均は 8.92mg/L であることを確認した。 また,実証期間の硝化率ほぼ 90%以上,硝化速度 平均値は 1.2mgN/gMLSS/hr であった。一方,脱窒速 度は,水温低下の影響を受けることが確認された。 20 (4)りん除去特性 りん除去の推移を図-10 に示す。低水温期に 6mg/L 以上を超える高濃度の流入が確認された。 10 5 0 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 月 図-8 有機物とSS(処理水) 処理水について,BOD は返流水負荷増加期間にお ける 25mg/L 前後の 2 点,氷結と融解によるコンポジ ット採水チューブ内壁のスライムの剥離があった 1 点を除き,2~18mg/L となった。一方,ATU-BOD は 1 ~5mg/L 程度となっていることから,有機物除去に は問題はなく,BOD のかなりの部分が N-BOD である ことが分かる。また COD は,目標となる計画処理水 質(暫定目標)10mg/L を冬期に超過する傾向を示す。 本傾向も東部水処理センターの既存プロセスである AO 法の過去の実績と同様であることから,NADH 法の 運転に起因するものではないが,将来的には別途, COD 対策の検討が必要と考える。 (3)窒素除去特性 窒素除去の推移を図-9に示す。低水温期に 40mg/L を超える高濃度の流入が確認された。 当日雨量 流入水T-P TP計画処理水質 TP計画放流水質 処理水T-P 10 70 60 8 50 6 40 4 30 20 2 10 0 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 当日雨量 mm/日 15 P mg/L mg/L 25 0 月 図-10 りん除去の推移 処理水について,処理が不安定となる期間がある ことが確認された。原因として,汚泥処理系の作業 に伴う高濃度のりん排水の返流,降雨,硝化優先運 転等の影響が考えられた。計画処理水質0.4mg/Lに対 して,実証期間(H23年12月~H25年1月の14ヶ月)の 平均値は0.59mg/Lとなった。 4. 窒素除去の評価と考察 4.1 NADH 法におけるプロセス内各所における窒素 除去の評価 窒素は,NADH で制御された好気槽での脱窒,処理 水として流出,余剰汚泥として系外への引抜き以外 に,NADH 風量制御において低 DO 濃度で運転される ため好気槽以外のプロセス内の各所(最終沈殿池流 入端,最終沈殿池流出過程,嫌気槽)でも脱窒され ることが確認された。 流入水 Qo×TNo 図中のCは、NOx-N濃度 4) 5) ⑤処理水 Qo×TNeff Qo+Qr Qo 好気槽(NADH風量制御) Ck Qr Cn ①嫌気槽 (Qr×Cr)ー[(Qo+Qr)×Ck] ④終沈流出過程 Qo×(Cn-Ceff) ③終沈流入端 Qr×(CnーCr) 5. 余剰汚泥ピット Qr Cr ポンプによる循環ON/OFF 図-11 合は 20~30%であった。この割合は,従来の生 物学的窒素除去法での割合にほぼ等しい。 処理水濃度に着目すると,1)の原因により, 流入窒素濃度が高くなる春秋と冬期晴天時が目 標の 9mg/L を 0.3 及び 1.9mg/L 超過した。特に 冬期には,メタノール添加等により有機物不足 を補う必要があると考えられる。 降雨時の同時硝化脱窒が特に小さいのは,降雨 による希釈で流入水有機物濃度が低下し,同時 硝化脱窒に適した NADH 値に達しない為と考え られる。なお,このときの硝化率は 93~99%で あり,硝化は問題なかった。 ②余剰汚泥 Qw×汚泥濃度×窒素含有率 プロセス内各所における窒素除去概念図 省エネ性 実証期間における処理水量当たりの消費電力量は 既設の担体 A2O 法と比較して 20% 0.41kWh/m3 であり, 程度の消費電力量が低くなることが確認された。 季節ごとの晴天・雨天時別の窒素収支を図-12 に 示す。各濃度の合計が流入水 T-N, 「処理水として流 出」が処理水 T-N となる。 処理水量当たりの消費電力量【kwh/m3】 0.6 同時硝化脱窒 7.1 年間平均 5.5 1.7 0.9 11.1 夏期晴天時 27.5℃以上 9.3 4.9 9.1 8.5 終沈流入端での脱窒 終沈流出過程脱窒 8.8 嫌気槽での脱窒 0.4 春秋期晴天時 23.5~ 27.5℃ 8.7 6.3 6.7 冬期晴天時 20~23.5℃ 6.2 2.3 0.5 2.4 10.8 9.3 11 10.9 余剰汚泥 処理水として流出 水処理共通機器※※ 返送汚泥ポンプ 0.50 0.5 0.41 0.4 0.33 0.3 1.4 0.2 1.3 春秋期雨天時 24~27.5℃ 4.1 2.5 0.2 0.1 0.0 図-12 図-13 5.8 1.8 5.7 0 AO法 5 1.7 9 10 15 AO+NADH法 担体A2O法 8.8 7.1 6.6 1.1 冬期雨天時 20℃以下 0.26 0.21 0.14 1.8 5.4 6.4 夏期雨天時 26℃以上 ブロワ 窒素除去機器※ 処理水量当たりの消費電力量比較図 8.8 20 25 30 35 40 ※ ※※ 【mg/L】 無酸素槽撹拌機,硝化液循環ポンプ 汚水ポンプ,初沈掻寄機,嫌気槽撹拌機,終沈掻寄機,余剰汚泥ポンプ,脱臭設備等 季節及び晴天・雨天時別 窒素収支(濃度) 窒素除去特性について,以下にまとめる。 1) 同時硝化脱窒は,夏期→春秋期→冬期の順に 11mg/L から 6mg/L 程度へ小さくなる。冬期にお ける ATU-BOD~SS 負荷の低下や水温の影響を受 けることが原因と考えられる。 2) 最終沈殿池流入端での脱窒濃度は,天候に係わ らず年間を通して 5~6mg/L と安定している。 3) 余剰汚泥による窒素除去濃度は 7~11mg/L,割 ●この研究を行ったのは 研究第一部長 尾崎 正明 研究第一部副部長 多田 明男 研究第一部総括主任研究員 研究第一部研究員 前田 阿部 明徳 善成 6. まとめ 本研究では,福岡市東部水処理センター第 3 系列 において実施した実証実験の知見に基づいて,設計 及び維持管理マニュアル(案)を取りまとめた。但 し,低水温期や降雨時に,窒素除去・りん除去に目 標水質の超過が見られたことから,補完的設備の必 要性を確認しており,今後はこれらの課題を解決す べく研究を継続していく必要がある。 ●この研究に関するお問い合わせは 研究第一部長 井上 茂治 研究第一部副部長 坂部 泰理 研究第一部総括主任研究員 柳谷季久夫 【03-5228-6597】
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