PDFファイル - AgriKnowledge

一体型ATP測定試薬キットと小型ルミノメーターを用いた農
耕地土壌の微生物バイオマスの推定
誌名
日本土壌肥料學雜誌 = Journal of the science of soil and manure, Japan
ISSN
00290610
著者
青山, 正和
巻/号
82巻4号
掲載ページ
p. 305-308
発行年月
2011年8月
農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波事務所
Tsukuba Office, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat
305
炭素量との関係を検討し,
ノート
ATP量から徴生物バイオマス
炭素最への換算係数を求める必要がある.
そこで本研究では,
ATP量から徴生物バイオマス炭素
一 体 型 ATP測定試薬キットと小型ルミノメー
最へ換算するための係数を決定することを目的として,
ターを用いた農耕地土壌の微生物ノ〈イオマスの
壌タイプならびに土地利用(水田,畑,果樹園)の具なる
推定*
114点の農耕地土壌を採取し,クロロホルムくん蒸一抽
出法で土壌微生物バイオマス炭素最を測定するとともに
一体型試薬キットと小型ノレミノメーターを用いて土壌の
青山正和
ATPを測定し,両者の関係を検討した.
2
. 材料と方法
キーワード ATP
,微生物バイオマス,ノレミノメーター,
畑土壌,水国土壌
1)土壌試料
14点の土壌試料を採取し,実験
青森県内の農耕地から 1
に供した.内訳は,非黒ボク土畑土壌 47点(水田転換畑
土壌 5点およびリンゴ閤土壌 3点を含む),非黒ボク土水
田土壌 24点,黒ボク土畑土壌 35点および黒ボク土水田土
壌 8点である.非黒ボク土は主にグライ土,灰色低地土,
1.はじめに
近年,土壌診断のための土壌分析は,農業生産現場に近
掲色低地土に分類される沖積土壌であり,畑土壌の一部は
い施設でも行われており,土壌改良に役立っている. しか
掲色森林土を含んでいる.また,黒ボク土は岩木山起源の
し土壌診断の項目は化学性に関するものが主であり,土
黒ボク土ならびに十和田・八Ej3田起源の黒ボク土からなる.
壌生物性の診断はほとんど行われていない.土壌生物性を
007年と 2008年の 7月から 1
1月までの期間に
畑土壌は 2
評価する場合,最初に必要となる情報は土壌徴生物量であ
008年と 2009年の 1
0
表層 10cmを 採 取 し 水 田 土 壌 は 2
る.土壌徴生物量は,一般に徴生物バイオマスとして評価
月から 1
1月までの期間に落水後の作土層から採取した.
され,主にクロロホルムくん蒸法,基質誘導呼吸法やアデ
採取した土壌は,湿潤状態のまま 2mmのふるいを通して
ノシン 5
' 一三リン酸 (ATP) 法が用いられている. しか
実験に用いた.土壌の一部は,ふるいを通した後に風乾し,
しながら, これらの徴生物バイオマス部定法は研究のため
化学分析に用いた.
に開発されたものであり,農協や普及センタ一等の農業生
産現場に近い施設で行うことは困難である.前報(青山,
2
) 化学分析
風乾土について,
pH(
H
z
O
) ならびに全炭素量と全窒
2
0
0
5
) において,著者は食品関連施設等における清浄度
.
5水懸褐液
素量を測定した. pH(HzO) は常法通り 1:2
検査の目的で比較的安価で市販されている ATP測定用の
一体型試薬キットと専用の小型/レミノメーターを用いて
についてガラス電極法で測定し,全炭素量と全窒素量は
NC-アナライザー(住友化学 SumigraphNC-90A) で分
黒ボク土の ATP測定を行い
析した.
ATP出定値とクロロホル
ムくん蒸一抽出法による微生物バイオマス炭素量との関
係を調べたところ,両者の間には高い正の相関関係が存在
することを報告した.ただしこの結果は黒ボク土,
しか
3
) 前培養
各土壌の乾土 60g相
にとり,
の湿潤土を 200mLビーカー
25Cで 7日間前培養した後, クロロホルムくん
0
も地域的にはかなり限定された土壌について得られたもの
蒸一抽出法による微生物バイオマス炭素の測定ならびに
であり,水田土壌を対象としていなかった. したがって,
ATPの測定に供した.前培養は各土壌について 3反復で
ATP測定用の一体型試薬キットと小型/レミノメーターを
行い,反復ごとにバイオマス炭素と ATPを l連で測定し
用いた農耕地土壌の徴生物ノくイオマス推定法を確立するた
た.なお,前培養に際して,前報(青山, 2
0
0
5
) では最大
めには,多くの土壌について ATP量と微生物バイオマス
容水量の 60%水分に調節したが,本研究で、は簡便化のた
め,土壌水分の調節は行わなかった.
4
) 微生物バイオマス炭素量の測定
MasakazuAOYAMA:E
s
t
i
m
a
t
i
o
no
fm
i
c
r
o
b
i
a
lb
i
o
m
a
s
si
na
r
a
b
l
e
s
o
i
l
su
s
i
n
gana
l
li
noneATPa
s
s
a
yk
i
tandah
a
n
d
yl
u
m
i
n
o
m
e
t
e
r
ネ本研究の主要部分は,平成 2
0年度科学技術振興機構重点地
域研究開発推進プログラム・シーズ発掘試験「低コストで
簡便迅速な土壌微生物診断法の開発j の一部として実施し
た.また,本研究の一部は 2
0
0
9年 9月の日本土壌肥料学会
京都大会で発表した.
0
3
6
8
5
6
1 弘前市文京町 3
)
弘前大学農学生命科学部 (
C
o
r
r
ε
s
p
o
n
d
i
n
gAuthor:青山正和
2
0
1
1年 2月四日受付・ 2
0
1
1年 5月 2
4臼受理
2巻 第 4号 p
.305~308 (
2
0
1
1
)
日本土壌肥料学雑誌第 8
0
0
5
) と同じく, Vancee
ta
l
.(
19
8
7
)の
前報(青山, 2
クロロホルムくん蒸一抽出法に基づ、いて行った.
5
) ATPの抽出
土壌からの ATP抽出には,広く使われているトリク
ロロ酢酸 (TCA) ーリン酸ーパラコートの混液を用いる
nkinsonandOades
,1
9
7
9
) では毒性が強く取り
方法(Je
0
0
5
) と同じ
扱いが難しいと考えたため,前報(青山, 2
く,ジメチルスルフォキシド (DMSO) とリン酸三ナト
リウムによる抽出法 (
B
a
ie
ta
l
.,1
9
8
8
) を用いた.前培養
日本土壌肥料学雑誌第 8
2巻 第 4号
306
(
2
0
1
1
)
した乾土1.0
0g相当量の湿潤土を 100mLビーカーに秤取
3. 結果と考察
10mLの DMSOを加えてスターラーで 2分間撹狩し
.OlMリン酸三ナトリウム、溶液を加えて
た後, 40mLの O
2分間撹持した.さらに超音波パス(アズワン US-1,出
力5
5W) 中で 2分間鵡音波処理を行った後,あらかじめ
0.005MMg-EDTAを含む O
.OlM グリシン溶液 (
p
H
7
.
5
)
10mLを入れた試験管に懸掲液 1mLをただちに加えて十
分に混合し,希釈懸濁液を調製した.以下の ATP測定に
供試土壌の pH (HzO
)は3
.
9
7
.
1の範閤にあり,土壌
し
,
有機物含量の指標となる全炭素量も 4
.
2
8
8
.
8
gk
g
-1の範
囲にあった.非黒ボク土の畑地と水田ならびに黒ボク
の畑地と水自に分けて頻度分布をみた場合にも,それぞれ
広い範囲をカバーしていた(表 1).なお, pH (
狂20) の
土壌別の平均値±標準偏援は,非黒ボク土・畑地で 5
.
5
4
く,拭き取り試験用の一体型試薬キットであるキッコーマ
0
.
2
7,黒ボク土・畑
地で 5
.
6
9土 0
.
5
1,黒ボク土・水田で 5
.
5
8と
こ0
.
2
9であり,
5
.
6土 l
1
.9
gkg-1,
全炭素量のそれは,非黒ボク土・畑地で 2
非黒ボク土・水田で 2
9
.
7ご
と 6
.
1
gk
g
l,黒ボク土・畑地で
1
4
9
.
6:
!
:1
8
.
6
gk
g
-,黒ポク土・水田で 6
0
.
8:
!
:1
7.
4
gk
g
-1
ン社製ノレシパックワイドと専用の小型ノレミノメーター(東
であった.
はこの希釈懸濁液を用いた.
6
) ATPの測定
0
0
5
) と同じ
上記の希釈懸濁液について,前報(青山, 2
軍
DKKAF-20) を用いて ATPを測定した.測定に際し
:
!
:0
.
7
8,非黒ボクゴ二・水田で 5
.
1
7と
ご
これらの土壌について,一体型試薬キットと小型/レミノ
て,ルシパックワイド本体から綿棒ホルダーを引き抜いた
メーターを用いて ATP最を測定し,
後,抽出試薬のーとの隔膜上に希釈懸濁液 100μLを注入し
法で測定した徴生物バイオマス炭素量との関係を検討した
た.つぎに,綿棒ホルダーを本体に蔑して強く押し込み,
ところ,荷者の間には正の相関関係が認められた.ただ
クロロホノレムくん蒸
2枚の隔膜を破って測定チューブまで挿入した.その直後
し畑土壌と水田土壌とでは傾向が大きく異なっており,
に,本体を数回強く降りおろし測定チューブ内で土壌懸
水自転換畑土壌は水田土壌と同じ傾向にあった.水田転換
濁液,抽出液および発光試薬を十分に混合した後,小型ノレ
畑土壌を株いた畑土壌について ATP量 (
X
) と徴生物ノ〈
ミノメーターに装着しスタートボタンを押して相対発光
イオマス炭素量 (
Y
) との関係を原点を通る一次回帰式に
(
R
e
l
a
t
i
v
eL
i
g
h
tU
n
i
t;RLU) を測定した. RLUは
, I
司
一試料について連続して 5
1
0回測定し,最大値を記録し
た.それとは別に,上述の希釈懸渇液 1mLに対して ATP
標準溶液(10
0pg~tVl) 1
0
0μLを 加 え た 液 を 調 製 し こ
の1
1
0uLに対して上記と同様に RLUを測定した.さら
に,ブランクとして抽出試薬のみの RLUの測定を行った.
ATP量は,下記の式により算出した.
当てはめると(鴎 1
A
),Y=117Xという関係式が得られた
(
r
=
=
0
.
8
6料*).なお, この中にはりンゴ圏土壌も合まれて
いる.これに対して,水田土壌と水田転換畑土壌の場合に
は(密1B),非黒ボク土,黒ボク土を問わず,
Y
=
=
2
0
2
X
という関係式が得られた (
r
=
0
.
6
7料*)•
これらの関係式における傾きは,徴生物バイオマス炭素
と ATPの比(バイオマス炭素 /ATP比)に相当するが,
この数値に土壌の化学性が影響しているかどうかを検討す
C= (
N
B
)
/
(
M
N
)X 1
0
-3
るため,
μ
g
), Bはブラン
Cは希釈抽出液 100μL中の ATP量 (
,
U Nは ATP標 準 液 無 添 加 の 場 合 の RLU
,
Mは
クの RL
ATP標準液を添加した場合の RLUである.なお, B
a
ie
t
a
l
.(
19
8
8
) と羽a
r
t
e
n
s(
2
0
01)の研究において ATPの回
収率はほぼ 100%であったとされていることから,乾土あ
たりの ATP量の算出にあたっては,回収率を考慮しなかっ
pHと全炭素量によって土壌を細区分して個々の
土壌のバイオマス炭素/ATP比 を 計 算 し そ れ ら の 平 均
値に有意差があるかどうかを検定した(表 2
)
. 水田およ
び水田転換畑の黒ボク土については,細区分しなかった.
畑土壌と水田土壌および、水田転換畑土壌との聞には,統計
的に有意な差が検出されたが,
pHと全炭素量は有意な影
響を及ぼしていないことが認められた.なお,バイオマス
炭素 /ATP比を儒別に計算した場合には,回帰式から得
た.
られたバイオマス炭素/ATP比よりやや高い値が得られ
託20) と全炭素設の頻度分布
表 1 供試土壌 pH(
pH(
H20)
土壌
く 4
.
0 4
.
5
5
.
0 5
.
0
5
.
5 5
.
0
6
.
5 6
.
5
7
.
0
.
0
4
.
5 4
.
5
6
.
0 6
非巣ボク土・畑地
1
4
2
1
0
1
0
1
1
8
黒ボク土・対日地
O
2
9
1
7
1
5
1
非黒ボク土・水田
O
O
O
5
1
7
2
O
泉ボク土・水田
O
O
5
2
l
O
O
土壌
1
O
O
O
全炭素設 (gkg→)
2
0
1
5
く
非黒ボク土・!畑地
黒ボク土・畑地
J
o
o
l
累ボクニヒ・水田
黒ボクゴ二・水田
>7
.
0
l
l
O
2
0
3
0
2
0
4
1
1
3
0
4
0
7
6
1
1
O
O
4
0
5
0
2
9
1
3
5
0
6
0
3
4
6
0
7
0
7
0
8
0
8
0
9
0
O
O
4
6
O
O
O
O
l
O
l
O
2
2
青山:一体型 A
TP測定試薬キットと小型ノレミノメーターを用いた農耕地土壌の微生物ノくイオマスの推定
5
0
0
2
5
0
0
(
A
)
、
,
@
二400
307
bj)
(
B
)
2
0
0
0
震
護3∞
1
5
0
0
z
r
<
2
0
0
1
0
0
0
T
y=117x
r=
0
.
8
6
付*
e
〆
暴1
0
0
剥
豊
臣
2
3
4
y=2
0
2x
r
=0.67***
5
0
0
5
0
0
5
1
0
1
5
2
0
2
5
A
T
P(
m
gk
g
-1)
関
1 水回転換畑土壌な除いた畑土壌 (
A
) ならびに水田土壌と水回転換焔土壌 (B) における
A
T
P最と微生物バイオマス最の関係
O非祭ボクニと:矧l
土壌 ;
e泉ボク土畑土壌;ム非黒ボク土水国土壌;
印非黒ボクニ!こ水回転換~関土壌;企黒ボク土水回. *
**0.1%水準で有意
表 2 土地利用, 土壌タイプ,
p
Hと全炭素主主とバイオマス炭素/A
T
P比
水回転換畑を除いた畑地
l
水田および水田転換J1J
黒ボク土
非黒ボク土
黒ボク土
非然ボクオ二
20
E旦(H
)
〈 5
.
0
5
.
0
6
.
0
く 5
.
0
>6
.
0
5
.
0
6
.
0
く 5
.
0
>6
.
0
>5
.
0
>5
.
0
2
0土 8a 1
2
4土 8a 1
0a 1
1
7土 11a 1
こ1
1a 2
1
1
2土 1
1
2土 14a 1
4
0と
2
4土 28b
3
9と
こ2
0b 2
こ1
5b 2
5
6と
(
1
0
)
(
1
7
)
(
3
)
(
2
2
)
(
8
)
(
8
)
(
15
)
(
10
)
(
21
)
全炭素設 (gkg-1)
〈 2
0
20-30
>3
0
<4
0
4
0…6
0
>6
0
<3
0
〉 3
0
>4
0
1
0
3
5
4土 1
と8a
1
2
3土 1
0a 1
2
8土 8a 1
2
3と
こ1
3a 1
3
1と
こ1
0a 1
2
8と
ご1
0a 2
3
4と
こ1
7b 2
6b 2
2
4と
こ2
8b
(
1
5
)
(
1
4
)
(
1
7
)
(
10
)
(
1
1
)
(
13
)
(
1
1
)
(
15
)
(
8
)
王子均領土標準誤差.表中のアルファベットは引lkey法による多重比較検定の結果を示し 向記号は 5%水準で
有意義がないことを示す.カッコ内の数字は試料数.
ATP量から微生物バイオマス炭素量を推定するに
いる.これを mgkg-1乾土で表した微生物バイオマス炭素
は,囲 l
帰式から得られた備を換算係数として用いる方が汎
(
Y
) と ATP量 (
X
) で示すと, Y=190Xとなる.た
たが,
用性は高いと考えられる. したがって,畑土壌では A
TP
測定値を
1
1
7倍,水田土壌と水自転換熔土壌で、は 2
0
2倍す
ることにより徴生物バイオマス炭素最に換算で、きる.
前報(青山,
2
0
0
5
) において, 7点の黒ボク土畑土壌お
TP測定植の多くは,
だし彼らが用いた A
酸
トリクロロ酢
(
T
C
A
), リン酸およびパラコートを用いた抽出によっ
て得ーられたものである.一方,
M
a
r
t
e
n
s(
2
0
01)は,本
研究で採用したと向じ DMSO-リン酸三ナトリウムによ
ATPを 抽 出 し て い る が , バ イ オ マ ス 炭 素 /
よび未耕地土壌について本研究と閉じ一体型試薬キット
り土壌から
と小型ノレミノメーターで測定した A
TP量とクロロホルム
ATP 比は 208~217 であると報告している.
くん蒸法で測定した微生物バイオマス炭素量との関係は,
と比べると,本研究の畑土壌について得ーられた
Y=128Xで表されることを報告した. この関係は,本研究
で畑土壌について得られた Y
=117Xという関係に近いも
0
0
5
) では前培養時に土壌水分
ので、あった.前報(青山, 2
数値はかなり低い.
ATP測定は,ルシフェリンールシフエラーゼ反応、による
を最大容水量の 60%に調節したのに対して,本研究では
発光に基づいているが,さらにアデノシン 5
' ーーリン酸
これらの報告
1
1
7という
一体型試薬キットであるルシパックワイドを用いた
前培養特に水分調節を行わなかった.それにも関わらず,
(
A
M
P
) を ATPに変換する酵素であるピルベート・オル
ATP量と徴生物バイオマス炭素量との関係は大きくは変
ソフォスフェート・ジキナーゼを加えることによって,ル
わらなかったことから,前培養時の土壌水分の調節は必須
シフェリンールシフエラーゼ、反応で生じた AMPを蒋び
ATPに変換して発光強度を高めている(キッコーマン,
2
0
01
)
. このため,本法で求めた A
TP測定値は A抗 Pも
ではないと考えられた.
土壌の徴生物バイオマス炭素量と
ATP量との間の関係
については,多くの検討が行われてきている. C
o
n
t
i
ne
t
含めた値となり,実際より高く見積もられている可能性が
a
l
.(
2
0
01
) は,それまで得られていた多数のデータを取
ある. このことが, これまで、行われてきた研究と比べてバ
りまとめて,土壌の徴生物バイオマス炭素量と
ATP量と
TP比が低い原田であると推定される.
イオマス炭素/A
ATP(~mol g-l乾土) =0
.
0
1
4x徴生物バイオ
水田土壌と水回転換畑土壌に関しては,バイオマス炭素
μgg-l乾土)の関係が成り立つことを報告して
マス炭素 (
/ATP比は 2
0
2と,畑土壌と比べてかなり高い植を示し
の簡には,
日本土壌肥料学雑誌、第 8
2巻 第 4号
308
(
2
0
11
)
た. lnubushie
ta
l
.(
19
9
1
) は,土壌を湛水条件下と好気
ため,現場に近い施設で土壌生物性の診断に用いるには,
条件下で培養して ATP量と微生物バイオマスの変化を追
前培養を含めた前処理および抽出法のさらなる検討が必要
跡し,楳水条件下ではいずれの値も減少するが,徴生物バ
であると考える.
イオマスより ATP量の減少が著しいことを報告している.
謝
辞:本研究を行うにあたり,実験を担当された西
このことは,湛 7
]
(条件下ではバイオマス炭素 /ATP比が
塚由季子さん,林
上昇することを意味している.本研究で使用した水田土壌,
いたします.
沙樹さんならびに山田智珠さんに感謝
水回転換畑土壌のいずれも採取時には湛水状態、で、はなかっ
文 献
たが,湛水条件を経ることもしくは水分過多の状態が土壌
の徴生物バイオマスと ATPの関係に影響を及ぼしている
可能性が示唆される. Shibaharaandlnubushi(
1995) は
,
湛水前の水田土壌について TCAーリン酸で、抽出した ATP
量を測定しクロロホルムくん蒸一抽出法で測定した徴
生物バイオマス炭素量との関係を検討している.彼らの結
果からバイオマス炭素/ATP比を求めると,
232となり,
Contine
ta
l
.(
2
0
01
) が畑土壌に関して得た 190より大き
な値となった. このように,水田土壌では畑土壌と比べて
バイオマス炭素/ATP比が高くなることが認められてお
り,本研ー究での結果と一致している.
以上のように,
DMSO- リン轍三ナトリウム抽出後に
清浄度検査用の一体型 ATP測定試薬キットとノト型ノレミノ
メーターを使うことによって,土壌徴生物バイオマス炭
素量が推定可能であることが示された.ただし,畑土壌と
水田転換畑土壌を含めた水田土壌とでは ATP測定値から
徴生物バイオマス炭素量への換算係数は異なり,前者では
ATP測定{直を 117倍,後者では 202倍することによって
徴生物バイオマス炭素量に換算で、きることが判明した.本
法は,清浄度検査用の一体型試薬キットと小型ノレミノメー
ターを用いているので,測定操作自体は簡易に行うことが
できるが,抽出にはスターラーと超音波パスを用いている
青山正和 2
0
0
5
.小型ルミノメーターを用いた ATP測定による黒ボ
ク土の微生物バイオ 7 スの推定.土と徴生物, 59,4
1-4
4
.
B
a
i,Q
.,
.
Y Zel
1e
s,
,
.
LS
c
h
e
u
n
e
r
t,
,
.
I andK
o
r
t
e,F
.1
9
8
8
.A s
i
m
p
l
e
e
f
f
巴c
t
i
v
eproceduref
o
rt
h
ed
e
t
e
r
m
i
n
a
t
i
o
no
f adenosine
h
e
m
o
s
t
h
e
'
l
e
,
17,
2
4
6
1
2
4
7
0
.
t
r
i
p
h
o
s
p
h
a
t
e
i
n
s
o
i
l
s
.C
M.,
Todd,
A
.
, andB
r
o
o
k
e
s,
P
.C
.2001
.TheATPc
o
n
c
e
n
t
r
a
t
i
o
n
C
o
n
t
i
n,
i
nt
h
es
o
i
lm
i
c
r
o
b
i
a
lb
i
o
m
a
s
s
.S
o
i
lB
i
o
.
lβi
o
c
h
e
m
.,
33,
7
0
1
7
0
4
.
K
.
,B
r
o
o
k
e
s,
P
.,
.
ca
n
d
J
e
n
k
i
n
s
o
n,
D
.S
.1
9
91
.S
o
i
lm
i
c
r
o
b
i
a
l
I
n
u
b
u
s
h
i,
b
i
m
a
s
sC,N andn
i
n
h
y
d
r
i
n
Ni
na
e
r
o
b
i
canda
n
a
e
r
o
b
i
cs
o
i
l
s
巴f
u
m
i
g
a
t
i
o
n
e
x
t
a
c
t
i
o
n
.S
o
i
lB
i
o
.
lB
i
o
c
h
e
m
.,2
3,
m
e
a
s
u
r
e
dbyt
h
7
3
7
7
4
1
.
.S
.,andOades,
]
.M.1
9
7
9
.A methodf
o
rm
e
a
s
u
r
i
n
g
J
e
n
k
i
n
s
o
n,D
.
lS
o
i
l
B
i
o
.
lB
i
o
c
h
e
m
.,
1
1,
1
9
3
1
9
9
.
a
d
e
n
o
s
i
n
e
t
r
i
p
h
o
s
p
h
a
t
e
i
n
s
o
i
キッコーマン 2
0
0
1
. ルシパックワイド j取扱説明書, p
.
l-4,キッ
コーマン(株),東京.
M
a
r
t
e
n
s,
R
.2
0
01
.E
s
t
i
m
a
t
i
o
no
fATPi
ns
o
i
l
:e
x
t
r
a
c
t
i
o
nm
e
t
h
o
d
sand
o
i
lB
i
o
.
lB
i
o
c
h
e
m
.,33,
973c
a
l
c
u
l
a
t
i
o
no
fe
x
t
r
a
c
t
i
o
ne
f
f
i
c
i
e
n
c
y
.S
9
8
2
.
S
h
i
b
a
h
a
r
a,
,
.
F andI
n
u
b
u
s
h
i,K
.1
9
9
5
.M
e
a
s
u
r
.
巴m
e
n
t
so
fm
i
c
r
・
o
b
i
a
l
b
i
o
m
a
s
sCandN i
npaddys
o
i
l
sbyt
h
ef
u
m
i
g
a
t
i
o
n
e
x
t
r
・
a
c
t
i
o
n
m
e
t
h
o
d
.S
o
i
lS
c
i
.P
l
仰
,t
N
u
t
,
.
'
l4
1,
6
8
168
9
E
.,
.
DB
r
o
o
k
e
s,
P
.,
.
ca
n
d
J
e
n
k
i
n
s
o
n,
D
.S
.1
9
8
7
.Ane
x
t
r
a
c
t
i
o
n
V
a
n
c
e,
methodf
o
rm
e
a
s
u
r
i
n
gs
o
i
lm
i
c
r
o
b
i
a
lb
i
o
m
a
s
sC
.S
o
i
lB
i
o
.
lB
i
o
c
l
z
e
m
.,
19,
7
0
3
7
0
7
.
r