IMO 海洋環境保護委員会 MEPC66(ロンドン)

海上の安全と海洋環境保護に貢献する海上技術安全研究所
(独)海上技術安全研究所 国際会議報告
会
議: 国際海事機関(IMO)第 66 回海洋環境保護委員会(MEPC 66)
開催場所: 国際海事機関(IMO)
、英国、ロンドン
会議期間: 2014 年 3 月 31 日~4 月 4 日
参 加 国: 国及び地域:103、政府間機構:9、国際機関:49
海技研からの出席者:
太田
進
:国際連携センター長
村岡
英一:国際連携センター上席研究員
辻本
勝
:流体設計系実海域性能研究グループ長
黒田麻利子:流体設計系実海域性能研究グループ主任研究員
横井
威
:環境・動力系環境影響評価研究グループ主任研究員
概要
2016 年に開始が予定されている窒素酸化物(NOx)三次規制の開始を 5 年間遅らせると
の前回会合における合意を破棄し、既存の排出規制海域(北米及びカリブ海)については
2016 年 1 月 1 日以降に建造される船舶に、今後設定される排出規制海域については今後
決定する日以降に建造される船舶に NOx 三次規制を適用する MARPOL 条約附属書 VI の
改正案が採択された。
新造船のエネルギー効率設計指標(EEDI)規制の適用を自動車運搬船、Ro-ro 旅客船、
Ro-ro 貨物船、クルーズ船に拡大する等の MARPOL 条約附属書 VI の改正案が採択された
(発効:2015 年 9 月 1 日)。
船舶からの温室効果ガス(GHG)排出削減に関し、就航既存船を含む船舶の更なるエネル
ギー効率改善を目指し、船舶の実燃費データを収集・報告する燃費報告制度について、本
格的に審議が開始された。
国内メーカー開発のバラスト水処理装置(BWMS)が IMO の承認を取得した。
主な貢献
太田は、「義務要件の改正の検討及び採択(議題 6)
」の審議に参画し、併せて起草部会に出席し、
MARPOL 条約や各種コードの改正案の策定に貢献した。
村岡は、「大気汚染及びエネルギー効率(議題 4)
」の審議に参画し、併せて「国際船舶のエネル
ギー効率を促進するためのさらなる技術的・運航的手法」の作業部会に出席し、既存船を含む船
舶のデータ収集・報告制度に関する指標の審議に貢献した。
辻本及び黒田は、
「大気汚染及びエネルギー効率(議題 4)
」の審議に参画し、併せて船舶エネル
ギー効率設計指標(EEDI)の作業部会に出席し、fw ガイドライン、小型船カテゴリーの最低推進
出力など EEDI 関連の審議に貢献した。
横井は「MARPOL 及び関連規則の解釈及び改正(議題 7 関連)」の審議に参画し、排ガスエコ
ノマイザー洗浄水の処理方法の審議に貢献した。
海上の安全と海洋環境保護に貢献する海上技術安全研究所
海技研からの出席者
主な審議結果
当所職員が参画した審議の主な結果は以下
れる船舶に NOx 三次規制を適用することで合
の通りである。今次会合ではこの他にバラス
意され、MARPOL 条約附属書 VI の改正案が
ト水管理、船舶のリサイクル等についても審
採択された。発効は 2015 年 9 月 1 日の予定。
議が行われたが、これらについては、他機関
の報告を参照願いたい。
1.2
復原性計算機の搭載
復原性計算機の搭載に係る MARPOL 条約
1
義務要件の改正の検討及び採択
附属書 I、化学品のばら積運送のための船舶の
1.1
NOx 三次規制
構造及び設備に関する国際規則(IBC コー
前回会合(MEPC 65。昨年 5 月)では、排
ド)及びバルクケミカルコード(BCH コー
出規制海域(Emission Control Area:ECA)に
ド)の改正案が採択された。これら改正案の
おいて NOx の排出量を現行基準(二次規制)
発効は 2016 年 1 月 1 日の予定。
の 2 割程度に低減させることを要求する
「NOx 三次規制」の開始時期について、条約
1.3
不活性ガス装置
に定められている 2016 年を維持すべきか否か
IBC コードについては、復原性計算機の搭
が審議され、三次規制の適用を遅らせる提案
載に加え、本年 5 月に開催される第 93 回海上
を支持する意見が多数を占め、三次規制の開
安全委員会(MSC 93)で採択される予定の不
始時期を 2016 年から 2021 年に延期するため
活性ガス装置に係る SOLAS 条約第 II-2 章及
の MARPOL 条約附属書 VI の改正案が承認さ
び国際火災安全設備(FSS)コードの改正に
れた。今次会合においては、我が国等の国が、
呼応した改正案が、併せて採択された。
選択触媒還元(SCR)を用いる装置等三次規
制に対応する技術は既に開発されており 2016
年から規制を開始すべき、との提案を行った。
1.4
IMO 規則実施コード
IMO 規則の実施に関する監査に係る「IMO
審議の結果、既存の排出規制海域(北米及び
規則実施(III)コード」を義務化するための、
カリブ海)については 2016 年 1 月 1 日以降に
MARPOL 条約附属 I~VI の改正案が採択され
建造される船舶に、今後設定される排出規制
た。
海域については今後決定する日以降に建造さ
海上の安全と海洋環境保護に貢献する海上技術安全研究所
2
エネルギー効率設計指標(EEDI)
2.1
EEDI の適用拡大
2.2
エネルギー効率に関するデータ収集シ
ステム
EEDI 到達値計算ガイドラインの修正につい
前回会合の合意に基づき、既存船を含む船
て審議が行われ、自動車運搬船、LNG 船など
舶の実燃費データを収集・報告する「データ
への EEDI の適用船種の拡大及び今回日本か
収集システム」(制度)について、今次会合か
ら提案された冷凍運搬船のアイスクラス修正
ら本格的審議が開始された。
今次会合では、日欧米の共同提案として、
係数の導入等を反映したガイドラインの修正
が採択された。
また、2015 年 1 月からの EEDI 規制フェー
ズ 1 開始に向け、規制の適用が始まる
データ収集制度の枠組、指標として考えられ
るオプションの提案が行われ、これらの提案
をベースに議論が行われた。
20,000 DWT 未満の小型船カテゴリーへの荒天
具体的には、報告する対象船舶、報告すべ
下操縦性維持のための最低推進出力規則につ
き項目、旗国の果たすべき役割などの本制度
いて審議を行い、フェーズ 1 期間は当面不適
構築の上で検討すべき要素や、実燃費を評価
用とするオランダ提案が多くの支持を得て合
する際の指標等について議論され、審議を継
意された。
続することになった。また、検討の加速のた
実海域における船速低下係数 fw を計算する
め、データコレクションシステムを行った場
ガイドラインの改良について、前回会合で歓
合の船主等への影響などを検討するコレスポ
迎された日本と中国の協同作業の進捗状況が
ンデンスグループ(CG)が設置された。
報告され、引き続き次回会合に向けて作業を
進めることになった。
3
排ガスエコノマイザー洗浄水の取扱
EEDI 検証のための試運転解析法について、
我が国は、排ガスエコノマイザー洗浄水に
前回会合において ISO と国際試験水槽会議
関する水性有害性および油分等の試験結果を
(ITTC)が協力して作業を行うことが歓迎さ
示し、処理方法のベストプラクティスを提示
れ、今回会合においては ISO から進捗状況が
したが、今次会合では合意に至らなかった。
報告された。この報告では、改正 ISO 15016
今後は環境(PPR)小委員会で審議すべきこ
「速力試験データの解析による速力及び動力
とが合意され、興味のある国は、次回会合
性能の評価の指針」が現在 DIS 投票中であり
(MEPC 67。本年 10 月)に作業計画を提案す
今次会合直後に結果が出る予定であることが
ることになった。
示された。改正状況や技術的課題に関する検
討状況については、次回会合以降随時報告す
ることになった。