土木学会論文集E2(材料・コンクリート構造), Vol. 67, No. 2, 189-199, 2011. 親水性を付与したポリプロピレン短繊維の プラスチック収縮ひび割れの抑制効果 細田 1正会員 暁1・定月 良倫2・大島 横浜国立大学准教授 章弘3・石井 あきな4・椿 龍哉5 大学院環境情報研究院(〒240-8501 横浜市保土ヶ谷区常盤台79-5) E-mail: [email protected] 2横浜国立大学大学院 工学府(〒240-8501 横浜市保土ヶ谷区常盤台79-5) 3正会員 萩原工業株式会社 合成樹脂事業 ハギライン事業部 (〒712-8502 岡山県倉敷市水島中通一丁目4番地) E-mail: [email protected] 4正会員 萩原工業株式会社 5正会員 合成樹脂事業 開発部門(〒712-8502 岡山県倉敷市水島中通一丁目4番地) E-mail: [email protected] 横浜国立大学教授 大学院工学研究院(〒240-8501 横浜市保土ヶ谷区常盤台79-5) E-mail: [email protected] 少量の合成短繊維がコンクリートのプラスチック収縮ひび割れを抑制する機構を解明するため,ポリプ ロピレン短繊維の親水性の有無を主眼として,モルタルのプラスチック収縮量およびプラスチック収縮ひ び割れの抑制効果,繊維の付着特性を調べた.モルタルのプラスチック収縮試験を,高温,低湿度,風速 のある条件で実施した.親水性を有する場合,プラスチック収縮ひび割れが顕著に抑制された.モルタル のプラスチック収縮量が抑制され,ペーストとの付着が改善されることにより架橋効果が向上したことに よると考察した.親水性が高く,径の小さいポリプロピレン短繊維を,施工性に悪影響を及ぼさないよう になるべく少量で添加して使用することを,プラスチック収縮ひび割れの抑制対策として提唱した. Key Words : plastic shrinkage crack, polypropylene short fiber, hydrophily of fiber, bond, bridging effect 1. はじめに んどである.別の研究では,PVA短繊維を添加した場合 に,硬化後に調べた空隙が粗になっていることを確認し, プラスチック収縮が抑制されたことの原因であると考察 している10).現状では,合成短繊維がプラスチック収縮 ひび割れを抑制する機構は十分に明らかにされていない. 筆者らは,合成短繊維のプラスチック収縮ひび割れ抑 制機構には,繊維の親水性により周囲の水分が捕捉され る効果(以下,「水分捕捉効果」と呼ぶ)が存在するこ とを指摘してきた.水分捕捉効果によりプラスチック収 縮量が抑制される,という仮説である.ポリプロピレン 短繊維(以下,「PP短繊維」と呼ぶ)の親水性の有無 に着目して,水分が逸散しない条件でのブリーディング 抑制効果4),ごく若材齢での封緘状態での収縮の抑制効 果11)を確認したが,実際にプラスチック収縮ひび割れが 顕著になる水分逸散条件下での効果を検証していない. また,水分捕捉効果によって繊維の周囲に脆弱な部分が できると硬化後の弱点にならないか,という懸念もある. コンクリートに少量の合成短繊維を添加することで, 種々の性能を付与する使用法が普及してきている.コン クリート片の剥落防止1), 2)や,爆裂防止3)などが主として 期待される性能であるが,若材齢のひび割れ抑制効果も 期待されている.少量であるために,コンクリートの施 工性の低下や強度への悪影響も小さくすることが可能で あり,ブリーディング抑制効果4)や均質性を向上する効 果も発揮できれば,汎用的な品質改善手法となる可能性 がある. 筆者らは,これまでに少量の合成短繊維がブリーディ ングを抑制すること4),プラスチック収縮ひび割れを顕 著に抑制すること5), 6),などを示してきた.繊維径の小 さい合成短繊維がプラスチック収縮ひび割れを抑制する という報告はほかにもいくつかなされている7), 8), 9)が,そ の抑制機構をひび割れ間の架橋効果に求めるものがほと 189 土木学会論文集E2(材料・コンクリート構造), Vol. 67, No. 2, 189-199, 2011. 本研究では,PP短繊維の親水性の有無や繊維の直径 などに着目して,水分が逸散しやすい条件下で,モルタ ルの収縮量とプラスチック収縮ひび割れの抑制効果を調 べる.PP短繊維を使用する理由は,鋼繊維や他の合成 繊維に比較して材料コストが低く,汎用的な品質改善手 法として期待していること,およびポリプロピレンがも ともと疎水性であるため,親水性の影響を把握するとい う目的に適していることである. 簡易風洞を作製し,高温,低湿度,一定風速下でのプ ラスチック収縮ひび割れ試験を実施する.型枠内面とモ ルタルの摩擦の影響を詳細に分析し,モルタルの収縮量 とプラスチック収縮ひび割れを短繊維が抑制する効果を 検討するための試験方法を確立する.確立した試験方法 により,繊維の親水性の効果,径や総表面積の影響を分 析する. さらに,モルタル中に埋設した繊維束の付着試験を行 い,繊維の親水性が硬化後の付着強度に及ぼす影響を調 べる. これらの検討を通じて,PP短繊維がプラスチック収 縮ひび割れを抑制する機構について総合的に考察し,プ ラスチック収縮ひび割れを抑制するのに適したPP短繊 維のあり方を提唱する. 最適なPP短繊維の考え方を示す.さらに,繊維の付着 試験を実施し,硬化後の性能を検討する. (1) 使用材料 モルタルの結合材として普通ポルトランドセメント を,細骨材として千葉県君津産の山砂を使用した.使用 材料の物性値を表-1 に示す.細骨材を十分に洗浄した 後にふるいにかけて 5mm 以上の粒子を取り除いた.使 用するセメント,水,細骨材を練り混ぜ直前まで 20°C の恒温室に保管し,材料の温度差による練りあがり温度 への影響を無視できる程度に抑える配慮をした.使用し た繊維の種類と物性値を表-2 に示す. (2) 配合と練り混ぜ モルタルの配合を表-3 に示す.質量比で W/Cを 60%, 砂セメント比を 2.0 とした.混和剤を使用していない. この配合とした目的は,材料分離が生じやすく,顕著な プラスチック収縮を生じさせることである.水分の逸散 が生じる環境下では,水セメント比を大きくすると,材 料分離により収縮が顕著になると考えた.収縮量が大き い条件において,繊維の収縮抑制効果の相対比較が容易 になると考えた.水セメント比,砂セメント比ともに, 一般的に使用されるコンクリートの配合の範囲から大き く逸脱しない値に設定した. 繊維の添加量をモルタルに対する体積比で 0.2%とす ることを基本とした.この添加量にしたのは,鉄道橋等 のコンクリート片の剥落対策の事例では繊維をコンクリ ートの体積比 0.1%以下で使用しており 2),これをコンク リート中のモルタルに対する体積比に換算すると約 0.2%となるためである.剥落対策に使用されている繊維 の長さに合わせて,繊維長を 12mmとした. 練混ぜにはモルタルミキサーを使用した.材料の分 散性を高めるために,練混ぜ水を 1 次水と 2 次水とに等 質量に分けた.モルタルの均質性を高めるため,以下に 2. 実験の概要 本研究では,PP短繊維の物性が,モルタルのプラス チック収縮量と,モルタルのプラスチック収縮ひび割れ に及ぼす影響を調べる.PP短繊維がプラスチック収縮 ひび割れを抑制する機構を明らかにし,抑制するために 表-1 使用材料 材料 種類及び物性値 セメント 普通ポルトランドセメント 密度:3.16g/cm3 比表面積:3340cm2/g 表-3 モルタルの配合 単位量 (kg/m3) W/C(%) 細骨材 千葉県君津市産山砂 密度:2.60g/cm3 吸水率:1.63% 粗粒率:2.28 60 W C S 繊維添加量 (vol%) 355 593 1186 0.20 or 0.30 S/C 2.0 表-2 繊維の物性値など 記号 繊維径(μm) PP-43-親水性 43 PP-65-親水性 65 長さ(mm) 弾性係数(MPa) 密度 (g/cm3) 融点(°C) 親水性処理有 7500 12 5000 PP-65-NC 190 備考 0.91 160~165 親水性処理有 親水性処理無 土木学会論文集E2(材料・コンクリート構造), Vol. 67, No. 2, 189-199, 2011. 断面を1/4に絞る (縮流) cm 85 供試体 cm 45 c 50 m c 60 表-4 試験パラメータ一覧 送風機 cm 50 cm 25 m 供試体名 使用繊維 添加量 着眼点 コントロール PP-65-NC PP-65-親水性 PP-43-親水性 PP-65-親水性-0.3 なし PP-65-NC PP-65-親水性 PP-43-親水性 PP-65-親水性 0 0.2 vol% 0.2 vol% 0.2 vol% 0.3 vol% 基準 親水性なし 親水性あり 小径 添加量増加 cm 30 20cm (3) 試験パラメータ 本研究では,PP 短繊維の親水性の有無を主な着眼点 とし,繊維の直径,添加量がモルタルのプラスチック収 縮量,プラスチック収縮ひび割れに及ぼす影響を検討す ることとした.2.(7)で説明する繊維の付着試験について は,親水性の影響のみを調べた. 表-4 に試験パラメータの一覧を示す.繊維の基本的 な添加量をモルタルに対する体積比で 0.2%とした.少 量の添加で効果を発揮するのは,小径の細かい繊維が分 散しているからである.したがって,より小径の繊維を 用いることで抑制効果が高まると考え,添加量 0.2%で 繊維の直径を 43μm としたケースについて検討した.さ らに,この 43μm の繊維を用いた場合と繊維の総表面積 がほぼ等しくなる場合として,標準径である 65μm の繊 維を 0.3%添加したケースについて検討した. 15cm (4) プラスチック収縮量・ひび割れ試験 型枠には市販のプラスチック製の容器を使用した.型 枠 内 側 の 寸 法 は 上 面 で 310mm×207mm , 底 部 で 295mm×185mm,深さが 115mm であり,上面から底部に 向かって直線的にテーパー加工が施してある.打込み直 後における材料の分離は,コンクリートの高さ及び横寸 法に大きく影響を受けるとの研究結果 12)が報告されてい る.水平方向の寸法が高さと比較して大きい場合には, コンクリートと型枠の内面との付着力または摩擦力の影 響が非常に小さくなり,コンクリートが自由に収縮でき るという結果 12)を踏まえて,型枠高さと比べて水平方向 の断面が大きな型枠を選定した.モルタルの沈下量をレ ーザー変位計で計測するため,型枠の上面のふちでモル タルをできるだけ水平にすり切る必要があったため,一 連の実験開始前に型枠上面を紙やすりで平らに削った. プラスチック収縮が促進される環境を作り出すために, 簡易風洞装置を作成し,供試体に一様な 6.0m/s 程度の風 が当たるようにした 13).風洞の模式図と写真を図-1 に 示す.ベニヤ板で作製した筒状の箱を組み合わせ,送風 口から緩やかに拡幅した断面を 4:1 の比率で一気に絞 る(縮流)ことで一様な風を作り出した.なお,風洞の拡 幅した断面には金網を 2 枚重ねて入れている.これは, 風速と風向を整える役割を果たす.試験を行う前には, 毎回,供試体の型枠の風上および風下の端部 3 点ずつ 図-1 簡易風洞装置 記すように,適宜,さじによるかき落としを加えながら 十分に練り混ぜた.砂とセメントと 1 次水を投入し 30 秒間練り混ぜて,さじでかき落してさらに 30 秒間練り 混ぜた.その後,2 次水を投入して 30 秒間練り混ぜ, さじでかき落してさらに 30 秒間練り混ぜた.その後繊 維を投入して 60 秒間練り混ぜ,さじでかき落してさら に 60 秒間練り混ぜた.練混ぜの合計時間は 240 秒であ る. 繊維を添加しない場合についても練混ぜ条件を同じに するため,練混ぜ時間を同じにし,かき落としを同様に 行った. 既往の研究によって練混ぜ水を加える前に繊維を添加 すると,ブリーディング抑制効果が無くなり,プラスチ ック収縮ひび割れ抑制効果が減少することが確認されて いる 4).このため,繊維をモルタルを練りあがった後に 後添加で加えた. 打込み後にブリーディングが生じたが,親水性を有す る繊維ではブリーディングが明らかに抑制されていた. PP 短繊維の浮きは顕著には認められなかった. 191 土木学会論文集E2(材料・コンクリート構造), Vol. 67, No. 2, 189-199, 2011. (ライン 2,6,10 の付近)で風速を計測し,すべての 点で 6.0±0.2m/s を満たしていることを確認した.試験時 には風洞を 30°傾けて設置し,図-1 に示す位置に供試 体を配置した.モルタルの打込み後,型枠の上面のふち でモルタルをすりきり,約 10 分後から風を当て始めた. モルタル表面が沈下,収縮した後も一様な風を当て続け た.型枠とコンクリート製の床との熱の伝達を断つため に,型枠を木製の台の上に載せ,床から 15cm 離して設 置した. 養生室の環境は温度 30±1°C,相対湿度 30±1%である (±4%の精度,分解能 0.1%の湿度計で,±1%となるよ うに湿度をモニタリングした).国内において想定され る環境の範囲内で収縮が促進される厳しい条件 14)を考慮 して,温度・湿度を設定した. 型枠とモルタルの界面の処理方法について配慮を行っ た.型枠とモルタルの界面が剥離した場合も一種のひび 割れと考えることができるが,界面の摩擦によりばらつ きが大きくなることが予備試験により判明した.既報 15) において,型枠とモルタルの境界面にテフロンシートと 塩化ビニル製のシートを挿入する方法を提案した.テフ ロンシートは型枠壁面に接着してあり,塩化ビニル製シ ートはテフロンシートに直接モルタルが接しないように 挿入されている.モルタルの収縮が進むとテフロンシー トから塩化ビニル製のシートが剥離し,型枠の境界面で の摩擦を低減できる.この方法により,境界条件を明確 にして,ひび割れ抑制効果を検討することができる.既 報 15)において,界面処理のないものの結果を報じている が,境界面付近に,モルタルが型枠から剥離しているの か,ひび割れなのか判別のできない亀裂が発生した. (5) プラスチック収縮量の測定 各位置でのモルタルの沈下量の測定にはレーザー変位 計を 2 つ用いた.図-2 に示す風の方向と平行な 11本の ラインにおいて,モルタルの沈下量を 20mm ピッチで計 測した.型枠とは独立に組み立てたレール上に台車を据 えつけて,その台車に 2 つのレーザー変位計を固定し, 1 つの変位計で台車の位置を計測し,もう 1 つの変位計 でモルタルの沈下量を測定した. モルタルの沈下量は,型枠の両端部の上面を結ぶ直線 からの鉛直方向のくぼみとして算出した.ただし,プラ スチック収縮ひび割れの直上のデータは取り除いた.ひ び割れ部分ではひび割れの最深部までレーザーが届かな いので測定結果の信頼性が低いと判断したからである. 310mm区間を,20mmピッチで計測 ライン1 ライン2 ライン3 ライン4 ライン5 ライン6 20mm 2cm ライン7 ライン8 ライン9 ライン10 ライン11 図-2 収縮量の測定ライン (6) プラスチック収縮ひび割れの評価 供試体を 2.(3)に詳述した水分逸散条件下に 5時間静置 し,レーザー変位計での収縮量の測定が終了した段階で クラックスケールを用いてひび割れ幅を計測した.ひび 割れ幅とひび割れ長さの積の総和を総ひび割れ面積とし た.ひび割れ幅は約 30mm 毎に測定し,その区間の平均 的なひび割れ幅を測定して,ひび割れ長さと乗じること で,ひび割れ面積を算定した.ひび割れ面積の総計であ る総ひび割れ面積で,ひび割れ抑制効果を評価した. (7) 繊維の付着試験方法 本研究は,ポリプロピレン繊維の親水性がプラスチッ ク収縮ひび割れの抑制効果に及ぼす影響を調べることが 主眼であるが,繊維の親水性が周囲のモルタルとの付着 性状に及ぼす影響を調べる付着試験も実施した. JCI規準の「繊維の付着試験方法」16)を参考にして,試 験体を作製した.JCI-SF8ではブリケット形の供試体の 中央部の最小断面部に4本の繊維を配置した仕切り板を 設ける.本研究においては小径の短繊維について検討し ているため,短かく切断する前の長繊維を7本束ねたも のを供試体の中央部の最小断面部に仕切り板とともに配 置した. モルタルの作製には早強ポルトランドセメント(密 度:3.14g/cm3)とセメント強さ試験用標準砂(表乾密 度:2.64g/cm3)を用いた.モルタルのW/Cを65%,S/Cを 2.0とした. モルタルの供試体を打込み後,翌日に脱型し,材齢7 日まで標準水中養生をほどこした.ブリケット形供試体 の引張載荷速度は,0.5mm/minである.引張荷重とすべ り量の曲線は,6体の供試体の平均により求めた. 1 つのパラメータにつき供試体を 4 体ずつ作製して, 3. 実験結果と考察 沈下量の測定を行った.各供試体において,図-2 (1) モルタルの沈下量 に示す 11 本のラインで測定し,各ラインの沈下量に 表-5に,モルタルの沈下量の計測結果を示した.これ ついて供試体 4 体の平均値をとった. は,図-2に示したライン2から10までにおいて,型枠縦 192 土木学会論文集E2(材料・コンクリート構造), Vol. 67, No. 2, 189-199, 2011. 表-5 モルタルの沈下量の計測結果 供試体名 Control PP-65-NC PP-65-親水性 PP-43-親水性 PP-65-親水性-0.3 型枠端からの 距離(mm) 100 120 140 160 180 200 220 100-220mmの 7点の平均値 100 120 140 160 180 200 220 100-220mmの 7点の平均値 100 120 140 160 180 200 220 100-220mmの 7点の平均値 100 120 140 160 180 200 220 100-220mmの 7点の平均値 100 120 140 160 180 200 220 100-220mmの 7点の平均値 測定ライン 6 7 -3.23 -2.95 -3.66 -3.29 -4.10 -3.84 -4.63 -4.32 -4.96 -4.81 -5.06 -4.85 -4.76 -4.50 2 -2.39 -2.69 -3.06 -3.08 -3.03 -2.97 -2.73 3 -2.88 -3.30 -3.49 -3.72 -3.71 -3.70 -3.51 4 -3.53 -3.80 -4.10 -4.29 -4.50 -4.56 -4.28 5 -3.45 -3.84 -4.15 -4.49 -4.89 -4.88 -4.61 8 -3.02 -3.23 -3.68 -3.99 -4.46 -4.44 -4.10 9 -2.47 -2.81 -3.16 -3.33 -3.41 -3.45 -3.04 10 -2.55 -2.81 -3.09 -3.13 -2.96 -2.89 -2.63 -2.85 -3.47 -4.15 -4.33 -4.34 -4.08 -3.85 -3.10 -2.87 -2.49 -2.66 -2.91 -2.97 -3.09 -2.70 -2.37 -2.62 -2.97 -3.45 -3.60 -3.68 -3.36 -2.97 -3.12 -3.71 -3.99 -4.17 -4.36 -4.14 -3.67 -3.07 -3.72 -3.89 -4.30 -4.63 -4.39 -3.99 -2.91 -3.64 -3.92 -4.20 -4.65 -4.69 -4.16 -2.95 -3.59 -3.82 -4.26 -4.60 -4.48 -4.04 -3.04 -3.62 -3.85 -4.03 -4.29 -4.29 -3.87 -2.51 -2.87 -3.46 -3.49 -3.69 -3.49 -3.11 -2.58 -2.93 -3.09 -3.14 -3.21 -3.25 -2.94 -2.74 -3.24 -3.88 -4.00 -4.03 -3.96 -3.85 -3.23 -3.02 -2.24 -2.56 -2.61 -2.56 -2.64 -2.50 -2.38 -2.46 -2.85 -3.03 -3.14 -3.37 -3.29 -3.11 -3.02 -3.38 -3.67 -3.73 -3.97 -3.80 -3.54 -2.91 -3.40 -3.70 -3.93 -4.24 -4.08 -3.84 -2.95 -3.17 -3.58 -3.85 -4.18 -4.12 -3.98 -2.88 -3.08 -3.49 -3.68 -3.90 -3.91 -3.79 -2.83 -3.09 -3.35 -3.61 -3.84 -4.00 -3.74 -2.44 -2.53 -3.03 -3.18 -3.59 -3.57 -3.13 -2.18 -2.47 -2.71 -2.94 -3.12 -2.82 -2.45 -2.50 -3.04 -3.59 -3.73 -3.69 -3.53 -3.49 -3.07 -2.67 -2.11 -2.20 -2.45 -2.71 -2.79 -2.86 -2.62 -2.43 -2.54 -3.07 -3.22 -3.28 -3.32 -3.24 -2.78 -2.99 -3.35 -3.53 -3.54 -3.74 -3.59 -3.13 -3.35 -3.44 -3.75 -3.90 -3.96 -3.88 -3.04 -3.27 -3.42 -3.65 -3.99 -4.07 -3.96 -2.96 -3.07 -3.38 -3.59 -3.83 -3.87 -3.77 -2.84 -2.98 -3.19 -3.51 -3.64 -3.64 -3.54 -2.58 -2.67 -3.19 -3.28 -3.34 -3.37 -3.22 -2.24 -2.46 -2.81 -3.11 -3.01 -3.06 -3.02 -2.53 -3.01 -3.36 -3.63 -3.63 -3.50 -3.34 -3.09 -2.82 -2.04 -2.36 -2.60 -2.76 -2.75 -2.57 -2.33 -2.12 -2.43 -2.91 -3.19 -3.29 -3.01 -2.66 -2.47 -2.89 -3.29 -3.62 -3.96 -3.86 -3.41 -2.59 -3.03 -3.30 -3.70 -4.05 -4.05 -3.79 -2.35 -2.79 -3.20 -3.60 -4.06 -4.06 -3.81 -2.55 -2.83 -2.98 -3.48 -3.87 -3.80 -3.57 -2.31 -2.71 -2.98 -3.35 -3.73 -3.61 -3.49 -2.10 -2.29 -2.77 -3.08 -3.38 -3.29 -3.04 -2.13 -2.32 -2.50 -2.74 -2.98 -3.03 -2.63 -2.49 -2.80 -3.36 -3.50 -3.41 -3.30 -3.17 -2.85 -2.62 断方向の風下端から100mmから220mmにおける測定結果 をすべて示したものである.各パラメータごとに4体の 供試体で計測を行っており,4体の結果の平均値を示し た.沈下量は,モルタル打込み後を0mmとし,5時間経 過した後,送風を止めた後に計測されたものである. モルタルの沈下量は,鉛直方向のプラスチック収縮量 を表している.本実験では,発生したブリーディング水 が風で風下に押し流され,蒸発する.これらの影響も含 んだプラスチック収縮量である. 図-3に,コントロール,繊維径が65μmで親水性があ る場合とない場合の型枠中央付近での各測定ライン (図-2)における沈下量を示す.図-3に示した沈下量は, 各測定ラインにおいて,型枠の風下の端部から100mmか ら220mmの7点のデータを平均したものである. 193 土木学会論文集E2(材料・コンクリート構造), Vol. 67, No. 2, 189-199, 2011. 図-4は,型枠縦断方向(風の方向)の沈下量の分布を 示したものである.風下の型枠縁からの距離とともに, 図-2におけるライン4~8の平均値を示したものである. 沈下量は場所ごとに異なる.図-3に見られるように, 型枠の端部に近い領域では,沈下量が小さい.テフロン シートと塩化ビニル製のシートで型枠とモルタルの縁を 切って,水平方向の収縮への影響は小さくできたが,塩 化ビニル製シートとの摩擦により,モルタルの鉛直方向 の沈下量が抑制されたようである.目視により,親水性 のある繊維を用いた場合,明らかにブリーディングが抑 制されていた.型枠中央付近では,親水性による沈下量 の抑制が明確に見られる.一方で,型枠端部近傍では, 摩擦等の影響により,鉛直方向の沈下量の抑制効果が確 認できない.プラスチック収縮量についての実験を行う 際には,型枠寸法等について十分に検討して行うべきで ある. 図-4を見ると,風と平行な方向においても,沈下量は 均一ではない.ブリーディング水が風下に運ばれ,試験 の開始後しばらくは,風下にブリーディング水が溜まる PP-65-NC 繊維による沈下量の抑制量は大きくはないが,親水性を 持つ繊維の方がより沈下量を抑制している.繊維の添加 量を増やすと抑制効果が明らかに大きくなっており (図-6),モルタルの沈下量により親水性の水分捕捉効 果が判断できると考えている. 親水性の有無で沈下量が異なることから,繊維の親水 性により,モルタル中の水分が繊維に捕捉され,ブリー PP-65-親水性 Control 0 0.0 -0.5 -0.5 -1 -1.0 -1.5 -1.5 沈下量 (mm) 沈下量 (mm) Control 状況も見られた.沈下量の最も大きい箇所は,型枠中央 部よりもやや風上であった.型枠の端部(風下)近傍で は,沈下量も小さく,親水性の効果も明確でない.型枠 縦断方向においては,風下の型枠端から120mm程度の位 置から中央部を挟んで風上の型枠端までの範囲で,親水 性による抑制効果が見られた. 以上の結果に基づき,繊維がモルタル沈下量を抑制す る効果を,型枠縦断方向の風下端から100mm~220mmの 測定値の平均値を用いて,横断方向の端部を除いた中央 近傍(ライン4~8)で評価することとした. 図-5に,コントロール供試体の沈下量と,繊維径が 65μmで親水性がある場合とない場合の沈下量を示す. -2 -2.5 -3 -2.5 -3.0 -3.5 -4 -4.0 -4.5 -4.5 2 3 4 5 6 7 測定ライン 8 9 10 -5.0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 220 240 260 280 300 風下の型枠縁からの距離 (mm) 図-3 型枠中央付近・横断方向の沈下量 PP-65-NC 図-4 型枠中央付近・縦断方向の沈下量 Control PP-65-親水性 PP-65-親水性-0.3 PP-65-親水性 -3.0 -3.0 -3.5 -3.5 沈下量 (mm) 沈下量 (mm) Control PP-65-親水性 -2.0 -3.5 -5 PP-65-NC -4.0 -4.5 PP-65-NC PP-43-親水性 -4.0 -4.5 4 5 6 測定ライン 7 8 4 図-5 繊維の親水性のモルタル沈下量の抑制効果 5 6 測定ライン 7 図-6 親水性の繊維の径,添加量の影響 194 8 土木学会論文集E2(材料・コンクリート構造), Vol. 67, No. 2, 189-199, 2011. 図-7 ひび割れ状況(コントロール) 図-8 ひび割れ状況 (PP-65-親水性) 図-9 ひび割れ状況 (PP-43-親水性) 図-10 ひび割れ状況 (PP-65-親水性-0.3) コントロール PP-65-NC PP-65-親水性 PP-43-親水性 PP-65-親水性-0.3 ディングが抑制されたものと考えている.繊維の水分捕 捉効果である.なお,PP繊維が親水性を有する場合の みにコンクリートのブリーディングを抑制すること4), また親水性を有する場合のみにペーストの自己収縮を抑 制すること11)は既報にて報告済みである.3.(3)の付着試 験結果に示すが,親水性を有する場合に繊維とモルタル の付着が改善されている結果と合わせて考察し,繊維の 親水性により捕捉されているのは水分のみでなく,セメ ントペースト分であると考えている. 図-6には,繊維の添加量(モルタル体積比)を一定にし て繊維径を43μmと細かくした場合と,繊維径を65μmで 添加量を1.5倍にしたものを合わせて示した.どちらの 場合も,沈下量の抑制効果が高まっている.これらは, 計算上の繊維の表面積を一定にしたものであるが,繊維 の添加量を増やしたPP-65-親水性-0.3の方が沈下量の抑制 効果が大きかった. 以上より,本研究の試験方法により,高温,低湿度, 風の影響を受ける環境下で,モルタルのプラスチック収 縮量をPP短繊維が抑制する効果を評価することが可能 であることを示した.親水性を有するPP繊維がプラス コントロール平均 PP-65-NC平均 PP-65-親水性平均 PP-43-親水性平均 PP-65-親水性-0.3平均 450 総ひび割れ面積(mm2) 400 350 300 250 200 150 100 50 0 図-11 総ひび割れ面積 チック収縮量を抑制することが明らかとなった. (2) プラスチック収縮ひび割れの抑制効果 図-7~10に,発生したプラスチック収縮ひび割れの 例を示す.打込み後に約5時間が経過して送風を止めた 195 土木学会論文集E2(材料・コンクリート構造), Vol. 67, No. 2, 189-199, 2011. 表-6 総ひび割れ面積の測定結果とばらつき (単位:mm2) 試験体(1) 試験体(2) 試験体(3) 試験体(4) 平均 変動係数 (%) コントロール 327 342 328 397 349 5.0 親水性なし PP-65-NC 219 261 225 245 237 7.9 PP-65-親水性 60 104 87 112 91 21.5 PP-43-親水性 42 28 17 51 35 21.4 PP-65-親水性-0.3 41 103 71 53 67 46.5 親水性あり 表-7 付着試験の結果 100 引張荷重 (N) 80 すべり2.5mmまでの面積 最大引き抜け荷重 (N) (Nmm) 60 40 20 親水性なし 62.7 31.3 親水性あり 177.2 88.8 0 0.0 1.0 2.0 3.0 すべり量 (mm) 4.0 5.0 図-12 付着試験 荷重-すべり量の関係 後の写真である.各写真の右側が風上である.繊維を添 加しないコントロール供試体では,図-7のように著し いひび割れが発生した.型枠とモルタルの境界面にテフ ロンシートと塩化ビニル製のシートを挿入したため,コ ントロール供試体では,乾燥面全体にわたってプラスチ ック収縮ひび割れが発生した.テフロンシートと塩化ビ ニル製のシートを配置しない場合,乾燥面のひび割れは むしろ減少した15).プラスチック収縮ひび割れは,収縮 量の大きい供試体上部のモルタルの変形を,収縮しにく い供試体内部のモルタルが拘束することに生じる.テフ ロンシートと塩化ビニル製シートを配置した方が,供試 体上部の収縮が自由になって大きくなり,ひび割れ総面 積が増加したと考えている.なお,塩化ビニル製シート はモルタルと付着してテフロンシートから離れており, モルタル供試体の側面からの乾燥はほとんど生じていな いと考えている. コントロール供試体と比較して,図-8~10に示すよ うに,繊維を添加した場合は,プラスチック収縮による ひび割れ総面積が著しく低減された.特に,本研究にお ける最小径である43μmの繊維を0.2%添加した場合には, ひび割れがほとんど発生しなかった. 各パラメータにおける総ひび割れ面積を,図-11に 示した.供試体の数は4体であり,総ひび割れ面積のば らつきは小さいと判断した.表-6に,総ひび割れ面積 の全計測結果と,変動係数を示した.総ひび割れ面積の 最も大きいコントロール供試体では,変動係数が5.0%に 制御されており,本研究で提案するひび割れ抑制効果の 196 評価方法が再現性の高いものであることを示している. 親水性のない繊維を用いた場合でも,総ひび割れ面積 は抑制されている.3.(1)で示したように,親水性のない 繊維はモルタルの収縮抑制効果がほとんどないことから, ひび割れの抑制は,繊維によるひび割れ間の架橋効果に よるものと考えている. 親水性を有する繊維(PP-65-親水性)の場合,親水性 のない場合に比べて顕著にひび割れが抑制された.3.(1) に示したようにモルタルの収縮量が抑制されたことと, 3.(3)に示すように繊維とモルタルの付着が改善され,よ り大きな架橋効果が発揮されたことによると考えている. 図-11におけるPP-65-NCとPP-65-親水性の差は,親水性に よる収縮抑制の効果と,親水性により改善された架橋効 果によりもたらされたと考えている.なお,既報6)にお いて,親水性を有するPP繊維の繊維長を2mmまで短く して架橋効果がほとんど発揮できないと思われる場合で も,プラスチック収縮ひび割れが抑制される現象を確認 しており,親水性による収縮抑制がプラスチック収縮ひ び割れを抑制する機構の裏付けと位置づけている. PP-65-親水性に対して,よりひび割れ抑制効果を高め る意図で実施した2つのパラメータについては,繊維の 添加量を増やしたPP-65-親水性-0.3よりも,繊維径を小さ くしたPP-43-親水性の方がひび割れ抑制効果が大きかっ た.モルタル収縮量の抑制効果はPP-65-親水性-0.3の方が やや大きかったことから,PP-43-親水性の場合は,モル タルの収縮量が抑制されたことに加えて,他のケースよ りもより多くの小径の繊維がひび割れ間を架橋し,架橋 土木学会論文集E2(材料・コンクリート構造), Vol. 67, No. 2, 189-199, 2011. 効果がより大きく発揮されたことにより,ひび割れが顕 著に抑制されたと考えている. プラスチック収縮ひび割れをPP短繊維で抑制したい 場合,親水性の高い繊維で,なるべく小径のものを使用 することが大きな効果を発揮するであろう. 捕捉してブリーディングおよびプラスチック収縮量を抑 制し,付着が改善されることで架橋効果が向上し,小径 とすることで架橋効果を発揮する繊維の本数が増えるか らである. 従来,プラスチック収縮ひび割れは,コンクリートの 配合や打込み後の仕上げ,養生などで抑制すべきもので (3) 繊維の付着試験の結果 あると考えられてきた.合成短繊維の添加でプラスチッ 図-12に,親水性を有する繊維と,親水性処理をし ク収縮ひび割れを抑制する場合,過剰に繊維を添加する ていない繊維の荷重-すべり量の関係を示す.それぞれ, 必要があるならば,汎用的な対策としては受け入れられ 6体の供試体の平均値である. ないであろう.本研究での添加量はコンクリートに対す 親水性のある繊維は,最大荷重に達するまでも,すべ る体積比で0.10%程度であり,コンクリートの施工性に り量に対する荷重が大きく,付着に優れることが分かる. 与える悪影響も小さい17).PP短繊維を使用する場合は, 親水性のある繊維は,約3倍の最大荷重を示し,最大荷 親水性の改良や径を小さくすることなどにより,添加量 重に達した以降も3mm程度のすべり量まで荷重を保持し をなるべく小さくし,施工性に与える影響を最小限にと ている.表-7には,JCI-SF8に示される最大引抜け荷重 どめることで汎用的な抑制対策となりえる. と,すべり量が2.5mmまでの荷重-すべり曲線下の面積 小径の合成短繊維を少量添加することは,コンクリー を示した.ポリプロピレン繊維の親水性はモルタルとの ト片の剥落対策として使用が普及してきている.その親 付着を大幅に改善することが示された. 水性や物性を改良することで,ブリーディングの抑制, 3.(1)および3.(2)において,親水性を有するPP繊維がモ コンクリートの均質化,マイクロクラックの抑制などが ルタルのプラスチック収縮量および収縮ひび割れを抑制 期待され,品質改善のための汎用的な手法として活用さ することを示し,その機構の一つが繊維が周囲の水分を れることも期待できる. 捕捉する水分捕捉効果であるとの考察を示した.繊維の 周囲に水が存在することにより,付着が悪くなり,架橋 効果や硬化後の性状に悪影響を及ぼす懸念もあったが, 4. 結論 付着性状はむしろ改善することがわかった.親水性によ って繊維周囲の水のみが捕えられているのであれば,付 本研究では,合成短繊維を少量添加することでコンク 着が悪くなると考えられるので,親水性を有する繊維は リートのプラスチック収縮ひび割れを抑制する機構を解 周囲のペースト分を捕えていると考えている.付着試験 明し,抑制するために最適な繊維を提唱することを目的 は材齢7日で行ったものであるが,結果は親水性により とした.PP短繊維の親水性の有無を主眼として,モル 繊維の付着が改善されることを示すものであった.プラ タルのプラスチック収縮量およびプラスチック収縮ひび スチック収縮ひび割れの試験を行った若材齢時の付着性 割れの抑制効果を調べた.さらに,繊維の付着試験を実 状との関連は明らかではないが,繊維周囲のペースト分 施した.それらの結果に基づき,以下の知見を得た. (1) 30°C,R.H.30%,風速6.0m/s程度の環境において,モ を捕捉することにより付着性状が改善され,繊維の架橋 効果も向上した可能性がある.硬化後の繊維の界面性状 ルタルのプラスチック収縮量を計測する手法を確 も改善され,例えばモルタルやコンクリートの透気抵抗 立した.親水性を有するPP短繊維はプラスチック 性性などにも好影響を与えると考えており,今後,物質 収縮量を抑制し,親水性の無い繊維はほとんど抑 移動抵抗性の観点からも検討を行いたいと考えている. 制しなかった.PP短繊維の親水性によりモルタル 中のペーストが繊維に捕捉され,ブリーディング (4) プラスチック収縮ひび割れの抑制に適したポリプ が抑制されたことにより,プラスチック収縮量が ロピレン短繊維 抑制されたと考えた. (2) 型枠とモルタルの界面の付着をテフロンシートと 本研究の検討結果から言えることは,プラスチック収 塩化ビニル製のシートにより除去し,境界条件を 縮ひび割れをPP短繊維の添加により抑制するためには, 明確にした試験方法により,PP短繊維のプラスチ 繊維はプラスチック収縮量を抑制し,さらに架橋効果に ック収縮ひび割れの抑制効果を検討した.PP短繊 よりひび割れ幅の拡大を抑制できることが望ましい,と 維は,親水性がある場合に,モルタルのプラスチ いうことである.そのためには,PP短繊維は高い親水 ック収縮量を抑制することと,架橋効果によりひ 性を持ち,添加量を一定とするのであればなるべく小径 び割れ幅を抑制すること,によりプラスチック収 のものを使うのがよい.親水性により周囲のペーストを 197 土木学会論文集E2(材料・コンクリート構造), Vol. 67, No. 2, 189-199, 2011. 縮ひび割れを抑制することを明らかにした.親水 性を高めることと,繊維の径を小さくすることが プラスチック収縮ひび割れ抑制に効果的であるこ とを示した. (3) PP繊維の親水性の有無により,モルタルとの付着 によるコンクリートのプラスチック収縮ひび割れ抑制に関す る実験的研究,コンクリート工学年次論文集,Vol.22,No.2, pp.319-324,2000. 8) Soroushian, P., Mirza, F., and Alhozaimy, A.: Plastic Shrinkage Cracking of Polypropylene Fiber Reinforced Concrete, ACI Materials Journal, Vol.92, 性状が著しく異なることを示した.親水性がある 場合,付着試験における最大荷重が大幅に大きく なり,最大荷重に達する前も後も付着が向上する ことが明らかとなった.親水性を有することによ り,ひび割れ間での架橋効果が向上することの根 拠とした. (4) 本研究での実験結果を踏まえ,プラスチック収縮 ひび割れを抑制するためのPP短繊維のあり方を提 唱した.高い親水性を有し,径をなるべく小さく し,施工性に悪影響を与えないように添加量を小 さくすべきである,との考え方を示した. No.5, pp.553-560, 1995. 9) Naaman, A. E., Wongtanakitcharoen, T., and Hauser, G.: Influence of Different Fibers on Plastic Shrinkage Cracking of Concrete, ACI Materials Journal, Vol.102, No.1, pp.49-58, 2005. 10) Wang, K., Shah, S. P., and Phuaksuk, P.: Plastic Shrinkage Cracking in Concrete Materials - Influence of Fly Ash and Fibers, ACI Materials Journal, Vol.98, No.6, pp.458-464, 2001. 11) 高木亮一,細田 暁:少量の合成短繊維添加による打込み 後の収縮抑制と凝結の遅延効果,コンクリート工学年次論文 集,Vol.29,No.1,pp.417-422,2007. 12) 吉田徳次郎:新らしいコンクリートに於ける材料分離に就 いて,土木学会誌,第18巻第8号,pp.36-55,1932. 参考文献 13) 日本風工学会:風工学ハンドブック-構造・防災・環境・ 1) 菅野貴浩:JR東日本におけるコンクリート構造物の長寿命化 エネルギー-,2007. への取り組み,コンクリート工学,Vol.40,No.5,pp.74-81, 14) Menzel, C.A.: Causes and Prevention of Crack Development in Plastic 2002.5. Concrete, Proceedings of the Portland Cement Association, pp.130-136, 2) 細田 暁,菅野貴浩,石橋忠良:合成短繊維添加によるコン 1954. クリート片の剥落対策,コンクリート工学年次論文集, 15) 定月良倫,細田 暁,佐藤貴紀,大島章弘:PP繊維の親水 性の違いが水分逸散環境下でのプラスチック収縮に与える影 Vol.25,No.1,pp.275-280,2003. 3) 土木学会:コンクリート標準示方書[施工編],2007. 響,コンクリート工学年次論文集,Vol.31,No.1,pp.307-312, 4) 高梨大介,細田 暁,臼井明子:合成短繊維添加によるブリ 2009. ーディングの抑制効果,コンクリート工学年次論文集, 16) 日本コンクリート工学協会:繊維補強コンクリートの試験 方法に関する規準,JCI-SF-8,繊維の付着試験方法,pp.31-33, Vol.27,No.1,pp.253-258,2005. 5) 細田 暁,臼井明子,高梨大介:合成短繊維がプラスチック 1984. 収縮ひび割れを抑制する機構,セメント・コンクリート論文 17) 大畑公嗣,松尾伸二,細田 暁,北島 徹,沼田元良,菅 集,Vol.59,pp.419-426,2005. 野貴浩:合成短繊維コンクリートの現場での施工性に関する 6) 細田 暁,高梨大介,高木亮一,我彦聡志:少量の合成短繊 試験結果,SED,第20号,pp.70-77,JR東日本,2003.5. 維による収縮ひび割れの抑制機構,コンクリート工学年次論 文集,Vol.28,No.1,pp.299-304,2006. (2010. 1. 28 受付) 7) 浜田敏裕,末森寿志,斉藤 忠,平居孝之:ビニロン短繊維 198 土木学会論文集E2(材料・コンクリート構造), Vol. 67, No. 2, 189-199, 2011. PLASTIC SHRINKAGE CONTROLLING EFFECT BY POLYPROPYLENE SHORT FIBER WITH HYDROPHILY Akira HOSODA, Yoshitomo SADATSUKI, Akihiro OSHIMA, Akina ISHII and Tatsuya TSUBAKI The aim of this research is to clarify the mechanism of controlling plastic shrinkage crack by adding small amout of synthetic short fiber, and to propose optimum polypropylene short fiber to control plastic shrinkage crack. In this research, the effect of the hydrophily of polypropylene fiber was investigated in the amount of plastic shrinkage of mortar, total area of plastic shrinkage crack, and bond properties between fiber and mortar. The plastic shrinkage test of morar was conducted under high temperature, low relative humidity, and constant wind velocity. When polypropylene fiber had hydrophily, the amount of plastic shrinkage of mortar was restrained, which was because cement paste in morar was captured by hydrophilic fiber and then bleeding of mortar was restrained. With hydrophily, plastic shrinkage of mortar was restrained and bridging effect was improved due to better bond, which led to remarkable reduction of plastic shrinkage crack. Based on experimental results, the way of developing optimum polypropylene short fiber for actual construction was proposed. The fiber should have large hydrophily and small diameter, and should be used in as small amount as possible in order not to disturb workability of concrete. 199
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