X - blade

2014 年 12 月 16 日
工業基礎数学 II
http://blade.nagaokaut.ac.jp/~hara/class/engmathII/
twitter:hara_sin16
(講義の内容)
(1) 微分方程式
(2) フーリエ・ラプラス変換
1
常微分方程式
2 微分方程式とは
方程式のいろいろ
(1) 変数 (?) 方程式 (例) x5 + x + 1 = 0
(2) 関数方程式
(i) 微分方程式 (例) y∫′′ + y ′ + y = 0
(ii) 積分方程式
(iii) …
(例)
ydx + y = 0
方程式
関数方程式
y cos x + x sin y = tan x
x^5+x+1 = 0
微分方程式
y''+y'+y=0
3 微分方程式と物理学略史
(1) ガリレイ (1564-1642)
加速度、合成・分解 (近代科学の父と言われる)
「ピサの斜塔の落下実験」(1591 年)
(2) デカルト (1596-1650) 空間の等方性、座標
(3) ニュートン (1642-1727)
「万有引力の発見」(1665 年頃)
『プリンキピア』(1687) 現象の関数形を問題にし、本質や原因について問わない。
(4) アリストテレス (前 384-322)
(i) 物質の故郷
(ii) 矢の後方の渦
(5) パラケルスス (1494-1541) 「武器軟膏」
傷ではなく、傷つけた刃の方に軟膏を塗れば、傷が治る。アリストテレス学派から
は、その遠隔性故に批判された。
4 微分方程式の例
(1) 熱方程式
T
T1
T0
T
T0
t
T : 物体の温度
T0 : 外気の温度
t : 時刻
dT
= −k(T − T0 ) k はある定数
dt
以上の微分方程式の解は
T = T0 + Ce−kt ,
(C は定数).
T
T1
T0
t
(2) 物体の落下
d2 x
= −g
2
dt
(ガリレオ)
m
(注)
(i) g は重力加速度
(ii) 右辺に m が現れない。驚異!!
(iii) いくらでも速くなる。
(3) ばね (単振動)
m¨
x = −kx
m
(4) 振り子 (単振動)
mrθ¨ = −mg sin θ
振り子の運動を回転運動で摸することができる。
r
m
(5) 万有引力
G
d2 x
m2 2 = −m1 m2 2
dt
x
(ニュートン)
x
m2
m1
(解)
x′′ = −
k
x2
x′
1
((x ) ) = 2x x = −2k 2 = 2k( )′
x
x
1
′ 2
∴ (x ) = c1 + 2k
√ x
1
′
∴ x = ± c1 + 2k
x
∫
∫
dx
√
∴
= ± dt = c2 ± t.
c1 + 2k
x
′ 2 ′
′ ′′
(6) 参考: マックスウェル方程式 (偏微分方程式)

ρ

∇·E
=


ϵ



∂B
∇ × E
=−
∂t

∇·B
=0





c2 ∇ × B = i + ∂E
ϵ
∂t
ここで、E : 電場の強度、B : 磁束密度、ρ : 電荷密度、i : 電流密度、
ϵ : 誘電率、c : 高速
である。ちなみに透磁率を µ とすると、ϵµc2 = 1。
5 コメント
(1)「x の関数 = t の関数」で、解けたと言ってしまう。
(2) 微分方程式は微分が出現しない形にすることを「解く」と言う場合が多い。
(3)「物理法則」=「微分方程式」というテーゼ
(4) 神は微分方程式を創ったか?
「ラプラスの悪魔」(決定論)
池谷裕二『単純な私、複雑な脳』
〔準備〕→(意志)→(認知)→〔発令〕
6 用語と分類
y は、一般には x の関数 y(x) を表すが、時間 t の関数 y(t) であることも多いので、文脈
で解釈する。特に時間 t の関数としての y の微分 y ′ , y ′′ , · · · は、y,
˙ y¨, · · · と書く事が
ある。
微分方程式 y ′ + y = 1 は、関数 y について、どんな x に対しても恒等的に成り立つとい
うことである。すなわ、y ′ + y ≡ 1 と書くべきである (かも)。
(1)「解く」とは…
例:
(i) y ′ + y = 1 → y = Ce−x + 1.
(ii) (y ′ )2 + y 2 = 1 → y = sin(x + C).
(iii) y ′ sin(y + x) + y(y ′ + 1) cos(y + x) = 1 → y sin(y + x) = x + C.
導関数 y ′ , y ′′ , · · · が無くなり、関数 y だけの式が得られれば「解けた」と言う。
(2) 階数 … 出現する導関数の最高階数の値が方程式の階数。
例 : (y ′′ )3 (y ′′′ )2 + y = 0 → 3 階
(3) 線形性とは…
1 次関数 F に導関数 y, y ′ , y ′′ , · · · を放り込んで = 0 と置いたものを線形微分方程式
と言う。
例:
F (X1 , X2 , X3 ) = X1 + 2X2 + 3X3 · x2
F (y, y ′ , y ′′ ) = y + 2y ′ + 3y ′′ · x2 = 0.
(4) 任意定数 … 微分方程式の解に含まれる「何でも良い定数」
例 : y ′ = y → y = Cex (C は任意定数).
(5) 一般解 … 微分方程式の階数と同じ個数の任意定数を含む解
例 : y ′′ = 0 → y = C1 x + C2 (C1 , C2 は任意定数).
(6) 特殊解 … ある一つの解
例 : y ′′ = 0 ← y = x + 1.
(7) 特異解 … 一般解に含まれない解
例 : (y ′ )2 + y 2 = 1 の一般解は y = cos (x + C) で、特異解は y ≡ 1, y ≡ −1。
(8) 初期条件とは…
n 階の y に関する微分方程式の解は、y(0), y ′ (0), · · · , y (n−1) (0) の値が指定されて
いる事がある。これを初期条件と言う。
例 : (問) 10m の高さから物体を落とす。y ′′ = −g である。t 秒後の位置 y を t で表
わせ。
m
1 2
1 2
(解) y = 10 − gt …ではなく、y = 10 + Ct − gt , (C は任意定数) が正しい解に
2
2
なる。
つまり、t = 0 における初期条件としては、y(0) = 10 だけではなく、y ′ (0) の値も指
定する必要がある。
例えば、
「t = 0 での速度が上向きで秒速 5 m、(すなわち y ′ (0) = 5)」のように指定さ
1 2
れていれば、y = 10 + 5t − gt と、C が確定し、y も確定する。
2
7 変数分離形
(教科書 3.2 1 階微分方程式と求積法)
○用語の追加
(1) 正規形とは…
最高階数の y (n) = · · ·
の形をしたもの。
(2) 1階正規形微分方程式とは…
y ′ = f (x, y)
の形をしたもの。
(3) 求積法とは…
積分を利用して解を不定積分を含む式で表現する方法
○基本的な微分方程式を順に紹介する。
定理 7.1
(1) y ′ = 0
(解) y = C (C は任意定数)
[証明] 平均値の定理より、任意の x > 0 について、ある c (0 < c < x) が存在して、
y(x) − y(0)
= y ′ (c) = 0。よって、y(x) = y(0) = 定数。x < 0 のときも同様。
x−0
′
(2) y = q(x)∫
(解) y = q(x)dx + C (C は任意定数)
∫
[証明] z = y − q(x)dx とおけば、z ′ = 0 よって、(1) より。
(3) y ′ = p(x)y ∫
(解) y = Ce p(x)dx
(C は任意定数)
[証明] z = ye
−
∫
p(x)dx
とおくと、
(
z ′ = ye−
= y ′ e−
∫
∫
p(x)dx
)′
(
)′
∫
+ y e− p(x)dx
( ∫
)′ ∫
∫
= y ′ e− p(x)dx + y − p(x)dx e− p(x)dx
′ −
∫
=ye
p(x)dx
p(x)dx
−
+ y (−p(x)) e
′
−
= (y − p(x)y) e
−
=0·e
∫
p(x)dx
∫
∫
p(x)dx
p(x)dx
= 0.
よって、(1) より z = C 。すなわち、ye
−
∫
p(x)dx
∫
= C 。よって、y = Ce
p(x)dx
。
f ′ (x)
(4) y = α
y
f (x)
(解) y = Cf (x)α (C は任意定数)
f ′ (x)
[証明] p(x) = α
とおくと、
∫
∫ f (x)
f ′ (x)
α
p(x)dx = α
dx = α log f (x) = log (f (x)) よって、
f (x)
∫
α
e p(x)dx = (f (x)) 。(3) を使えば解がえら得る。
′
注1
数学で log といえば、底は e です!すなわち、log とは ln の事です。
[別証] yf (x)−α を微分すれば 0 が得られる。よって、yf (x)−α = C(任意定数)。(証
明終)
練習問題 1 (1) y ′ = xy を解け。
3
′
(2) y = y を解け。
x
定理 7.2
(変数分離形の微分方程式の求積法による解法)
(y だけの式)y ′ = (x だけの式)
∫
の解は
∫
(y だけの式)dy =
(x だけの式)dx + C
(C は任意定数)
[証明]
dy
(y だけの式)
= (x だけの式)
dx
より、
∫
(y だけの式)
dy
dx =
dx
∫
(x だけの式)dx + C
また、置換積分の公式より、
∫
(左辺) =
(y だけの式)dy.
(C は任意定数)
定理 7.3
(変数分離形の微分方程式の求積法による解法 その 2)
y ′ = f (x)g(y)
の解は
∫
1
dy =
g(y)
∫
f (x)dx + C
(C は任意定数)
ただし g(y0 ) = 0 となる y0 があるときは、y ≡ y0 も解である。
[証明] 前定理と同様。
〔例題 2.1〕y ′ = x2 y
【模範解答】
dy
= x2 y.
dx
両辺 y (y ̸= 0) で割って、両辺 dx をかけて、
1
dy = x2 dx.
y
∫
両辺に
をかけて、
∫
よって、
1
dy =
y
x3
log |y| =
+C
3
∫
x2 dx.
(C は任意定数).
両辺の log を外して、
|y| = e
x3
3
+C
C
=e e
x3
3
. 絶対値を外して、 y = ±e e
C
x3
3
.
C が任意の値を動くとき、±eC は、0 でない任意の値を動くので、改めて C と置いてし
まうと、
y = Ce
x3
3
(C ̸= 0 は任意定数).
一方、この C が 0 であるとき、y ≡ 0 (恒等的に 0) であるが、これも元の微分方程式の
解なので、最終的な答えは、
y = Ce
x3
3
(C は任意定数).
定理 7.4
(同次形)
′
y =f
(y)
x
y
の形の y に関する微分方程式は、u = とおいて、u に関する微分方程式に書き直すと、
x
u と x の変数分離形になる。
[証明] 次の例題を見よ。
y
〔例題 2.2〕y ′ = 2 − 1.
x
y
【解】u = とおくと、y = ux。両辺微分して、y ′ = u′ x + u。よって、微分方程式は、
x
′
u x + u = 2u − 1 と変形できる。よって、
u−1
u =
.
x
′
すなわち、
よって、
u′
1
= .
u−1
x
∫
1
du =
u−1
∫
1
dx.
x
すなわち、
log |u − 1| = log |x| + C = log |eC x| (C は任意定数).
log を外して、
u − 1 = ±eC x.
y
u = を戻し、±eC を C と置き直して、
x
y
− 1 = Cx.
x
よって、
y = Cx2 + x (C は任意定数).
3y 2 − 2xy
〔例題 2.2’〕y =
.
2
2xy − x
′
3u2 − 2u
3(y/x)2 − 2(y/x)
=
. よって、
【解】y = ux とおくと y = u x + u =
2(y/x) − 1
2u − 1
u2 − u
2u − 1
1
′
ux=
. よって、 2
du = dx. よって、log |u2 − u| = log |x| + c. よって、
2u − 1
u −u
x
2
2
3
u − u = Cx よって、y − xy = Cx (C は任意定数).
′
′
1 階線形微分方程式とは、
y ′ + p(x)y = q(x)
あるいは、
y ′ = p(x)y + q(x)
の形の微分方程式である。これには解の公式
y = e−
∫
{∫
p(x)dx
∫
q(x)e
}
p(x)dx
(C は任意定数)
dx + C
あるいは、
∫
y=e
{∫
p(x)dx
q(x)e−
∫
}
p(x)dx
dx + C
(C は任意定数)
があるが、覚えにくい。まず、公式を覚える必要がなく、実用的な方法「定数変化法を
紹介する。」
∫
注 2 「y = e
p(x)dx
とおくと、y ′ = p(x)y 」である。これは覚えておくとよい。
〔例題 2.3’〕y ′ + y = 1
【解】y ′ + y = 0 の解は、
y = Ce−x
(C は任意定数).
y = ze−x とおいて、もとの微分方程式に代入すると、
y ′ + y = (ze−x )′ + ze−x = z ′ e−x − ze−x + ze−x = z ′ e−x = 1.
よって、
z ′ = ex .
よって、
z = ex + C
よって、
すなわち、
y = (ex + C) e−x
y = 1 + Ce−x (C は任意定数).
∫
〔例題 2.3”〕y ′ + y = x (ヒント) xex dx = xex − ex + C
次にここでの手続きをまとめよう。
定理 7.5
(1 階線形微分方程式 定数変化法バージョン)
y ′ + p(x)y = q(x)
の解は、
の解を
y ′ + p(x)y = 0
y = Cr(x) (C は任意定数) とすると、
y = z(x)r(x)
に帰着される。
[証明] y = z(x)r(x) より、
q(x) = y ′ + p(x)y
= z ′ (x)r(x) + z(x)r′ (x) + p(x)z(x)r(x)
= z ′ (x)r(x) + z(x)(r′ (x) + p(x)r(x))
= z ′ (x)r(x)
よって、z ′ (x) = q(x)r(x)−1 。なので、z(x) が求まる。
ここで、改めて 1 階線形微分方程式についての公式を紹介する。
定理 7.6
(1 階線形微分方程式)
y ′ + p(x)y = q(x)
の解は
y = e−
∫
{∫
p(x)dx
∫
q(x)e
[証明] 前定理で、具体的に、
}
p(x)dx
−
r(x) = e
∫
z(x) =
−1
q(x)r(x)
よって、
y = r(x)z(x) = e−
(C は任意定数)
y ′ + p(x) = 0
の解は、
よって、
dx + C
∫
∫
p(x)dx
∫
dx + C =
{∫
p(x)dx
∫
q(x)e
∫
q(x)e
p(x)dx
dx + C
}
p(x)dx
dx + C
練習問題 2 (1) y ′ x = y
(2) y ′ x = y − 1
2x
y=x
(3) y ′ + 2
x +1
′
(4) y + xy = 0
(5) y ′ + xy = x2 + 1
∫
(ヒント:
1
2
1
2
(x2 + 1)e 2 x dx = xe 2 x )
(6) y ′ = y 2 + 1
y
(7) y ′ =
y+x
xy
′
(8) y = 2
x + y2
1
2
注 3 ヒントについてのヒント:fn = xn e 2 x と置くとき、部分積分法により、
∫
∫
fn dx = fn−1 − (n − 1) fn−2 dx (部分積分法による),
∫
∫
1 2
1 2
f1 dx = xe 2 x dx = e 2 x + C,
∫
∫
1 2
2
f0 dx = e x dx = 初等的関数ではない.
練習問題 3 y ′ = αy + ceβx
よる。)
α, β, c は定数. (ヒント: αとβ による場合分けに
8 教科書 3.3 完全微分形
微分方程式
dy
P (x, y) + Q(x, y)
=0
dx
を
P (x, y)dx + Q(x, y)dy = 0
· · · (1)
· · · (2)
と書くことがある。(2) の形の微分方程式を全微分方程式という。
(2) の左辺がある関数 u = u(x, y) の全微分
∂u
∂u
dx +
dy
∂x
∂y
になっているとき、つまり、ある関数 u = u(x, y) が存在して、
∂u
= P (x, y),
∂x
∂u
= Q(x, y)
∂y
であるとき、(2) は完全微分形であるという。
定理 8.1
完全微分形の微分方程式
∂u
∂u
dx +
dy = 0
∂x
∂y
の解は u(x, y) = C (任意定数) である。
d
∂u ∂u dy
[証明] y = y(x) を解とすれば u(x, y(x)) =
+
=0
dx
∂x ∂y dx
u(x, y(x)) = 定数。
(∗)
. よって
x
t
u
(*) u = u(x, y), x = x(t), y = y(t) という関数関係
y
∂u dx ∂u dy
du
=
+
dt
∂x dt
∂y dt
が成り立つ (合成関数の微分法)。
ここでは、t = x として使った。
定理 8.2
微分方程式 (2) が完全微分形であるための必要十分条件は。
∂Q
∂P
=
∂y
∂x
となることである。
がある時、
[証明] 教科書 p.108 の証明を見よ。
[例題 3.1’](3x2 + y)dx + (x + 3y 2 )dy = 0 を解け。
∂
∂
2
【解】 (3x + y) = 1,
(x + 3y 2 ) = 1 なので、これは完全微分形である。まず、
∂y
∂x
∫
を解く。両辺 x で積分して、u =
∂u
= 3x2 + y
∂x
(3x2 + y)dx = x3 + xy + f (y)
f はある関数。こ
れを y で微分して、
∂u
= x + f ′ (y) = x + 3y 2 .
∂y
よって、f ′ (y) = 3y 2 。よって、f (y) = y 3 。以上より、u = x3 + xy + y 3 。故に、微分
方程式の解は、
x3 + xy + y 3 = C (C は任意定数).
練習問題 4 (x3 − 3xy 2 )dx + (−3x2 y + y 3 )dy = 0 を解け。
9 積分因子
P (x, y)dx + Q(x, y)dy = 0
· · · (1)
が完全微分形にならなくても、
λ(x, y)P (x, y)dx + λ(x, y)Q(x, y)dy = 0
· · · (2)
が完全微分系になるつまり、
∂
∂
λ(x, y)P (x, y) =
λ(x, y)Q(x, y)
∂y
∂x
となることがある。この λ(x, y) を (1) の積分因子という。
例1
(x2 y − y 4 )dx + (xy 3 − 2x3 )dy = 0
は、完全微分形でないが、
x−2 y −3 (x2 y − y 4 )dx + x−2 y −3 (xy 3 − 2x3 )dy = 0
は、完全微分系である。すなわち、x−2 y −3 が積分因子である。
(このケースの詳しい話は省略する)
10 定数係数線形微分方程式
y (n) + an−1 y (n−1) + · · · + a1 y ′ + a0 y = q(x)
を考える。
y (n) + an−1 y (n−1) + · · · + a1 y ′ + a0 y = 0
· · · (5.1)
· · · (5.2)
を (5.1) に同伴する同次方程式あるいは斉次方程式と言う。
f (t) = tn + an−1 tn−1 + · · · + a1 t + a0
· · · (5.3)
を特性多項式あるいは、固有多項式、
f (t) = 0
を特性方程式あるいは、固有方程式という。その根を特性根あるいは、固有値という。
例 2 y ′′ − 5y ′ + 6y = 0 の固有多項式は、t2 − 5t + 6、固有方程式は、
t2 − 5t + 6 = 0、固有値は、t = 2, 3。
11 2 階定数係数線形微分方程式
定理 11.1
2 階同次線形定数係数微分方程式
y ′′ + py ′ + qy = 0
· · · (1)
の一般解は
y = C1 y1 + C2 y2
(C1 , C2 は任意定数)
と表される。ここで y1 , y2 は次で決まる関数である。
特性方程式 t2 + pt + q = 0 が
(1) 異なる 2 実解 α, β をもてば、y1 = eαx , y2 = eβx 。
(2) 重複解 αを持てば、y1 = eαx , y2 = xeαx 。
(3) 複素数解 a ± bi (b ̸= 0) をもてば、y1 = eax cos bx, y2 = eax sin bx。
例 3 (ありがちな 2 階定数係数同次微分方程式)
(1) y ′′ − 5y ′ + 6y = 0
【解】 特性方程式は、t2 − 5t + 6 = (t − 2)(t − 3) = 0 なので、固有値は t = 2, 3。
よって、一般解は、y = C1 e2x + C2 e3x (C1 , C2 は任意定数)。
(2) y ′′ − 4y ′ + 4y = 0
【解】 特性方程式は、t2 − 4t + 4 = (t − 2)2 = 0 なので、固有値は t = 2, 2。よって、
一般解は、y = C1 e2x + C2 xe2x (C1 , C2 は任意定数)。
(3) y ′′ − 4y ′ + 13y = 0
【解】 特性方程式は、t2 − 4t + 13 = 0 なので、固有値は t = 2 ± 3i。よって、一般解
は、y = C1 e2x cos 3x + C2 e2x sin 3x (C1 , C2 は任意定数)。
例 4 (ばねの方程式)
y ′′ = −ky, (k > 0) の解は、
√
y = A sin( kx + B)
あるいは、
y = C1 cos
√
√
(A, B は任意定数)
kx + C2 sin kx (C1 , C2 は任意定数)。
例 5 (ばねの方程式、抵抗付き)
y ′′ = −ky − ny ′ , (k > 0) の解は、
(1) n2 − 4k > 0 のとき、
√
−n
2+
y = C1 e(
2
(n
2 ) −k
)x + C e(
2
−n
2−
√
2
(n
2 ) −k )x
(C1 , C2 は任意定数).
(2) n2 − 4k = 0 のとき、
y = C1 e− 2 x + C2 xe− 2 x
n
n
(C1 , C2 は任意定数).
(3) n2 − 4k < 0 のとき、
(√
−n
2x
y = Ae
sin
k−
( n )2
2
)
x+B
(A, B は任意定数).
あるいは、
√
−n
2x
y = C1 e
cos
k−
( n )2
2
√
−n
2x
x + C2 e
sin
k−
( n )2
2
x (C1 , C2 は任意定数).
′′
′
√
(−2+ 3)x
√
(−2− 3)x
赤 (一つの山) y = −y − 4y , y = 5e
− 5e
青 (一つの谷) y ′′ = −y − 2y ′ , y = 5e−x − 5xe−x
√
′′
′
−x
緑 (減衰振動) y = −2y − 2y , y = 5e sin( 2x)
以下この節では、定理 11.1 の教科書の証明の別証を与えるが、試験範囲外である。
補題 11.2
関数成分の正則な正方行列 Y に対して
(Y −1 )′ = −Y −1 Y ′ Y −1
が成り立つ。
[証明] Y −1 Y = E の両辺を微分すると (Y −1 )′ Y + Y −1 Y ′ = 0。よって、
(Y −1 )′ Y = −Y −1 Y ′ 。よって、(Y −1 )′ = −Y −1 Y ′ Y −1 。
定理 11.3
微分方程式
y ′′ + py ′ + qy = 0
· · · (1)
(
を考える (p, q は関数であってもよい)。y1 , y2 を (1) の特殊解で、Y =
くとき、|Y | ̸= 0 であるものとする。このとき、(1) の一般解は
y = C1 y1 + C2 y2
と書ける。
y1
y1′
y2
y2′
)
とお
(C1 , C2 は任意定数)
)
(
( )
( ′) (
′
0
y
y
y
′
なので、
P
=
=
[証明] y =
とおくと、
y
=
−q
y′
y ′′
−qy − py ′
)
1
と
−p
′
おくと、y = P y 。同様に
(
y1′
y2′
)
(
)
= P y1 y2 すなわち、Y ′ = P Y である。よって、
(Y −1 y)′ = (Y −1 )′ y + Y −1 y ′
= −Y −1 Y ′ Y −1 y + Y −1 y ′
(補題 11.2 より)
= −Y −1 P Y Y −1 y + Y −1 y ′
= −Y −1 P y + Y −1 y ′
= Y −1 (−P y + y ′ )
= 0.
( )
( )
C1
C1
よって、Y −1 y = 定数 =
であるから、y = Y
両辺の第1成分を見れば、
C2
C2
y = C1 y1 + C2 y2 。
|Y | を y1 , y2 のロンスキアンと言い、W (y1 , y2 ) と書く。すなわち、
y1 y2 W (y1 , y2 ) = ′
′
y1 y2
行列式の性質より、次が成り立つ。
補題 11.4
(微分方程式とは無関係に) λ, y1 , y2 を任意の関数とするとき、
W (λy1 , λy2 ) = λ2 W (y1 , y2 ) が成り立つ。
λy1
λy2 λy1
λy2
[証明] W (λy1 , λy2 ) = ′
′ = ′
′
′
′ =
(λy1 ) (λy2 )
λ y1 + λy1 λ y2 + λy2
λy1 λy2 λy1 λy2 +
= 0 + λ2 y1 y2 = λ2 W (y1 , y2 ). λ′ y1 λ′ y2 λy1 ′ λy2 ′ y1 ′ y2 ′ [証明] (定理 11.1)
それぞれの場合に y1 , y2 が特殊解になっているのは、直接的な計算による。
任意の解が C1 y1 + C2 y2 と書けることの証明は、定理 11.3 より、そのロンスキアンが 0
で無いことを言えば良いが、補題 11.4 を使うと次のように簡単に計算できる。
(1)
W (eαx , eβx ) = e2αx · W (1, e(β−α)x ) = e2αx · (β − α)e(β−α)x = (β − α)e(α+β)x ̸= 0.
(2) W (eαx , xeαx ) = e2αx · W (1, x) = e2αx · 1 ̸= 0.
(3) W (eax cos bx, eax sin bx) = e2ax · W (cos bx, sin bx) = e2ax · 1 ̸= 0. 12 定数係数線形微分方程式 (非同次)
定理 12.1(線形微分方程式の構造定理)
の特殊解を z 、
y ′′ + py ′ + qy = r
· · · (1)
y ′′ + py ′ + qy = 0
· · · (2)
の基本解を y1 , y2 とするとき、(1) の一般解は
y = C1 y1 + C2 y2 + z
(C1 , C2 は任意定数)
である。すなわち
[非同次一般解] = [同次一般解] + [非同次特殊解]
である。
[証明] 非同次一般解を y 、同を特殊解を z とすると、
y’’
+ py’
+ qy
= r
-) z’’
+ pz’
+ qz
= r
-----------------------------------------(y-z)’’ + p(y-z)’ + q(y-z) = 0
すなわち u = y − z は、同次微分方程式、u′′ + pu′ + qu = 0 の一般解である。y1 , y2 を
この微分方程式の基本解とすれば、u = y − z = C1 y1 + C2 y2 と書けるので、
y = C1 y1 + C2 y2 + z 。
注 4 この定理は、p, q は関数であってもよい
注 5(1)
定理 11.1 の証明をたどると (1) の特殊解は、
∫
z = y1
であることが分かる。
y2
r
dx − y2
W
y1
y1
r
dx, W = ′
y1
W
∫
(
)
(2) 一般の n 階微分方程式に対しては、z = 1 0 · · · 0 Y
∫
y2 .
y2 ′ Y −1 r dx
例題 4.1
(1) y ′′ − 4y ′ + 4y = 0 (解) y = C1 e2x + C2 xe2x .
(2) y ′′ − 4y ′ + 4y = x (解) y = C1 e2x + C2 xe2x + 14 x + 14 .
この方程式の特殊解を求めるには,未定係数法 (y = Ax + B とおいて、方程式に代入
し A, B を求める) でやるか、気合で求めるか、後述の逆演算子法による。
例 6 (ばねの強制振動)
y ′′ = −ky + sin ωx
【解】y = c sin ωx とおけば、c =
√
y = C1 sin( kx + C2 ) +
1
。つまり解は、
2
k−ω
1
sin ωx 。
2
k−ω
1
ただし、k = ω のときは、y = cx cos ωx とおけば、c = −
。つまり解は、
2ω
1
y = C1 sin(ωx + C2 ) −
x cos ωx 。
2ω
2
′′
青 (2波の合成) y = −2y + sin x, y = 2 sin
√
2x + sin x.
1
1
赤 (共振・共鳴) y ′′ = −y + sin x, y = sin x − x cos x.
2
2
13 n 階同次線形定数係数微分方程式の解法
定理 13.1(n 階同次線形定数係数微分方程式の解法)
程式
n 階同次線形定数係数微分方
y (n) + an−1 y (n−1) + · · · + a1 y ′ + a0 y = 0
· · · (1)
の一般解は
y = c1 y1 + c2 y2 + · · · + cn yn
(c1 , c2 , · · · , cn は任意定数)
と yi の線形結合で表される。ここで基本解 y1 , y2 , · · · , yn は次で決まる関数である。
特性方程式
f (t) ≡ tn + an−1 tn−1 + · · · + a1 t + a0 = 0
の互いに異なる特性根ごとに、
(1) 実解 r が k 重解ならば、
erx , xerx , x2 erx , · · · , xk−1 erx
(2) 複素数解 a ± bi (b ̸= 0) が k 重解ならば、
eax cos bx,
eax sin bx,
xeax cos bx,
xeax sin bx,
x2 eax cos bx, · · · , xk−1 eax cos bx
x2 eax sin bx, · · · , xk−1 eax sin bx
[証明] yi が解であることについては、定理 15.5 で証明する。yi が互いに独立であるこ
と、全ての解が yi の線形結合で書けることについては、証明を略す。
14 定理 13.1 の適用例
(次ページへ)
y (n) + an−1 y (n−1) + · · · + a1 y ′ + a0 y = 0
⇓ 特性方程式を作る
tn + an−1 tn−1 + · · · + a1 t + a0 = 0
⇓ 因数分解や解の公式で解を求める
3
2 2
2
(t − 2)
(t
−
3)
(t
+
2t
+
26)
=0


2···
3重

t =
解:
t =
3···
2重


t = −1 ± 5i · · · 2 重
⇓ 前定理で基本解を対応させる


e2x , xe2x , x2 e2x




e3x , xe3x
{
基本解 :
−x
−x

e
cos
5x,
xe
cos 5x



 −x
e sin 5x, xe−x sin 5x
⇓ 線形結合で一般解を作る
∑
y=
(定数) · (基本解)
= c1 e2x + c2 xe2x + c3 x2 e2x + c4 e3x + c5 xe3x + c6 e−x cos 5x + c7 xe−x cos 5x
+c8 e−x sin 5x + c9 xe−x sin 5x
[例題 1]y ′′′ − 3y ′′ + 3y ′ − y = 0 を解け
(模範解答)
特性方程式は、
t3 − 3t2 + 3t − 1 = (t − 1)3 = 0
なので、特性根は t = 1, 1, 1。
よって、一般解は、
y = C1 ex + C2 xex + C3 x2 ex
(C1 , C2 , C3 は任意定数).
[例題 2]y (4) + 8y ′′′ + 42y ′′ + 104y ′ + 169y = 0 を解け
(模範解答) 特性方程式は、t4 + 8t3 + 42t2 + 104t + 169 = (t2 + 4t + 13)2 = 0 である。
よって、特性根は t = −2 ± 3i の重根。
よって、一般解は、
y = C1 e−2x cos 3x + C2 e−2x sin 3x + C3 xe−2x cos 3x + C4 xe−2x sin 3x
(C1 , C2 , C3 は任意定数).
[例題 3]y (7) + 5y (6) + 21y (5) + y (4) − 25y (3) − 237y ′′ + 403y ′ − 169y = 0 を解け
(模範解答) 特性方程式は、
t7 + 5t6 + 21t5 + t4 − 25t3 − 237t2 + 403t − 169 = (t − 1)3 (t2 + 4t + 13)2 = 0
よって、特性根は、t = 1 の 3 重根と t = −2 ± 3i の重根。
よって、一般解は、
y = C1 ex + C2 xex + C3 x2 ex
+C4 e−2x cos 3x + C5 e−2x sin 3x + C6 xe−2x cos 3x + C7 xe−2x sin 3x
(C1 , C2 , C3 , C4 , C5 , C6 , C7 は任意定数).
〔練習問題〕y ′′′ + 2y ′′ + 2y ′ + y = 0 を解け
15 演算子 D
微分するという操作を
d
D=
dx
と書き、あたかもモノのように扱って、微分演算子と呼ぶ。自然数 n に対しては、
n
d
Dn = n
dx
と定義する。一般に、多項式
f (t) = an tn + an−1 tn−1 + · · · + a1 t + a0
に対して、
f (D) = an Dn + an−1 Dn−1 + · · · + a1 D + a0
とおき、f (D) の関数 y の作用を
f (D)y = an Dn y + an−1 Dn−1 y + · · · + a1 Dy + a0 y
= an y (n) + an−1 y (n−1) + · · · + a1 y ′ + a0 y
と定義する。
定理 15.1
x の関数 y 、多項式 f (t), g(t) に対して以下が成り立つ。
(1) (f (D) + g(D))y = f (D)y + g(D)y.
(2) (f (D)g(D))y = f (D)(g(D)y).
[証明] f (D) = aD + b, g(D) = cD + d について証明する。(一般の場合も同様で
ある。)
(1) f (D) + g(D) = (aD + b) + (cD + d) = (a + c)D + (b + d) なので、
(f (D) + g(D))y = ((a + c)D + (b + d))y = (a + c)y ′ + (b + d)y.
f (D)y + g(D)y = (aD + b)y + (cD + d)y = (ay ′ + by) + (cy ′ + dy)
= (a + c)y ′ + (b + d)y.
(2) f (D)g(D) = (aD + b)(cD + d) = acD2 + (ad + bc)D + bd なので、
(f (D)g(D))y = (acD2 + (ad + bc)D + bd)y = acy ′′ + (ad + bd)y ′ + bdy.
f (D)(g(D)y) = (aD + b)((cD + d)y) = (aD + b)(cy ′ + dy)
= a(cy ′ + dy)′ + b(cy ′ + dy) = acy ′′ + (ad + cb)y ′ + bdy.
定理 15.2
f (D)1 = f (0).
[証明] f (D) = aD2 + bD + c について例示する。
f (D)1 = (aD2 + bD + c)1 = a1′′ + b1′ + c1 = 0 + 0 + c = f (0). 15.1 指数関数と D
定理 15.3(微分演算子の平行移動定理?) x の関数 y について、
(1) D(eαx y) = eαx (D + α)y
(2) Dn (eαx y) = eαx (D + α)n y
(3) f (D)(eαx y) = eαx f (D + α)y
[証明]
(1) D(eαx y) = (eαx )′ y + eαx y ′ = αeαx y + eαx y ′ = eαx (y ′ + αy) = eαx (D + α)y.
(2) n = 2 のとき、
D2 eαx y = DDeαx y = Deαx (D + α)y = eαx (D + α)(D + α)y = eαx (D + α)2 y. 一
般の n についても同様。
(3) f (D) = aD2 + bD + c とするとき、
f (D)(eαx y) = (aD2 + bD + c)(eαx y)
= aD2 (eαx y) + bD(eαx y) + c(eαx y)
= aeαx (D + α)2 y + beαx (D + α)y + ceαx y
= eαx (a(D + α)2 + b(D + α) + c)y
= eαx f (D + α)y
一般の n についても同様。
系 15.4 f (t) を任意の多項式とすると、
f (D)eαx = f (α)eαx
[証明] y = 1 とおいて、定理 15.2 と定理 15.3 より。
(定理 13.1 の yi が解であることについて)f (t) = 0 が、t = α という実解を k 重に持つ
なら、f (t) = g(t)(t − α)k という形に因数分解できる。また、f (t) = 0 が、t = a ± bi
という複素数解をを k 重に持つなら、f (t) = g(t)((t − a)2 + b2 )k という形に因数分解で
きるので、次の定理により、それぞれについて f (D)yi = 0 が言える。
定理 15.5
0 5 i < k であるとき、次が成り立つ。
(1) f (t) = (t − α)k について、f (D)(xi eαx ) = 0.
(2) f (t) = ((t − a)2 + b2 )k について、f (D)(xi eax cos bx) = f (D)(xi eax sin bx) = 0.
[証明] (1) f (D)(xi eαx ) = (D − α)k (xi eαx ) = eαx Dk (xi ) = 0
(2) (後述の D と三角関数の交換則を使っても良いが…特に系 15.8。)
((D − a)2 + b2 )k (eax xi cos bx) = eax (D2 + b2 )k (xi cos bx)
((D − a)2 + b2 )k (eax xi sin bx) = eax (D2 + b2 )k (xi sin bx)
一方、一般の関数 q について、
(D2 + b2 )(q · cos bx) = D2 q · cos bx − 2bDq · sin bx
(D2 + b2 )(q · sin bx) = D2 q · sin bx + 2bDq · cos bx
より、(D2 + b2 ) は、cos, sin の前の多項式の次数を少なくとも 1 つ下げるので、
(D2 + b2 )k (xi cos bx) = (D2 + b2 )k (xi sin bx) = 0 である。
系 15.6 以下が成り立つ。
(1) f (D2 ) cos(bx) = f (−b2 ) cos(bx).
(2) f (D2 ) sin(bx) = f (−b2 ) sin(bx).
[証明] 剰余定理により、f (t) を t − c で割った余りは、f (c) であって、商を q(t) とすれ
ば、次が成り立つ。
f (t) = q(t)(t − c) + f (c).
よって、t, c に D2 , −b2 を代入して cos bx に作用させると、
f (D2 ) cos bx = (q(D2 )(D2 + b2 ) + f (−b2 )) cos bx =
q(D2 )(D2 + b2 ) cos bx + f (−b2 ) cos bx = f (−b2 ) cos bx.
sin bx についても同様。
15.2 三角関数と D(試験範囲外)
行列係数の多項式 ϕ(t) = tn + An−1 tn−1 + · · · + A1 t + A0 で作られる微分演算子
ϕ(D) を、ベクトル x に作用させることを、
ϕ(D)x = Dn x + An−1 Dn−1 x + · · · + A1 Dx + A0 x で定義する。
(
)
(
0 −1
cos θ
K=
, R(θ) =
1 0
sin θ
定理 15.7
(1)
− sin θ
cos θ
)
を角度 θ の回転行列とする。
x の関数 y について、
( (
)) ((
cos bx
D
2
2
(D + b ) y
=
sin bx
2b
)
)(
)
−2b
cos bx
Dy
D
sin bx
(2)
( (
))
(
)
cos bx
cos bx
f (D) y
= (f (D + bK)y)
sin bx
sin bx
(3)
(
( ))
(
( ))
y
y
f (D) R(bx) 1
= R(bx) f (D + bK) 1
y2
y2
注 6 この (2) は、定理 15.3(3) の
f (D)(eαx y) = eαx f (D + α)y
に類似している。
[証明]
(1) 次の
( (2) を参照。
)
(
)
cos bx
cos bx
= bK
に注意して、
(2) D
sin bx
sin bx
( (
))
(
)
( (
))
cos bx
cos bx
cos bx
= (Dy)
+y D
=
D y
sin bx
sin bx
sin bx
(
)
(
)
(
)
cos bx
cos bx
cos bx
(Dy)
+ ybK
= ((D + bK) y)
を用いて、定理 15.3 と
sin bx
sin bx
sin bx
同様にする。
(3) DR(bx)
=(R(bx)bK
(
)) に注意して、
( )
( ( ))
y1
y1
y1
D R(bx)
= (DR(bx))
+ R(bx) D
=
y2
y2
y2
( )
( ( ))
(
( ))
y1
y1
y1
R(bx)bK
+ R(bx) D
= R(bx) (bK + D)
を用いて、定理
y2
y2
y2
15.3 と同様にする。
(別証)(2)
K
をすると、
( の両辺に
(
))
(
)
cos bx
cos bx
f (D) yK
= K(f (D + bK)y)K −1 · K
。一方、
sin bx
sin bx
(
)
a −b
A=
⇐⇒ KAK −1 = A より。
b a
(
))
(
)
(
)(
)
(
cos bx
cos bx
a −b
cos bx
= ((D + bK)eax )
= eax
.
例 7 D eax
sin bx
sin bx
b a
sin bx
系 15.8
(
(D2 + b2 )n xn
系 15.6 の別証
(
)
(
))
cos bx
cos bx
.
= (2b)n n!K n
sin bx
sin bx
)
)
(
(
cos bx
cos bx
)=
[証明] 定理 15.7 より、f (D2 )
= f (D2 )(1 ·
sin bx
sin bx
)
)
(
)
(
(
cos bx
cos bx
cos bx
. = f (−b2 )
= f ((0 + bK)2 )1 ·
f ((D + bK)2 )1 ·
sin bx
sin bx
sin bx
16 演算子法
この節では、一般の非同次線形微分方程式の解の形
[非同次一般解] = [同次一般解] + [非同次特殊解]
の [非同次特殊解] を求める方法の一つ
(逆) 演算子法
を学ぶ。
定義 1
f (D)y = q(x)
の解の一つ (特殊解) を
1
q(x)
y=
f (D)
1
と書く。
を f (D) の逆演算子と呼ぶ。
f (D)
【D を使うメリットについて】
f (D) = D2 + 3D + 2 に対し f (D)y = q(x) を解くとしよう。
(
) f (D) = (D + 1)(D + 2)
1
1
1
なので、y =
q(x) =
q(x) で解けるかもしれない。
(D + 1)(D + 2)
D+1 D+2
1
1
1
あるいは、部分分数分解
=
−
によって、
(D
+
1)(D
+
2)
D
+
1
D
+
2
(
)
1
1
1
1
y=
−
q(x) =
q(x) −
q(x) で解けるかもしれない。
D+1 D+2
D+1
D+2
1
以下、
q(x) を、f (D), q(x)) が簡単なものから順に研究する。
f (D)
∫
1
q = qdx
定理 16.1
D
定理 16.2
f (0) ̸= 0 ならば、
1
1
1=
。
f (D)
f (0)
[証明] 定理 15.2 より f (D)1 = f (0)。両辺を f (0) で割って、
1
1
f (D)1 = f (D)
= 1。よって、命題が得られる。
f (0)
f (0)
〔例題〕y ′′ − 3y ′ + 2y = 5 を解け。
【解】与えられた非同次微分方程式に同伴する同次方程式 y ′′ − 3y ′ + 2y = 0 の固有多項
式は、f (t) = t2 − 3t + 2 = (t − 1)(t − 2) なので、固有値は t = 1, 2、また、
1
1
1
5
5=5
1=5
= よって、一般解は、
f (D)
f (D)
f (0)
2
5
y = C1 ex + C2 e2x +
(C1 , C2 は任意定数) 。
2′
′′′
′′
〔例題〕y − 3y + 2y = 5 を解け。
【解】与えられた非同次微分方程式に同伴する同次方程式 y ′′′ − 3y ′′ + 2y ′ = 0 の固有多
項式は、f (t) = t3 − 3t2 + 2t = t(t − 1)(t − 2) なので、固有値は t = 0, 1, 2、また、
1
1
1 1
5
5=5
1
=
5
=
x よって、一般解は、
2
f (D)
D(D − 3D + 2)
D2
2
5
y = C0 + C1 ex + C2 e2x + x (C0 , C1 , C2 は任意定数) 。
2
16.1 指数関数と逆演算子
定理 16.3
(1)
(2)
多項式 f (t) について、以下が成り立つ。
1 αx
1 αx
e =
e , (f (α) ̸= 0)
f (D)
f (α)
1
1
αx
αx
(e · q) = e ·
q
f (D)
f (D + α)
[証明]
(1) 系 15.4 f (D)eαx = f (α)eαx の両辺を f (D), f (α) で割ることによって、得られる。
(2) 定理 15.3(3) f (D)(eαx y) = eαx f (D + α)y の f (D + α)y を q とおけば、
1
1
αx
y=
q なので、f (D)(e
q) = eαx q 。この両辺を f (D) で割る。
f (D + α)
f (D + α)
〔例題〕y ′′′ − 3y ′′ + 3y ′ − y = e3x を解け。
【解】特性多項式は、f (t) = t3 − 3t2 + 3t − 1 = (t − 1)3 なので、固有値は 1 の 3 重根。
よって、同伴する同次方程式の解は y = C1 ex + C2 xex + C3 x2 ex (C1 , C2 , C3 は任
意定数) 。
1
1
1 3x
3x
3x
e
=
e
=
e 。よって、求める一般解
3
3
(D − 1)
(3 − 1)
8
1 3x
x
x
2 x
は、y = C1 e + C2 xe + C3 x e + e
(C1 , C2 , C3 は任意定数) 。
8
また、非同次特殊解は、
系 16.4
1
αx
q
=
e
(D − α)m
∫ ∫
∫
···
e−αx q(dx)m
1
1
1
αx −αx
αx
−αx
[証明]
q
=
e
e
q
=
e
e
q=
m
m
(D − α)m
(D
−
α)
(D
+
α
−
α)
∫ ∫
∫
1
eαx m e−αx q = eαx
· · · e−αx q(dx)m . D
定理 16.5
f (α) ̸= 0 であれば、
1
αx
[証明]
e
(D − α)m
で割る。
m
1
x
αx
αx
e
=
e
.
f (D)(D − α)m
f (α)m!
∫ ∫
∫
m
x
である。更に、両辺を f (D)
= eαx
· · · 1(dx)m = eαx
m!
【例題 5.1】y ′′ − 4y ′ + 3y = ex
特性多項式は、f (t) = t2 − 4t + 3 = (t − 1)(t − 3) なので、同伴する同次方程式
y ′′ − 4y ′ + 3y = 0 の一般解は、y = C1 ex + C2 e3x (C1 , C2 は任意定数)。非同次特殊
解は…
(解法 1) 前定理を使う方法:
1
1 x
e =
ex
f (D)
(D − 1)(D − 3)
(
)
1
1
ex
=
D−1 D−3
(
)
1
1 x
=
e
D−1 1−3
1 1
ex
=−
2D−1
1
= − xex (前定理より)
2
x
3x
一般解は、y = C1 e + C2 e
1 x
− xe 。
2
(解法 2) 部分分数分解を使う方法:
(
)
1
1
1
1
=
−
を使って
(D − 1)(D − 3)
2 D−3 D−1
(
)
1 x
1
1
1
e =
−
ex
f (D)
2 D−3 D−1
(
)
1
1
1
=
ex −
ex
2 D−3
D−1
)
(
1
1
=
− ex − xex
2
2
(
)
1
1
一般解は、y = C1 ex + C2 e3x +
− ex − xex 。
2
2
(解法 3) 未定係数法による方法:
y = axex と置くと、
(D−1)(D−3)y = (D−1)(D−3)(axex ) = aex D(D−2)x = aex D(1−2x) = aex ·(−2)
1
より、a = − 。
2
(トピック)部分分数分解について
1
の部分分数分解。
(D − 1)(D − 3)
a
b
1
=
+
(D − 1)(D − 3)
D−1 D−3
a(D − 3) + b(D − 1)
=
(D − 1)(D − 3)
(a + b)D + (−3a − b)
=
(D − 1)(D − 3)
よって、
{
a + b = 0,
−3a − b = 1.
1
1
∴a=− , b= .
2
2
16.2 三角関数と逆演算子
定理 16.6
(1)
(2)
f (−b2 ) ̸= 0 ならば、以下が成り立つ。
1
cos(bx)
cos(bx) =
.
f (D2 )
f (−b2 )
1
sin(bx)
sin(bx)
=
.
2
2
f (D )
f (−b )
[証明] 系 15.6 より。
1
1
例8
cos 2x =
cos 2x =
D4 + D2 + 1
(D2 )2 + D2 + 1
1
1
1
cos
2x
=
cos
2x
=
cos 2x.
2
2
2
(−2 ) + (−2 ) + 1
16 − 4 + 1
13
注7
1
1
1
1
cos 2x =
cos 2x =
cos 2x =
cos 2x.
D4 + D2 + 1
(−2)4 + (−2)2 + 1
16 + 4 + 1
21
1
1
1
とか、 4
cos 2x =
cos 2x =
cos 2x =
D + D2 + 1
(−24 ) + (−22 ) + 1
−16 − 4 + 1
1
− cos 2x. とかしがちだが、間違い。
19
【テクニック (分母の偶数次化)】f (x)f (−x) はある多項式 F で、F (x2 ) と書ける。そ
こで、
1
f (−D)
f (−D)
=
=
f (D)
f (D)f (−D)
F (D2 )
と計算する。
例9
1
D−1
D−1
1
cos 2x = 2
cos 2x =
cos
2x
=
−
(D − 1) cos 2x =
2
D+1
D −1
−2 − 1
5
1
− (−2 sin 2x − cos 2x).
5
√
√
√
1
3+1
3+1
3+1
√
注 8 これって、 √
= √
= √
=
とか、
2
2
2
3−1
( 3 − 1)( 3 + 1)
( 3) − 1
123 ÷ 5 = (123 × 2) ÷ 10 = 24.6 とかするようなもの。
【例題 5.2】(教科書と違う方法で) y ′′ − 4y ′ + 3y = ex sin 2x
(解)t2 − 4t + 3 = (t − 1)(t − 3) よって、同次一般解は C1 ex + C2 e3x .
特殊解は
1
1
1
x
x
e sin 2x =
e
sin 2x
(D − 1)(D − 3)
D−1 D−2
1
x 1
=e
sin 2x
DD−2
x 1 D+2
=e
sin 2x
D D2 − 4
1
1
= ex (D + 2)
sin 2x
D
−8
1 1
= − ex (2 cos 2x + 2 sin 2x)
8 D
1 x
= − e (sin 2x − cos 2x).
8
1
8
注 9 教科書例題 5.2 の解で、− ex (cos 2x − sin 2x) とあるのは、
1
− ex (sin 2x − cos 2x) の間違い。
8
定理 16.6 では、 f (−b2 ) ̸= 0 である場合を扱っているが、そうでない場合の一般は後述
の小節「補遺」で扱っている。そのうちで、簡単な場合をあげる。
定理 16.7
1
cos bx =
2
2
D +b
1
sin bx =
2
2
D +b
x
sin bx,
2b
x
cos bx.
2b
[証明] 等式の右辺に D2 + b2 を施してみればよい。
16.3 多項式の逆演算子法
定理 16.8
q(x) = k 次多項式、f (t) = 多項式、f (0) ̸= 0 とするとき、
1
= b0 + b1 t + · · · + bk tk + · · ·
f (t)
(マクローリン展開) とすれば、次が成り立つ。
1
q(x) = (b0 + b1 D + · · · + bk Dk )q(x).
f (D)
[証明] 1 を f (t) で、k 次まで「整除」した商は b0 + b1 t + · · · + bk tk になる。またこの
時の余りを r(t) と置くと、r(t) は、k + 1 次以上の多項式であり、
1 = f (t)(b0 + b1 t + · · · + bk tk ) + r(t)
が成り立つ。よって、
q(x) = f (D)(b0 + b1 D + · · · + bk Dk )q(x) + r(D)q(x)
= f (D)(b0 + b1 D + · · · + bk Dk )q(x).
よって、
1
q(x) = (b0 + b1 D + · · · + bk Dk )q(x).
f (D)
〔例〕
【解】
1
2
x
を求めよ。
2
D −D−1
-1 + t - 2t^2
-------------------------1 - t + t^2 ) 1
1 + t - t^2
-----------t + t^2
-t - t^2 + t^3
-------------2t^2 - t^3
2t^2 + 2t^3 - 2t^4
------------------3t^3 + 2t^4
1
より、 2
x2 = (−1 + D − 2D2 )x2 = −x2 + 2x − 4。
D −D−1
〔ユークリッドの互除法を使う別解〕D2 − D − 1 と D3 について、拡張されたユーク
リッドの互除法により、
(−2D2 + D − 1)(D2 − D − 1) + (2D − 3)D3 = 1.
よってこれを x2 に左から作用させると、
(−2D2 + D − 1)(D2 − D − 1)x2 + (2D − 3)D3 x2 = x2 .
よって、
すなわち、
(D2 − D − 1)(−2D2 + D − 1)x2 = x2 .
1
2
2
2
2
x
=
(−2D
+
D
−
1)x
=
−4
+
2x
−
x
。
2
D −D−1
例題 5.1 y ′′ − 4y ′ + 3y = ex
(解法 4) 特性多項式 f (t) = t2 − 4t + 3 = (t − 1)(t − 3).
1 x
1
e =
ex
f (D)
(D − 3)(D − 1)
(
)
1
1
=
ex
D−3 D−1
1
(xex )
=
D−3
1
= ex
x
D−2
1
x 1
x
=e
−2 1 − D/2
D
x 1
=e
(1 + )x
−2
2
1
x 1
=e
(x + )
−2
2
1
x x
= −e ( + ).
2 4
x 1
一般解は、y = C1 ex + C2 e3x − ex ( + ) .
2 4
16.4 面白い応用
(1)
∫
1 n x
(x e )
D
1
x
=e
xn
D+1
= ex (1 − D + D2 − D3 + · · · )xn
xn ex dx =
= ex (xn − nxn−1 + n(n − 1)xn−2 − n(n − 1)(n − 2)xn−3 + · · · ).
∫
f (x)ex dx = ex (1 − D + D2 − D3 + · · · )f (x)
= ex (f (x) − f ′ (x) + f ′′ (x) − f (3) (x) + · · · ).
(2)
∫
注 10
(
(
)
)
1 ax cos bx
ax cos bx
e
dx = (e
)
sin bx
sin bx
D
(
)
1
cos bx
= eax
D + a sin bx
(
)
cos bx
ax D − a
=e
D2 − a2 sin bx
(
)
1
cos bx
= eax 2
(D
−
a)
sin bx
−b − a2
(
)
1
a cos bx + b sin bx
ax
= 2
e
.
−b cos bx + a sin bx
a + b2
一般に (定理 16.9 より)
∫
D
b
f
(x)
·
cos
bx
+
f (x) · sin bx.
2
2
2
2
D +b
D +b
∫
−b
D
f (x) sin bx dx = 2
f (x) · cos bx + 2
f (x) · sin bx.
D + b2
D + b2
f (x) cos bx dx =
16.5 練習問題
教科書 123 ページの問 1 は難しすぎるので試験範囲外である。
注 11
教科書 123 ページの問 1(4) の解答 (187 ページ) で、
(x +4x3 −6x2 ) cos x+(x4 −4x3 −6x2 ) sin x
−
48
2
4
3
(x +4x −9x ) cos x+(x4 −4x3 −9x2 ) sin x
−
48
4
とあるのは、
の間違い。
まあ、いずれにしても試験範囲外であるが、後に述べる系 16.17(6) より、
1
2
(x
2
2
(D +1)
1
2
(D 2 +1)2 (x
cos x−4x3 sin x−9x2 cos x
48
4
3
x sin x+4x cos x−9x2 sin x
−
48
cos x) = − x
sin x) =
4
その代わり…
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
y ′′ − 5y ′ + 6y
y ′′ − 5y ′ + 6y
y ′′ − 5y ′ + 6y
y ′′ − 5y ′ + 6y
y ′′ − 6y ′ + 5y
= ex .
= e2x .
= cos x.
= x.
= x2 .
,
である。
16.6 補遺
(
)
1
cos bx
この小節では一般の、
(q
) を扱う。以下、試験範囲外である。
sin bx
f (D)
(
)
0 −1
K=
とする。
1 0
定理 16.9
(
)
(
)(
)
1
1
cos bx
cos bx
(q
)=
q
.
sin bx
sin bx
f (D)
f (D + bK)
[証明] 定理 15.7(2) より。
注 12
定理 16.3(2) の
1
1
(eαx · q) = eαx ·
q
f (D)
f (D + α)
と類似している。
以下、この定理の応用例である。
)
(
a −b
) ̸= 0 のとき、
系 16.10 f (
b a
1
(eax
f (D)
(
)
cos bx
) = eax
sin bx
1
(
)
a −b
f(
)
b a
(
)
cos bx
sin bx
[証明]
(
)(
(
)
(
)
)
1
1
1
cos bx
cos bx
cos bx
(eax
eax
)=
= eax
sin bx
sin bx
f (D)
f (D + bK)
f (aE + bK) sin bx
f (D) = D の場合ついては、前述の「面白い応用例 (2)」も参照。
a ̸= ±b、q を多項式とするとき、
(
(
)
)
1
1
cos bx
cos bx
(q
q
·
)
=
sin bx
sin bx
D2 + a2
(D + bK)2 + a2
(
)
1
cos bx
= 2
q·
sin bx
D + 2bKD + (a2 − b2 )
(
)
1
1
cos bx
= 2
q
·
sin bx
a − b2 1 + a22b
−b2 KD + · · ·
(
)
1
2b
cos bx
= 2
(1
−
KD
+
·
·
·
)q
·
sin bx
a − b2
a2 − b2
定理 16.11
この定理の q = 1 の場合は、もっと一般の形で定理 16.6 で得られている。
系 16.12
a ̸= ±b とするとき、
(
)
(
)
1
2b
1
cos bx
cos bx
(x
)
=
(x
−
K)
sin bx
sin bx
D2 + a2
a2 − b2
a2 − b2
 1

2b
x cos bx + 2
sin bx
2
2
 a2 − b2

(a − b )
= 1
.
2b
x sin bx − 2
cos bx
2
2
2
2
a −b
(a − b )
定理 16.11 とは少し違うアプローチをしてみる。
定理 16.13 a ̸= ±b、q を d 次の多項式とする。(t + b2 )d+1 を t + a2 で割った商を Q(t)
とすると、
(
( (
)
))
1
1
cos bx
cos bx
2
(q
Q(D
)
q
)
=
−
sin bx
sin bx
D2 + a2
(b2 − a2 )d+1
[証明] (D2 + b2 )d+1 を D2 + a2 で割ると商が Q(D2 ) 余りが (−a2 + b2 )d+1 となるので、
(D2 + b2 )d+1 = Q(D2 )(D2 + a2 ) + (−a2 + b2 )d+1
(
)
cos bx
である。この右に q
をかけると、定理 15.5 より、
sin bx
(
)
cos bx
(D2 + b2 )d+1 q
= 0 であるので、
sin bx
)
)
(
(
cos bx
cos bx
) + (−a2 + b2 )d+1 q
.
0 = Q(D2 )(D2 + a2 )(q
sin bx
sin bx
これを整理して定理を得る。
以下、a = ±b のケースについて扱う。
定理 16.14
b ̸= 0 とするとき、
(
)
(
)
n
1
x
cos bx
−n cos bx
=
K
.
2
2
n
n
sin
bx
sin
bx
(D + b )
n!(2b)
16.9 を使うと、
[証明] 系 15.8
(より。また、定理
)
(
)
1
1
cos bx
cos bx
=
(1
·
)=
2
2
n
2
2
n
sin bx
sin bx
(D + b )
(D + b )
(
)
(
)
1
1
cos bx
cos bx
1
·
1
·
=
=
2
2
n
2
n
sin bx
sin bx
((D + bK) + b )
(D + 2bKD)
)
)
)
(
(
(
n
1
x
1
cos bx
cos bx
−n cos bx
.
1
·
=
1
·
=
K
n
n
n
n
n
sin bx
sin bx
sin bx
D (D + 2bK)
D (2bK)
n!(2b)
b ̸= 0、q を多項式とするとき、
(
(
)
)
1
1
cos bx
cos bx
(q
)
=
q
·
sin bx
sin bx
D2 + b2
(D + bK)2 + b2
(
)
1
cos bx
=
q·
sin bx
D(D + 2bK)
(
)
D − 2bK
cos bx
=
q
·
sin bx
D(D2 + 4b2 )
(
) (
( )2 ( )4
)
D − 2bK
D
D
cos bx
=
1
−
q
·
+
−
·
·
·
sin bx
4b2 D
2b
2b
定理 16.15
系 16.16
(1)
(2)
b ̸= 0、q を多項式とするとき、
1
(q cos bx) =
2
2
D +
b
((
)
(
)
)
( )2 ( )4
( )3
1
D
D
2b D
D
1−
+
− · · · q · cos bx +
−
+
− · · · q · sin bx
4b2
2b
2b
D
2b
2b
1
(q sin bx) =
2
D2 +
b
( (
)
(
)
( )3
( )2 ( )4
1
2b D
D
D
D
−
−
+
−
·
·
·
q
·
cos
bx
+
1
−
+
− · · · q · sin bx
2
4b
D
2b
2b
2b
2b
次の定理の (1) は、以前に、定理 16.7 として扱った。
b ̸= 0 とする。
(
)
(
)
1
1
cos bx
x sin bx
=
.
D2 + b2 sin bx
2b −x cos bx
(
)
( 2
)
1
1
cos bx
bx sin bx + x cos bx
(x
)= 2
.
sin bx
D2 + b2
4b −bx2 cos bx + x sin bx
(
)
( 2 3
)
2
1
1
2b x sin bx + 3bx cos bx − 3x sin bx
2 cos bx
)=
.
(x
sin bx
D2 + b2
12b3 −2b2 x3 cos bx + 3bx2 sin bx + 3x cos bx
(
)
( 2
)
1
1 x cos bx
cos bx
=
−
.
2
2
2
2
2
sin bx
x sin bx
(D + b )
8b
(
)
( 3
)
2
1
1
cos bx
bx cos bx − 3x sin bx
(x
)
=
−
.
3
2
2
2
2
3
sin bx
(D + b )
24b bx sin bx + 3x cos bx
(
)
( 2 4
)
3
2
1
1
b x cos bx − 4bx sin bx − 9x cos bx
2 cos bx
(x
)
=
−
.
2 4
3
2
2
2
2
4
sin bx
b x sin bx + 4bx cos bx − 9x sin bx
(D + b )
48b
系 16.17
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
(6)
16.7 逆演算子法まとめ
試験範囲外の続き、
q = q(x) を d 次多項式とするとき、
(
)
1
ax cos bx
qe
sin bx
(D2 + c2 )n
を計算する。
(1) (a, b2 ) = (0, c2 ) の時は、系 16.16 で扱った。
(2) (a, b2 ) ̸= (0, c2 ) の時は、D2 + c2 と (D − a)2 + b2 は素なので、(D2 + c2 )n と
((D − a)2 + b2 )d+1 も素である。よって、(D2 + c2 )n と ((D − a)2 + b2 )d+1 に対する
(拡張された) ユークリッドの互除法により、ある多項式 s(D), t(D) で
s(D)(D2 + c2 )n + t(D)((D − a)2 + b2 )d+1 = 1
)
(
cos bx
をかけると、定理 15.5 より、
とできる、この右に qeax
sin bx
)
(
cos
bx
= 0 であるので、
((D − a)2 + b2 )d+1 qeax
sin bx
(
)
(
)
2
2 n ax cos bx
ax cos bx
s(D)(D + c ) qe
= qe
となる。よって、
sin bx
sin bx
1
ax
qe
(D2 + c2 )n
となる。
(
)
(
)
cos bx
ax cos bx
= s(D)qe
.
sin bx
sin bx
17
偏微分方程式
18 用語・基本事項
常微分方程式の解には、任意定数が現れるが、同様に偏微分方程式には、任意関数が現
れる。
また、階数と同じ数の任意関数(である種の条件 (後述) を満たすもの)を含む解を、一
般解と言う。解のうちの一つを特殊解と言い、一般解に含まれない解を特異解と言う。
関数 z = z(x) に関して、次の定理が最も基本的なものであった。
定理 18.1
dz
= 0 =⇒ z = C
dx
(C は任意定数).
同様に、2 変数関数 z = z(x, y) に対して、
定理 18.2
∂z
= 0 =⇒ z = f (y)
∂x
(f は任意関数).
という定理が一般解を与える最も基本的なものである。
この定理を基礎として、以下の定理が証明できる。
定理 18.3
2 変数関数 z = z(x, y) に対して、以下が成り立つ。
(1)
∂z
= 0 =⇒ z = f (y)
∂x
(2)
∂z
= q(x, y) =⇒ z =
∂x
(f は任意関数).
∫
q(x, y)dx + f (y) (f は任意関数).
(3)
∂z
= az =⇒ z = f (y)eax
∂x
(f は任意関数).
(4)
∂2z
= 0 =⇒ z = f (x) + g(y)
∂x∂y
(f, g は任意関数).
(5)
2
∂ z
= q(x, y) =⇒ z =
∂x∂y
∫ ∫
q(x, y)dxdy + f (x) + g(y) (f, g は任意関数).
さて、2 変数関数 z = z(x, y) に対して、
∂2z
=0
∂x∂y
の一般解は、
z = f (x) + g(y)
(f, g は任意関数).
であったのだが、3 変数関数 w = w(x, y, z) に対して、
∂3w
=0
∂x∂y∂z
の一般解は、
w = f (x) + g(y) + h(z) (f, g, h は任意関数).
であろうか。
そうではない。3 変数関数に関する偏微分方程式の一般解を与える定理で基礎になるの
は、次の定理である。
定理 18.4
∂3w
= 0 =⇒ w = f (y, z) + g(z, x) + h(x, y)
∂x∂y∂z
次のような定理も成り立つ。
(f, g, h は任意関数).
定理 18.5
∂3w
= 0 =⇒ z = f (y, z) + g(y, z)x + h(x, z) (f, g, h は任意定数).
2
∂ x∂y
一般に次が言える。
定理 18.6
持つ。
m 変数 n 階の微分方程式は n 個の m − 1 変数関数の任意関数だけの不定性を
この n 個の任意関数を含む解を一般解と言うのである。
19
定数係数 1 階偏微分方程式
定理 19.1
分方程式
a, b, c を定数、a ̸= 0 とするとき、z = z(x, y) に関する定数係数 1 階偏微
a
の一般解は、
である。

x = as
[証明]
y = bs − 1 t
a
∂z
∂z
+b
+ cz = 0
∂x
∂y
z = f (bx − ay)e− a x
c
(f は任意関数)

s = 1 x
a
すなわち
t = bx − ay
とおいて、x, y の偏微分方程式を
s, t の偏微分方程式に変換する。2 変数関数の合成関数の微分法より、
∂
∂x ∂
∂y ∂
∂
∂
=
+
=a
+b
∂s
∂s ∂x ∂s ∂y
∂x
∂y
なので、与えられた微分方程式は、次のように書ける。
∂z
+ cz = 0
∂s
これの解は、z = f (t)e−cs 。
〔例題〕6.1(教科書 p.126)
∂z
∂z
−2
=x
∂x
∂y
x2
【解】z = f (2x + y) +
.
2
○定理 6.3、例題 6.2 は略。
20 波動方程式
定理 20.1(波動方程式のダランベールの公式)
c を正の定数とするとき、波動方程式
2
∂2z
2∂ z
2 −c
2 =0
∂x
∂y
の解は、
z = f (cx + y) + g(cx − y),
(f, g は任意関数)
である。これをダランベールの公式という。
[証明]
{
s = cx + y
({
x=
1
1
s
+
2c
2c t
1
1
s
−
2
2t
)
とおいて、x, y の偏微分方程式を s, t の
y=
t = cx − y
それに変換する。2 変数関数の合成関数の微分法より、
∂
∂s ∂
∂t ∂
∂
∂
=
+
=c
+c
∂x
∂x ∂s ∂x ∂t
∂s
∂t
∂s ∂
∂t ∂
∂
∂
∂
=
+
=
−
∂y
∂y ∂s ∂y ∂t
∂s ∂t
であるから、
∂
∂
∂
+c
= 2c
∂x
∂y
∂s
∂
∂
∂
−c
= 2c
∂x
∂y
∂t
よって、
2
∂
∂2
2
−
c
2
2 =
∂x
∂y
(
∂
∂
−c
∂x
∂y
)(
∂
∂
+c
∂x
∂y
)
よって、与えられた微分方程式は、次のように変形される。
∂2
z=0
4c
∂s∂t
2
これの解は、z = f (t) + g(s)。
2
∂
= 4c2
∂s∂t
21 発展 (試験範囲外)
ここでは、
∂2z
∂2z
∂2z
2 − 5 ∂x∂y + 6
2 = 0.
∂x
∂y
の解法を考える。
2 変数関数の合成関数の微分法:
∂
∂s ∂
∂t ∂
=
+
,
∂x
∂x ∂s ∂x ∂t
∂
∂s ∂
∂t ∂
=
+
.
∂y
∂y ∂s ∂y ∂t
をベクトルと行列を使って書くと、
(
∂ ∂
∂x ∂y
)
(
=
∂ ∂
∂s ∂t
)
 ∂s
 ∂x
 ∂t
∂x
特に次が言える。
∂s 
∂y  .
∂t 
∂y
定理 21.1
ならば、
である。
(
) (
a b
α
ここで、
=
c d
β
(
∂
∂
∂
∂
−β
−α
∂x
∂y ∂x
∂y
よって、次が成り立つ。
( ) (
)( )
s
a b
x
=
t
c d
y
(
∂ ∂
∂x ∂y
)
(
=
∂ ∂
∂s ∂t
)(
a b
c d
)
)
1
とおくと、
1
)
(
)(
)
(
)(
)(
)
∂
∂
1
1
α 1
1
1
∂ ∂
=
=
−β −α
β 1
−β −α
∂x ∂y
∂s ∂t
)(
)
(
)
(
α−β
0
∂
∂
∂ ∂
=
= (α − β)
· · · (∗)
−
0
β
−
α
∂s ∂t
∂s
∂t
定理 21.2
s = αx + y, t = βx + y とおくと、
2
∂2
∂2
∂2
2 ∂
2 − (α + β) ∂x∂y + αβ
2 = −(α − β) ∂s∂t .
∂x
∂y
特に、t2 + at + b = 0 が異なる 2 実解 α, β を持つなら、偏微分方程式:
(
∂2
∂2
∂2
2 + a ∂x∂y + b
∂x
∂y 2
)
z = 0.
は、本質的に波動方程式であり、ダランベールの公式の解:
z = f (s) + g(t) (f, g は任意関数).
を持つ。
2
2
2
∂
∂
∂
[証明]
2 − (α + β) ∂x∂y + αβ
2 =
∂x
∂y
た結果を代入する。
(
∂
∂
−α
∂s
∂t
)(
∂
∂
−β
∂s
∂t
)
に (∗) で得られ
22 ダランベールの公式の鑑賞
【復習】
定理 20.1 で、z, x, y を y, t, x に置き換えて、y = u(x, t) を、xy 平面で、時間 t で変
化するグラフと考え、もう一度書くと · · ·
定理 22.1(波動方程式)
c を正の定数とするとき、y = u(x, t) に関する波動方程式
2
∂2u
2∂ u
2 =c
∂t
∂x2
の解は、
u(x, y) = f (x + ct) + g(x − ct)
(f, g は任意関数).
である。
ここに現れた、y = g(x − ct), y = f (x + ct) は、それぞれ、進行波、後退波と呼ばれる。
その理由は、y = g(x) · · · 左 に対して,y = g(x − 0.4) · · · 中、y = g(x − 0.8) · · · 右 を
書くと次の様になる。
すなわち、y = g(x − ct), c = 0.4 は、t = 0, 1, 2 · · · で右に速度 c で進行している。
(y = f (x + ct) は左右が逆になる。)
【波の衝突】
(問) 上下が真逆な 2 つの進行波と後退波がぴったり重なったとき、何が起こっている?
(問) 次の式の意味は? (定常波)
sin(x + ct) + sin(x − ct) = 2 sin x cos ct.
23 波動方程式の導出
○弦の振動の問題
(仮定)
(1) 張力一定
(2) 変位は上下動のみ
(3) 変位は微小
(定数)
• T : 張力
• ρ: 弦の線密度
(方程式を立てる)
y = u(x, t) を弦の上下の変位、α(x) (= α(x, t)) を x 座標が x のときの、弦の接線と x
軸のなす角度とする。
質量 × 加速度 = 力
∂2u
ρ∆x × 2 = T sin α(x + ∆x) − T sin α(x)
∂t
∂2u
T sin α(x + ∆x) − sin α(x)
∴
=
ρ
∆x
∂t2
∆x → 0 とすることにより、
∂2u
T ∂
=
sin α(x)
2
ρ ∂x
∂t
T
∂α
= cos α(x)
ρ
∂x
一方、
· · · ☆.
∂u
= 接線の傾き = tan α(x)
∂x
1
∂α
∂2u
∂
∴
=
tan
α(x)
=
∂x
cos2 α(x) ∂x
∂x2
∂α
∂2u
2
= cos α(x) 2
∴
∂x
∂x
これを☆に代入すると
∂2u
T
∂2u
3
2 = ρ cos α(x)
∂t
∂x2
仮定より、α(x) + 0 より cos α(x) + 1。以上より
(結論) 張力 T 、線密度 ρ の弦の振動の方程式は、
∂2u
T ∂2u
2 = ρ
∂t
∂x2
で与えられる。この解は
√
u = f (x +
である。特に
√
T
t) + g(x −
ρ
T
t) (f, g は任意関数)
ρ
√
(1) これは、速度が ± Tρ の進行波の合成である。
(2) 材質によらない。
ことは注目すべきである。
24 ストークスの公式
「初期条件」

u(x, 0)
= ϕ(x)
∂u
 (x, 0) = ψ(x)
∂t
という条件を満たす解を求めることを、初期値問題という。
「境界条件」
とか、
{
u(0, t) = 0
u(L, t) = 0
{
u(0, t) = 0
u(L, t) = ϕ(t)
とかいう条件を満たす解を求めることを、境界値問題という。
定理 24.1(ストークスの公式)
波動方程式
2
∂2u
2∂ u
2 =c
∂t
∂x2
の初期値問題
の解は、

u(x, 0)
= ϕ(x)
∂u
 (x, 0) = ψ(x)
∂t
(
)
∫ x+ct
1
1
u(x, t) =
ϕ(x + ct) + ϕ(x − ct) +
ψ(s)ds
2
c x−ct
である。
[証明] 次の例題の方法をそのままなぞる。
〔例題〕次の偏微分方程式の初期値問題を解け。
∂2u
∂2u
2 =
∂t
∂x2
u(x, 0) = sin x
∂u
(x, 0) = − sin x
∂t
(1)
(2)
(3)
【解】波動方程式 (1) の解は、ダランベールの公式より、
u(x, t) = f (x + t) + g(x − t)
(4)
で、t = 0 と置くことにより、(2) から、
u(x, 0) = sin x = f (x) + g(x)
(4) の両辺を t で偏微分して、
∂u
(x, t) = f ′ (x + t) − g ′ (x − t)
∂t
t = 0 を代入して、(3) から、
∂u
(x, 0) = − sin x = f ′ (x) − g ′ (x)
∂t
(5)
両辺 x で積分して
C + cos x = f (x) − g(x)
(6)
(5) と (6) を連立して f, g について解くと、
sin x + cos x + C
sin x − cos x − C
f (x) =
, g(x) =
.
2
2
すなわち、
sin(x + t) + cos(x + t) + C
sin(x − t) − cos(x − t) − C
f (x + t) =
, g(x − t) =
.
2
2
これらを (4) に代入すると、
u(x, t) =
sin(x + t) + cos(x + t) + sin(x − t) − cos(x − t)
.
2
整理すると、
u(x, t) =
√
(
π)
2 sin x sin t +
.
4
25
フーリエ解析
26 フーリエ解析とは?
スペクトル分析
27 準備
27.1 偶関数、奇関数
定義 2 f (−x) = f (x) となる関数を偶関数という。f (−x) = −f (x) となる関数を奇
関数という。
例 10
1
ex + e−x f (x) + f (−x)
4
(偶関数の例) 1, x , 2 , x , cos x, cosh x =
,
.
x
2
2
x
−x
1
e −e
f (x) − f (−x)
3
5
(奇関数の例) x, x , 3 , x , sin x, sinh x =
,
.
x
2
2
注 13 偶関数は、y 軸対象、奇関数は、原点対象なグラフをもつ。
2
命題 27.1
(1) 偶関数×偶関数=偶関数.
(2) 偶関数×奇関数=奇関数.
(3) 奇関数×奇関数=偶関数.
[証明] f0 , g0 を偶関数、f1 , g1 を奇関数とすと、(1) f0 (−x)g0 (−x) = f0 (x)g0 (x).
(2) f0 (−x)f1 (−x) = f0 (x)(−f1 (x)) = −f0 (x)f1 (x) (3)
f1 (−x)g1 (−x) = (−f1 (x))(−g1 (x)) = f1 (x)g1 (x). 命題 27.2
∫
L
(1)
∫
偶関数 dx = 2
∫−L
L
(2)
L
偶関数 dx.
0
奇関数 dx = 0.
−L
命題 27.3
f (x) を任意の関数とするとき、いかが成り立つ。 (1) g(x) = f (x) + f (−x) は 偶関数である。
(2) g(x) = f (x) − f (−x) は 奇関数である。
命題 27.4
任意の関数は、偶関数と奇関数の和で書ける。
f (x) + f (−x) f (x) − f (−x)
+
. より。
2
2
例 11 ex = cosh x + sinh x は、この分解に相当する。
[証明] f (x) =
27.2 周期関数
定義 3 f (x + P ) = f (x) となる正の定数 P があるとき、P を f の周期という。P の中
で最小なものがあれば、それを基本周期とよぶ。
例 12
周期 2L (L > 0) を持つもの。
πk
x
L
πk
(2) sin
x
L
πk
(3) tan
x
2L
cos x, sin x
(1) cos
k = 0, 1, 2, · · ·
k = 1, 2, · · ·
k = 1, 2, · · ·
の基本周期は 2π 、tan x は π である。
27.3 左右の極限と区分的連続性
左右の極限
定義 4
f (a − 0) = lim f (x) =
x→a−0
f (a + 0) = lim f (x) =
x→a+0
lim
f (x)
lim
f (x) (右極限)
x<a, x→a
x>a, x→a
(左極限)
f(a+0)
f(a)
f(a-0)
a
f (a − 0) = f (a) であるとき、f (x) は x = a で左連続、f (a) = f (a + 0) であるとき、
f (x) は x = a で右連続であるという。f (a − 0) = f (a) = f (a + 0) であるとき、f (x) は
x = a で連続である。
区分的連続
定義 5
関数 f (x) が次の条件を満たすとき、区分的に連続であるという。
(1) 有限個の点を除いて連続
(2) 各不連続点 a に対し、左右の極限値が存在する。(食い違っても良い。)
連続関数は区分的連続である。y =
1
は、区分的連続でない。
x
27.4 基本となる積分
命題 27.5
正の実数 L、整数 m > 0, n = 0 に対して、次の各式が成り立つ。
{
2L
nπ
cos
xdx =
L
0
−L
∫ L
nπ
sin
xdx = 0
L
−L
{
∫ L
L
nπ
mπ
x cos
xdx =
cos
L
L
0
−L
{
∫ L
L
mπ
nπ
sin
x sin
xdx =
L
L
0
−L
∫ L
mπ
nπ
sin
x cos
xdx = 0
L
L
−L
∫
L
(n = 0)
(n ̸= 0)
(7)
(8)
(m = n)
(m ̸= n)
(9)
(m = n)
(m ̸= n)
(10)
(11)
π
2π
3π
π
2π
3π
特に、1, cos , cos
, cos
, · · · , sin , sin
, sin
, · · · のうちの異なる 2 つ
L
L
L
L
L
L
∫ L
の関数 f (x), g(x) について、
f (x)g(x) dx = 0 である。
−L
この最後の 3 つの計算には、次の公式 (積和の公式) を使う。
命題 27.6
1
(cos(A + B) + cos(A − B))
2
1
sin A sin B = (− cos(A + B) + cos(A − B))
2
1
sin A cos B = (sin(A + B) + sin(A − B))
2
cos A cos B =
28 フーリエ級数
定理 28.1
(−L, L] で定義された (区分的) 連続関数 f (x) がある定数
an (n = 0, 1, 2, · · · ), bn (n = 1, 2, 3, · · · ) で
∞
a0 ∑ (
nπ )
nπ
+
x + bn sin
x
an cos
2
L
L
n=1
· · · (F )
と表されたとするとき、



an


bn
が成り立つ。
∫
1 L
nπ
=
f (x) cos
xdx
L −L
L
∫ L
1
nπ
=
f (x) sin
xdx
L −L
L
· · · (C)
· · · (S)
[証明]
∫
L
f (x) cos
−L
nπ
xdx =
L
∫
L
(
∞
∑
)
a0
mπ
nπ
mπ
+
(am cos
x + bm sin
x) cos
xdx
2
L
L
L
−L
m=1
( {
)
∫ L
La0 (n = 0)
nπ
a0
=
cos
xdx
=
2 −L
L
0 (n > 0)
( {
)
∫
∞
L
∑
Lan (n ̸= m)
mπ
nπ
+
am
cos
x cos
xdx =
L
L
0 (n = m)
−L
m=1
∫ L
∞
∑
mπ
nπ
+
sin
bm
x cos
xdx (= 0)
L
L
−L
m=1
= Lan .
∫
L
nπ
xdx =
f (x) sin
L
−L
∫
L
(
∞
∑
)
a0
mπ
mπ
nπ
+
x + bm sin
x) sin
xdx
(am cos
2
L
L
L
−L
m=1
∫ L
∞
∑
mπ
nπ
=
am
cos
x sin
xdx (= 0)
L
L
−L
m=1
( {
)
∫
∞
L
∑
Lbn (n ̸= m)
mπ
nπ
bm
sin
+
x sin
xdx =
L
L
0 (n = m)
−L
m=1
= Lbn .
注 14
∑
∫
と の交換可能性を仮定しているが、ある種の条件の下これは正しい。
定義 6 任意の関数 f (x) に対して、(C), (S) で計算された an , bn で構成した (F) を
f (x) のフーリエ級数と言い、
∞
a0 ∑
nπ
nπ
f (x) ∼
+
(an cos
x + bn sin
x)
2
L
L
n=1
と書く。an , bn を f (x) のフーリエ係数と言う。
29 フーリエの定理
1 点のみで食い違う f (x) と g(x) のフーリエ級数は一致する。それでは、フーリエ級数
と元の関数の関係はどうなっているのだろう?
定理 29.1(フーリエの定理) f (x) 及び f ′ (x) が (−L, L] で区分的に連続なら、f (x)
のフーリエ級数は (−L, L] での任意の点 x において、f (x) の中点修正 :
1
(f (x + 0) + f (x − 0))
2
に収束する。特に f (x) が x で連続なら f (x) に収束する。
〔例題 1.1〕(−π, π] で
{
−1
f (x) =
1
(−π < x < 0)
(0 5 x 5 π)
のフーリエ級数を求めよ。
【解】
∫
1 π
an =
f (x) cos nxdx = 0
π −π
∫ π
∫ π
1
2
bn =
f (x) sin nxdx =
f (x) sin nxdx
π −π
π 0
[
]π
∫ π
2
2 − cos nx
=
sin nxdx =
π 0
π
n
0
{
4
n = 奇数
21
n
nπ
=
(1 − (−1) ) =
πn
0
n = 偶数
従って
∞
4 ∑ 1
4 ∑
1
f (x) ∼
sin nx =
sin(2m + 1)x
π
n
π m=0 2m + 1
n:奇数
f (x) は x =
π
π
で連続なので、フーリエの定理より、x = で f (x) とそのフーリエ級数
2
2
の値は一致する。よって、
∞
4 ∑
1
π
4
1 1 1
1=
sin(2m + 1) = (1 − + − · · · )
π m=0 2m + 1
2
π
3 5 7
すなわち、
1 1 1
π
= 1 − + − ··· .
4
3 5 7
〔例題 1.2〕(−1, 1] で
f (x) = |x|
のフーリエ級数を求めよ。
【解】
∫
a0 =
∫
1
−1
1
|x|dx = 2
−1
xdx = 1.
0
∫
an =
1
∫
1
|x| cos nxdx = 2
x cos nπxdx
0
1
[
]1
∫
sin nπx
sin nπx
−2
=2 x
dx
nπ
nπ
0
0
[ cos nπx ]1
2 (−1)n − 1
= 2
=2
2 π2
2
n
π
n
0
{
=
∫
bn =
− n24π2
0
(n = 奇数)
(n = 偶数)
1
−1
|x| sin nxdx = 0
従って
∞
1
4 ∑
1
f (x) ∼ − 2
cos(2m + 1)x
2
2 π m=0 (2m + 1)
左辺は x = 0 で連続なので、フーリエの定理より、
∞
1
4 ∑
1
0= − 2
2 π m=0 (2m + 1)2
すなわち、
∞
∑
π2
1
1
1
1
=
= 1 + 2 + 2 + 2 ··· .
2
8
(2m
+
1)
3
5
7
m=0
30 フーリエ級数余弦級数・フーリエ級数正弦級数
定理 30.1
(−L, L] で定義された (区分的) 連続関数 f (x) に対して、
(1) f (x) が偶関数であれば、
∞
a0 ∑
nπ
f (x) ∼
+
an cos
x
2
L
n=1
であり (フーリエ余弦級数)、
2
an =
L
∫
L
0
nπ
f (x) cos
xdx (n = 0)
L
である。
(2) f (x) が奇関数であれば、
f (x) ∼
∞
∑
bn sin
n=1
nπ
x
L
であり (フーリエ正弦級数)、
2
bn =
L
∫
L
f (x) sin
0
nπ
xdx (n > 0)
L
である。
[証明] 今までのことから。
注 15 [0, L] で定義されている関数を無理やり偶関数、奇関数として (−L, L] に拡張
して、フーリエ余弦関数展開、フーリエ正弦関数展開してしまうことがある。
(?)
〔例題〕
(1) (−π, π] で定義された関数:
f (x) = 1
のフーリエ級数を求めよ。
(2) [0, π] で定義された関数:
f (x) = 1
のフーリエ余弦級数を求めよ。
(3) (−π, π] で定義された関数:
f (x) = x
のフーリエ級数を求めよ。
(4) [0, π] で定義された関数:
f (x) = x
のフーリエ正弦級数を求めよ。
31 複素フーリエ級数
オイラーの公式
eiθ = cos θ + i sin θ
より、
eiθ + e−iθ
cos θ =
2
eiθ − e−iθ
sin θ =
2i
が得られるが、これによって、cos nθ (n = 0, 1, 2, · · · ), sin nθ (n = 1, 2, 3, · · · ) の
話が einθ (n = · · · − 2, −1, 0, 1, 2, · · · ) の話に翻訳でき、単純になる。特に、命題
27.5 は、
{
∫
L
e
−L
imπ
L x
− inπ
L x
e
dx =
2L m = n
0
m ̸= n
となり、計算が楽になる。
定理 31.1
(−L, L] で定義された (区分的) 連続関数 f (x) がある定数
cn (n = · · · , −2, −1, 0, 1, 2, · · · ) で
∞
∑
cn e
inπ
L x
· · · (1)
n=−∞
と表されたとするとき、
1
cn =
2L
∫
L
− inπ
L x
f (x)e
dx
−L
· · · (2)
が成り立つ。
定義 7 任意の関数 f (x) に対して、(2) で計算された cn で構成した (1) を f (x) の複素
フーリエ級数と言い、
f (x) ∼
∞
∑
cn e
n=−∞
と書く。cn を f (x) の複素フーリエ係数と言う。
inπ
L x
定理 31.2(フーリエの定理) f (x) 及び f ′ (x) が (−L, L] で区分的に連続なら、f (x)
のフーリエ級数は (−L, L] での任意の点 x において、f (x) の中点修正 :
1
(f (x + 0) + f (x − 0))
2
に収束する。特に f (x) が x で連続なら f (x) に収束する。
〔例題〕(−π, π] で
{
−1
f (x) =
1
の複素フーリエ級数を求めよ。
(−π < x < 0)
(0 5 x 5 π)
【解】
1
cn =
2π
=
=
=
=
=
=
1
2π
∫
π
f (x)e−inx dx
−π
(∫
π
1 · e−inx dx +
0
(∫
π
∫
0
−π
0
(−1) · e−inx dx
)
)
∫
1
1 · e−inx dx +
(−1) · einx (−1)dx
2π
π
(∫0 π
)
∫ π
1
1 · e−inx dx −
(−1) · einx (−1)dx
2π
0
)
(∫0 π
1
(e−inx − einx )dx
2π
∫ π0
∫
1
i π
(−2i sin nx)dx =
(− sin nx)dx
2π 0
π 0
i [ cos nx ]π
π
n
0
{
i
=
((−1)n − 1) =
nπ
2i
− nπ
0
n = 奇数
n = 偶数
従って、
∞
2i ∑ 1 inx
2i ∑
1
f (x) ∼ −
e
=−
ei(2m+1)x
π
n
π m=−∞ 2m + 1
n:奇数
32 フーリエ級数の偏微分方程式の境界値問題への応用・波
動方程式
(テーマ)
0 5 x 5 L, 0 5 t で定義された関数 y = y(x, t) に関する波動方程式の固定端 (両端
x = 0, L で変位 0 で固定されている) の境界値問題:
2
∂2y
2∂ y
2 =c
∂t
∂x2
y(x, 0) = ϕ(x)
∂y
(x, 0) = ψ(x)
∂t
y(0, t) = 0
y(L, t) = 0
(12)
(13)
(14)
(15)
(16)
を考える。
ストークスの公式によれば、解は
1
1
y = ϕ(x + ct) + ϕ(x − ct) +
2
c
∫
x+ct
ψ(s)ds
x−ct
であり、境界条件は「ϕ, ψ は周期 2L の奇関数で、ϕ(0) = ϕ(L) = 0」で表現できる。
今回は「変数分離の方法を用いて解を「発見」する。この方法は波動方程式以外の線形
偏微分方程式にも応用がきく。
教科書 p.150 の補題:
y = y(x), y ′′ = λy, y(0) = y(L) = 0 の解は
nπ
nπ 2
y = A sin
x (n = 1, 2, 3, · · · ) で表され、それぞれについて λ = −( ) である。
L
L
[証明]
補題 32.1
(1) λ = b2 > 0 のとき、y = c1 cosh bx + c2 sinh bx と書ける。y(0) = 0 より c1 = 0。
y(L) = c2 sinh bL = 0 より c2 = 0。
(2) λ = 0 のとき、y = Ax + B 。y(0) = 0 より B = 0。y(L) = 0 より A = 0。
(3) λ = −b2 < 0 のとき、y = c1 cos bx + c2 sin bx と書ける。y(0) = 0 より c1 = 0。
nπ
。よって
y(L) = c2 sin bL = 0。c2 ̸= 0 として、bL = nπ, n = 1, 2, · · · 。∴ b =
L
( nπ )2
nπ
λ=−
x。
, y = c2 sin
L
L
【変数分離の方法による偏微分方程式の解法例】
テーマの解が y = X(x)T (t) と書けたとすると、
∂2y
′′
=
X(x)T
(t),
2
∂t
∂2y
′′
=
X
(x)T (t)
2
∂x
であるから、これを (12) に代入して、
X(x)T ′′ (t) = c2 X ′′ (x)T (t)
T ′′ (t)
X ′′ (x)
∴ 2
=
c T (t)
X(x)
これは、定数になるので、λ とおくと、
T ′′ (t) = λc2 T (t)
X ′′ (x) = λX(x)
(15), (16) より、X(0)T (t) = X(L)T (t) = 0 よって、X(0) = X(L) = 0。
( nπ )2
nπ
この条件の下で (18) を解くと補題 32.1 より、λ = −
x。
, X = A sin
L
L
( nπc )2
ncπ
ncπ
(17) より、T ′′ = −
T 。よって、T = C cos
t + D sin
t である。
L
L
L
(17)
(18)
ncπ
ncπ )
nπ
よって、y = X(x)T (t) = A C cos
t + D sin
t sin
x。改めて、an , bn を
L
L
L
(
定数として、
(
ncπ
ncπ )
nπ
yn = an cos
t + bn sin
t sin
x
L
L
L
とおくと、これは解になっている。
n = 1, 2, 3, · · · に対して、λ = −
nπ
X(x) = sin
x を固有関数という。
L
定義 8
( nπ )2
L
さて、線形同次微分方程式は、各 yn が解なら、y =
n = 1, 2, 3, · · ·
をこの境界値問題の固有値という。
N
∑
yn も解である。(境界値問題も
n=1
込みで、初期値問題を除いて) N −→ ∞ でもよいと考える。すなわち、
y=
∞
∑
yn =
n=1
∞ (
∑
n=1
ncπ )
nπ
ncπ
t + bn sin
t sin
x
an cos
L
L
L
このとき、(13) の条件は、
y(x, 0) =
∞
∑
n=1
an sin
nπ
x = ϕ(x)
L
は、ϕ(x) のフーリエ正弦級数展開であり、(14) の条件は、
∞
∑
nπ
∂y
ncπ
(x, 0) =
bn
sin
x = ψ(x)
∂t
L
L
n=1
は、ψ(x) のフーリエ正弦級数展開である。
以上をまとめると
定理 32.2
値問題
0 5 x 5 L, 0 5 t で定義された関数 y = y(x, t) に関する波動方程式の境界
2
∂2y
2∂ y
2 =c
∂t
∂x2
y(x, 0) = ϕ(x)
∂y
(x, 0) = ψ(x)
∂t
y(0, t) = 0
y(L, t) = 0
の解は、ϕ(x), ψ(x) の [0, L] におけるフーリエ正弦級数の係数を αn , βn とすれば、
y=
∞ (
∑
n=1
である。
)
αn cos
nπc
Lβn
nπc
nπ
t+
sin
t sin
x
L
nπc
L
L
· · · (∗)
注 16
2
αn =
L
2
βn =
L
∫
L
nπ
ϕ(x) sin
xdx
L
L
nπ
ψ(x) sin
xdx
L
0
∫
0
注 17 「発見的推論」をするために変数分離の方法を紹介したのだが、定理の証明だけ
したいのなら、(∗) が解になっていることを計算で確かめるだけでよい。
この「発見的推論」が発見するのは、結局「基底」である。
33 フーリエ級数の偏微分方程式の境界値問題への応用・熱
伝導方程式
(テーマ)
0 5 x 5 L, 0 5 t で定義された関数 y = y(x, t) に関する偏微分方程式の固定端 (両端
x = 0, L で「温度」が 0 で固定されている) の境界値問題:
2
∂y
∂
y
2
=c
∂t
∂x2
y(x, 0) = ϕ(x)
y(0, t) = 0
y(L, t) = 0
を考える。
注 18
式 (19) を熱伝導方程式と言う。
(19)
(20)
(21)
(22)
【変数分離の方法による偏微分方程式の解法例】
テーマの解が y = X(x)T (t) と書けたとすると、
∂y
= X(x)T ′ (t),
∂t
∂2y
′′
=
X
(x)T (t)
2
∂x
であるから、これを (19) に代入して、
X(x)T ′ (t) = c2 X ′′ (x)T (t)
T ′ (t)
X ′′ (x)
∴ 2
=
c T (t)
X(x)
これは、定数になるので、λ とおくと、
T ′ (t) = λc2 T (t)
X ′′ (x) = λX(x)
(21), (22) より、X(0)T (t) = X(L)T (t) = 0 よって、X(0) = X(L) = 0。
( nπ )2
nπ
この条件の下で (24) を解くと補題 32.1 より、λ = −
x。
, X = A sin
L
L
( nπc )2
nπc 2
(23) より、T ′ = −
T 。よって、T = Ce−( L ) t である。
L
(23)
(24)
nπ
sin
x。改めて、an を定数として、
L
2
−( nπc
L ) t
よって、y = X(x)T (t) = Ce
2
−( nπc
L ) t
yn = an e
sin
nπ
x
L
n = 1, 2, 3, · · ·
とおくと、これは解になっている。
さて、線形同次微分方程式は、各 yn が解なら、y =
N
∑
yn も解である。(境界値問題も
n=1
込みで、初期値問題を除いて) N −→ ∞ でもよいと考える。すなわち、
y=
∞
∑
yn =
n=1
∞
∑
2
−( nπc
L ) t
an e
n=1
nπ
sin
x
L
このとき、(20) の条件は、
y(x, 0) =
∞
∑
an sin
n=1
は、ϕ(x) のフーリエ正弦級数展開である。
以上をまとめると
nπ
x = ϕ(x)
L
定理 33.1
界値問題
0 5 x 5 L, 0 5 t で定義された関数 y = y(x, t) に関する熱伝導方程式の境
2
∂y
2∂ y
=c
∂t
∂x2
y(x, 0) = ϕ(x)
y(0, t) = 0
y(L, t) = 0
の解は、ϕ(x) の [0, L] におけるフーリエ正弦級数の係数を an とすれば、
y=
∞
∑
2
−( nπc
L ) t
an e
n=1
nπ
x
sin
L
· · · (∗)
である。
注 19
2
an =
L
∫
L
0
nπ
ϕ(x) sin
xdx
L
〔例題〕y = y(x, t) に関する熱伝導方程式の境界値問題
∂y
∂2y
=
∂t
∂x2
y(x, 0) = 1
y(0, t) = 0
y(π, t) = 0
を解け。
34 フーリエ変換
フーリエ変換とは複素フーリエ級数を「連続化」したものである。
定義 9(f (x) のフーリエ変換)
注 20
√1
2π
∫∞
−∞
1
F[f (x)] = √
2π
∫∞
でなく、
−∞
∫
∞
e−itx f (x)dx
−∞
· · · t の関数
とする場合がある。
定義 10(F (t) のフーリエ逆変換)
F
−1
1
[F (t)] = √
2π
定理 34.1(フーリエの反転公式)
なら、
F
−1
∫
∞
−∞
eitx F (t)dt
· · · x の関数
f, f ′ が区分的に連続で、
∫
f (x + 0) + f (x − 0)
[F [f (x)]] =
2
∞
−∞
|f (x)|dx < ∞
【イメージ】
• フーリエ級数 · · · 離散的なスペクトル分解
1
−→ · · · , c−1 , c0 , c1 , c2 , · · · , cn =
2L
f (x)
∑
n
..
.
e
inπ
L x
cn
∫
L
− inπ
L x
f (x)e
−L
←− · · · , c−1 , c0 , c1 , c2 , · · ·
• フーリエ変換 · · · 連続的なスペクトル分解
f (x)
1
√
2π
∫
∞
..
.
−∞
eitx F (t)dt
1
√
−→ F (t) =
2π
←− F (t)
∫
∞
−∞
f (x)e−itx dx
dx
〔例題 4〕 (教科書 p.159 例題 5.1)c > 0 とする。
{
e−cx
f (x) =
0
05x
その他
のフーリエ変換を求めよ。
【解】
F (t) =
=
=
=
∫ ∞
1
√
e−cx e−itx dx
2π 0
∫ ∞
1
√
e−(c+it)x dx
2π 0
[ −(c+it)x ]∞
1
e
√
−
c + it 0
2π
1
1
√
.
2π c + it
〔例題 1〕
{ (教科書 p161, 例題 5.2)
f (x) =
1 (|x| 5 1)
0 (|x| > 1)
のフーリエ変換を求めよ。
【解】
1
F (t) = √
2π
∫
[
1
−1
1 · e−itx dx
]1
1
1 −itx
=√
e
−it
2π
−1
)
1 1 ( −it
it
=√
e −e
2π −it
1 1
=√
(−2i sin t)
−it
2π
√
2 sin t
=
.
π t
=⇒
0.8
0.6
0.4
0.2
-20
-10
10
-0.2
20
〔例題 2〕
F[e− 2 x ] = e− 2 t .
1
2
1 2
【解】
− 12 x2
F[e
注 21
∫
∞
(1)
∫ ∞
∫ ∞
1 2
1
1
−itx − 2 x
− 12 t2 − 21 (x+it)2
]= √
e
e
dx = √
e
dx
2π −∞
2π −∞
∫ ∞
∫ ∞
2
1
1 2
1 2
1 2
1
1
e− 2 (x+it) dx = √ e− 2 t
e− 2 x dx
= √ e− 2 t
2π
2π
−∞
−∞
1 2
1 − 1 t2 √
=√ e 2
2π = e− 2 t .
2π
(参考)
− 12 x2
e
−∞
dx =
√
2π.
証明は 2 重積分による。数学 1A,2A の教科書 p.168 を見よ。
∫
∞
sin x
dx = π.
(2)
−∞ x
証明は留数定理を使う。教科書 p.96 問 2 を見よ。でも、解答のヒントだけでは解くの
は難しい。
定理 34.2
(1) f (x), F (t) が偶関数なら
√
F[f (x)] =
√
F −1 [F (t)] =
2
π
2
π
∫
∞
cos tx · f (x)dx
0
∫
∞
cos tx · F (t)dt
0
(2) f (x), F (t) が奇関数なら
√
∫
1 2 ∞
F[f (x)] =
sin tx · f (x)dx
i π 0
√ ∫ ∞
2
−1
F [F (t)] = i
sin tx · F (t)dt
π 0
注 22
F[実偶関数] = 実遇関数, F[実奇関数] = i × 実奇関数 である。
(∫
∞
∫
)
0
1
√
[証明] (1) F[f (x)] =
+
であり、
2π
0
−∞
∫ 0
∫ 0
∫ ∞
e−itx f (x)dx =
eitu f (−u)(−du) =
eitx f (x)dx なので、
−∞
∞
1
F[f (x)] = √
2π
1
=√
2π
{∫
∫
∞
(2)
e−itx f (x)dx +
∞
√
2 cos(tx)f (x)dx =
0
−∞
∫
eitx f (x)dx
∞
2
π
∫
∞
(e−itx + eitx )f (x)dx
0
cos(tx) f (x)dx
0
∫
∞
eitu f (−u)(−du) = −
e−itx f (x)dx −
1
=√
2π
∫
∞
0
∞
{∫
}
0
e−itx f (x)dx =
1
F[f (x)] = √
2π
∫
0
∞
F −1∫も同様。
0
0
eitx f (x)dx なので、
0
∫
∞
}
1
=√
2π
∫
∞
eitx f (x)dx
(e−itx − eitx )f (x)dx
0
0
0
√ ∫ ∞
∫ ∞
1 2
1
(−2i) sin(tx)f (x)dx =
sin(tx) f (x)dx
=√
i π 0
2π 0
F −1 も同様。
定義 11
f (x), F (t) を x = 0, t = 0 で定義された関数とする。
(1) フーリエ余弦変換、フーリエ余弦逆変換を次のように定義する。
√
Fc [f (x)] =
√
Fc −1 [F (t)] =
2
π
2
π
∫
∫
∞
cos tx · f (x)dx
0
∞
cos tx · F (t)dt
0
すなわち、
Fc [f (x)] = F[f (x) を偶関数に拡張したもの]
Fc −1 [F (t)] = F −1 [F (t) を偶関数に拡張したもの]
(2) フーリエ正弦変換、フーリエ正弦逆変換を次のように定義する。
√
Fs [f (x)] =
√
Fs
−1
[F (t)] =
2
π
2
π
∫
∞
sin tx · f (x)dx
0
∫
0
∞
sin tx · F (t)dt
すなわち、
Fs [f (x)] = iF[f (x) を奇関数に拡張したもの]
1 −1
−1
Fs [F (t)] = F [F (t) を奇関数に拡張したもの]
i
注 23
Fc , Fc −1 及び Fs , Fs −1 は互いに逆対応である。
〔例題 1L 〕L を定数とするとき、
{
1 (|x| 5 L)
f (x) =
0 (|x| > L)
のフーリエ変換を求めよ。
【解】
√
F (t) =
√
2
π
2
π
∫
∞
f (x) cos tx dx
0
∫
L
cos tx dx
0
√ ([
]L )
2
sin tx
=
π
t
0
√
2 sin tL
=
.
π t
=
〔例題 3〕
{
1 − |x| |x| 5 1
f (x) =
0
その他
のフーリエ変換を求めよ。
【解】
√
F (t) =
√
=
√
=
√
=
√
=
2
π
2
π
2
π
2
π
∫
∞
f (x) cos txdx
∫
0
1
(1 − x) cos txdx
(0[
)
]1 ∫ 1
sin tx
sin tx
+
dx
(1 − x)
t
t
0
0
(
[
]1 )
cos tx
0+ − 2
t
0
2 1 − cos t
π
t2
〔練習問題〕
のフーリエ変換を求めよ。
{
|x| |x| 5 1
f (x) =
0
その他
定理 34.3
a > 0, F (t) = F[f (x)] なら、F[f (ax)] =
1
t
F ( ) である。
a a
[証明] ax = u と置いて置換積分すると、
∫ ∞
∫ ∞
1
1
du
1
t
−itx
− itu
a
F[f (at)] = √
= F ( ) 。
f (at)e
dx = √
f (u)e
a
a a
2π −∞
2π −∞
定理 34.4
a > 0 とするとき、
2
1 2
1
F[e−ax ] = √ e− 4a t .
2a
また、
1 − 1 t2
F [e
] = √ e 4a .
2a
√
− 12 x2
− 12 t2
[証明] 〔例題 2〕F[e
]=e
で、前定理を a を 2a として使う。
−1
−ax2
定理 34.5
F (t) = F[f (x)] なら、f (−t) = F[F (x)] である。
[証明] F (t) = F[f (x)] とおく。フーリエの定理より、
1
−1
√
f (x) = F [F (t)] =
2π
∫
∞
eitx F (t)dt
−∞
ことで、t を x に、x を −t に置き換えると、
1
f (−t) = √
2π
∫
∞
−∞
eix(−t) F (x)dx = F[F (x)].
〔例題 5〕
例題 1 の f (x) =
{
1 (|x| 5 1)
0 (|x| > 1)
について、
[
F
]
sin x
=
x
【解】例題 1 より、
√
√
F[f (x)] =
π
f (t).
2
2 sin t
π t
である。よって前定理より、
[
]
sin x
F
=
x
√
π
f (−t) =
2
√
π
f (t)
2
35 フーリエ変換の偏微分方程式の境界値問題への応用 (試
験範囲外)
(テーマ)
0 5 x, 0 5 t で定義された関数 y = y(x, t) に関する「1 次元熱伝導方程式」の左側固定
端 (両端 x = 0 で変位 0 で固定されている) の境界値問題:
2
∂y
∂
y
2
=c
∂t
∂x2
y(x, 0) = ϕ(x)
y(0, t) = 0
を考える。
(25)
(26)
(27)
(28)
【変数分離の方法による偏微分方程式の解法例 (その 2)】
テーマの解が y = X(x)T (t) と書けたとすると、
∂y
= X(x)T ′ (t),
∂t
∂2y
′′
=
X
(x)T (t)
2
∂x
であるから、これを (25) に代入して、
X(x)T ′ (t) = c2 X ′′ (x)T (t)
T ′ (t)
X ′′ (x)
∴ 2
=
c T (t)
X(x)
これは、定数になるので、λ とおくと、
T ′ (t) = λc2 T (t)
X ′′ (x) = λX(x)
(29)
(27) より、X(0)T (t) = 0 よって、X(0) = 0。
この解は、λ = −s2 , X(x) = B(s) sin sx, (B(s) は任意関数) である。また、(17) よ
−c2 s2 t
り、T (t) = C(s)e
, (C(s) は任意関数)。よって、
−c2 s2 t
ys = X(x)T (t) = b(s)e
sin sx である。(b(s) = B(s)C(s) と置いた。)
∫
∞
ys (x, t) ds も解で
さて、線形同次微分方程式は、各 ys (x, t) が解なら、y(x, t) =
0
ある。(境界値問題も込みで、初期値問題を除いて) よって、解は
∫
∞
y(x, t) =
−c2 s2 t
b(s)e
sin sx ds
0
とおける。
このとき、(26) の条件は、
∫
∞
b(s) sin sx ds = ϕ(x)
y(x, 0) =
0
であり、これは b(x) のフーリエ正弦 (逆) 変換 (の
以上をまとめると
√
π
倍) である。
2
定理 35.1
問題
0 5 x, 0 5 t で定義された関数 y = y(x, t) に関する熱伝導方程式の境界値
2
∂y
2∂ y
=c
∂t
∂x2
y(x, 0) = ϕ(x)
y(0, t) = 0
の解は、ϕ(x) の x > 0 におけるフーリエ正弦変換を β(s) とすれば、
√
y(x, t) =
である。
注 24
β(s) =
√
2
π
∫
2
π
∫
∞
−c2 s2 t
β(s)e
sin sx ds
0
∞
ϕ(x) sin sx dx.
0
注 25 y(x, t) = Fs −1 [Fs [ϕ(x)]e−c
らも導ける。
2 2
s t
] とも書ける。また、この定理は、定理 36.3 か
36 参考 (試験範囲外)
36.1 たたみ込み積分
定義 12
関数 f (x), g(x) に対し、
∫
f (x) ∗ g(x) =
∞
−∞
f (τ )g(x − τ ) dτ
と定義し、これを f (x) と g(x) のたたみ込み積分あるいは、合成積と言う。
定理 36.1
F[f (x) ∗ g(x)] =
√
2πF[f (x)]F[g(x)]
[証明] x = τ + y と置く置換積分により、
)
∫ ∞ (∫ ∞
1
√
F[f (x) ∗ g(x)] =
f (τ )g(x − τ ) dτ e−itx dx
2π −∞
−∞
)
∫ ∞ (∫ ∞
1
=√
f (τ )g(x − τ )e−itx dx dτ
2π −∞
−∞
)
∫ ∞ (∫ ∞
1
f (τ )g(y)e−it(τ +y) dy dτ
=√
2π −∞
−∞
(∫ ∞
) (∫ ∞
)
1
=√
f (τ )e−itτ dτ
g(y)e−ity dy
2π
−∞
−∞
√
= 2πF[f (x)] F[g(x)].
36.2 微分とフーリエ変換の関係
定理 36.2
関数 f (x) に対して、次が成り立つ。
F[f ′ (x)] = itF[f (x)].
[証明] 部分積分法により、
F[f ′ (x)] =
∫
∞
f ′ (x)e−itx dx
−∞
∫
[
]
∞
= f (x)e−itx −∞ −
= 0 + itF[f (x)].
∞
−∞
f (x)(−it)e−itx dx
36.3 熱伝導方程式再考
定理 36.3 −∞ < x < ∞, 0 5 t で定義された関数 y = y(x, t) に関する熱伝導方程式
の境界値問題
2
∂y
2∂ y
=c
∂t
∂x2
y(x, 0) = ϕ(x)
の解は、次で与えられる。
1
y(x, t) = √
2c πt
注 26
∫
∞
−
ϕ(τ )e
(x−τ )2
4c2 t
dτ.
−∞
F を s を変数とする関数への x によるフーリエ変換とすれば、
y(x, t) = F
−1
−c2 s2 t
[F[ϕ(x)]e
x2
1
− 4c
] = √ ϕ(x) ∗ e 2 t .
2c πt
[証明] F を x によるフーリエ変換とし、偏微分方程式の両辺を F すると、定理 36.2
より、
2
∂
∂y
2∂ y
2
2
2 2
F[y] = F[ ] = F[c
]
=
c
(is)
F[y]
=
−c
s F[y]
2
∂t
∂t
∂x
∂
Y (s, t) = F[y(x, t)] と置くと、 Y = −c2 s2 Y 。これを解くと、
∂t
2 2
Y = f (s)e−c s t (f (s) は任意関数) である。t = 0 とおけば、f (s) = F[ϕ(x)] が分か
2 2
る。よって、Y = F[ϕ(x)]e−c s t 。よって、定理 43.1 と定理 34.4 より、
y=F
−1
−c2 s2 t
[F[ϕ(x)]e
]
2 2
1
= √ ϕ(x) ∗ F −1 [e−c s t ]
2π
)
(
1
1
− 4c12 t x2
√
√
=
e
ϕ(x) ∗
2
2π
2c t
∫ ∞
(x−τ )2
1
− 4c2 t
ϕ(τ )e
= √
dτ.
2c πt −∞
定理 35.1 は、次のように導ける。
ϕ(x) (x = 0) を奇関数として、−∞ < x < ∞ に拡張する。ϕ(x) が奇関数なら、
F[ϕ(x)] も奇関数なので、
y=F
−1
−c2 s2 t
[F[ϕ(x)]e
]
−1 1
−c2 s2 t
= iFs [ Fs [ϕ(x)]e
]
i
−1
−c2 s2 t
= Fs [Fs [ϕ(x)]e
].
37
ラプラス変換
38 ラプラス変換
定義 13 t の関数 f (t) に対して次のように s の関数 F (s) を対応させる変換をラプラス
変換と言う。
∫
∞
F (s) =
f (t) e−st dt
0
F (s) を L [f (t)] と書く。
命題 38.1(教科書 p166 命題 6.2)(1) L [1] =
(2) L [tn ] =
n!
sn+1
(s > 0)
1
(s > c)
s−c
s
(s > 0)
(4) L [cos ωt] = 2
s + ω2
ω
(5) L [sin ωt] = 2
(s > 0)
s + ω2
(3) L [ect ] =
1
s
(s > 0)
[証明]
∫
∞
[
]∞
1 −st
1
1
−st
=
(1) L [1] =
1 · e dt =
e
( lim e
− 1) =
(s > 0)
t→∞
−s
−s
s
0]
[
∫0 ∞
∫ ∞
∞
n [ n−1 ]
n −st
n 1 −st
n−1 1
−st
n
(2) L [t ] =
t e dt = t
e
−
nt
e dt = L t
=
−s
−s
s
0
0
0
n n − 1 [ n−2 ] n n − 1 n − 2 [ n−3 ]
n!
n!
·
L t
= ·
·
L t
= · · · = n L [1] = n+1 (s > 0).
s
s ∫ ∞
s
s
s
s
s
∫ ∞
1
(3) L [ect ] =
ect e−st dt =
e−(s−c)t dt =
(s > c)
s−c
0
0
−st
∫
eax
(4)
(a cos bx + b sin bx) を用いると、
e cos bxdx = 2
a + b2
∫ ∞
L [cos ωt] =
cos ωt e−st dt
0
[ −st
]∞
e
=
(−s cos ωt + ω sin ωt)
2
2
ω +s
0
( −st
)
−st
e
e
e0
= lim
(−s) cos ωt + 2
ω sin ωt − 2
(−s · cos 0 + ω sin 0
2
2
t→∞ ω 2 + s2
ω +s
ω +s
1
= (0 + 0) − 2
(−s · 1 + ω · 0) (s > 0)
ω + s2
s
= 2
(s > 0)
ω + s2
∫
ax
e
(5)
eax sin bxdx = 2
(−b cos bx + a sin bx) を用いると、同様にして、
a + b2
]∞
[ −st
∫ ∞
ω
e
(−ω
cos
ωt
−
s
sin
ωt)
=
(s > 0)
L [sin ωt] =
cos ωt e−st dt =
2
2
2
2
ω +s
ω +s
0
0
ax
注 27
lim e−st s cos ωt = 0 などに注意する。
t→∞
2
注 28(1)∫ どんな関数にもラプラス変換があるわけではない。例えば、f (t) = et に対
∞
する
f (t) e−st dt は、発散してしまう。
0
(2) ラプラス変換があっても定義域は制限される。
(3) f (t) のラプラス変換は、f (t) の [0, ∞) における情報しか変換しない。
(4) 通常の関数については、 lim L [f (t)] = 0 である。
s→∞
(5) フーリエ変換の親戚である。
∫ ∞
1
f (x)e−itx dx
F[f (x)] = √
2π −∞
∫ ∞
L [f (t)] =
f (t) e−st dt
√0
= 2π F[f (x)U (x)] |t←−is
( |t←−is の意味は、後述定義 14 を参照)
命題 38.2(教科書 p167 命題 6.3) L [ ] は R 上の線形変換である。つまり、任意の実
数 a, b と任意の関数 f (t), g(t) について、
L [af (t) + bg(t)] = aL [f (t)] + bL [g(t)]
が成り立つ。
∫
∞
(af (t) + bg(t)) e−st dt =
[証明] L [af (t) + bg(t)] =
∫ ∞
∫ ∞ 0
a
f (t) e−st dt + b
g(t) e−st dt = aL [f (t)] + bL [g(t)] 0
0
L [f (t)] = F (s) とするとき、以下が成り立つ。
命題 38.3(教科書 p167 命題 6.4)
1 s
(1) L [f (at)] = F ( ) (a > 0)
a a
ct
(2) L [e f (t)] = F (s − c)
[証明]
(1) at = u と置いて置換積分すると、
∫
∫
L [f (at)] =
∞
0∫
f (at) e−st dt =
∞
(2) L [ect f (t)] =
0
∞
0
ect f (t) e−st dt =
∫
f (u)e− a u
s
∞
du
1 s
= F( )
a
a a
f (t)e−(s−c)t dt = F (s − c)
0
定義 14
|s←t で、| の左側の式の s を t で置き換えることを意味する。つまり、
F (s) |s←t = F (t)
とする。例えば、上の定理の (1), (2) は、
1
(1) L [f (at)] = L [f (t)] |s← s
a
a
(2) L [ect f (t)] = L [f (t)] |s←s−c
と書ける。
[問 1](教科書 p167) 次のラプラス変換を求めよ。
(1) tn ect (n = 0, 1, 2, · · · )
(2) ect sin ωt
【解】
n!
=
(1) L [t e ] = L [t ] |s←s−c = n+1
n+1
s
(s
−
c)
s←s−c
ω
ω
ct
=
(2) L [e sin ωt] = L [sin ωt] |s←s−c = 2
s + ω 2 s←s−c
(s − c)2 + ω 2
n ct
n
n!
命題 38.4(教科書 p168 命題 6.5)
L [tf (t)] = −
d
L [f (t)]
ds
[証明]
∫ ∞
∫ ∞
∫ ∞
d
d
∂
L [f (t)] =
(f (t)e−st )dt =
f (t) e−st dt =
(−t)f (t) e−st dt ds
ds 0
∂s
0
0
[問 2](教科書 p168) 次のラプラス変換を求めよ。
(1) t3 e−ct
(2) t2 sin ωt
(3) tect cos ωt
【解】
(
)3
(
)3
d
d
1
6
−ct
−
L [e ] = −
=
ds
ds
s+c
(s + c)4
(
)2
(
)2
[2
]
d
d
2ω(3s2 − ω 2 )
ω
(2) L t sin ωt = −
L [sin ωt] = −
=
ds
ds
s2 + ω 2
(s2 + ω 2 )3
2
2
d
d
s
−
c
(s
−
c)
−
ω
(3) L [tect cos ωt] = − L [ect cos ωt] = −
=
ds
ds (s − c)2 + ω 2
((s − c)2 + ω 2 )2
[ 3 −ct ]
(1) L t e
=
命題 38.5(教科書 p168 命題 6.6)
L [f ′ (t)] = sL [f (t)] − f (0)
[証明] L [f ′ (t)] =
∫
∞
0
注 29
[
]
′
−st
−st ∞
f (t) e dt = f (t)e
+s
0
∫
∞
f (t) e−st dt. 0
lim e−st f (t) = 0 が仮定されている。
t→∞
命題 38.6(教科書 p169 命題 6.7)
[∫
L
[証明] L [f (t)] = L
[(
∫
t
0
注 30
]
t
f (t)dt =
1
L [f (t)]
s
[∫
]
0
f (t)dt
[∫
L
a
t
)′ ]
= sL
t
0
f (t)dt −
]
t
(2) ect
t cos ωtdt
0
0
= sL
[∫
(
)
∫ a
1
f (t)dt =
L [f (t)] −
f (t)dt
s
0
[問 3](教科書 p170) 次のラプラス変換を求めよ。
1 − cos ωt
(1)
∫ω
∫0
t
0
]
f (t)dt . 【解】
[
]
[∫
]
1 − cos ωt
1
1
ω
=L
sin ωt = L [sin ωt] =
.
2
2
s ]
ss +ω
[ ∫ωt
] 0 [∫ t
1
ct
(2) L e
t cos ωtdt = L
t cos ωtdt =
= L [t cos ωt] s
0
0
s←s−c
s←s−c
(
)
(
)
d
1
d
s
1
− L [cos ωt] =
−
=
2
2
s
ds
s
ds s + ω
s←s−c
s←s−c
1 s2 − ω 2 (s − c)2 − ω 2
1
.
=
2
2
2
2
2
2
s (s + ω ) s←s−c
s − c ((s − c) + ω )
[
] ∫ ∞
f (t)
[問 4](教科書 p170) L
=
L [f (t)] ds.
s
[
] t
[
]
d
f (t)
f (t)
[証明] G(s) = L
とおく。 G(s) = −L t ·
= −L [f (t)]. よって、
t
ds
t
∫ ∞
G(∞) − G(s) =
−L [f (t)] ds. lim G(s) = 0 を仮定すれば、
s→∞
∫ ∞ s
−G(s) = −
L [f (t)] ds. (1) L
s
t
定義 15
ヘビサイドの単位関数 U (t) を次で定義する。


0
U (t) =
t<0
t=0
t>0
1
2

1
このとき、t > 0 で定義された関数 y = f (t) を右に a(> 0) ずらしたものは
y = U (t − a)f (t − a)
とかける。
y
y
y=U(t)
y=U(t-a)
y=f(t) y=U(t-a)f(t-a)
t
0
a
0
a
t
命題 38.7(命題 6.8 教科書に無し)
L [U (t − a)f (t − a)] = e−as L [f (t)] (a > 0).
∫ ∞
∫ ∞
[証明] 左辺 =
U (t − a)f (t − a) e−st dt =
U (t − a)f (t − a)e−st dt
0
a
∫ ∞
∫ ∞
=
U (u)f (u)e−s(u+a) du = e−sa
f (u)e−su du = 右辺. 0
0



0 t < 1
〔例題〕関数: f (t) = 1 1 5 t 5 2 のラプラス変換を求めよ。


0 t > 2
39 ラプラス逆変換
定義 16 F (s) = L [f (t)] のとき、f (t) = L−1 [F (s)] と書き、f (t) を F (s) のラプラス
逆変換と言う。
注 31 本来、ラプラス変換は s を複素数とすべきであり、その時ラプラス逆変換は、u
を適当な実数として、
1
L−1 [F (s)] =
2πi
∫
u+i∞
eits F (s)ds
u−i∞
と書くことができる。この場合、L−1 [L [f (t)]] =「f (t) の中点修正」である。(教科書
p.171 定理 7.1)
○教科書 p.172 例題 7.1(改)
次の各関数 F (s) のラプラス逆変換を求めよ。
1
s2 − 1
1
【解】 2
を未定係数法で部分分数分解する。
s −1
(1) F (s) =
1
1
a
b
=
=
+
s2 − 1
(s − 1)(s + 1)
s−1 s+1
とおく。両辺に (s − 1)(s + 1) をかけて、1 = a(s + 1) + b(s − 1) = (a + b)s + a − b。
これが恒等式であるから、0 = a + b, 1 = a − b。この a, b に関する連立方程式を解
1
1
いて、a = , b = − 。よって、
2
2
1
1
=
s2 − 1
2
よって、
L−1
[
(
1
1
−
s−1 s+1
)
.
]
(
[
]
[
])
1
1
1
1
1 t
−t
−1
−1
(e
−
e
) = sinh t.
=
L
−
L
=
s2 − 1
2
s−1
s+1
2
1
s(s2 + 1)
1
を未定係数法で部分分数分解する。
【解】
s(s2 + 1)
(2) F (s) =
a
bs + c
1
= + 2
s(s2 + 1)
s s +1
とおく。両辺に s(s2 + 1) をかけて、1 = a(s2 + 1) + (bs + c)s = (a + b)s2 + cs + a
これが恒等式であるから、0 = a + b, 0 = c, 1 = a 。この連立方程式を解くと、
a = 1, b = −1, c = 0。よって、
1
s
1
=
−
.
2
2
s(s + 1)
s s +1
よって、
L−1
[
]
[ ]
[
]
1
1
s
−1
−1
=
L
−
L
= 1 − cos t.
s(s2 + 1)
s
s2 + 1
s+1
s
d
1
1
【解】f (t) = L−1 [F (s)] とおくと命題 38.4 より、L [tf (t)] = − F (s) = −
ds
s s+1
]
[ ]
[
−t
1
1
1
−
e
。よって、tf (t) = L−1
− L−1
= 1 − e−t 。よって、f (t) =
。
s
s+1
t
(3) F (s) = log
〔例題〕a > 0, L−1 [F (s)] = f (t) のとき、L−1 [F (as)] =
1 t
f ( ) であることを示せ。命
a a
[
]
1
t
題 38.3 の (1) で、a を に置き換えると、L f ( ) = aF (as) よって、
a
]a
[
1 t
F (as) = L f ( ) 。両辺 L−1 [ ] せよ。
a a
39.1 連立方程式を解かない部分分数分解の方法について
1
1
1
〔例1〕
=−
+
(s − 1)(s − 2)
s−1 s−2
1
a
b
=
+
(s − 1)(s − 2)
s−1 s−2
とおく。両辺に s − 1 をかけて、
1
b
=a+
(s − 1)
s−2
s−2
s = 1 を代入して、
1
=a+0
1−2
よって、a = −1。また、(∗) の両辺に s − 2 をかけて、
1
a
=
(s − 2) + b
s−1
s−1
s = 2 を代入して、
よって、b = 1。
1
=0+b
2−1
· · · (∗)
〔例2〕
1
1
1
1
+
=
−
−
(s − 2)2 (s − 3)
(s − 2)2
s−2 s−3
b
1
a
c
=
+
+
(s − 2)2 (s − 3)
(s − 2)2
s−2 s−3
· · · (∗)
とおく。両辺に (s − 2)2 をかけて、
1
c
= a + b(s − 2) +
(s − 2)2
s−3
s−3
s = 2 を代入して、
· · · (∗∗)
1
=a+0+0
2−3
よって、a = −1。更に、(∗∗) の両辺を微分して
−
1
c
c
2
=
b
−
(s
−
2)
+
· 2(s − 2)
2
2
(s − 3)
(s − 3)
s−3
s = 2 を代入して
−
1
=b−0+0
2
(2 − 3)
よって、b = −1。また、(∗) の両辺に s − 3 をかけて、
1
a
b
=
(s
−
3)
+
(s − 3) + c
2
2
(s − 2)
(s − 2)
s−2
s = 3 を代入して、
よって、c = 1。
1
=0+0+c
2
(3 − 2)
〔例3〕
1
1
s
−
=
s(s2 + 1)
s s2 + 1
1
a
bs + c
=
+
s(s2 + 1)
s s2 + 1
とおく。両辺に s をかけて、
· · · (∗)
1
bs + c
=a+ 2
s
s2 + 1
s +1
s = 0 とおいて、
1
=a+0
1
よって、a = 1。(∗) に代入して、
1
1
bs + c
= + 2
s(s2 + 1)
s s +1
1
を移項して、
s
1
1 − (s2 + 1)
−s
bs + c
1
− =
= 2
= 2
s(s2 + 1) s
s(s2 + 1)
s +1
s +1
よって、−s = bs + c。
s3
s
2s
〔例4〕 2
=
−
+
(s + 1)(s2 + 2)
s2 + 1 s2 + 2
1
1
1
=
−
(s2 + 1)(s2 + 2)
s2 + 1 s2 + 2
が、s2 = S として S に関する部分分数分解を行うことで得られる。両辺を s3 をかけて
s3
s3
s3
= 2
−
(s2 + 1)(s2 + 2)
s + 1 s2 + 2
s3 を s2 + 1 で割った商は s 余りは −s、s3 を s2 + 2 で割った商は s 余りは −2s なので、
s3
s(s2 + 1) − s s(s2 + 1) − 2s
=
−
(s2 + 1)(s2 + 2)
s2 + 1
s2 + 2
2s
s
−s+ 2
=s− 2
s +1
s +2
s
2s
=− 2
+ 2
s +1 s +2
となる。
【練習問題】次の関数を部分分数分解せよ。
1
s(s − 2)
1
(2)
(s + 1)2 (s − 3)
1
(3)
(s + 1)(s2 + 1)
(1)
40 移動原理
命題 40.1(第 2 移動定理)
L
−1
f (t) = L−1 [F (s)] とするとき
[ −as
]
e F (s) = U (t − a)f (t − a)
命題 40.2(第 1 移動定理)
f (t) = L−1 [F (s)] とするとき
L−1 [F (s − c)] = ect f (t)
(a > 0)
ラプラス変換について最小限のまとめ
【変換基礎】
1
n!
(a) L [1] =
L [tn ] = n+1
s
s
s
(b) L [cos ωt] = 2
s + ω2
ω
(c) L [sin ωt] = 2
s + ω2
[
]
1
√
=
(参考) L
t
√
π
s
[ n ct ]
L t e =
n!
(s − c)n+1
【変換規則】(a > 0 とする)
1
(1) L [f (at)] = L [f (t)] |s← s
a
a
[ ct
]
(2) L e f (t) = L [f (t)] |s←s−c
(3) L [U (t − a)f (t − a)] = e−as L [f (t)]
(4)
(5)
(6)
(7)
d
L [t(f (t)] = − L [f (t)]
ds
[
] ∫ ∞
1
L [f (t)] ds
L f (t) =
t
s
[
]
d
L
f (t) = sL [f (t)] − f (0)
dt
[∫ t
]
1
L
f (t)dt = L [f (t)]
s
0
【逆変換基礎】(a > 0 とする)
[ ]
[ ]
tn−1
1
−1 1
−1
(a’) L
=1
L
=
n
s
s
(n − 1)!
[
]
√
s
−1
(b’) L
= cos at
2
[s + a]
√
1
1
−1
(c’) L
= √ sin at.
2
s +a
a
−1
L
[
]
1
tn−1 ct
e
=
(s − c)n
(n − 1)!
【逆変換規則】(a > 0 とする)
−1
(1’) L
1 −1
[F (as)] = L [F (s)] t← t
a
a
(2’) L−1 [F (s − c)] = ect L−1 [F (s)]
[ −as
]
−1
−1
(3’) L
e F (s) = U (t − a)L [F (s)] t←t−a
]
[
d
F (s) = −tL−1 [F (s)]
(4’) L−1
ds
[∫ ∞
]
1
(5’) L−1
F (s)ds = L−1 [F (s)]
t
s
(6’) 使いにくいので略。
[
] ∫ t
1
(7’) L−1 F (s) =
L−1 [F (s)] dt
s
0
(計算例)
√
[
[
[
]
]
]
1
1
1
−2t −1
−2t sin√ 3t
L−1 2
= L−1
=
e
L
=
e
.
2
2
s + 4s + 7
(s + 2) + 3
s +3
3
41 ラプラス変換の応用
【コンセプト】
t の世界
s の世界
微分する
s×
et
1
s−1
積分する
微分方程式
1
×
s
代数方程式
〔例題 1〕y ′ − y = et , y(0) = 0.
【解】L [y] = Y とおくと、L [y ′ ] = sL [y] − y(0) = sY 。
L [y ′ − y] = L [y ′ ] − L [y] = sY − Y, L [et ] =
ラス変換した結果は、(s − 1)Y =
よって、Y =
1
。
s−1 [
1
なので、微分方程式の両辺をラプ
s−1
]
1
1
−1
t
=
te
。
。よって、
y
=
L
2
2
(s − 1)
(s − 1)
〔例題 2〕y ′ − y = e2t , y(0) = 0.
【解】L [y] = Y とおくと、L [y ′ ] = sL [y] − y(0) = sY 。
[ 2t ]
L [y − y] = L [y ] − L [y] = sY − Y, L e =
′
′
1
。なので、微分方程式の両辺を
s−2
1
。
ラプラス変換した結果は、(s − 1)Y =
s−2
1
1
1
よって、Y =
=−
+
。よって、
(s − 1)(s − 2)
s−1 s−2
[
]
1
1
y = L−1 −
+
= −et + e2t 。
s−1 s−2
〔例題 3〕y ′′ − 5y ′ + 6y = e2t , y(0) = y ′ (0) = 0.
【解】L [y] = Y とおくと、L [y ′ ] = sY − y(0) = sY 。
[ 2t ]
L [y ] = sL [y ] − y (0) = s(sY ) − 0 = s Y 。L e =
1
。
s−2
1
1
よって、(s2 − 5s + 6)Y =
。よって、Y =
。
2
s−2
(s − 2) (s − 3)
a
b
c
これを
+
+
とおくと、a = 1, b = −1, c = −1。
s − 3 s − 2 (s − 2)2
よって、y = e3t − 2e2t − te2t 。
′′
′
′
2
〔例題 4〕y ′′ + 2y ′ + 2y = 0, y(0) = 1, y ′ (0) = 0.
【解】L [y] = Y とおくと、L [y ′ ] = sY − y(0) = sY − 1。
L [y ′′ ] = sL [y ′ ] − y ′ (0) = s(sY − 1) − 0 = s2 Y − s。
よって、(s2 + 2s + 2)Y = s + 2。よって、
s+2
(s + 1) + 1
s+1
1
Y = 2
=
=
+
。
s + 2s + 2
(s + 1)2 + 1
(s + 1)2 + 1 (s + 1)2 + 1
よって、y = e−t cos t + e−t sin t。
〔例題 5〕(教科書 p.178 問 2 (1))
{
y ′ − 2z
z ′ + 2y
= cos 2t
= sin 2t
y(0) = −2, z(0) = 1.
【解】L [y] = Y, L [z] = Z とおくと、
L [y ′ ] = sL [y] − y(0) = sY + 2, L [z ′ ] = sL [z] − z(0) = sZ − 1 であるから、

sY + 2 − 2Z
sZ − 1 + 2Y
s
= 2
s +4
2
= 2
s +4
−2s + 3
s
1
=
−2
+
3
·
。
2
2
2
s +4
s +4
s +4
3
よって、y = −2 cos 2t + sin 2t。
2
z = 2 sin 2t + cos 2t。
これから、Y =
【練習問題】ラプラス変換を用いて、次の y = y(t) についての微分方程式を解きなさい。
(1) y ′′ + 3y ′ + 2y = 0, y(0) = 0, y ′ (0) = 1.
(2) y ′′ + 2y ′ + 3y = 0, y(0) = 0, y ′ (0) = 1.
42 線形システム
L : インダクタンス, R : レジスタンス, C : キャパシタンス, I = I(t) : 電流, v(t) : 入
力電圧
1
dI(t)
+ R · I(t) +
L
dt
C
∫
t
I(t)dt = v(t),
I(0) = 0
0
これを解く。L [y] = Y, L [v(t)] = V (s) とおくと、
[
]
[∫
t
]
1
dI(t)
I(t)dt = Y 。
= sY − I(0) = sY, L
L
dt
s
0
1
よって、(Ls + R +
)Y = V (s) 。
Cs
1
1
2
をこのシステムのインピーダンスという (Ls + Rs + をインピーダン
Ls + R +
Cs
C
スと呼ぶこともある)。
s
1
V (s) =
Y =
V (s)。よって、
1
2
インピーダンス
Ls +
[
] Rs + C[
]
1
s
I(t) = L−1
V (s) = L−1
V (s)
1
2
インピーダンス
Ls + Rs + C
[
]
1
−1
=L
∗ v(s) (∗はたたみ込み (後述))。
インピーダンス
(例)
L = 1, R = 2, C =
1
とすると、
2
−1
I=L
[
(1) v(t) = U (t) とすると、I = L−1
[
s
s2 + 2s + 2
]
V (s)
]
1
−t
=
e
sin t.
2
s + 2s + 2
(2) v(t) = U [
(t − a) とすると、 ]
1
−1
−as
−(t−a)
I=L
·
e
=
U
(t
−
a)e
sin(t − a).
s2 + 2s + 2
(3) v(t) = U (t) − U (t − 2π) とすると、
I = e−t sin t − U (t − 2π)e−(t−2π) sin(t − 2π) = e−t (1 − U (t − 2π)e2π sin t).
43 たたみ込み積分 (試験範囲外)
定義 17
関数 f (x), g(x) に対し、
∫
f (x) ∗ g(x) =
t
f (τ )g(t − τ ) dτ
0
と定義し、これを f (x) と g(x) のたたみ込み積分あるいは、合成積と言う。
定理 43.1
L [f (x) ∗ g(x)] = L [f (x)] L [g(x)]
[証明] t = τ + y と置く置換積分により、
∫
∞
(∫
)
t
e−st dt
0
0
)
∫ ∞ (∫ ∞
(領域に留意した積分順序の交換) =
f (τ )g(t − τ )e−st dt dτ
τ
0
)
∫ ∞ (∫ ∞
(変数変換 y = t − τ ) =
f (τ )g(y)e−s(τ +y) dy dτ
(0∫ ∞ 0
) (∫ ∞
)
=
f (τ )e−sτ dτ
g(y)e−sy dy
L [f (x) ∗ g(x)] =
f (τ )g(t − τ ) dτ
0
= L [f (t)] L [g(t)] .
0
44 ディラックの δ 関数 (試験範囲外)
(考察)
L−1 [1]
は何か?すなわち、
L [δ(t)] = 1
となる、{δ(t) は何か?
U (t) =
0
t50
1
t>0
とすれば、
L [U ′ (t)] = sL [U (t)] − U (0) = s ·
よって、δ(t) = U ′ (t) と言えなくもない。
1
=1
s