JS技術開発情報メール№.152「よく見かける下水道用語」掲載 禁無断転載 「ステップ比」 窒素除去法の一つとして「ステップ流入式多段硝化脱窒法」という用語はよく見かけると思 います。この処理法では、流入水を各脱窒タンクへ等量に分配し、各段の負荷を均等にすると いう設計思想になっていますが、実際に均等分配することは非常に難しいことです。また、あ る時間に均等流入に流入堰をセットしても、流量が変われば流入割合も変わります。各ステッ プ流入量を個別に流量計で測らなければ各段のステップ比がどうなっているのか正確には把 握できないと思います。今回は、各段の MLSS 濃度からステップ比を計算する方法を紹介しま す。四則演算しか使いませんの気楽に読み続けてください。 下図に 3 段ステップ法の模式図を示します。A は無酸素タンク、O は好気タンクの意味です。 ここで未知数は S1、S2、S3 の3つですから、方程式が3つあれば解が得られます。返送汚泥 比rと各段の MLSS 濃度 X1、X2、X3は測定値があると仮定します。返送汚泥濃度を使っても ステップ比が計算できますが、ここでは返送汚泥濃度を使わない方法で計算します。 S1 ステップ比 r : O A 汚泥返送比 S2 : A X1 図1 S3 O O A X2 X3 ステップ流入式 3 段硝化脱窒素法の模式図 流入水中の SS を無視すると、第 1 段からの流出固形物量と第 3 段からの流出固形物量は等 しくなるので式1が成立します。 (S1+r)×X1 = (1+r)× X3 式1 この式1では未知数は S1の1つですから S1は次式で求められます。 S1 = X3 × (1 + r ) − r X1 式2 同様に第 2 段からの流出固形物量と第 3 段からの流出固形物量は等しくなるので式3が成立し ます。 (S1+ S2+r)×X2 = (1+r)× X3 式3 ステップ比 S2は次式で求められます。 S2 = X3 × (1 + r ) − ( S 1 + r ) X2 式4 そして、第 3 段のステップ比 S3は次式で求められます。 S3 = 1-(S1+ S2) 式5 このように、未知数の数と方程式の数を確認しながら解を求めることを思い出していただけ れば、いろいろな場面で応用できますので、暇なときに、返送汚泥濃度を使ってステップ比を 計算する方法を応用問題として解いてみてはいかがでしょう。 Copyright©2014 日本下水道事業団技術戦略部
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