電力中央研究所報告 原子力発電 高い安全性を有する SN 材の高温強度特性の評 価 キーワード:建築構造用圧延鋼材,材料規格,高温強度,引張試験 背 報告書番号:Q13009 景 一般構造用圧延鋼材(SS 材)は、日本工業規格(JIS 規格)に規定される構造材料と して産業界で広く利用されており、原子力プラントでは支持構造物等に使用されてい る。しかしながら、同材には溶接用材料として満たすべき条件が定められていないこ とから、溶接性が担保された代替材料をこれに代わり用意しておくことが必要と考え られる。建築構造用圧延鋼材(SN 材)は優れた溶接性と高い靱性を有し、SS 材の代替 材として有望視されている。同材を使用可能とするためには、その特性データを整備 し、規格化を進めることが必要であるが、現状では JIS 規格に室温下での引張特性の要 求が規定されているに過ぎず、日本機械学会発電用原子力設備規格 材料規格の策定に 必要となる高温引張特性は得られていない。 このような状況の下、当所は電気事業連合会からの要請を受け、SN 材の高温引張特 性の評価を行った。 目 的 SN 材の体系的な高温引張試験を実施し、同材の高温引張特性を明らかにすること。 主な成果 SN 材 4 種類(SN400B、SN400C、SN490B、および SN490C)、板厚 2 種類(40 mm および 100 mm)のそれぞれについて、チャージの異なる 3 種の鋼材を用意し、室温か ら 400C の温度条件で関連する JIS 規格に準拠して合計 240 本の引張試験を行った。 (1)高温引張特性 降伏点や引張強さの試験温度依存性は材料、板厚の違いによらず定性的にほぼ同じで あり、鋼材のチャージによる違いは小さかった。引張特性の温度依存性を示すトレン ドカーブ注)の決定法について検討し、SN400B と SN400C、SN490B と SN490C をそれぞ れ一括してトレンドカーブを決定できることを確かめた(図 1)。 (2)影響因子に関する検討 室温下での試験結果を基に、引張特性に及ぼすひずみ速度の影響は小さいこと(図 2)、 不純物元素である P および S の含有量が引張特性に及ぼす影響は小さいこと(図 3)を 明らかにした。 1.4 1.0 1.2 無次元化引張強さ 無次元化降伏点または耐力 1.2 0.8 0B41 0B42 0B43 0C41 0C42 0C43 0.6 0.4 0.2 0.0 0 回帰曲線 1.0 回帰曲線 0.8 0B41 0B42 0B43 0C41 0C42 0C43 0.6 0.4 0.2 0.0 100 200 300 0 400 100 200 試験温度, C 300 400 試験温度, C 無次元化降伏点または耐力 無次元化引張強さ 図 1 SN400B、SN400C を一括したトレンドカーブの例 0B41、0B42、0B43 はチャージの異なる SN400B、板厚 40 mm を表す 0C41、0C42、0C43 はチャージの異なる SN400C、板厚 40 mm を表す 400 ひずみ速度2.5×10‐4 s‐1 ひずみ速度7.0×10‐5 s‐1 降伏点, MPa 350 300 250 200 150 100 SN400B SN400B SN400C SN400C SN490B SN490B SN490C SN490C 板厚40 mm 板厚100 mm 板厚40 mm 板厚100 mm 板厚40 mm 板厚100 mm 板厚40 mm 板厚100 mm 図 2 降伏点に及ぼすひずみ速度の影響 400 400 350 350 300 300 降伏点, MPa 降伏点, MPa 素材番号は異なる材料、板厚、チャージを表す 250 200 SN400B SN400C SN490B SN490C 150 100 50 0.01 0.02 0.03 200 SN400B SN400C SN490B SN490C 150 100 50 0 0.00 250 0.04 0 0.000 P含有量, wt% 0.005 0.010 0.015 0.020 S含有量, wt% P の含有量の影響 S の含有量の影響 図 3 降伏点に及ぼす化学組成の影響 注)高温下での強度を常温下での強度で規準化して、強度の温度依存性を表した曲線 研究担当者 三浦 直樹(材料科学研究所 構造材料領域) 問い合わせ先 電力中央研究所 材料科学研究所 研究管理担当スタッフ Tel. 046-856-2121(代) E-mail : [email protected] 報告書の本冊(PDF 版)は電中研ホームページ http://criepi.denken.or.jp/ よりダウンロード可能です。 [非売品・無断転載を禁じる] © 2014 CRIEPI 平成26年4月発行 13-013
© Copyright 2024