CAEP Steering Group Meeting 2014に参加して

工業会活動
CAEP Steering Group Meeting 2014に参加して
1.はじめに
・メンバー:23ヵ国の政府(アルゼンチン、
2014年9月15日から19日までの5日間、
デンパ
オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、
サール(インドネシア)にてCAEP(Committee
エジプト、フランス、ドイツ、インド、
on Aviation Environmental Protection:航空環境
イタリア、日本、ニュージーランド、ポー
保 全 委 員 会)Steering Group Meeting(以 下
ランド、ロシア、シンガポール、南アフ
SG)が 開 催 さ れ た。日 本 航 空 宇 宙 工 業 会
リカ、スペイン、スウェーデン、スイス、
(SJAC)のメンバー3名とICCAIA(International
チュニジア、イギリス、ウクライナ、米国)
Coordinating Council of Aerospace Industry
・オブザーバー:6ヵ国の政府(ギリシャ、
Association)の一員として参加した。
CAEPは、ICAO(International Civil Aviation
インドネシア、ニュージーランド、ノル
ウ ェ イ、ト ル コ、UAE)、10 団 体(EU、
Organization)総会の開催サイクルに合わせ3
IATA、ICCAIA等)
年ごとに本会議が開催される。次回本会議
・Working Group/Task Force
は 2016 年 で あ る が、そ の 間 は 年 に 一 度 SG
CAEPが決めた各課題について、検討を
(Steering Group Meeting)が開催されて、各
行い対応の候補を立案する組織。各WG/
WG(Working Group)からの問題提起に対し
TF内に専門領域を定めたTask Groupが存
てSGとして意思決定を行い、CAEP本会議に
在する。
上程する仕組みとなっている。CAEPの決定
Working Group 1(WG1):
は、その後ICAO理事会の検討と承認を受け、
Aircraft Noise Technical Issues
ICAO総会にて承認される。
Working Group 2(WG2):
CAEPの組織の概要は以下の通り。
Airports and Operations
(出典:ICAO/ environmental-protectionホームページ)
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平成26年11月 第731号
写真1 会場外観
写真2 議場の様子
Working Group 3(WG3):
て進められるが、昨年の39件から56件に大幅
Emissions Technical Issues
に増加していたこともあり密度の濃い会議に
Alternative Fuel Task Force(AFTF)
なった。
Global Market Based Measure Technical
Task Force(GMTF)
・Support Group
Working Group, Task Forceが必要な各種
データベースや解析方法を検討する組織
Aviation Carbon Calculation Support
Group(ACCS)
2.議事内容
(1)CO2関連
航空機の排出するCO2 に関わる規制を制定
する為に、ICAO方針を受けて2010年にCAEP
がWG3の中にCO2 Task Groupを設立した。検
討にあたってはFESGとMDGもデータ収集・
Impact and Science Group(ISG)
解析やモデリングでサポートしている。日本
Modeling and Database Group(MDG)
からはSJAC会員企業2名がCO2 Task Groupに
Forecasting and Economic Analysis
参加している。CAEPの最優先事項であるCO2
Support Group(FESG)
関連議題はWP56件中、17件(一部重複あり)
と最も多くの議題を占めており、時間も多く
今回のSG参加者は総勢約130名であり、日
使われた。
本からは国土交通省航空局の安全部 航空機安
全課 航空機技術基準企画室長、同局航空戦略
課 地球環境保全調査官の2名をはじめ、
(一社)
スケ ジ ュ ー ル 目 標:2015 年 内 に 航 空 機 の
CO2 排出基準をAnnex 16-Volume Ⅲ案と
空港環境整備協会から2名、JALおよびANAか
してまとめ、2016年のCAEP本会議で制
ら各1名、GMTF内のTask Groupの一員として
定されることが当面の目標である。施行
三井物産戦略研究所から1名、SJACから4名と
開始は各国の国内ルールの制定を見込ん
の合計で11名が参加した。
で2020年または2023年を予定している。
今回の議長はオーストラリアから、副議長
規制値の設定方法:巡航時の燃費と機体の
は南アフリカから選出された。会議は事前に
サ イ ズ を 組 み 合 わ せ た 指 標(M e t r i c
提出されていたWorking Paper(WP)に沿っ
Value)と最大離陸重量の相関で設定さ
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工業会活動
(出典:ICAO/environmental-protectionホームページ)
ICAO/CAEP Emission年表
れ、計測は重量に応じた3ポイントとす
る。施行後に製造中の機体(In-Production
ることが、CAEP/9で既に合意されている。
以下InP)も適用する方向で議論されたも
規制値:削減レベルを段階的に示した10案
のの、適用を決定するまでの合意には至
がWG3から提案されているが、今回の
らなかった。また、開始時期・規制値を
SGでは候補の絞り込みには至らなかっ
NTと同じにするかどうか、計測方法に
た。
よっては経済的な影響や試験の合否への
適用機種:現在のところ適用が確定してい
影響の評価など、更に論議が必要と合意
るのは、規制施行後に新型機(New Type
され今回のSGでの判断は見送られた。
以下NT)として開発される機種のみであ
今後の予定:退役と新造機の就航による機
(出典:ICAO ENVIRONMENTAL REPORT 2013)
CO2規制値の設定(離陸重量に応じた3ポイント)
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平成26年11月 第731号
材の変化の予測、それに伴うCO2 排出量
2.2分)、進入(30%推力4.0分)、地上走
の見積もり、InPの認証コストの評価、各
行(7%推力26分)
SOのコスト効果の見積もり等をWG/TF、
規制対象エンジン:現状では26.7kNを超え
Support Groupで進め、直近では本年12月
るターボファン/ターボジェットが規制
または来年1月にCAEPメンバーによる電
値検討対象。暫定基準ではInPも含めて対
話会議が開催される予定。2016年までの
象とするが、正式な基準でInPも含めるか
スケジュールに変更は無い。
は未定。26.7kNを下回るターボファン/
ターボジェットは排出の影響を調査して
(2)PM(Particulate Matter粒状物質)および
いる段階である。
規制方法:従来からの規制方法であるス
NOx関連
PM規制については、2010年からnon-volatile
モークナンバーに準じた規制方法の他、
PM(不揮発性粒状物質、以下nvPM)を対象
nvPMの粒子数や質量等による規制方法
とした定量的な計測手法・規制方法について
を検討中である。
の検討がWG3下に組織されたParticulate Matter
Task Group(PMTG)を中心に進められている。
計測システム:様々なnvPM計測器、サン
プリングシステムを検証中である。
今後の予定:規制値を設定するには、先ず
計測条件:特に交通量の多い空港近辺の高
様々な種類・推力のエンジンで十分な量
度3,000ft以下のLocal Air Qualityの保全を
の精度の高いデータを標準化された計測
目 標 と し て い る の で、以 下 の Landing
器と計測方法で集めることが重要であ
Take-off(LTO)cycleにおけるnvPMが定
る。代表的なエンジンがリストアップさ
められた計測器・計測手法によりエンジ
れ、エンジン試験による計測データ取得
ン試験で測定される。
が計画されている。2015年の次回CAEP
離陸(100%推力0.7分)、上昇(85%推力
SGではエンジン試験状況が報告され、エ
(出典:ICAO ENVIRONMENTAL REPORT 2013)
排出源によるPM粒子の大きさ
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ンジン計測データが十分でない見通しで
が従来と異なる可能性が高いことが指摘
あるCAEP/10段階では正式な基準に先立
されており、今後CAEP/10までに検討が
つ暫定基準が承認を受ける見通しであ
進められる予定である。
る。その後はデータの収集、コスト評価、
基準値案の検討を行ってCAEP/11で正式
な基準が提案され、承認を受ける計画と
なっている。
(3)騒音関連
CAEP/9で承認されたChapter14が2013年5月
にICAO航空委員会にて承認された。主な変
NOx関連:LTOサイクルが計測条件である
更は現行のChapter 4から-7EPNdB騒音レベル
のはPMと同じである。CAEPでは中期目
規制が強化され、また8,618㎏以下の機体では
標として2016年までにCAEP/6から-45%、
最大離陸重量の関数として決定されることで
長期目標として2026年には-60%の削減を
ある。2017年12月31日(55ton未満の機体は
目標としている。希薄燃焼技術等の適用
2020年12年31日)から適用される。
により、最新のエンジンにおいては中期
目標が概ね達成される見通しのため
ヘリコプターおよび無人機:いずれも次回
CAEP/10においてはNOx規制強化は行わ
のSGでCAEP/11の検討課題とするかどう
れず、CO2やPMの基準制定の優先度が高
かをWG1が提案する予定になっている。
いために今回のCAEP SGでは特に議題に
個別議題として欧州・南北アメリカ諸国
ならなかった。しかしながら、希薄燃焼
からヘリコプター騒音に関する現状報告
技術を初めとした最新燃焼方式を採用し
と、国際的な検討が必要ではないかと提
たエンジンにおいてはLTO規制における
案があった。賛成するメンバーが多く、
NOx排出量と巡航時のNOx排出量の関係
検討は継続になった。
(出典:ICAO ENVIRONMENTAL REPORT 2013)
The Progression of the ICAO Noise Standard
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平成26年11月 第731号
無人機に関してはICAO経由で各国に法
もあった。多くの参加者は継続的に参加して
制化する場合の問題点の有無が問い合わ
いる様であり、出来る限り継続参加が望まし
せられており、結果は次回SGで報告され
いと感じた。
る予定である。
今回のホスト国であるインドネシアは前回
のUAEと同様にCAEPのメンバーではなくオ
3.所感
ブザーバーであるが、国内の航空施設の整備
今回のSGは次のCAEP本会議の中間点であ
を積極的に進めていることを会議中や会議後
り、本会議に向けて更に時間とリソースが必
の見学会で繰り返し強調しており、航空産業
要な議題では特に時間をかけて論議された。
育成に対する強い意欲を感じた。我が国も国
メンバーは各国政府を代表であり、お互いの
際的なルール作りに参加する意義が今後増々
出方を探りながら論議が進むので、初めて参
強まることを、今回の会議を通して認識した。
加した私にとっては意図を把握しにくい場面
〔(一社)日本航空宇宙工業会 技術部部長 松田 隆〕
この事業は、オートレースの
補助金を受けて実施したものです。
http://www.ringring-keirin.jp
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