「ベリマークSC」 育苗センターでの普及をめざして

グリーンレポートNo.547(2015年1月号)
現地レポート
宮崎県 発
期待の大型殺虫剤
「ベリマークSC」
育苗センターでの普及をめざして
宮崎県
平成26年10月 3 日付で新規殺虫剤「ベリマークSC」
きゅうり定植後の効果を検討するための試験を行った。
が農薬登録を取得した(写真− 1 )
。本剤は、ジアミド
葉が繁茂する前の鉢上げ後のタイミングで処理を行っ
系のシアントラニリプロール(通称:サイアジピル)を
た結果、定植10日後のミナミキイロアザミウマ、タバコ
有効成分とし、チョウ目、ハエ目、甲虫目害虫のほか、
コナジラミバイオタイプQの幼虫数を 0 に抑え、高い効
コナジラミ類、アザミウマ類といった吸汁害虫にも効果
果が認められた(表− 1 )
。なお、処理後の作物への影
を示すことが特長である。
響はなく、生育は良好であった。
また、有効成分サイアジピルの特長
今回の試験に協力いただいた宮崎県農政水産部営農支
は、浸透移行性を活かした「かん注処
援課の黒木専技から「虫媒性ウイルス病の対策は、育苗
理」が可能な点であり、野菜のかん注
センターでしっかりと防除することが必須であり、
『ベリ
専 用 剤 である「 ベ リ マ ー クSC」 は、
マークSC』の育苗期のかん注は有効な手段となり得る。
コナジラミ類やアザミウマ類、アブラ
今後、ウイルス病媒介抑制効果も見極める必要がある」
ムシ類が媒介するウイルス病の媒介抑
と評価をいただいた。
制効果が期待できる。
また、アグリシー
本剤は、園芸分野における系統のシ
ドの黒木さん(写真
ェアアップにつなげるきっかけとなる
重要な剤である。そこで、平成26年
6 ∼ 7 月、育苗センターにおいてかん
−2)
からは「今回の
写真−1 野菜の
かん注専用剤
「ベリマークSC」
試験で、
『ベリマー
クSC』の高い効果
注処理をJAグループ主導で普及することを目的として、 を実感できた。この
写真−2 アグリシードの黒木さん
JA宮崎経済連、宮崎県、取扱いメーカーのクミアイ化
剤をかん注すれば、
学工業㈱と育苗センターであるジェイエイ・アグリシー
苗の出荷まで害虫防除をしなくて済むのは魅力的だ。し
ド㈱(以下、アグリシード)の協力のもと、普及性の確
かし、育苗の作業工程に組み込むには、育苗期全般を通
認試験を行った。
じて使用でき、かつ処理薬量も幅があるほうが使いやす
い。今後、現場の実態に合った登録拡大が期待される」
年間約800万本の苗を出荷
との見解があり、今回の試験を通じて育苗センターで普
アグリシードは、JA児湯、JA尾鈴、JA西都、JA
及させるための課題も明らかになってきた。
宮崎経済連が出資する育苗センターである。この 3 JA
育苗センターの経費は人件費の占める割合が高く、い
に加え、県下の全JA、一部県外にも苗を供給しており、 かに作業を省力化、効率化できるかが課題となる。今後、
年間約800万本の苗出荷実績を持つ。そのうち、宮崎県
育苗センターでの省力化に寄与すべく、各育苗センター
の主力作物であるきゅうりで約210万本、ピーマンで約
の実態に合った省力的な使用方法を検討し、普及に向け
90万本の出荷実績があり、果菜類の占める割合が高い。
て取り組んでいきたい。
宮崎県のきゅうり栽培では、平成23年に本県で発生が
確認されたミナミキイロアザミウマ
【全農 九州肥料農薬事業所 肥料農薬課】
表−1 きゅうり定植後の各種害虫に対する「ベリマークSC」の効果
が媒 介 するメ ロ ン 黄 化 えそ病
(MYSV)が問題となっており、育
苗段階からの徹底防除が求められて
いる。
普及性確認試験で効果を実感
「ベリマークSC」をかん注処理し、
供試薬剤・処理方法
処理時期
ベリマークSC
定植8日前
400倍 25ml/株 かん注 (鉢上げ後)
慣行区(A粒剤)
定植15日前
1g/株 育苗期株元散布 (接ぎ木時)
無処理
株当たり寄生虫数(定植10日後)
ミナミキイロアザミウマ
タバココナジラミバイオタイプQ
成虫
幼虫
成虫
幼虫
1.7
0.0
0.2
0.0
0.7
0.7
0.0
0.0
1.5
2.1
0.9
0.3
供試作物:きゅうり 播種:6月4日 接ぎ木:6月11日 鉢上げ:6月18日 定植:6月26日
1区5株 連制なし アグリシードで育苗後、
土耕温室に定植した
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