[無断転記不可] 平成25年度スーパーバイザー事業報告書 豊かな心情を育み、主体的に行動できるたくましい幼児児童生徒を育てる ~聴覚障がい児のニーズに応じた教育内容の工夫(キャリア教育に視点を当てて)~ 鳥取県立鳥取聾学校 1 ① テーマ設定の理由 鳥取聾学校とは ・ 聴覚障がい者である幼児児童生徒等に対する教育を行う特別支援学校 ・ 明治43年創立。平成22年度には創立100周年を迎えた。 ・ 幼稚部、小学部、中学部、高等部、地域支援部(教育相談及び通級指導 等を実施)の5つの部により構成。西部地区にひまわり分校がある。 <鳥取聾学校教育の基本方針> 聴覚障がい児一人一人の教育的ニーズに対応した適切な教育を行 い、豊かな心とたくましく生きる力を育てる。 【在籍幼児児童生徒数】 本校 ひまわり分校 幼稚部 6名 2名 小学部 4名 6名 中学部 5名 5名 高等部 5名 計 20名 13名 (2)幼児児童生徒等の実態 ◎明るく、人との関わりを好み、それを求めている。 △同年代の友だちとの関わりや社会とのつながりが希薄になりがちである。 △ 基 礎 学 力 の 定 着 、言 語 獲 得・拡 充 に つ い て は 知 的 発 達 や 聞 こ え な ど 、実 態 に応じて課題が異なる。 (3)校内研究体制 ○学校教育の基本方針 ○学校の研究テーマ 豊かな心とたくましく生きる力をもつ子ども 豊かな心情を育み、主体的に行動できるたくましい幼児児童生徒を育てる ~聴覚障がい児のニーズに応じた教育内容の工夫~ ○大切にした点 一貫した教育・鳥取聾学校としての系統的段階的指導 ○研究方法 地域支援 幼稚部 小学部 中学部 高等部 5 つ の 部 を 縦 割 り と し 、3 グ ル ー プ(「 学 ぶ 」 「知る」 「 表 す 」で 研 究 を 実 施 。 [無断転記不可] ① 「学ぶ」グループ 確かな学力を培うために、ことば、かず、国語科、算数・数学科を通して 研究を進める。基礎基本の定着を図るための既習事項の確認や児童生徒自身 による自己評価、つまずきの記録など授業の質が高まるように授業改善を行 う。 ② 「知る」グループ 乳幼児期から高等部までのキャリア発達支援の段階表を作成する。本年度 は「自己理解・自己管理能力」に特に視点を当て、自立活動や教育相談活動 の中で研究を進める。豊かな社会自立を目指すために、授業実践を蓄積しな がらよりよい支援方法、指導内容等を検討する。 ③ 「表す」グループ 伝 え 合 う 力 を 育 成 し て い く た め 、朝 の 会( 幼 稚 部 )、音 楽 科 、体 育 科 の 集 団 での活動を通して研究を進める。乳幼児期から高等部までの伝え合う力の段 階表や年間目標のシートを作成する。日々の授業においては、幼児児童生徒 の主体的な学習活動を目指し、授業実践の記録を蓄積しながら成果と課題を 検討し、授業改善を図る。 本研究会における発 表 内 容 は 、「 知 る 」 グ ル ープの取り組みを中心 にまとめた。 幼児児童生徒の課題 を 改 善 す る た め に 、地 域 支援部(乳幼児教育相 談 )か ら 高 等 部 ま で の 組 織 的 、系 統 的 な キ ャ リ ア 教育の取り組みを推進 していく必要があると 考 え た 。そ こ で 、は じ め に 、本 校 の 乳 幼 児 児 童 生 徒 の キ ャ リ ア 発 達 を 支 え て い く た め に 、各 発 達 段 階 に 沿 っ て 育 て た い 姿( 力 )を 検 討 し 、キ ャ リ ア 発 達 支 援 段 階 表 を 作 成 し た 。次 に 、 学 校 全 体 と し て 組 織 的 に キ ャ リ ア 教 育 を 推 進 し て い く た め に 、キ ャ リ ア 教 育 全 体 計 画 を 作 成 し て 、卒 業 後 を 見 通 し た 一 貫 性 の あ る キ ャ リ ア 教 育 の 実 践 が 行 え る よ う に し た 。そ し て 、最 後 に 全 体 計 画 や 段 階 表 に 基 づ い た 具 体 的 な 取 り 組 み を 積 み 重 ね る こ と と し た 。授 業 実 践 で キ ャ リ ア 発 達 の 全 体 に 視 点 を 当 て て 取 り [無断転記不可] 組 ん で も 研 究 の 深 ま り が 難 し い た め 、本 校 の 乳 幼 児 児 童 生 徒 の 一 番 の 課 題 で あ る 、聴 覚 障 が い を 含 め た 自 己 へ の 肯 定 的 な 理 解 と い っ た キ ャ リ ア 教 育 で 育 成 す べ き『 自 己 理 解・自 己 管 理 能 力 』の 育 ち に 焦 点 を あ て た 授 業 実 践 を 行 う こ と に し た 。特 に 、自 分 の 障 が い に つ い て 正 し く 理 解 で き る よ う な 指 導 内 容 や 、主 体 的 な 学 び を 引 き 出 す 指 導 の 工 夫 に つ い て 研 究 を 行 っ た 。な お 本 研 究 は 3 年 間 取 り組み、今年度は特に授業実践を中心に取り組んでいる。 2 研究方法 (1) キャリア発達支援段階表の作成・・・1 年次 (2)キャリア教育全体計画の作成・・・・2年次 (3)授業実践・・・・・・・・・・・・・3年次(今年度) APDCA サ イ ク ル を 活 用 し 、 自 立 活 動 を 中 心 に 以 下 の よ う に 研 究 を 行 っ た 。 ① Assessment: 個 別 の 支 援 計 画 ② Plan : 段 階 表 『 自 己 理 解 ・ 自 己 管 理 能 力 』 と 関 連 付 け た 指 導 目 標 の 設 定 と指導計画の作成 ③ Do :自立活動を中心に全学部で研究授業の実施 ④ Check : ワ ー ク シ ョ ッ プ 型 授 業 研 究 会 の 実 施 →“授業参観シート”を活用し、参観の視点の焦点化 →付箋を使って参観者全員で授業分析 →“ 授 業 分 析 ワ ー ク シ ー ト ”を 活 用 し 、授 業 改 善 に 向 け て グ ル ー プ 協議および情報の共有化 →“授業ふりかえりシート”の作成による記録の蓄積と共有化 ⑤ Action :“ 授 業 振 り 返 り シ ー ト ” に 基 づ く 授 業 改 善 、 目 標 の 見 直 し 3 取り組みの概要 (1)キャリア発達支援段階表 乳 幼 児 児 童 生 徒 の キ ャ リ ア 発 達 を 支 援 す る た め に 、「 人 間 関 係 形 成 能 力 ・ 社 会 形 成 能 力 」な ど 4 つ の 能 力 に よ っ て 構 成 し た キ ャ リ ア 発 達 支 援 段 階 表 を 作 成 し 、育 成 し た い 能 力 や 態 度 を 明 確 に し て 実 践 に 活 か せ る よ う に し た 。各 発 達 段 階 に 沿 っ て 育 て た い 姿( 力 )を 検 討 し 、実 際 に 活 用 し て 改 訂 し て い き な が ら 現 在 の 段 階 表 に 至 る 。〔 別 添 資 料 ① 〕 (2)キャリア教育全体計画 自立に向けたよりよい社会参加と豊かな心の育成という学校教育目標に 向 け 、キ ャ リ ア 教 育 全 体 計 画 を 作 成 し た 。キ ャ リ ア 教 育 の 目 標 、各 学 部 の キ ャ リ ア 教 育 の 重 点 目 標 な ど 明 示 し 、組 織 的 、系 統 的 な 取 り 組 み が 推 進 し て い け る よ う に し た 。〔 別 添 資 料 ② 〕 [無断転記不可] (3)授業実践 ①各学部による授業実践(授業研究会の設定) 学部 地域支援部 幼稚部 小学部 クラス 2歳児 3歳児 第1学年 教科・領域等 教育相談活動 朝の会 自立活動 中学部 第3学年 自立活動 高等部 第2学年 自立活動 ② ア 活動・題材名 からだを使って遊ぼう 朝の会 たいせつなほちょうきのこと しりたいな 今の僕たちって? ~修学旅行から自己理解を深める~ 自分に合った対処法を考えよう 業実践における成果と課題 小学部第1学年 自立活動 ・補聴器の管理の仕方がわかる。 【 ※ 自 立 活 動 3 - (3)、 キ ャ リ ア 発 達 支 援 段 階 表 (B)- Ⅱ - ウ 】 題材目標 ・補聴器や人工内耳の装用の必要性に気づく。 【 ※ 自 立 活 動 3 - (3)、キ ャ リ ア 発 達 支 援 段 階 表 (B)- Ⅲ 前 - ウ 】 ・自分の補聴器や人工内耳の各部の名前を知る。 【 ※ 自 立 活 動 3 - (3)、キ ャ リ ア 発 達 支 援 段 階 表 (B)- Ⅲ 前 - エ 】 本時目標 ・補聴器の扱い方が分かり,清潔に保ったり大切にしたり することが分かる。 【 ※ 自 立 活 動 3 - (3)、キ ャ リ ア 発 達 支 援 段 階 表 (B)- Ⅲ 前 - ウ 】 ○ 補 聴 器 を 擬 人 化 す る こ と で 、児 童 の 興 味・関 心 を 高 め た 。 ○補聴器の扱い方について、日頃の学校生活とかかわりの 指導の工夫 深い内容を選ぶことで、児童が普段の生活を振り返りな がら考えることができるようにした。 補聴器の扱い方についてイラストなどの視覚的支援教材 を準備しておくことで、児童の学習への理解を深めること 成果 ができた。また、児童にとって「わかる」手がかりを事前 に準備しておくことで、教師の発問に対して正確に答える ことができ、達成感を得ることができた。 補聴器を適切に扱う必要性への理解をより深めるため に 、「 ~ だ か ら … し よ う 。」 な ど 、 整 理 し た 板 書 の 工 夫 が 必 課題 要である。また、学習したことの足跡を残し、再度振り返 るような機会を設定することで定着を促していく必要があ る。 イ 中学部第3学年 自立活動 ・自 分 の 将 来 の 生 き 方 に つ な が る こ と と し て 自 己 の 障 が い 題材目標 認識を深め、問題解決に取り組もうとする。 【 ※ 自 立 活 動 3 - (3)、 キ ャ リ ア 発 達 支 援 段 階 表 (B)- Ⅳ - ウ 】 本時目標 ・修 学 旅 行 で 頑 張 っ た こ と を 振 り か え り 、今 の 自 分 た ち の 姿を客観的に捉え、自己肯定感を高める。 【 ※ 自 立 活 動 3 - (3)、 キ ャ リ ア 発 達 支 援 段 階 表 (B)- Ⅳ - ウ 】 [無断転記不可] 指導の工夫 成果 課題 ○ 自 己 評 価 を 付 箋 に 書 き 挙 げ 、自 己 を 示 す ワ ー ク シ ー ト に 貼 る 活 動 を 通 し て 、自 分 に つ い て 客 観 的 に 捉 え る こ と が できるようにした。 ○修学旅行での様々な人との交流や公共交通機関の利用 などの場面における自分の頑張りについて振り返る中 で、自己肯定感を高めた。 自己を示すワークシートに今の自分についての全体像 を 作 成 す る 活 動 を 通 し て 、自 己 に つ い て 客 観 的 に 捉 え る こ とができた。 修 学 旅 行 中 の 出 来 事 か ら 、自 分 の 障 が い へ の 理 解 を 深 め る よ う な 自 己 分 析 を 行 う 場 面 を 設 定 し 、さ ら に 自 己 に つ い ての理解を深めるような学習にも取り組んでいきたい。 ※自立活動:特別支援学校学習指導要領解説 自立活動編 自立活動の内容より キャリア発達支援段階表:別添資料①より ③ ワークショップ型授業研究会の導入 そ れ ぞ れ の 授 業 に つ い て の 参 観 の 視 点 を“ よ か っ た と こ ろ ” “疑問点” “改善 点 お よ び 具 体 的 な 改 善 策 ”の 3 つ の 観 点 で 付 箋 に 記 入 し な が ら 、授 業 分 析 を 試 み た 。初 め て の 取 り 組 み で 、最 初 は 視 点 に つ い て ま と め て い く こ と も 難 し か っ た が 、繰 り 返 し 行 う う ち に 職 員 も 慣 れ 、活 発 な 意 見 交 換 が で き る よ う に な っ て き た 。ま た 、授 業 分 析 の 結 果 を“ 授 業 振 り 返 り シ ー ト ”に ま と め 、全 学 部 で 情 報 共 有 す る こ と で 学 校 全 体 の 取 り 組 み と し て の 意 識 を 高 め る こ と が で き た 。さ ら に 、教 育 セ ン タ ー よ り 指 導 主 事 の 派 遣 を 依 頼 し 、ワ ー ク シ ョ ッ プ 型 授 業 研 究 会 の 方 法 に つ い て も 学 ぶ 機 会 を も っ た 。そ し て 、ど の 職 員 が フ ァ シ リ テ ー タ ー に な っ て も 会 が 効 果 的 に 進 め ら れ る よ う に 職 員 の 意 識 や 技 能 を 高 め た 。一 方 で 、 参 観 の 視 点 の 焦 点 化 に 不 十 分 さ が あ っ た た め に 、研 究 テ ー マ に 迫 る 自 己 理 解 に つ い て 十 分 に 深 め る に 至 ら な い こ と も あ っ た 。今 後 は さ ら に“ 参 観 シ ー ト ”を 改善していく必要があると考える。 4 スーパーバイザーの役割 スーパーバイザーに金沢大学人間社会研究域学校教育系武居渡准教授を招聘 し、3回本校に来校していただき、指導助言をいただいた。 キ ャ リ ア 発 達 支 援 段 階 表 で は 各 学 部 か ら で た 項 目 を 見 て い た だ き 、本 校 の 教 育 と し て の 系 統 的・段 階 的 取 り 組 み に な っ て い る か 、一 貫 性 の あ る も の に な っ て い る か な ど を 見 て い た だ き 、御 意 見 を い た だ い た 。日 々 、実 践 を し て い る に も か か わ ら ず 抜 け 落 ち て い た 項 目 等 に つ い て も 御 指 摘 い た だ き 、加 筆 修 正 を 加 え な が ら 本 段 階 表 の 完 成 に 至 っ た 。さ ら に 、キ ャ リ ア 教 育 全 体 計 画 と の 整 合 性 も 見 て い た だき、より活用しやすいものとなっていった。 ま た 、キ ャ リ ア 発 達 支 援 段 階 表 が 作 成 し た だ け に と ど ま ら な い よ う に 、個 別 の 教 育 支 援 計 画 と 関 連 付 け て 活 用 す る よ う に 御 指 摘 を い た だ き 、APDCA サ イ ク ル の Assessment で 関 連 付 け て い く こ と と し た 。ま た 、キ ャ リ ア 発 達 支 援 全 体 を 取 [無断転記不可] り 組 む と 研 究 が 深 ま ら な い の で 、本 校 の 乳 幼 児 児 童 生 徒 の 実 態 に 応 じ て 、一 番 課 題 で あ る 項 目 に 焦 点 を 絞 っ て 取 り 組 む こ と を 御 指 摘 い た だ き 、今 年 度 は「 自 己 理 解・自 己 管 理 能 力 」に 視 点 を あ て て 実 践 を 行 っ た 。ま た 、実 践 す る 教 育 活 動 に つ い て も 絞 っ て 取 り 組 ん だ 方 が 研 究 が 深 ま り や す い と の 御 指 導 を い た だ き 、教 育 相 談 活 動 と 自 立 活 動 で 実 践 し て い っ た 。そ し て 、全 て の 学 部 の 授 業 を 参 観 し て い た だ き 、い く つ か の 授 業 を ピ ッ ク ア ッ プ し て 授 業 研 究 会 で も 指 導 助 言 を い た だ い た 。 いずれも具体的な助言をいただけたので、即、実践へと繋がった。 ワ ー ク シ ョ ッ プ 型 授 業 研 究 会 の 導 入 に つ い て は 、参 観 者 か ら た く さ ん の 意 見 を 抽 出 で き る こ と 、視 点 を 絞 っ た 協 議 が 行 え る こ と 等 、武 居 先 生 か ら も 高 い 評 価 を いただいた。 5 成果と課題 本 校 に お け る キ ャ リ ア 教 育 が 、組 織 的 系 統 的 に 考 え ら れ 、取 り 組 ま れ る よ う に な っ た こ と は 大 き な 成 果 で あ る と 言 え よ う 。特 に 視 点 を 当 て た キ ャ リ ア 発 達 支 援 段 階 表 の「 自 己 理 解・自 己 管 理 能 力 」に つ い て は そ れ ぞ れ の 学 部 で 自 立 活 動 を 中 心 と し て 実 践 し て い っ た 。活 動・授 業 に つ い て グ ル ー プ 全 体 で 参 観 し 、授 業 分 析 し 合 う 中 で 、授 業 改 善 の 視 点 が 明 ら か に な っ て き た 。そ し て 、乳 幼 児 児 童 生 徒 の 「 自 己 理 解・自 己 管 理 能 力 」も 育 っ て き た 。例 え ば 、小 学 部 の 児 童 は 、自 立 活 動 の 授 業 の 中 で 学 習 し た「 話 し て い る 人 を 見 て 聞 く 」と い う よ い 聞 き 方 を 、い ろ い ろ な 場 面 で で き る よ う に な っ て き て い る 。ま た 、高 等 部 の 生 徒 は 、困 っ た と き の 対 処 法 の 学 習 か ら 、『 も っ と 手 話 を 広 め て い ろ い ろ な 人 と 関 わ り た い 』 と 、 よ り よ い 社 会 参 加 に 向 け 、自 分 に で き る こ と に つ い て 考 え 始 め て い る 。子 ど も た ち だ け の 変 容 で は な く 、教 職 員 も 学 部 を 超 え た チ ー ム ワ ー ク の 向 上 が 見 ら れ た 。全 員 参 加 の ワ ー ク シ ョ ッ プ 型 授 業 研 究 会 等 の 取 り 組 み の 中 で 、教 師 間 の 建 設 的 な 意 見 交 換 が 活 発 に な っ て き た 。そ の 中 で 、授 業 改 善 に 向 け た 多 様 な ア イ デ ィ ア の 交 換 が行われ、チームとして一つの授業と向き合うことができた。 今 後 の 課 題 と し て は 、自 立 活 動 に お け る 自 己 理 解 に 関 す る 指 導 に つ い て さ ら に 具 体 的 な 取 り 組 み を 積 み 重 ね る 必 要 が あ る 。そ の 中 で 、 “どの時期に” “どのよう な 内 容 を ”と い う 具 体 的 な 指 導 内 容 の 共 通 理 解 を 各 学 部 そ し て 、学 校 全 体 と し て 行っていくことで系統的な指導ができるようにしていく必要があると考えてい る 。そ し て 、こ の 自 己 理 解 に 関 わ る 指 導 の 系 統 性 と 段 階 表 の 照 ら し 合 わ せ の 中 で 、 より活用しやすい段階表としていく必要がある。 最 後 に 、今 後 も 本 校 に 通 う す べ て の 乳 幼 児 児 童 生 徒 が 自 信 を 持 ち 、将 来 に 夢 や 希 望 を 抱 き な が ら 、未 来 を 切 り 拓 い て い け る よ う な 豊 か な 心 と た く ま し く 生 き る 力を育てる学校づくりを目指して研究を進めていきたい。 [無断転記不可] 【資料①】平成25年度 キャリア発達支援段階表 Ⅰ期 期 前期 キャリア発達の段階 領 域 (A) 人 間 関 係 形 成 ・ 社 会 形 成 能 力 (B) 自 己 理 解 ・ 自 己 管 理 能 力 領域説明 多様な他者の考え 方や立場を理解 し、相手の意見を 聴いて、自分の考 えを正確に伝える ことができるとと もに、自分の置か れている状況を受 け止め、役割を果 たしつつ他者と協 力・協働して社会 に参画し、今後の 社会を積極的に形 成することができ る力 自分の障がいにつ いて正しく理解 し、「できること」 「意義を感じるこ と」「したいこと」 について、社会(対 聾者、対聴者)と の相互関係を保ち つつ、今後の自分 自身の可能性を含 めた肯定的な理解 に基づき主体的に 行動すると同時 に、自らの思考や 感情を律し、かつ、 今後の成長のため に進んで学ぼうと する力 (C) 課 題 対 応 能 力 仕事をする上での 様々な課題を発 見・分析し、適切 な計画を立ててそ の課題を処理し、 解決することがで きる力 (D) キ ャ リ ア プ ラ ン ニ ン グ 能 力 「働くこと」の意 義を理解し、自ら が果たすべき様々 な立場や役割との 関連を踏まえて 「働くこと」を位 置付け、多様な生 き方に関する様々 な情報を適切に取 捨選択・活用しな がら、自ら主体的 に判断してキャリ アを形成していく 力 鳥取県立鳥取聾学校 後期 人格形成の基礎と人間関係の基盤形成の時期 能力における要素 他者の個性を理解する力 他者に働きかける力 コミュニケーションスキル チームワーク リーダーシップ 障がいの自己認識力 自己の役割の理解 前向きに考える力 自己の動機づけ 忍耐力 ストレスマネジメント 主体的行動 情報の理解・選択・処理等 本質の理解 原因の追及 課題発見 計画立案 実行力 評価・改善 前期 人間関係の構築・意思決定に かかる基盤形成の時期 後期 進路の探索・選択にかかる 基盤形成の時期 Ⅳ期 Ⅴ期 現実的探索と暫定的選択 の時期 現実的探索・試行と 社会的移行準備の時期 一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力・態度 ア 自分の思いを言葉や手話等を 使って表現する。 イ 相手の話を最後まで聞いて理 解しようとする。 ウ 友だちと仲良く遊び、生活の きまりや遊びのルールを知り、 守る。 ア 自分が知りたいことや取り組 みたいことを選択して、きちん と伝える。 イ 相手の話を最後まで聞く。 ウ 友だちと協力し、助け合いな がら学習や活動に取り組む。 エ 友だちや交流校などの児童と のかかわりを楽しむ。 ア 他者の意見を踏まえて、状況 と場に応じて、自分の考えを伝 える。 イ 相手の考えを正確に聞き、理 解する。 ウ 友だちと協力し、尊重し合い ながら学習や活動に取り組む。 ア 友だちと悩みや喜びを共有し ようとする。 イ 他者の良さや感情を理解し、 受け止めながら自分の考えを伝 える。 ウ 相手に応じたコミュニケーシ ョン手段を活用しながら積極的 にかかわる。 エ 多様な集団の中で、互いに支 え合いながら役割や責任を果た そうとする。 ア ア 心地よい働きかけ ア 感覚遊びや手指を ア 自分の好きなことややりたい ことを進んでやろうとする。 を受けながら、母親や 使った遊びを楽しむ。 イ 補聴器や人工内耳をつけてい 家族に親しみを持ち、 イ 大人に見守られな る人とつけていない人がいるこ 情緒が安定する。 がら補聴器の着脱や とに気づき、補聴器等が大切な イ 補聴器に慣れ、音や 電池のチェックをし ものであることを知る。 ウ 補聴器等の管理の仕方がわか 呼びかけに反応する。 ようとする。 る。 ウ 周りのものに興味 ウ 身振りや簡単なジ エ 簡単な手話やキューサインを を持って、見たり触れ ェスチャーを使って 使うと、自分の思いが相手に伝 たり口に入れたりす 自分の伝えたいこと わることがわかる。 る。 を表現できることに 気づく。 エ 身近な自然と触れ 合う中で様々なこと に興味や関心をもつ。 ア 自分の得意なことや好きなこ とについて理解する。 イ 自分のできること、やりたい ことに進んで取り組む。 ウ 補聴器、人工内耳の装用の必 要性に気付く。 エ 自分の補聴器や人工内耳の種 類と名称を知り、状況に応じて 着け外しをすることができる。 オ 手話やキューサイン、筆談等 のさまざまなコミュニケーショ ン手段があることを知る。 ア イ 自分の長所、短所を知る。 学習やいろいろな活動を通じ てできるようになったことに自 信を持ち、さらに進んで取り組 もうとする。 ウ 補聴器、人工内耳のしくみや 必要性について他者に説明でき る。 エ きこえのしくみを理解し、オ ージオグラムを見て、自分のき こえの特徴を知る。 オ 手話やキューサイン、筆談、 指文字等の自分に必要なコミュ ニケーション手段がわかる。 カ よりよい生活実現のために、 自分にとってどのような支援が 望ましいかを知る。 ア イ 自分の良さや個性を理解する 自分のきこえについて把握す るとともに障がいに起因する身 近な諸問題について説明でき る。 ウ 自らの将来や進路に関わる課 題を認識し、主体的に解決して いこうとする。 エ 様々な福祉制度や福祉サービ ス等に関する情報を自らの生活 でどのように活用できるか考え る。 ア ア 活動のはじめとお わりがわかる。 ア 行事や日々の活動について、 見通しを持ち、課題に対してよ りよい方法や手順を選択した り、試行錯誤したりしながら取 り組む。 イ 学習や生活における目標を適 切に設定し、達成のために計画 を立てながら進める。 ウ 学習の成果や生活から得た 様々な経験を、新たな内容や場 面で活かそうとする。 ア 自らの将来の希望や目標を実 現するために課題を見出し、改 善するための計画を立てて実行 しようとする。 イ 情報収集の様々な手段を身に つけ、内容を正しく整理しなが ら学習や生活に活かす。 ウ 現在行っている学習と将来の 社会生活との関わりを知る。 ア 身近で働く人々や職業につい ア 卒業生や先輩などの姿や話な て、興味や関心をもつとともに、 どに学び、働くことの大切さや 将来の夢を持つ。 社会でたくましく生きることに イ 係や当番活動について、積極 ついて自分の将来との関わりで 的に関わりやり遂げようとす 考える。 る。 イ 係や当番などで働く意義を理 ウ 家庭での役割を日常的に行 解し、自分の役割を果たす。 う。 ウ 家庭での役割を日常的に行う とともに、進んで自分が出来る ことを見つけ実行しようとす る。 ア ア ア 視線や表情、指さ ア 母親や身近な人と し、発声等で気持ちを のやりとりの中で気 表そうとする。 づいたことや自分の イ 同じ場面で繰り返 気持ちを自分なりの し使われることばか 方法で伝えようとす けになじむ。 る。 ウ 母親や身近な人の イ 友だちに対して関 行動を真似たり、物の 心を持ち始める。 やりとりをしたりし ウ 信頼できる大人の てかかわりを楽しむ。 もとで、友だち同士で 同じ場所で遊ぶ。 ア 活動の見通しを持 って、準備や片づけを しようとする。 イ 実物や写真、絵等を 見て、自分の経験や気 持ちと結び付ける。 ア 日々の活動や行事について話 を聞き、見通しを持って取り組 む。 イ 自分のしたいこと、よいと思 うことなどを考え、行動する。 ウ 困ったことや苦手なこと、手 伝ってほしいこと等を家族や先 生に伝え、あきらめずに取り組 む。 ア ア 道具を使って遊ぶ。 ア ア 自分のことは自分でしようと する。 イ 身のまわりの出来事や物事に 興味を持ち、知ろうとする。 ウ 家族やきょうだいの生活に興 味を持つ。 エ 家庭でのお母さんの仕事に興 味を持つ。 オ 家庭や学校の中で進んで手伝 いをする。 カ よいことと悪いことが分か り、考えて行動しようとする。 ア いろいろなごっこ 遊びを楽しむ。 学ぶこと・働くことの意義や 役割の理解 多様性の理解(生き方) 将来設計 選択 行動・改善 Ⅲ期 Ⅱ期 行事や日々の活動について、 見通しを持って積極的に自分の 課題に取り組む。 イ 学習やいろいろな活動につい て、自分なりに目標を決める。 ウ 興味のあることや知りたいこ とを先生と一緒に調べ、情報を 得る方法を知る。 具体的経験(職場体験学習等) を通して勤労の意義や働く人々 の思いを知り、自分の将来につ いて考える。 イ 先輩たちの生き方について知 り、将来の自分の生き方につい ての展望を持つ。 ウ 集団における役割の意義を理 解し、責任を持って自分の役割 を果たす。 エ 進路計画を立てる意義や方法 を理解し、自分の目指すべき将 来を暫定的に計画する。 互いにわかり合い、支え合え る友人を得る。 イ 自己の思いや意見を適切に伝 え、他者の意思等を的確に理解 する。 ウ 多様な他者と場の状況や相手 に応じた適切なコミュニケーシ ョンを図る。 エ リーダー・フォロワーシップ を発揮し、よりよい集団形成を 目指してチームワークを高め る。 オ 社会規範やマナー等の必要性 や意義を体験的に理解し、習得 する。 障がいから生じる社会生活で のトラブルについての対処方法 を理解する。 イ 自分の個性を活かし役割を果 たしていくうえで、必要な支援 等について検討する。 ウ 聴覚障がい者としての社会的 立場を認識しながら学校・社会 において自分の果たすべき役割 を自覚する。 エ 障がい者雇用・受験における 措置・各種福祉サービスの制度 等について自分のニーズに応じ て適切に活用できる。 将来設計、進路希望の実現を 目指して課題を設定し、その解 決に取り組む。 イ 多様な選択肢の中から自己の 意志と責任で当面の進路や学習 を主体的に選択する。 ウ 将来設計に基づいて今取り組 むべき学習や活動を理解し計画 を立てる エ 卒業後の進路や職業・産業の 動向について多面的・多角的に 情報を集め、検討する 具体的経験(職場体験学習等) を通して多様な職業観・勤労観 を理解し、自らの進路決定に活 かす。 イ 先輩たちの多様な生き方につ いて知り、将来の自分の生き方 に活かす。 ウ 生きがい・やりがいがあり、 自己を活かせる生き方や進路を 現実的に考える。 エ 職業についての総合的・現実 的な理解に基づいて将来を設計 し、実現に向けて取り組む。 [無断転記不可] 【資料②】平成25年度 鳥取県立鳥取聾学校 キャリア教育全体計画 学校教育の目標 幼児児童生徒の実態 ・聴覚障がいがあり、多様なコミュニケ ーション手段を用いている。 ・限られた人間関係であるため、社会性 が不足しているところがある。 ・個別や小集団で学習する機会が多く、 同年代の友だちとのかかわりを欲し ている。 聴覚障がい児一人一人の教育的ニーズに対応した適 切な教育を行い、知・徳・体のバランスのとれた、 豊かな心とたくましく生きる力を育てる。 関係法規 日本国憲法 教育基本法 学校教育法 学習指導要領 鳥取県の将来ビジョン キャリア教育全体目標 自らの障がいに向き合い、自分の生き方を考えながら、自らの意思と責 任の中で社会の一員としての役割を果たし、社会的・職業的自立に向か う基盤となる能力や態度を育てる。 めざす幼児児童生徒像 キャリア教育方針 ○自己表現のできる幼児児童生徒 ○仲良く進んで働く幼児児童生徒 ○健康で明るい幼児児童生徒 ① ② ③ ④ 幼稚部から高等部までが組織的・体系的に取り組む 一人一人の発達状況の的確な把握ときめ細やかな支援をする。 多様で幅広い他者との人間関係形成のための場や機会を設定する。 体験的な学習活動を効果的に活用する。 各学部におけるキャリア教育の目標 幼稚部 小学部 中学部 高等部 自分の思いや願いをもち、友達や周 自他のよさを見つめ、夢や希望を実 自他を理解し、夢と希望をもって自 一人一人の社会的・職業的自立に向 囲の人と積極的にかかわることので 現するために積極的に取り組む子ど らの意思で進路を切り拓こうとする け、将来への夢と社会の一員として きる幼児を育てる。 もを育てる。 生徒を育てる。 志を抱く生徒を育てる。 キャリア教育指導の領域 人間関係形成・社会形成能力 自己理解・自己管理能力 課題対応能力 キャリアプランニング能力 ・社会生活における望ましい習慣 ・得意なことや好きなことを見つ ・自分のやるべきことやよいと思 ・身近な人の仕事に興味をもち、 や態度を身に付ける。 け、楽しみながら取り組もうと うことを考え、最後までやりき 進んでお手伝いをしようとす 人間関係の構築・意思決定 ・身近な人の話すことをよく聞い する。 ろうとする。 る。 にかかわる基盤形成の時 て、自分の気持ちや考えなどを ・補聴器や人工内耳に関心をも 期 言葉で表現し、伝え合う喜びを つ。 味わう。 幼稚部 ・相手の話を最後まで聴くととも ・将来の夢や希望をもち、やりた ・自分の目標を持ち、達成するた ・いろいろな仕事があることを知 に自分の気持ちや考えを伝え いことに進んで取り組もうと めの計画を立てて実行するこ り、自分にできることを進んで 進路の探索・選択にかかわ ようとする。 する。 とができる。 見つけ、実行しようとする。 各 る基盤形成の時期 ・自分の担当の役割をやりきり、 ・自分のきこえや補聴器、人工内 学 協力して取り組もうとする。 耳の必要性について説明する 部 ことができる。 段 小学部 階 ・他者の考えや立場を理解し、相 ・自分の良さや個性を肯定的に理 ・将来設計を達成するための課題 ・社会の一員として参加するため 中学部 に 手の意見を聴くとともに自分 解し、主体的に行動することが を理解し、適切な計画を立てて には義務と責任が伴うことを お 現実的探索と暫定的選択 の考えを伝えることができる。 できる。 解決することができる。 理解し、多様な情報をもとに自 け の時期 ・自身の立場や状況を理解し、役 ・自分のきこえや障がいの諸問題 身の将来について考えること る 割を果たしながら協力して取 について説明することができ ができる。 目 り組もうとする。 る。 標 ・多様な他者の考えや立場を理解 ・自分の能力・適性を肯定的に理 ・将来設計を実現するための諸条 ・ 「働くこと」の意義を理解し、 し、相手の意見を聴いて自分の 化し、主体的に行動することが 件や課題を発見・分析し、適切 自身の将来について具体的に 現実的探索・試行と社会的 考えを正確に伝えることがで できる。 な計画を立てて解決すること 考え、様々な情報をもとに選 移行準備の時期 きる。 ・障がいから生じる諸問題につい ができる。 択・決定することができる。 ・自分の置かれている状況を受け て適切に対応することができ 止め、役割を果たしつつ他者と る。 協力して社会に参画しようと する。 高等部 キャリア教育推進の基盤 専門性の向上 保護者との連携 ・自主的、主体的な活動を 促す具体的な支援の方 法 ・幼児児童生徒の思いを育 てる進路指導の充実 ・進路研修会 ・連絡帳の活用 ・懇談 ・ケース会議、支援会議 地域との連携 ・交流及び共同学習 ・地域資源の活用 関係機関との連携 校内の組織づくり 啓発活動 ・福祉・医療・労働機関と ・全体計画、段階表の作成 ・学校 HP による発信 の定期的な情報交換 ・学部、学年、校務分掌間 ・関係会議等による活動 ・支援会議の開催 の連携 ・リーフレットの作成 ・他校との連携 ・職場開拓 ・進路開拓
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