熱抵抗について 本書では、お客様におけます熱設計時のご参考のために、弊社での熱抵抗に関する各パラメータの定義、 測定方法などについて解説いたします。 ■背景 一般的に素子のジャンクション温度(Tj)が 10℃上がる毎にデバイスの寿命は約半分になり、故障率は約2倍になるとい われています。Si 半導体の場合では Tj が約 175℃を超えると破壊される可能性があります。これより、Tj を極力さげて 使う必要があり、許容温度(通常 80~100℃)を目標に熱設計を行います。 但し、パワーデバイスのような高出力素子 では Tj をこの許容温度以下に抑えることは実際には困難であり、仕様書に掲示されている許容最高温度の 80%を目安に Tj を設定するのが一般的です。 また、デバイスの外形が同じであっても、そのデバイスのチップサイズ、リードフレームのタブサイズ、実装基板の仕様 等により、熱抵抗値が変化しますので注意が必要です。 ■定義 半導体パッケージの熱抵抗とは、デバイスが1[W]の電力を消費した時に生じる素子とパッケ-ジ 表面や周囲雰囲気との温度差で次の式で表されます。 Ta Tc1 θja Tj Ta Pd jt Tj TC1 Pd θjc Tj TC 2 Pd θca θja Tj ψjt θjc Tc θca Ta 図1 表1 パッケージの熱抵抗 用語の定義 項目 定義 θja ψjt θjc θca Tj Ta Tc1 Tc2 Pd ジャンクション温度(Tj)と周囲温度(Ta)間の熱抵抗 ジャンクション温度(Tj)とケース表面温度(Tc 1)間の熱抵抗 ジャンクション温度(Tj)とケース裏面温度(Tc 2)間の熱抵抗 ケース温度(Tc)と周囲温度(Ta)間の熱抵抗 ジャンクション温度 周囲温度 ケース表面(マーク面)温度 ケース裏面温度 最大許容電力 Ver.2014-09-03 -1- 熱抵抗について ■ジャンクション温度(Tj)の検証方法(ψjt は既知) 次の方法でジャンクション温度(Tj)をおおよそ見積もることができます。 ① 始めに IC の消費電力(P)を求めます。 ② 次に実際のセット時の環境条件でケース表面温度 Tc1 を放射温度計や熱電対で測定します。 ③ 求めた Tc1 を下の式に代入することで算出できます。 Tj jt P TC1 前述の通り、Tj が許容最高温度の 80%になるように熱設計することをお勧めいたします。 注) 弊社測定のθja,ψjt は JEDEC 規格に準拠した基板に実装したときの値であり、フットパターンサイズ,基板の 材質、基板サイズ,基板上の配線率により、若干異なることがありますので十分注意する必要があります。 ■熱抵抗測定法 弊社での熱抵抗の測定法は[JEDEC 規格]に準拠し、次のとおりです。 [測定基板] 下図に測定基板の概略を示します。詳細は EIA/JEDEC 規格 EIA/JESD51-3/-5/-7 でご確認願います。 A=76.2mm B=114.3mm 1.57mm 1mm 銅箔 [ 表面 ] 1 mm [ 裏面 ] 2 層基板 G=1.98mm 1.6mm H=2.54mm [ 表面 ] C=9.53mm E=2.39mm D=3.96mm F=74.2mm A 銅箔 1 銅箔 2 A [ 裏面 ] 0.25mm≦A≦0.55mm 4 層基板 図2 測定基板概略図 実装基板 :EIA/JESD51-3/-5/-7 準拠、FR-4 基板サイズ:2 層 114.3×76.2mm、厚さ 1.57mm、 4 層(内面銅箔有) 114.3×76.2mm、厚さ 1.6mm 注)4層基板は内面に銅箔 1,2(サイズ:74.2×74.2mm、厚み:35um)を適用しています。 -2- Ver.2014-09-03 熱抵抗について [TEGチップ] 弊社では熱抵抗測定に特別に準備された Thermal Test-Element-Group(以下サーマル TEG)というチップを用いて います。それは抵抗素子とダイオードで構成されており、抵抗素子は発熱源とし、ダイオードは温度のセンサーの 役目を果たします。イメージ図、等価回路図の一例を以下に示します。 熱抵抗はチップサイズにより変動しますので弊社では 3 種類のチップサイズを所持しています。 + チップイメージ図 図3 測定基板概略図 等価回路図 [Kファクタ] 熱抵抗を求めるためにはジャンクション温度を知る必要がありますが直接測定することができません。 しかし、ダイオード順方向電圧(VF)の温度依存性を利用してジャンクション温度を知ることができます。 VF は温度の一次関数で表されますが、このときの傾きを K ファクタと呼びます。 K Tj VF [℃/mV] K ファクタ Tj THi TLo VF VHi VLo VF (V) VHi : 高温時のダイオード順方向電圧 VLo : 常温時のダイオード順方向電圧 0 50 100 150 200 周囲温度 (℃) [測定環境] 測定は外部からの風の影響を排除するためにアクリルケースの中で行い無風状態にします(図 4)。 尚、周囲温度は PKG 中心から 25.4mm 下部に取り付けられた熱電対で測定します。 304.8mm 測定 PKG 139.7mm 25.4mm 304.8mm 152.4mm 熱電対 図4 Ver.2014-09-03 測定環境概略図 -3- 熱抵抗について [測定回路] IM IH vH IM VF GND 図 5 測定回路図 [測定タイミング] 1.デバイスを加熱する前に内部ダイオードに IM 電流(1mA)を流し VF0 を測定します。 2.内部抵抗に加熱電圧 VH を一定時間印加し飽和させ、この時の IH を測定します。 3.内部ダイオードに IM 電流を流し、VFSS を測定します。 VH IM VF VFSS VF0 図6 測定回路図 注)VH は、最大保存温度(Tstg-max)近辺とその前後合わせて 3 ポイントを設定します。 [熱抵抗計算] 表 2 よりθja やΨjt を導き出します。 表2 熱抵抗の計算式 熱抵抗計算式 [θja 計算式] θja Tj K VF VH IH VH IH [℃/W] VF VF 0 VFSS [Ψjt 計算式] jt Tj Ta TC1 K VF Ta TC1 VH IH VH IH [℃/W] VF VF 0 VFSS [用語] VH:TEG チップ内部抵抗への印可電圧 IH:飽和時の TEG チップ内部抵抗電流 -4- Ver.2014-09-03 熱抵抗について 最大許容電力 Pd [mW] [最大許容電力 Pd] IC の常温(25℃以下)時の最大許容損失は、各 IC の絶対最大定格で消費電力(Pd)として規定されています。 周囲温度が 25℃を超える場合には、各 IC に対応したパッケージの熱低減曲線(ディレーティングカーブ)を することが必要になります。 一般的な熱低減曲線を以下に示します。 125 or 150℃ 25℃ Topr Tj(max) 周囲温度 Ta [℃] 図7 Ver.2014-09-03 最大許容電力 -5- 熱抵抗について ■標準熱抵抗値一覧 各パッケージにおける標準熱抵抗値(無風状態)の一覧を表 3 に示します。 注意事項:表中の値は代表値であり、チップサイズ、フレームのタブサイズ、基板仕様(材質、配線パターン等)等の違 いにより異なります。 表3 PKG DMP8 DMP14 DMP16 DMP20 EMP8 EMP16-E2 SOP8 SOP14 SOP22 SOP28 SOP40-K1 SSOP8 SSOP8-A3 SSOP10 SSOP14 SSOP16 SSOP20 SSOP20-B2 SSOP20-C3 SSOP32 SSOP44 TSSOP54-N1 HSOP82) HTSSOP24-P12) TVSP8 TVSP10 VSP8 VSP10 SC-82AB SC-88A SOT-23-5 (MTP5) SOT-23-6 (MTP6) SOT-89-31)2) QFP32-J2 QFP44-A1 QFP48-P1 LQFP48-R3 LQFP52-H2 QFP56-A1 QFP64-H1 LQFP64-H2 QFP100-U1 TO-252-31)2) PLCC28 Ver.2014-09-03 θja (℃/W) 235 195 195 150 180 110 165 125 120 155 135 270 215 270 225 210 185 200 130 110 110 105 160 115 215 215 210 210 365 355 260 245 200 115 95 65 75 85 105 70 65 55 105 55 熱抵抗値一覧 2層基板 Tj:125℃ Ψjt Pd (mW) (℃/W) 47 425 47 510 47 510 37 665 34 555 21 905 26 605 21 800 18 830 37 645 37 740 42 370 36 465 42 370 38 440 35 475 34 540 34 500 13 765 20 905 20 905 10 950 28 625 14 865 27 465 27 465 33 475 33 475 89 270 89 280 70 380 70 405 67 500 17 865 17 1050 17 1535 9 1330 11 1175 17 950 17 1425 6 1535 5 1815 17 950 10 1815 Tj:150℃ Pd (mW) 530 640 640 830 690 1135 755 1000 1040 805 925 460 580 460 555 595 675 625 960 1135 1135 1190 780 1085 580 580 595 595 340 350 480 510 625 1085 1315 1920 1665 1470 1190 1785 1920 2270 1190 2270 θja (℃/W) 175 150 150 120 125 70 110 80 85 125 105 210 155 210 180 160 140 150 85 70 70 75 50 45 160 160 155 155 255 260 195 175 130 90 75 50 45 65 80 50 50 45 40 35 4層基板 Tj:125℃ Ψjt Pd (mW) (℃/W) 40 570 40 665 40 665 33 830 29 800 18 1425 23 905 17 1250 14 1175 33 800 33 950 36 475 15 645 36 475 33 555 26 625 26 710 26 665 9 1175 14 1425 14 1425 9 1330 12 2000 7 2220 23 625 23 625 25 645 25 645 72 390 73 380 60 510 60 570 65 765 15 1110 15 1330 15 2000 5 2220 11 1535 15 1250 15 2000 5 2000 5 2220 12 2500 7 2855 Tj:150℃ Pd (mW) 710 830 830 1040 1000 1785 1135 1560 1470 1000 1190 595 805 595 690 780 890 830 1470 1785 1785 1665 2500 2775 780 780 805 805 490 480 640 710 960 1385 1665 2500 2775 1920 1560 2500 2500 2775 3125 3570 -6- 熱抵抗について PKG θja (℃/W) 370 295 240 225 225 205 225 205 205 210 345 300 280 280 215 195 150 285 285 295 255 215 180 220 160 145 EPFFP6-A22) EPFFP10-C42) PCSP12-C3 PCSP20-CC PCSP20-E3 PCSP24-ED PCSP32-F7 PCSP32-G32) PCSP32-GD2) EPCSP32-L22) SON6-J1 ESON4-F12) ESON6-H12) ESON8-U12) ESON8-V12) ESON8-W22) QFN24-T1/T2 EQFN12-E22) EQFN12-E42) EQFN14-D72) EQFN16-G22) EQFN12-JE2) EQFN16-JE2) EQFN18-E72) EQFN26-HH2) EQFN24-LK2) 2層基板 Tj:125℃ Ψjt Pd (mW) (℃/W) 59 270 64 335 40 415 40 440 40 440 40 485 24 440 24 485 24 485 29 475 88 285 52 330 42 355 43 355 16 465 21 510 22 665 52 350 52 350 53 335 43 390 22 465 21 555 33 450 15 625 13 685 Tj:150℃ Pd (mW) 335 420 520 555 555 605 555 605 605 595 360 415 445 440 580 640 830 435 435 420 490 580 690 565 780 860 θja (℃/W) 220 160 140 140 130 115 115 115 115 95 260 110 110 110 70 60 75 105 105 95 100 80 70 90 60 65 4層基板 Tj:125℃ Ψjt Pd (mW) (℃/W) 53 450 55 625 33 710 33 710 33 765 26 865 17 865 17 865 17 865 16 1050 69 380 27 905 26 905 26 905 8 1425 8 1665 15 1330 27 950 27 950 26 1050 26 1000 10 1250 11 1425 22 1110 7 1665 8 1535 Tj:150℃ Pd (mW) 565 780 890 890 960 1085 1085 1085 1085 1315 480 1135 1135 1135 1785 2080 1665 1190 1190 1315 1250 1560 1785 1385 2080 1920 注釈 1) 2 層基板上の熱抵抗値(Θja,ψjt)は、JEDEC 規格 JESD51-5 に基づき、銅箔 100mm2 を表層面にレイアウトした時の値です。 注釈 2) 4 層基板上の熱抵抗値(Θja,ψjt)は、JEDEC 規格 JESD51-5 に基づき、基板 にサーマルビアホールをレイアウトした時の値です。 Ver.2014-09-03 -7- 熱抵抗について ■銅箔面積と熱抵抗値の関係 2 層基板における各パッケージの熱抵抗値θja と銅箔面積の関係を図 8 に示します。尚、裏面にヒートシンクがある TO252 と SOT89 は、ψjt も掲載しております。基板表層のレイアウトは表 4、表 5 をご参照下さい。 注意事項:製品の熱抵抗データ標準値であり、チップサイズ、フレームのタブサイズ、基板仕様(材質、配線パタ ーン等)の違いにより、異なります。また、図 8 のデータはサーマルビアホールを適用しておりません。 TO252 200 SOT89 350 180 300 140 熱抵抗値 (℃/W) 熱抵抗値 (℃/W) 160 θja 120 PAT.1 100 PAT.2 80 PAT.3 60 PAT.4 PAT.5 PAT.1 PAT.2 PAT.3 PAT.4 20 PAT.1 200 PAT.2 PAT.3 150 100 Ψjt 40 θja 250 PAT.4 PAT.5 Ψjt PAT.1 50 PAT.2 PAT.3 PAT.5 PAT.4 PAT.5 0 0 0 400 800 1200 1600 0 400 2 1200 1600 2 銅箔面積(mm ) 銅箔面積(mm ) SOT23-5(MTP5)、SOT23-6(MTP6) 400 800 SC88A、SC82AB 400 350 350 θja θja PAT.2 PAT.3 250 PAT.4 200 150 250 50 50 0 0 800 1200 2 銅箔面積(mm ) 図8 Ver.2014-09-03 1600 2000 PAT.4 150 100 400 PAT.3 200 100 0 PAT.1 PAT.2 300 PAT.1 熱抵抗値 (℃/W) 熱抵抗値 (℃/W) 300 0 400 800 1200 1600 2000 2 銅箔面積(mm ) 銅箔面積と熱抵抗値の関係(2層基板) -8- 熱抵抗について 表4 表層基板のレイアウト パッケージ TO252 SOT89 基板レイアウト PAT.1 フットパターン SOT23-5(MTP5) SOT23-6(MTP6) 銅箔 PAT.2 PAT.3 PAT.4 PAT.5 - Ver.2014-09-03 -9- 熱抵抗について 表5 表層基板のレイアウト パッケージ SC88A SC82AB 基板レイアウト PAT.1 PAT.2 PAT.3 PAT.4 表 6 銅箔面積 パッケージ TO-252 基板レイアウト PAT.1 PAT.2 PAT.3 PAT.4 PAT.5 Ver.2014-09-03 SOT-89 SOT23-5(MTP5) SOT23-6(MTP6) SC88A SC82AB 100 mm2 225 mm2 400 mm2 600 mm2 1225 mm2 1600 mm2 - - 10 -
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