水環境学会誌 Journal of Japan Society on Water Environment Vol.37, No.4, pp.145-153(2014) 〈原著論文 ― Original Paper〉 スポンジ担体を用いた傾斜土槽法による有機性汚濁物質と 栄養塩類の同時浄化 生 地 正 人*, 井 上 雄 二* 末 次 綾* * 奥 村 朋 子 出 濱 和 弥** *** 多 川 正 中 矢 雄 二† ¶ Concurrent Purification of Organic Pollutants and Nutrients by the Slanted-Soil-Chamber Method Using a Sponge Carrier Masato KIJI*, , Yuji INOUE*, Aya SUETSUGU* Tomoko OKUMURA*, Kazuya DEHAMA**, Tadasi TAGAWA*** and Yuji NAKAYA† ¶ Yonden Consultants Co., Inc., 1007-3, Mure, Mure-machi, Takamatsu-shi, Kagawa 761-0121, Japan Fisheries Research Agency, 234, Yashimahigashi-cho, Takamatsu-shi, Kagawa 761-0111, Japan *** Kagawa National College of Technology, 355, Chokushi-cho, Takamatsu-shi, Kagawa 761-8058, Japan † Faculty of Agriculture, Ehime University, 3-5-7, Tarumi-cho, Matuyama-shi, Ehime 790-8566, Japan * ** Abstract The Slanted-Soil-Chamber-Method (SSCM) is an energy-saving aerobic purification method. We performed an experiment to elucidate this purification mechanism using a SSC reactor filled with a sponge carrier. This experiment demonstrated concurrent purification of organic pollutants, total nitrogen (T-N) and total phosphorus (T-P) for a hydraulic retention time of 20-50 min. Water and organic pollutants are separated as the gravity-fed wastewater passes through the reactor chamber. Treatment of the dissolved organic pollutants relies upon biological adsorption, which takes approximately 20-50 min. Since biological purification activity within the SSC reactor is high except the winter season, the organic matter that is trapped in the chamber is efficiently decomposed by organisms that are typically found in soil. The SSC reactor weight increased in the winter season and decreased in spring. The extent of T-N and T-P purification was dependent upon heterotrophic microbial utilization. Furthermore, T-N is purified by nitrification/ denitrification, and T-P is purified by trapping the phosphorus-containing soil in the SSC reactor. The advantages of the SSC reactor are that it separates pollutants from water, degrades organic matter, reduces sludge, and simultaneously removes T-N and T-P in the same reactor chamber. Keywords: Slanted Soil Chamber Method (SSCM); Biological adsorption; Energy-saving aerobic purification; Organic pollutants; Nutrients 1.はじめに 土壌の表層は,自然界で最も生物学的浄化活性が高い 場所と考えられる。筆者らは,この構造の再現として底 面が傾斜した薄層構造体に担体を充填したものを傾斜土 槽,これによる水質浄化法を傾斜土槽法(以後,本法) と名づけ,研究開発を行ってきた 1)。原水は,薄層の担 体中を自然流下する間に浄化される。 前報 2)では,同じ担体の傾斜土槽で,実家庭の台所排 水を 2 年 6 ヶ月間連続して浄化し,毎月実施した水質調 査の平均除去率(±標準偏差)は,BOD81 ± 11%,総 窒素(以後,T-N)72 ± 16%,総リン(以後,T-P)82 ± 12%の同時浄化効果が継続することを報告した。よ り高負荷で油脂類(n-HEX)も多い弁当製造工場排水 の浄化 3)では,負荷量収支からの除去率は,BOD80%, T-N27%,T-P59%,n-HEX97%で,T-N・T-P 除去率は低 かった。流入部に近い傾斜土槽では目詰まりが発生し, この状態の槽は,取外して浄化系外に置くことで,過剰 の有機物は分解して目詰まりは解消した。この操作を養 生という。目詰まりが起きる部位の槽は,半年程度の浄 * 株式会社四電技術コンサルタント 〒761-0121 高松市牟礼町牟礼 1007-3 ** 独立行政法人水産総合研究センター 〒761-0111 高松市屋島東町 234 *** 香川高等専門学校 〒761-8058 高松市勅使町 355 † 愛媛大学農学部 〒790-8566 松山市樽味 3 丁目 5 番 7 号 ¶ 連絡先:[email protected] Vol. 37 No. 4(2014) 145 原著論文 Original Paper 䟺䠓䟻 䟺䠔 䟻 㻩㼌㼕㼖㼗㻃㼖㼗㼄㼊㼈 㻳 䊳 䊳 䊳 䊳 䊳 䊳 㻵㼄㼚㻃㼈㼉㼉㼏㼘㼈㼑㼗 Fig. 1 Diagram of the slanted soil-chamber; (A) Cutaway diagram to show chamber interior, (B) Stacked chambers during operation. All dimensions in millimeters. 化期間と養生期間の交互運用が有効であった。本法の研 究課題としては,浄化機構や浄化の必要時間のより詳細 な解明が残されている。 地球温暖化対策に加えて 2011 年 3 月の原子力発電所 の事故以降,省エネルギ−対策は各分野の重要課題と なっている。有機性排水処理分野でエネルギ−消費量が 多いのは, 水中での好気性処理に必要な曝気工程である。 嫌気性処理法 4)と本法は,ともに曝気が不要の有機性排 水処理技術である。両者を用いた低エネルギ−消費型の 有機性排水処理の実証実験を行った。本実験で明らかに なった本法の浄化能力や浄化機構について報告する。本 実験中で用いた嫌気性処理法の結果は別報 5)を参照され たい。 2.実験方法 2.1 浄化対象の原水 嫌気性処理法は,高濃度排水には適しているが,処理 水質が不十分な場合がある。本法は高濃度排水には不適 であるが,BOD 数百 mg・L-1 程度の有機性排水では,良 好な処理水が得られる。本研究では BOD 1000 mg・L-1 を目安に,これ以上を高濃度排水,以下を通常排水とし, 高濃度排水は前段の嫌気性処理法と後段の本法との組み 合わせ,通常排水は本法単独,とした実験を行った。 浄化対象は,醤油製造工場の排水とした。香川県内の A工場では, 活性汚泥法で約 100 m3・d-1 の排水処理を行っ ており,これとは別に排水処理が困難な 50 ∼ 60 L・d-1 の濃厚廃液が発生していた。本実験では,この濃厚廃液 を実験場所へ搬送し,所定の濃度に水道水で希釈調整し たものを原水とした。 前段の嫌気性処理の原水 BOD は,平均 2450 mg・L-1, 最低 896 ∼最高 6440 mg・L-1 であった。この嫌気性処理 水は,平均 154 mg・L-1,最低 15 ∼最高 564 mg・L-1 で, これが高濃度排水実験での本法の原水となる。BOD は 嫌気性処理によって低濃度となり,相対的に T-N と T-P が高濃度となっている。原水の質量濃度の平均値で, BOD を 100 と し た 比 率 は,BOD:T-N:T-P = 100: 168:19 であった。 通常排水実験の原水 BOD は,平均 573 mg・L-1,最低 105 ∼最大 2480 mg・L-1 であった。通常排水実験で最大 値が 1000 mg・L-1 を超過した理由は,本法の BOD 容積 負荷の限界量を求める過負荷実験を行ったためである。 高濃度排水実験と同様の原水比率は,BOD:T-N:T-P = 100:9:1 であり,高濃度排水実験と比べて BOD の 割合が高い。両実験結果より T-N・T-P 浄化と BOD の関 係を考察する。 146 㻶㼈㼆㼒㼑㼇㻃㼖㼗㼄㼊㼈 㻰㼒㼅㼌㼏㼈㻃㼌㼕㼕㼌㼊㼄㼗㼌㼒㼑 㻶㼗㼒㼕㼄㼊㼈㻃㼗㼄㼑㼎 㼉㼒㼕㻃㼈㼉㼉㼏㼘㼈㼑㼗 㼗㼕㼈㼄㼗㼈㼇 㼄㼑㼄㼈㼕㼒㼅㼌㼆㼄㼏㼏㼜 㼅㼜㻃㻸㻤㻶㻥 㻰㼒㼅㼌㼏㼈㻃㼌㼕㼕㼌㼊㼄㼗㼌㼒㼑 㻳 䊳 䊳 䊳 䊳 䊳 䊳 㻳㼄㼕㼗㼌㼄㼏㼏㼜㻃㼗㼕㼈㼄㼗㼈㼇 㼈㼉㼉㼏㼘㼈㼑㼗 㻰㼒㼅㼌㼏㼈㻃㼌㼕㼕㼌㼊㼄㼗㼌㼒㼑 㻳 䊳 䊳 䊳 䊳 䊳 䐖䐗䐘䐙䐚 㻃㻩㼌㼑㼄㼏㻃㼗㼕㼈㼄㼗㼈㼇 㻃㻵㼄㼚 㻃㼈㼉㼉㼏㼘㼈㼑㼗 㻷㼕㼈㼄㼗㼈㼇㻃㼈㼉㼉㼏㼘㼈㼑㼗 㻃㼈㼉㼉㼏㼘㼈㼑㼗 Fig. 2 Diagram showing different configurations of the slanted soil-chamber method experimental apparatus; (A) Highconcentration experiment, (B) Standard-concentration experiment. 2.2 実験装置 �国立高等専門学校機構香川高等専門学校(高松校) において,屋根のある廊下状の場所に,側面をビニール 製温室部材で囲った空間を作り,この中に本法に係わる 実験装置を設置した。 なお, この温室内に加温設備はない。 傾斜土槽の呼び方は,1 個を 1 槽または 1 段,多段積 みにしたものを 1 基,この最上段を 1 段目という。標準 容器とよぶスチロ−ル製の傾斜土槽は,Fig. 1 に示す。 本法の運用は,傾斜地形を利用した大型の浄化装置も可 能であるが 6),薄層構造を利用した多段積みとすること で,コンパクトな浄化装置となる。 2.2.1 高濃度排水実験(嫌気性処理法+傾斜土槽法) 実験装置は,対象の醤油製造工場の濃厚廃液(50 ∼ 60 L・d-1 )の全量処理を目標に設計した。Fig. 2 の左図 に実験装置を示す。UASB 槽の嫌気性処理水は,1 m3 の 原水槽に入る。原水槽からは,直列に配置した前半と後 半の傾斜土槽に注水される。前半と後半の傾斜土槽は同 じ規模と内容で,Fig. 1 の標準容器 9 段積み 6 基で,担 体は宮崎県産の軽石を用いた。各傾斜土槽への注水は, 水位感知型の水中ポンプと,これと連動する移動式注水 装置で行った。移動式注水装置は,注水口が傾斜土槽上 を一定速度で注水しながら移動することで,各基へ均等 注水を行う。水中ポンプの吐出量は,原水槽の水位が変 動しても常に一定(毎分 5 L)に保つように自動制御し た。この注水装置は通常排水実験でも同様のものを使用 した。 2.2.2 通常排水実験(傾斜土槽法のみ) Fig. 2 の右図に実験装置を示す。原水槽(1 m3 )から Table 1 に示す担体等を変えた 5 種類の多段積みに均等 注水を行い, 浄化効果を比較試験する実験装置を設けた。 原 水 槽 か ら の 日 注 水 量 は,900 L・d-1(1 基 あ た り 180 L・d-1 )に設定した。水中ポンプの吐出量は, 毎分 5 L で,1 日の注水は 3 時間で完了し,21 時間は休止した。 傾斜土槽の植種は,2001 年から台所排水の浄化を継続 し,土壌動物ではシマミミズが優占種となっている傾斜 土槽 2)から土壌を採取し,これを 1 基につき 500 g を最 上段に投入した。これは高濃度排水実験も同様に行った。 2.3 実験条件 2.3.1 高濃度排水実験(嫌気性処理法+傾斜土槽法) 原水の通水は,2010 年 1 月 28 日から翌年 2 月 23 日 まで継続し,全積算処理水量は 341 m3,1 基当り 56.8 m3 であった。日処理水量は,200 L から順次増加させ,最 終的には濃厚廃液 50 kg・d-1 を希釈して 2000 L とした。 これは当初目標の処理量とした当該醤油製造工場の濃厚 廃液の日発生量(50 ∼ 60 L・d-1 )に相当する。 水環境学会誌 Journal of Japan Society on Water Environment スポンジ担体を用いた傾斜土槽法による有機性汚濁物質と栄養塩類の同時浄化 嫌気性処理水を原水, 前半と後半の傾斜土槽処理水を, それぞれ中間処理水,最終処理水とした。水質調査は, 2010 年 2 月から翌年 2 月まで,毎月 2 ∼ 3 回の頻度で 実施した。実験終了間際の 2011 年 2 月 4 日に,前半傾 斜土槽の 1・2 段目は,目詰まりのために取替えた。 2.3.2 通常排水実験(傾斜土槽法のみ) 担体は,軽石とスポンジの二種類で,材料試験結果を Table 2,充填状況を Fig. 3 に示す。軽石は高濃度排水実 験と同じである。 スポンジ担体は市販のポリウレタンから 角型(約 20 mm 角) ,棒状(約 20 mm 角,長さ 450 mm) を作成した。実験条件は Table 1 に示す。担体は①と② が軽石,③が角型スポンジ,④と⑤が棒状スポンジであ る。遮水板の高さは①,③,④が 20 mm,②が 60 mm である。傾斜土槽は,①∼④が Fig. 1 の標準容器 9 段積 みで,⑤のみが標準容器の 1/2 厚で底面が波底(谷深さ 9 mm)の薄層タイプを 15 段,上 2 段は標準容器の 17 段積みとした。波底は遮水板と同じ偏流防止効果を期待 した。 原水の通水期間は,2009 年 12 月 22 日から 2011 年 2 月 23 日で,この全期間で実験した①と③の積算処理水 量は 53.6 m3・ 基-1 であった。冬季開始実験は,2009 年 12 月 22 日から Table 1 の①,②,③で開始した。冬季 開始実験の③スポンジ担体が良好という結果より,2010 年 8 月 12 日から Table 1 の④と⑤を追加して夏季開始 実験を開始した。②の注水は 2010 年 7 月で中止したが (水質調査は 6 月 25 日まで) ,②以外は,最終の 2011 年 2 月 23 日まで継続した。冬季開始実験は,冬季に目詰 まりが発生したため 2010 年 4 月 9 日に①,②,③の上 2 段を交換した。これ以外は,全て同じ担体で浄化を継 続した。新しい槽の最上段には,植種として取外した槽 の流出水約 500 mL を散布した。取外した槽は,屋外で 雨水の流入防止用シ−トで覆い,注水も行わない養生を 開始した。 2010 年 7 月 31 日に①と③の 1・2 段目容器が破損する 事故が発生した。この事故は,夏季の高温により濃厚廃 液中にスチロ−ル製容器を溶融させる有機溶媒様の物質 Table 1 Experimental conditions. High䚭䚭 䚭Experiment Standard-concentration experiment 䚭䚭䚭 classification concentration Winter-start experiment Summer-start experiment experiment Condition Average concentration BOD䠌154 10'8/12䡐11/30 09' 12/21䡐10' 6/25 of raw effluent BOD䠌550䟾T-N䠌37.2䟾 T-N䠌259.8 BOD䠌276䟾T-N䠌24.5䟾T-P䠌2.34 -1 T-P䠌3.76 T-P䠌28.83 䟺mg䝿L 䟻 Stage number 䟿 䐖 䐗 䐘 䐙 䐚 Experimental period Carrier Chamber number and configuration 10' 1/28䡐 11' 2/23 09' 12/22䡐 09' 12/22䡐 09' 12/22䡐 10' 8/12䡐 11' 2/23 10' 7/18 11' 2/23 11' 2/23 Square Rectangula Pumice Pumice Pumice r sponge sponge 9 stacked 9 stacked 9 stacked 9 stacked 9 stacked standard×6- standard standard standard standard set×2-grupe 䈓1) 10' 8/12䡐 11' 2/23 Rectangular sponge 17 stacked 䈓2) undulating base and thin layer undulating depth 9 mm Ridge height in 20 mm 20 mm 60 mm 20 mm 20 mm chamber 䈓1) A typical chamber and chamber configuration is shown in Fig. 1. 䈓2) All chambers have an undulating base. The upper two chambers have a standard height of 175 mm. All of the other chambers have a standard height that is half that of the upper two chambers. が生じたためと考えられた。このために濃厚廃液の増量 のみで濃度を増加させることに不安が生じ,これ以降は 濃厚廃液に砂糖も添加して原水濃度を増加させた。破損 容器は交換したが,担体は同じものを継続使用した。 2.3.3 分析方法 水 質 分 析 は,JIS K0102 工 場 排 水 試 験 方 法 に 従 っ た。 測 定 項 目 は,pH,DO,SS,BOD,CODMn( 以 後, COD) , 全 有 機 炭 素(TOC) ,T-N, ア ン モ ニ ア 態 窒 素 (NH4-N) ,亜硝酸態窒素(NO2-N) ,硝酸態窒素(NO3-N) , T-P,オルトリン酸態リン(PO4-P)である。なお,本法 では硝化活性が高く,通常の BOD 測定は困難なため, BOD は全て,N-(2-プロペニル)チオ尿素を添加した 硝化抑制を行った。有機態窒素(Org-N)は,T-N と各 無機態窒素の合計(Inorg-N)の差で推算した。BOD, COD, T-N, T-P は溶解性も測定した (溶解性は D-で示す) 。 3.6 の養生後の生成土壌の分析は, 底質調査方法に従っ た。③の生成土壌の分析試料は,担体のスポンジと容易 に分離採取できたが,①は軽石の屑との分離が困難で, 風乾後 1 mm の篩を通過したものを分析試料とした。 2.3.4 通過時間と重量測定 本法の処理水は,原水の流入によって発生する。通常 排水実験の注水開始時は,約 21 時間処理水は止まって いた状態にある。最上段への注水開始から,最下段の処 理水がほぼ等量の流出状態となるまでの時間を計測し た。これを通過時間という。なお,当日の初期の処理水 には前日分の影響が予想されるため,水質分析用試料の 採水は,最初の処理水流出の 1 時間後から行った。 本法では,活性汚泥法のような水処理工程の後段に汚 泥処理はない。 発生汚泥量の経時変化を把握するために, 毎月 1 回(2010 年 11 月は欠測) ,当日の注水前に全て の槽を取外して個別の槽重量を測定した。また,4 月 9 日から養生中の槽についても,同様に重量を測定した。 3.実験結果および考察 3.1 高濃度排水実験 水質測定結果を Table 3 に示す。なお,表中および以 後の±は,標準偏差を示す。嫌気性処理法の後段に本 法を配置する目的は,嫌気性処理水の水質改善である。 BOD は,UASB 槽処理水は平均 154 mg・L-1(最低 15 ∼ ,後半傾斜土槽の最終処理水は平均 最高 564 mg・L-1 ) -1 33 mg・L (最低 8 ∼最高 93 mg・L-1 )となった。栄養塩 類の除去率は,最終処理水の平均で,T-N は 27 ± 15%, T-P は 11 ± 14%と低かった。 Fig. 4 に原水と各処理水の形態別窒素の推移を示す。 原 水 の 全 窒 素 は 年 間 を 通 じ て NH4-N と Org-N か ら 構 成される。処理水では,春季 4 ∼ 5 月に NH4-N が減少 し て NO2-N が 増 加 し,6 月 以 降 は NO2-N に 代 わ っ て Table 2 Chamber carrier properties before experimental run. Phosphate Density Water Density Poro- IgniAverage adsorption T-N T-C Carrier when cont- of carrier sity tion particle capacity *2) *3) loss material filled *1) ent size 䟺mgP2O5·100g-1) (%) (%) -3 -3 (mm) (kg·m ) (%) (kg·m ) (%) (%) Pumice 532.2 57.7 2.6 79.0 4.0 2670 Sponge 9.5 1.9 0.4 99.3 99.0 <10 *1) Mass per unit internal chamber volume. *2) Mass per unit carrier volume. *3) Percentage of void volume in internal chamber volume. Vol. 37 No. 4(2014) 0.0 0.0 0.4 - 10 6.1 61.4 around20 Fig. 3 Slanted soil chamber filled with pumice carrier (left) and sponge carrier (right). 147 F.T. water *1) S.T.water *2) Removal rate F.T. water S.T.water (-) 29.4 7.1 ±3.6 ±0.2 17.9 8.0 ±7.7 ±0.4 14.3 7.7 ±7.2 ±0.9 W.T. pH - - DO SS -1 -1 COD BOD -1 -1 TOC -1 T-N -1 T-P -1 (mg䡗L ) (mg䡗L ) (mg䡗L ) (mg䡗L ) (mg䡗L ) (mg䡗L ) (mg䡗L ) 0.7 ±0.9 6.5 ±1.9 8.7 ±2.2 DO - 252 ±212 64 ±80 51 ±90 SS 85% ±30% 91% ±41% 216 154 ±92.1 ±128.7 157 50.1 ±89.8 ±37.7 139 32.9 ±90.5 ±19.7 COD BOD 27% 54% ±31% ±33% 36% 66% ±39% ±27% 214 ±76.6 98.8 ±54.3 94.9 ±60.9 TOC 52% ±18% 56% ±20% 260 ±65.8 210 ±59.3 190 ±62.9 T-N 19% ±13% 27% ±15% 28.8 ±10.3 28.1 ±10.9 26.3 ±10.4 T-P 3% ±14% 11% ±14% *1) FT: First-stage treated water. *2) ST: Second-stage treated water. 71PJ㹺/ Raw effluent (treated anaerobically by UASB) Partially treated effluent Final treated effluent 㻲㼕㼊㻃㻐㻱 㻱㻲㻃㻐㻱 㻖 㻱㻲㻃㻐㻱 㻕 㻱㻫㻃㻐㻱 㻗 60 40 20 0 -20 0 100 200 300 400 T-N removal (%) (Υ) Raw effluent pH 80 100 T-P removal (%) W.T. SS removal (%) Conditon 100 BOD removal (%) Table 3 Experimental results for high-concentration treatment conditions. Original Paper D-BOD removal (%) 原著論文 80 60 40 20 0 0 100 200 300 400 100 80 60 40 20 0 -20 0 -40 100 80 60 40 20 0 -20 0 -40 -60 100 200 300 400 100 200 300 400 Time (day) 100 80 60 40 20 0 0 100 200 Time (day) 300 400 䚭䚭䚭䚭䚭䚭䚭䚭䚭䚭䛀㻨㼛㼓㼈㼕㼌㼐㼈㼑㼗㼄㼏㻃㼆㼒㼑㼇㼌㼗㼌㼒㼑㼖䛁 䚭䟽䠌㻃䐖㻃㼓㼘㼐㼌㼆㼈㻃㼆㼄㼕㼕㼌㼈㼕 㻃㻃㻃㻃㻃㻃㻃㻃㻃㻵㼌㼇㼊㼈㻃㼉㼒㼕㻃㼌㼐㼓㼈㼇㼌㼑㼊㻃㼗㼋㼈㻃㼉㼏㼒㼚㻃㼒㼉㻃㼚㼄㼗㼈㼕㻏㻃㻃㻕㻓㻃㼐㼐 䚭䕜䠌㻃䐗㻃㼓㼘㼐㼌㼆㼈㻃㼆㼄㼕㼕㼌㼈㼕 㻃㻃㻃㻃㻃㻃㻃㻃㻃㻵㼌㼇㼊㼈㻃㼉㼒㼕㻃㼌㼐㼓㼈㼇㼌㼑㼊㻃㼗㼋㼈㻃㼉㼏㼒㼚㻃㼒㼉㻃㼚㼄㼗㼈㼕㻏㻃㻃㻙㻓㻃㼐㼐 䚭䚭䚭䚭䟺㼈㼛㼓㼈㼕㼌㼐㼈㼑㼗㻃㼗㼈㼕㼐㼌㼑㼄㼗㼈㼇㻃㼄㼗㻃㻔㻛㻘㻃㼇㼄㼜㼖䟻 䚭䕵䠌㻃䐘㻃㼖㼓㼒㼑㼊㼈㻃㼆㼄㼕㼕㼌㼈㼕 㻃㻃㻃㻃㻃㻃㻃㻃㻃㻵㼌㼇㼊㼈㻃㼉㼒㼕㻃㼌㼐㼓㼈㼇㼌㼑㼊㻃㼗㼋㼈㻃㼉㼏㼒㼚㻃㼒㼉㻃㼚㼄㼗㼈㼕㻏㻃㻃㻕㻓㻃㼐㼐 Fig. 5 Change in chemical parameters over time in the winterstarting experiment. 㻋㻼㼈㼄㼕㻒㼐㼒㼑㼗㼋㻌 Fig. 4 Change in nitrogen species concentrations over the course of the high-concentration experiment. 㻥㻲㻧㻃㼕㼈㼐㼒㼙㼄㼏㻃㻋㻈㻌 㻔㻓㻓 㻜㻓 㻛㻓 㻚㻓 㻙㻓 㻘㻓 㻗㻓 㻖㻓 㻕㻓 㻔㻓 㻓 䐙㻃㻖㻐㼖㼗㼄㼆㼎㻃㼗㼕㼈㼄㼗㼐㼈㼑㼗 䐙㻃㻙㻐㼖㼗㼄㼆㼎㻃㼗㼕㼈㼄㼗㼐㼈㼑㼗 䐙㻃㻜㻐㼖㼗㼄㼆㼎㻃㼗㼕㼈㼄㼗㼐㼈㼑㼗 䐚㻃㻖㻐㼖㼗㼄㼆㼎㻃㼗㼕㼈㼄㼗㼐㼈㼑㼗 䐚㻃㻛㻐㼖㼗㼄㼆㼎㻃㼗㼕㼈㼄㼗㼐㼈㼑㼗 䐚㻃㻔㻚㻐㼖㼗㼄㼆㼎㻃㼗㼕㼈㼄㼗㼐㼈㼑㼗 Refer to Table 2 for experimental condition䡅 for 䐙 and 䐚. 㻔㻙 NO3-N が増加し,翌年 1 月には再び NH4-N が増加した。 本実験結果は,本法では低温期を除けば硝化が活発に進 むことを示している。 3.2 通常排水実験 3.2.1 冬季開始実験 Fig. 5 に 2010 年 10 月 ま で の SS と BOD,D-BOD, T-N,T-P の除去率の推移を示す。 BOD と D-BOD の除去率は,①より②が低かった。② は①の遮水板を 20 mm から 60 mm にしたもので,この 結果は,湛水水深の増加が BOD 浄化には不利に働いた ことを示しており,BOD 浄化には,湛水部よりも遮水 板より上部の好気性部位が機能していると考えられた。 SS は当初から除去され,これはろ過効果によるもの である。①は 199 日目(7 月 9 日) ,③は 227 日目(8 月 6 日)に SS 除去率が低下した。これは本法では,過去 に記録がない水生のイトミミズが大量発生し,処理水に 流出したためであった。陸生のミミズではなく水生のイ トミミズが発生した理由は,2010 年の夏季は猛暑で実 験施設内の最高気温が 50℃を超える日が多く,水生の イトミミズは,陸生のミミズよりも高温に対する耐性が 勝っているためと推測された。秋季に気温が低下する と,イトミミズの発生と流出は終息した。秋季以降,③ の SS 除去率は回復したが,①では,イトミミズ以外の 懸濁物の流出が続き,SS 除去率は回復しなかった。 いずれの水質項目の除去率も秋季 300 日目頃からは③ が①より良好となった。この結果より, 本法の担体には, 軽石よりもスポンジが良いと考えられた。 3.2.2 夏季開始実験 2010 年 8 月 12 日から新規に Table 1 の④と⑤を開始 した。冬季開始実験の①と③は継続した。実験期間の水 温は,平均 13.7℃,最高が開始日の 30.1℃,最低が最終 日(2011 年 2 月 23 日)の 5.3℃であった。 148 㻖㻙 㻘㻓 㻚㻔 㻛㻘 㻜㻜 㻔㻔㻖 㻷㼌㼐㼈㻃㻋䠶䠳䡋㻌 Fig. 6 Change in biological oxygen demand removal rate associated with start-up of ④ and ⑤ . Fig. 6 に新規に開始した④と⑤の BOD 除去率の時間 変化を最終段(④は 9 段目, ⑤は 17 段目)と途中段(④ は 3 段目と 6 段目,⑤は 3 段目と 8 段目)で示す。最終 段では薄層で段数の多い⑤の除去率の立上りが速く,④ も 2 ヶ月程度で 90%に達した。途中段の④ 6 段目,⑤ 8 段目も約 4 ヶ月で 90%程度に達したが,3 段目では④と ⑤のいずれも最大 40%程度で推移した。 ④と⑤最終段の BOD 除去率が 90%以上となった 10 ∼ 11 月(Fig. 6 の 71 ∼ 113 日目)の原水と途中段を含む処理 水(①は最終段のみ)の平均水質と平均除去率を Table 4 に示す。この期間の水温は,平均 14.2℃(最低 9.0 ∼最 高 22.1℃)であった。この結果は,本法の生物群が発達 した状態における浄化状況を示していると考えられる。 pH と DO は, 浄化が進むと上昇した。処理水の SS は, 浄化期間の長い①と③で高く,浄化期間の長期化が SS を高める傾向があり,これは槽内部の SS 分流出の可能 性があると考えられた。同じ浄化期間の①軽石担体と③ スポンジ担体では,明らかに③の浄化結果が良く,担体 としては軽石よりもスポンジが良い。 各有機性汚濁指標と T-N・T-P 及びこれらの溶解性は, いずれも段数が進むほど濃度は低下し,最も段数の多い ⑤の最終処理水が最も低濃度となり,BOD では,4.9 ± 2.1 mg・L-1,除去率 99 ± 0%まで浄化が進んだ。 酸化態窒素の最大は, BOD が最低の⑤の最終処理水で, NO2-N 1.700 ± 0.964 mg・L-1,NO3-N 0.68 ± 0.64 mg・L-1 であった。また,Fig. 4 の BOD:T-N = 100:168 の嫌 気性処理水の浄化では,低温時期を除けば処理水の酸化 態窒素は高濃度であった。両結果より,BOD の不足が 水環境学会誌 Journal of Japan Society on Water Environment スポンジ担体を用いた傾斜土槽法による有機性汚濁物質と栄養塩類の同時浄化 Table 4 Average water quality parameters for raw and treated effluent from October to November in 2010 (71-113 days; see Fig. 6). 㻕㻓㻓㻓 㻔㻘㻓㻓 㻗㻓 㻔㻓㻓㻓 㻕㻓 㻘㻓㻓 㻓 㻓 㻔㻓㻓 㻕㻘㻓㻓 㻛㻓 㻕㻓㻓㻓 㻙㻓 㻔㻘㻓㻓 㻗㻓 㻔㻓㻓㻓 㻕㻓 㻘㻓㻓 㻓 㻓 㻛 㻗㻕 㻚㻚 㻔㻓㻘 㻔㻖㻕 㻔㻙㻛 㻔㻜㻘 Time 䟺day䟻 㻓 㻕㻓㻓㻓 㻔㻛㻓㻓 㻔㻙㻓㻓 㻔㻗㻓㻓 㻔㻕㻓㻓 㻔㻓㻓㻓 㻛㻓㻓 㻙㻓㻓 㻗㻓㻓 㻕㻓㻓 㻓 㻔㻓㻓 㻔㻕㻓 㻛㻓 㻔㻓㻓 㻛㻓 㻙㻓 㻗㻓 㻕㻓 㻛㻓 㻙㻓 㻙㻓 㻗㻓 㻗㻓 㻕㻓 㻕㻓 㻓 㻓 㻔㻓㻓 㻔㻕 㻛㻓 㻔㻓 㻛 㻙㻓 㻙 㻗㻓 㻗 㻕㻓 㻕 㻓 㻓 㻛 㻗㻕 㻚㻚 㻔㻓㻘 㻔㻖㻕 㻔㻙㻛 㻔㻜㻘 Time (day) Fig. 7 Change in removal rate in response to an increase in raw effluent concentration. (Refer to Table 1 for experimental conditions for ①, ③, ④, ⑤ ). 処理水の酸化態窒素を増加させる傾向があり,これは脱 窒に必要な嫌気性条件と電子供与体が不足するためと考 えられた。T-N 除去率の最大は, ⑤の 78 ± 9%であった。 T-P,D-T-P,PO4-P も段数が進むほど減少した。T-P 除 去 率 は, 高 濃 度 排 水 実 験 の Table 3 の 原 水(BOD: T-P=100:19 )では平均 11 ± 14%と低く,Table 4 の原 水(BOD:T-P = 100:1 )では⑤で平均 97 ± 1%と高い。 この結果と⑤の担体は Table 2 に示すリン酸吸収係数の 低いスポンジ担体であることから,本法のリン除去機 構は,BOD 浄化に係わる従属栄養生物が必要とするリ ン分が除去されていると考えられる。なお,3 段目の処 理水で D-T-P,PO4-P が原水よりも増加するのは,1 ∼ 3 段目に捕捉された懸濁物質等に含まれるリンの可溶化と 考えられる。 Fig. 7 に夏季開始以降の全期間の SS,BOD,D-BOD, TOC,T-N,T-P の原水濃度と最終段の除去率を示す。 Vol. 37 No. 4(2014) Removal rate (%) NH4-N NO2-N NO3-N 䐙䚭㻥㻲㻧㻃㼕㼈㼐㼒㼙㼄㼏㻃㼕㼄㼗㼈㻃㻋㻈㻌 㻕㻘㻓㻓 㻙㻓 D-T-N Raw effluent (mg䡗L-䠃 ) 㻛㻓 㻕㻓 TOC T-N Raw effluent (mg䡗L-䠃 ) 㻖㻓㻓㻓 㻗㻓 D-BOD Raw effluent (mg䝿L-1) 㻔㻓㻓 㻙㻓 BOD 䐖㻃㻵㼈㼐㼒㼙㼄㼏㻃㼕㼄㼗㼈 䐘㻃㻵㼈㼐㼒㼙㼄㼏㼏㻃㼕㼄㼗㼈 䐙㻃㻵㼈㼐㼒㼙㼄㼏㼏㻃㼕㼄㼗㼈 䐚㻃㻵㼈㼐㼒㼙㼄㼏㼏㻃㼕㼄㼗㼈 㻦㼒㼑㼆㼈㼑㼗㼕㼄㼗㼌㼒㼑㻃㼒㼉㻃㼕㼄㼚㻃㼈㼉㼉㼏㼘㼈㼑㼗 㻔㻓㻓 TOC removal rate (%) 㻓 㻔㻓㻓㻓 㻜㻓㻓 㻛㻓㻓 㻚㻓㻓 㻙㻓㻓 㻘㻓㻓 㻗㻓㻓 㻖㻓㻓 㻕㻓㻓 㻔㻓㻓 㻓 㻛㻓 T-P removal rate (%) D-BOD removal rate (%) BOD removal rate (%) SS removal rate (%) 㻔㻓㻓 D-COD 594 482 527 425 356 38.2 27.8 3.82 0.003 ±58.7 ±42.8 ±75.8 ±120 ±76.5 ±4.5 ±2.5 ±0.78 ±0.001 268 238 270 256 161 21.4 18.5 4.00 0.003 ±16.9 ±14.7 ±85.9 ±81.5 ±61.0 ±4.5 ±3.4 ±0.48 ±0.001 411 370 344 306 263 26.3 25.1 4.40 0.002 ±42.9 ±20.5 ±86.8 ±67.0 ±40.8 ±2.9 ±3.5 ±0.68 ±0.000 261 228 230 210 161 23.0 20.3 4.70 0.002 ±65.9 ±52.7 ±112 ±116 ±52.8 ±4.8 ±4.3 ±1.15 ±0.001 92.0 80.6 64.5 53.4 65.2 13.7 12.4 5.05 0.025 ±38.1 ±32.2 ±70.8 ±57.7 ±28.0 ±4.3 ±4.2 ±1.57 ±0.037 371 341 379 346 239 25.5 24.3 4.91 0.002 ±36.3 ±24.2 ±111 ±115 ±51.1 ±3.8 ±3.6 ±0.52 ±0.000 179 168 204 197 116 18.5 17.7 5.59 0.004 ±78.5 ±70.5 ±103 ±105 ±57.5 ±5.0 ±4.8 ±0.46 ±0.004 46.3 40.4 13.0 8.9 38.6 11.3 9.3 4.80 0.183 ±9.9 ±6.0 ±9.5 ±6.9 ±9.8 ±3.7 ±1.8 ±1.15 ±0.268 341 315 352 303 236 24.5 23.8 4.31 0.002 ±82.1 ±71.9 ±81.0 ±49.0 ±68.0 ±4.5 ±4.5 ±0.67 ±0.000 134 112 164 143 99.2 16.1 15.4 4.50 0.002 ±54.4 ±45.1 ±109 ±91.3 ±45.8 ±4.3 ±4.8 ±0.85 ±0.000 33.9 31.0 4.9 4.0 33.4 8.1 7.8 3.47 1.700 ±3.7 ±2.8 ±2.1 ±2.1 ±7.4 ±2.2 ±2.1 ±2.17 ±0.964 Raw effluent (mg䡗L-䠃) 118 ±35 99 ±20 33 ±8 37 ±13 15 ±6 12 ±6 8 ±3 2 ±0 10 ±5 6 ±2 1 ±0 T-N removal rate (%) 0.5 ±0.0 1.7 ±0.4 0.9 ±0.4 1.4 ±0.5 2.0 ±0.6 1.2 ±0.5 1.5 ±0.7 3.6 ±1.5 1.1 ±0.5 1.3 ±0.3 7.0 ±1.5 Raw effluent (mg䡗L-䠃 ) 䐖㻃㻜㻃㼖㼗㼄㼆㼎㼖 㻃㻃㼗㼕㼈㼄㼗㼈㼇 䐘㻃㻖㻃㼖㼗㼄㼆㼎㼖 㻃㻃㼗㼕㼈㼄㼗㼈㼇 䐘㻃㻙㻃㼖㼗㼄㼆㼎㼖 㻃㻃㼗㼕㼈㼄㼗㼈㼇 䐘㻃㻜㻃㼖㼗㼄㼆㼎㼖 㻃㻃㼗㼕㼈㼄㼗㼈㼇 䐙㻃㻖㻃㼖㼗㼄㼆㼎㼖 㻃㻃㼗㼕㼈㼄㼗㼈㼇 䐙㻃㻙㻃㼖㼗㼄㼆㼎㼖 㻃㻃㼗㼕㼈㼄㼗㼈㼇 䐙㻃㻜㻃㼖㼗㼄㼆㼎㼖 㻃㻃㼗㼕㼈㼄㼗㼈㼇 䐚㻃㻖㻃㼖㼗㼄㼆㼎㼖 㻃㻃㼗㼕㼈㼄㼗㼈㼇 䐚㻃㻛㻃㼖㼗㼄㼆㼎㼖 㻃㻃㼗㼕㼈㼄㼗㼈㼇 䐚㻔㻚㻃㼖㼗㼄㼆㼎㼖 㻃㻃㼗㼕㼈㼄㼗㼈㼇 5.6 ±0.5 6.3 ±0.4 6.0 ±0.3 6.5 ±0.2 7.1 ±0.2 5.9 ±0.4 6.7 ±0.3 7.5 ±0.1 5.2 ±0.2 6.6 ±0.3 7.7 ±0.2 Raw effluent (mg䡗L-䠃 ) Raw water Concentration䚭䟺mg䡗L-䠃䟻 Inorg-N Org-N T-P D-T-P PO4-P SS COD BOD TOC T-N T-P 0.07 3.90 34.3 3.86 1.89 0.52 䟿 䟿 䟿 䟿 䟿 䟿 0.04 4.04 17.4 ±0.01 ±0.46 ±4.7 0.03 4.43 21.8 ±0.01 ±0.67 ±3.5 0.03 4.73 18.3 ±0.01 ±1.14 ±4.4 0.04 5.12 8.6 ±0.03 ±1.63 ±4.8 0.03 4.95 20.6 ±0.02 ±0.52 ±4.2 0.02 5.62 12.9 ±0.01 ±0.46 ±5.4 0.03 5.01 6.3 ±0.01 ±1.29 ±3.7 0.03 4.35 20.2 ±0.02 ±0.67 ±4.3 0.02 4.53 11.6 ±0.01 ±0.84 ±4.6 0.68 5.85 2.2 ±0.64 ±3.64 ±1.7 12 55 ±14 ±5 69 31 ±11 ±2 65 56 ±19 ±8 84 85 ±12 ±6 90 37 ±3 ±6 94 70 ±0 ±11 98 92 ±1 ±1 90 42 ±8 ±13 95 78 ±1 ±8 99 94 ±0 ±1 ±0.04 ±0.77 ±4.3 ±0.23 ±0.44 ±0.29 㻔㻓㻓 㻜㻓 㻛㻓 㻚㻓 㻙㻓 㻘㻓 㻗㻓 㻖㻓 㻕㻓 㻔㻓 㻓 2.03 1.56 0.53 ±0.33 ±0.53 ±0.63 2.32 1.90 1.02 ±0.38 ±0.59 ±0.29 1.86 1.66 0.83 ±0.56 ±0.62 ±0.32 0.78 0.63 0.18 ±0.46 ±0.40 ±0.22 2.14 1.98 0.97 ±0.37 ±0.37 ±0.30 1.27 1.15 0.62 ±0.37 ±0.36 ±0.17 0.20 0.17 0.02 ±0.02 ±0.01 ±0.03 2.08 1.87 0.70 ±0.56 ±0.65 ±0.46 0.57 0.43 0.10 ±0.32 ±0.25 ±0.13 0.12 0.10 0.03 ±0.06 ±0.04 ±0.02 㼜㻃㻠㻃㻐㻔㻘㻕㻑㻜㻛㻃㼛㻕㻃㻎㻃㻔㻓㻗㻑㻔㻔㻃㼛㻃㻎㻃㻛㻕㻑㻛㻗 㻵㻕㻃㻠㻃㻓㻑㻜㻜 㻓㻑㻓 㻓㻑㻕 㻓㻑㻗 㻓㻑㻙 㻓㻑㻛 㻔㻑㻓 㻥㻲㻧㻃㼏㼒㼄㼇㻃㼓㼈㼕㻃㼌㼑㼗㼈㼕㼑㼄㼏㻃㼙㼒㼏㼘㼐㼈 㻋㼎㼊䡗㼐㻐㻖䡗㼇㻐㻔㻌 䐚㻃㻥㻲㻧㻃㼕㼈㼐㼒㼙㼄㼏㻃㼕㼄㼗㼈㻃㻋㻈㻌 Configurati -on of stand 㼓㻫 DO SS COD 㻔㻓㻓 㻜㻓 㻛㻓 㻚㻓 㻙㻓 㻘㻓 㻗㻓 㻖㻓 㻕㻓 㻔㻓 㻓 50 57 44 47 ±11 ±9 ±11 ±9 35 25 31 40 ±11 ±6 ±8 ±7 56 56 39 52 ±18 ±7 ±12 ±12 89 82 64 80 ±12 ±5 ±10 ±11 29 33 33 45 ±13 ±1 ±11 ±7 63 70 52 67 ±16 ±11 ±11 ±8 98 ±2 34 ±8 71 89 ±1 35 ±7 74 ±18 ±9 99 91 ±0 ±1 70 95 ±9 ±1 36 47 ±10 ±11 58 86 ±10 ±8 78 97 ±9 ±1 㻕 㼜㻃㻠㻃㻐㻕㻘㻙㻑㻜㻜㻃㼛 㻃㻎㻃㻔㻛㻘㻑㻕㻔㻃㼛㻃㻎㻃㻚㻕㻑㻘㻖 㻕 㻵 㻃㻠㻃㻓㻑㻜㻗 㻓㻑㻓 㻓㻑㻕 㻓㻑㻗 㻓㻑㻙 㻓㻑㻛 㻔㻑㻓 㻃㻥㻲㻧㻃㼏㼒㼄㼇㻃㼓㼈㼕㻃㼌㼑㼗㼈㼕㼑㼄㼏㻃㼙㼒㼏㼘㼐㼈 㻋㼎㼊䡗䠿㻐㻖䡗䠶㻐㻔㻌 Fig. 8 Change in critical biological oxygen demand loads using the slanted soil-chamber method. (Refer to Table 1 for experimental conditions for ④ and ⑤ ). 2010 年 12 月 9 日(127 日 目 ) よ り BOD を 増 加 さ せ, 最大 2480 mg・L-1 まで増加させた。この結果,SS 以外 の除去率は著しく低下した。この時の槽の外観は,内部 の目詰まりによって処理水は表面流下の状態であった。 3.3 BOD 容積負荷の限界量 浄化装置では,単位容積あたりで処理する負荷量とそ の限界量は重要な指標となる。活性汚泥法では,ばっ 気槽の単位容積あたりの BOD 負荷量は,容積負荷量 (BOD kg・m-3・d-1 )で表され,標準活性汚泥法では 0.3 ∼ 0.8 で運用されている 10)。本法で同様の値を,容器の 単位内容積あたりの BOD 負荷量として求めた。 Fig. 8 に,④と⑤の最終段の除去率が 90%に達した時 点 (④は 2010 年 10 月, ⑤は 9 月) から, 最大負荷量となっ た 2011 年 1 月までの容積負荷量をX軸,除去率をY軸 としたものを示す。水温は, 開始日 25.9℃∼終了日 4.1℃ であった。BOD 除去率が 90%を下回るのは,④⑤とも に 0.6 kg・m-3・d-1 程度で,本実験では,この値を傾斜土 槽法の容積負荷量の限界値とする。この値は,一日に 3 時間のみ通水した実験結果であり,さらに BOD 除去率 が 90%を下回るのは 12 月 9 日(水温 7.5℃)∼ 12 月 22 日(同 10.1℃)の低温期であり,高温期より低めの値で ある可能性がある。 本法と活性汚泥法の容積負荷量の違いは,同じ単位内 容積であるが,ばっ気槽ではほとんどが水であるが,傾 斜土槽では水と空間が含まれる。Fig. 11 の④の浄化初 期では,1 槽の平均水分重量は約 5.6 kg で,Fig. 1 の内 149 水槽での浄化では,水槽に流入した原水が流出するま での時間は,水理学的滞留時間(以後,HRT)で表され る。本法で HRT に相当する時間は,最上段から最下段 への通過時間である。Fig. 9 に夏季開始実験の④と⑤の, 最下段の BOD 除去率と,通過時間の推移を示す。 BOD 除去率が 90%以上での通過時間は,④は 20 ∼ 30 分,⑤は 30 ∼ 50 分であった。活性汚泥法で浄化に 必要な HRT は 4 ∼ 24 時間といわれており 7),本法の通 過時間は明らかに短かった。 3.3 で前述のように④の実験初期の水分量は,9 段積 みで 50.4 L となる。原水の流入量は 5 基で 5 L・ 分 -1 よ り 1 L・ 分 -1 であり,すべての水が入れ替わるには 50.4 分が必要となる。このときの通過時間は 22 分で,通過 時間はすべての水が入れ替わる時間にはなっていない。 槽内の最深水深は遮水板の 2 cm であるが,目視観察で は最深部でも 2 cm の水深はない。水は毛管現象によっ て上方の担体に移動し,槽内は不飽和帯が多くを占めて いる。毛管現象で上方に移動した水の流動は少なく,通 過時間は,底面上の流れやすい部位を流下した水の HRT と考えられる。なお,採水は処理水の流出 1 時間後から 行っており,水質分析上の問題はないと考えられる。 3.5 傾斜土槽の重量変化 㻛㻒㻔㻕㻏㻃㻕㻓㻔㻓 㻔㻙 㼖㼗㼄㼕㼗㻃㼘㼓 㻙㻓 㻖㻓㻓 㻕㻘㻓 㻕㻓㻓 㻔㻘㻓 㻔㻓㻓 㻘㻓 㻓 㻕㻓㻓㻜 㻕㻓㻔㻓㻃 㻃 㻃 㻃 㻃 㻃 㻃 㻃 㻕㻓㻔㻔 㻃 㻃 㻔㻕㻃㻔 㻕 㻖 㻗 㻘 㻙 㻚 㻛 㻜㻔㻓㻔㻕㻔 㻕 㻖㻓 䐙㼕㼈㼐㼒㼙㼄㼏㻃㼕㼄㼗㼈 䐚㼕㼈㼐㼒㼙㼄㼏㻃㼕㼄㼗㼈 䐙㼕㼈㼗㼈㼑㼗㼌㼒㼑㻃㼗㼌㼐㼈 䐚㼕㼈㼗㼈㼑㼗㼌㼒㼑㻃㼗㼌㼐㼈 㻖㻙 㻘㻓 㻚㻔 㻛㻘 㻜㻜 㻕㻓 㻔㻓 㻕㻓㻓㻜 㻕㻓㻔㻓㻃 㻃 㻃 㻃 㻃 㻔㻕㻃㻔 㻕 㻖 㻗 㻘 㻙 㻚 㻓 㻔㻔㻖 㻷㼌㼐㼈㻃䟺㼇㼄㼜㻌 㻕㻓㻓㻜 㻕㻓㻔㻓㻃 㻃 㻃 㻃 㻃 㻃 㻃 㻃 㻕㻓㻔㻔 㻃 㻃 㻔㻕㻃㻔 㻕 㻖 㻗 㻘 㻙 㻚 㻛 㻜 㻔㻓㻔㻕 㻔 㻕 㻋㻼 㻷㼒㼗㼄㼏㻃㼚㼈㼌㼊㼋㼗㻃㼒㼉㻃㼆㼋㼄㼐㼅㼈㼕㼖㻃㻋㼎㼊㻌 㻗㻓 㻔㻛㻓 㻔㻙㻓 㻔㻗㻓 㻔㻕㻓 㻔㻓㻓 㻛㻓 㻙㻓 㻗㻓 㻕㻓 㻓 㻒 㼋㻌 Fig. 10 Change in chamber weight of ① , ② , ③ (3-stack – 9-stack) over the course of the study. (Refer to Table 1 the experimental conditions for ① , ② and ③ ). 䟺䠔䟻 㻗㻓㻓 㻘㻓 ճ ղ 䚭䟺䠓䟻 Fig. 9 Change in biochemical oxygen demand removal rate and retention time over the course of the study. (Refer to Table 1 for experimental conditions for ④ and ⑤ ). 150 ձ 㻖㻘㻓 㻖㻘㻓 㻖㻓㻓 㻕㻓㻓 㻶㼗㼄㼊㼈㻃㼑㼘㼐㼅㼈㼕 䐖 䐘 䐙 䐚 㻪㼕㼒㼚㼗㼋㻃㼚㼈㼌㼊㼋㼗㻃㼒㼉㻃㼆㼋㼄㼐㼅㼈㼕㼖㻃㻃㻋㼎㼊㻌 㻔㻓㻓 㻜㻓 㻛㻓 㻚㻓 㻙㻓 㻘㻓 㻗㻓 㻖㻓 㻕㻓 㻔㻓 㻓 㻵㼈㼗㼈㼑㼗㼌㼒㼑㻃㼗㼌㼐㼈㻃䟺㼐㼌㼑䟻 㻥㻲㻧㻃㼕㼈㼐㼒㼙㼄㼏㻃㼕㼄㼗㼈㻃䟺䟸䟻 本法では汚泥処理工程はなく,槽自体の重量変化が発 生汚泥相当量の増減を示している。Fig. 10 に冬季開始 実験の①,②,③の 3 ∼ 9 段目の重量変化を示す(1・2 段目は 4 月に交換,②は 7 月で実験打切り) 。2010 年 4 月までは増加し,5 月にはいずれも減少した。6 月∼ 9 月はほぼ同じで,2011 年 1 月以降は冬季の高負荷試験 で著しく増加した。③の 8 月の急増は,観察のために担 体を全て取り出して再充填したため,それまで原水と接 触がなかった上部の汚れの無い担体に原水の懸濁物と生 物膜が付加したためである。 4 月までの増加量を A(12 月との差) ,4 月∼ 5 月の 減少量を B,B/A を減少率 C とし,[A,B,C] で示す。 ①が[31.9 kg,24.6 kg,77%] ,②が[17.5 kg,17.8 kg, 102%] ,③が[40.2 kg,31.6 kg,79%]であり,4 月ま での増加分の多くは 5 月に減少し,増減量の最大は③, 最小は②であった。この増減量は保持可能な生物体を含 む有機物量と考えられる。なお,②の減少率が 100%を 超過した原因として,担体である軽石の屑が流出した可 能性が推測された。 5 月の重量減少は,この時期に SS の大量流出はなく Fig. 5 の 100 ∼ 160 日目) ( ,温度上昇によって生物学的 浄化活性が高まり,低温時期に過剰に蓄積した有機物が 分解したと考えられる。これには 1・2 段目を 4 月に交換 した結果,3 段目以下への負荷が減少したことも影響し ている可能性がある。夏季∼秋季の重量増加が少ないこ とも生物学的浄化活性の高さを示していると考えられる。 活性汚泥法では,長時間曝気方式で,除去 BOD の 40 ∼ 60%が余剰汚泥になるといわれている 8)。前報 2)では, 本法で同じ担体で長期間の浄化を継続した場合,SS 蓄 積量が多い最初の一年間を除けば,処理水の SS が余剰 汚泥に相当すると仮定した。この余剰汚泥相当の除去 BOD に対する割合は,3 ∼ 4%であった。 生物学的水質浄化に伴う汚泥発生量は,食物連鎖で上 位の生物が多いほど減少するといわれており 10),本法で は大型土壌動物のミミズやチョウバエ(幼虫)等が浄化 に関与するために,汚泥発生量が少ないと考えられる。 ただし,チョウバエは設置場所によっては迷惑害虫とな るため,槽の覆い等が必要である。 Fig. 11 に夏季実験の 8 月 30 日以降の前年冬季に開始 の①と③と夏季開始の④と⑤の重量変化および 8 月 30 日との差分重量の変化を示す。夏季でも新規に開始した 㻶㼗㼄㼆㼎㻃㼚㼈㼌㼊㼋㼗㻃㻋㼎㼊㻌 容量 53.4 L より,水は傾斜土槽の約 10%であった。⑤ は④とは構造が異なるので比較は困難であるが,単純に Fig. 1 の高さを半分で段数を 2 倍にすると,同様の水分 は 20%程度と考えられる。この傾斜土槽の水と空間の 最適な割合については,今後の研究課題と考えられる。 3.4 通過時間 Original Paper 㻶㼗㼄㼆㼎㻃㼚㼈㼌㼊㼋㼗㻃㻋㼎㼊㻌 原著論文 㻕㻘㻓 㻕㻓㻓 㻔㻘㻓 㻔㻓㻓 㻘㻓 㻓 㻕㻓㻔㻓 㻛 㻜 㻔㻓 㻕㻓㻔㻔 㻔㻕 㻔 㻕 㻋㻼㼈㼄㼕㻒㼐㼒㼑㼗㼋㻌 㻔㻛㻓 㻔㻙㻓 㻔㻗㻓 㻶㼗㼄㼊㼈㻃㼑㼘㼐㼅㼈㼕 䐖 䐘 䐙 䐚 㻔㻕㻓 㻔㻓㻓 㻛㻓 㻙㻓 㻗㻓 㻕㻓 㻓 㻐㻕㻓 㻕㻓㻔㻓 㻛 㻜 㻔㻓 㻕㻓㻔㻔 㻔㻕 㻔 㻕 㻋㻼㼈㼄㼕㻒㼐㼒㼑㼗㼋㻌 Fig. 11 (A) Change in total weight of chambers ① · ③ and ④ · ⑤ , (B) change in growth weight (kg) for chambers ① · ③ and ④ · ⑤ from 30 August 2010. (Refer to Table 1 for the experimental conditions for ① , ③ and ④ , ⑤ ). 水環境学会誌 Journal of Japan Society on Water Environment スポンジ担体を用いた傾斜土槽法による有機性汚濁物質と栄養塩類の同時浄化 Table 5 Results of chamber soil nutrient analysis. 䚭䚭䚭䚭䚭䚭䚭䚭䚭䚭Analysis item T-N T-P -1 -1 Sample mg䝿g (dry) mg䝿g (dry) *) 1.0 0.84 Soil of sleeping chamber of 䐖 6.0 49.20 Soil of sleeping chamber*) of 䐘 Ignition Moisture content loss 䟸 䟸 10.4 49.2 0.9 77.8 *) The two uppermost chambers of 1 and 2, which had clogged, were removed on April 9, 2010, and kept in a state where there was no inflow. Soil was collected from the two chambers on January 19, 2011, and analyzed. ④と⑤の重量増加は大きく①と③は少ない。これは,① と③は④と⑤よりも浄化期間が長く,汚泥減量に寄与す る上位の食物連鎖網が発達しているためと考えられる。 3.6 生成土壌 本法では,水質浄化に伴って褐色の物質が生成し,養 生操作でも同様の物質が生成する。この物質は,ミミズ 等の従属栄養生物の活動で生成した土壌と考えられる。 ①と③の 1・2 段目は,4 月 9 日に養生を開始した。2 段の合計重量は,養生開始時の① 87.2 kg,③ 54.0 kg が 半年後の 10 月 28 日には① 60.2 kg,③ 11.8 kg になった。 養生後の生成土壌の分析結果を Table 5 に示す。含 水率が大きく異なるのは,2.3.3 で前述のように③は生 試料で,①は風乾試料のためである。①は軽石粉末の 混入で全体に低濃度である。③は T-N より T-P が高濃 度であった。台所排水を浄化中の槽の生成土壌では, ,T-P8.37 mg・g-1(dry)であった 9)。 T-N19.0 mg・g-1(dry) Table 5 の③の結果は,養生操作で T-N 濃度に比べて T-P 濃度が相対的に増加する可能性を示した。 4.浄化機構の考察 4.1 有機性汚濁物質 Table 4 の ス ポ ン ジ 担 体( ③, ④, ⑤ ) の 最 終 段 の 平 均 除 去 率 は,COD:85 ∼ 94 %,BOD:89 ∼ 99 %, TOC:82 ∼ 91%で,有機性汚濁物質の高い浄化能力を 示した。 本法では,汚濁物質は槽内で捕捉されずに通過する物 質(以後,通過性汚濁物質)と水と分離して槽内に捕捉 される物質(以後,捕捉性汚濁物質)に分けられる。捕 捉性汚濁物質が槽内に存在する時間を拘束時間という。 Table 4 の ③, ④, ⑤ の SS 除 去 率 は,3 段 目 の 段 階 で 69 ± 11 ∼ 90 ± 8%であり,懸濁性物質はろ過作用 で速やかに除去されている。同様の D-BOD は,原水 425 ± 120 mg・L-1 が最終処理水では 4.0 ± 2.1 ∼ 53.4 ± 57.7 mg・L-1 となり,溶解性汚濁物質も除去されている。 溶解性汚濁物質の除去機構は,吸着作用である。吸着 には物理吸着と生物学的吸着があり,両者の区分は困難 であるが,Fig. 7 の D-BOD 除去率が浄化の継続と共に 上昇するのは,生物学的吸着量の増加と考えられる。活 性汚泥法では,20 分以内で急激な吸着が起こり,30 ∼ 60 分で平衡状態に達するといわれている 10)。Fig. 9 の BOD 除去率 90%以上での通過時間は 20 ∼ 50 分で,ほ ぼ同じ時間となっている。 Fig. 12 に生物学的浄化に係る時間(以後,浄化時間) の水槽での浄化と本法との比較を示す。水槽では,すべ ての汚濁物質は水と共に移動し,浄化には比較的長い HRT が必要である。本法では,HRT に相当する通過時 間の他に拘束時間が存在する。通過時間は短く,これは 主に汚濁物質と水との分離に要する時間と考えられる。 Vol. 37 No. 4(2014) 䠞䠌㻃㻳㼒㼏㼏㼘㼗㼌㼒㼑㻃㼏㼒㼄㼇 䠨䠌㻃㻺㼄㼗㼈㼕㻃㼗㼄㼑㼎㻃㼙㼒㼏㼘㼐㼈 䠣䠌㻃㻩㼏㼒㼚㻃㼙㼒㼏㼘㼐㼈 㻷䠌㻃㻫㼜㼇㼕㼄㼘㼏㼌㼆㻃㼕㼈㼗㼈㼑㼗㼌㼒㼑㻃㼗㼌㼐㼈 㻫㻵㻷㻃㻋㻷䠏䠨㻒䠣㻌 㻃㻃䠞䠏䠞㻔䟽䠞㻕 㻃㻃䠞㻔䠌㻯㼒㼄㼇㻃㼒㼉㻃㼓㼒㼏㼏㼘㼗㼌㼒㼑㻃㼓㼄㼖㼖㼌㼑㼊㻃㼗㼋㼕㼒㼘㼊㼋㻃㼆㼋㼄㼐㼅㼈㼕 䚭䠞㻕䠌㻃㻷㼕㼄㼓㼓㼈㼇㻃㼓㼒㼏㼏㼘㼗㼌㼒㼑㻃㼏㼒㼄㼇㻃㼌㼑㻃㼆㼋㼄㼐㼅㼈㼕 㻃㻃䠦㻔䠌㻃㻵㼈㼗㼈㼑㼗㼌㼒㼑㻃㼗㼌㼐㼈 㻃㻋㻠㻷㼌㼐㼈㻃㼒㼉㻃㼈㼉㼉㼏㼘㼈㼑㼗㻃㼓㼄㼖㼖㼌㼑㼊㻃㼗㼋㼕㼒㼘㼊㼋㻃㼆㼋㼄㼐㼅㼈㼕㻌 㻃㻃䠦㻕䠌㻃㻧㼈㼗㼈㼑㼗㼌㼒㼑㻃㼗㼌㼐㼈䟾䟺㼓㼘㼕㼌㼉㼌㼆㼄㼗㼌㼒㼑㻃㼗㼌㼐㼈㻃㼒㼉㻃䠞㻕䟻 㻧㼈㼗㼈㼑㼗㼌㼒㼑㻃㼗㼌㼐㼈㻃㼌㼖㻃㼗㼌㼐㼈㻃㼕㼈㼔㼘㼌㼕㼈㼇㻃㼉㼒㼕㻃㼓㼒㼏㼏㼘㼗㼄㼑㼗㼖 㼗㼕㼄㼓㼓㼈㼇㻃㼅㼜㻃㼗㼋㼈㻃㼆㼄㼕㼕㼌㼈㼕㻃㼄㼑㼇㻃㼅㼌㼒㼏㼒㼊㼌㼆㼄㼏㻃㼄㼇㼖㼒㼕㼓㼗㼌㼒㼑 㼗㼒㻃㼅㼈㻃㼓㼘㼕㼌㼉㼌㼈㼇㻑 㻷㼕㼈㼄㼗㼈㼇 㻃㻃㻺㼄㼖㼗㼈㼚㼄㼗㼈㼕 㻺㼄㼖㼗㼈㼚㼄㼗㼈㼕 㼚㼄㼗㼈㼕 䠨㻊䠌㻺㼄㼗㼈㼕㻃㼙㼒㼏㼘㼐㼈㻃㼌㼑 㼆㼋㼄㼐㼅㼈㼕 㻺㼄㼗㼈㼕㻃㼗㼄㼑㼎 㻴䟾㻯 䚭㻴䟾㻯 㻃㻃㻷㼕㼈㼄㼗㼈㼇 㼙㼒㼏㼘㼐㼈 㻃㻃㼚㼄㼗㼈㼕 㻷䠏䠨㻒䠣 䚭䠞䠏䠞㻔䟽䠞㻕㻃㻏㻃䠦㻔䠏䠨㻊㻒䠣 㻋䠨㻌 㻳㼘㼕㼌㼉㼌㼆㼄㼗㼌㼒㼑㻃㼅㼜㻃㼚㼄㼗㼈㼕㻃㼗㼄㼑㼎 㻳㼘㼕㼌㼉㼌㼆㼄㼗㼌㼒㼑㻃㼅㼜㻃㻶㼏㼄㼑㼗㼈㼇㻐㻶㼒㼌㼏㻐㻦㼋㼄㼐㼅㼈㼕 Fig. 12 Schematic comparison of biological purification time by water tank and by slanted-soil-chamber. 後段に汚泥処理工程のない本法で,Table 4 の浄化成 績が持続的に得られることや,Fig. 10 の生物群が発達 すると冬季を除けば槽重量の増加が少ないことは,本法 の捕捉性汚濁物質の浄化能力が高いことを示している。 有機性汚濁物質の分解に要する浄化時間としては,拘束 時間が効果的に機能していると考えられる。さらに,拘 束時間は,放置するだけの養生操作で任意に設定可能で ある。本法では,生物学的に難分解性物質であっても易 捕捉性物質であれば,養生期間の長期設定で生物学的浄 化は可能になると考えられる。 本法の浄化効果は,原水の捕捉性汚濁物質と通過性汚 濁物質の組成割合に影響される。過去の浄化事例では, 懸濁物質や油脂類が高濃度の排水では高い浄化効果が得 られ 11),廃棄牛乳を含む排水では浄化効果が低かった 6)。 これは前者では捕捉性汚濁物質が多く,後者では通過性 汚濁物質が多いためと考えられる。 4.2 栄養塩類 4.2.1 総窒素(T-N) 本法の T-N 浄化機構は,生物体への資化と硝化 ・ 脱窒 反応と考えられる。両者の割合は未解明であるが,Fig. 4 の結果より,低温時期は硝化活性が低下することから, 温度で主となる浄化機構は異なる可能性も考えられる。 散水ろ床法では,担体上の好気性微生物膜の下層に嫌 気性微生物膜が形成され,硝化 ・ 脱窒反応が起きている といわれている 10)。しかし,同法で T-N 除去率が高いと いう報告はない。これは,水は抵抗の少ない好気性部位 を主に流れるために,脱窒量が少ないものと推察される。 本法の上層は好気性で,原水に BOD 等の還元性物質 が存在すると,この酸化によって下層は嫌気性となる。 原水は,底面上の下層を流下し,流下過程の上下混合で 硝化 ・ 脱窒反応が進むと考えられる。 3.2.2 で前述のように,BOD が不足すると脱窒反応が 低下し,T-N 除去率は低下する。逆に,目詰りが起きや すい BOD 高負荷の弁当製造工場排水の事例 3)では,全 体的に嫌気性となり,硝化が不十分で T-N 除去率は低 くなったと考えられた。本法で地下水を浄化する研究 11) では,硝酸態窒素の安定同位体の測定から,多段積みの 3 段目以下で脱窒反応が確認された。 4.2.2 総リン(T-P) 本法の T-P 浄化機構は,化学的吸着と生物体への資化 が考えられる。3.2.2 で前述のように本実験のスポンジ 担体での T-P 浄化は,後者と考えられる。生物体への資 151 原著論文 化は,一時的な現象であり,本法の継続的な T-P 浄化に は,リンが槽から流出しない保存機構があると考えられ る。生物体は, 最終的に生成土壌の一部となる。3.6 では, 生成土壌にリンが含まれることを述べた。除去されたリ ンは,土壌動物による系外への持ち出しを除けば,生成 土壌中に存在していると考えられる。生成土壌は,遮水 板のある底面が“受け皿”的機能をするために,処理水 に流出せずに内部に残留しており,これが本法のリンの 保存機構と考えられる。参考値として,10 月 29 日時点 の傾斜土槽内部の T-P 現存量を求めた。⑤よりスポンジ 担体の一部を採取して含有液の T-P 濃度を測定し,水分 重量から T-P 現存量 16.1 g 求めた。この時点までの T-P 負荷量収支は,流入 40.0 g,流出 5.1 g,差分 34.9 g で, 現存量の差分に対する割合は 46%であった。なお,本 結果は浄化開始から 77 日目であり,生成土壌は未発達 であった。 弁当製造工場排水の事例 3)では,T-P 除去率は低かっ た。目詰まり状態の槽では,T-P は流入よりも流出濃度 が高くなる現象がみられた。これは槽の嫌気性が強くな ると,捕捉したリンの再溶出が起きると考えられた。 5.おわりに 本実験で解明された本法の浄化機構を以下に示す。 浄化に係わる構造 本法は,表層土壌の自浄作用に着想を得た水質浄化法 である。スポンジ担体の浄化成績が高いことは,当初の 担体に土壌は不要で,本法の浄化が構造的なものである ことを示した。すなわち,有機性排水が大気と接する薄 層構造体中を水平方向に浸透流下すると,発生する従属 栄養生物を主体とした生物群によって有機性汚濁物質 と T-N・T-P は同時に浄化される。底面の傾斜は,自然流 下に必要であり,目詰まり対策に有効である。傾斜が鉛 直に近い急角度では,脱窒不足で T-N 除去率は低下し, 生成土壌が流出することで T-P 除去率は低下すると考え られる。 HRT と生物学的浄化に係わる時間 本法では,同一槽内で水と汚濁物質の分離と浄化が進 行する。 見かけ上の有機性汚濁物質と T-N・T-P の浄化は, 20 ∼ 50 分の HRT で完了する。この時間は,生物学的 吸着等による汚濁物質の分離に要する時間である。本来 の浄化である有機性汚濁物質の分解や安定化は,より 長い拘束時間をかけて槽内で行われる。HRT の短縮は, 生物反応槽のコンパクト化の可能性を示している。 BOD 容積負荷量の限界量 槽内の浄化活性は高く,BOD 容積負荷量の限界量以 下であれば浄化効果は持続する。本実験で得られた限界 量は 0.6 kg・m-3・d-1 程度であった。本法の容積には水と 空間が含まれ, 本装置での水の割合は 10%程度であった。 T-N・T-P の浄化 T-N・T-P の浄化は,微生物体への資化が考えられる。 T-N 浄化では,さらに硝化 ・ 脱窒反応が加わる。T-P で は,生物学的にリンを含む土壌が生成し,この土壌が流 出せずに槽内に残留することで,浄化が成立する。本法 の T-N・T-P 浄化には BOD が必要であり,この目的では BOD を資源と捉えることができる。また,リンと同様 に原水中の物質が水とは分離されて槽内に残留すること 152 Original Paper で,水質浄化が成立する現象は,他の物質にも当てはま これは本法の今後の応用課題である。 る可能性があり 12), 以上の結果より,本法は,水と汚濁物質を分離する一 次処理,有機性汚濁物質浄化の二次処理,T-N・T-P 浄化 の三次処理が, 同一槽内で可能なことが明らかになった。 また,本法は,装置面では構造上の簡易性とコンパクト 性があり,運用面では運転操作の容易性,低エネルギ− 消費,汚泥処理の容易性,リン資源回収の容易性がある。 これらの特性より,本法は開発途上国の水質浄化技術に 適していると考えられ,上下水処理の実証試験が始まっ ている 12, 13, 14)。先進国においても有機性排水処理分野の 省エネルギ−化,陸圏でのリンの資源循環と水圏の富栄 養化防止に寄与するものと期待される。 謝 辞 本 研 究 は, 経 済 産 業 省 四 国 経 済 産 業 局 発 注 の 平 成 21・22 年度地域イノベーション創出研究開発事業「資源 循環 ・ 低炭素社会を実現する新規排水処理システムの開 発」の助成を受けました。本研究開発の遂行には,四国 経済産業局の皆様,各共同研究機関の皆様には多大なご 指導とご協力をいただきました。ここに記して謝辞とし ます。 (原稿受付 2013 年 2 月 16 日) (原稿受理 2014 年 3 月 24 日) 参 考 文 献 1) 生地正人(2000)傾斜土槽を用いた水質浄化装置及びそれを用 いた水質浄化法,日本国特許庁,特許第 3076024 号. 2) 生地正人,末次綾(2005)傾斜土槽法による台所排水の有機性 汚濁と栄養塩類の同時浄化,水環境学会誌,28,347-352. 3) 環境省,環境技術実証事業 ・ 平成 16 年度環境技術実証モデル 事業 ・ 小規模事業場向け有機性排水処理技術分野 ・ 技術名:傾 斜土槽法による厨房排水の高度処理装置,http://www.env.go.jp/ policy/etv/pdf/list/h16/02_b_5.pdf(2013 年 5 月時点) . 4) R. E . Speece(1999)産業排水処理のための嫌気性バイオテク ノロジー(松井三郎,高橋正信監訳) ,pp.1-6,技報堂出版,東京. 5) 出濱和弥,片沼拓士,松原三郎,多川正,山口隆司(2011)醤油 製造排水を対象とした新規嫌気性処理プロセスの適応性評価, 第 66 回全国土木学会年次学術講演概要集,CD-R,V11-049,9798. 6) 生地正人, 奥村朋子, 石井光祐, 竹中佳, 白川朗, 藤井耕児(2010) 地形利用型傾斜土槽を用いた畜産排水の二次処理実証試験,用 水と廃水,52,482-489. 7) 稲森悠平(1998)生活排水対策,p.248,産業用水調査会,東京. 8) 金子光美, 河村清史, 中島淳 (1998) 生活排水処理システム, p.91, 技報堂出版,東京. 9) 生地正人,末次綾,三浦敏弘,中村成孝,笠井和夫(2005)傾 斜土槽法を用いた富栄養化対策 その 2,用水と廃水,47,10661072. 10) 井出哲夫(1990)第 2 版 水処理工学,p.212,p.263,p.318,p.319, 技報堂出版,東京. 11) 生地正人,末次綾(2007)傾斜土槽法による高濃度有機性排水 の浄化,第 41 回日本水環境学会年会講演集,550. 12) 牛シン,山根秀太,清水源治,米山由紀,風間ふたば(2013)開 発途上国における傾斜土槽法の利用−生活排水及び地下水処理 −,第 47 回日本水環境学会年会講演集,621. 13) 牛島健,田中絵梨奈,土方野分,伊藤竜生,船水尚行(2013)ア フリカサヘル地域での使用を想定した傾斜土槽システムによる 生活雑排水の処理,土木学会論文集 G(環境) ,69(7) ,Ⅲ _83- Ⅲ _89. 14) 丸山和秀,橋口佳史(2014)有機汚染水(BOD30 mg/L)を飲料 水に浄化する生物浄化ユニットの開発と実証試験,第 5 回緩速 ・ 生物ろ過国際会議講演集,285-295. 水環境学会誌 Journal of Japan Society on Water Environment スポンジ担体を用いた傾斜土槽法による有機性汚濁物質と栄養塩類の同時浄化 [論 文 要 旨] 傾斜土槽法は,低エネルギ−消費型の好気性浄化法である。この浄化機構を解明するためにスポンジ担体 の傾斜土槽で実験を行った。本実験は,20 ∼ 50 分の水理学的滞留時間で有機性汚濁物質と総窒素(T-N)・ 総リン(T-P)が同時に浄化されることを示した。排水が傾斜土槽を浸透流下すると,水と有機性汚濁物質 は分離される。溶解性の有機性汚濁物質は,生物学的吸着作用で分離され,これに要する時間が 20 ∼ 50 分 である。冬季を除けば槽内の生物学的浄化活性は高く,槽内部に捕捉された有機物は,土壌にみられる生物 群によって分解される。槽重量は冬季に増加し,春季に減少した。T-N・T-P 浄化は,生物学的な資化による。 さらに,T-N は硝化 ・ 脱窒反応で浄化され,T-P はリンを含む生成土壌が槽内に残留することで浄化される。 本法では,水と汚濁物質の分離,有機物の分解,汚泥の減量化,T-N と T-P の浄化が同じ槽内で同時進行する。 キーワード:傾斜土槽法;生物学的吸着;低エネルギ−消費型好気性浄化;有機性汚濁物質;栄養塩類 Vol. 37 No. 4(2014) 153
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