アジア・太平洋電気通信共同体(APT)無線通信グループ 第17回会合(2014年9月23日-26日)報告 総務省 総合通信基盤局 電波部 電波政策課 国際周波数政策室 1.APT無線通信グループについて 20件の出力文書(うち合計8件のAPTレポート及び調査レポ APT無線通信グループ(AWG)は、前身であるAPT無線 ート)が作成された。また、今会合においては、アドホック 通信フォーラム(AWF)を発展・再編成し設立された、ア グループが設置され、AWGのワーキングメソッドの改訂の検 ジア・太平洋地域における無線通信システムの高度化及び 討並びにAPTレポートをAPT勧告化するための可能性及び確 普及促進を目的として年2回程度開催される国際会合であ 認作業の検討が行われるとともに、次会期(2014年∼2016 る。 年)の議長、副議長が選出された。 AWGは、図1のとおり、WG Spec(周波数に係るワーキ 以下、各WGでの審議結果、アドホックグループでの検討 ンググループ) 、WG Tech(技術に係るワーキンググループ) 結果、AWG議長、副議長の選出結果及びAWG-17で作成さ 及びWG S&A(サービスとアプリケーションに係るワーキン れたレポート・調査レポート並びに次回会合予定について報 ググループ)で構成され、それぞれのワーキンググループに 告する。 は個別議題の検討を行うSub WG(サブワーキンググループ) やTG(タスクグループ)が設置されている。 3.WG Spec(周波数に係るワーキンググループ)での検討状況について WG Specは無線通信に係る周波数に関する事項を所掌 2.AWG第17回会合について し、図2に示すとおり二つのSub WG及び四つのTGが設置さ 2014年9月23日(火)∼26日(金)の間、AWG第17回会 れており、IMTに関する共用検討や、公共保安及び災害救 合(AWG-17)が中国のマカオにて開催された。APT構成21 援等に関する検討を行っている。本会合においては、WRC- か国の政府及び無線通信関係機関より合計208名(うち我 15の議題1.1(IMTの追加周波数特定等の検討) 、議題1.12 が国からは45名)が参加し、63件の入力文書が審議され、 (8-10GHz帯における地球探査衛星業務への周波数分配の検 AWG(APT Wireless Group) 議長:佐藤孝平氏(ARIB) 副議長:Mr. Le Van Tuan(VNM)、Ms. Zhu Keer(中) WG‐SPEC 議長:John Lewis(NZL) WG‐TECH 議長:Mr. DaejungKim(韓) Sub WG 1: Spectrum Arrangement and Harmonization 議長:Ms. Zhu Keer(中) TG1: Short Range Devices (SRD) 議長:有吉正行氏(ATR) Sub WG 2: Spectrum Monitoring 議長:Mr. Huang Jia(中) TG2: Software Defined Radio (SDR) and Cognitive Radio System (CRS) 議長:Dr. Lang Baozhen(中) TG1: Sharing Study on IMT Systems 議長:Ms. Julie Welch(Qualcomm) TG2: Public Protection and Disaster Relief (PPDR) 議長:Mr. Bharat Bhatia(Motorola) TG3: Broadband Wireless Access (BWA) 議長:Mr. Jung‐sooWoo(韓) TG4: FSS Spectrum in the 10‐15 GHz Range 議長:Ms. Ting Ling Lee(SES) TG3: IMT 議長:新博行氏(NTTドコモ) TG4: Intelligent Transportation System (ITS) 議長:小山敏氏(ARIB) WG S&A 議長:Dr. AndriQiantori(IDN) TG1: Fixed Mobile Convergence (FMC) 議長:Mr. franciscus. Xaverius(IDN) TG2: Radicommunication Convergence (RC) 議長:Ms. LyuBoya(中) TG3: Modern Satellite Applications (MSA) 議長:Ms. G. R. Vincent、 (MYS) TG4: Aeronautical and Maritime (A&M) 議長:Dr. JiaxinDing(中) TG5: Wireless Power Transmission (WPT) 議長:Mr. Chung Chan‐Hyung(韓) TG6: FixedWireless Systems (FWS) 議長:川西哲也氏(NICT) 図1.AWGの構成(2014年12月現在) ITUジャーナル Vol. 45 No. 1(2015, 1) 47 会合報告 WG Spec への電波の到達時間の差を用いて電波発射源の位置 を計算する技術。 ︱ 構成グループ 担当課題 SWG SA&H SA&H(スペクトルのアレンジメント及び協 調) SWG SM SM(電波監視) TG SSIMT SSIMT(IMTに関する共用検討) TG PPDR PPDR(公共保安及び災害救援) TG BWA BWA(広帯域無線アクセス) TG FSS FSS(10-15GHzにおけるFSSのスペクトル) 図2.WG Spec(周波数に係るワーキンググループ)の構成 > 「電波監視へのデジタル信号処理技術の応用」に関す る新APTレポート案については、今会合では入力がな く、AWG-18へキャリーフォワードされた。 3.3 TG SSIMT(IMTに関する共用検討) > 「隣接及び近隣周波数帯におけるIMT-2000技術間及 び他の無線アクセス技術とIMT-2000間の共存検討」 に関するAPTレポートの更新・改訂作業を継続し、 AWG-18へキャリーフォワードされた。 > ASA/LSA( Authorized Shared Access/Licensed Shared Access)について検討を開始することに合意 討)及び1.17(航空機内データ通信(WAIC)の導入)に関 する三つの新APTレポート並びにそれらをAPG-15(WRC-15 し、2016年に開催される予定のAWG第20回会合 (AWG-20)までにレポートを作成することとした。 のためのAPT準備会合)に入力するリエゾン文書を作成し た。また、TG PPDRでの検討結果を3GPPに入力するリエゾ ンステートメントも作成した。 各Sub WG及びTGにおける主要な結果は以下のとおり。 3.4 TG PPDR(公共保安及び災害救援) > 「IMT[ベースの]技術を用いたPPDRモバイルブロード バンド機能の実装」に関する新APTレポート案の作成 が進められ、AWG-18へキャリーフォワードされた。ま 3.1 SWG SA&H(スペクトルのアレンジメント及び協調) > WRC-15議題1.1(IMTの追加周波数特定等の検討) で検討される周波数帯について、 「APT各国の周波数 た、その完成に向け、3GPPにおけるPublic Safety用 LTEの要件を求めるための3GPPへのリエゾン文書を作 成した 利用状況の調査」に関する新レポート案を、我が国を > AWG第15回会合(AWG-15)にて提案のあった 含む8か国からの回答及びITU-R JTG4-5-6-7会合(2014 「PPDRのハンドブック」の作成については、今会合で 年7月)の検討等を反映させて完成させた。 は入力がなく、AWG-18へキャリーフォワードされた。 > WRC-15議題1.12(8-10GHz帯における地球探査衛星 > AWG-15にて提案のあった「統合緊急通信及び指令の 業務への周波数分配の検討)に関連する「APT地域に ための移動体通信プラットフォーム」の検討について おける8700-9300MHz及び9900-10500MHz帯の利用」 は、今会合では入力がなく、AWG-18へキャリーフォワ に関する新レポート案を完成させた。 ードされた。 > WRC-15議題1.17(航空機内データ通信(WAIC)の 導入)に関連する「APT地域における2700-2900MHz、 4200-4400MHz及び5350-5460MHz帯の利用」に関す る新レポート案を完成させた。 3.5 TG BWA(広帯域無線アクセス) > 「3400-3600MHzにおけるIMTスモール・セル及びマイ クロ・セルとFSSの共用検討」の作業計画について、ス モール・セルのみのワークプランとすることで合意した。 3.2 SWG SM(電波監視) > 「TDOA(※)技術を用いたグリッド型監視ネットワーク」 に関する新APTレポート案及び「国境地帯における電 > 「マイクロ・セルの3400-3600MHzにおけるFSSの共用 検討」の作業計画について、AWG-18以降、別タスク として議論することとなった。 波監視手法」に関する新APTレポート案の作成が進め られ、次回会合であるAWG第18回会合(AWG-18) へキャリーフォワードされた。 ※TDOA(Time Difference Of Arrival):複数のセンサ 48 ITUジャーナル Vol. 45 No. 1(2015, 1) 3.6 TG FSS(10-15GHzにおけるFSSのスペクトル) > AWG第16回会合(AWG-16)で作成された「アジア太 平洋地域における13.75-14GHzの周波数帯の利用用途 調査票」に対する各国からの回答を取りまとめ、 「アジ 作業を開始した。 ア太平洋地域における13.75-14GHzの周波数帯の利 用」に関する新APTレポート案の作成を進め、AWG18へキャリーフォワードされた。 4.2 TG-SDR&CRS(ソフトウェア無線・コグニティブ無線) > CRS展開シナリオと関連技術に関する新APTレポート 案の作成を進め、AWG-18へキャリーフォワードされた。 4.WG Tech(技術に係るワーキンググループ)での検討状況について WG Techは無線通信に係る技術に関する事項を所掌し、 図3に示すとおり六つのTGが設置されており、小電力デバイ 4.3 TG IMT(移動通信システム) > 「GSMからモバイルブロードバンドへの移行」に関す る新APTレポート案を完成させた。 スや、IMT、ITS、無線給電システム等に関する検討を実施 > 「IMTの無線ネットワークにおけるNetwork Synchro- している。本会合においては、 「GSMの移動ブロードバンド nization技術」に関する新APTレポート案の作成作業 への移行戦略」に関するAPTレポート案及びFWSに関する を進め、AWG-18にキャリーフォワードされた。 APT調査レポート案を作成した。また、本会合にて開催が提 > 「アジア太平洋諸国における携帯事業者の周波数、技 案された、AWG-18での将来の移動通信(第5世代移動通信 術及び免許期間」に関するAPTレポートの改訂にかか システム(5G) )に関するAWGワークショップの実行計画案 り、APTアンケート集計結果を反映し、AWG-18へキ について検討された。 ャリーフォワードされた。 各TGにおける主要な結果は以下のとおり。 > AWG-18会合で開催予定の「将来のモバイル通信(5G) に関するAWGワークショップ」の実行計画案が検討さ 4.1 TG SRD(小電力デバイス) れた。 > APTレポート「SRDの導入・アプリケーション・課 題・技術開発」 、 「SRDの運用」及び「SRDの調和的利 用のための周波数帯」の改定作業を進め、AWG-18へ キャリーフォワードされた。 4.4 TG ITS(高度進路交通システム) > 「APT加盟国・地域におけるITSの利用状況」に関す る調査レポートの改訂作業を、ITU-R WP5Aが進めて > 現在の無線通信規則上、各業務への分配がない いる「APT加盟国・地域におけるITSの利用状況」に 275GHz以上の周波数帯に関しては、IEEE、ITU-Rに 関する調査レポートと同期させることとし、作業計画 おいて短距離無線通信システムの研究が進められてい を見直した。 るところ、 「275GHz以上の周波数帯で運用する近距離 無線システムに関する検討」を新規作業項目として開 始することで合意し、新APTレポート案作成に向けた > WRC-15議題1.18(79GHz帯短距離高分解能レーダー) に関してITU-Rと協調していくことを確認した。 > 「道路センサーネットワーク(RSN) 」に関する新APT レポート案について改訂し、AWG-18へキャリーフォワ ードされた。 WG Tech ︱ 構成グループ 4.5 TG WPT(無線給電システム) 担当課題 > 前回会合において、暫定文書として承認されていた 「WPTに関する周波数共用検討結果等」に関する新 TG-SRD SRD(小電力デバイス) TGSDR&CRS SDR&CRS(ソフトウェア無線・コグニティブ 無線) TG-IMT IMT(移動通信システム) TG-ITS ITS(高度進路交通システム) スシナリオと使用事例」に関する新APTレポート案に TG-WPT WPT(無線給電システム) ついて、AWG-18にてフレームワーク等を決定し、 TG-FWS FWS(固定無線システム) AWG第19回会合(AWG-19)から作成を開始すること 図3.WG Tech(技術に係るワーキンググループ)の構成 APTレポート案について作成を進め、AWG-18で完成 させITU-Rへ発出することで合意した。 > 韓国から提案された「モバイル端末向けWPTのサービ に合意した。 ITUジャーナル Vol. 45 No. 1(2015, 1) 49 会合報告 4.6 TG-FWS(固定無線システム) > FWSに関する各国の周波数利用、技術・製品の現状、 5.3 TG MSA(新たな衛星アプリケーション) > 「3GHz以下のMSSの統合システムと衛星・地上ハイ 将来ニーズ等をまとめたFWSに関する新APT調査レポ ブリッドシステムに関する技術研究」に関する新APT ート案について、APTアンケート集計結果を反映し、 レポート案が完成した。 完成させた。 > 固定無線システムの幅広い利用分野への展開と市場拡 大の促進を目的とした新APT技術レポートの構成案を 作成し、AWG-18へキャリーフォワードされた。 5.4 TG A&M(航空及び船舶) > 「航空機・地上間直接ブロードバンド無線通信システ ムのアプリケーション」のアンケート調査に関する新 APTレポート案について、次回会合にキャリーフォワー ドされた。 5.WG S&A(サービスとアプリケーションに係る ワーキンググループ)での検討状況について > 「航空及び船舶に考えられる無線サービスとアプリケ ーション」に関する新APTレポート案が完成した。 WG S&Aは無線通信に係るサービスとアプリケーションに 関する事項を所掌し、図4に示すとおり四つのTGが設置され ており、固定と移動の融合や新たな衛星アプリケーション等 6.アドホックグループにおける検討状況について に関する検討を実施している。本会合においては、 「狭帯域 本会合においては、アドホックグループが設置され、AWG M2M」 、 「3GHz以下のMSSの統合システムと衛星・地上ハ の目的と所掌事項の見直し、入力文書(INP)と情報文書 イブリッドシステムに関する技術研究」及び「航空及び船舶 (INF)の定義の明確化、TGの設立、継続及び廃止に関す に考えられる無線サービスとアプリケーション」に関する三 るガイドライン及びWG、Sub-WG及びTGの副議長の必要 つの新APTレポートとスモールセルクラウドに関するアンケ 性・指名方法等に係るワーキングメソッドの改訂の検討並び ートを作成した。 にAPTレポートをAPT勧告化するための可能性及び確認作業 各TGにおける主要な結果は以下のとおり。 の検討が行われた。検討の結果、ワーキングメソッドの改定 については結論づけるには至らず、AWG-18へキャリーフォ 5.1 TG FMC(固定と移動の融合) > スモールセルクラウドに関する新研究課題が提案され、 検討が開始されることとなった。 ワードされ、既存のAPTレポートをAPT勧告化するための可 能性及び確認作業の検討については、各WG議長が既存の APTレポートについて、勧告になり得るものがあるか確認を 行うこととなった。 5.2 TG RC(無線通信の融合) > 「狭帯域M2M」に関する新APTレポート案が完成した。 狭帯域M2Mに関する研究は本会合にて終了し、AWG18へ向けて新たな研究議題が募られることとなった。 7.AWG議長及び副議長選出結果 次会期(2014年∼2016年)におけるAWG議長及び副議 長の選出が行われ、我が国が議長として推薦した佐藤孝平 氏(電波産業会(ARIB)/日本)が新議長として選出され、 WG S&A ナム)が選出された。 ︱ 構成グループ 副議長には、Zhu Keer氏(中国)とLe Van Tuan氏(ベト 担当課題 TG-FMC FMC(固定と移動の融合) TG-RC RC(無線通信の融合) TG-MSA MSA(新たな衛星アプリケーション) TG-A&M A&M(航空及び船舶) 8.AWG-17で作成されたレポート・調査レポートについて AWG-17においては、各WGにて作成された新APTレポー 図4.WG S&A(サービスとアプリケーションに係るワーキンググルー プ)の構成 50 ITUジャーナル Vol. 45 No. 1(2015, 1) ト案及び新APT調査レポート案を審議の上、表1に示す合計 8件のAPTレポート及びAPT調査レポートが作成された。 表1.AWG-17で作成されたレポート・調査レポート NO. 表題 APT/AWG/REP-50 APT Survey Report on Frequency Bands in relations to Study on WRC-15 Agenda Item 1.1 APT/AWG/REP-51 APT Report on Usage of the Bands 8700 - 9300MHz and 9900 - 10500MHz in Asia-Pacific Region APT/AWG/REP-52 APT Report on Usage of the Bands 2700 - 2900MHz, 4200 - 4400MHz and 5350 - 5460MHz in Asia-Pacific Region APT/AWG/REP-53 APT Report on Migration Strategy of GSM to Mobile Broadband APT/AWG/REP-54 APT Survey Report on Fixed Wireless Systems APT/AWG/REP-55 APT Report on Study on Embedded Narrow Band M2M APT/AWG/REP-56 APT Report on Possible Radio Services and Applications onboard Aircraft and Vessels APT/AWG/REP-57 APT Report on Studies within the Architecture and Performance of Integrated MSS System and Hybrid Satellite/Terrestrial Systems below the 3GHz Band AWG-18においては、 「将来のモバイル通信(5G)に関する 9.次回会合について AWGワークショップ」の開催が予定されており、我が国とし 次回会合であるAWG-18は、2015年3月9日(月)∼13日 ては、東京オリンピック・パラリンピック大会が開催される (金)に日本の京都で開催される予定であり、より多くの国 2020年に向けて、ワイヤレス先進国として世界に先駆け5G 内の無線通信関係機関の皆様にも御参加いただき、IMT、 を実現するための取組を紹介するなど、議論を主導するとと 固定無線システム、ワイヤレス給電システム等に係る議論に もに、アジア・太平洋地域における連携を高めることによっ ついて、我が国が主導していきたいと考えている。また、 て、5Gの実現を推進していきたい。 ITUジャーナル Vol. 45 No. 1(2015, 1) 51
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