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NAOSITE: Nagasaki University's Academic Output SITE
Title
E ・ ソロモン教授の資本予算作成方式
Author(s)
山田, 珠夫
Citation
経営と経済, 41(2), pp.91-125; 1961
Issue Date
1961-07-30
URL
http://hdl.handle.net/10069/27609
Right
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http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp
山田珠夫
E・ソロモン教授の資本予算作成方式
<資 料>
まえがき
ここに紹介するためとりあげた論文、“MeasuringaCopmany'sCostofCapital”は、シカゴ大学経営学
部ユズラ・ソロモンEzraSolomon教授が一九五五年にジャーナル・オブ・ビジネス誌上に発表したものである。
その後この論文は、同じソロモン教授の編集になる論文集、TheManagementofCorporateCapital,1959.
のなかに収録されており、本稿の紹介はこれによったものである。
さてこの論文は、戦後米国にあらわれた資本予算問題の理論的検討をテーマとする一連の労作中の一つであるが、
、、この輪文には他にみられない大きなすぐれた意図が盛り込まれている。それは、自己、、、、、・
、他
、人双方の資本で賄うばあい
の資本予算の作成方式をとりあげ、その完成と正面から取り組んでいることである。しかもかなりの程度理論的に解
決しているのである。この間題は、D・デュランド教腰厄あっては将来の課題とされ、J・ディーン教授にあっては
(2)
問題が意識されつつも解決がなされていないものである。かくてソロモン教授のこの労作は、かなり高く評価さるベ
E・ソロモン教授の資本予算作成方式 九一
経蛍と経済
きであろう。
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ところで、ソロモン教授の論文は、 つぎの三部分から構成されている。
しい相違があるのである。
交点を見出す方式をとるのであるが、しかしかかる二つの曲線の作成法のうちに実はソロモン教授の他の論者との著
このような資本予算作成方式として、ソロモン教授は他の論者と同じく資本需要曲線と資本供給曲線を作成しその
九
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て論じてみることとしよう。
したがって本稿でも、右の各部分についてそれぞれ考察・紹介してゆくことを好都合ならしめるため、三部分に分け
一二、他人・自己両資本を併用する資本調達
二、自己資金のコスト
説
﹁現在株主の危険負担を増大させない範囲内で、現在
株主の所有株式の一株に帰属する将来利益を極大化するように行動する﹂という原理にもとめていること。
企業家もしくは経営者の投資行為を律する基礎原理を、
ソロモン教授の資本予算方式の特色を箇条書きにして指摘してみよう。
ω
(
2
)
企業家が資本支出を賄うために資本調達を行うにさいしては、自己資本と他人資本の双方を併用するばあいが
E ・ソロモン教授の資本予算作成方式
九
ωの特色は、教授の方式が甚だ現実的であり、企業経営の実際を考慮し、これに即応している乙とを示すものである。
われる。
る。教授の資本予算方式はかかる特色の故に、企業資本調達の意志決定に対しても有力な解決手段を供するものと思
ω の特色は、ソロモン教授以外の論者の論議によっては、殆ど解決されていない点であって、貴重な考えかたであ
いても用いることができるのである。
教授の方式は、自己資本のみで資本支出を賄うばあいについても用いることができるし、負債のみで賄うばあいにつ
った資本構成を避けようとするであろうから、ほぽ妥当な前提とみなして差支えないと思われる。もっともソロモン
ω の企業資金調達の在りかたに関する前提については、各企業の個別事情によっても異なろうが企業は著しく片寄
り込まれている意図は、﹁投資価値の極大化﹂原理にもとづく方式に近いのである。
資価値の極大化﹂の原理が打ち出されているのでもないことに注意する必要がある。しかしソロモン教授の万式に盛
ないことに注意する必要がある。しかしそうかといって、 D ・デュランド教授にみられるととく明確なかたちで﹁投
ω の企業家もしくは経営者の投資行為を律する基礎原理については、それが単なる﹁将来利益の極大化﹂の原理で
異にししたがって利子率を異にする各種負債について、それらの選択、調達量の問題を考慮していること。
右の資本調達源泉の中には当然負債が含まれているが、かかる負債については、さらにその中での調達源泉を
ら幾何額を調達すべきか、といった乙とをも考慮していること。
あらゆる資本調達源泉を考慮にいれ、それらの中からどれとどれを選択し、また選摂された各種源泉の各々か
もっとも多いという前提に立っている乙と。
(
2
)
四
﹁要請される最低利益率﹂
ZBEFBzggρEZ 品
利用できる調達源泉から得た資本のそれぞれについて、それらの株主にとってのコストを測定する乙と。こ乙
さ順にならべれば、乙の表から経営者は、会社の潜在的な長期資金需要の情況を明確に知る乙とができる。
予定支出案の一つ一つについて、見込みうる利益率を予測すること。予測したらそれら案を見込利益率の大き
である。複雑なこういった問題を合理的に解決するためには、つぎのような三つの段階を踏まなくてはならない。
ある。若干事項とは、資本支出の総額、そのような支出のとる形態、およびそのような支出にあてる資金の調達様式
の決定方法は複雑であって、そこでは経営者はつぎのような若干事項に関し同時に決定を下さなくてはならないので
z
z。向。 ω円巳ロmω=あるいは資本支出を決めるための﹁切り捨て﹂zgg片岡=率ともよばれる。きて、会社資本予算
である。乙のような用途から、乙の(資本コストなる)概念は、
採否決定を可能ならしめるにいたる正確で客観的な基準は、資本コストを用いることによって見出すことができるの
成方式が合理的なら絶対に欠かす乙とのできないものである。つまり、経営者をして資本支出をともなう投資諸案の
本稿の目的は、会社資本コストの明確で適切な定義・測定方式を示すにある。資本コストの測定は、資本予算の作
以下教授の論稿の第一部を紹介してみよう。
式を確立するための問題点、などを論ずるものである。
資本予算作成方式の一般型の提示、これまで採用されてきた資本予算方式のもつ欠陥、およびこれを是正し合理的方
であるが、つぎに紹介する第一部は第二部以下に展開される論義えの序論として、資本コストの問題を中心にして、
以上のようなソロモン教授の資本予算作成方式の特色は、教授の論稿の第二部、第三部において理解しうるところ
経営と経済
九
でいう﹁コスト﹂とは、このような入手可能な資金の各増分について、それらを順次に積極的に投資してゆくこ'とを
2
許容するため、それらについて要請される最低の利益率のことである。コストの低さ順に配列して調達額と予想コス
トに関する表をつくれば、乙れによって経営者は、会社が利用できる資金についての供給とコストのありえべ主的況
を明確に知ることができる。
以上の二つの表の比較によって、資本予算の問題を明快かつ正確に解くことができる。すなわち、各投資案に
率
E ・ソロモン教授の資本予算作成方式
九
00門司え 21z- にあってつねに中心的役割を演じてきたのであるが、
資本コストという概念は、資本の理論 5
資本コスト
戦略投資は企業の全体利益の減退を阻止するために行われるからである。
一般に認められていると乙ろである。乙の方法は、いわゆる﹁戦略﹂投資の評価を考慮するとき殊更に必要である。
いの将来の企業利益と当該プロジェクトが実施されたばあいの将来の企業利益とを比較せねばならぬ、という乙とも
また、ある特定プロジェクトから将来えられる利益を見積るためには、当該プロジェクトが実施されなかったばあ
が、しかし考えかたそのものはまったく正しいのである。
利益率を実際に計算しようとするばあいでも、経済予測上、会計資料上いくつかの難聞にぶつかることは確かである
であるかという理論面では完全な一致をみている。なるほどこのよラな理論的に正しい方式で、あるプロジェクトの
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一つの投資案の見込利益率の算定方式には、実窃面でまだかなりの相違がみられるが、どのような算定値が正確
益
を超えるような最初の案は乙れを棄却すべきであり、利益率がこれより小さなすべての投資案についても同様である。
んだ投資案を相継いで計画に入れてゆくわけである。一方、資本コストが見込みうる利益率に等しいかあるいはこれ
ついて見込みうる利益率が、その案を賄うのに必要な資金増分のコストを超えるあいだは、利益率の大ききの順になら
3
。
率
五
経営と経済九六
乙の概念の意味を明らかにしかっ乙れを測定する問題はまったく顧みられてこなかったといって差支えない。資本コ
ストをある特定会社につき測定するさいの実務面での難かしさはともかくとしても、今日では資本コストをどのよう
な概念にもとやついて測定するのが正しいかということについてさえ、明確で広汎な支持をもっ見解が存在しないので
ある。ここが資本予算の理論における最大の弱点であり、したがって乙の部分が埋められるまでは、資本予算の理論
は企業活動の ζ の 重 要 領 域 の 意 志 決 定 に と り 片 手 落 ち の 手 段 に と ど ま る の が 精 一 杯 で あ る 。
既刊の文献はほとんど例外なく、負債・自己資本双方の調達源泉が使用される現実に即した事態につき資本コスト
を定義する問題をまったく不聞に附してきた。これに対する例外でもっともよく知られているものはジョウル・ディ
qd
l ン教授の著作であるが、しかしその資本コストに関するもっともすぐれた論述でさえ、とうてい明確・完全とはい
いがたし
理論上と異なり、企業の実際面では乙の問題を回避することができなかった。だが明瞭で望ましい資本コストの測
定値をもたない以上、企業は資本予算の決定にさいし任意な基準に甘んぜざるをえなかった。多く用いられる万法の
一つは、いかなる年度であれ資本予算規模を内部から調達可能な資金額までに抑えることである。多く用いられる万
法 の も う 一 つ は 、 は っ き り し た 根 拠 も な く 年 あ た り 一 O 、一五、あるいは二 O パ ー セ ン ト と い っ た よ う に ﹁ 切 り 捨 て
﹂率を設定して、これを投資案容認のための最低要件とするものである。乙ういった万法を使用するならば、偶然な
ばあいを除いて、理論的に正しい解決││つまり、資本計画はその約束する利益率がその実施に要する資金のコスト
を上回るばあいにだけ乙れを採用すべきであるーーを放棄することになるのである。
この論文が以下で取扱う問題は、資本コストの概念を資本予算の決定に使うための正しい根拠ある万式を秩序立て
て明瞭に示すことである。しかしながら、このような方式を展開するにあたっては、すくなくともつぎのような三つ
会社の長期資本は、内部からであれ外部からであれとにかくその最大部分を自己資金に仰いでいる。ところで
の主なる難聞に直面せねばならない。
1
これらの資金には契約による固定した支払いといったものがともなわない。そこで、このような資金のコストはどの
ようにして測定したらよいのか。また、乙のコストは、問題の調達額が変化するにつれてどのように動くとみなした
らよいのか。
大部分の会社では資本調達にさいして、一部を、固定利息と償還条項をもっ負債資金か、もしくは優先株をも
E ・ソロモシ教授の資本予算作成方式
九
源泉についてそれぞれ正しい資本コスト測定方式をつくりあげてゆく。つぎにこれら測定方式をもとにして、資金増
では、資本源泉はすべて自己資金関係に限られる乙とを仮定する。このような枠のなかで、自己資金調達の可能な各
以上のような根本的な問題について解答を得るために、本稿では二つの段階に分けて考察をすすめる。第一の段階
かでどのように扱うべきであるか。
そ乙で、ある投資案のための資金を特定負債にもとめて生ずるコストの相違は、これを資本予算の全体的な枠組のな
設備資金調達には利用できないし、銀行貸付金は特定タイプの資産拡張だけに利用できる、といったととくである。
条件といったものがすべて異なる。たとえば設備信託証券は、ある種の設備資金の調達には利用できるが他の種類の
負 債 資 金 利 用 の さ い に は 、 投 資 案 の 種 類 Cと に 、 要 求 さ れ る 利 子 率 ・ 負 債 資 金 を あ て う る 割 合 ・ 貸 付 金 の 返 済
単にその性格上だけでなくさらにその大きさの上でも相違がみられるからである。
これをいかにして測定したらよいのであるか。このようなケ l スでは、それぞれの調達源泉に附随するコストには、
一部を自己資金でみたすことが必要である。そ乙で、二つ以上の源泉を用いて手に入れる資本のコストについては、
って賄う。だが、こういったいづれかのかたちで資本調達を行うさいには、投資に要する資金の総額についてはその
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Kenneth E. Boulding,Economic Analysis (
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; NewYork: Harper& Bros.,1
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) ,PP.782-830.
,
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l 1951) , chap. x
.
; Capital Budgeting (New
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l Dean, Managerial Economics (NewYork: Prentice-Ha
BusinessReview,January-February, 1954,PP. 120-30;
“Better Managementof Capit
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) , chap i
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; “
Measuring the Productivity o
f Capital",Harvard
throughResearch",Journal o
f Finance,May,1953,PP.119-28.
“Financial Management Series", No. 105 [NewYork American Manage ment
Gordon Shillinglaw,
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乙の問題については、乙のほかつぎの二論稿を参照の乙と。
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E ・ソロモン教授の資本予算作成方式
九
九
ところで、自己資本供給山線とは、白己資本の調達源泉から資本を順次に調達してゆくばあいの調達足の変化とそ
をテ l マとするものである。
資本供給山線の作成が某礎となるのである。以下に紹介する教授の論稿の第二部は、かかる臼己資本供給山線の作成
よって資本予算上の諸問題を解乙うとするのである。したがって教授の資本予算作成方式にとっては、いわゆるれ己
の方法によって負債資本調達問題を考慮した臼己資本需要山線をえがき、日以後にかかる一向山線の交点を求める乙とに
資本調達の問題を導入し、かかる自己資本供給山線を修正して新らたな自己資本供給山線をえがき、同時に教段独特
泉、がすべて自己資本関係に限定されることを仮定したばあいの資本供給山線をえがくことから出発する。ついでれ償
ソロモン教授は日己・他人両資本の併用という現実に即応する資本予算万式の確立にあたっては、まず資本訓述出
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3
)
経蛍と経済
一OO
一般に、減価償却、
れに伴う調達資本の限界単位のコストの変化とをしめした曲線である。したがって、自己資本供給山線の作成には、
資本コストの概念をまず確立しておく乙とが必要である。ところで自己資本の調達源泉としては、
利益の社内留保、普通株の発行、などが考えられる。したがってこれら諸源泉について、それぞれ資本コスト概念を
確立しておくことが必要となる。しかし、乙れら諸源泉より調達した自己資本については、定説として受け入れられ
ているような資本コスト概念が存在しない。かくてソロモン教授は、これら諸源泉より調達した自己資本について、
それぞれ正しい資本コスト概念を作り上げることからまず若手するのである。
株
以下、ソロモン教授の論文の第二部を紹介してみよう。
通
一つだけが正しいω
ι あげ
あるプロジェクトは、それについて見込むことのできる利益率が、会社資本の現在額につき会社が現
大きいばあいにだけ採用すべきである、とするもの。要するに、新株一株あたりの貢献する利益額がとにかく新株一
(b) あ る プ ロ ジ ェ ク ト は 、 そ れ に つ い て 見 込 む こ と の で き る 利 益 率 が 、 現 在 配 当 額 の 現 在 株 価 に 対 す る 比 率 よ り
だけの利益率をあげるならそのプロジェクトは望ましい、ということである。
つつある利益率を上回るばあいにだけこれを容認すべきだ、とするもの。要するに、会社投資額に対する平均利佐本
(a)
である。測定万式として挙げうる四つのものとは、以下のととくである。
自己資本コストの測定に用いうるとされる万式はすくなくとも四つはある。しかし四つのうち、
致はほとんどみられないといってよい。証券の引受け依頼と発行に要する費用を暫くのあいにゼロと仮定しておくと
普通株を新たに発行して得た資本についてそのコストを定義することは難事であり、実務にあっても考えかたの一
普
あるプロジェクトを容認しうるためには、その利益率は一株の現布市価と結びつけてみた現
ι の一株あたり
株あたりに対して支払われる配当額より一付ければ、会社からみて金時の中味が賄える、と考えるのである。
(C)
利益より高くなくてはならぬ、とするもの。乙の基準によれば、新規調達自己資本の正しいコストは、現在の一株ゐ
仁 り 利 益 と 現 在 の 一 株 の 市 価 と の 比 率 に よ っ て 測 定 し う る こ と に な る 。 こ の 測 定 値 を EP で表わすことにしよう。
(d) 新 規 調 達 自 己 資 本 の コ ス ト に 対 す る 第 四 の 、 し か も 筆 者 の 考 え る と こ ろ で は た だ 一 つ の 正 斗 な 概 念 は 、 E P
ω実 胞 が
という単純な比率を精密化したものである。分子には現主の一株あたり利益E に代えて、資本支出の予定案
E P と い う 比 率 が 新 規 訓 述 内 己 資 本ω コス
な い ば あ い の 将 来 の 平 均 し た 利 益 に 関 す る 経 常 者 の 段 善 の 見 積 り 値 を あ て る べ 主 で あ る 。 乙ω目 的 り 仙 をE で 表 わ す
ことにしよう。証券の引受け依頼と発行に要する費用がゼロであれげ、
ト測定のためのもっともすぐれた考えかたとなるのであり、したがって、新株だけで賄う新資本支出の切休日本として
てはこの某準だけを用いることにより、資本予符一上の決定が最適となることが保証きれるのである。
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Pと い う 概 念 の 正 し さ は 、 算 術 例 を 用 い る こ と に よ っ て き わ め て 科 易 に 説 明 す る こ と が で き る 。 い ま 、 あ る 特 定
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プロジェクトについて検討中の一つの会社を組定し、さらにこのプロジェクトが什己資本証券
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現在利益、
現在配当額、
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一株あたり二0 ドル
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券 場
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E ・ソロモン教授の資本予算作成方式
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万 ヌ
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総
計
株
証 工
の新たな発行で賄う資本支出を伴うものであるとしよう。資料はつぎのごとくである。
5 4 3 2
経営と経済
一O 二
ω年あたり利益の円以'以の見積り航:::::::::四二O 万ドル
拡張計画が存在しないばあいの将米の年むにり利益一
ω最良の見積り航::::・ji---ゴゴニO 万ドル
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拡張計画が採用されるばめいの将米
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六O O万ドル
プロジェクトについての当面の文山必史額::::::・::::ji--::::::::::::・六0 0万ドル
証券の引受け依頼と発行に.要する技用・::::::::::ji--:::::::::::ji--::::::::O
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山間
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川市ね山
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(6と7 のだ組) 一
可
叶
一
一l 11一
ιu'
を得る乙とができるからである。しかしそうしても諭 誌の正河川町 1ゆし点似つかない。
乙の資料によれば、検討の対象は、 見 込 利 益 額 が 年 の た り 九O 万ドル
ルのプロジェクトである。 したがって、 こ の プ ロ ジ ェ ク トω利崎中は年一五パーセントとなる。
(C)
(1と3 によって一 O ハ 1 セント) (b) 現
(a)
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資本
ι株価の.円分本たる現ト仕ω山中 中(こ
前 掲 四 種 類 の 資 本 コ ス ト 測 定 方 式 に よ っ て 、 々什万式いか正しいとする似を算山すればつぎのようになる
O パーセント)
の現在額に対する現在利益の比率
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現有株価の百分本たる別花の利益ギ (
3と5 に よ り 一 五 パ ー セ ン ト ) (d) 乙ω フロジ
ω 一 株 あ た り の 見 積 り 値 を 現 在 株 価 で 割 っ て え ら れ る 比 ギ (5と6 に
エク卜の実施がないばゐいの将米の平均的利益
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ない。それは、許容プロジェクトはすべて株主に利益をもたらすこと、および株主の利益となる実脳可能なプロジェ
とになる。ところで、経営者は自己の株主のために、つぎの二つのことをつねに保証する恭準を見出さなくてはなら
プロジェクトは採用、棄却の境界線上にある乙とになる。第四の万式によれば、このプロジェクトは棄却さるべきこ
さ て こ の プ ロ ジ ェ ク ト は 、 は じ め の 二 つ の 万 式 を 用 い る な ら 明 ら か に 採 用 可 能 で あ る 。 釘 一 二ω万式によれに、
より一六・五パーセント。)
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一一
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山の支出仰とまっ'だく与しい値としたのは、プロジェグトの見込利市'⋮?について附リ午に出
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0 9 8 7 6
クトはすべて棄却されない乙と、 乙の二つである。
一株の株式の保有者は、 つ ま る と こ ろ は そ の 株 式 に 帰 属 す る 利 益 の 流 れ に 対 し て 持 分 を も っ 者 で あ り 、 し た が っ て
乙の点からすれば、株主にとっての最大主要事は、将来の一株あたり利益に対しある政策がどのような影枠をあたえ
一株あたり利益が明らかに減ずることはつぎのように示すことができる。したがって、これら
るかということである。もし、はじめの二つの某準のうちどちらかを用いるならば、このプロジェクトは突出され
る。その結果として、
の基準は誤まりであることになる。
す な わ ち こ う で あ る 。 乙 の プ ロ ジ ェ ク ト を 賄 う た め に は 六O O万 ド ル を 証 券 の 新 た な 発 行 に よ っ て 調 述 し な け れ ば
.刀株の発行
ならない。そのためには、売出し価格が現在市価で証券の引受け依頼に‘要する費用がゼロであれば、三0
が 必 要 で あ る 。 し た が っ て そ の 後 の 証 券 資 本 構 成 は 一 三O 万株となるコそこで、この﹀プロジェクトを実施したばあい
の新利益は四二 O 万 ド ル で あ る か ら 、 こ れ は 一 株 あ た り に す れ ば 三 ・ 二 三 ド ル と な る 。 と こ ろ が 、 こ の プ ロ ジ ェ ク ト
に対して持分をもつことになるのである。した、かってもし、この三・二三ドルという計測怖にそのープロジェ
を実施せずしたがって追加資金の調達もおこなわないばあいには、株主は手中の一株につき、一二・一二0 ド ル の 利 益 (
2 と6)
クトに基因する利益がすべて漏れなく算入されていると仮定すると、この︼プロジェクト実胞の決定は現在の株主の立
場からみれば不都合なものとなるわけである。いいかえれば、普通株で調達した新資木で賄う新。プロジェクトを符認
すべき事態は、これらのプロジェクトの期待利益率が一六・五パーセント(四者円の万式による伯)を上川るばあい
だけに限られるのである。このようなばあいにだけ、プロジェクト実脳の結果一株の利益は増加するのである。かか
現在の帳薄資本利益率、
一O 三
およびこれら類似のその他概念は、
る理由により、投資案の採用、棄却基準としての正しい資本コスト概念は、必要資本を許通株で調達するばあいには、
弘
一p でなければならないのである。 配当利回り、
E ・ソロモン教授の資本予算作成方式
経営と経済
一O 四
一見新たに調達した自己資本のコストであるかのような印象をあたえるが、しかし ζれら概念は新規調達日己資本の
c
4
ゴストの測定にとっては適切でなく、したがってここではこれらを放棄しなくてはならないのである
p という万式を使用しないことについては、荒川左町山がつ
と こ ろ で 払 一p という万式を使用し、より簡単な E一
p と比べたぱあい、弘一p の万が考えかたそのものにおいてすぐれていること。どのような企業政策以日で
E一
ぎのととくいくつかある。
小川
もその採用にさいして検討を不可散とする事項は、その政策唄日採用後の純益と現在の純益との先額では江い。そう
﹁現実の﹂項目 (E) に代えて﹁見積り航﹂が必史となる。
ではなくて、その政策項目採用後の純益とその政策頂円の採用がないばあいの将来純益との五額である。もちろ人資
木ゴストの測定方式にとっては、かかる精密化のため、
rが大雑把な測定でも正しい考えかたにもとづくものは、円以良の測定でも諜つに巧えかたによりとづくものに比べれば
はるかにましなのである。
似 つ ね に Eと い う 概 念 は 決 し て 問 題 の な い も の で は な い 、 と こ ろ が 臥 は 将 来 に つ い て 見 積 り ね ば な ら ぬ と は い
は、その概念については少くとも問題がないこと。企業活動の周期的・な上界下降、棚卸資産損益、また会計憤刊の随
芯性のため、現在利益は言葉のきわめて厳密な意味では使いものになる数値で芯い。したがってこういった上川下降
現在株価に対する最近利益の比率は、これをいわゆる﹁成長﹂会社が用いるならば殊更に決定を誤るようにな
る
をならし非反復的な項目、事情の影響を取りのぞくために、過去利益についての平均、修正の手続きが必定とたるの
に
傾向をもつからである。
したがって﹁成長﹂会社については、検討中の投資案の採用可能性の判定基準として、
ること。こういった会社の株価は増加が期待される将来利益を反映し、ために最近利益を某準にしてみれば丙すぎる
(
c
)あ
(計画中の資本支出の実施がないと仮定したばあいの)将来利益の見積り値を用いることが殊更に重要となるのである。
証券の引受け依頼・発行に要する諸経費
自己資本証券の新たな発行には二種類の経費がともなう。第一は、引受け人に対して支払う手数料・登録に要する
諸経費・売出しに要する諸経費である。第二は、新発行株に課する最近株価を基準としたなにほどかの﹁割引額﹂
M
m
.
u であり、これは発行の成功を間違いのないものとするために通常必要とぎれるものである口新た
‘ロロ門問。円匂円山のご
)DM
とすれば、新臼己資金の修正した資木コスト概念
に調達した白己資本のコストを算出するさいには、以上の諸項目を計算に入れなくてはならないのである。そこで、
会社が一株について受取る正味現金額を(現在株価 P に対して
は L一九となる。
留保利益
もし株主が所得税がぜロという階屑にすべて属し、また証券の引受け依頼費用や仲立ち業者手数料もゼロであれば
間保利益により内部調達した自己資金の妥当なコストは、外部から調達した自己資金のコストに明らかに等しいので
ある。どのようなプロジェクトでもその約束する利益率が LE 以下なのにこれを採用し必要資金に間保利益をあて
zzog
門口
E
m
ω を社内留保せ、すに逆に配当するなら、株主は手中の配当受取金を、たとえば
るなら、株主利益が害われることを、前掲計算例によってまた説明することができるのである。すなわち、もし利益
F同U
︿
巴
中の充当可能部分 ω
EU
日分の会社の株式に再び投ずるととができる。個人所得税をゼロ、仲立ち業者手数料もゼロと仮定すれば、株主はこ
のような投資により年に一六・五パーセントの利益をあげる乙とができる筈である。したがって経常者は、とにかく
牧益性が一六・五パーセントにみたない目的のために利益を留保するなら、株主利益を害う乙とになるのである。し
一O 五
かしながら、プロジェクトの見込利益率が一六・五パーセント以上であるぱあいには、利益を配当として支払わずむ
E ・ソロモン教授の資本予算作成方式
経営と経済一
O六
L一れをもとに戻して LP とすればよく、
L一
P を修正し、乙れを留保利益についても適用可能
な も の と す る な ら ば 、 こ の 比 率 は 結 局 Cく わ ず か だ け 低 下 す る こ と に な ろ う 。 な ぜ な ら ば 、 将 来 利 益 に 対 す る 持 分 を
率が異なるからである。仲立ち業者手数料を計算に入れるため
ここで Pは 一 株 の 市 価 そ の も の で あ る 。 仲 立 ち 業 者 手 数 料 に つ い て は 難 か し い が 、 そ れ は 株 式 の 購 入 規 模 に よ っ て 料
引受け依頼費用と市価某準割引額の点で修正を胞すことは簡単である。
果すための最も容易なやりかたは、こういった非現実的な仮定を一つ一つ外してゆくことである。新株発行のきいの
ので、正確な間保資本コストを計算するためには払一れに対して若干の修正を施すことが必要となる。これら修正を
と こ ろ で 通 常 、 株 主 は 所 得 税 ゼ ロ の 所 得 附 同 に は 属3ず 、 ま た 引 受 け 依 頼 費 用 や 仲 川 ち 業 者 手 数 料 も ゼ ロ で は な い
より一層有効に利用されるようになるわけである。
がって、留保利益につき一八パーセントの利益率を見込みうるぱあいには、株主の金は配ーするより留保することに
二パーセントという利益率は、通常当会社説け通株の一六・五パーセントと同等と考えうる、という乙とである。した
益 性 と 危 険 性 の 双 方 を 併 せ 考 慮 す る ば あ い に は 相 互 に 同 等 で あ る 、 と 。 い い か え れ ば ζ のばあい、他会社説け通株の二
のように答えるピけである。すなわち、株式市場というものは甚だ抜け目なくできているので、各投資の見込みは収
パーセントの利益率をもつどこかほかの会社の株式を購入できる、と主張されるばあいである。乙れについてはつぎ
きる。ピがここで問題となるのは、株主は配当金に対しこれに代るなにかほかの使い途をもっている、たとえば二二
要利益率である。したがって、たとえば一八パーセントの利益率を有するプロジェクトは問題なく採用することがで
ができるということである。いまの例で、一六・五パーセントは留保利益で賄う投資計両につき設定された最低の必
留保資本コストの見積りにさいして生ずる一つの問題は、株主白身配当金を乙のほかのいろいろな用途に使う乙と
しろ留保してかかるプロジェクトに必要資金をあたえた方が、株主にとっては得となるのである。
6
株主が杜内留保でなく配当金の再投資によって獲得するばあいには、仲立業者に対し手数料を支払わなくてはならな
いからである。
受取り配当金について個人所得税が課せられることから、若しい聞論上、実務上の難問が注じてくる。もっとも、
も し 株 主 の 属 す る 所 得 階 層 が す べ て 同 一 で 、 し た が っ て 株 主 の す べ て に 対 す る 限 界 所 得 税 ギBRmE巳 E g目
u
。g
r¥ 同
Mc--BH) と た る わ け で あ る 。 こ こ で 百 件 は 限 界 税 ギ で あ る 。 い まω例でい
が(たとえば四O パーセントというように)等しくなるようであれば、作坊に問題を解くことができる。すなわち、
間保資本コストの概念は正しくは何
え ば 、 利 益 率 の 一 六 ・ 五 パ ー セ ン ト に0 ・六を来じて符られる九・九O パーセントが、市﹂波プロジェクトの資金川述
に留保利益のみをあてるばあいの妥当な棄却心中やとなるのである。
しかし個々の株主は異なった所得附凶に属し、したがって限界税半も児なってくるという事実によって、難かしい
問題が生まれてくるのである。しかもこの問題については、廿川本目的江主勺えかたの面でも企業経常の実際面でも解決が
難かしいのである。現在では株式は課税を受けない川体と社会で所件がけ以内のグループの双々によって広汎に所行
されており、したがって個々の株主について課せられる税率のあいだのひらきにはまことに大きなものがあり、かか
る事的から個々の株主は表面にあらわれぬとはいえ、配当政策に対し呉なった利宮山係をもつことになるのである。
た と え ば 、 留 保 利 益 を 用 い る 拡 張 に さ い し て 会 社 が E P という切捨て本を設定するならば、免税北川金の経常者や所
有者にとっては幸いであろう。ピがほかの株主はそれによって、配当金を受取りそれより税金を搾除した手取額を再
110
一O七
・印)を設定するならば、税率が五O パ ー セ ン ト よ り 低 く な る よ う な 附 闘 の 株 主 は 会 社 の 迎 用
び投じたのでは取得しえない利益持分増分を奪われることになるのである。反対に、もし会社がはるかに低い切れて
率 、 た と え ば 悶 r¥
司
(
一
、以上に有利に運用できる金を奪われる乙とになるのである。
E ・ソロモン教授の資本予算作成方式
円
経営と経済
一O 入
個人またはグループ聞の利害の調整をあつかうすべての問題同様、乙の問題についても完墜な解決をのぞむことは
無珂である。株式を免税基金が、あるいは配当受取り金に関心をよせる個人が所有する会社のばあいでは、留保利益
一つの重要な再投資可能資金の源泉となる。したがって、,このような資金に
に対し負わすべき最低の﹁コスト﹂は、もし経常者がある特殊所得附屑の株主を第一に考えることを決めるのでなけ
P とすべきであろう。
れば、すべて L一
減価償却費
減価償却。
費は補償されるばあいには、
。
対してもコストを設定する問題がある。そのためには、二つのばあいを考える必要がある。すなわち、川このように
ω成長する会社についてみられるのであるが、減価償却費の一円
資金が再投資可能な資本の唯一の源泉であるばあい、
投資に加えて純然たる新資金が投ぜられるばあいで、川よりも通普のばあい、乙の二つである。
第一のばあいでは、問題の会杜は、自己の資産総額が不変であるか、あるいは縮少しつつあるものとたる。かかる
さいには、資本コストを使った意志決定が真に適切であるとはいいがたい。乙のよラな会社にとっては、減価償却で
Q
問題は、減価償却により調達しうる資金量を、最高の利益を生みだす諸用途に配分することだけである。
調達できる資金について、社外投資や負債償還を合めた可能なかぎりの全用途を探る手続きをとることが適切となろ
う
第二のばあいでは、会社は成長の途上にあるものとなる。新自己資金の投下が行われつつあるわけである。このよ
うなばあいでは新投資案に対する棄却点は、資金の供給側については、資産明強資金の調達に用いられる外のかたち
の自己資本のコストによって決定されることになる。
自己資本供給表
われわれのつぎの仕事は、自己資金に関するコスト図表をえがくことであるが、乙の閃表は '
H己資本の源泉から資
本を順次に調達してゆくさいの増分コストを示すものである。そのような図表(第一図参照)は三つの部分から構成
されるととになる。
当該予算年度について期待しうる減価償却費の総額。第一図では、との額は一 O O万ドルと仮定されている。
留保利益中の充当可能総額。乙れは、税引後帳簿利益の期待額から、運転資本のために、配当維持のために、
百合宰
~t----- ーー・・ー・ーー
呈
』
町
戸L__ー --ーーーー・ーー・ー
~'~B
PI
PI A
自己資金供給表
第一図
s
4
3
2
(単位百 1
7ドI
l
)
E ・ソロモシ教授の資本予算作成方式
である。第一図では、乙の額は二 O O万ドルと仮定されている。
このような充当可能留保利益の中から投下される一'番はじめの一ド
ルのコストは町一p であり、こ乙で町は将来の企業人王体利益額の一
株あたり期待値であって、その中には一 O O万ドルの減価償却費の丙
投資に対して期待しうる将来利益をもふくむのである。
コスト曲線は留保資本の増分が、順次に投下されるにしたがって上
昇する乙とになる。乙れは、各プロジェクトが順次に採用されるつれ
て L-p が上昇するからである。しかしながら、各採用プロジェクト
が企業全体利益の一株あたりに貢献する程度は大きくないのが再通で
あり、したがって順次に調達してゆく各資金単位のコストの上対本は
急速なものではない。いま、減価償却費・留保利益で賄うブロジェク
一O九
トの利益期待値を入れた企業全体利益期待値の一株あたりの大きさを
νで示せば、充当可能留保利益の最終単位のコストは町一P である。
E
A
'
また当該予算に先行する予算中に採用された資本計画のために、すでに充当が予定済みの額を控除してえられる残額
B A
経営と経済
二O
留保利益中の充当可能分を使いつくしたら、会社はつぎに新株発行市場を利用して自己資金供給の第三領域に
コスト曲線は調達源泉が内部から外部に移行するさいに不連続となる。
るため配当宣言額を過去の水準以下に切り下げることである。このような行為は一般に株価を下落せしめるので、
﹁誠価償却費﹂という言葉のなかには、減耗消却費や通常の財務会計で費用として配分されるその他の資本消耗項目をも合
ζれ以後の分析では、仲立ち業者手数料を計算にいれるための小さな修正を無視する乙とにする。
株価は不変と仮定する。
のそ除いた部分、である。
あるいは側格変動にもとづく棚卸資産帳簿利益でしたがって必然的に利益の発生源中に拘束され処分不可能となっているも
利益中の充当可能部分とは、帳簿利益のうち‘当該予算に先行する予算中ですでに充当が予定されているものな除いた部分‘
って支出案評価の﹁誤った﹂基準である。
会社についてはほとんど無意味であるといってよい。帳簿価値の基準は将来の一株あたり利益の極大化ぞ保証せず、したが
り帳簿価値にあたえる影響である。第一のものは少数株主の所有になる会社については用いうるが、所有が広汎に分仇する
ずる乙とをしなかった。かかる基準の一つは新株発行が会社支配権におよばす影響であり、もう一つは新株発行が一株おた
いわゆる﹁実務﹂書といわれるもののなかに通常出てくる乙のほかの二つの基準については、われわれの分析ではとくに論
低い水準にまで下落すると思われるから、新白己資金のコストは一肘著しく高騰することになろう。
のようにして調達する資金のコストは急速に騰貴するものと思われる。配当に因される分が皆無となれば株価は一一間
こ
会社が乙れに代えて採りうる一つの万法は、新白己資本の市場に向うことを止めて、問問保利益の源泉を利用す
小さいので、
踏 み こ む こ と が で き る 。 こ の 領 域 に あ っ て は 、 最 初 に ま づ 投 下 さ れ る 資 金 単 位 の コ ス ト は L-h で あ るo hはP よ り
C
D
註凶
(
5
)
(
8
) (
7
) (
6
)
めて考える。
資金をいくつかの自己資本調達源泉のみから順次に調達してゆくときの調達量とコストの関係をしめす曲線、乙れ
が自己資本供給曲線であるが、われわれは以上によって、かかる白己資本供給曲線をえがく万法を完成することがで
きた。しかしソロモン教授の究極的な意図は、自己・他人一向資本で賄うばあいの資本予算の作成万式を完成すること
にある。しからば、ソロモン教授はこのような自己資本供給曲線をどのように用いて、自己資本のみでなく他人資本
をも利用するばあいの資本予算の作成万式を案出しようとするのピろうか。その方法は以下に紹介する教授の論稿の
第三部によって知る乙とができるが、実はこの点に教授の他の論者にみられぬ、きわめてユニークな思考が発回押されて
いるのであり、自己資本コストのすぐれた概念と並んで教授の資本予算作成方式における二つのやまを構成するので
ある。
ソロモン教授の独創性は、投資資金の一翼を担う負債資金の調達量・コスト関係の問題を、自己資金の調達佳・コ
ストの関係と自己資金の投入量・利益率の関係の二つの関係の中に吸収してしまおうとすると乙ろにあるのである。
いいかえれば、負債資金の調達量・コスト関係の問題を、自己資本供給山線と自己資本需要曲線の作成の問題の中に
吸吹してしまおうとすると乙ろにあるのである。そして、乙の二本の曲線の交点によって、資本予算の規模、したが
って資金の調達総額を決定し、さらにかかる調達総額を構成する負債部分と自己資金部分との割合を決定し、川時に
どの投資案を採用すべきかをも決定するようにしようとするのである。
ところで、ソロモン教授がこのように特異な方法をもって問題を解決しえたのは、企業の借入れ能力に関して独特
E ・ソロモン教授の資本予算作成方式
経営と経済
一般的借入れ
mu。4 3円と新借入れ力ロ命者げ。円円。考古閑旬。者向山との二種類に分けて考えたことである。企
ユ
ロ
04
かつ明断な解釈をこころみて、それを手掛りとした乙とによるのである。それは、企業の借入れ力を、
HOE-t。ロ
力 開2
業の借入れ力における乙の二つの概念の明確な区別こそ、実に教授における特有の資本予算方式を可能ならしめた故
も大切な鍵なのである。したがってかかる重要性のゆえに、ここで乙の二つの概念について若干の解説をくわえてお
かねばならない。
ある企業の一般的借入れ力とは、まづその企業の現在の資産総額を基礎とし、つぎにその中の他人資本部分を考雌
して決定されるその企業の借入れ能力である。それはあくまで企業の現在の資産総額を基礎として考えられた借入れ
能力であるから、投資による資産増加を前提としたばあいの借入れ能力でないことに注意する必要がある。企業が借
入れを行うばあいには、すべて広い意味での投資を前提としているから、このような借入れ能力概念は企業について
は著しく抽象的、観念的なものである。それはある意味では、資産総額中の自己資本部分のもつ担保力・抵当力とも
いいうべく、極端にはかかる自己資本部分の売却による換金能力を指すともいいえよう。したがってこのような借入
れ能力概念は、典型的には企業借入れについてよりむしろ消費者借入れについて成寸一する概念であろう。たとえば、
不動産を所有するある個人が、消費目的の現金を都合するためその不動産を抵当に入れて借金するばあいの借入れ力
概念である。このようなばあい、都合した現金は不動産の流動化されたものである。同様に企業についても、かかる
一般的借入れ力の利用の結果えられた現金は、企業総資産の中の自己資本部分を解放し流動化したものと考える乙と
ができるのである。
これに対して、ある企業の新借入れ力とは、投資により現在の企業総資産に追加された企業資産部分のもつ負債設
定能力であって、それはかかる資産部分が将来生みだす利益の大きさ、確実性、安定性によって規定されるものであ
る。かかる新借入れ力は企業における借入れ力概念としては、一応収益力というものを基準にして考えている点、
般的借入れ力に比べるとかなり現実的、具体的な概念であるといいえよう。しかし乙の借入れ力概念は、あくまでも
追加資産のみについてその負債設定能力を考えており、現在(投資前)の企業資産の大ききゃ資本構成の状態をまっ
たく無視している点で、やはり抽象的・観念的な概念であるといわなくてはならない。
したがって真の、また現実の借入れ力は、一般的借入れ力、新借入れ力のいづれでもなくて、実はその双方を包括
したものと考えるべきなのである。かくて、いくつかの資本計画実施のために現実に借入れられた金額は、かかる二
種類の借入れ力の双方にもとづく金額と考えられねばならないのである。乙れを逆にいえば、現実の借入れ金額は、
理論的にはこの二種類の借入れ力のそれぞれにもとづく部分に一応分割することができる、という乙とである。
きて、ソロモン教授のかかる企業借入れ力についての明断ですぐれた解釈が、自己・他人両資本で賄う資本予算の
作成方式の確立にとりどのように用いられるのであろうか。いいかえれば、資本予算を賄うための負債資金調達の問
題が、企業借入れ力についてのかかる解釈によってどのようにして自己資本の需要・供給両曲線の作成過程の中に吸
枚せしめられるのか、ということである。それは乙うである。まず、一般的借入れ力にもとづくと推定される負債調
達額は自己資本の流動化部分とみなすことも可能であることから、かかる流動化をいくつかの自己資本調達源泉の一
つにかぞえて、自己資本供給曲線を作成するのである。具体的には、同じく自己資本の流動化部分として自己資本供
給曲線の一環をなす減価償却費回牧資金と同一性格のものとみなし、両資金を一括して扱うわけである。したがって
かかる資金のコストとしてほ、負債資金としての利子コストを用いる乙となく、減価償却費回牧資金のコストに対す
ると同じ態度で考えてゆく必要があるわけである。
一方、新借入れ力にもとづく負債については、これを自己資本の需要曲線の中に吸枚してしまうのである。すなわ
E ・ソロモン教授の資本予算作成方式
一
一
一
一
一
経営と経済
一一四
ち、各プロジェクトの負債充当可能額したがって各プロジェクトの自己資本充当額(乙れは各プロジェクトの必要資
金額より各プロジェクトの負債充当可能額を控除してえられる)、およびかかる自己資本部分についてそのプロジェ
クトが約束する純益額を、かかる負債部分の実質的利子率を各プロジェクトが将来生みピす利益の予測値より控除し
て算出し、さらにこの二つの算出値を利用して各プロジェクトがその充当自己資金について約束する純益率を算出す
るわけである。そしてかかる純益率の大きさ順に各プロジェクトを並べることによって、自己資本需要曲線をえがの
くわけである。このようにしてソロモン教授は、資本予算における負債資金調達の問題を、借入れ力についての特有
解釈を手掛りとして、自己資本の需要・供給両曲線の作成の問題の中に吸牧してしまうのである。
最後に、かくて得た自己資本供給曲線と自己資本需要曲線について、その交点を求める。乙の交点によって、資本
予算上の基本問題を解く乙とができるわけである。すなわち、まずいくつかの予定された投資案のうちからどれとど
れを採用するか、つぎに採用各案の自己資本充当額と負債資本充当額のそれぞれを採用諸案のすべてについて合計し
て、資本予算の実施に要する自己資本額と負債資本額を、また両者の合計としての必要資本総額を、それぞれ決定す
る乙とができるのである。
以下、 ソロモン教授の論稿の第三部を紹介してみよう。
きて乙乙で、これまでの分析を押し拡げて、負債資金供給の問題を採り入れて乙なくてはならない。そのためには
ω 負債資金の現金コストを見積ること。乙れは比較的簡単な
ω 他人・自己両資金を一個の統一した枠組のなかで扱う合理的な資金配分方式を確立すること。乙れ
二つの問題を解決する乙とが必要である。すなわち、
問題である。
は未だに満足すべき解決をみていない難問である。借入れによる資金に対してはなにほどかの割合の自己資金をつね
n
u
に併用せねばならないので、調達における乙れら二源泉を同時に扱う資金の合理的配分方式は、資本予算の骨格の完
成にとってまず第一に必要なものである。しかし、分析の中に負債資金の問題をとり入れてくることによって、多く
および借り手の背負い込む危険
の回避しえない難聞が生じてくる。たとえば、負債の利用には危険の潜在が伴うが、 乙れは自己資金の調達だけで賄
うばあいには存在しないものである。 負債資金に関してそのコスト、 利用可能性、
は、異なる資本支出 Cとに異なるとともに調達にさいしての自己資本と負債との割合によっても異なるのである。
番適切な決定を間違いなく下すためには、これら諸要素を明確なかたちで考慮に入れなければならないのである。
負債の現金コスト
負債資金の現金コストの計算は、比較的単純な問題である。元金の償還と利息の支払いについては、借入れ契約に
よって詳細な予定表があたえられている。銀行借入れもしくは社債発行による正味手取り額も判明している。この二
つの事実によって、負債資金の利用に対して会社が支払う実際利子率の計算は単純な問題となる d
ただ一つの修正計算は、利息の計上が税金を削減しうることによって必要となってくる。もし利益等の計算に税引
後の正味額で考える方法を採っているならば、利子費用もまた税引後純額主義で考えるよう変更しなければならぬ。
そのためには、税率の将来の高さについて一定の仮定を設けなくてはならぬ。そのような仮定をもととして、利息と
元金に関する粗の現金支出額を正味の現金支出額に変更することができるのである。このようにして負債資金に対す
る正味利息コストを測定する乙とができるようになる。
負債資金と自己資金
負債・自己両資本で賄う資本予算における負債資金コストの使いかたとしては、四つの考えかたがあるだけであ
一一五
る。資本予算にとっての基本問題は、予算規模を決めさらにそれを賄う調達源泉の構成を決めるといったことである
E ・ソロモシ教授の資本予算作成方式
経営と経済一一六
が、われわれの仕事は、かかる問題の解決にもっとも適切なよりど乙ろを与えうる思考様式を探し出し、 かつ ζれを
展開する乙とである。
法
会社の負債設定能力、留保利益一ドルにつき新負債一ドル
自己資金の利用を正当化するのに必要とされる利益率:・ ::-ji--:::::::一O パーセント
※
利益の留保によって調達しうる自己資金の最高額::::-ji--::::::::::::・三0 0ドル
説明する乙とができる。つぎの事実を仮定しよう。
すべき投資案を採用してしまう乙とになる。 A法の本質に根差すこういった誤ちは、簡単な計算例を用いてたやすく
債資金の正味コストより高いばあい(これは通常のばあいである)には、本法の利用によってつねに、正しくは棄却
投資案を採用しうるかどうかについての間違った判定基準を得る乙とになる。たとえば、自己資金の正味コストが負
途があるのでコストが存在する乙と、乙れである。 A法にあっては自己資金コストを無視するので、この方法からは
保たなくては利用しえないとと、およびこういった自己資金にもまた、たとえば配当支払いといった再投資に代る用
はつぎの二点が見落されていることである。すなわち、通常、負債資金は併用する自己資金との間にある種の割合を
との考えかたには著しい欠陥が沢山あるので放棄しなくてはならない。最も重要な欠陥は、この考えかたにあって
E
批仰が与防車ω
られているものは、負債増加分について支払う(税引後の)正味利子率だけである。そこで、正味利益率が乙のコス
叫
のカツコのうち、︺
ト よ り 高 く な る と と が 確 実 な 投 資 案 を 採 用 す べ き 乙 と に な る べ ︹ 訳 註 ..
にあっては超過分をすべて負債で賄うことを前提とするものである。しかも新資本のコストとしてこ乙で適切と考え
乙ういった思考様式の一つは自己資金(を内部資金に限定してそ)の供給量を所与と考え、これをこえる資本調達
A
負 債 資 金 に 対 す る 正 味 利 息 コ ス ト :-ji--::ji--:::-ji--・
:::ji--:::・ニパーセント
H
H
差引き:3
0
0ドルに対する正味利息… 6
.
0
0
4
2
.
0
0ドル
。
2
8
.
0
0ドル
1
4
.
0
粗 利 益 … … … … ・ … ・ リ4
2
.
0
0ドル
差引き:2
0
0ドルに対する
4
.
0
0
正味利息コスト
3
8
.
0
0ド
ノL
正味利益
F
4
8
.
0
0ドル
E味利益
1
0
.
0
0
配当金に土る自社株の追加購
入によって得られる利益持分
0パ戸セント)
(配当金の 1
で、残り三0 0ド ル を 借 金 で 、 そ れ ぞ れ 調 達 す
ることになる。このようなばあいには、株主が
享有しうる利益の純増分は四二・ 0 0ドルとな
る。その計算を示せば上の上表のととくである。
乙れが株主の獲得しうる最良の結果でないこ
とを説明してみよう。たとえば、もし最初の
案だけを採用するならば、株主にとって一屑有
利 な 結 果 が 得 ら れ る 。 こ の ば あ い に は 四O Oド
ルピけが投下され、そのうち二 0 0ドルは留保
利益で、あとの二0 0ドルは借金で調達される
一一七
0 0ドルは配当として支払われる乙とになる)。(下表参照)。
2
0
0ドルの 1
4
パ セント
2
0
0ドルの 7
バーセント
(留保利益残額の一
H
E ・ソロモン教授の資本予算作成方式
ζとになろう。
パーセント…………… 6
.
0
0
2
0
0ドルの 3
粗利益…………....・ ・
.
4
8
.
0
0ドル
A法 の 基 準 を 使 用 す れ ば 、 三 つ の プ ロ ジ ェ ク ト は す べ て 採 用 さ れ る こ と に な る 。 す な わ ち 、 三0 0ドルを社内留保
これは、株主の配当受取り観をもって、当額より税金控除の残額で買いうる将来利益持分額を割ってえられる比率である。
三 パ ー セ ン ト の 利 益 率 を 見 込 み う る 二0 0ドルの投資
七パーセントの利益率を見込みうる二 0 0ドルの投資
一四パーセントの利益率を見込みうる二0 0ドルの投資
プロジェクトの本年度申請分
3 2
来
2
0
0ドルの 1
4
メーセント…………… 2
8
.
0
0ドル
2
0
0ドルの 7
バーセント・ ・ ・..…… 1
4
.
0
0
経営と経済
法
(a)
一一人
(a)
借
(b) 債 務 が 履 行 で き な く な る 危 険 、 ま た 乙 う い っ た 不 慮 の 事 故 が も た ら す 終 極 の 事
会社は自己の資本構成を修正し、新負債の真実コストと新自己資金のコストが等しくなる点にま
(b) 新自己資金のコストが調達源泉の如何をとわず、調達資金のコストに関する
種類の誤ち、つまり棄却すべき案を採用してしまうといった誤ちを避ける乙とができるのである。だが、 B法には、
る。投資案の容認に要請される最低利益率に新自己資本のコストを用いることによって、 A法の本質に根差すような
B法は実用的な仮説として多くの長所をもっている。本法では A法と異なり、借り手の危険が計算に入れられてい
かなりすぐれた尺度となりうる乙と。
でもってゆくこと、したがって、
とができる。
めて自己資本調選に移行するものと思われる。以上のような理由にもと*ついて、われわれはつぎの乙とを仮定するこ
つれて増大するからでもある。負債のコストが上昇して自己資本コストの高さにまで達すると、会社は負債調達を止
それは、貸し手が名目コストを引きあげるからであり、また借り手の負担する危険が負債の対自己資本比率の上昇に
る聞は、負債によって資金を調達する筈である。しかし負債額の増加につれて、負債資金の真実コストは増大する。
態、といったものである。会社は、負債増分の真実コストの総計が自己資金の新たな調達にともなうコストを下回
制、といったもの、および、
り手が借入れ契約によって蒙る拘束、たとえば配当について蒙る制限、負債の償還について蒙むる減債基金設定の強
単に支出費用たる利息の発生額だけでなく、 乙のほかつぎの二つの要素も併せ考えることができる。それは、
このような考えかたの基礎にある論点はつぎのようなものである。借り手からみた負債資金の真のコストとしては、
たるものを、自己資金としてのコストにもとめようとするものである。
乙れに代る考えかたは、源泉が負債であれ自己資本であれ、とにかくすべての調達資金についてその正しいコスト
B
つぎのような二つの欠点がある。
川予算中に計上された負債資金のすべてを同一の危険度を有するものとして評価するわけであり、本法にあって
は予算の中で危険度の高い案と低い案について差別を設けることができない。
すべての企業において新負債資金の限界コスト(危険をふくむ)が新自己資金の限界コストに等しくなるよう
な負債・自己資金比率がつねに維持されている乙とを仮定することによって、本法においては、ある一つの企業が自
己の資本構成についてこのようなすぐれた均衡を達成するためにはどのように行動したらよいか、という問題が考え
られていない。つまり本法からは、資本予算問題の一つである、予算について資金をいかに調達すべきか、というこ
とについて手掛りを得ることができないのである。
法
A匂
して考慮しなくてはならぬこととなる。
E ・ソ宵モン教授の資本予算作成方式
一一九
にもとづく部分にウェートをあたえようとするさい、適用しうる明確なル l ルが存在しないように思われることであ
本法のもつ第一の欠陥は、資本の﹁合体コスト﹂
gszs品。。えを構成せしめる負債にもとづく部分と自己資本
は、負債にともなう危険が計算に入れられてないので、そのような危険については各案の期待利益率の見積りにさい
負債コストと自己資本コストとの加竜平均値の算出を意図するのである。乙ういった資本コストの見積り法にあって
利用せねばならぬこと、 乙 れ で あ る 。 き て 、 乙 れ ら 両 源 泉 に よ る 調 達 の そ の 合 体 額 の 単 一 コ ス ト の 入 手 に 、 本 法 で は
け也用いて資本投資を賄いえないこと、したがって負債および自己資本の源泉は調達にさいしてはその双万を同時に
正味利子率をとるのである。しかし乙の考えかたにあっては、つぎの点に配慮がなされている。それは、負債資金ピ
第 三 の 考 え か た は A法 を 精 密 化 し た も の で あ る 。 乙 の 考 え か た に あ っ て も 、 負 債 資 金 の コ ス ト と し て ( 税 引 後 の )
C
経営と経済
O
一の負債部分と自己資本部
る。もちろん、ウェートの基礎となるべきこれに関係ある比率は、当年度における調達額一
中
分との比率である。だが、 乙の比率を使う乙とによって正しい結果が得られるのは、当年度における調達額中の負債
部分と自己資本部分との比率が現在の会社資本構成中の負債部分と自己資本部分との比率におよそ等しいばあいだけ
である。しかしながら、自己の資本構成を変じつつある会社については、乙ういった均等性が存在しない。たとえば
現下調達額における負債部分の自己資本部分に対する比率が、現在にいたるまでの負債・自己資本の累積額における
とのような比率とくらべて、乙れよりはるかに高くなることは充分にありうることである。このようなばあいには、
ω 現在する資産を基準とした負債設定能力と、したがっ
重 要 な 問 題 が 二 つ 発 生 す る 。 そ れ は 、 川 会 社 資 本 構 成 。2?ω=21ZZNEZロの変化によって、会社株式の市
価したがって自己資本コストはどのような影響を蒙るか、
てまた負債利子率によって、新投資案を採用しうるかどうかを決めることは正しいか。たとえば、これまで負債を負
っていなかった会社が、当年度の資本予算に要する資金を、拡張のための新自己資金を全然併用せずにその全額を借
金によって調達しうるばあいはたしかにありうる。このようなばあいには、資本の合体コストは正味利子本(約二パ
ーセント)に等しくなるわけである。乙ういった高さの比率を、投資案を当年度予算中に入れるかどうかを決めるた
めの棄却率として黙認することは正しいであろうか。
以上のような難聞を回避するため合体コストをこれまでの資本構成にもとづくウエートで計算するならば、乙うい
った計算によっては配分すべき資金についてそのコストを正確に把えることはできないであろう。かくて C法を用い
るためには、特別の判断を相当程度行使する乙とが必要となる。資本予算万式を合理的ならしめるのは、根底では特
別の決定を可能なかぎり少なくしようとする意図をもつものであるから、 C法は完全な解決法とはいえない。
筆者の提案する方法
これまで考察してきた三つの方法とその各々に附随する欠陥をかえりみるならば、負債・自己資本比率の最適値決
定の問題と資本コスト測定の問題は、乙れを別々に切り離しては論じえない乙とに気着かれる筈である。この二つの
問題は同一の考えかたの枠組のなかでこれを解かねばならないのであり、そのうえ容を見付けうるような枠組はけっ
して簡単な枠組であるようには思われないのである。
以下に示唆する考えかたは、これまで論じてきたほかのどの方法にも増して複雑である。そうはいっても、乙の方
法が他の方法では必要でない基礎資料を必要とするというのではない。乙の方法がこれまでの万法と基本的に違うの
O
D
o
g
-︼。口。 ユ
一般的借入れ力開
dロ
悶旬。 43円
は、資料利用にさいしての明確性と系統性である。乙の筆者提案の方法が採用する一つの主要な考えかたは、会社の
(a)
司げ。円円041ロ拘旬。43円である。こういった借入れ力における二つの領域は、資本予算の
(b) 新 借 入 れ 力 ロ0
4
借入れ能力を分けてつぎの二種類とすることである。すなわち、
と
、
作成を目的とするばあいには、別々にまたそれぞれに向くように論じうるし、また論じなくてはならない。
︹一般的借入れ力︺
一般的借入れ力とは、会社が現存資産に対する現有持分の故にもつ潜在借入れ力である。すなわち、それは債権者
保護目的の自己資金調達を一切伴わずに自己資金以外の資金を調達(優先株の発行も含む)しうる力のことである。
会社がかかる一般的借入れ力を利用するさいには、その結果得た資金のコストはこれをそのまま資本予算作成のため
の計算に用いてはならない。乙ういった資金については、つぎのような態度で接することが正しい。
(とこのような資金調達はその本質的意義においては、会社資産構成のなかにそれまで固定されていた自己資金
円
。
巳
gsz の売却やこういった実質的資産を頼む借金
SEω ロmZ 乙とに相当するといえる。いいかえれば、支払手段のかたちをとる自己資金は、これを単
を解き放つ E
r けでなく、同時に実質的資産
に当期利益や新株発行から
E ・ソロモン教授の資本予算作成方式
経営と経済
からも引きだし供給する乙とができるという乙とである。
一般的借入れ力を行使して解き放った自己資金をも入れて、とにかく充当可能なすべての自己資金は、諸々
︹新借入れ力︺
検討中の各プロジェクトについて負債で賄う部分の大きさを決めなくてはならぬ。あるプロジェクトとある
あるプロジェクトが不確実な将来にわたって生みだす営業純益率 22 え 5
件。℃
22zmg円ロ吉岡 ω の合理的期待
るものと同一である。すなわち、提案された各プロジェクトがもっ借入れ力には一定の限度があるが、この限度は、
ういった結びつきがないぱあいには、経営者がやらなくてはならない。しかし、そこでの原理も慎重な貸し主が用い
借入れ金との聞にはっきりとした結びつきがあるぱあいには、貸し主が実際にこの負債額を決定することになる。乙
(a)
定されてくる。筆者は負債資金のコストと調達額の検討にさいしては、つぎのような方式の採用を提案する。
使わなくてはならない。乙乙で下される決定によって、今度は資本予算を賄うために用いるべき負債の正確な額が決
いった可能性とそれによって獲得しうる負債資金の伴うコストは、これを当然そのままのかたちで資本予算の決定に
獲得する。資本予算に計上中の投資案は、完成の暁には新規の負債設定を可能ならしめるにいたるからである。こう
現 存 資 産 に 基 礎 を お く 一 般 的 借 入 れ 力 に 加 え て 、 会 社 は 稼 働 資 産 者2Eロ
mgzz の追加によって新借入れ力を
の投資案に以下に要約の方式により配分すべき単一の資金プ l ルと考えねばならない。
(C)
金供給曲線が全体として右方にシフトすることである。
あれば、留保利益と外部調達自己資金の双方のコストは不変である。したがってこのばあいの基本的効果は、自己資
て、これをほかの自己資金と一緒にして考えてゆかなくてはならない。株式市価が会社資本構成を変更しても不変で
(b) 一般的借入れ力を利用して解き放った自己資金は、会社が投資え充当しうる自己資金の供給表中に組み入れ
一
一
一
一
一
値中の最低値を用いて決める乙とができるのである。というのは負債は、それで賄う投資案が利益率が仮りに最低に
とどまっても負債設定にもとづく費用の全額だけは支払いうるように、その最高額を設定しなくてはならないからで
ある。換言すれば、各プロジェクトを一つの企業と考えて、かかる企業における﹁債務不履行﹂の可能性が皆無とな、
るように負債充当額を決定すべきである、ということである。
(b) ある投資案について調達を必要とする自己資金の総額は、必要資金の総額から当該案に対する負債の充当許
容額を差引いた残額となる。同様に、かくて得られた自己資金部分について当該プロジェクトが約束する純益の流量
は、現金利益の期待量から負債充当分の利息と元金の支払量を差し引いて得られる残量となる。このような純益流量
以上のような手順を経てわれわれが手に入れるものは、自己資金要請額とそれを与えたときの確実な見込純
は、これをあるプロジェクトがその充当自己資金について約束する純益率というかたちで示すことができる。
(C)
益率とを投資案の一つ一つについて示した表である。この表を見込利益率の大きさ順に並べるわけである。この表の
ほかに、われわれは自己資本増分を順次に投ずるさいの﹁コスト﹂を示す表をもっている。乙の二表の交点が、資本
予算のための論理上必然の棄却点となるわけである。
以上に要約した筆者提案の枠組にあっては、資本予算の決定はあるプロジェクトの(税金と負債関係支払額を控除
するときの)純益率と自己資金コストとの比較を基礎とするのである。借入れ利子率は、分析の需要側で計算に入れ
ることになる。各投資案のあいだの危険度の差異に対しては本方式では危険度の低い案に対しては、大きな割合でコ
ストの安い負債資金を与える乙とによって掛酌を加えている。
ω 乙の点によってどの投資案を採用すべきかが決定され、同時に、
乙の枠組があたえる棄却点によって、資本予算における資金の調達と調達した資金の投下の双方についての決定を
同時に解く乙とができるわけである。つまり、
E ・ソロモン教授の資本予算作成方式
一
一
一
一
一
一
ω
経営と経済
一一一四
乙の点によって採用諸案を実施するために利用すべき負債額が決定されてくる、のである。
各案に対する負債充当額の合計値に等しい。
未解決の問題
乙の負債額は、採用
本論ではある特定の資本予算について、その規模を決定し、その必要資金を調達する問題を論じた。かくて本論で
は、資本コストの正しい定義・測定方式と、二つ以上の調達源泉を利用するばあいの資本予算決定の枠組とを追及し
たのである。しかしながら本論では、資本予算のもっと大きな問題を考察していない。それは、あるきまった一組の
採用可能な投資案とそのための資金調達は、これを次回予算に繰り延べた万が有利かどうかを決める問題である。こ
の問題は本論で扱った問題より広汎であり、資本財と調達資金について現在コストと将来コストを比較する問題を含
んでいる。もし乙れら基本的変動要素の一方または双方について差し引きして好ましい変化が著しく期待されるなら
ば、さきに展開した枠組があたえる決定を延期することが必要となろう。しかし、かかる精密化の Kめの考察は、本
論の対象の範囲外にある。
法と同じである。
実質的な借入金利子率の算定法は、投資案の実質的利益率や額面以外のある価格で買入れた社債の満期までの利子率の算定
ある。
註川間 無論かかる一般原則に対しても例外があることは、 F H A
貸付金そめぐって最近発生したいくつかの醜聞によって明らかで
(
10
)
って示され、乙の双方の曲線の交点によって資本予算問題が解決されるものとしているのである。
はゆるやかに下降する曲線によって、また﹁利子率﹂は(通常は水平、しかし時としてはゆるやかに上昇する)別の線によ
乙の考えかたは、教科書のなかに出てくる周知の図表の基礎となっている考えかたである。乙の図表では、限界資本利益率
ω
(
瑚
無論、かかる危険度の差異を分析の需要側で計算に入れて、危険度の高いプロジェグトについては、その利益率の見積りを
匂-mD)
危険度がかく高くないばあいには正当と考えうる値より低い値とするととは可能である。
乙れは、ジ冒ウル・ディ 1 ンの提案する考えかたである。(わωZZ 戸田区内田ぬZ
一 EF
あるプロジェグトの利益率とは、そのプロジェグトがあげる可能性がもっとも大きい利益率である。しかし将来は不確かで
註間参照。
あるから、やがて実現する利益率は、このもっとも可能度の高い利益率を下回るかもしれないしあるいは上回るかも知れな
一二五
い。ありえベき利益の分散範囲は、危険度の高いプロジェグトほど危険度の低いプロジェグトに比べて広汎となる。最低利
益率とは、実現する利益率がそれ以下となる可能性が著しく少ない利益率を指す。
E ・ソロモン教授の資本予算作成方式
1
3
)
(
4
) (
同 1