U1610A/U1620Aハンドヘルド・ オシロスコープのフィールド

U1610A/U1620Aハンドヘルド・
オシロスコープのフィールド・
アプリケーション
Application Note
はじめに
Agilent U1610A/U1620Aハンドヘルド・オシロスコープは、オシロスコープ、
マルチメータ、データ・ロガーの3つのテスト・ツールが統合された、堅牢で
持ち運びに便利な測定器です。このアプリケーション・ノートでは、Agilent
U1610A/U1620Aをフィールドで使用する3種類のアプリケーションを紹介し
ます。
• パワーの測定
• 信号の不規則性の検出
• 電源ライン電流の高調波の解析
パワーの測定
動作電圧はどのような電気システムにおいてもまず知らなければならない重要
なパラメータです。ただし、電圧それ自体にはあまり意味はありません。電気
システムの動作を理解するには、パワーも正確に測定する必要があります。こ
の知識は、モータや空調(HVAC)システムなどのデバイスを扱う際に必要です。
なぜオシロスコープがパワー測定に最適なのかを理解するために、フィールド
で扱う可能性がある次の電気回路について説明します。
• 抵抗性負荷に接続されたDC電源または低周波電源
• 非抵抗性素子を含む負荷に接続されたAC電源
抵抗性負荷に接続された
DC電源または低周波電源の
測定
図1は、電圧源V Sと負荷R Lから構成される初歩的な電気回路です。電流が流れ
ると、生じたパワーは熱として消費されます。
I
A
VS
RL
V
図1. 抵抗性負荷に接続されたDC電源
この回路のパワーは、デジタル・マルチメータ(DMM)を使用して容易に測定
できます。V SとR Lの値はどちらも変化しないので、負荷R Lの両端の電圧V Sと
電流Iを簡単に測定できます。その結果から、負荷に供給されるパワー Pを式1
によって計算できます。
P=I×VS
式1
電源が低周波AC電源の場合も、同じ方法でパワーを測定できます。DMMを使
用して電圧源のRMS値V Sを測定し、次に負荷R Lを流れる電流のRMS値を測定
します。
通常、電源ライン周波数で純抵抗負荷に供給されるパワーの測定には、DMM
を使用できます。しかし、次のような場合は、オシロスコープの方がパワー測
定に適しています。
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パワーの測定
非抵抗性素子を含む負荷に
接続されたAC電源
図2は、AC電圧源VSが純抵抗でない負荷に接続された電気回路です。これには、
誘導性と容量性の素子が含まれています。これにより、電源電圧と電流の間に
位相差が生じるので、パワー測定の際に考慮する必要があります。
I
A
RL
VS
V
C
L
図2. 誘導性素子と容量性素子を含む抵抗性負荷に接続されたAC電源
図2より、パワーの計算に位相角が必要なことがわかります。位相角を測定す
るには、電圧と電流の両方を同時に測定する必要があります。DMMは一度に
1つの入力しか測定できないので、この場合には2つ以上の入力を備えたオシ
ロスコープの方が測定ツールとして適しています。
P=I×VS×cosφ
式2
ここで、cosφは電圧と電流の間の位相角(度)のコサイン値、
Iは電流、
VSは電源電圧です。
3
パワーの測定
U1610A/U1620Aハンドヘル
ド・オシロスコープによる
パワーの測定
Agilent U1610A/U1620Aハンドヘルド・オシロスコープは、独立に絶縁さ
れたチャネルを2つ備えているので、電圧と電流を同時に安全に測定でき、そ
の間の位相角も測定/表示できます。U1610A/U1620Aのチャネルは絶縁さ
れているので、異なるグランド基準が混在する回路の測定にも使用でき、グラ
ンドを誤ってショートさせる危険がありません。また、この測定器は、CAT
III 600 V環境の測定に対応した安全規格に準拠しています。
U1610A/U1620Aは4つの自動パワー測定機能を備え、広範囲の電源周波数を
測定できます。これらの自動測定は、自動車産業、産業用パワー・オートメー
ション・テクノロジー、設備メンテナンスなどの分野で、電気的な問題の調査
と解決に利用できます。
• 有効電力
• 皮相電力
• 無効電力
• 力率
U1610A/U1620Aの自動パワー測定を使用するには、以下の手順を実行します。
グランド
主電源
被試験デバイス
ニュートラル
ライン
プローブ
電流クランプ
U1610/20A
図3. パワー測定のセットアップ
4
パワーの測定
U1610A/U1620Aハンドヘル
1. 図3のセットアップを準備します。
ド・オシロスコープによる
パワーの測定(続き)
2. 必要に応じて、適切な減衰比のプローブを選択します。
3. チャネル1の電流クランプとチャネル2のプローブを、被試験デバイス(DUT)
の近くに接続します。
4. チャネル1とチャネル2をオンにします。電流と電圧の波形がオシロスコー
プに表示されます。
5. 自動パワー測定を、Active Pwr(有効電力)、Apparent Pwr(皮相電力)、
Reactive Pwr(無効電力)、Pwr Factor(力率)の中から選択します。
6. 接続されているプローブの減衰比が正しく設定されていることを確認します。
7. Measureを押して、選択したパワー測定を実行します。
産業用パワー・オートメーション環境のトラブルシューティング作業には、堅
牢かつ持ち運びに便利なU1610A/U1620Aを使用できます。これは、オシロ
スコープ、マルチメータ、データ・ロガーの機能が統合されたトラブルシュー
ティング・ツールとして活用できます。データ・ロガー機能を利用して全パワー
を一定時間無人で測定すれば、その間に他の作業を行うことができます。
5
信号の不規則性の検出
信号の不規則性とは、電流や電圧のサージ、電源ラインの高調波、電磁波障害
(EMI)などを指し、電気/電子機器の故障の原因となります。
このような信号の不規則性を引き起こすイベントの例を以下に示します。
• 起動中のシステムから生じる電流/電圧サージ
• 機器内のスイッチング電源による電源ラインの高調波の発生
• 送電線、モータ、その他の電力が急速にオン/オフされる場所から生じる
EMI
このようなイベントはいつ発生するか予測できないので、信号の不規則性の原
因を特定するのは困難です。しかし、オシロスコープは電圧の時間変化を表示
できるので、このようなランダムなイベントを捕捉するのに最適です。
U1610A/U1620Aハンドヘル
ド・オシロスコープによる
信号の不規則性の検出
U1610A/U1620Aでは、オシロスコープ、マルチメータ、データ・ロガーの
機能がコンパクトで堅牢な筐体に統合されています。さらに、最大200 MHz
の帯域幅と最大2 Gサンプル/sのサンプリング・レートを備えているので、信
号の不規則性を検出する作業が容易になります。
信号の不規則性はランダムなイベントですが、識別可能な特性があるので、正
確に特定して解決できます。U1610A/U1620Aは、この作業のために必要な
次の機能を備えています。
• 電圧スパイクや電源サイクルの欠落を検出するためのトリガ機能
• オシロスコープ/マルチメータで捕捉したデータの長時間にわたるモニタ
• デュアル・ウィンドウ・ズーム
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信号の不規則性の検出
U1610A/U1620Aハンドヘル
ド・オシロスコープによる
信号の不規則性の検出
(続き)
トリガ機能
U1610A/U1620Aは、一般的なベンチ用オシロスコープと同様のトリガ・タ
イプを備えています。エッジ、グリッチ、TV、N番目のエッジ、Controller
Area Network(CAN)、Local Interconnect Network(LIN)によるトリガ
が可能です。
電圧スパイクや電源サイクルの欠落を検出するには、以下のトリガ・タイプ
を使用できます。
• エッジ・トリガ
• グリッチ・トリガ
エッジ・トリガ
エッジ・トリガを使用すると、電圧パルスの立ち上がりまたは立ち下がりエッ
ジでトリガできます。トリガ・レベルは、電源ラインの電圧レベルよりもわ
ずかに高く設定します。この方法は、電源ライン電圧よりも振幅が大きい電
圧サージに対してのみ有効です。
U1610A/U1620Aのエッジ・トリガを使用するには、以下の手順を実行します。
1. オシロスコープ・プローブをDUTの近くに接続します。
2. 立ち上がりエッジでトリガするようにエッジ・トリガを選択し、レベルを
240 Vに設定します。
電圧サージの振幅が電源ライン電圧を超えない場合はどうすればよいでしょ
うか?このようなイベントを捕捉するには、次のセクションで説明するグリッ
チ・トリガを使用します。
グリッチ・トリガ
グリッチ・トリガは、U1610A/U1620Aの両方に備わっていて、電圧パルス
の正または負の極性でトリガできます。パルスの電圧振幅は電源ラインの振
幅と同じでもかまいません。例えば、U1620Aの場合、この機能でグリッチ
の幅を45 ns ∼ 10 sに設定して幅45 nsの高速パルスを捕捉できます。また、
幅10 sという長いパルスも捕捉できるので、電源ラインのサイクルの欠落を
発見できます。
U1610A/U1620Aのグリッチ・トリガを使用して電源サイクルの欠落を検出
図4. オシロスコープに表示された電源サイク
ルの欠落
するには、以下の手順を実行します。
1. オシロスコープ・プローブをDUTの近くに接続します。
2. パルス幅10 msの正極性パルスでトリガするように、グリッチ・トリガを
設定します。
7
信号の不規則性の検出
U1610A/U1620Aハンドヘル
ド・オシロスコープによる
信号の不規則性の検出
(続き)
長時間のモニタ
U1610A/U1620Aのデータ・ロガーは、オシロスコープまたはマルチメータ
のデータを最大8日間にわたって記録できます。オシロスコープ・ロガーは最
初の2つのオシロスコープ測定の結果を記録し、メータ・ロガーはマルチメー
タのデータを記録します。
データ・ロガーを使用して長時間のモニタを行えば、1日または1週間といっ
た期間内に発生する間欠的な信号の不規則性を検出できます。もう1つの利点
は、記録したデータをUSBストレージ・ドライブにダウンロードして情報を
PCで参照できることです。電圧サージやサイクルの欠落以外に、適切なプロー
ブを使用すればデータ・ロガーで温度変化をトレースすることもできます。
U1610A/U1620Aのデータ・ロガー機能を使用するには、以下の手順を実行
します。
1. オシロスコープ・プローブをDUTの近くに接続します。
2. チャネル1を電圧の振幅測定に、チャネル2を電圧のRMS測定に設定します。
3. フロント・パネルのLoggerを押します。
4. Scope Loggerソフトキーを押します。これにより、最初の2つのオシロスコー
プ測定結果が記録されます。この例では、オシロスコープ・ロガーは電圧の
振幅と平均値の測定を記録します。
5. Run/Stopを押して、データ記録を開始または停止します。
デュアル・ウィンドウ・ズーム
U1610A/U1620Aは640×480ピ ク セ ル の 高 解 像 度5.7イ ン チTFT LCDカ
ラー・ディスプレイとデュアル・ウィンドウ・ズーム機能を備えていて、波形
の全体を表示しながら、特定の領域を拡大表示できます。
どのような明るさの条件でも見やすいディスプレイで、信号の動作をはっきり
と確認できます。U1610A/U1620Aは大容量のメモリを備えているため、捕
捉した波形を大きく拡大してその細部を確認できます。トリガで捕捉した信号
またはデータ・ロガーによって記録した信号の不規則性も観察できます。
図5. デュアル・ウィンドウ・ズーム
8
電源ライン電流の高調波の解析
PC、可変速ドライブ、その他パルス状の電流を消費する機器が数多く存在す
る現代の電子環境には、多くの高調波が存在します。負荷電流の高調波により、
以下の問題が発生する可能性があります。
• 中性線の過熱
• サーキット・ブレーカのトリップによる電圧降下
• トランスや分電盤からの振動
• 機器の過熱
高調波の原因は何でしょうか?高調波が生じるのは、負荷電流が瞬時電圧に比
例しない場合です。その原因は、負荷電流が連続的でなく、パルス状になって
いることです。パルス状の電流によりエネルギー効率は向上しますが、負荷電
流に高調波が生じます。高調波を発生する機器の例を以下に示します。
• 家庭用:パーソナル・コンピュータ、蛍光灯、テレビ
• 産業用:インバータ、アーク炉、可変速ドライブ
高調波は、電源ラインの基本波周波数の整数倍の周波数の電流/電圧です。す
なわち、電源ラインの基本波周波数が60 Hzなら、2次高調波は120 Hz、3次高
調波は180 Hzです。
高調波には周波数成分がありますが、ライン電流中の高調波は、電圧振幅の時
間変化を表示するオシロスコープでも測定できます。高速フーリエ変換(FFT)
機能を持つオシロスコープなら、タイム・ドメインの波形を周波数ドメインの
波形に変換して、高調波の存在を確認できます。
9
電源ライン電流の高調波の解析
U1610A/U1620Aハンドヘル
ド・オシロスコープによる
高調波の解析
U1610A/U1620Aには1,024ポイントのFFT機能があります。ウィンドウ関数
としては、ハニング、方形、ハミング、ブラックマン・ハリス、フラットトッ
プが使用できます。
U1610A/U1620AのFFT機能を使用するには、以下の手順を実行します。
グランド
主電源
被試験デバイス
ニュートラル
ライン
電流クランプ
U1610/20A
図6. ライン電流の高調波を解析するためのセットアップ
1. 図6に示すようにセットアップを準備します。
2. チャネル1の電流クランプをDUTに接続します。
3. チャネル1をオンにします。オシロスコープに電流波形が表示されます。
4. オシロスコープのFFT機能をオンにします。
5. タイムベース設定を調整して、高調波が明確に表示されるようにします。
6. スケーリング係数(dB/div)またはオフセット(dBまたはDBV)を調整します。
7. FFTウィンドウ関数として、ハニング、方形、ハミング、ブラックマン・ハ
リス、フラットトップのどれかを選択します。
10
まとめ
このアプリケーション・ノートでは、フィールドでハンドヘルド・オシロスコー
プを使用するアプリケーションを3種類紹介しました。
• パワーの測定
パワーを測定することで、電気システムの動作を理解できます。低周波のリ
ニア・システムの場合はDMMも使用できますが、さまざまな周波数成分を
含む複雑なシステムのトラブルシューティングにはU1610A/U1620Aが最
適です。U1610A/U1620Aには、有効電力、皮相電力、無効電力、力率の
自動測定機能があります。
• 信号の不規則性の検出
電流や電圧のサージ、電源ラインの高調波、電磁波障害
(EMI)などは機器の
故障の原因になります。これらのイベントはランダムに発生しますが、
U1610A/U1620Aのトリガ機能、長時間のモニタ、デュアル・ウィンドウ・
ズーム表示を使用すれば、このようなイベントを捕捉/解析できます。
• 電源ライン高調波の解析
高調波は特定の周波数の電流と電圧で構成され、中性線の過熱、機器の振動、
パワー・トリップ、機器の過熱などの原因になります。U1610A/U1620A
では1,024ポイントのFFT機能と大容量メモリにより、細部の観察と周波数
ドメインの波形解析が可能です。
まとめ
今日の産業アプリケーション用の電気システムは複雑な回路で構成されている
ため、安全性と効率を高めるため厳密な調整の下に動作しています。このよう
な緊密な統合のために、電気システムの設置や保守の作業はますます困難に
なっており、エンジニアはより高度なツールを必要としています。
U1610A/U1620Aは、30種類の自動測定(時間、電圧、パワー関連)と、演算、
FFTアナライザ機能を備え、クリアな5.7インチTFT LCD VGA(640×480ピク
セル)カラー・ディスプレイに電気システムの動作を表示して理解できます。
U1610A/U1620Aハンドヘルド・オシロスコープは、困難な環境でも、正確で
信頼性の高い安全な測定を必要とするエンジニアのために設計されています。
詳細については、AgilentのWebサイトwww.agilent.co.jp/find/U1600 を参照し
てください。
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© Agilent Technologies, Inc. 2014
Published in Japan, March 26, 2014
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