X 線アナライザー(Piranha)による X 線装置の精度管理Ⅱ 福島県内における一般撮影装置の X 線出力について (公社)福島県診療放射線技師会 精度管理委員会 佐藤 政春、加藤 利夫、古川 徹 、星 寿郎 、佐竹 一博、篠原 宏幸、角浜 憲孝、池田 昭文、渡部 育夫 【目的】 【結果・考察】 福島県診療放射線技師会が会員施設の精度管理の向上を目的に購 入したX線アナライザーを用い、一般撮影装置についてX線出力(1m 東芝装置 39 台、島津装置 12 台、日立装置 10 台のX線出力特性を 図 2、図 3、図 4、に示す。 の距離における1mAs 当たりの線量[μGy/mAs])を求め被ばく線量推 定の基礎データとする。また次の事についても検討する。 線発生装置、X 線管装置、絞り装置の型式が同じである場合の X線出力。型式やメーカーの異なる装置間でのX線出力。 ②一般撮影装置の標準X線出力を決める基礎を築く。 【方法】 Piranha を用いて管電圧、管電流、曝射時間(精度管理委員会報告 UD150BC-40 UD150B-40 UD150B-40 UD150B-40 D150BC-40 D150BC-40 UD150B-30 UD150B-30 UD150B-30 UD150B-30 RadspeedPro UD150B-10 180 μ Gy/mAs at 1m ① 160 140 120 100 80 島津製X線撮影装置(12台) UD150BC-40 0.6/1.2P323DK-85 /R20J 0.6/1.2P323DK-85 /R20J 0.6/1.2P323DK-85 /R20J 0.6/1.2P364DK-125/R300 0.6/1.2P364DK-85/R300 0.6/1.2P13DX-80/R20 0.6/1.2P38DE/R20 0.6/1.2P38DE/R20 0.#/1.#P364DK-85/R303 RadspeedPro UD150B-10 60 40 Ⅰ)の他、HVL,照射線量も同時に測定した。対象装置は X 線発生装置、 20 X 線管装置、絞り装置の総ろ過が公称値 2.5mmAl 当量である一般撮影 0 40 60 80 100 120 140 管電圧 k V 装置 61 台、X 線管 73 本。このうち付加フィルタが入っていたデ-タと 透視装置を除く、X 線発生装置-X 線管・61組、のべ 61 台を対象とした。 図3 設定曝射時間 100msec、設定管電流 100mA、付加フィルタは外して総 ろ過 2.5mmAl 等量の公称値とした。設定管電圧を 50kV から 10kVごと 180 全ての「管電圧-X線出力」データから計算ソフトを用い図1 に示す「管 160 電圧-X線出力を 4 次の多公式近似式」で近似させ正規化する。以下 「管電圧-X線出力・多項式近似」を用いて比較した。 160 μ Gy/mAs at 1m 140 120 μ Gy/mAs at 1m に 140kVまで焦点から1mの距離における線量を測定した。測定した 4次多項式近似による正規 化 X = A + B1E + B2E 2 + B3E 3 140 120 100 80 60 40 + B4E 4 20 40 60 80 100 X [ μ Gy/mAs ] 測定データ 4次多項式近似 60 40 140 E 図4 [ kV ] 60 80 100 120 μ Gy/mAs at 1m 20 40 120 管電圧 k V 100 80 日立製装置 (10台) DHF-155H4/UH-6FC-31E DHF-155H4/UH-6FC-31E DHF-155HⅡ /UH-6FC-31E DHF-155HⅡ /UH-6GE-31E DHF-155HⅡ /UH-6GE-31E DHF-155HⅡ /UH-6FC-31E DHF-155H4/UH-6FC-31E DHF-155H4/UH-6FC-31E DHF-155H4/UH-6FC-31E DHF-155H4/UH-6FC-31E 140 管電圧 k V 図1 X線装置平均X線出力 160 東芝 装置平均 日立装置平均 島津装置平均 全装置平均 140 120 100 80 60 40 B C D E F G H I J K L M Q R S T U V W X 東芝メ ディ カルX線撮影装置( 39台) 180 KXO-80G.50G.80S.50S.50R DRX-3724HD.4634HC.2924HC TF-6TL-6.BLR-1000.2000.3000 μGy/mAs at 1m 160 140 120 100 80 60 40 20 0 40 60 80 100 管電圧 k V 図2 120 140 20 0 Y Z AA BB CC DD EE FF GG HH II JJ KK LL MM NN OO PP QQ 40 60 80 100 120 140 管電圧 k V 図5 X 線発生装置、X 線管装置、絞り装置の組み合わせや X 線管の交換及 び使用年数が異なるので、一致するものもあるが全体としてはばらばら となった。しかしながら東芝、島津、日立のそれぞれの平均X線出力は 図 5 に示す様にメーカーの違いはみられない。焦点から距離 1m にお ける平均X 線出力 X は式(1)で示すように 4 次多項式で表すことがで きる。E は管電圧(kV)、A,B は定数である。図 6、表 1、表2に 61 台の 140 84 ±9.1 80 60 43.6 ±5.3 X 40 20 70kV 0 40 60 平 均 X線出 力 ( 空中線量 ) 180 120 100 被ば く 線量 推定に 活用 200 平均X線出力 平均X線出力 +σ 平均X線出力 -σ 160 = A + B1 + B2E 2 2 3 E + B3E 3 + B4E 4 平均X線出力 ×B SF ( 1.2) 160 μ Gy/mAs at 1m μ Gy/mAs at 1m 180 (NDD- M)(表 面 入射 線量 ) 140 NDD法 ( 茨城県診療放射線技師会) 120 100 80 60 40 4 y = A + B1x+ B2x + B3x + B4x 多項式近似 20 80 100 120 0 40 140 管電圧E [k V] 60 80 図6 100 120 140 120 140 120 140 管電圧 k V 図8 平均X線出力、標準偏差を示す。 A B1 B2 B3 B4 -41.989690 1.630240 -0.012680 1.1894900E-04 -2.9283200E-07 ・・・(1) 表1 140 120 100 80 60 40 20 の基準となる。 0 40 50 60 70 80 90 100 110 120 130 140 20.9 32.0 43.7 56.2 69.6 84.0 99.3 115.3 133.9 151.4 60 80 2.9 4.1 5.4 6.7 7.9 9.1 10.3 11.6 11.3 12.9 100 管電圧 k V 標準偏差 σ 図9 180 μ Gy/mAs at 1m 平均 X 線出力 μGy/mAs @1m KXO-80G DRX-3724HD/BLR-15AA KXO-80G DRX-2924HD/BLR-15AA KXO-80G DRX-2924HD/R-304 160 式(1)で表すX線出力は福島県内の平均X線出力であり相対的な比較 管電圧 kV 東芝 X線管交換 180 μ Gy/mAs at 1m X [μGy/mAs]=A + B1E + B2E2 + B3E3 + B4E4 160 140 島津 D150BC-40 A 0.6/1.2P364DK-125/R300 B 0.6/1.2P364DK-85/R300 120 100 80 60 40 20 0 40 表2 60 80 100 管電圧 k V 今回の X 線出力は空中線量であるがBSF(後方散乱係数)を乗ずると 表面入射線量になる。BSFは通常 1.2~1.3 といわれている(図7) 図 10 180 μ Gy /mAs at 1m 160 日立 Radnext50 DHF-155H4 140 120 100 80 60 A B C D 40 20 0 40 60 80 UH-6FC-31E UH-6FC-31E UH-6FC-31E UH-6FC-31E 100 120 ZU-L5TYH ZU-L5TYH ZU-L5TYH ZU-L3TYH 140 管電圧 k V 図 11 図7 平均 X 線出力に BSF1.2 を乗じると図8に示すように茨城県診療放射線 技師会が報告した NDD-M の係数の値にほぼ一致し NDD 法が被ばく 線量推定の概算方法として妥当であることが確認できた。図9 は X 線管 を交換して 2 年以内の東芝装置 3 台である。図 10 は X 線装置据付後 2 年以内の島津装置 2 台、図 11 は据付後 2 年以内の日立装置 4 台で ある。これらの構成は X 線発生装置、X 線管装置、絞り装置が同型かま たは同型に近い構成である。X 線出力は近似した結果となった。 これら X 線管使用年数が 2 年以内の X 線出力と平均X 線出力とを一緒 より 10%以上少なかったので 1 年後の測定前にメーカーの電流調整点 に表したものが図 12 である。(図中-■-は平均 X 線出力を表す) 検を実施している。 160 140 120 160 KXO-80G/DRX-3724HD/BLR-15AA KXO-80G/DRX-2924HD/BLR-15AA KXO-80G/DRX-2924HD/R-304 DHF-155H4 /UH-6FC-31E/ZU-L5TYH DHF-155H4 /UH-6FC-31E/ZU-L5TYH DHF-155H4 /UH-6FC-31E/ZU-L5TYH DHF-155H4 /UH-6FC-31E/ZU-L3TYH μ Gy /mAs at 1m μ Gy/mAs at 1m 180 100 80 60 120 100 D-150BC-40/0.6/1.2P364DX-125/R300 D-150BC-40/0.6/1.2P364DX-85/R300 KXO-80S/DRX-3724HD/BLR-1000A (61台全 平 均 ) 40 20 0 40 140 60 80 100 120 X線出力 特性 経年 変化 2013年 7月測定 2014年 11月測定 2014年 8月管電流調整・ 点検 80 60 40 KXO-50G DRX-3724HD/TF-6TL-6 20 0 40 140 管電圧 k V 60 80 100 120 140 管電圧 k V 図 12 図 15 メーカー即ち X 線発生装置、X 線管装置、絞り装置がそれぞれ異なっ 【まとめ】 ているにもかかわらず X 線出力は近似した結果となりメーカー、装置の 1.X 線出力は全体的にはかなりバラツキがみられたもののメーカー別 違いはみられない。また X 線出力は平均X 線出力より高くなった。一方 平均 X 線出力はほぼ一致し、メーカー間の違いはなかった。 使用経年数の多い装置での X 線出力は平均 X 線出力より低い傾向に 2.61 台の平均 X 線出力に BSF1.2 を乗じると NDD-M の値にほぼ一 ありバラツキが大きい。 致し NDD 法の数値が妥当な値であることが確認できた。 3.同一メーカーで構成の同じ装置の場合、経年数の少ない時期にお μ Gy/mAs at 1m 180 160 140 120 100 80 平均X線出力 DRX-3724HD/BLR- 3000A DRX-3724HD/BLR- 3000A DRX-3724HD/BLR- 3000A DRX-3724HD/TF-6TL-6 DRX-3724HD/TF-6TL-6 DRX-3724HD/TF-6TL-6 DRX-3724HD/TF-6TL-6 DRX-3724HD/TF-6TL-6 DRX-3724HD/TF-6TL-6 DRX-3724HD/TF-6TL-6 DRX-3724HD/TF-6TL-6 いて X 線出力はほぼ一致した、しかし年数の経過した装置間では 平均X線出力 と 東芝 製KXO-50G( 12台) かなりバラツキがみられた。 4.経年数の少ない時期においてはメーカーが異なる装置であっても X 線出力はかなり一致した。 5.X 線出力の装置間のバラツキは X 線管の経年数即ち総曝射回数 D R X -‐‑‒ 1603B / T F -‐‑‒ 6T L -‐‑‒ 3G が関わっていることが示唆された。経年的に X 線出力がどのように 60 40 変化するかは、今後も継続的に追跡していくことで明らかになると 20 0 40 思われる。 60 80 100 120 140 管電圧 k V 6.管電圧と mAs で被ばく線量を推定する(NDD)方法に今回の平均 X 線出力が活用できる。しかしながら平均 X 線出力は目安であり、 図 13 μ Gy/mAs at 1m 180 160 140 120 100 80 管電圧、管電流の指示が正しいことが条件である。被ばく線量をよ り正確に推定するには個々の装置で X 線出力を測定すべきであ 平均X線出力 DRX3724HD /TF - 6TL- 6 DRX3724HD /BLR-15AA /BLR-15AA /R-304 D R X 2 9 2 4 H D /R-304 DXB-0324CS/TF - 6TL- 6 DRX3724HD /TF - 6TL- 6 D R X -‐‑‒ 2 9 2 4 H D /BLR-1000A DRX3724HD /TF - 6TL- 6 DRX3724HD /TF - 6TL- 6 DRX3724HD /TF - 6TL- 6 DRX3724HD /TF - 6TL- 6 D R X 2924H D 東芝 製 KXO-80G (12台) と 平均X線出力 る。 D R X 2924H D 7.非接続型アナライザー(Piranha)は、従来のアナライザーでは測定 できなかった管電流値と管電流波形が簡便に測定できるのが特徴 であり、電圧、曝射時間、半価層、線量といった QC、QA に不可欠 なデータが一度に測定できるので精度管理測定器として非常に有 60 用である。 40 20 0 40 参考文献 60 80 100 管電圧 k V 120 140 1.Fewell TR 他、Handbook of CT X-ray Spectra FDA 1981 2.Tucker DM 他 Semi empirical model for generating tungsten 図 14 X-ray spectra Med.Phys. 1991 図13、図14 は据付から経年数の多い東芝装置KXO-50G、KXO80G 各 3.IPEM Report No.78 (CD-ROM)1997 12 台である。X 線管の交換から経年数の多い X 線管では X 線出力が 4. (社)日本放射線技師会誌、48・1、5~14、2001 平均X 線出力より低下するものが多い。しかし平均X 線出力を上回るも 5. (社)茨城県放射線技師会 X線診断領域における患者の表面入 のもあり、実際には経年数ではなく X 線管の使用曝射回数に依存して 射線量簡易換算式 -NDD法- 変化すると考えられが今回の調査のみでは X 線出力の経年的変化を 6.B.Grosswendt、Phys.Med.Biol Vol.35No.9 1990 捉えることは困難で今後継続的に追跡調査をすることにより明らかにな 謝辞 ると思われる。図15 は約1 年後の経年変化比較であるが撮影件数が少 ないこともありほとんど変化していない。尚この装置は電流値が指示値 今回の調査にご協力いただきました各施設の方々に感謝します。
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