UV架橋系向け、新規表面調整剤評価結果 2014.09

UV 架橋系向け 新規表面調整剤評価結果 第一報
2014 年 9 月 ビックケミー・ジャパン株式会社
テクニカルサービスラボ
谷 泰輝
はじめに
UV 架橋は木工・プラスティック塗装をはじめ、フィルムコーティングやフォトレジストなど多くの分
野に用いられている。BYK ではレベリング剤、擦り傷防止剤、顔料分散剤など多くの添加剤を UV 架橋
向けに上市している。ここでは添加剤の特性を、無電極ランプを用いた UV 照射装置による実験結果を
もとに紹介する。
実験装置 ■UV 照射システム:Light Hammer®10 (ヘレウス株式会社製)
発光効率が高く、照度が高い無電極ランプ。 直流電源による発光で、交流電源のものに比べてより
均一な分子サイズを持つ硬化膜の形成が可能となっている。
発光スペクトルは高圧水銀ランプ類似で、254、313 および 365nm に強いピークをもつ。 **最高出力:240 W/cm
■条件:空気中及び窒素置換
実験①
まず有機変性ポリシロキサン系表面調整剤の効果について示す。評価には無溶剤 UV 系塗料を使用した。
UV 照射条件を変えて、硬化した膜の摩擦係数(スリップ性)と水接触角(撥水性)を測定した。評価に
用いたサンプルは、BYK®-UV3500 と同 3505 である。
BYK®-UV3500 と同 3505 は UV 活性のあるアクリル基を官能基に持つポリジメチルシロキサンで、優れ
たレベリング性、濡れ性、スリップ性などの特性の他に、セロテープ離型性や易洗浄性を付与すること
を特徴とする表面調整剤である。
図1に結果を示す。なお図中では短縮のため、BYK の文字を省いている。また N2 は窒素置換条件を示
す。ないものは空気中照射である。
1
85 1.000 0.900 80 0.800 75 0.700 摩
擦
0.600 係
0.500 数
折
0.400 れ
線
0.300 水
接 70 触
角
65 棒
60 0.200 55 0.100 50 0.000 control control N2 UV-­‐3500 UV-­‐3500 UV-­‐3505 UV-­‐3505 N2 N2 図 1、窒素置換有無の塗膜の水接触角と摩擦係数
まず第一に、添加剤により水接触角が大きくなり、摩擦係数が小さくなっている。すなわち撥水性と
スリップ性が向上しているのがわかる。より詳細を見てみよう。撥水性の指標の水接触角であるが、コ
ントロール(添加剤なし)は窒素置換であろうが空気中であろうが変わりはない。それに対して
UV3500 及び UV3505 はともに窒素置換したほうが、より水接触角が大きく、すなわち撥水性の効果が
高くなっている。一方、摩擦係数はコントロールでは窒素置換のほうがきわめてわずかに下がるが、
UV3500 及び UV3505 では同じか、幾分上っている。このように表面調整剤の効果は UV 照射の際の環
境により影響を受ける。したがって、実験室での検討にあたっては、実ラインでの条件に合わせて条件
を設定していただきたい。
次に UV 光の照度の影響について、図 2 に示す。この実験では空気中での照射である。
水
摩
接
擦
触
係
角
数
棒
折
れ
線
図 2、UV 照度と膜の水接触角と摩擦係数
2
照度はそれぞれ、グラフ左は 230mW/cm2、右が 1960mW/cm2 であり、 積算光量はともに
293mJ/cm2 である。水接触角はどのサンプルもより強い照度のほうがやや小さい。一方、摩擦係数はお
おむね同じか、照度が強いほうがやや摩擦係数が高い。今回の実験では、照度が高いほうが、撥水性・
スリップ性ともに添加剤の効果は弱い傾向にあった。
実験②
実際のマジックふき取り試験の様子を写真1に示す。
評価は以下の溶剤系ウレタンアクリレート塗料で行った。
品 名
DESMOLUX U680X
MIBK
Speed Cure 84
Total
Wt%
67.3
30.0
2.7
100.0
概 要
ウレタンアクリレート(バイエル社)
希釈シンナー
反応開始剤(Lambson 社)
評価した系は、添加剤なしのコントロールと、BYK®-UV3505 を 0.2%添加した系である。
マジックインキ®(寺西化学工業製)油性を使用した。 写真1、左:窒素置換 右:空気中で UV 照射後、マジック描画ふき取り
明らかに UV 照射時、窒素置換したほうが、マジックはふき取りやすくなっている。
最後に、ナノ粒子ディススパージョン添加による、耐スリキズ性についても実験結果を紹介する。
3
評価した系は、添加剤なしのコントロール、BYK®-UV3505 を 0.2%の系、 BYK®-UV3505 を 0.2%、
NANOBYK®-3605 を 10%併用した系である。UV 照射は窒素置換下で行い、硬化後のスリキズ試験はク
ロックメーターを用いた。
NANOBYK®-3605 は UV 硬化系に対して耐スリキズ性を効果的に付与するナノ粒子ディスパージョンで
ある(粒子分 50%、分散媒体 HDDA)。 20∼25nm のシリカ微細粒子のディスパージョンであるため、
クリアコートの透明性にもほとんど影響を与えることはない。
CONTROL
BYK-UV3505
BYK-UV3505
NANOBYK-3605
写真2 耐スリキズ試験結果
それぞれのパネルのほぼ中央部がスリキズ負荷の部分である。キズの目視評価は 5 点法で(数字が大き
いほうがよい)、コントロール1点、UV3505 単独系3点、UV-3505/NANOBYK-3605 併用5点であった。
コントロールの中央左は照明が移りこんでいるが、評価には影響していない。
まとめ
今回は UV 照射条件の違いにより、表面調整剤の効果の発現も影響を受けることが明らかになった。
どのようメカニズムで効果の違いが出るのか、さらに実験をすすめ考察を重ねたい。
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