電力中央研究所報告 先 端 技 術 負荷条件下における交流インピーダンス測定を用い たSOFC性能分析手法の提案とその適用範囲の検討 キーワード:固体酸化物形燃料電池,交流インピーダンス測定,発電状態, 報告書番号:Q14005 ガス・コンバージョン,ネルンストロス 背 景 固体酸化物形燃料電池(SOFC)運転中の監視技術開発の一環として、当所では性能 解析技術の開発を行っている。これまでは、無負荷条件下での交流インピーダンス測定 法を用いた SOFC 性能決定要因の解明を行ってきたが、各要因に起因する電流密度と過 電圧の関係を理解する必要があり、性能分析手法の提案まで至っていない。そこで、 SOFC 運転中(負荷条件下) ・待機中(無負荷条件下)での交流インピーダンス測定手法 による SOFC 性能評価が共に可能となれば、監視技術の高度化と共に利便性の向上に寄 与できる。 目 的 無負荷・負荷条件下における交流インピーダンス測定による SOFC 性能分析手法を提 案し、従来法である性能表示式による解析手法との比較からその妥当性を明らかにする。 主な成果 (1)抵抗の帰属と解釈 無負荷条件下及び電流密度 0.2 A/cm2 負荷条件下注1の交流インピーダンス測定におい て、抵抗成分は電流密度に依存するものの、①内部抵抗(RIR)、②空気極反応抵抗(Rhigh)、 ③燃料極ガス拡散抵抗(Rmiddle)、④ガス・コンバージョン抵抗(Rlow)注2の 4 つに分離・ 帰属することができた(図1) 。 1)空気極反応抵抗(Rhigh)・燃料極ガス拡散抵抗(Rmiddle)について 無負荷・負荷条件下でのそれぞれの測定より求めた Rhigh、Rmiddle に基づき、過電圧の 電流密度依存性を求めると、両条件でほぼ同一と見なせることを確認した(図2) 。これ より、無負荷条件下及び負荷条件下で同様に性能分析ができることを示した。 2)ガス・コンバージョン抵抗(Rlow)について 供試セルでは、燃料利用率(Uf)44%以下、酸素利用率(UO2)22%以下の条件で、Rlow は無負荷と負荷条件下でほぼ同じ値であった注3。この範囲では Rlow は同一利用率におい て電流密度によらず一定と見なすことができることがわかった。 (2)従来法(性能表示式による解析手法)による性能分析結果との比較による妥当性 の確認 Uf = 44%、UO2 = 11%の条件における負荷条件下での交流インピーダンス測定手法によ り得られた各過電圧の合計は、開回路電圧と出力電圧の差分と同等で、性能表示式によ る解析手法と比較してほぼ同程度であった(表1) 。 以上のことから、交流インピーダンス測定手法は、中程度の負荷まで(電流密度 0.2 A/cm2 以下)の範囲において SOFC 運転中(Uf ≦ 44%、UO2 ≦ 22%)での評価が可能であ ることがわかった。 今後の展開 高負荷条件や高ガス利用率条件時の性能評価法を確立する。 注1: 主たる SOFC 開発メーカーの電流密度条件が約 0.2 A/cm2 である。 注2: ガス濃度が出入口で異なるときに濃度差により過電圧が発生する。また、利用率で決まるネルンス トロス分を含む過電圧である。 注3: ガス流配が理想的な SOFC において、無負荷と負荷条件下の Rlow は燃料利用率 60%以下、酸素利用 率 40%以下ではほぼ同じ値となる。 -0.2 無負荷条件下での結果 負荷条件下での結果 各過電圧 (mV) -0.1 虚部 (cm2) 150 負荷条件下(0.2 A/cm2) フィッティング 各抵抗成分(円弧) RIR 0.0 Rhigh L 0.1 R IR Rmiddle Rlow R high R middle C high C middle データ解析に使用した等価回路 0.2 0.4 0.6 2 実部 (cm ) R low 空気極反応 直線近似(点線) 100 性能表示式による解析手法での 抵抗近似可能領域 燃料極ガス拡散 50 C low 0.8 0 1.0 図 1.負荷条件下のナイキストプロットと等価回 路フィッティング解析結果[825℃、燃料 ガス:メタン改質模擬ガス(燃料利用率 11%)、酸化ガス:空気(酸素利用率 11%)] 直線近似(点線) 0 0.2 0.6 0.4 2 電流密度 (A/cm ) 図 2.無負荷及び負荷条件下のナイキストプロット から得られた各抵抗を用いて導いた電流密 度-過電圧曲線[825℃、燃料ガス:メタン 改質模擬ガス(燃料利用率 44%)、酸化ガス: 空気(酸素利用率 11%) ] 表 1.負荷条件下での交流インピーダンス測定手法と性能表示式による解析手法による性能分析結果の 比較性能分析結果(825℃、燃料利用率 44%、酸素利用率 11%) 性能分析手法 空気極 過電圧 燃料極 過電圧 経過時間 電圧項目 理論開回路電圧 出力電圧 電圧降下分 電圧項目 内部抵抗ロス 反応過電圧(ηE) ηGC と ηne の差分 ガス拡散過電圧(ηGD) ηGC と ηne の差分 ηne(計算値) 合計(電圧降下分) 負荷条件下における交流イ ンピーダンス測定手法 4560 h 各電圧 [mV] 性能表示式による 解析手法 5544 h 各電圧 [mV] 961 750 211 各過電圧 [mV] 104 43 28×δ 110 11 28×(1-δ) 28 214 741 220 各過電圧 [mV] 104 56 117 30 31 221 *ガス・コンバージョン過電圧(ηGC)とネルンストロス(ηne)の差分の空気極分率を δ、燃料極分率を(1-δ)とする。 関連研究報告書 [1] Q11010「SOFC 性能決定因子の解明(その 2)―交流インピーダンス測定におけ る低周波数側応答波形の解析検討―」(2014.10 改訂) 研究担当者 安本 憲司(材料科学研究所 問い合わせ先 電力中央研究所 材料科学研究所 研究管理担当スタッフ Tel. 046-856-2121(代) E-mail : [email protected] 機能材料領域) 報告書の本冊(PDF 版)は電中研ホームページ http://criepi.denken.or.jp/ よりダウンロード可能です。 [非売品・無断転載を禁じる] © 2014 CRIEPI 平成26年12月発行 14-001
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