シリーズ 商圏分析と立地診断[第3回] スーパービバホームと カインズホームのドミナントエリア戦略 (株)LIXILビバが3月26日に開店したスーパービバホ ドミナントエリアを形成している。ビバホーム(VH) ーム春日部店は、同社の埼玉県下17号店、スーパービ とCHはどのように商圏を分けあっているのか、また今 バホーム(SVH)としては8店目となる。同社は埼玉県 後の出店余地などについて、技研商事インターナショナ 南部でドミナントエリアを形成しているが、埼玉県では ル(株)のGIS(地図情報システム)を使って分析した。 (田中) カインズホーム(CH)が北部を中心に26店を展開して 地図データ提供:国際興業 ( 株 ) /資料提供:技研商事インターナショナル ( 株 ) ■ビバホームは県南側で ドミナントエリア している。 応じて大型店と中型店を織り交ぜている 大型店のSVHと中型店のVHをうまく組 が、概ね国道407号沿い、国道254号沿 図1は、埼玉県に出店しているVHの商 み合わせてドミナントエリアを作っているこ い、関越自動車道沿いの店は大型店が 圏範囲を円で囲んだもの。SVH春日部店 とがよく分かる。 多い。これに対して売場面積1,000前後 の中規模店は、JR八高線沿いに出店し のみ半径10kmの円で、他の店は売場面 ている。つまり、人口の多い中央の地域 が半径5kmの円で囲んでいる。地図にあ ■県北西部では カインズが隙間なく出店 るマル数字は、店の位置と出店の順番を 同様にCHの商圏範囲を示したのが図 い縁の地域では中型店を中心に出店する 示している。太字が大型店のSVH。 2。この図でも太字の丸数字は屋内売場 戦略だ。よって、大型店の隙間に中型店 これをみるとVHは、特に埼玉県の南 面積2,000坪以上の大型店を示している。 を埋めていくように出店しているVHとはドミ 側でドミナントエリアを形成し、各店の商 CHは埼玉県の北西側を中心に、ほぼ ナントエリアの戦略が若干異なるようだ。 圏が重なりあっていることが分かる。 5km毎に店舗を配置してとても強固なドミ 出店順でみると、まず埼玉県の中央に ナントエリアを作っていることが分かる。 ■SVH春日部店の競合状況 ①VH上尾店を出店、次いでその南側に 出店順にみていくと、①CH寄居桜沢 図3は、SVH春日部店の競合状況を示 ②VH草加店、東側に③VH庄和南桜井 店から④CH児玉店までは南北に走る国 したもの。一番内側の円が半径5km圏、 店、北側に④VH本庄店、西側に⑤VH 道254号線沿いに出店、その後は東西に その外側が半径10km圏、さらにその外 日高店を順に開店し、それ以降はその隙 商勢圏を広げながら⑤CH北本店∼⑯ 側の円が半径12km圏になっている。 間を埋めるように出店している。 CH草加松原団地店までを出店。そして この地域はCHが特に集中出店してい 大型店の展開を始めたのは⑦SVH鴻 ⑰CHなめがわモール店以降は、ドミナン る地域とは少し離れているが、それでも 巣店(2003年6月開店)からで、それ以 トエリアをさらに深化させるように隙間を埋 5km圏に1店、10km圏に1店 のCHがあ 降は埼玉県内に開店した11店のうち8店 めて出店している。 るのが分かる。またこの地図には載って がSVHと、大型店を中心に出店している。 大型店の出店が増え始めるのは⑬CH いないが、CH松伏店の東側には今年2 大型店のみを出店順にみていくと、県の 鶴ヶ島店(2002年5月開店)以降で、そ 月にCH野田さくらの里店が開店している。 中央付近に⑦SVH鴻巣店を開店したあと の後に開店した13店のうち9店が2,000坪 この地域で象徴的なのは、大商圏立 は⑨SVH埼玉大井店、⑩SVH三郷店、 以 上で、さらにその9店のうちの5店 が 地に大型店2店を開店しているSVHに対 ⑫SVH狭山日高店と県南側をドミナント 3,000坪以上の大型店だ。 して、CHは中・小商圏立地に中型店を 化。 次いでその隙 間を埋めるように⑪ 県の中でも特に出店が多いのが、⑰ 開店している点だ。 SVH加 須 店、 ⑮SVH深 谷 店、 ⑯SVH CHなめがわモール店から⑫CH飯能店ま 図4は、SVH春日部店から半径10km 岩槻店、⑰SVH春日部店を出店している。 での直線にして約30kmの区間。この範 の人口メッシュ図。これを見ると、同店の そしてその大型店の隙間を埋める形で⑬ 囲に県内にある店の4割を占める10店を 西側を南北に走る国道4号線沿いと、同 VH武蔵浦和駅店、⑭VH志木店を開店 集中出店している。この地域では商圏に 店から東西に伸びる国道16号線沿いに 積2,000以上が半径7km、それ以下の店 26 ● 2014:06 では大型店を中心に出店し、人口の少な シリーズ 商圏分析と立地診断[第3回] 図1 図2 2014:06 ● 27 図3 図4 28 ● 2014:06 シリーズ 商圏分析と立地診断[第3回] 圏が27万7,388世帯。人口を世帯数で割 人口が多いことが分かる。同店はこの16 号沿いで新4号バイパスとの交差点付近 ■足元2kmの平均世帯は2.85人 った単純平均の世帯人数は、2km圏は に位置する大商圏立地なので、これらの 参考までにSVH春日部店周辺の人口 2.85人世帯、10km圏は2.66人世帯にな 地域から集客できる可能性がある。また は図5の通り。半径10km圏の常住人口 る。全国平均が2.46人世帯、埼玉県の これに加え、16号の東側からさいたま市 は73万8,422人( 昼 間 人 口 は57万9,892 平均は2.53人世帯なので、この地域の世 方面に向かう顧客や、新4号バイパス北 人) 。このうち半径2km圏内の常住人口 帯人数が多いことが分かる。 側から都心方面に向かう顧客も獲得でき は2万6,392人(昼間人口は1万9,627人) 世帯人数の内訳をみると、2km圏の1 そうだ。 で、とても人口が多い地域だと分かる。 人世帯は18.2%と全国平均の32.4%よりも 半径10km圏内にあるSVH岩槻店も16 年齢別の人口を全国平均と比べると、 14.2ポイントも低い。その分、複数人世帯 号沿いで東北自動車道岩槻IC近くにある 10km圏では55 ∼ 74歳の構成比が高い の構成比が高いが、2人世帯では2.4ポイ 大商圏店だ。 ことが分かる。これは2km圏でも同様の ント、3人世帯では5.4ポイント、4人世帯 一方CHは、国道ではあるが大幹線道 傾向だ。一方で75歳以上の構成比では、 では4.5ポイント、それぞれ全国平均よりも 路とまでは言えない国道4号線沿いにCH それぞれ全国平均を1ポイントずつ下回っ 高い。10km圏ではここまでの違いはない 杉戸店を、また生活幹線道路沿いにCH ている。それよりも若い世代で全国平均よ が、それでも全国平均よりも複数人世帯 松伏店を出店。中・小商圏で1,000坪前 りも構成比が高いのは、2km圏では5 ∼ が高い構成比を占めている。 後の店を展開している。この地区内に限 19歳と、35 ∼ 39歳。10km圏では15 ∼ また一般世帯の80.9%が持ち家世帯と っても、VHとCHの出店戦略の違いが分 19歳と35 ∼ 44歳だ。 いうのも特徴的だ。これは全国平均の かる。 世帯数は2km圏が9,356世帯、10km 61.9%より19ポイントも高い数値だ。 図5 2014:06 ● 29
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