抄録・PPT

インシデント・アクシデント事例の
要因分析・事例分析演習
RCAの種類
SHEL分析、pm-SHEL分析
Software, Hardware, Environment, Liveware
4M4E分析
Man, Machine, Media, Management
Education, Engineering, Enforcement, Example
FTA(Fault Tree Analysis)
特性要因図(魚骨図)
Medical SAFER(※自治医科大・河野先生)
・・・など
医療界では、SHEL分析、Medical SAFER、VA病院(米国
退役軍人病院)で開発されたRCAが有名
1
はじめに
「VA-RCA」と呼ばれる分析手法は、国際的にも標
準的な手法として扱われており、米国退役軍人省の
患者安全センター(VA-NCPS)で開発されてきた
「確認ミス」などのヒューマンエラーを批判しない
プロセスやシステムに着目して事故防止につなげる
『ヒューマンエラーは原因ではなく結果である』
2
SACマトリクスを用いた事例選定
SAC:セーフティ・アセスメント・コード
意図的な危険行為と犯罪行為は対象外
インシデントの場合は、実害の程度を想定して評価する
スコア「3」の事例を優先的に分析する
重大性
致命的
重大
中程度
軽度
頻発
3
3
2
1
時々
3
2
1
1
まれに
3
2
1
1
極まれに
3
2
1
1
頻度
VA-NCPSの資料を元に当社にて翻訳・掲載
3
頻度と重大性の定義
頻発
すぐに再発、1年に数回
時々
1~2年に数回
まれに
2~5年に1度
極まれに
5~30年に1度
※その施設における発生頻度で考えることが望ましい
致命的
重大
中程度
軽度
・死亡 ・永続的な機能喪失
・永続的な機能障害 ・美容上の問題が残った ・本来必要でない手術
を要した ・入院期間の延長(患者3人以上) ・ケア水準の上昇(同)
・入院期間の延長(患者1~2人) ・ケア水準の上昇(同)
・医療傷害なし ・入院期間の延長およびケア水準の上昇なし
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RCAの進め方
~出来事流れ図~
RCAのプロセス概要
○事例の選定、チーム編成
① 出来事流れ図の作成
報告内容から流れ図を作成
調査、ヒアリングで情報収集
② 要因分析
問題点を決める
「なぜ、なぜ」分析
因果関係図の作成
③ 対策立案
根本原因の特定
対策の実施
④対策の評価
安全対策の効果測定
6
出来事流れ図の作成
出来事流れ図の意義
事象を流れに沿って図式化することは、多くのプロセ
ス改善手法でも採り入れられている重要なツール
チーム・メンバー間の「何が起きたのか」という共通理
解を助け、出来事の解釈が相違することを防ぐ
ヒント
実際の現場での作業を観察して、エラーの発生した業務プ
ロセスを理解する
その業務プロセスの責任者に協力してもらう
この時系列図は、事実に基づいて作成しなければならない
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出来事流れ図 作成手順①
報告された情報を元に、発生した事象を時系列に沿って並べる
左眼緑内障手術を予定していたが、手術部位を間違った。術前、患者の手術
部位を確認した後、術野である左眼を消毒したが、執刀医は誤って右眼を手
術してしまった。
?
患者の手術
部位の確認
をした
患者の左眼
術野を消毒し
た
執刀医は
誤って右眼を
手術した
事例を理解する為に重要だと思われる事象のみを並べる
流れにおける、事象ごとの時間量・間隔は必ずしも重要ではない
もし分かるのであれば、記載しておけばよい
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出来事流れ図 作成手順②
それぞれの事象に関する疑問点を明確にして、情報収集する
?
患者の手術
部位の確認
をした
患者の左眼
術野を消毒し
た
執刀医は
誤って右眼を
手術した
誰が、
確認をしたのか?
なぜ、
右眼に執刀したのか?
どのように、
確認をしたのか?
執刀前に部位の
確認はなかったのか?
なぜ、部位間違い
につながったのか?
なぜ、誰も間違いに
気付かなかったのか?
全体像を把握するため、疑問点を出す(できれば3個以上)
調査を実施せずに、安易に原因を決め付けないこと
「環境的な要因」や「当事者による判断の分岐点」を考えてみる
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出来事流れ図 作成手順③
収集した情報を付け加えて、出来事流れ図を完成させる
当日朝、研修
医は患者の左
こめかみにマー
キングした
看護師Aが患
者を手術室
に搬送した
研修医が部
位のマークを
確認した
━マーキング方法は
2年前にルール化さ
れていた
研修医は患者
の左眼に麻酔
薬を点眼した
研修医は患者
の左眼を消毒・
洗浄した
━消毒薬は無色透明
だった
研修医は患者
の右眼を露出
させるように覆
布をかけた
━なぜ右眼を露出
させたのか、研修
医本人に記憶なし
執刀医は誤っ
て患者の右眼
に執刀を開始
した
手術が終了
し、患者が病
棟に戻った
━執刀前の部位確認
はなかった
関連情報があれば、事象ごとに書き加えておく
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情報収集の際には
情報収集を行なう関係者の選定
面談(ヒアリング)の準備
傾聴と共感
誰に情報収集するのか
落ち着いた環境で対応
質問事項と関係書類(業務プロセス)を準備
相手の話に耳を傾け、熱心に聴く
相手の感情を自分のものとして理解する
大変でしたね。辛かったですね。
早く報告してくれてありがとうございます。
状況の把握
情報整理
適切な質問をする
(クローズド、オープンクエスチョン)
相手の話をさえぎらない
ヒューマンエラーの指摘ではなく、
何故そこに至ったのかを把握する
要因分析
「なぜ、なぜ」分析①
チームで協議して、出来事流れ図から「問題点」を選ぶ
付箋(ポスト・イット等)を使って、「なぜ、なぜ」を繰り返す
ブレイン・ストーミングのルールを守る
「アイディアを批判しない」、「量を求める」、「全員参加で」
「行動」に関する要因を少なくとも1つ、「状況」に関する要因を複数
挙げる
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「なぜ、なぜ」分析②
最初のステップでの答えが出尽くしたら、レビューする
対策につながらなそうな要因は削除する
「これがなければ」事故に至らなかっただろうと思われる要因を残す
執刀医は誤って患者の右眼に
執刀を開始した
(行動)
(状況)
(状況)
手術部位の確認を
しなかった
誰も間違いを指摘
しなかった
患者は右眼も 緑
内障だった
(状況)
患者の右眼が
露出していた
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因果関係 5つのルール
–The Five Rules of Causation
1.
原因と結果の関係を明確にする。
2.
否定的で曖昧な表現をせず、明確かつ正確な表現を用いる。
× 不十分、不適切、いい加減、不注意など
3.
ヒューマンエラーを根本原因としないこと。先行する要因を同定する。
4.
手順違反があった場合、それに先行する要因を同定する。
× 造影CT撮影時、技師がシリンジの確認を怠った。
5.
予め実施義務がルールとして決められていた場合に限り、業務上必要な
行為の不作為が原因となる。
× 看護師は、オーダーに変更がないか定期的に確認していなかった。(※定期的
な確認ルールがなかった場合に)
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要因分析の観点 ①
コミュニケーション
情報共有などコミュニケーションに問題はなかったか?
記録を含めて、情報伝達に問題はなかったか?
必要な情報がいつでも参照可能になっていたか?
組織内のコミュニケーションに壁はなかったか?
トレーニング
業務を実施するのに十分なトレーニングを提供していたか?
トレーニングの効果はモニタリングされていたか?
継続的な教育に問題はなかったか?
トレーニングの時期に問題はなかったか?
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要因分析の観点 ②
労働環境
スタッフにストレス、疲労、睡眠不足はなかったか?
シフト、人員配置に問題はなかったか?
集中力を阻害する環境要因はなかったか?
必要とされる作業環境が整えられていたか?
機器・備品
目的とする業務に適していたか?
使用方法に問題はなかったか?
保守・管理に問題はなかったか?
故障、誤作動時の対策・バックアップ体制はどうだったか?
異常検知の機能に問題はなかったか?
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要因分析の観点 ③
規則、方針、手順
マニュアルは実態に即して(更新された)ものだったか?
マニュアルは分かりやすいものだったか?
ルールの遵守がスタッフのインセンティブになるものだったか?
ケアの難易度に応じたスタッフの技能認定はどうだったか?
情報共有において、アルバイトやボランティアのスタッフの存在も
考慮されていたか?
事故防止システム
どのような事故防止策が採り入れられていたか?
新しいシステムやプロセスの導入時に試行期間はあったか?
VA-NCPSの資料を元に当社にて翻訳・掲載
因果関係図
執刀医は誤って患者の右眼に
執刀を開始した
(行動)
(状況)
手術部位の確認を
しなかった
誰も間違いを指摘
しなかった
患者の右眼が
露出していた
間違いを指摘でき
るコミュニケーション
環境ではなかった
研修医が右眼を露
出させて覆布をか
けた
部位確認の重要
性が認識されて
いなかった
部位間違えの
危険性に対する
認識が薄かった
術前に部位確認を
するルールが
無かった
患者安全の教育
体制がなかった
(状況)
根本原因
チーム・トレーニング
が導入されて
いなかった
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対策立案
対策立案の視点
・充分に確認をする
・確認時は意識を高める
・気を付ける
・注意喚起していく
これらは対策にならない
単なる「心構え」
ヒューマン・ファクターに配慮し、
集中力の低下時や忙しい時にも、
エラーが事故につながらない仕組み
を作ることが重要となる
システム的な対策を考える
システム的な対策
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対策のポイント
明確かつ具体的であること
誰が見ても容易に理解でき、実践できるようにする
必要に応じて、本格的な実施前に、テストやシミュレーションを行う
対象となる業務プロセスの担当者とも相談する
1つの根本原因に対して、複数の対策が必要な場合もある
VA-NCPSの資料を元に当社にて翻訳・掲載
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対策の注意点
具体的に立てることが大切
他人が見てもイメージできるように
具体性に欠けると、他部署に依頼する場合などに、意図に反した対策
が実施されてしまう可能性がある
対策
注射指示出しのマニュアルを
充実させる
対策の詳細
・マニュアルを見直す
×逆に抽象的になっている
対策
注射指示出しのマニュアルを
充実させる
対策の詳細
・マニュアルの確認項目に●●を追加する
・指示箋の形式を▲▲にする
・・・・・・・・・・・
○ 具体的に
効果測定
実施した対策が有効だったかどうかを確認するため、対策を評
価して効果測定することが望ましい
有効性を検証することが、次の改善につながる
対策実施の有無ではなく、「対策の有効性」を測定する
可能であれば、「分子・分母」によって定量化する
測定のためのサンプリングの方法と期間を明確にする
「四半期ごとに15部のカルテを無作為抽出する」
現実的な目標設定をする
いきなり「100%」・「ゼロ」などの目標設定をしない
VA-NCPSの資料を元に当社にて翻訳・掲載
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PDCAサイクル
PLAN:計画(現状把握、目標設定、要因分析)
DO:対策の立案・実施
CHECK:効果検証、評価
ACT:管理の定着、標準化、反省、見直し
A P
改善活動のサイクル
C D
D C
P A
A P
C D
『P⇔D』の繰り返しだけでは、
改善に結び付かない
小さなことからスケール・アップしていく
ex)
・数人の患者対象⇒病棟の患者対象⇒全患者対象
・チーム内で試行⇒病棟内で試行⇒院内で標準化
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