スケトウダラ太平洋群を対象とする漁業の 社会経済研究:資源利用最適

スケトウダラ太平洋群を対象とする漁業の
社会経済研究:資源利用最適化のための
新たな「共有地」管理施策探求と基盤形成
石村 学志
北海道大学サステイナビリティ学教育研究センター
[email protected]
眞嶋俊造
北海道大学応用倫理教育センター
太平洋群スケトウダラ資源
 重要な資源であるスケトウダラのなかでも、もっとも大きい漁獲量のあ
る資源。加工業にとっても重要な資源。
 広域な漁獲地域(三陸沖(未成魚)、渡島・胆振(産卵親魚)、
十勝から釧路(2歳から4歳)で漁業がおこなわれている。
 多様な漁業(沿岸、沖合)、漁法(沖底、刺し網、定置)が混在
http://www.fishexp.hro.or.jp/exp/kushiro/k
anri/pollock/distribution.htm
スケトウダラ太平洋系群の漁獲動向
「我が国周辺水域における主要魚種の資源評価」より
平成24年度
資源水準 中位
資源動向 減少
15万トン
スケトウダラ太平洋系群資源量(1981-2012)
スケトウダラ太平洋系群総漁獲量(1981-2012)
80万トン
スケトウダラ太平洋系群の漁獲動向
道東海域漁獲(トン)
大きく漁獲量が
変動する
東北海域漁獲(トン)
襟裳以西海域漁獲(トン)
共有資源としての太平洋群スケトウダラ資源
北海道におけるスケトウダラ太平洋群の漁獲可能量(TAC)分配スキーム
TAC(スケトウダラ太平洋系群)
大臣許可漁業(沖底)
知事許可漁業
 異なる漁獲権利形態
 異なる状態のスケトウダラを狙う
(たらこ中心、身中心)
 異なる地域性
都道府県別
漁業種別(刺網、定置網、底建網)
道南太平洋
日高
道東
胆振、渡島
漁業者
襟裳以西
太平洋群スケトウダラ資源管理の難しさ:
許可(権利)体系
沖合底引き(大臣許可):
経営状態は悪くない。これまでの国の補助事業などに
より「国」に対する信頼感はあつい。
刺し網 (知事許可): 年間水揚げ。スケトウダラなしでは
なりたたない。 「国」に対する不信感(制度、科学調査)
。 地域ごとの対立が顕著。
聞き取り調査より
Managing fisheries is
managing people
Ray Hilborn
Professor, the University of Washington
スケトウダラ太平洋系群資源管理を読み解くアプローチ
共有資源利用の構造とダイナミクスの把握
 共有資源をめぐる社会構造の把握
ハード・ソフトノームを基軸とする複数の「institute(制度)」の位置関係
最適化された水産資源管理施策の探求
漁業者個人の漁獲行動におけるノーム
ノーム (norm):
社会における行動や行為の規範や従うべき基準、法や慣習や 価
値(倫理)。これらはノームという意味においては一つに括ること
ができるが、それらは必ずしも同じものではない。
漁業者個人の経済動機(合理性)に基づいた漁獲行動を
規制や肯定するもの。
法:「決められた漁獲量まで獲ることは許容される」
慣習:「小さな魚はとらない」
価値:「持続可能な海洋資源の有効利用」 を肯定する。
共有資源としての水産資源利用の動的構造把握
ハードノームとソフトノーム
ハード・ノームとソフト・ノーム
「ハード・ノーム」:法や公式な手続きを踏んだ明文化された取り決め
「ソフト・ノーム」:慣習や(個人や集団の)倫理。
法:「決められた漁獲量まで獲ることは許容される」
→ ハード・ノーム
慣習:「小さな魚はとらない」
→ ソフト・ノーム
資源管理というノーム?
共有資源としての太平洋群スケトウダラ資源
北海道におけるスケトウダラ太平洋群の漁獲可能量(TAC)分配スキーム
TAC(スケトウダラ太平洋系群)
国
北海道
大臣許可漁業(沖底)
知事許可漁業
異なる縦割りの
ノームがシステムの
前提となっている。
都道府県別
資源管理をおこなう
コアとなるノームが
漁業種別(刺網、定置網、底建網) 縦割りのなかで欠如
している。
道南太平洋
日高
漁業者
道東
胆振、渡島
襟裳以西
資源管理のコアとしてのMSC認証(持続的漁業認証)
原則1: 漁業は,漁獲対象個体群の過剰漁獲や枯渇をひき起こ
さない方法で行われなければならない。また,枯渇状況にあ
る個体群については,その回復を明確に論証できる方法で
漁業が実施されなければならない。
原則2: 漁業活動は,漁業が依存する生態系(生息域や相互依
存種,生態学的関連種を含む)の構造,生産力,機能,多様
性を維持できるものでなければならない。
原則3: 漁業は,地域や国内,国際的な法と規制を尊重した,ま
た,責任ある持続可能な資源利用を義務付ける制度及び運
営体制を有する,効果的な管理システムが必要である。
資源管理のコアとしてのMSC認証
MSC購買・取得動機
消費者:持続的漁業からの生産物(MSC認証漁獲)を選択的に購
入することで、持続的漁業の構築を支える。
生産者(漁業者):市場が持続的漁業を「価値」として認めることでプ
レミアムを期待できる(または、MSC認証取得を前提とする市場
もある)。
価値=ノーム
資源管理のコアとしてのMSC認証
MSC購買・取得動機
消費者:持続的漁業からの生産物(MSC認証漁獲)を選択的に購
入することで、持続的漁業の構築を支える。
生産者(漁業者):市場が持続的漁業を「価値」として認めることでプ
レミアムを期待できる(または、MSC認証取得を前提とする市場
もある)。
価値=ノーム
しかし・・・
スケトウダラ太平洋系群
資源管理にはMSC認証取得
の動機は高くはない
資源管理のコアとしてのMSC認証
事例:気仙沼近海延縄船団ヨシキリ鮫漁
• 世界的な反鮫漁業キャンペーンによる価格低下
• 環境NGOのターゲットとなる。
資源状態は良い、
フィンニグはしていない、
鮫魚体のすべてを使う 持続的漁業
MSCを取得し、誇りをもって
持続的漁業をおこなってゆく
資源管理のコアとしてのMSC認証
スケトウダラ太平洋系群管理にむけて
東京オリンピック:
近年のオリンピックではMSC認証の水産物を提供するが日本では
東京オリンピックにだせるMSC認証国産すり身材料の可能性が
低い(気仙沼のヨシキリ鮫をのぞき)
加工業からの資源管理の可能性:すり身の品質向上への動機付け
「東京オリンピックに向けたMSCスケトウダラすり身」が
スケトウダラ太平洋系群資源管理にむけたコア・ノームと
して持続的漁業管理構築に貢献できる可能性を持つ
消費者ではなく、
加工業からの資源管理の枠組みの提起が可能?
石村 学志
北海道大学サステイナビリティ学教育研究センター
[email protected]
眞嶋俊造
北海道大学応用倫理教育センター
Managing fisheries is
managing people
Ray Hilborn
Professor, the University of Washington