当日配布資料(3.45MB)

抗原特異的結合活性を有する新しいシルク素材
『アフィニティーシルク』
アフィニティーシルク』の創出
scFv
フィブロインL鎖
VH
VL
一本鎖抗体(scFv)が融合された
が融合された
一本鎖抗体
絹フィブロインタンパク質を発現
新規絹タンパク質を発現する遺伝子組換えカイコ
(独)農業生物資源研究所 動物生体防御研究ユニット
動物生体防御研究ユニット
佐藤 充
優れたタンパク質生産系としてのカイコ
吐糸口
セリシン
ser-1
ser-2
ser-3
・
・
・フィブロインL鎖
・フィブロイン 鎖
(FibL)
・P25
後部絹糸腺
フィブロイン
・フィブロインH鎖
・フィブロイン 鎖
(FibH)
前部絹糸腺 中部絹糸腺
カイコが吐く絹(シルク)は
タンパク質からできている
1個の繭からおよそ1.5kmに達する
絹糸の単繊維がとれる。
カイコの絹糸腺(模式図)
遺伝子組換えカイコの利用
・2000年にカイコの遺伝子組換え技術が確立された。
・外来遺伝子の導入によりシルクタンパク質を改変し、
物性の向上や機能性の付加を実現した新しいシルクを
設計・創出することが可能となった。
・目的のタンパク質をフィブロインとセリシンのどちらにも
発現させることが可能。
(例)・フィブロインと蛍光タンパク質の融合タンパク質
→蛍光絹糸
・セリシン層にヒト血清アルブミンを発現させる
→遊離・精製→活性のあるものがとれる。
・組換えカイコを用いる最大のメリット
→安価で大量にタンパク質を生産できることである
安価で大量にタンパク質を生産できることである。
安価で大量にタンパク質を生産できることである
一本鎖抗体 (single chain variable fragment: scFv)とは
とは
抗原結合部位
重鎖
軽鎖
Linker:(GGGGS)3
可変部
VH
(variable region)
VL
抗体の低分子化
定常部
(constant region)
一本鎖抗体
(scFv)
完全長抗体
(150kDa)
(30kDa)
抗体のH鎖および
抗体の 鎖およびL鎖
鎖および 鎖
可変部の遺伝子を
クローニング
DNA
VH
VL
抗原特異的な抗体を
産生する細胞
VH
linker
VL
一本鎖抗体 (scFv)DNA
フィブロインL鎖と一本鎖抗体の融合タンパク質を
フィブロイン 鎖と一本鎖抗体の融合タンパク質を
発現する遺伝子組換えカイコ作製用ベクターの構築
BamH Ⅰ
VH
scFv cDNA
HindⅢ
Ⅲ
linker
VL
Myc
一本鎖抗体(scFv)
一本鎖抗体
EcoR Ⅰ
フィブロインL鎖
フィブロイン 鎖-scFv
発現ベクター
発現ベクター
Bgl Ⅱ
Fib-L pro
Fib-L
3’-UTR
フィブロインL鎖
フィブロイン 鎖-scFv
融合タンパク
融合タンパク質
タンパク質
〈マーカー遺伝子〉
マーカー遺伝子〉
piggyBac R 3XP3-pro DsRed2
polyA
Fib-L pro
Fib-L
VH
linker
VL
Myc 3’-UTR piggyBac L
遺伝子組換えカイコ
遺伝子組換えカイコ作製用
えカイコ作製用ベクター
作製用ベクター
「転移酵素遺伝子」をもつ
ヘルパープラスミドDNAと一緒に
カイコ卵へ注入
ゲノム中にランダムに挿入
遺伝子組換えカイコ作出法
顕微鏡下でカイコ卵に針で穴を開け、
DNAを注入する
を注入する
マーカー遺伝子(DsRed2)の発色で
の発色で
マーカー遺伝子
組換え体を選抜
マーカー遺伝子(DsRed2)は視神経で
は視神経で
マーカー遺伝子
発現するように制御されているので
組換えカイコの眼が赤くなる
組換えタンパク質の発現と素材化コンセプト
・フィブロインL鎖との融合タンパク質として発現させると、ネイティブなフィブロインL鎖の
一部が組換えタンパク質に置き換わることで絹糸に発現する
A
C
フィブロインH鎖
フィブロイン 鎖
フィブロインL鎖
フィブロイン 鎖
scFv
ヘテロ2量体化
P25
カイコ繭
20mm
B
フィブロインH鎖
フィブロイン 鎖 (>300kDa)
フィブロインL鎖
フィブロイン 鎖 (~27kDa)
フィブロイン繊維
セリシン層
P25
FibL-scFv (~58kDa)
x5.0k
20um
絹糸断面の走査型電子顕微鏡写真
C. カイコ絹糸腺内でのフィブロイン複合体形成
フィブロインタンパク質は、後部絹糸腺でのみ合成・分泌され、
2本の繊維がセリシン層に包まれて絹糸となる。
本の繊維がセリシン層に包まれて絹糸となる。
組換えタンパク質の発現と素材化コンセプト
・フィブロインL鎖との融合タンパク質として発現させると、ネイティブなフィブロインL鎖の
一部が組換えタンパク質に置き換わることで絹糸に発現する
A
C
最大の特徴
組換え抗体が
フィブロイン複合体に
「取り込まれ」
シルク担体に固定される。
ヘテロ2量体化
20mm
B
フィブロインH鎖
フィブロイン 鎖
フィブロインL鎖
フィブロイン 鎖
フィブロイン繊維
セリシン層
P25
FibL-scFv
x5.0k
20um
複 合 体 形 成
組換えカイコ産生繭における組換えタンパク質の発現
EcoRI
FibL-scFv
3xP3
pro
SV40
FibL
pro
DsRed2 polyA
BamHI
FibL
cDNA
HindIII
scFv
Myc
BglII
FibL
3’UTR
〈フィブロインL鎖-一本鎖抗体発現組換えカイコベクター
フィブロイン 鎖-一本鎖抗体発現組換えカイコベクター〉
鎖-一本鎖抗体発現組換えカイコベクター〉
EcoRI
FibL-EGFP
3xP3
pro
SV40
FibL
pro
DsRed2 polyA
BamHI
FibL
cDNA
HindIII
EGFP
BglII
His
FibL
3’UTR
bright
FibL-EGFP
FibL-scFv
wild
FibL-EGFP
FibL-scFv
wild
〈フィブロインL鎖-緑色蛍光タンパク質発現組換えカイコベクター
フィブロイン 鎖-緑色蛍光タンパク質発現組換えカイコベクター〉
鎖-緑色蛍光タンパク質発現組換えカイコベクター〉
EGFP
1 cm
1 cm
組換えカイコ産生繭からシルクパウダーの調整
9M 臭化リチウム
により溶解
組換えカイコ
産生繭
シルク水溶液
透析
濃縮・ゲル化
凍結乾燥
シルクゲル
粉砕
シルクパウダー
5 mm
(x 500) 200 µm
(直径1-40µ
(直径
µmの小さな粒子)
の小さな粒子)
組換えカイコ由来シルクパウダーにおける
組換えタンパク質の発現
scFv
VH
フィブロインL鎖
FibL-EGFP
FibL-scFv
wild
FibL-EGFP
FibL-scFv
wild
FibL-EGFP
FibL-scFv
wild
FibL-EGFP
FibL-scFv
(kDa)
wild
VL
87.5
FibL-scFv-Myc
FibL-EGFP-His
52.7
35.9
内在性FibL
内在性
27.9
クマシー染色
抗Myc抗体
抗体
抗His抗体
抗体
抗FibL抗体
抗体
組換えカイコ由来シルクパウダーの結合活性の評価
標的タンパク質:WASP
標的タンパク質:
(Wiskott-Aldrich syndrome protein)
WASP
WASP
WASP
免疫細胞で発現している
シグナル伝達分子
マクロファージ
(免疫系細胞)
VS
抗WASP-scFv発現
発現
シルクパウダー
抗WASP抗体
抗体
(完全長の抗体)
PGS
プロテインGセファロース (PGS)
(従来法)
抗WASP抗体
抗体
コントロール IgG
細胞抽出液
(kDa)
85.6
WASP
FibL-EGFP
WASP
免疫沈降
FibL-scFv
(シルクパウダー) (抗WASP抗体)
抗体)
(抗
wild
細胞抽出液と反応
WASP
Y
Y
Y
プルダウン
プルダウン
標的タンパク質を効率よく精製することが可能
(前)
(後)
タンパク質アフィニティー精製用担体としての利用
繭から様々な形状のシルク担体に加工処理することが可能
糸
シルクパウダー
シルクフィルム
シルク水溶液
目的タンパク
目的タンパク質
タンパク質
抗原
アフィニティーシルクフィルム
アフィニティーシルクパウダー
アフィニティー精製用新素材
アフィニティー精製用新素材の
精製用新素材の開発
抗原検出用新素材の
抗原検出用新素材の開発
シルクスポンジ
細菌・ウイルス検出系や
疾患マーカー検出系へ応用
まとめ
・組換えカイコの成虫は飛行不能なので、脱出などによる拡散はない。
→ 人・環境に優しく安全な生産技術・製品として社会にアピール。
・今後、アフィニティーシルク技術の実績を積み上げ、基礎研究レベル
から実用化へとステージアップを図る。
→ 試薬メーカー、診断薬メーカー、化学・材料メーカーとの連携。
・新しい機能性を付加したシルクを生産する組換えカイコの利用により、
長い歴史と伝統のある我が国の養蚕業に新たな道を開くことが期待
される。
日本発の
日本発の『ネオ・シルクロード』
ネオ・シルクロード』を展開していく
展開していく!
していく!
本日はご
本日はご清聴
はご清聴ありがとうございました
清聴ありがとうございました。
ありがとうございました。
Thank you for your attention.
独立行政法人 農業生物資源研究所について
農業生物資源研究所について
農業分野の生命科学の研究開発を進め、農業技術
の発達やこれまでにない新しい生物産業の創出を目指
して設立された、我が国最大の農業分野の基礎生命
科学研究所です。
これまでに、イネゲノムの全塩基配列解読やカイコの
遺伝子組換え技術、体細胞クローン技術による遺伝子
組換えブタ作出等、基礎的・先導的研究において世界
をリードしてきました。