Agilent Technologies ロードセル・テストの実際 Application Note ロードセルとは ロードセルとは、高圧縮力、引張力、高圧、質量の測定に用いられるデバイスです。ロードセルは研究開発および 産業用に広く用いられ、アプリケーションによって形状が異なります。最近のデザインのほとんどは、センサ素子 として歪みゲージを採用していて、引張力、圧縮力、剪断力の測定が可能です。 質量による力 載荷プレート クッション・バンパ ロードセル (アルミニウム・キャビティ) クッション・バンパ ベース・プレート ホイートストーン・ブリッジ R1 + – R4 R1 ~ R4: VEX – R2 VO VO=2 mV/V(代表値) (Rout =350 Ω(代表値)) 歪みゲージ + R3 励起電圧入力 VEX =5または10 Vdc (R in =350∼450 Ω) 図1. ロードセルを使用した重量指示計 ロードセルは、機械的な力を電気信号に変換するシンプルなデバイスで、例えば、フォース・トランスデューサなどが あります。この種のデバイスは、加熱加工により弾性を持たせた金属板でできています。この金属板の内部表面に4個以 上の歪みゲージがホイートストーン・ブリッジに類似した構成でボンディングされています(図1参照)。歪みゲージで構 成されたホイートストーン・ブリッジが、特定の大きさの歪みまたは力を電気出力に変換します。各ゲージの抵抗値は 同じなので、ロードセルに応力が加わっていないときは、4個のゲージ(測定値)はすべて同じです。ロードセルに応力が 加わると、ゲージのうち2個はわずかに引き伸ばされるので、抵抗が増加します。他の2個のゲージは縮むので、抵抗が 減少します。 応力が加わるとブリッジがわずかに平衡状態からずれます。加わった力の大きさに比例して、抵抗の不平衡も大きくな ります。最近の重量指示計のほとんどは、ロードセルに電力を供給する「励起電圧」を出力します。この電圧は、ロー ドセル内の校正抵抗を経由して歪みゲージに印加されます。この手法により、定格荷重に対して特定の信号が出力され るように校正されていて、応力ポイントの再現性が高くなっていて、ロードセルは元の状態に戻ることができます。通 常は、ロードセルは製造時に密封され、修理することはできません。 2 レギュレーション電圧 (通常10 V)が ロードセルに供給されると、セルか らは、 「mV/V」定格の低い信号が出 力されます (図2参照) 。すなわち、セ ルに応力をかけた状態で電圧を供給 すると、既知の出力電圧が返されま す。通常は、出力電圧は2 ∼ 3 mV/V 程度です。実際には、出力電圧は図2 の値よりもずっと小さな値になりま す。さらに、すべての計量器には静 荷重値があります。静荷重値とは、 ロードセルに恒久的に加わり、常時 作用している荷重の大きさです。こ れは、プラットフォームなど、一定 の質量の荷重の大きさで、ユーザが 加える荷重は含まれていません。 Agilent U3606B から10 Vdcの 励起電圧を 供給 R1∼R4は 歪みゲージ R1 R4 Agilent U3606Bで 2 mV/Vを + – 測定 R2 R3 ロードセルDUT ブリッジ出力電圧Voは、 VO = ( R3 – R2 )K EX R3 + R4 R1 + R2 図2. Agilent U3606Bによるロードセルのテスト 200,000ポンド(11.538 mV) (約9000 kg) 例... 次の例は、トラック重量指示計に 表示されているデッキ質量が 20,000ポンドのときの、ロード セルの測定方法です (図3参照) 。 このデッキの質量が、最大荷重容 量520,000ポンドのロードセルの グループに加わっています。この グループは荷重容量65,000ポン ドのセル8個から構成されていま す。ロードセルは「サミング・ボー ド」に接続され、その出力が指 示計に接続されています。発生 し て い る 信 号 は 約1.154 mVで す。計量器の実際の定格荷重は 200,000ポンド程度です。 200,000ポンドの荷重がかかる と11.538 mVだけ信号が変化す ることが予測できます。これに 静荷重の1.154 mVを加えると、 12.692 mVが求められます。次に、 この計量器の1目盛りは20ポンド なので、フル負荷の信号を10,000 目盛り (200,000/20)で 割 る と、 最小出力電圧が0.00115 mV、す なわち1.15 μVになることがわか ります。 重量指示計 8888 計量デッキ:20,000ポンド(1.154 mV) 計量容量:520,000ポンド/8セル=65,000ポンド(ロードセル1個あたり) 図3. トラックの計量ステーションの測定例 例に示したように (図3) 、1目盛に相当する電圧信号はきわめて小さな値です。 この例では、個々のロードセルが接続されているケーブルやサミング・ボード による信号損失は考慮していませんが、これらの要因による信号損失が10 %に も上ることが珍しくありません。より長い計量器では、同じ荷重容量でロード セルが14個使用されているものもあります。その場合、信号の大きさは、1 μV を下回る可能性があります。Agilent U3606Bマルチメータ/DC電源は、この よ う な 条 件 で 必 要 な 分 解 能 仕 様(0.001 mV)を 満 た し て い ま す。 ま た、 U3606Bは励起電圧の確認にも使用でき、アナログ信号用のレンジで5 V以下 または最大±15 Vの電源電圧も表示できます。この他に、U3606Bは、一部の ディスプレイやバックライト用の最大180 VのDC電圧にも、DC電圧レンジ内 で十分に対応できます。 3 もう1つの重要な分野は、リーケージの測定です。これは、重量指示計が屋外 にあったり、湿度が非常に高い場所に置かれていたり、液体で洗浄されたりす る場合に問題となります。ケーブルが摩耗したり、サミング・ボックスに水が 侵入したりすると、信号接続やグランドに励起電圧の微小なリーケージが生じ ます。リーケージをテストするには、ブリッジのすべてのワイヤとグランド (実 際にはロードセルのケースや重量指示計のフレーム) 間の抵抗を測定します。測 定値が表示された場合は、水分が存在しています。また、ケーブルにはシール ドがあり、ロードセル内で仮想的な接続を形成します。こちらからブリッジ接 続やグランドに対するリーケージもあってはいけません。50 M Ω ∼ 100 M Ω のレンジで明確に読める抵抗値が表示された場合は、ロードセル信号の安定度 や再現性に問題が生じる可能性があります。U3606Bでは最大100 M Ωまで抵 抗を測定でき、リーケージを表示できます。 図4. Agilent U3606Bの最小値/最大値機能 さらに、ブリッジ抵抗の測定が必要な場合もあります。これは歪みゲージ抵抗 とも呼ばれます。このテストにはいくつかの方法があります。励起接続で抵抗 を測定するには、信号接続のセル平衡を確認します。これには、4つの測定が 必要です。最初に、+sigと+ex間、+sigと−ex間を測定します。これらの測 定値は一致する必要があります。 同様に、−sigと+ex間、および−sigと−ex間の測定値も一致する必要があり ます。これらの信号接続抵抗は一般的に350 Ωあるいは700 Ωです。信号に よっては、最低240 Ω、あるいは最高2000 Ωの接続もありますが、校正抵抗 値より低い場合は、通常、上記の値に近い値になります。 場合によっては、接続の不良や、セル内またはケーブルの腐食のために、ロー ドセルに間欠的な障害が生じることがあります。障害によって、重量指示計 の安定性や再現性の問題が発生します。これをテストする最も簡単な方法は、 セルに電源を供給した状態で電圧計を信号に接続し、小さいハンマーを使っ て、セルの末端など、叩いても損傷のおそれがない場所を軽く叩く方法です。 信号が変化した場合は、セルの内部接続に問題があるか、歪みゲージにひび が入っている可能性があります。このハンマーによるテストは、電圧ではな く抵抗の測定でも行えます。過電圧(落雷など)により、校正抵抗に間欠的に 障害が生じる場合は、セルに大きな荷重を加えない限り、信号変化をテスト するのは非常に困難です。理想的条件では、荷重がない状態でのロードセル の測定値は0.000 mVになります。よって、セルに力が掛かっていない状態で 歪みゲージの実際の電圧が大きく変動した場合、測定値を読み取れません。 U3606Bの最小値/最大値機能は、間欠的な問題の発見に非常に有効です。 まとめ ロードセルを測定する際にデザイン/テスト・エンジニアが注意しなければならないのは、ロードセルの出力信号 の電圧範囲が非常に狭いことです。もう1つ注意が必要なのは、加えられる力が微小でも出力信号が変化してしまう ため、ロードセル自体の接続不良が測定値に与える影響も大きいことです。天候や湿気の影響によって、励起電圧 のリーケージも発生する可能性があります。セル間の励起接続で抵抗が平衡していることを確認するには、安定し たブリッジ抵抗測定が重要です。 Agilent U3606Bは、ロードセルのテストに必要なAC/DC電源の他にDMMも備えていて、低電圧レンジでも高い 分解能を実現しています。そのため、安定した低電圧/抵抗測定が可能です。内蔵演算機能(最小値/最大値/平均 値)により、測定ノイズを除去してロードセルの間欠的な障害や配線不良をテストすることもできます。 4 www.agilent.co.jp www.agilent.co.jp/find/U3606B myAgilent myAgilent Agilent Advantage Services http://www.agilent.co.jp/find/myAgilent www.agilent.co.jp/find/AdvantageServices お客様がお求めの情報はアジレントがお届け します。 myAgilentに登録すれば、ご使用製品 の管理に必要な様々な情報を即座に手に入れ ることができます。 アジレント・アドバンテージ・サービス、そ れはお客様の満足を第一に考えているアジレ ントの修理・校正サービスの総称です。 Agilent Electronic Measurement Group DEKRA Certified ISO 9001:2008 www.axiestandard.org AXIe(AdvancedTCA® Extensions for Instrumentation and Test)は、AdvancedTCA ®を汎用テストおよ Quality Management System Sys www.agilent.co.jp/quality び半導体テスト向けに拡張したオープン規格 です。 Agilentは、AXIeコンソーシアムの設立メ ンバです。 www.lxistandard.org LXI は、 Web へのアクセスを可能にするイー サネット・ベースのテスト・システム用イ ンタフェースです。Agilentは、LXIコンソーシ アムの設立メンバです。 http://www.pxisa.org PXI(PCI eXtensions for Instrumentation)モジュラ 測定システムは、PCベースの堅牢な高性能測 定/自動化システムを実現します。 アジレント・テクノロジー株式会社 本社〒 192-8510 東京都八王子市高倉町 9-1 契約販売店 www.agilent.co.jp/find/channelpartners アジレント契約販売店からもご購入頂けます。 お気軽にお問い合わせください。 計測お客様窓口 受付時間 9:00-18:00(土・日・祭日を除く) TEL ■■ 0120-421-345 (042-656-7832) FAX ■■ 0120-421-678 (042-656-7840) Email [email protected] 電子計測ホームページ www.agilent.co.jp ● 記載事項は変更になる場合があります。 ご発注の際はご確認ください。 © Agilent Technologies, Inc. 2014 Published in Japan, January 29, 2014 5991-3082JAJP 0000-00DEP
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