この論文は、「Arterial Stiffness」WEBサイトに掲載されています。その他の論文はこちら Click "Arterial Stiffness" web site for more articles. Question 5 Answer ACC/AHA が 2011 年に改訂した PAD ガイドラインにて、ABI が 0 .91 以上 1 .0 未満は正常値ではなく、境界域と定義されましたが、 境界域患者の PAD 検出感度を高めるにはどうしたらよいですか? また、透析患者・糖尿病患者にて、ABI が擬似的に高くなることが あり、石灰化が主な要因だと理解していますが、石灰化以外の要因 はありますか? 擬似的かどうかを判断する方法を教えてください。 吉川公彦(奈良県立医科大学 放射線医学教室 教授) ACA/AHA の 2011 年改訂 PAD ガイドラインでは ABI が が、他の原因としては2つ考えられます。 0 .91 以上 1 .0 未満は境界域と定義されていますが、この 1 つは鎖骨下動脈の狭窄や閉塞により、上腕動脈の血圧 境界領域の PAD 検出感度を高める方法として、運動負荷 が低下することで見かけの ABI が高くなる場合です。ABI 試験があります。PAD 患者では負荷後 ABI は低下し、し 測定では必ず左右の上腕動脈の血圧を測定し、左右差が ばらくすると安静時の ABI に回復します。負荷となる歩 あるときは高い方を分母とします。まれに両側の鎖骨下 行距離に関しては 40 m から 100 m と諸説ありますが、負 動脈の狭窄があり、左右とも上腕動脈の血圧が低下して 荷により ABI 値が 15 〜 20 % 以上低下すれば PAD の可能 いることがあるので注意が必要ですが、上腕動脈の脈波 性が高くなります。また回復に要する時間が長いほど重 の立ち上がりがゆるやかになっていたり、ピークが下がっ 症です。 ている波形変化に着目することで、鎖骨下動脈の狭窄を さらに、form PWV/ABI では ABI 値に PVR 波形指標の 疑うことができます。 upstroke time(UT)や %mean arterial pressure(MAP) ABI が疑似的に高くなるもう 1 つの原因としては不整脈 (図 1)を組み合わせた診断サポートシステムを導入するこ があったり、痛みあるいは緊張による体動のため、収縮 期血圧が正確に測定できず、実際より高めに測定されて とで、PAD の検出能を向上させています。 しまう場合です。この場合は波形(エンベロープ)をチェッ ABI が疑似的に高くなる原因としては、透析患者でよく クすることにより、正しく測定された血圧かどうかの判 みられるような動脈壁の高度石灰化が最も多いわけです 定が可能です。 図 1 ● 脈波解析のパラメータ A UT(upstroke time) 正常波形 波形が拡張期から収縮期に移 行する時間を示したもの。 狭窄・閉塞があるとUTは延長 し、数値は大きくなる 170ms UT延長 基準値(目安):健常者 180ms 狭窄波形 UT 200ms B %MAP(mean arterial pressure) 基準値(目安):健常者 45%以内 0% %MAP 100% 0% 70 正常波形 100% 38% 振幅 波形の面積平均値を脈波の振 幅で割り、%で表したもの。 狭窄・閉塞があると、%MAP の数値は大きくなる。 面積平均値 狭窄波形 50%
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