概要 Calibration Skydip data vs. 220GHz opacity

ASTE搭載用多色連続波カメラの性能評価3
強度較正解析
石井峻、田村陽一、泉拓磨、河野孝太郎(東京大学)、竹腰達哉、荒井均、佐藤立博、廣田晶彦、大島泰、岩下浩幸、前川淳、
南谷哲宏、松尾宏、川辺良平 (国立天文台)、中坪俊一、森章一、香内晃、徂徠和夫(北海道大学)
概要
ASTE TESカメラの試験運用Phase II+(2014年3月-4月)において得られたデータの強度較正を目的にデータ解析を実施した。強度較正の作業は
大気減衰の補正とフラックス較正の2段階に分けられ、観測で得られたマップの強度スケールを科学的に意味あるものとするために必須である。
TESカメラにおける強度較正手法の確立を目指し、第1段階となる大気減衰の影響を較正すべく解析を行った。望遠鏡を固定した状態で取得し
たTESからの時系列データ(Stillデータ)と220GHzラジオメータで取得した大気の光学的厚み(opacity)データを比較し、一部のデータに対
してTESカメラ出力とopacityの間の関係を導出した。また、ティッピング観測データ(Skydipデータ)からopacityを算出しラジオメータデー
タとの比較も行ったが、単純なモデルでは推定誤差が大きくそのままの強度較正に用いるのは困難であった。この要因として、1)ラジオメータ
の時間分解能及び誤差の影響、2)TESカメラでのオフセット出力の存在とその不定性の影響が考えられ、強度較正手法確立のためには長時間
データの比較と、出力のオフセットを考慮した取り扱いが必要であるとわかった。
Calibration
Phase II+ operation
強度較正のためのパラメータ
TESカメラ解析プロセス
TESカメラのバンド特性とASTEサイトの大気透過率
1
line noise除去
*1,2,3,,Hz
0.9
0.7
Trasparency
*low pass filtering
*tau
*Elevation
相関雑音除去
*SQUID
*PCB
*all pixels
周波数特性
Band 1: 244 - 494 GHz (50 GHz), 128ビーム
Band 2: 330.5 ‒ 365.5 GHz (35 GHz), 170ビーム
0.8
filtering in
frequency domain
1/f noise 除去
大気減衰補正
PWV = 0.5 mm
1.0 mm
0.6
0.5
Scan方法
Still data: 望遠鏡固定、10分間時系列データ
Skydip data: 仰角ティッピングデータ(typ. 10deg.)
0.4
0.3
Skydip data
and
radiometer
(AzTEC, Wilson+08)
Band 1
0.2
Band2
Band3
0.1
0
100
bi (t) < FCFi > f
Ii (t) =
Si e eff
median noise
removal
FCFi =
flux calibration
-
*planets
final map
0
d f( )
sky
d Pi (
300
400
500
600
Frequency (GHz)
700
800
900
1000
(Takekoshi+12)
解析前処理:low-pass filtering and data merging
1
Aeff
200
)
Source Intensity, I (Jy)
Bolometer output, b (V)
flux conversion factor, FCF (Jy/(beam W))
Responsively, S (V/W)
Opacity, τeff
Effective antenna aperture, Aeff
Band pass efficiency, f(ν)
Beam pattern, P(Ω)
Still data vs. 220GHz opacity
mbfits
time (MJD)
Az, El
data (192Hz)
data
lowpass filter
(f < 0.015 Hz)
MJD
Az, El
(FFT)
radiometer
time
tau_225 GHz
( 1min)
・Pythonをベースに解析スクリプトを作成
・TESカメラ出力から大気変動のみを取り出すため、 lowpass filterを通した後、1secで再サンプリング
・ラジオメータからのデータも同様に処理し、データの
分散を低減した後、TESカメラ出力とマージ
time→MJD
lowpass
(digital filter)
MJD
averaging (1sec)
Az
El
data1
merge
Skydip data vs. 220GHz opacity
Skydip data の例 (Band 1, pixel #1)
220GHzラジオメータによる大気の光学的厚み
・望遠鏡を仰角方向に 5deg.ティッピングし
TESカメラ出力を記録
・220GHz opacityの測定間隔は約1分
・大気の厚みの仰角依存性からopacityを推定
・Raw dataはtau変化に追随できている
一方で個々のデータのrmsは大きい
・lowpass filterを用いて平滑化し装置由来の
ノイズは除去(ただし、スキャンのエッジを
保持するためカットオフ周期は10secとした)
・lowpass filter ( 5min)を用いて平滑化
・rms
tau_225
0.025 程度としたうえで比較
・出力のレンジはstill dataより大幅に大きい
・opacityを算出しラジオメータデータと比較
Still dataの例 (Band 1, pixel # 1)
Skydip dataに対するフィッティング結果
・望遠鏡をAz=180deg. El=60 deg.に固定
した状態でTESカメラからの出力を10分間 連続して記録
Still data
Si (Q, t)
bi (t) =
Isky (t)(1 e eff (t) ) + ci (t)
FCFi
= i exp ( 0 sec Z) + ci
・大気の変動(+装置由来の変動)を反映
この結果、tau270 = 0.20
・lowpass filter ( 2min)を用いて平滑化し
装置側の変動やラインノイズは除去
大気モデルamによるopacityの推定
(a)
(b)
(c)
0.15を得た
・同時刻のラジオメータの結果はtau220 = 0.042
・同時刻に取得されたopacityと比較
Still dataと220GHz opacityの比較結果
・以下のフィッティングモデルを仮定
・両者の整合性を大気モデルam (Paine04)を
用いて検証
・tau220 = 0.04のとき、tau270 = 0.064となり、
誤差内ではあるが、推定誤差が大きくこのまま
較正に用いる困難
・tau270の推定誤差のうちオフセット成分の不定性
が大きい。この影響を押さえたモデルでの解析が
必要である
まとめと今後の課題
(a), (b)のように、TES camera出力とopacityの間に相関が見られるものがある一方で
(c)のように両者の対応関係が不明瞭なデータも存在。
→ 測定した10分間のopacityの変動が小さいことによるダイナミックレンジの不足、あるいは
opacityの天球上での不均一性がこれらの要因として考えられる。
TESカメラデータの強度較正手法の確立を目的に、大気減衰の補正
方法を検討し、解析のためのスクリプトを作成した。今後はカメラ
出力に対する大気の影響をより高精度に推定するため、opacityと
カメラ出力の双方の変化量が大きいと予想される長時間データの解析
と、Skydipデータからのopacity推定精度を制限しているオフセット
成分を考慮したフィッティングモデルを検討するとともに、複数のピ
クセルを用いたフィッティングやBand1とBand2のデータを組み合わ
せた解析を予定している。