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日消外会誌 22(5):1072∼
1077,1989年
硬変併存肝細胞癌切除後再発例 か らみた切除範囲 の検討
県立西官病院外科
別府 真 琴
一
藤本 憲
高
須
朗
福
谷
口 積 三
崎 孝 幸
A STUDY ON RESECT10N LIMITS BASED ON THE RECURRENT
「
ITH CIRRHOSIS
HEPATOCELLULAR CARCINOMAS■
Makoto BEPPU,Akira TAKASU,Takayuki FUKUZAKI,
Kenichi FUJIMOTO and Sekizo TANIGUCHI
Prefectural Nishinonliya Hospital,Departlnent of Surgery
腫瘍径5 c m 以 下 の I M 0 1 ) の
硬変併存肝細胞癌 2 7 例を臨床病理学的 に検討 を行 い, 再 発群 9 例 と非 再
発群 1 8 例の比 較 か ら, 再 発因子, 再 発型式 を検討 し, い かな る切除範 囲 が妥 当であ るかにつ いて考察
i n f ( 十) か f c ( ―) で す べ
した。両群間 で著 明な差 を認めたの は被膜浸潤 , 血 管侵襲 で, 再 発群 は f c ‐
i n f ( 十) , v p l 症
て v p l であ った。 f c ‐
i n f ( 一) , v p 。症例 は H r s で 再発 もな く予後 も良好 で あ った。 f c ‐
例 は前者 よ り拡大手術 の傾 向であ ったが, 9 例 中 7 例 と高率 に再 発 を きた した。 また再 発症例 の再発
i n f , v p を術前
部位 の検討 よ り9 例 中 2 例 は H r S を H r l に すれば再発 を回避 しえた と考 え られた。f c ‐
に判 断で きな い現時点 で は, 右 葉 においては H r l , 左 葉 においては H r 2 が 望 ま しい と考 え られた。
索引用語 !肝 硬変併存肝細胞癌,肝 細胞癌再発,肝 広範囲切除,肝 小範囲切除
は じめに
表 1肝 細 胞癌 切 除症 例
( 1 9 7 7 1 1∼9 8 7 1 2 5 1 例
)
最近 におけ る肝細 胞癌 の外科的治療法 の進歩 は著 し
い ものが あ る。特 に腫瘍径 の比 較的小 さい肝細胞 癌 が
診断 され るよ うにな り,肝 硬変併存肝細胞癌 とい え ど
も切除適応 とな りうるものが急増 しつつ あ る現状 で あ
る。 しか しなが ら併存肝硬変病変 のため肝予備能 に限
腹癌径
手
術死亡
A 群 ≦2 c m 8 例0
B 群2 ∼
5 c m 2 4 例0
検
討症例 再 発症例
匝 □ →陸□
1Mo→
匝□ →臣□
B 群
C群
>5cm 19例
3例
16例
13観
限を伴 う。し か
界 が あ り,切 除範 囲 にはおのず か ら待」
るに小 範 囲切 除 に よる再発 が比較 的多 く認め られ,肝
硬変併存肝細胞癌 の切 除成積 が い ま一 つ かんば しい も
える5cm以 下 の肝細胞癌 は24例(B群 とす る),5cmを
のではないゆ えんであ る。 そ こで再発病態 の分析 に適
た 症frllは
,再 発病 態 の検 討 に適 した A群 8例 と B群
した腫 瘍 最 大 径5cm以 下 の 肝 細胞 癌 症例 に つ い て 臨
のなかで IMll)以上 の肝 内転移 を認 めた 5例 を除 いた
床病理学的 に検討 を行 い,そ の再発症allおよび非再 発
IM。の19例 (B′
群 とす る)計 27例で あ る。 ここで い う
症例 の比 較 か ら,再発 因子 な らびに再発型式 を検 討 し,
いかな る切険範 囲 が 妥 当 で あ るかにつ いて考察 した 。
IMlと は娘結 節 と主 腫瘍 との間 に肉眼的 に 明 らか な肝
対象 お よび方法
1977年1月 か ら1987年12月までの11年間 にお け る原
発性肝細胞癌切除症例 は表 1の ご と く51例で,最 大径
2cm以 下 の細小肝癌 ゆは 8例 (A群 とす る),2cmを こ
< 1 9 8 8 年1 2 月1 4 日受理> 別 刷請求先 : 別 府 真 琴
〒6 6 2 西 官市六湛寺町1 3 - 9 兵 庫 県立 西宮病 院外
科
こえる ものは19例(C群 とす る)であ り,今 回対 象 とし
組織 を認め る場合 をいい,主 腫瘍 と密 に接 してい る娘
結節 は被膜外浸潤 に含 め IM。とした。
これ ら27例の うち再発症例 (再発群)は A群 2例 ,
B′
群 7例 の計 0例 で,非 再発症例 (非再発群)は 18例
であ り,再 発群 を非再発群 を対 照 として HBsAg,α ‐
fettprotein(AFP),そ して腫瘍 の 臨床病理学 的特 徴
一 被膜 浸潤,血 管侵嚢,肝 切離面 におけ る癌 浸潤 の有
無,組 織 分類 (原発性肝癌取扱 い規約 1)による),細 胞
1989年5月
23(1073)
異型度 (Edmondson分 類 に よる),腫 瘍組織 の 内部構
造 りにつ いて 比較検 討 し,ま た再 発群 の再発部位 よ り
切除範 囲 の妥当性 につ いて考察 した 。
成
HBsAg陽
性 は,再 発群 で 9例 中 3例 ,非 再発群 で18
例 中 2例 で あ り,AFP値
おいて HBsAg陽
は図 2の ご とくで,再 発群 に
性 お よび AFP高 値 を示 す ものが 多
い傾 向 がみ られた.ま た再 発群 は全例 に肝硬変 を伴 っ
績
1)遠 隔成績
てお り,非 再発群 は肝硬変合併 は18例中 16例で,残 り
手術死亡 は A群 ,B群 にはな く,C群 に 3例 認 め ら
れた。3例 の うち 2例 は肝硬変 に よる術後 1か 月以内
の肝不全死 で あ ったが, 1例 は術後 2か 月経過 しての
2例 は慢性肝炎 で あ った。
3)治 療法
肝切 除術式 は,図 3の ご とくで,切 除範 囲 は再発,
胆汁痩 に よる肝不全,消 化管 出血死であ った。
非再発群 で大差 はな く,両 群 におけ る切除範 囲 の検討
A群 の予後 は,図 1下 図 の ご とくで,再 発 は 8例 中
2例 にみ られ , 2例 の うち 1例 は 5年 8か 月後生存 中
に支障 は な い と考 える.肝 動脈 塞栓術 (transcatheter
arterial embolization,以
後 TAEと
で あ る。 B,B′ ,C群
に 2例 ,非 再発群 に 5例 術前 に行われ た。
の累積生存 率 (Kaplan,Meier法
略すルま,再 発群
に よる)は ,図 1上 図 の ご と くで,B′群 で は 3生 率
73%, 5生 率46%で あ った。
2)HBsAg,AFP,肝
図 3 切 除範囲
硬変 の有無
再 発群
非再発群
図 1 腫 瘍径 と遠 隔成績
図 4 肝 細胞癌 切 除症例 (≦ 5)(fc,fc‐infお よび vp)
1)再 発 とfc,fcinf,vpの 関係
(9例 )fo(■ )hf(■ )78%lf駆完)
非再発症例 (18例)・ (払
すい1,最 )1化 い)球←)
再発症例 (9例 )
vpl 100%
再発症例
A群 細小肝癌 (最大腫蕩径 ≦2cm)
,8例)
非再発症例 く
vpc 61% l vp1 30%
2)fc,folnf,vpと
予後 との関係
1 2 3 4 5 6 7 8
●再 発 。 非 再 発
ネ生 存 中
9年
図 2 AFP
再発群
非
再発群
。 非再 発 渡 例
。 再 発症例
本 Hrl切 除 症 例
硬変併存肝細胞癌切除後再発例 からみた切除範囲の検討
24(1074)
日
消外会誌 22巻
5号
4 ) 臨 床 病 理 学 的検 討
べ てむ しろ拡大 手術 の傾 向 に あ るが, 9例 中 7例 と高
1 . 被 膜形成, 被 膜 浸潤, 血 管侵襲
率 に再 発 を きた した。再発 な く 5年 生 存 中 の 1例 は
5 c m 以 下 の肝細胞癌切除症p l l す
なわ ち A 群 , B ′
群の
Hrl(A)を
i nf,vpと の 関係
2.腫 瘍径 と fc‐
n f ) , 血管侵襲 ( v p ) を,
被膜形成 ( f c ) , 被膜浸潤 ( f ci‐
i n f ( 十) か
再発, 非 再発両群 でみ る と, 再 発群 で は f c ‐
f c ( ―) で , f c , i n f ( 一) は 1 2 1 1 も
な く, また v p に 関 し
べ
て は す て v p l で, v p 。は 1 4 7 1 も認 め な か った ( 図
施行 した (図 4-2).
i nf,お
5cm以 下 の肝細胞癌 においては,腫瘍径 と fc‐
よび vpと の 間 には相関 は認 め られ なか った。特 に 再
i n f ( 十) の 1 2 例中 1 0 例に被膜外浸潤 を認
4 - 1 ) 。なお f c ‐
inf(十),
発 との関連 において,fc‐inf(一),vp。と fc‐
vplとの間 には顕 著 な差 がみ られ たが,腫 瘍 径 に 関 し
めてい る.
ては両 者間 に有意差 を認 めなか った (統計学的検 討 は
t検 定 を用 いて行 った)(図 5).
fc‐
inf(一
) , v p O 症 例 の切除範 囲 は, H r 0 1 例 , H r S
3,肝 切離面 におけ る癌 浸潤 の有無
5 例 , H r 2 1 例 で, この H r 2 も H r 2 ( L , M ) で
あ る。
は
fc‐
inf(一
) , v p 。であれ ば, 再 発 な く予後 も良好 で あ
肝断端浸潤陽性 TW(十
)は ,27例 中 6例 に認 め ら
v p l 症例 の切除範 囲 は, H r 0 2 例 , H r S 2 例 , H r 1 4
れ,再 発群 4例 ,非 再発群 2例 で あ った。 TW(十 )再
発症例 4例 中,断 端再発 は 1例 のみで,他 の 3例 は vpl
inf(一
例, H r 2 1 4 2 1 で
) , v p 。症例 の切除範 囲に比
,fc‐
で あ り再発の原 因 は血 管侵襲 と考 え られた (表 2)。 ま
inf(十
り, 切 除範 囲 は H r S で 十分 と考 え られた。f c ‐
),
)非 再発症例 2例 中 1例 は, 5年 生存 中 で
た TW(十
inf,vp
図 5 腫 瘍径 と fc‐
再発 の背景 因子 とな る場合 は それ ほ
あ り,TW(+)が
ど多 くな い と考 え られた。 また著者 らは TW(―
)に
す るため,主 要肝静脈 を儀性 にす る肝切 除術 を本検討
症例 中 6例 に施 行 した31そ の結果,主 要肝 静脈 を温存
・
O批
い性確
腫 域 最 大 径
すれ ば TW(十
)と な った症例 がす べ て TW(一
)と
な ったが, 6例 中 2711に再発 を認めた。再発 を認 めて
い な い 4例 中 1例 は,fc‐inf(十),vpOで 被膜外 浸潤 を
著 明 に認めた ので,肝 静脈切 除 の恩恵 を こ うむ ってい
る と考 えられた。
4.組 織分類 お よび細 胞果型度
TAEに
よる壊 死 のため 組織診 断 の 困難 で あ った 5
例 を除 いた非再発群 14例,再 発群 8例 を対象 に,原 発
fc‐
inf(十 )
性肝癌取扱 い規約 に よ り組織学的 に,索 状型,偽 腺管
O 非 再 発 症例
型,充 実型,硬 化型 に分類 した 。非再発群 は,索 状型
● 再 発症 例
表 2 再 発症例
性
年罰
腫瘍径
1
6
57
1 8 ×1 5
HrO (A)S8
TW
2
9
57
2 5 ×2 5
HrS(A),S8
TVV
3
6
43
2 ×1 5
Hrl(P)
TW
TW
TW
切除範 囲
48
35X3
Hrl(C)
6
9
3 ×3
HrO(M)
7
9
3X2
HrS(L).S3
8
6
24X2
HrS(A),S5
TW
9
6
25×21
HrS(P), S7
TW
+ 一
6
+ +
5
一
十 一
5X5
一
一
58
T T
6
H 「1 ( A )
W W
4
予後
再 発部 位
被膜浸潤,血管侵襲
1 年
2 年 1 か 月死
P(S6)A(S3)
fcinf(+)t vpi
9か 月
1 年 1 0 か月全 P ( S 7 ) A ( S 5 )
4年
5 年 8 か 月生
A
fcヽ
nf(+),vp
1 年 9 か月
2 年 6 か 月死
P
fcinf(+)l vp
1 年 1 0 か月
1 年 1 1 か 月 全 P (S6)
foイ
nf(+),vp
1 年 5 か月
4 年 1 か 月死
L(S3)
fcttnf(+),vpⅢ
1 年 1 か月
1 年 8 か 月死
断靖再 発
fc可
nf(十 ),vp,
2年
3 年 8 か 月死
A(S3)
fc (-), vpr
1 年 3 か月
3 年 4 か 月生
P(S6)
fc (-), vpr
再発時期
断端
fcinf(+),vpl
1989年5月
25(1075)
6 1al,偽腺管型 64/1,充 実型 21/1であ り,再 発群 は,
1 , 2 は それぞれ H r O , H r S を
索状型 2例 ,偽 腺管型 44/1,充 実型 24//1で
あ り,顕 著
な差 はない もの と考 え られた。
め られた区域 は原発巣 占居 区域 とは異 ってお り, た と
Edmondson分
類 に よる細胞 異型 度 は,非 再 発 群 は
I∼ II型お よびII型に属す るものが 4例 ,II∼ III型に
属 す る ものが10011であ り,再 発 群 は 84/1すべ て が H
∼III型に属 した。
5.腫 瘍組織 の内部構造
腫瘍 内部 に含 まれ る異 な る組 織型 の混在す る程 度す
施行 したが, 再 発 が認
え H r l を 行 って い て も再 発 を防 ぎ え な か った と考 え
られ る。
症例 3 , 4 は
H r l ( それぞれ P , A ) を 施行 してお り,
肝 予備 能 か らみ て H r 2 す なわ ち右 二 区域 切 除 は 不 可
能 で あ り, 再 発 もやむを えなか った と思われ る。症例
5 は H r l ( C ) で あ り, 門 脈 尾状葉枝 は 門脈 一 次分枝 よ
りでてお り, 再 発防 止 のための切除範 囲 の拡大 は不 可
なわ ち組 織学的多彩性 の程度 に よ り広 岡 の規準 に従 い
(一),(十 ),(十 )の 3段 階 に分類 したり.(一 )と は腫
能 で あ る。
瘍結節 がほぼ均質 な組織型 で構成 され る例 ,(十 )は結
症4 / 1 7 もH r s ( L ) , S 3 切 除 で 断端再発 を きた してお り,
節内 に組織型 あ るいは分化度異型度 の異 な る腫瘍 組織
この 2 症 例 は H r 2 ( L , M ) を
が 2成 分認 め られ る例 ,(+)は
3成 分以上混在す る4/1
避 しえた か も しれ ないが, 肝 予備能 ぎ りぎ りの切除範
に用 いた 。再発群 は (一)3例
,(十 )2例
囲 で あ ったためやむを えなか った と思われ る。
例,非 再発群 は (一)5例
,(十 )7例
,(十 )3
,(+)2例
で
両者 に差 を認 めなか った 。
症例 6 は H r O ( M ) で
再発部位 は L ( S 3 ) で あ り,
施行 しておれ ば再発 を回
症例 8 は H r S ( A ) , S 5 切 除を行 い A ( S 8 ) に 再発 を
5)再 発症例
きた し, 症 例 9 は H r S ( P ) , S 7 切 除 を行 い P ( S 6 ) に
再発 を きた した ( 図 6 , 7 ) 。 この 2 症 例 は 同一 区域 内
再発症例 9例 の詳細 は,表 2の ご とくであ る。症711
に再 発 を きた してお り, H r l を 行 っておれば再 発 を防
図 6 再 発症例 8の 肝動脈造影。原発巣 は Ssにあ り
(上図矢印),再 発巣 は S3に認める (下図矢印).
図 7 再 発症例 9 の 肝動脈造影. 原 発巣 は S 7 にあ り
( 上図矢印) , 再 発巣は S 6 に認める ( 下図矢印) .
硬変併存肝細胞痛切除後再発例 からみた切除範囲の検討
26(1076)
日
消外会誌 22巻
5号
inf,
被膜形成,被 膜 浸潤,血 管侵襲す なわ ち fc,fc‐
ぎえた可能性 が示唆 された。
察
vp因 子 は,再 発群 と非再 発群 で 明 らかな相異 がみ られ
肝硬 変併存肝細胞癌 の切除療法 の 問題点 は, 肝 予備
能 を考慮 して切 除範 囲を決定 しなければな らず, 根 治
inf(十)か fc(一)で ,fc‐inf
た。す なわ ち再 発群 は fc‐
(一)は 1例 もな く,ま た す べ て vplで vpOは 1711も認
性 に制 限 が伴 うこ とであ る. 肝 硬 変併存肝細胞癌 の二
め られ なか った。現在 の画像診断 お よび血管造影 な ど
区域 以上 の広範 囲切除 の予後 は非常 に悪 く, 再 発死 よ
∼
りも肝不 全死 が 多 い といわ れ て い る。 6 ) . その 事実 を
判断す る ことは不 可能 で あ る。 もし これが可能 であれ
考
の手段 を もって して も,術 前 に被膜浸潤,血 管侵襲 を
ば,fc‐inf(―),vp。症4/1は
縮小手術,fc‐inf(十),vpl
ふ まえて l i m i t e d o p e r a t i o n意義
の が報告 され てい る
ロ
カ , 再 発率 が 高 くもち ろん満 足す べ き外 科治療 法 と
症例 は拡大手術 とい う方針が成 り立 つ と考 え られ る.
は言 いがた い, 岡 本 は, 5 c m 以 下 の小型肝癌 の切除範
しか しなが ら術前 に両 者 を鑑別 しえず,ま た腫 瘍径 か
囲別 の予後 をみ る と, 広範 囲切除 の予後 は 良好 であ り,
inf
ら も推 定 す る こ とは 可 能 で な い と思 わ れ る。fc―
機能的 に可 能 なか ぎ り広範 囲切除 を行 うべ き ことを主
張 してい る。. し か るに再 発 と腫 瘍 の病理学 的特 徴 と
(一),vp。症例 は縮小手術 (Hrs以 下)で も十 分治癒 し
の関係 が把握 され, 縮 小手術 と拡大手術が適切 に選択
拡大手術 を施行す る ことは問題 が あ る。 また反面 ,fc‐
され なければな らな い と考 え られ る.
inf(十),vpl症 例 で も Hrlを 行 い治癒 した症例 がみ ら
組織型, 細 胞異型度 が, 腫 瘍 の進展度, 再 発 に関係
える と考 え られ,全 症例 に対 して肝不全 の危険 を伴 う
れた ことや,再発症例 9例 中 2例 において HrSで はな
す るか検 討 したが, 自験例 で は再発群 と非再 発群 で差
く Hrlの 拡 大 手 術 を行 って い れ ば 再 発 を防 ぎ えた可
を認 め なか った。 また広 岡 は, 小 肝癌 には組織構造的
に異型度や分化度 の均 一 な細胞群 か らな る均質増殖型
縮小手術 を行 うことも
能性 を考慮す る とき,全 症4/1に
問題 が あ る と考 え られ る。
とい くつかの異 な る分化度や異型度 を示す癌組織 の混
しか る に 腫 瘍 径5cm以 下 の 肝 硬 変 併 存 肝 細 胞 癌
在す るモザ イク増殖型 の 2 つ の タイプが あ り, 前 者 は
後者 に比 べ血 管侵襲傾 向が 少 な く, 両 者 の癌進展度 に
有意 の差 が あ る と述 べ てい るがり, 自験例 で は顕著 な
(IM。)の 切除範 囲 は,右 葉 の場合 は Hrl,左 葉 の場合
差 を認 め なか った 。現時点 で は, 術 前生検 は肝細胞癌
いては Hrlの 縮 小手術 で も可 とされ る と考 え られ る。
の確定診 断以上 の意義 を見 い 出せ な いが, 将 来悪性度
inf(十),vpl
そ して切 除標本 の組織学的検索 に よ り,fc‐
を中心 とした細胞生 物学的 な特性 の検索 に よ り手術方
針 の決定 が な され る 日が くる ことが期待 され るの.
で あ る こ とが判 明す れば,術 後厳重 な経過観察 が必要
タ ノール腫 瘍 内注
で ,再 発 を早期 に発見 し TAE,エ
1'な
どを施行 し延命効果 をはか るよ う努 め なけれ ば
入
再発 を きたす腫 瘍 背景因子 は, T W 因 子, 肝 内転移,
∼1 2 ) . T w 因
被膜 浸潤, 血 管侵襲 と考 え られて い る1 の
子
は, f c ‐
i n f ( 一) で あれ ば再発 に関与 しない と考 え られ
1
1つ
てい る 効
i n f ( ―) を 判 断す
。し か しなが ら術前 に f c ‐
る ことはで きず, T W ( 一
) にす るよ う努 め なけれ ばな
らない。 自験例 で は再発症例 9 例 中 T W ( 十
)は 4例
で, そ の うち 1 例 のみが 断端再発 で あ った. 著 者 らは
T W ( 一 ) にす るため主要肝 静脈 を犠性 に した肝切 除術
は Hr2の 拡大手術 が望 ま しいが,予 備能 か らみて十分
な余裕 がない ときは,右 葉 においては HrS,左 葉 にお
な らな い。
ま と め
1.腫 瘍 径5cm以 下 の IM。の硬 変併存 肝 細胞 癌 27例
の うち,再 発 は 9例 で, これ らを非再発例 と腫 瘍 の臨
床病理学的特徴 につ いて比較検討 し,ま たそ の再発部
位 よ り切除範 囲 の妥 当性 につ いて考察 した。
2.腫 瘍 径 5cm以 下 の IMOの 硬 変併存肝細 胞癌 の切
を行 ってい るが, そ の結果 6 例 が T W ( 一 ) と な った。
除範 囲 は,右 葉 の場 合 は Hrl,左 葉 の場合 は Hr2の 拡
2 例 に再発 が認 め られた が, v p 因 子陽性 で あ り再発 は
大手術 が望 ま しいが,肝 予備能 か らみて余裕 が な い場
血 管侵襲 に よる と考 え られた。し か し非再 発 4 例 中 1
合 は,右 葉 においては HrS,左 葉 においては Hrlの 縮
小手術 が選択 され て しか るべ きと考 え られた。
例 は, f c , i n f ( 十
) , v p O で あ り被膜外浸潤 が著 明 にみ ら
れ, 肝 静脈切除 が断端再発 の防 止 につ なが った と考 え
てい る。
肝 内転移 I M 因 子 は, 本 検討 か ら除外 したが, I M l は
右葉 においては H r l 以 上, 左 葉 においては H r 2 の 切除
が必須 と考 え られ る.
文 献
1)日 本肝癌研究会編 i原発性肝癌取扱い規約.東京,
金原出版,1987
2)広 岡 昇 ,岩崎 勇 i小肝癌 の腫瘍構造 と,その進
展様式 に関する病理組織学的検討.肝臓 251384
1989年5月
―-392, 1984
3)別 府真琴,土居貞幸,呉 教 東 ほか :右 肝静脈切除
を伴 うS7,S8切 除 につ いて.外 科 治療 58:258
--263, 1988
4)高 崎 健 ,武藤晴臣,原 田瑞也 :切 除 し得 た原発性
肝癌60例の予後 の検討.肝臓 23:159-164,1982
5)下 山孝俊,福 田 豊 ,原 田違郎 ほか :肝 硬変併存肝
癌 に 対 す る外 科 的 治 療 の 問 題 点.日 消 外 会 誌
19 i 1942--1951, 1986
6 ) 泉 良 平, 渡辺俊雄, 藪下和久 ほか : 肝 硬変合併肝
癌 の治療成績 一肝予備能 か らみた肝切除例 の予後
―。 日臨外医会誌 4 9 1 6 1 2 - 6 1 8 , 1 9 8 8
7)Kanematsu T,Takenaka K,WIatsumata T et
al:
Linlited hepatic resection erective for
selected cirrhotic patientsvith
、 prilnary liver
cancer.An■ Surg 199:51-56, 1984
8 ) 岡 本英 三, 山 中若樹 t 肝 癌外科治療 の現況 と展望.
臨消内科 2 : 1 8 8 3 - 1 8 9 0 , 1 9 8 7
27(1077)
9)水 戸迪郎,草野満夫 :肝 細胞癌 の治療方針,生物学
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--571, 1988
10)佐 野秀 一,中 西昌美,渡 辺修 一 ほか i原 発性肝癌
(腫瘍径5cm以 下)の診断お よび治療上 の問題点.
日消外会誌 18:773-778,1985
11)泉 良 平,小林弘信,谷屋隆雄 :肝 細胞癌再発例 の
検討.日 消外会誌 21:831-835,1988
12)山 本雅一 ,高崎 健 :肝 細胞癌再発例 の治療.消外
11 : 613--618, 1988
13)岡 本英三 ,山 中若樹 :肝 細胞癌 の手術適応 と術式 ,
消外 11:573-581,1988
14)三 村 久 ,高倉範 尚,浜崎啓介 ほか :臨 床病理学的
検討 か らみた早期原発性肝細胞癌 の考 え方 と切 除
上 の問題点.日 消外会誌 18!2453-2458,1985
15)杉 浦信之,高良健 司,大藤正雄 ほか t超 音波映像下
経皮的腫瘍 内 エ タノール注入 に よる小肝細胞癌 の
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