電力システムにおけるエージェントベース電圧制御方式

広島工業大学紀要研究編
第4
0巻 (
2
0
0
6
) pp.215-220
論
文
電力システムにおけるエージェントベース電圧制御方式
武村
甲斐稔久*・定丸英治日・永田
(平成 17年 8月26日受理)
V
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Abstract
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KeyWords:Voltagec
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l,Voltage-Reactivepowerc
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r
o
l,Multi-agent, Distributed
autonomoussystem
ム (
VQC) などが用いられている。しかしながら,従来
1.はじめに
の電圧・無効電力制御は,予め決められたスケジュールに
電力システムの電圧は,需要と供給力の変化により,時々
刻々変化する。この電圧が適切に制御されない場合には,
従って制御機器を運転しており,個別機器がローカル情報
のみにより制御されるものが主体になっている。
様々な悪影響が発生する。例えば,昼間の重負荷の時間帯
しかし,急峻な負荷の立ち上りや落ち込みなど厳しい条
では,工場などで遅れ力率の無効電力が大量に消費される
件のもとでは,上手く電圧を健全電圧の範囲内に抑制する
ため,需要家までの輸送上の電圧降下が大きく需要家端電
ためには,近隣の電気所との連携を含む特別な配慮が必要
圧が大幅に低下する。逆に,深夜・休祭日の軽負荷の時間
であったり,近隣の制御機器問の相互作用のために無駄な
帯では,ケーブル系統の充電容量や,工場の力率改善用電
動作が発生したりする課題が残されている。
力コンデンサ未開放による進み力率の無効電力のために需
このような問題を解決するための一つのアプローチとし
て,自律的なローカル制御を主制御と考え,近隣の制御器
要家端電圧が大幅に上昇する。
このために,電力システム側では電圧・無効電力制御
との協調をとるグローパル制御を補助制御とする方法が考
このような,自律分散的な動作をさせるシステ
が実施されている。電圧・無効電力制御には,発電機の
えられる
AVRや自動力率調整器 (
A
P
F
R
),調相設備や SVC,負荷
ムを比較的柔軟に構築する方法として,マルチエージェン
時タップ切替変圧器 (LRT),電圧・無効電力制御システ
ト技術がある
キ広島工業大学大学大学院工学研究科情報システム工学専攻
日広島工業大学大学知的情報システム工学科
十
215-
O
。
1)
甲斐稔久・定丸英治・永田
投入される。
本論文の目的は,マルチエージェントを用いた自律協調
型電圧制御方式を提案することである。
武
(
4
) 静止型無効電力補償装置 (SVC) SVCは,サイリス
タ制御により無効電力を高速に変化させ,連続的に系
本システムでは,エージェントを発変電所毎に配置い
統に供給できる装置である
それらのエージェントの自律的動作と,必要に応じて他の
O
発変電所聞の協調動作により,電圧制御を実現させている。
(2・2) 電圧調整機器
本提案方式の特徴を以下に示す。
(1)本システムは,地域的に分散したコンビュータ内に実
(
L
R
T
)
(1)負荷時タップ切替変圧器
LRTは,ある系
装されたエージェント同士が,ネットワークを介して
統から電圧階級の異なる他系統に対する変圧比を,負
情報交換を行いながら,自律的協調的に電力システム
荷に送電しながら段階的に変化させて電圧を調整する
の電圧制御を行うものである。
.
7
5"
'2
.
0%きざみの切
変圧器である O 実際には, 0
(
2
) 効率的な処理を実現するために,低電圧階級の系統内
'23個設けられている。超高圧変圧
替用タップが 9"
器から配電用変圧器まで広く採用されている。
の発変電所に配置された「ローカルエリアエージェン
ト」群と,高電圧階級の変電所に配置された「グロー
以上のように電力システムの電圧制御の方法には様々な
パルエリアエージェント」群との 2階層マルチエー
方法が採用されているが,本研究では図 lに示すように,
ジェントシステムとして実現している。
(
3
) 各エージェントは,複数の内部状態を持ち,外界から
の刺激に対して,その内部状態を適切に変化させなが
心
ら外界に対してアクション(負荷時タップ切替変圧器
のタップ切替,および電力用コンデンサと分路リアク
L亡 I~ Fscl
Z
トルを投入・解列)をとるように設計されている。
二
(
4
)エージェントが自律的に動作するので,人間の操作を
必要としない,自動的な復旧を行うことができる。
J J J
本提案システムを, Java言語を用いて構築し,モデル
系統に適用した結果,エージェント聞の自律的動作により
効率的に電圧制御を実施させることができた。
2
. 電力システムの電圧制御の方法
通常,電力システムの電圧制御は,無効電力調整機器と
図 1 電力システムの電圧制御機器の例
F
i
g
.1 Exampleo
fV
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r
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lEquipmentsi
na
PowerS
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s
t
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.
電圧調整機器とに大別される。以下,簡単に無効電力調整
機器と電圧調整機器の概要を説明する。
-S
一a
u
w
-M
一問
一
勾
ι
一町
一白
(1)発電機
-a
-問
一
A
一
副
一AU
一口
一
G
(2・1)無効電力調整機器
発電機は,励磁電流を制御することにより
無効電力を調整することいができる。ほとんどの発電
機は自動電圧調整器 (AVR)や自動力率調整器 (APFR)
を備えており,自動的に励磁電流を制御して発電機の
端子電圧や力率を一定に保っている。
(
2
) 同期調相機
同期調栢機は,同期電動機を無負荷運
転させるもので,発電機と同様に励磁電流を制御する
ことにより連続的に遅れから進みまでの無効電力を調
整できる O
(
3
) 電力用コンデンサ (SC) と分路リアクトル (SHR)
これらの機器は,無効電力調整源として広く用いられ
ている。 SCは,進相の無効電力を吸収するもので,
昼間の重負荷時に投入され
図 2 電圧制御マルチエージェントシステムの基本構成
F
i
g
.
2 B
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.
SHRは,遅相の無効電
力を吸収するもので,深夜などの電圧が高くなる時に
216-
電力システムにおけるエージェントベース電圧制御方式
S
C
)J と「分
無効電力調整機器として「電力用コンデンサ (
規定範囲内に収めるように行動するエージェントであ
路リアクトル (SHR)Jを,電圧調整機器として「負荷時タッ
るo LAGは独力でその目的を達成できない場合には,
プ切替変圧器 (LRT)J を採用している C これらの機器を
GAGに対して協調作業を申し入れ,自己の電圧を規
採用した理由は,これらの機器が国内の系統に広く採用さ
定値内に保とうとする。
れていることと,複数のタイプの機器を対象とした自律協
(
2
) グローバルエリアエージェント (GAG)
上位電圧
調型電圧制御方式を検討するために十分であると考えられ
階級の変電所に配置される GAGは,変動する電力シ
るからである。
ステムの環境変化に対して,電圧監視地点の電圧を規
図 Iにおいて, LRTは負荷時タップ切替変圧器, SCは
定範囲内に納めるように行動するとともに, LAGか
電力用コンデンサ, SHRは分路リアクトル, M の記号は
らの協調要請に対応した制御動作が可能か否かを判定
同図に示すように,上
し,制御動作を LAGとメッセージ交換しながら決定
電圧測定用のメータを表している
O
位電圧階級と下位電圧階級の 2レベルの電圧階級から構
し,実際の制御動作を実施する。
図 3にエージェントの処理フローを示す。
成される系統モデルを検討の対象とする。
3, 電 圧 制 御 マ ル チ エ ー ジ ェ ン ト シ ス テ ム の 概 要
(3・1)マルチエージ、工ントシステムの構成
ここでは,前章で述べた電力システムの電圧制御をマ
ルチエージェントシステムを用いて実現する方法について
説明する。図 2に提案する電圧制御マルチエージェントシ
ステムを示す。同図に示すように, 2階層のエージェント
で構成し,上層には上位電圧階級エリアの制御を主として
G
l
o
b
a
lArea
担当する「グローパルエリアエージェント (
C
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r
o
lAgent:GAG)J 群を,下層には下位電圧階級エ
リアの制御を主として担当する「ローカルエリアエージェ
L
o
c
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lAreaC
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r
o
lAgent:LAG)J 群を配置する。
ント (
各エージェントの構成は,同図に示すように電圧監視
(
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)J 機 能 知 的 意 思 決 定 ( in
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)J機能から構成される。ここで取り扱う制御変数は,
(
1
)P
r
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s
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gFlowofLoιalAr
eaAgent
LRTのタップ値(離散量)と SCまたは SHRの投入量(離
散値)である。一般的に,電圧制御は周波数制御と異なり
ローカルな制御が実施されるので
r
電圧監視」機能で電
圧異常を検出したエージェントは自律的にローカルな制御
を実施する。この際,エージェントは「知的意思決定」機
能により自らの制御方針を決定するが,下層のエージェン
トの場合においては,自分の制御変数の上下限等を考慮し,
上層のグローパルエリアエージェントに制御を依頼するこ
①
.
.
.
1
とを決定する場合もある。そして,最後に各エージェント
は「制御動作」機能により実際に制御を実施し,ひとつの
動作サイクルが完了する。本システムは,このような動作
の繰り返しにより,リアルタイムでの電圧制御を実現する。
(3・2) 各エージェントの役劃
ここでは,各エージェントについてその概要を説明する。
(l)ローカルエリアエージェント(し生 G)
級の発変電所に配置される LAGは,変動する電力シ
ステムの環境変化に対して
(
2
)P
r
o
c
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s
s
i
n
gFlowofG
lobalAreaAgent
下位電圧階
電圧監視地点の電圧を
-217-
図 3 エージェントの処理フロー
F
i
g
.
3P
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gf
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wc
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.
甲斐稔久・定丸英治・永田 武
この式を利用することにより, t=[
0,200J に対して,
各ノードの負荷を零付近から 1
,
000 [MWJ まで変動させ
ることができる。
各監視対象ノードの電圧の許容範囲を表 Iに示す。
表 1 変圧器データ
T
a
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e1 T
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.
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fTaps
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477""527
Cs
/
s,D s
/
s
19
244""300
Es
/
s
1
9
244""300
Bp
/
s
1
3
140""168
L
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n
図 4 モデ、ル系統
F
i
g
.4 M
o
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ln
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w
o
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k
.
13
,
[
)
)
)
12
D3
QB
07
国
図 5 負街の変化曲線
1
0
0
2
0
0
,5)
(
1
) GAG
F
i
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.5 L
o
a
dc
u
r
v
e
.
1
は.
13
4
. シミュレーション実験
(4・1)シミュレーション系統
本システムの動作を確認するために,図 4に示すモデ
09
ル系統を使用してシミュレーシヨン実験を行った。シミュ
日8
LA別(P~
レーションシステムは J
ava言語で記述した。このモデル
-一一一
l
l
O
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>
D
阿Wう
四日剛一-
U
仰 e
r
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r
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l
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07
系統は,ローカルエリア内の 4つの発変電所,グローパル
0
エリア内の lつの変電所から構成されている。この系統に
自
一
一
:
m
'
0
0
(
1
) LAG1
対して,ローカルエリアの発変電所に LAG,グローパル
13
エリアの変電所に GAGをそれぞれ配置した。同図におい
2, 16,が電圧監視地点であり,
てノード番号 4,5,8, 1
この電圧を常時監視しており,電圧異常が検出されると当
該エージェントが制御動作を実施する。
図 5に各負荷ノードヘ与えた負荷曲線を構築する際に利
i
n(
x2)) を示す。同図において横軸の
用した関数 (y s
二
レ
剣G2
(
pL
乃ーー一一
J
凶A
DO
酬明
2
.
0,2
.
0
J に対応した値を負荷変化に用いた(図中
領域 [
川一一
ト隅r
h
1
しp
p
a
rli .,,~ー〕
の破線で囲んだ部分)。実際に利用した負荷変動の式を次
式に示す。
(
2
) LAG2
図 6 制御結果 (GAG
,L
AG)
A
G
)
.
F
i
g
.
6 R
e
s
u
l
t
so
fc
o
n
t
r
o
l(GAG,L
P 500xs
i
n
(
(
0
.
0
2X t-2.0)2)+500 [MWJ…・・ (
1
)
三
218-
電力システムにおけるエージェントベース電圧制御方式
世:0
13
この
SCの操作の影響は全系統に亘り,各電圧監視点の出
力に影響を与えていることがわかる。
2
(
4
'3
) リアルデータを基にしたシミュレーション
上述のシミュレーションは負荷に対する二次電圧の動き
などを見るために現実と違い,負荷の立ち上がりを急にし
てシミュレーションを行い,電圧調整範囲にて機器の制御
1
0
0
0
0
0
e
rI
m
a
o
p
p
ト
e
r,
l
m
i
t
07
G
を働かせた。
次に,変電所の動作を現実に則したものに近づけたシ
(
3
) LA
G3
ミュレーションを行った。使用するモデル系統やインピー
ダンスは同様,各エージェントは二次電圧の不感帯を土
1%
, として,変圧器無効電力の不感帯を調相設備の単機
容量の 75%とした。エージェントは二次電圧・変圧器無
J
1
J
¥
J
J
J
J
J
J
J
J
1
1
i
J
Jl
効電力が不感帯を逸脱した場合に,その逸脱面積が一定値
を超えた時点の二次電圧と変圧器無効電力によって制御行
動を図 8のように決定する
し唱4(PL
乃
O
また,負荷は正規分布を採用
した。以下に,その結果を示す。
岨
"
'
"
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M一 一
"
0
(
2
)LAG4
s
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切]
図 7 制御結果 (
L
A
G
)
F
i
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7 R
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r
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l(
L
A
G
)
.
¥
'
2
tap下 げ
不感得
Q
s
c入
(4・2) シミュレーション結果
上 述 の 負 荷 変 化 に 対 し て 200ス テ ッ プ の シ ミ ュ レ ー
ションを行った。図 6は上位電圧階級エリア,図 7は下位
図 8 V-Q制御の概要
F
i
g
.
8 V-QC
o
n
t
r
o
lo
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r
v
i
e
w
電圧階級エリアの制御結果を示す。また,同図において,
実線は各エージェントの電圧監視点における電圧の変動
シミュレーションの結果,電圧の調整幅を狭めたことに
を,破線は負荷と電圧の許容範囲の上下限を示す。横軸が
シミュレーションのステップ数,左の縦軸が電圧
[
P
.
U
,
J
右の縦軸が負荷量 [MW] である。
より,エージェント同士の相互作用が良くわかる。周辺の
機器に対する影響の大きいエージェントは GAGと LAGl
図 6に示すように上位系統である GAG (As
/
s
) は負荷
である o LAGlはシミュレーション初期に不感帯から大き
の増大に対して電圧の減少が見られたが,シミュレーショ
く上方に逸脱しているため
ン中に電圧許容範囲を逸脱することなく終了した。シミュ
作の影響が他のエージェントに影響を与えている o GAG
レーションの序盤(19ステップ日)に見られる電圧のわ
の作用もタップ操作時に他のエージェントに影響を与えて
Es
/
s
) において
ずかな上昇は LAG4 (
s
cが投入されたた
めである。
機器が動作している
O
その動
いることカまわ均三る c
5
.あとがき
一方,下位電圧階級エリアの結果を示す図 7において,
8p
/
s
) は下位系統の中で最も負
発電機を有する LAG1 (
本論文では,電力システムの電圧制御にマルチエージェ
荷に対する電圧の変動が少なく電圧許容範囲を逸脱しな
ントを用いた自律分散協調型電圧制御方式を提案した。本
かった。 LAG2 (Cs
/
s
) と LAG3 (D s
/
s
) は,ほぽ同様
システムは,地域的に分散したコンビュータ内に実装され
の電圧変化となっている。共に 26ステッブ目から LTR
たエージェント同士が,インターネット等を介しで情報交
SCを投入す
換を行しミながら, 自律分散協調的に電圧制御を行うむので
るほどの変化ではなかった。電圧変動の最も大きかった
ある。簡単なモデ、ル系統で、のシミュレーション実験ではあ
LAG4 (Es
/
s
)は
, 14ステップ目に LTRの操作が行われ
るが,負荷の変動に対して,エージェントが LRTのタッ
ているが,この操作だけでは負荷の増大に対応できなかっ
プ値と
の操作で自動的に電圧の修正が行われたが,
たため,
1
9ステッブ目に SCが投入されている。そして,
SCの投入量を決定し 監視対象の電圧を規定値以
内に収めることが可能であることがわかった。
-219-
甲斐稔久・定丸英治・永田
武
1ι=二二二二;長三三~~
…-
'
"
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"
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'
^
'
同 一
申,.,.一一ー
"
'
1
印
(
1
) LAG4
(
1
) GAG
図 1
0 御結果 (
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文
献
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)
255-258 (
2
0
0
5
)(
'^創刊一一
山由悌崎
U
W
'
,
一
永田武マルチエージェント技術の電力システムへ
n
lー
23,3p
p
.
の適用研究事例 j,電気設備学会論文誌, 1
(
2
) LAGl
255-258(
2
0
0
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. 124-B,No. 12,p
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. 1417-1424
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山本顕正・直井健二・青木秀憲・水谷芳史制御手
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. 1417-1424
御 j,電気学会論文誌 B, 124, 1
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.IEEJapan,Vol
. 122-B,No. 10 (2002) (
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図 9 制御結果 (
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ント技術の適用 j,電学論 B, 1
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