2014/6/16 改訂 物理化学演習Ⅲ解答集 第6章前半 6・1 トリクロロメタン(クロロホルム)CHCl 3 のモル分率 Xトリクロロメタン 0.4693 より、プロパノン(アセトン)CH 3C( O)CH 3 の モル分率は X プロパノン 1 0.4693 0.5307 となる。 ここで、混合溶液の体積 V は、プロパノンの物質量 nプロパノン と部分モル体積 Vプロパノン およびプロパノンの物質量 nトリクロロメタン と部分モル体積 Vトリクロロメタン から、 V nプロパノン Vプロパノン nトリクロロメタン Vトリクロロメタン で表される。ここで、 nプロパノン nトリクロロメタン 1 とすると、この時 の体積 V0 は、 V0 0.5307 74.166 0.4693 80.235 39.360 37.654 77.01 cm 3 となる。 また、この時の質量 W0 は、プロパノンおよびトリクロロメタンのモル質量をそれぞれ M プロパノン , Mトリクロロメタン とすると、 テキスト p.537 表 D1・1 より、 M プロパノン 58.08 g mol 。 -1 また Mトリクロロメタン 12.01 1 1.008 1 35.45 3 119.37 g mol であるから、 -1 W0 nプロパノン M プロパノン nトリクロロメタン Mトリクロロメタン 0 .5307 58.08 0.4693 119.37 30.82 56.01 86.83 g 溶液の全質量が 1.000 kg であるから、求める体積 V は、 V 1.000 103 1.000 103 77.01 V0 886.9 887 cm 3 W0 86.83 6・2 まず、混合物におけるエタノールと水のモル分率を求める。 3 エタノールおよび水の体積は、いずれも 50.0 cm であり、それぞれの密度 d エタノール , d 水 は、 d エタノール 0.789 g cm -3 , d 水 1.000 g cm -3 であるから、各々の質量 Wエタノール , W水 は、 Wエタノール 50.0 0.789 39.45 g, W水 50.0 1.000 50.0 g よってエタノールのモル分率 X エタノール は、 39.45 46.07 X エタノール 39.45 50.0 46.07 18.02 0.856 0.856 0.236 0.856 2.775 3.63 また、 X 水 1 0.236 0.764 。 エタノールのモル分率を図 6・1 に作図すると、 各々の部分モル体積は、 Vエタノール 55.8 cm 3 mol -1 , V水 17.6 cm 3 mol -1 となる。 よって全体積は、 V nエタノール Vエタノール n水 V水 39.45 55.8 50.0 17.6 46.07 18.02 47.8 48.8 96.6 97 cm 3 となる。 2014/6/16 改訂 6・3 0 2.0 bar における化学ポテンシャルを CO 2 、標準値( 1 bar における化学ポテンシャル)を CO と 2 すると、p.120, 式 6・4a より、 p CO 2 0 となる。ここで、 p CO 2 2.0 bar , p 1.0 bar , T 310 K より、 0 p pCO 2 RT ln 0 2 8.31 310 ln 8.31 310 0.693 1785 1.8 kJ mol 1 p 1 0 CO 2 CO RT ln 2 0 CO 2 CO 2 6・4 ある物質 J の 1 bar における化学ポテンシャルを J 、1 atm における化学ポテンシャルを J とする 0 pJ となる。 p0 0 ここで、 pJ 1 atm 1.0133 bar , p 1 bar , T 298.15 K であるから、 p 1.0133 J J0 RT ln J0 8.3145 298.15 ln 8.3145 298.15 0.013212 32.752 J mol 1 p 1 と、 J J RT ln 0 6・5 (a) 混合のモルギブスエネルギーは、以下の式で表される。 G nRT x A ln x A x B ln x B (1) ここで、 x A , x B は、窒素(A), 酸素(B)のモル分率を表し、窒素および酸素の物質量を n A , n B とした とき、 n nA nB である。 ここで、題意より、 x A 0.78, x B 0.22 であるから、(1)式より、 G nRT x A ln x A x B ln x B 1 8.31 298.15 0.78 ln 0.78 0.22 ln 0.22 2477.6 0.1938 0.3331 1305 1.31 kJ mol -1 (b) 混合のモルエントロピーは、以下の式で表される。 ギブスエネルギーの定義式 G H TS (2) と式(1)を比較すると、式(1)には温度を含まない 項は無いから、 H 0 となることが分かる。従って、 G nRT x A ln x A x B ln x B TS nR x A ln x A x B ln x B S S nR x A ln x A x B ln x B S m R x A ln x A x B ln x B 8.31 0.1938 0.3331 4.38 J K -1 mol -1 また、この過程は、 G 1.31 J mol 0 -1 であるから自発的な変化である。 6・6 二成分系からの類推で3成分系を混合した場合のモルギブスエネルギー変化は、 G 3 nRT x A ln x A x B ln x B x C ln x C と予想される。 ここで、窒素、酸素、アルゴンのモル分率は、各々 0.78, 0.21, 0.0096 であるから、 G 3 nRT x A ln x A x B ln x B x C ln x C 1 8.31 298.150.780 ln0.780 0.210 ln 0.210 0.0096 ln 0.0096 2478 0.1938 0.3277 0.0446 2478 0.5661 1.40 kJ mol -1 よって、この混合は自発的である。 また、二成分系から三成分系にすると、 G G 3 G 1.40 1.31 0.09 kJ mol だけ増加する。 続いてモルエントロピーも同様に、 -1 2014/6/16 改訂 G 3 nRT x A ln x A x B ln x B x C ln x C TS 3 nR x A ln x A x B ln x B x C ln x C S 3 S 3 nR x A ln x A x B ln x B x C ln x C S 3 1 8.31 0.1938 0.3277 0.0446 8.31 0.5661 4.70 J K -1 mol -1 よって、二成分系から三成分系にすると、 S S3成分 S2成分 4.70 4.38 0.32 J K mol -1 -1 となる。 6・7 * 30℃におけるトルエンの蒸気分圧およびモル分率を Ptol , x tol とし、純粋なトルエンの蒸気圧を Ptol と すれば、ラウールの法則より、 Ptol xtol Ptol となる。 * ここで問題文から、 Ptol 5.00 kPa 5 .00 10 Pa である。次にトルエンのモル分率を求める。 * 3 フラーレンおよびトルエンのモル質量は、 M フラーレン 12.01 60 720.6 g mol および、 -1 M tol 92.14 g mol -1 であるから、フラーレンおよびトルエンの物質量は、 2.33 100.0 3.23 10 3 mol, 1.062 mol となる。よってモル分率は、 720.6 94.14 1.062 1.062 x tol 0.997 1.062 0.00323 1.065 * 3 3 よって求める蒸気分圧は、 Ptol x tol Ptol 0.997 5.00 10 4.99 10 Pa 6・8 3 - まず、溶解した溶質の体積を無視できるとすれば、問題文より水 1.00 ( 1.0 dm )に、溶質( Na , Cl ) がイオンとして 1.00 mol 溶けていると見なせる( 1 dm 1 )。よって水のモル質量を 18.0 g mol と して、そのモル分率を求めると、 3 -1 1.00 103 55.6 18.0 0.982 1.00 10 1.00 55.6 1.00 18.0 * 3 3 よって求める分圧は、 P水 x 水 P水 0.982 2.338 10 2.30 10 Pa x水 3 6・9 揮発性溶質の蒸気圧を PB 、その溶液中のモル分率を 140 x B とすると、ヘンリーの法則は、 PB x B K B で表される。ここで、 K B はヘンリー定数 100 K B 6.4 10 kPa 3 となる。 HCl 蒸気圧 /kPa (溶質に固有の定数)である。 与えられた HCl のモル分率と蒸気圧のデータから図 を描くと、右図のような良好な直線関係が得られる。し たがって、ヘンリーの法則が成り立つことが分かった。 また、ヘンリー定数は右図の直線の傾きだから、 y = 6409.4x 2 R =1 120 80 60 40 20 0 0 0.005 0.01 HCl モル分率 0.015 0.02 2014/6/16 改訂 6・10 ヘンリーの法則より、 PB x B K B よって、 PB 55 kPa x B 8.6 104 Torr 101 kPa 760 Torr 760 4.8 10 3 単位無し(モル分率だから無次元数)。 4 101 8.6 10 ここで、 760 Torr 101 kPa の関係を使った。 よって、 x B 55 6・11 まず、テキスト p127 表 6・1 から、水素のヘンリーの法則の定数は、K H ( H 2 ) 121.2 kPa m mol 。 3 -1 求める水素分圧は、ヘンリーの法則より PH 2 K H ( H 2 ) [ H 2 ] である。 そこで、まず、水素のモル濃度 [H 2 ] の単位をヘンリー定数の単位と揃えると、 mmol dm -3 10 3 mol (10 -1 m) -3 10 3 mol 10 3 m -3 mol m -3 より、 [H 2 ] 1.00 mmol dm -3 1.00 mol m -3 となる。 よって、求める水素分圧は、 PH 2 1.00 121 121 kPa となる。 6・12 まず、テキスト p.127 表 6・1 より、二酸化炭素のヘンリー定数は、 K H (CO 2 ) 2.937 kPa m mol である。 (a) 二酸化炭素の分圧が PCO 2 3.8 kPa のとき、 3 1 PCO 2 K H (CO2 ) [CO 2 ] PCO 2 3.8 kPa 1.29 mol m 3 1.3 mmol dm 3 K H (CO 2 ) 2.937 kPa m 3 mol 1 (b) 二酸化炭素の分圧が PCO 2 50.0 kPa のとき、 [CO 2 ] PCO 2 K H (CO 2 ) [CO 2 ] [CO 2 ] PCO 2 K H (CO 2 ) 50.0 17.0 mol m 3 17.0 mmol dm 3 2.937 6・13 気体成分が2成分であっても各々の溶解度が低い(即ち理想希薄溶液)の場合には各々にヘンリーの 法則が成り立つ。また、テキスト p.127 表 6・1 より、窒素および酸素のヘンリー定数は、各々、 K H ( N 2 ) 155 kPa m 3 mol 1 , K H (O 2 ) 74.68 kPa m 3 mol 1 であるから、 PN 2 K H ( N 2 ) [N 2 ] PO 2 PN 2 101 0.78 78.78 0.508 mol m - 3 0.51 mmol kg-1 K H (N2 ) 155 155 K H (O 2 ) [O 2 ] [N 2 ] [O 2 ] PO 2 K H (O 2 ) 101 0.21 21.21 0.284 mol m - 3 0.28 mmol kg-1 74.68 74.68 2014/6/16 改訂 6・14 二酸化炭素の蒸気圧は 1.0 atm 1.0 101 kPa であり、 ヘンリー定数は、 K H (CO 2 ) 2.937 kPa m mol であるから、 3 -1 PCO 2 K H (CO2 ) [CO 2 ] [CO 2 ] PCO 2 K H (CO 2 ) 101 1.0 101 103 mol m - 3 103 mmol dm - 3 0.103 mol dm - 3 2.937 2.937 となる。 6・15 ラウールの法則より溶液中のある成分 J の蒸気分圧 PJ は、ある成分のモル分率を x J 、ある物質が純 物質で存在する場合の蒸気圧を PJ とすると、以下の式で表される。 PJ x J PJ ここで、トルエンの蒸気分圧、モル分率および純物質での蒸気圧を、 Ptol , x tol , Ptol 、o-キシレンの それらを Pxy , 1 x tol , Pxy とすれば、 Ptol x tol Ptol Pxy 1 x tol Pxy ここで全圧は、 Ptol Pxy 0.50 atm 0.50 101 kPa 50.5 kPa 、また、沸騰しているときは蒸気 圧は大気圧(ここでは全圧)に等しいから、 Ptol Pxy x tol Ptol 1 x tol Pxy 50.5 、となるはずである。 また、問題文より、 Ptol 53 kPa, Pxy 20 kPa であるから、 x tol Ptol 1 x tol Pxy 53 x tol 20 20 x tol 50.5 33 x tol 30.5, x tol 0.924 よって、 x xy 0.076 となり、これらの値から、各々の蒸気分圧は、 Ptol xtol Ptol* 0.924 53 49.0 kPa Pxy 1 x tol Pxy* 0.076 20 1.5 kPa よってトルエンおよび o-キシレンの蒸気組成を ytol , y xy とすれば、 49.0 1 .5 0.97, y xy 0.030 49.0 1.5 49.0 1.5 6・16 まず、数式で答えを出す前に図から考え てみる。与えられた数式を使って各々の分 圧 PA , PB を計算して作図すると右図のよ うになる。ここで、点線は純物質の蒸気圧 に組成をかけることで得られる混合溶液に おける各成分の蒸気圧(すなわちラウール の法則に従う場合、この線上にのる)を示 す。図から見ても明らかなように成分 A, B 共にモル分率が 1 に近い場合でも(○で囲 ったところ)、ラウールの法則には従わない ことが分かる。 次にこれを数式により説明する。 まず成分 A について考える。ラウールの となる。 800 Partial pressure /Torr ytol pA pB 600 400 200 0 0 0.2 0.4 0.6 xA 0.8 1 2014/6/16 改訂 法則に従う場合、混合液中の成分 A の分圧 PA は、純粋な成分 A の蒸気圧 PA を使って、PA x A PA と 表せるから、両辺を x A で微分すれば、 x A 0 PA 0, x A 1 PA PA 2 dPA PA の関係が得られる(ラウールの法則に従えば、 d xA だから、傾きが PA の直線になることは容易に分かる)。 3 ここで、 PA 68 x A 12 x A 643 x A 283 x A 4 (1) と表されるから、 PA は (1) に x A 1 を代 入することで得られ、 PA 68 12 643 283 416 Torr となる。 一方で、この曲線の x A 1 における傾きが PA に等しければ、ラウールの法則に従うと判断できる。 ここで、 dPA 2 3 68 24 x A 1929 x A 1132 x A であり、 x A 1 を代入すると、 d xA dPA 68 24 1929 1132 841 Torr PA d xA となり、成分 A はラウールの法則に従わないこと が分かる。 次に成分 B について考える。 2 ここで、 PB 780 440 x A 401 x A 92 x A 3 (2) であるから、 まず、 A の場合と同様に、 (2) から、 x A 0 (すなわち、 x B 1 )として、 PB 780 Torr となる。 dPB d x A d PB d (1 - xB ) d PB d PB と変形できるから、 d xB d xB d x A d x B d x A d xA d (1 - xB ) 1 である。) (ここで、 d xB また、 dPB dPB 2 440 802 x A 276 x A 440 Torr PB d xB d xA に、成分 B もラウールの法則に従わない。 となる。この結果から、 A の場合と同様 成 分 A の ヘ ン リ ー の 法 則 の 定 数 は 、 xA 0 に お け る 接 線 の 傾 き だ か ら 、 dPA 2 3 68 24 x A 1929 x A 1132 x A 68 Torr となる。 d xA また、成分 B のヘンリーの法則の定数は、 x A 1 における接線の傾きだから、 dPB dPB 440 802 276 966 Torr となる。 d xB d xA 6・17 省略 6・18 グルコースは溶質(少量成分)だから、p.129, 6・14b 式を使う。 B B0 RT ln[B] より、 B (0.10M ) B0 RT ln 0.10 B (1M ) B0 RT ln 1 B0 となる。よって、 B (1M ) B (0.10M ) B0 B0 RT ln 0.10 8.31 293 ( 2.30) 5600 J mol 1 5.6 kJ mol 1 6・19 2014/6/16 改訂 ラウールの法則より、 Pben xben Pben である。ここでベンゼンの蒸気分圧、モル分率および純物質 * * での蒸気圧を Pben , xben , Pben とする。 問題文より、 Pben 51.2 kPa, Pben 53.0 kPa であるから、 * 51.2 xben 53.0 xben 51.2 0.966 53.0 ここで、ベンゼンおよびある有機化合物のモル質量をそれぞれ M ben , M uk とすれば、 5.00 x ben 0.966 5.00 M ben M ben 0.133 M uk 5.00 M 5.00 0.133 ben M uk M 5.00 0.966 5.00 0.966 0.133 ben M uk 5.00 5.00 0.966 0.170 M ben 1.33 M uk 0.966 0.133 0.128 ここでベンゼンのモル質量は M ben 78.12 より、 M uk 58.8 g mol 。 -1
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