リニアコライダー加速器 /& 横谷 馨 ( &0 *H9 1 6/&86 序 3(75$' /(3(XURSH 75,67$1- 3(386 '25,6' &(6586 9(3305 .(.%- 3(3,,86 63($586 2mc2 (E + mc2 ) Figure 1: 電子・陽電子コライダーの重心系エネルギーの 進化。年次は運転開始時であるが、その時点で最高エネ ルギーに達していたとはかぎらない。LEP だけは最高エ ネルギーの到達時も示した。 て、エネルギーが下がります。これをシンクロトロン輻 射と呼びます。円軌道を一周する間のエネルギー損失は U = 0.08846 4 E[GeV] ρ[m] [MeV] (3) で表せます。E はビームのエネルギー、ρ は、偏向磁石の なかでの軌道を曲率半径です。単位時間あたりの電力損 失は、これを軌道の長さで割ったもの、つまり E 4 /ρ2 に 比例します。このエネルギー損失を補うためには加速装 置の電圧・電力が非常に大きくなるのです。単位時間当 たりの損失を一定にするとすれば、半径は E 2 に比例し て大きくなります。LEP は一周のながさ 27km でした。 (1) です。E は当たるほうの粒子のエネルギー、c は光の速度 です。E が大きくなると重心系エネルギーは E の平方根 でしか増加しません。いっぽう、エネルギーの同じ粒子 を正面衝突させれば ECM = 2E 2UVD\) $G$, 現代物理学の発展において加速器は重要な役割をになっ てきました。より高いビームエネルギーの加速器を作る ことにより、物理学が物質のより小さな構造に到達する ことを可能としてきました。逆に言えば、物理学の要求 が加速器技術を引き上げて行ったといってもいいでしょ う。コライダーの概念が生まれたのも、より高いエネル ギーでの実験を求めてのことでした。 2つの粒子が衝突するばあい、そこで起こる現象はそ の重心系でのエネルギーできまります。2つの粒子の質 量(m)が同じ場合、一方の粒子が静止していれば、重 心系エネルギーは ECM = %(3&&KLQD $'21(, 今回の OHO はリニアコライダーがメインテーマとなっ ています。わたしの講義は全体についてのイントロダク ションですが、特に線型加速器については多くの講義が 用意されているので、ここでは簡単にします。土木関係 については触れないことにしました。榎本收志氏の講義 を参照してください。 2013 年 6 月に ILC の設計グループは技術設計報告書 (TDR, Technical Design Report)[1] を発表しました。 本稿に採った図面の多くはそこから引用しています。 (2) Figure 2: シンクロトロン輻 射 2 ですから、E > ∼ mc では加速された粒子どうしを衝突さ せるほうが得になります。 加速された粒子どうしを衝突させる加速器をコライダー と呼びます。電子と陽電子のように電荷の符号が逆で質 量が等しければ、ひとつのリングに逆向きにまわすこと ができますから、これでコライダーになります。最初のコ ライダーはイタリアのフラスカッチ研究所で作られ、フラ ンスのオルセーに移されてコライダーとして完成された AdA です。1964 年に最初の粒子衝突が検出されました。 軌道半径は 65cm、重心系エネルギーは 0.5GeV でした。 その後、コライダーのエネルギーは急速に上がってい きました。図 1 に電子・陽電子コライダーの歴史を示しま す。 (この講義では陽子の加速器についてはふれません。) 最初の 20 年ほどは、エネルギーフロントが 10 年で 10 倍 ほどの急ピッチで上昇していますが、その後は上昇がにぶ り、1989 年に運転を開始した LEP が 2000 年に 209GeV で終了して以後、最先端エネルギーの電子・陽電子コラ イダーは作られていません。 これは、 「シンクロトロン輻射」のためです。電子のよ うな荷電粒子は軌道を曲げると進行方向に光子を放出し この問題を解決するには、円型でなく、直線型の加速 器を使わなければなりません。これをリニアコライダー と呼びます。基本的には 2 台の線型加速器を鼻を突き合 わせる形で配置したものです。1960 年代に、M. Tigner が最初に提案しました [2]。これは図 3 に示したように、 2 台の線型加速器で電子陽電子を加速し、衝突後のビー ムを反対側のリナックで減速してエネルギーを回収する というアイデアです。これはシンクロトロン輻射の問題 を解決するためではなく、当時ちょうど始まっていた電 子陽電子コライダーが円型でなく線型加速器でもできる ということを主張したものでした。 では、なぜはじめからリニアコライダーにしなかった のでしょうか。それはリニアコライダーのほうが、技術的 にはるかにむずかしいからです。このむずかしさは、す べて一回限りの衝突であることから来ています。 1 㸰㸫 PS GX /LQDF 5) GX PS arc e- damping ring Figure 4: 最初のリニアコライダー SLC。1 台の線型加速 器で、陽電子 1 バンチ、電子 2 バンチを加速する。各 1 バ ンチが衝突に使われ、残る電子 1 バンチは途中で取出され て標的にあてられ、次のパルスのための陽電子を生成す る。線型加速器 SLAC(Stanford Linear Accelerator)は 1962 年に建設を開始した最古参線型加速器で全長 3km。 SLC は 1998 年に運転終了。 まず、第一に、各電子(陽電子)は加速装置を一回し か通りません。したがって、高いエネルギーに到達する ためには、1 メートルあたりの加速量(加速勾配)が十分 高くなければなりません。これに対して円型加速器では 各電子が同じ加速装置を幾度も通過するので一回あたり の加速量はわずかですみます。 第二は衝突頻度の問題です。ある物理現象の発生確率 は衝突断面積(σ )であらわされます。コライダーにおい てその現象が単位時間におこる回数は σ に比例し 初代のリニアコライダーは、1988 年に運転を開始した SLC です。これは図 4 にあるように、1 台の線型加速器で 電子・陽電子を加速し、加速後に逆向きの円型軌道に通し て衝突させるものです。線型加速器を 1 台しか使わない 点、その替りに円型軌道があるという点を除けば、これ 以後に研究されてきたリニアコライダーと、原理は同じ です。SLC は重心系エネルギー 92GeV の Z 粒子に焦点を 絞り、CERN の LEP に対抗して作られたものです。ルミ ノシティの設計値は LEP の半分以下で、かつ実際に到達 した値はその半分の低いものでしたが、電子ビームが偏 極しているという利点がありました。加速器のチューニ ングには時間がかかりましたが、初代リニアコライダー として、将来のリニアコライダーのために多くの経験を 残しました。 (4) と書けますが、この比例係数 L はコライダーの性能を表 す数字で、ルミノシティと呼ばれます。高エネルギー加速 器のビームはふつう多数の粒子のかたまり(バンチ)に なっています。N 個の粒子からなるバンチが、1秒間に fcol の頻度で衝突する場合、ルミノシティは L= fcol N 2 ビーム断面積 target SLAC Figure 3: Tigner によるリニアコライダーの最初のアイ デア。衝突後ビームは破線のように反対側のリナックを 逆行し dump で捨てられる。RF は高周波源。 単位時間の事象数 = Lσ e+ e+ damping ring collision point FH XU VR /LQDF 来からあるマイクロ波による線型加速器で、加速勾配を 上げることに落ち着きました。その本格的技術的研究が はじまったのは 1980 年代半ばです。 FH XU VR (5) であらわされます。円型コライダーに電子・陽電子1つ ずつのバンチが回る場合、fcol は周回時間の逆数であり、 リングのサイズに反比例して減少しますが、最大のコラ イダー LEP でも 104 Hz になります。KEK の TRISTAN では 105 Hz でした。KEKB のように多数のバンチ数を回 せばそれだけ fcol が大きくなります。一方、リニアコラ イダーの場合は、加速装置の繰返し周波数が限度になり ます(数 Hz から数 100Hz)。これを補うために一つのパ ルスに中に数 100 から数 1000 のバンチを入れますが、こ れでも多バンチの円型コライダーにはかないません。リ ニアコライダーは円型コライダーにくらべて fcol で 100 倍から 10000 倍ほど損をします。したがって、この分だ けビーム断面積を小さくしてかせがなければなりません。 リニアコライダーは高度なビーム技術を必要としている のです。 あえて挙げれば、第三に、ビームをすぐに捨ててしま うので、次のビームを速やかに生成しなければなりませ ん。もちろん電子は問題ないのですが、陽電子について は検討が必要です。 高加速勾配の要求のため、当初はいろいろな加速原理 が提案されました。たとえば、回折格子にレーザーを照 射して加速電場を作る方法、回折格子のかわりに誘電体 を使う方法、自由電子レーザーの逆過程、レーザーある いは電子ビームによって励起されたプラズマ波を使う方 法など。しかしいずれも技術的に時期尚早とわかり、従 2 ルミノシティの最適化 式 (5) はもう少し詳しく書くと L= frep nb N 2 HD 4πσx∗ σy∗ (6) となります。ここで、frep は、ビームパルスの繰返し周 波数、nb は、ひとつのパルスに含まれるバンチの数、N はひとつのバンチ内の粒子数です。さきほど導入した fcol は frep nb にあたります。σx∗ , σy∗ は衝突点での、水平・鉛 直方向の RMS ビームサイズです。衝突点での量には ∗ を付ける習慣です。HD は衝突中のビーム間相互作用の ための補正係数で、詳細はあとで述べます。とりあえず 1 に近い数とすれば十分です。 この式は次のように変形できます。まず、ビームサイ ズは、規格化エミッタンスおよびベータ関数をつかって (これらの定義は Appendix にまとめました) σx∗ = ∗ x,n βx /γ (7) と書けます(y 方向も同様です)。一方のビームのもつ電 力は PB = eN × frep nb × E 2 㸰㸫 (8) 3.1 衝突中のビーム間の相互作用は非常に重要です。これに ついては後で詳しくのべますが(9 節参照)、とりあえず ここで必要なことは 線型加速器は、加速空洞の金属の性質により、常伝導(普 通は銅)と超伝導(普通はニオブ)に大別されます。 マイクロ波を貯めると金属内面に電流が流れますが、 超伝導空洞の場合電気抵抗がほとんどないので表面での エネルギー損失が極めて小さく、マイクロ波の減衰は非 常にゆっくりになります。貯められたマイクロ波の自然 な減衰の速さは、Q0 という数値で表現されます。これは 十分減衰する間のマイクロ波の周期の数で、典型的な値 は、超伝導空洞では 1010 、常伝導空洞では 104 程度です。 常伝導空洞ではマイクロ波の減衰が速いので、大きな 瞬間電力のマイクロ波源(モジュレータ、クライストロ ン)で空洞に素早くマイクロ波を貯め、減衰する前に短 い電子ビームを通過させます。一つのパルスの継続時間 はマイクロ秒の桁が普通です。一方、超伝導空洞の場合 は、低電力・長パルスのマイクロ波源でゆっくりマイクロ 波を貯め、長い電子ビームを通過させます。パルス長は ミリ秒が普通ですが、連続運転(CW mode, continuous wave)にも適しています(ただし、リニアコライダーで はパルス運転を使います)。 常伝導と超伝導はリニアコライダーに使う上で、それ ぞれ長所と欠点をもちます。 まず、超伝導は電力効率(つまり外から与えた電力の 何%がビームのエネルギーになるか)のよいことがあげ られます。ただし、Q0 の値は常伝導より 6 桁高いのです が、これがそのまま電力効率の比になるわけではありま せん。パルスの長さが 3 桁(ミリ秒対マイクロ秒)長い こと、超伝導状態を保つために、発生した熱より 3 桁高 い電力を使って空洞を冷却しなければならないこと、こ のために 6 桁の違いはほとんどなくなります。しかしそ れでもリニアコライダー用に最適化した場合、超伝導リ ニアコライダーの電力効率は常伝導より 2 倍前後よいよ うです。 大きな Q0 の利点が顕著に現れるのはむしろ電子ビー ムのパルス長です。超伝導の場合、パルスが長いので、パ ルスのはじめの部分の観測から後続部分にフィードバッ クをかけることができます 10.2 節参照)。このため各種 の誤差、地盤振動への対策が容易になります。また、衝 突点でのイベントの間隔が長くなり、検出器の設計がや りやすくなります。ただし、パルス長がながく、かつそれ を生かすために多くのバンチをパルスに詰め込むことか ら、減衰リングが大がかりになるという短所があります。 リニアコライダーでは加速勾配がリナックの長さを決 める重要なパラメータですが、実際に使える加速勾配 は、常伝導のほうが 2-3 倍高くできます(ILC の採用値 は 31.5MV/m、CLIC の目標値は 100MV/m)。したがっ て、数 TeV のエネルギーに達するには常伝導が有利です。 超伝導の場合、冷却系統(クライオジェニックス)が はるかに大きなものになります。遠い将来、高温超電導・ 常温超伝導の加速空洞が実用化されればこの問題は緩和 されるはずですが。 1980 年代半ばに次期リニアコライダーの開発研究が始 まって以来、常伝導と超伝導の競争状態が 20 年近く続き ました。いずれにしても非常に高価なものですから、方 式を一本化すべきだという声が高まり、2004 年に超伝導 が ILC として選択されました。この選択は次期リニアコ • ビームは衝突中に相手ビームの作る電磁場のため強 いシンクロトロン輻射を出してエネルギーを失う • これを緩和するには非常に扁平なビーム(σx∗ がよい σy∗ ) • その場合のエネルギー損失の割合 δBS は式 (23) で表 せる ということです。 これらを使うと式 (6) は L≈C PB E δBS min 1, y,n σz /βy∗ (9) となります。σz はバンチの長さ(標準偏差)です。C は自 然定数の組合せですが、汚い因子なので省略します。min の部分は、Appendix に書いたいわゆる砂時計効果による ものです。 ここに現れたパラメータのうち、PB は全体の使用電力 を決めます(PB = 使用電力 × 効率)。δBS は実験のほう からの要請で決まります。したがって、ルミノシティを 最適化するには • y 方向の規格化エミッタンス くする y,n をできるだけ小さ • σz ≈ βy∗ とする • 加速の電力効率を上げる ことが焦点です。 3 常伝導と超伝導 線型加速器 線型加速器(リナック、リニアック)は文字通り直線型の 加速器ですが、普通はマイクロ波を使うものです。共鳴 型加速器は、図 5 のような、金属でできたセルと呼ぶ形 状が連結した空洞で、これにマイクロ波を貯めます。ILC では π モードを用います。セルの間隔は波長の半分にし てあります。ある瞬間の加速電界(矢印)はセルごとに 交互に逆向きになっており、マイクロ波周期(ILC では 1.3GHz、したがって周期 1/1.3=0.769ns)の半分後には この向きが逆転します。この間に電子(ほとんど光速)が ちょうど 1 セル分を走るようにしておけば、電子は加速 され続けます。 Figure 5: π モード空洞の加速原理 3 㸰㸫 3.3 ライダーとしてのものであり、それ以上のエネルギーに ついては、常伝導が捨てられたわけではありません。現 在、ILC の後にくるべきリニアコライダーとして CLIC (Compact Linear Collider)の開発研究が CERN を中心 にして行われています。その方式についてここに述べる余 裕はありませんが、これは常伝導リニアコライダーです。 3.2 クライオモジュール 図 6 の空洞は本体(9 つのセル)のほかに、マイクロ波 を入力する部分 (power coupler、図の右端)、ビームが発 生する電磁波を吸収する部分(HOM coupler、図の両端) などを含み、さらに図 7 のように容器のなかにいれて、空 洞のまわりを液体ヘリウムで満たします。図の左上にあ るパイプは、液体ヘリウムを流し、かつ空洞を冷却する ことで蒸発し気体になったヘリウムを通すものです。 ILC の加速空洞 ILC で採用している加速空洞は図 6 のようなものです。こ れは、1.3GHz の 9 セルからなる空洞で、ドイツの DESY 研究所で TESLA 計画のために長年開発してきた形状で す。一つのセルの長さは 1.3GHz の波長の半分、すなわ ち 11.5cm、9 セルでほぼ 1m になります。両端部も含め ると約 1.3m です。材質は厚さ約 3mm のニオブ。 Figure 7: 空洞パッケージ Figure 6: 加速空洞の外観と断面図 開発研究の眼目は加速勾配でした。できたばかりの ILC の最初のワークショップが 2005 年夏に開かれたときに、設 計値として、縦測定(空洞単体試験)で 35MV/m、リナッ クに並べたときの平均加速勾配では 1 割減の 31.5MV/m と決られました。当時実用化していたのは 17MV/m 程 度、成績のよい空洞で 25MV/m 前後でしたから、これは かなりの開発作業を見越したものでした。それから 9 年 がたって、いまではほぼこれが達成されたと言っていい でしょう。ただし、建設の際の加速勾配の戦略は、より 精密化されて、現在では、 Figure 8: クライオモジュール断面 • 縦測定の加速勾配は、35MV/m に 20%の幅をもたせ る。したがって、28MV/m 以上の空洞は受付けた上 で、平均を 35MV/m 以上にし、かつ製作歩留りを 90%以上とする。Q0 は 35MV/m で 0.8 × 1010 以上、 31.5MV/m で 1 × 1010 以上とする。 この 1 セットの空洞の上に熱シールドなどを装着し、こ れを 8 つあるいは 9 つ連結したものをクライオモジュー ルと呼びます。その断面が図 8 です。中央の大きな円は 集められた気体ヘリウムを、再び液化するためにもとに もどすためのパイプです。その下が加速空洞です。それ に左から嵌入しているのが、power coupler です。 図 9 はクライオモジュールを側面から見たものです。全 長 13m くらいです。この図は中央に 4 極磁石が配置され ています。このタイプを B 型と呼びます。4 極磁石のか わりにもう 1 台空洞を入れたものを A 型といいます。主 リナックでは AABAAB· · · · · · のように並べられていま す。したがって 4 極磁石は約 40m に 1 台ということにな ります。 このようなクライオモジュールを電子・陽電子合わせ て約 2000 台、直線状にならべます。設置の要求精度は 200-300μm で、数字としては特に小さなものに見えませ • 平 均 加 速 勾 配 を 20%の 幅 を 持 た せ る 、つ ま り 25.2MV/m 以上、37.8MV/m 以下。(この上限は、 ここまで勾配を出せるような、マイクロ波源を用意 するという意味) となりました。最新の結果については、加古永治氏など の講義を参照してください。 1 台の空洞の実効長は約 1m(正確には 1.036m)ですか ら、1 台による加速は 1.036times31.5=32.6MV、電子・陽 電子合計 500GeV に達するにはこのような空洞が 15000 台以上必要ということになります。 4 㸰㸫 ῶ⾶䝸䞁䜾 Figure 9: 8 空洞を収納したクライオモジュール。中央部 には超伝導 4 極磁石が収められてる。 ೫ᴟ㝧㟁 Ꮚ※ 䝡䞊䝮ศ㓄⣔䚸 ᳨ฟჾ 㝧㟁Ꮚ䝸䝘䝑䜽 Beam dump 㟁Ꮚ䝸䝘䝑䜽 んが、直径 1m を超える大きなものなので、容易ではあ りません。 ILC のリナックとほぼ同様な構造をものが、ハンブル グに建設されつつあります。ヨーロッパの X 線自由電子 レーザーシステムで、使用する空洞は約 800 台、つまり ILC の約 1/20 です。加速勾配の設計値は ILC よりやや 下ですが、多くの点について ILC の手本となるものです。 4 ೫ᴟ㟁Ꮚ※ Figure 10: ILC 全体の配置図。中央部は拡大して描かれ ている。減衰リングの周の長さは約 3km、全体の敷地長 は約 30km。 の入口まで、線型加速器と同じトンネル内を長距離輸送 (約 15km)されます。 上記のプロセスは、frep = 5Hz、つまり 200ms の周 期で繰返されます。減衰リングに蓄積された多数のバン チは、約 1ms の時間をかけてひとつひとつ取出されて加 速されます。したがって、200ms のうちの 1ms の間だけ ビームの衝突が起こることになります。ビームパルスの 構造を図 11 に図示しました。かっこ内の数字は第 2 段階 としてバンチ数を増やした場合です。 リニアコライダーの構成 リニアコライダーの心臓部は線型加速器ですが、これを コライダーにするには、このほかにたくさんのシステム が必要です。ビームの衝突は次のようなステップで行わ れます。 [1] ビームを生成する。電子ビームはリニアコライダー の利点を生かすよう、偏極ビームが要求されます。陽 電子は、ILC の基本設計では、衝突点に向かう高エネ ルギー電子ビームをその途中で使って生成されます。 [2] ビームを減衰リングのエネルギー(ILC では 5GeV) まで加速する。 [3] 減衰リング(Damping Ring、しばしば DR と略記) に蓄積してエミッタンスを小さくする。これには ILC の場合 100ms あるいは 200ms かかる。 [4] 減衰リングから取り出し、線形加速器入口まで運ぶ。 この部分のビームラインを RTML(Ring To Main Linac)と呼んでいる。 [5] RTML の最後の部分(Bunch Compressor)でバン チの長さを短くする。 [6] 線形加速器で加速する。 Figure 11: ビームパルスの構造。 [7] 電子のほうは、[1] にあるように、次のパルスのため の陽電子を作る。 主なパラメータを表 1 にまとめました。 [8] ビーム分配系(Beam Delivery System, BDS)でビー ムを絞って衝突させる。最後にビームダンプで使用 後ビームを処理する。 5 図 10 に ILC 全体の配置を示します。重心系エネルギー 500GeV の場合、敷地全長は 30km 余りになります。ト ンネルを節約するために、電子・陽電子の減衰リングは 中央部の同じトンネル内に上下に配置します。このため、 リングから取出した後のビームはそれぞれの線型加速器 電子源 図 12 は電子源のビームラインの概念図で、陽電子用の BDS トンネル内に並行して置かれます。電子源で生成さ れたビームは 76MeV まで常伝導線型加速器で加速され、 その後超伝導線型加速器で 5GeV まで加速されてから減 衰リングに運ばれます。 5 㸰㸫 重心系エネルギー 衝突点でのビームパルス頻度 パルスあたりのバンチ数 バンチあたり粒子数 バンチ間距離 パルス内のビーム電流 平均加速勾配 平均ビーム電力 供給電力 RMS バンチ長(rms) 電子ビームのエネルギー広がり 陽電子ビームのエネルギー広がり 電子偏極 陽電子偏極 水平規格化エミッタンス 鉛直規格化エミッタンス 衝突点でのエネルギー幅 (e− ) 衝突点でのエネルギー幅 (e+ ) 衝突点での水平ベータ関数 衝突点での鉛直ベータ関数 衝突点での水平ビームサイズ 衝突点での鉛直ビームサイズ Disruption parameter (x) Disruption parameter (y) ルミノシティ エネルギー幅 1%以内のルミノシティ Υ パラメータ 平均光子数 ビーム輻射による平均エネルギー損失 Table 1: ILC Parameters Baseline 500GeV machine ECM GeV 250 350 500 frep Hz 5 5 5 nb 1312 1312 1312 N ×1010 2 2 2 tb ns 554 554 554 Ibeam mA 5.8 5.8 5.8 MV/m 14.7 21.4 31.5 PB MW 5.9 7.3 10.5 PAC MW 122 121 163 σz mm 0.3 0.3 0.3 σE /E % 0.190 0.158 0.124 σE /E % 0.152 0.100 0.070 P e− % 80 80 80 P e+ % 30 30 30 μm 10 10 10 x,n nm 35 35 35 y,n σE /E % 0.190 0.158 0.124 σE /E % 0.152 0.100 0.070 βx∗ mm 13 16 11 βy∗ mm 0.41 0.34 0.48 σx∗ nm 729 683.5 474 σy∗ nm 7.7 5.9 5.9 Dx 0.3 0.2 0.3 Dy 24.5 24.3 24.6 L ×1034 /cm2 s 0.75 1.0 1.8 L0.01 /L % 87.1 77.4 58.3 Υ 0.020 0.030 0.062 nγ 1.16 1.23 1.72 δBS % 0.97 1.9 4.5 Figure 13: 陽電子発生システムの模式図。使用後電子は 光子から分離して衝突点(IP)に運ばれます。 陽電子源 アンジュレータというのは、軌道を進むにしたがい磁 場方向が上下交互に替って電子を蛇行させる磁石です。た だし、ILC に使うアンジュレータは、磁場方向が上右下 左のように回転するもので、ヘリカルアンジュレータと 言います。図 14 のように 2 本のコイルを間を縫うように 合わせ逆向きの電流を流すと、中心軸上にそのような磁 場が作れます。この場合電子は螺旋運動をします。 通常の方法に比べて以下のような長所があります。 陽電子ビームは通常、数 GeV の電子を標的に当て、発生 するシャワー(e± →e± γ, γ →e+ e− )の中の e+ を集め てつくりますが、ILC の基準設計では別の方法を用いる ことになっています。 6.1 ECM Upgrade A B 1000 1000 4 4 2450 2450 1.74 1.74 366 366 7.6 7.6 38.2 38.2 27.2 27.2 300 300 0.25 0.225 0.083 0.085 0.043 0.047 80 80 20 20 10 10 30 30 0.083 0.085 0.043 0.047 22.6 11 0.25 0.23 481 335 2.8 2.7 0.1 0.2 18.7 25.1 3.0 4.9 59.2 44.5 0.127 0.203 1.43 1.97 5.6 10.5 生したガンマ線(光子)を標的に当て、γ →e+ e− によっ て発生する e+ を集めます。図 13 にシステム全体の模式 図を示します。 偏極電子ビームは、歪超格子構造の GaAs/GaAsP 光 陰極にレーザー光を当てて生成します。これは名古屋大 学などで長年にわたって開発されてきた技術であり、ILC に要求される強度で 85%以上の偏極度をもつビームを作 ることができます。ILC としての開発項目は、ILC のバ ンチパターンに合ったレーザーシステムです。GaAs のバ ンドギャップに合った波長 790nm の光で、1.8MHz(バン チ間隔 554ns に相当)、レーザーバンチ長 1nm、フラッ シュエネルギー 5μJ、継続時間 1ms のパルスが必要です。 詳細については吉田光宏氏の講義を参照。 6 Luminosity Upgrade 500 5 2625 2 366 8.8 31.5 21.0 204 0.3 0.124 0.070 80 30 10 35 0.124 0.070 11 0.48 474 5.9 0.3 24.6 3.6 87.1 0.062 1.72 4.5 アンジュレータ方式による陽電子生成 まず、加速が終って衝突点に向かう途中の高エネルギー電 子をアンジュレータに通してガンマ線を発生させます。発 • ヘリカルアンジュレータの使用により、偏極した陽 6 㸰㸫 Figure 12: 電子源のビームライン。陽電子用の BDS に並行して置かれる。 6.2 アンジュレータ輻射の原理 W A B Figure 14: ヘリカルアンジュレータ概念図。 W 電子を得ることができる。 Figure 15: アンジュレータでの輻射の原理。 • 標的中で最初に起こる反応 γ →e+ e− を主に使うの で、標的が薄くてすみ、したがって標的上での熱・ス トレスが少ない。 (ただし、電子ビームのパターンは 衝突実験によって決っているので陽電子標的のため に最適化することはできない。) アンジュレータでの輻射の原理を図 15 に示します。電 子の螺旋(図では蛇行で示されています)の進行方向に 直角の速度成分を v⊥ とすると 一方短所もあります。 K≡γ • 高エネルギー(100GeV 以上)の電子を必要とする。 したがって、リニアコライダーのようにもともと高 エネルギー電子がある場合でないと実用的ではない。 eBW λW v⊥ = = 92.3BW [T] λW [m] c 2πmc (10) は電子のエネルギーによらず、アンジュレータの磁場 BW とピッチ λW で決るパラメータとなります(γ は電子の ロレンツ因子。)電子の z 方向の速度は • 同じ理由で、試験が困難である。かつて SLAC にお いてミニチュアのヘリカルアンジュレータをつかっ て数 10GeV の電子から陽電子を発生させる原理実証 実験が行われたが、実用目的ではない。ただし、原 理的にはよく理解されているので、各コンポーネン トの試験で確認できれば 100GeV 以上の電子を使わ なくても試験は十分であろう。 vz = 2 = v 2 − v⊥ 1− 1 K2 1 + K2 − ≈ 1 − (11) γ2 γ2 2γ 2 軌道の同じ位相の点 A と B からの、同じ方向(角度 θ) に出た輻射がコヒーレントに足しあわされるためには、幾 何学的に • ILC の場合、電子のエネルギーは衝突エネルギーの半 分であるから、衝突エネルギーが 250GeV 以下の場 合生成される陽電子の数が十分でなくなる(後述)。 λW λγ λW cos θ =n − vz c c • 施設全体にわたる、軌道の長さに条件式が課される (後述)。 (12) が満たされなければなりません。λγ は輻射されるガンマ 線の波長、n ≥ 1 は任意の整数。λW /vz は電子が点 A か ら B に到達する時間です。この 2 つの式からアンジュレー タの基本式 • 電子リナックが完成しないと試運転ができない。 • アンジュレータを通ることにより、電子のエネルギー 幅がやや増加する。図 1 において、電子のエネルギー 幅が陽電子より大きいのはこのためである。 λγ = が得られます。 などです。 7 㸰㸫 λW (1 + K 2 + γ 2 θ2 ) 2nγ 2 (13) 6.3 陽電子生成率 陽電子を生成するにはガンマ線のエネルギーは少なくと も 5MeV 以上(波長 2.5 × 10−13 m 以下)が必要です。短 ピッチ強磁場のアンジュレータを作るのは難しいので、 ILC では λW =11.5mm、BW =0.86T (K = 0.92) を選ん でいます。式 (13) で n = 1 とすると、電子エネルギー 125GeV 以上が必要ということになります。これ以下の エネルギーでは陽電子生成率が指数関数的に下がります。 n ≥ 2 の輻射は K が大きい時には強くなりますが、その 場合偏極度が下がるので好ましくありません。 Figure 17: 陽電子生成標的。 回転し、これによって単位面積当たりの発熱が緩和され ます。 この部分には陽電子収束のための磁場の裾がかかって おり、回転によって渦電流が生じ、それによる発熱は無 視できません。このため、車輪は円盤でなく、スポーク構 造になっています。この試験は数年前に行われています。 ただし、発生した陽電子は直ちに加速しなければなら ないので、加速空洞(常伝導)が直後に配置されていま す。このため車輪は真空中で回さなければなりません。こ のための研究開発作業はまだ終わっていません。このた め、ILC では通常の方法、つまり、数 GeV の電子を標的 に当てて発生した陽電子を回収する方法もバックアップ として用意しています。この場合、陽電子源と電子リナッ クの運転は無関係になるので、前に挙げたアンジュレー タ方式の欠点の多くが解決しますが、偏極陽電子が得ら れないという欠点が出てきます。 Figure 16: 陽電子生成率(青線)。赤線は陽電子の偏極 度。アンジュレータは長さ 147m。 図 16 は電子エネルギーの関数としてプロットした陽電 子生成率、つまり一つの電子から生成される陽電子の数 です。電子エネルギーが 150GeV(つまり衝突エネルギー 300GeV)のときに十分な数(1.5 倍の余裕)の陽電子が 作られるようになっています。実際の建設時にはアンジュ レータの長さを十分とって、125GeV(重心系エネルギー 250GeV でも十分になるようにする予定です。 しかしそれでも、重心系エネルギー 250GeV 以下に対 しては陽電子が足りなくなります。その場合、ILC は次 のような方式を用意しています。電子リナックを 10Hz (100ms 間隔)で運転し、1 つのパルスは 150GeV まで加 速して陽電子を生成した後捨てる、次のパルスは重心系 エネルギーの半分まで加速して、陽電子を生成せずに衝 突点まで運ぶ、というものです。衝突の繰返しは 5Hz と いうことになります。減衰リングも 10Hz で運転しなけれ ばなりませんがその用意はできています。電子リナック は、交互に加速量が変わりますが、陽電子生成のために 必要なビームの質は高くないので、軌道補正は衝突点に 向かうビームに合わせれば十分です。この方式は、陽電 子生成のために余計な電力を食う点でエレガントではあ りませんが、やむをえません。 6.4 6.5 経路長束縛条件 L2 L1 L3 L4 Figure 18: 経路長束縛条件。 ところで、アンジュレータ方式による陽電子生成は、衝 突に使う電子を利用するため、施設全体の長さについて、 ある束縛条件がつきます。電子・陽電子 1 バンチずつが 減衰リングから取出されて衝突する時点を考えてくださ い。その途中で電子バンチが生成した次のパルスのため の陽電子は図 18 の L1 を経て減衰リングに入るはずです が、この時点ですでに取出されている陽電子はごくわず かで、大部分はまだ減衰リングにあります。したがって、 新たにくる陽電子バンチは、ちょうどその空席に入らな ければなりません。もっとも一般性のあるのは、その電子 と衝突した陽電子がもといた場所に収まることです。こ のため、次のような条件式が課されます。 標的 陽電子生成のための標的は、図 17 に示したようなもので す。チタン合金でできた、直径 1m、厚さ 14mm の車輪 で、縁辺速度 100m/s(2000rpm)で回します。これに当 たる光子は、最大 2625(ルミノシティ増強時)バンチ、パ ルス継続時間 1ms ですから、1 パルスの間に車輪は 10cm L1 + L2 + L3 − L4 = nC 8 㸰㸫 (14) L1 , L2 , L3 は図に赤の太線で示した長さ、L4 は青の破線、 C は減衰リングの周の長さ、n は整数です。これは衝突点 で電子・陽電子が正確に当るように、バンチ長(0.3mm) より十分小さい精度で満たされてなければなりません。 (もちろん、どのコライダーでも衝突点で合わなければな らないことは当然ですが、普通は電子あるいは陽電子の リナックのタイミング調整だけですみます)。このため、 設計段階で完全に合わせること、トンネル建設が正確な こと(おそらく数 10cm)、加速器建設時に長さを数 10cm の範囲で調整できる区間を用意すること、実験中は常に モニターして 0.1mm くらいの精度で微調整できること、 などが必要になります。 7 Figure 19: 減衰の原理 前後で運動量ベクトルの向きは変わりませんが、長さは (E − u)/E 倍になります(図の赤線・緑線、E mc2 と します)。したがって、px は Δpx = −(u/E)px だけ変化 します。このとき座標 x は変わりませんから、Appendix の図 43 の上下が (E − u)/E 倍だけ圧縮され、規格化エ ミッタンス(面積)の変化は(x も y も同じ) 減衰リング 電子銃で作られた電子ビームのエミッタンスは、ビーム 衝突に使うには、少し大きすぎます。前節の方法で作ら れた陽電子ビームのエミッタンスは、それよりはるかに 大きな値です。これらのエミッタンスをビーム衝突にふ さわしい値まで小さくするのが減衰リングの主な役割で す。主なパラメータを表 2 にまとめました。 (Δ )1 光子 = −(u/E) となります。エネルギーの減った分だけ加速空洞で加速 されますが(青線)、この際は px には影響しないので、 規格化エミッタンスは変わりません 1 。リング 1 周のシン クロトロン輻射の効果の合計は、光子エネルギー u の 1 周合計の平均が式 (3) の U ですから Table 2: 減衰リングの主なパラメータ 周長 3.238 km 繰返し周波数 5 (10) Hz バンチ数 1312 (2625) バンチ内粒子数 2×1010 最大ビーム電流 389 (779) mA xy 方向減衰時間 23.95 ms 進行方向減衰時間 12.0 ms 運動量圧縮係数 3.3×10−3 入射ビーム要求値 規格化ベータトロン振幅 (ax + ay )max 0.07 m·rad 進行方向エミッタンス (ΔE/E × Δz)max 0.75 × 33 %×mm 取出しビーム 水平方向規格化エミッタンス 5.5 μm 鉛直方向規格化エミッタンス 20 nm 平衡バンチ長 6 mm 平衡エネルギー幅 0.11 % 高周波関係 周波数 650 MHz 加速空洞数 10 (12) 電圧合計 14.0 MV 1 空洞電圧 1.40 (1.17) MV 同期位相 18.5 度 7.1 (Δ )1 周 = −(U/E) となります。したがって、エミッタンスは時間 (E/U )T0 の間に 1/e になります。減衰時間は振幅(エミッタンス の平方根に比例)が 1/e になる時間で定義されるので τx,y = 2 E T0 , U T0 は 1 周の時間 (15) です。ILC 減衰リングでは表 2 にあるように約 24ms です。 一方、この間にエネルギー幅も減衰します。磁場 B の 中でエネルギー E の粒子が単位時間に失うエネルギーは、 E 2 B 2 に比例します。つまり、エネルギーの高い粒子ほど 多く失います。この結果、エネルギー幅の減衰時間は τE = E T0 , U (16) となります。x,y より 2 倍速いのは、E 2 の 2 乗のため です。 減衰は要するにシンクロトロン輻射によるエネルギー 損失で決まるわけですから、ILC では減衰時間を短くす るために、ウィグラー磁石をいれています。なお、式 (3) の U は偏向磁石がすべて同じ場合の式で、より一般には 減衰の原理 4 U = 0.08846E[GeV] 減衰の原理を図 19 を使って説明します。電子(陽電子)は はじめに説明したように、軌道が曲がるときに進行方向に シンクロトロン輻射を出して、エネルギーを損失します。 始めに持っていたエネルギーを E 、横(x)方向の運動量 を px 、放出された光子のエネルギーを u とすると、輻射 1 2π ds MeV ρ2[m] (s) (17) 1 幾何エミッタンスで説明すると表現が少し違ってきます。輻射の瞬 間はビームの向き x が変わらないので幾何エミッタンスは変化しませ んが、加速の際は進行方向の運動量が増加するため、角度が小さくなり (青線)、幾何エミッタンスが減少します。どちらの説明にしても、減衰 時間は同じです。 9 㸰㸫 です。s はリングに沿って測った長さで、 はリング一周 の積分です。ρ(s) にはウィグラー磁石によるものも含ま れます。 減衰の結果エミッタンスやエネルギー幅がゼロになる わけではありません。これはエネルギー損失が光子の形 で量子的(離散的)に起こるからで、減衰時間の数倍の時 間の後にはある平衡値に達します。ここは加速器のビーム 力学でめずらしくプランク定数が現れるところです。その 詳細は久保浄氏のビーム力学の講義を参照してください。 7.2 LRQ URQUDGLDW V\QFKURW H Figure 21: 電子雲不安定性 陽電子の運動を妨害するのが電子雲不安定性です。電子 を発生する過程はシンクロトロン輻射に限らず、残留ガ スのイオン化などもあります。肝心なことは、陽電子に引 きつけられた電子が、陽電子に振り回され、エネルギー を得て再び壁に当たり、新たに電子をたたき出すことで す。1 つの電子が壁に当たったときに出る電子の数を SEY (Secondary Electron Yield)と言います。これはもとの 電子のエネルギーの関数ですが、普通その最大値を目安 にします。SEY を小さくするには、ビームパイプの形状、 表面のコーティング、パイプ内の電場などが重要な役割を 演じます。これについては、コーネル大学の CESR にお いて国際的なチームによって研究が行われました。CESR は電子陽電子コライダーでしたが、その役割を終え、加速 器研究のために使われました。数年にわたる研究の結果 は大部な報告書 [3] にまとめられ、KEK の SuperKEKB や ILC の設計に役に立ちました。図 22 はその結果を取 り入れて設計された陽電子減衰リングのビームパイプ形 状です。 減衰リングの構成 Figure 20: 減衰リング全体配置図 減衰リングは図 20 のようなレーストラック型です。図 の上側の直線部にはウィグラー磁石・加速空洞(図の RF) と位相トロンボーンがあり、下側の直線部には入射・取出 し部、およびシケインが配置されています。位相トロン ボーンはベータトロン振動数を調整するセクション、シ ケインは一周の長さを微調整するものです。 7.3 ビーム入射・取出し リナックではバンチ間隔は 554ns (166m) ですが、この まま 1312 個のバンチを減衰リングに入れるには、周長 200km 以上の巨大な減衰リングが必要です。そこで、減 衰リングには間隔を詰めて貯めこみ(650MHz の周期の 4 倍つまり、6.15ns 間隔)、554ns の時間差で次々に一つ ずつバンチを取り出します。このためには、6ns より短時 間に磁場が立上り、同じ時間内に磁場がゼロになるよう な、 「キッカー磁石」が必要になります。そのようなキッ カーは KEK で開発されました。実際に ILC の減衰リン グでビームを取り出すにはそのようなキッカーを数 10 台 並べます。取出しの際の蹴り角は 1/1000 よりよい安定性 が要求されます。 7.4 Figure 22: 陽電子減衰リングのビームパイプ断面形状。 90 度回転してあり、図の上がリング外側、左がリング上 方。ウィグラー磁石内のパイプ (a) は、上方(図の左)に 真空引きのために NEG ストリップが置かれ、図には現 れていないが下方(図の右)に電極がセットされている。 偏向磁石内のパイプ (c) は上下に溝(進行方向、図では 黒い太線に見える)が切ってあり発生した電子が陽電子 ビームに近づきにくいようになっている。リング外側の 壁はシンクロトロン輻射が直角に当らないように、斜め になっている。いずれも、内部は TiN でコーティングさ れている。長さの単位は mm。 電子雲不安定性 これらの工夫で、バンチ間隔 6ns までは電子雲不安定 性を防げることが確かですが、将来バンチ数を倍増した 場合、3ns 間隔でも大丈夫かどうか 100%明らかではあり ません。そこで、減衰リングのトンネルは、1 台の電子リ ングと 2 台の陽電子リングを上下に重ねられるような高 減衰リングのビーム力学で最も重要な問題は、陽電子減 衰リングにおける電子雲不安定性です。陽電子が出した シンクロトロン輻射がビームパイプの壁に当たると光電 子効果で電子が放出されます。これが、陽電子ビームの クーロン力で引きつけられて陽電子の軌道付近に集まり、 10 㸰㸫 さにつくり、最初の段階では電子・陽電子のリング一つ ずつ入れることになっています。 なお、似たような現象が電子リングでも予想されます。 電子が残留ガスをイオン化したときにできるイオンが電 子のクーロン力に集められるものです。これを Fast Ion Instability (FII) と呼びます。その効果は電子雲不安定性 ほどではないので、バンチ数を倍増した場合でも心配な いと考えられます。 B Figure 24: ターンアラウンドに設置する Feedforward の 概念図。 RTML RTML (Ring To Main Linac) は、減衰リングから取出し た電子・陽電子ビームを各リナックの入口まで運ぶビー ムラインです。図 23 にその全体の形状を示します。全長 は約 17km もあります。 軸のまわりにスピンを 90 度回転させるためで、90/(aγ) です(γ は電子のロレンツ因子、a は電子の異常磁気能率 係数=0.0011596. . .。5GeV にたいしては aγ = 11.35。)。 バンチ長圧縮器 RTML のなかでもっとも重要な部分はバンチ長圧縮器 です。1.3GHz のリナックの正弦波でバンチ全体を十分に 一様に加速するためには、バンチの長さ(標準偏差)が 波長 23cm の 1/150 程度以下(1.5mm)でなければなり ませんが、さらに強い要求は衝突点の砂時計効果から来 ます。ILC の標準設計値は 300μm です。減衰リングでの バンチ長 6mm を 1/20 に圧縮することになります。 Figure 23: RTML 全体図。これは電子側であるが、陽電 子側もほとんど同じ。 off-phase linac RTML はビームを運ぶだけでなく、そのほかにもいく つかの役割があります。()内は図 23 中の記号 chicane E • ターンアラウンド: 両端にある、ビームの向きを 180 度回す部分(ETURN) • スピン rotator(ESPN) • バンチ長圧縮器(EBC1,EBC2) • ビームダンプ(■) delay accelerate • Feedforward decelerate z advance 8 A Figure 25: バンチ圧縮の原理 Feedforward Feedforward は、上流でなんらかの原因で生じたバン チの位置(上下左右)の誤差をバンチごとに補正する装 置。ビームライン ELTL の終端(図 23 の左端)に設置し た位置検出器(図 24 の A 点)でバンチの位置を検出し てそのデータをすぐ隣にある ESPN の終端(B 点)に送 り、円弧 ETURN を周回してきたそのバンチを蹴って修 正します。これによって、例えば減衰リングの取出しキッ カーの誤差を補正できます。 スピン rotator スピン rotator は、減衰リングで上下向きであった電 子・陽電子のスピンの向きを、衝突実験のために任意の 方向に向けられるようにスピンを回転する装置です。肝 心な部分は、5Tesla の超伝導ソレノイド磁石、偏向角度 7.9 度の偏向磁石および同じソレノイド磁石もう一台から なります。(実際は軌道補正のため各ソレノイド磁石は 2 つにわけられその間に 4 極磁石が挿入されています。)ソ レノイド磁石の磁場の強さを変えることでスピンの向き を自由に変えられます。偏向角 7.9 度という数字は、鉛直 バンチ長圧縮器は主リナックと同じ型の加速空洞、およ びシケイン(ビームを蛇行させる磁石列)の組合せからな ります。全長 1km 以上あります。バンチ圧縮の原理を図 25 に示します。まず、バンチを加速正弦波のゼロ点付近で加 速することにより、バンチの先端を減速、後端を加速しま す。このバンチをシケインに通すと、高エネルギー粒子ほ ど直線に近い軌道をとるので軌道長が短くなり、後端が先 端に追いついてバンチが短くなります。ただし、バンチ長 を 1/20 に圧縮するとリウヴィルの定理によりエネルギー 幅が 20 倍になります。減衰リングを出たところではエネ ルギー幅は標準偏差で 5.5MeV(5GeV の 0.11%)ですが、 これが 2.2%(110MeV)になると軌道のコントロールが むずかしくなるので、ILC ではバンチ長圧縮器を 2 段に分 けて加速を挿入し、圧縮器出口では 15GeV になるように します。これによりエネルギー幅の絶対値は 110MeV で 変わりませんが、相対値は 110MeV/15GeV=0.7%となっ て、軌道コントロールが可能になります(実際のエネル ギー幅は非線形の効果でもう少し大きくなります)。この 2 段式バンチ長圧縮器は、バンチ長を 150μ まで圧縮する 11 㸰㸫 能力を持ちます。 9 ビームビーム相互作用 ILC 加速器設備の最後は BDS ですが、その前にリニアコ ライダーの全体設計にかかわる、衝突点でのビームビー ム相互作用を解説します。本節の説明には数式が多数出 てきます。導出などくわしいことは、かなり古いもので すが、文献 [4] を参照してください。 衝突点でのビームの大きさは、縦・横・長さがそれぞれ 約 6nm, 500nm, 300μm です(いずれも標準偏差)。粒子 数は 2 × 1010 、つまり電荷は 3.2nC です。このビームの作 る電場は数 100GV/m、磁場は数 kT になります。この強 い電磁場の中で各粒子は強い力を受け、バンチの変形お よびシンクロトロン輻射が起こります。なお、ほとんど光 速で走る電荷が作る電場と磁場の間には、B = ez × E/c (ez は進行方向単位ベクトル)の関係があり、同じ方向に 走るビームに加わるロレンツ力 E + v × B は電場項と磁 場項がほとんど相殺します。したがって、相手ビームに よるロレンツ力を考えれば十分です。 ビームビーム相互作用は、古典力学的現象と量子力学 的現象に大別されます。前者はクーロン力によるビーム の変形、ルミノシティの増加、不安定性など、後者は光 子の放出、電子・陽電子対の発生などを含みます。 9.1 Figure 26: HD vs. Dy 。 です。多くの場合 1 程度です。図は正面衝突でない場合 も含み、Δy は衝突前の両ビームの y 方向の位置のずれで す。Δy が十分小さければ、HD は 1.5-1.7 程度です。実 は丸い(σx ≈ σy )ビームの場合は 3-5 ぐらいの大きな値 になってルミノシティを得するのですが、これは後に述 べるように使いものになりません。 正面衝突からずれた場合は、2 つのビームは互いに横 方向に蹴りあいます。典型的な蹴り角は x 方向も y 方向 も同程度で、 ビームの変形 もっとも簡単な場合として、同じ電荷・大きさの電子・陽 電子バンチが正面衝突する場合を考えます。ビーム(バ ンチ)の衝突を記述する基本的なパラメータとしてつぎ のものがあげられます。 E ビームエネルギー。 γ = E/mc2 N バンチあたり粒子数 θ0 ≡ D x σx 2N re D y σy = = γ(σx + σy ) σz σz (19) であらわされます(実際は Dy が大きいときはこれはや や過大評価ですが。)ILC ではおよそ数 100μrad です。 σx , σy , σz バンチの幅・高さ・長さ(標準偏差) βy y 方向ベータ関数(βx はあまり重要でない) ビームのつくるクーロン場は複雑ですが、中心付近では レンズと同じです。バンチ長 σz をその焦点距離で割った 数を Disruption parameter と呼びます。ビームパラメー タで表すと Dx(y) ≡ σz 2N re γ σx(y) (σx + σy ) (18) ここで、re は古典電子半径です。σx + σy は不思議な組 合せですが、ガウス分布の場合中心付近ではこの形にな ります。ガウス分布でない場合も目安としてこの式を使 σx ) います。のちに述べるように、ビームは扁平(σy Dx であり、Dy が最も重要なパラメータ なので、Dy です。ILC では、Dx は 1 以下、Dy は 25 前後に選んでい ます。 ルミノシティは式 (6) であらわされますが、Luminosity enhancement factor HD は主として Dy の関数です。図 26 に扁平なガウスビームの場合の HD をプロットしまし た。図中にある Ay は、σz /βy で、砂時計効果を表すもの Figure 27: HD vs. Δy 。 図 26 と同じデータを、横軸を Δy /σy にしてプロット したのが図 27 です。Dy が小さいときは HD は Δy とと 12 㸰㸫 もに急激に(ガウス分布の裾)落ちますが、Dy が大きく なると、かなり大きな Δy でもルミノシティが保てます。 しかし Dy が大きすぎると始めの急激な減少が目立つよ うになります。ここで起きている現象はキンク不安定性 です。図 28 は、始めに Δy = 0.2σy だけずれて衝突した ビームを横から見たものです。進行方向に細かく分けて それぞれのスライスの y 方向重心をプロットしたもので す。始めにビーム尖端が引き合って衝突しますが、互い に振り払って振幅が大きくなり、ルミノシティが減少し ます。 − ΔE E = U0 (Υ) ≈ 1 , (1 + Υ2/3 )1/2 Beamstrahlung 各粒子は相手ビームのクーロン場のなかでシンクロトロ ン輻射をだします。これを、Bremsstrahlung(制動輻射) との語呂合せで、Beamstrahlung(ビームシュトゥラー ルング)と呼んでいます(ドイツ語と英語をミックスし た怪しげな単語ですが)。シンクロトロン輻射の critical energy は、一般的には |(Fμν pμ )2 | = hωc λe γ 2 B 2¯ = =γ 3 E ρ Bc N re2 γ 5 6 ασz (σx + σy ) ΔE E ≈ 0.216 re2 N 2 γ σz 2 σx+σy (25) 2 U1 (Υavr ) (26) wx Figure 29: 扁平ビーム。 (20) 扁平ビームにより Beamstrahlung が緩和されることを 図 29 に説明します。簡単のためバンチの形は、幅・高さ・ 長さが wx , wy , wz の直方体とします。非常に扁平なビー ムなら、電場はほとんど y 方向を向いており、幅の両端 にわずかに x 方向の電場が現れるとしてよいでしょう。 この直方体を包むような面でガウスの定理を適用すると、 幅の両端を無視して (21) E·ndS = Q/ε0 程度になります。ILC では表 1 にあるように 0.1 以下で すが、1TeV になるとかなり大きくなります。Υ が大きい 場合、普通使われているシンクロトロン輻射の公式だと 光子分布の裾では始めの電子のエネルギー以上になって しまいます。反跳を含む量子力学的公式が必要になりま す(ここでは省略)。 単位時間の輻射光子数およびエネルギー損失は dNγ 5 αΥ = √ U0 (Υ) dt 2 3 λe γ − 2 U0 (Υavr ) σx + σy wy というパラメータで表されます(Fμν は電磁場テンソル、 λe はコンプトン波長、Bc = m2 /e ≈ 4.4GTesla)。Critical energy は ¯hωc = ΥE(この 3/2 倍で定義するときもある) で表せます。リニアコライダーのパラメータで表すと、 ビーム内の位置にもよりますが、平均としては Υavr ≈ 1 (24) [1 + (1.5Υ)2/3 ]2 と表せます。これらの数値も表 1 に掲げました。 表からわかるように、1 つの電子が放出する光子数は約 1 つ程度であり、それによるエネルギー損失は数パーセン トに及びます。これは、衝突実験にとって大いに邪魔にな ります。リニアコライダー開発開始当初に Beamstrahlung を緩和する方策がいろいろ考えられました。例えば、左 向・右行とも電子陽電子をまぜて中和したビームを使う こと、バンチ長を極端に短くすること、衝突点周辺にプ ラズマを作って、ビームの電磁場を消す方法などですが、 いずれも実用化には遠く、結局扁平ビームを使うことに 落ち着きました。 Figure 28: キンク不安定性。 e m3 U1 (Υ) ≈ の近似式でおよそ表現できます(α は微細構造定数)。1 回の衝突の際に 1 電子が輻射する平均光子数および平均 エネルギー損失はリニアコライダーのパラメータで近似 的に δBS = Υ≡ (23) であらわされます。ここで、U0 ,U1 は量子力学的補正因 子で、 nγ ≈ 1.06αre N 9.2 2 αΥ2 U1 (Υ) 3 λe γ ⇒ 2wx wz Ey ≈ eN/ε0 eN Ey ≈ 2ε0 wx wz (27) となります(n は積分面の法線ベクトル、Q は面で囲ま れた電荷)。したがって、ビームの作る電場はビームの高 さ wy にほとんどよりません。いっぽう、ルミノシティは 1/wx wy に比例しますから、wx wy を一定にして、wy を (22) 13 㸰㸫 減らせば、ルミノシティを下げずに Beamstrahlung を緩 和することができます。これが、リニアコライダーで扁 平ビームを使う理由です。表 1 からわかるように、ビー ムの縦横比は 1 対 100 前後です。扁平ビームを使うほと んど唯一の欠点は、y 方向の誤差許容値が小さくなるこ とです。 9.3 るので起こりえます。ただし、 ILC のエネルギーではま だ目立ったものではありません。3TeV 領域では重要なプ ロセスになります。 10 リナックを出たあと両ビームはそれぞれ約 2.2km 走った のち衝突します。この両側合計 4.4km ほどの部分を BDS (Beam Delivery System)と呼びます。 そのほかのビーム相互作用 ビーム衝突中に起こる現象として、電子陽電子対生成は 実験への background の源となるので重要です。代表的な 過程は • γ + γ → e+ + e− 10.1 (Breit-Wheeler process) • e ± + γ → e± + e + + e − 最終収束系 BDS の心臓部はビームを絞るシステム、最終収束系(Final Focus System, FFS)です。これは衝突点両側各 700m くらいを占める磁石の列です。ビームを絞るにはレンズ の働きをする 4 極磁石を用いればいいのですが、これに は「色収差」の問題があります。光のレンズの場合、光 の色によって屈折率が異なるので、単純な 1 枚のレンズ では色によって焦点がことなって、全体としてぼけてし まいます。4 極磁石でも同じで、ビーム中のやや高いエネ ルギーの粒子と低いエネルギーの粒子では焦点の位置が ことなります。 色収差は円型加速器でもあり、つぎの方法で補正して います。円型加速器では普通、エネルギーの高い粒子ほ ど外側を回ります。6 極磁石の磁場は x2 に比例する成分 をもつので、粒子のエネルギーによって磁場勾配 ∂By /∂x の異なる点を通ることになります。4 極磁石のすぐそばに 6 極磁石を置いてその磁場を調整すれば、4 極磁石・6 極 磁石の組で色収差が補正できます。 (Bethe-Heitler process) • e+ + e− → e+ + e− + e+ + e− process) BDS(Beam Delivery System) (Landau-Lifshitz 左辺の γ は beamstrahlung の光子を意味します。発生す る対の数は、バンチ衝突あたり 105 − 106 にもなります。 問題は発生後の電子・陽電子の軌道です。電子・陽電子 のうち対向ビームと逆符号の電荷のほうは対向ビームに トラップされますが、同符号のものはクーロン力で大き く蹴られて、大角度で飛び出し、検出器への background になります(図 30)。飛び出す角度の最大値はおよそ Figure 30: 電子陽電子対生成。 Figure 31: 最終収束系の原理。 θmax ∼ N re γσz (28) リニアコライダーの場合は、もともと軌道が直線なの で、エネルギーによる軌道差がありません。これをつく るために、偏向磁石をわざわざ使って軌道を曲げます。リ ニアコライダーでは極めて精密な補正が必要なので、高 級カメラが 10 枚以上の多数のレンズからなるように、最 終収束系は偏向磁石・4 極磁石・6 極磁石の多数の組合せ になっています。その原理を図 31 に模式的に示します。 Q は 4 極磁石、S は 6 極磁石、bend は偏向磁石で、右 端が衝突点 IP です。右側の 2 つの 6 極磁石は、最後の 2 つの 4 極磁石が作る色収差を消します。一方、6 極磁石 がビームに与える力は非線形なので、これにより高次の 非線形収差を生じます。これを消すのが、左側の 6 極磁 石・4 極磁石の組です。この方式は ILC のプロトタイプ として KEK の ATF2 で採用され収束実験が進んでいま す(10.3 節)。 生出リミット 最後の 4 極磁石を通過する際に中心からはずれた粒子 は磁場で曲げられて焦点に集められるようになっている わけですが(図 32 の青線)、この磁場によってシンクロ であらわされます。ここで、γ は発生した電子あるいは陽 電子のロレンツ因子です。この式はバンチの線密度 N/σz だけに依存していて、ビームサイズ σx ,σy にはほとんど よりません(より正確には、対数的依存性があります)。 クーロンキックは対向ビームから飛び出すまで作用し、し σx,y )が寄与するためで たがってクーロン力の裾(r す。ひとたびビームパラメータから得られる対粒子の飛 び出し角度に基づいて検出器を設計した場合、ビームパ ラメータを変える際には N/σz を増やさないようにしな ければなりません。 このほかに、Coherent pair creation という過程もあり ます。これは、beamstrahlung の光子が強い電磁場のなか で、電子陽電子対発生をするものです。 (これと区別する 意味で、上に説明した対発生を incoherent pair creation ということがあります。)自由空間の光子は、エネルギー・ 運動量保存のためこの過程を起こせませんが、強い電磁 場のなかでは電磁場がエネルギー・運動量を引受けられ 14 㸰㸫 • ビームダンプ トロン輻射(図の波線)を出してエネルギーが減ると 4 極磁石の収束力が相対的に強くなり、赤線のように手前 で収束してしまいます。輻射を出すか出さないかは確率 的なので、結局この効果により焦点でのビームサイズが 広がってしまいます。これを考慮した焦点でのビームサ イズは (σy∗ )2 = βy∗ y + const. × re λe γ2 y βy∗ BDS 全体の配置図を図 33 に示します。以下主なものを 説明します。 MPS(Machine Protection System) リナックなどの上流のシステムに何らかの不具合があっ て、ビームエネルギーが大きく異なるビームが BDS に入っ てくることも考えられないわけではありません。リナック はビームパイプの口径が大きく(70mm)数 10%エネル ギーのずれたビームでも通してしまいますが、BDS はエ ネルギー差に敏感で、エネルギーの大きくずれたビーム は途中の磁石を破壊したり、検出器に損害をあたえる可能 性があります。そのようなビームをはじき出すのが MPS (Machine Protection System) です。これは図 33 の左端 に見えています。シケインによってバンチのエネルギー を検出し、許容値外の場合、後続するバンチを蹴りだす ものです(そのバンチそのものには間に合いません)。同 時に、減衰リングに信号を送り、減衰リングからの取出 しを停止します。 コリメータ ビームは中心から大きくはずれた粒子(ハロー)も、ご くわずかですが、不可避的に含みます。それらは、4 極磁 石内でシンクロトロン輻射を出し、それが検出器に入っ て実験の邪魔をします。ハロー粒子を止めるために、長 いコリメータが挿入されています。リナックでのビーム サイズは、標準偏差で x 方向数 10μm、y 方向数 μm しか ありません。このまま数 10 シグマでビームを切るとすれ ば、コリメータの口径が極めて小さなものになり、現実 的ではありません。そこで、4 極磁石の列でビームを広 げてからコリメーションし、再び 4 極磁石の列でもとの サイズに戻します。この操作は x,y 方向各 2 回、エネル ギー方向 1 回が必要で、全長 1km 近くになります。 各コリメータは、ビームで破壊されないように、scatterer と absorber からなります。前者はエネルギー損失 が小さくしたがって破壊されないよう薄くつくってあり ます。これによってビームシャワーが発生し、ビームが 広がってから厚い absorber に吸収されます。 なお、ここで発生した μ 粒子は検出器まで到達して background を作るので、途中にミュー粒子壁を置き、磁 化した鉄でミュー粒子をどけるようにしています。 クラブ空洞 前節で、ビームは正面衝突するように述べましたが、実 はそれでは衝突で発生する種々のゴミがまわりの磁石に 当たって、大量の background になります。そこで、ILC では 14mrad の交差角をつけて衝突させ、ゴミと入射ビー ムを分離できるようにしています。 しかし、ビームの対角線角度 σx /σz は 2mrad 以下しか ありませんから、このままでは 2 つのビームは十分に衝突 しません(図 34 左)。そこで、図 34 右に示したように、衝 突前に、ビーム先端と後端を逆方向に蹴り、衝突点に到達 するときには、正面衝突の形になるようにします。これを クラブ交差と言います。クラブは蟹の意味です(蟹の横歩 き)。これを実現するにはクラブ空洞(図 35 はそのプロト タイプの写真)を使います。これは横方向に蹴る 3.9GHz の空洞で、正弦波のゼロ点付近で使います。技術的なチャ レンジは、電子側と陽電子側のクラブ空洞のタイミング σx /2φ ≈ 0.03mm 差です。許容誤差は、長さにして 5/2 (29) となります。ここで、const. は収束系の詳細による無次 元の定数、 y は幾何エミッタンスです。βy∗ を変えたとき の σy∗ の最小値は ∗ σy,min = C(re λe )1/7 (γ y )5/7 (30) ここで係数 C は上記の const. の 7 乗根を含む無次元の定 数ですが、7 乗根ですので、収束系の詳細にはあまりより ません。 この効果は KEK の生出氏が指摘したもので、生出リ ∗ ミットと呼ばれています。実際のルミノシティは、σy,min から計算されるものよりやや大きくできるようです(ガ ウス分布でなくなるため)。 この効果は、ILC では顕著ではありませんが、より小 さいビームをねらう場合は考慮しなければなりません。 Figure 32: 生出リミット。 10.2 BDS の構成 BDS の主要部は最終収束系ですが、全長がその 3 倍もあ ることからわかるように、非常に多くの部分からなりま す。上流から挙げると • MPS(Machine Protection System、加速器保護シ ステム) • ビーム診断装置群(ビームエネルギー、エミッタン ス、偏極度などの測定) • コリメータ(xy 面でのコリメーション、エネルギー コリメーション) • ミュー粒子壁 • クラブ空洞 • FFS(Final Focus System、最終収束系) • 衝突点(IP)フィードバックシステム 15 㸰㸫 Figure 33: BDS の配置図。上下の点線より左は陽電子生成システム(電子側のみ)。衝突点以後のビームダンプなどは 描かれていない。 σx/φ QD0 は進行方向に 2 つに分けられており、重心系 250GeV のような低エネルギー運転の場合は焦点に近い方だけ励起 することで実質的に磁石を IP に近づける効果を得ます。 QD0 の振動はそのまま焦点でのビーム位置の振動にな りますから、冷却系統など振動がないように作らなけれ ばなりません。IP でのフィードバックシステムにより振 動の許容値は大幅に緩和われますが、それでも 50nm 以 内に抑えなければなりません。 kick 100fs です。これ kick (2φ は交差角 14mrad)、時間にして は実現の見通しがついています。 kick σz kick 2φ Figure 34: クラブ交差。 Figure 36: 衝突点付近の配置図。 衝突点(IP)フィードバックシステム IP での上下方向のビームサイズは数 nm しかありませ んから、ビーム位置のわずかな振動でもルミノシティが 落ちてしまいます。そこで、両ビームの位置のずれをバ ンチごとに計測し、後続のバンチの位置を補正します。超 伝導コライダーの利点の一つはバンチ間隔が広いことで (常伝導コライダーで す。ILC では 300-500ns あります。 は 1ns のオーダーです。)したがって、デジタル回路によ る精密な補正をする時間の余裕があります。図 38 はその 概念図です。位置の検出は、ビームサイズより十分小さ い 1nm 以下の精度が必要なはずですが、幸いビームビー ム相互作用が強力な増幅器の働きをするので、数 10μm の精度で十分です。両ビームが正面衝突からずれた場合、 Figure 35: クラブ空洞。 衝突点付近の配置 図 36 は衝突点(IP)付近の磁石配置の模式図です。図 の上側を右から左に向かうのがこれから衝突するビーム、 左から右下へ向かうのが使用後の相手ビームです。両者 の間には 14mrad の角度がつけられ、分離されます。最 後の 4 極磁石(QD0 と命名されている)から IP までの 距離(L∗ )は 3.5m ないし 4.5m(検出器により異なる) です。QD0 の下流面(左側の面)で使用前・使用後ビー ムの距離は 4.2cm ないし 7cm ということになります。 QD0 は超伝導磁石で、図 37 のようなクライオスタッ トに格納されます。右側の穴が使用後ビームの通路です。 16 㸰㸫 間、半径 6cm の円を描くようにスウィープされ、一点に 集中しないようにします。計算では、水温は最高摂氏 155 度まで上がります。 10.3 ATF2 高勾配加速を別にすれば、ILC でもっともチャレンジン グな技術は、衝突点でビームサイズを数 nm に絞ること です。リニアコライダーの減衰リングのプロトタイプと して、KEK では ATF(Accelerator Test Facility)をを 建設し、世界に先駆けて数 pm の幾何エミッタンス y を 2003 年ごろに達成しました(ILC の設計値は 2pm)。いま では、多くのリング加速器で pm は常識になっています。 さらに、このビームを使って、ILC と同じ方式でビームを 絞る実験が求められ、2005 年にその設計が行われました。 ILC 本体に比べて ATF のビームエネルギーは 1/10∼1/20 しかありません。したがって、減衰リングがおなじでも 衝突点での幾何エミッタンスは 10-20 倍大きく、数 nm を 達成することはできませんが、むずかしさは色収差の大 きさで決まるので、同じ色収差で収束できる 37nm を目 標としました(Goal 1)。一方、ビームの位置を数 nm の 精度でフィードバックを使って安定化する実験も計画さ れました(Goal 2)。 図 40 は ATF と ATF2 の配置図です。下方の直線は線 型加速器で左端から始まり、電子を 1.3GeV まで加速し ます。このビームは図の A 点でリングに入射されエミッ タンスを減少させます。B 点に置かれたキッカーにより A 点とほぼ同じ場所で取出されて、ATF2 のビームライ ンに入れて絞られ C 点でダンプされます。 ところで、実機の ILC では両ビームのルミノシティに より実効的なビームサイズが測定できますが、ATF2 では 相手ビームがないので、ビームサイズは特別なモニター (IPBSM, IP Beam Size Monitor)で測らなければなりま せん。このためには、レーザー干渉パターンによる IPBSM (IP Beam Size Monitor)を使っています。その原理を図 41 に説明しました。 Figure 37: QD0 のクライオスタット。 互いに蹴りあうので IP から数メートル離れたところで、 数 100μm の変化が衝突後のビーム位置に現れるのです。 この予備実験が ATF2 で行われています。 Figure 38: IP フィードバックの概念図。ビーム位置は上 下(紙面に垂直な方向が重要なので、位置検出電極が実 際は上下にある。) ビームダンプ Figure 41: IPBSM 原理図。上下か ら来るレーザービームにより干渉 縞を作る。電場は図の左右方向、磁 場は紙面に垂直な方向。ビームを 紙面に垂直に当てると、電場によ りコンプトン散乱が起こる。ビー ム位置が電場の節(青点線の楕円) の場合散乱が最少、腹(赤実線の楕 円)の場合最大になる。最大値最小 値のモジュレーションからビームサ イズ(図の上下方向)がわかる。磁 場はビームに平行なのでコンプトン 散乱に寄与しない。 Figure 39: ビームダンプ。 ビームダンプは全システムのそこら中にありますが、 もっとも大きなものは 4 か所あり(BDS 直前、衝突後、 各 2 つ)、いずれも 1TeV 増強時を見越して、最大 18MW のビームを処理できるようになっています。これは、高 圧水を格納した、直径 1.8m、長さ 11m(10 輻射長)の ステンレス容器です。高圧(10 気圧)にするのは、沸点 を上げるためです。ビームの入る窓は、直径 30cm、厚さ 1mm のチタン製です。ビームはパルス継続時間 1ms の 図 42 に、これまでの ATF2 で測定されたビームサイ ズの歴史をプロットしました。今年 2014 年 6 月には約 44nm に達し、ほぼ Goal1 の目標が達成されました。た だし、ビームサイズがビームの強さにかなり依存してい るので、その原因の究明が必要です。 17 㸰㸫 Figure 40: ATF と ATF2 のレイアウト。 られています。)減衰リングは、陽電子の生成率の問題 のため、10Hz で運転できるように設計変更されています (ウィグラー磁石および RF システムの強化)。したがっ て、基本的には全体を 10Hz で運転しルミノシティを倍 増することが可能です。ただし、施設全体の使用電力の 限界のため、これは重心系エネルギー 250GeV でのみ可 能です。350GeV の場合は 7Hz くらいまで可能でしょう。 500GeV では、この方法ではルミノシティを上げられま せん。 次の段階のルミノシティアップグレードは、バンチ数 を 2625 に倍増することです。このためには、 • RF 装置(クライストロン、モジュレータ)を追加 する。 Figure 42: ATF2 で測定されたビームサイズの歴史(黒 田茂氏による)。 11 • 必要に応じて陽電子減衰リング 1 台を追加する。 (節 参照) この分の追加投資が必要になります。この場合エネルギー に関係なくルミノシティを倍増できます。表 1 の右から 3 番目のカラムの数値はこのルミノシティアップグレード をした場合のものです。 アップグレード ILC の技術設計報告書に詳細に記述されているのは、重 心系エネルギー 500GeV まで、1パルスのバンチ数 1312 の場合です。将来にわたって、ルミノシティ・エネルギー を上げることも考慮されています。 11.1 11.2 エネルギーのアップグレード リニアコライダーの利点の一つはエネルギー拡張性です。 ILC の設計報告書では、500GeV から 1TeV に増強する場 合について簡単にまとめられています。基本的には、線 形加速器を長くすることに尽きますが、これは 20 年以上 先の話なので、それまでの加速空洞技術の進歩を見越し て、加速勾配を 31.5MV/m から 45MV/m に上げるとし ており、したがって線型加速器の長さは 2 倍にはならず、 ルミノシティのアップグレード もっとも簡単なルミノシティアップグレードは、全体の繰 返し周波数を 5Hz から 10Hz に上げることです。もとも と、線形加速器は 10Hz で運転することができます。(鍵 はクライストロンの繰返しですが、これはすでに確かめ 18 㸰㸫 施設全長 50km 程度におさまるとしています。使用電力 には、社会的限界があるので、300MW 以内になるよう にパラメータを選んであります(表 1)。アップグレード の際に必要なことは で割って定義します。つまり x 方向の規格化エミッタン スは x,n • トンネルを両側に延長して線型加速器を長くする。 = (x-px ) 面での楕円の面積 πmc 添字の n は ‘normalized’ を表します。単位は m です。 縦軸を px の代わりに x 方向を角度 x = px /ps にする とより幾何学的になります。この場合の楕円の面積(割 る π )を幾何エミッタンス x,g と呼びます。高エネルギー では ps は mcγ(γ はローレンツ因子、つまりエネルギー 割る mc)に近いので、 • ターンアラウンドを作り直す。 • もとのバンチ長圧縮器およびリナック先頭部分を上 流に移す。リナックの残りの部分はそのままで、そ の間に新しいリナックを挿入する。 • BDS は全長不変で、間にいくつか磁石を挿入する。 x,g • アンジュレータの位置はそのままだが、アンジュレー タはピッチの長いものに置き換える。 = x,n (32) γ の関係があります。幾何エミッタンスの次元も m です(時 には radian·m と書くときもあります)。 規格化エミッタンスは加速しても変わらないという性 質があり(リウヴィルの定理)、いっぽう幾何エミッタン スは位置・角度の幾何学的要素から定義されているとい う利点があります。このてめ、両方とも頻繁につかわれ るので、注意しましょう。 ある場所でのビームサイズ(標準偏差)は などの作業が必要になります。表 1 の右端 2 つのカラム は 1TeV に増強した場合のものです。 A (31) 加速器ビーム力学の初歩 以下の説明のために、加速器ビーム力学にかんする最小 限のことばの説明が必要です。まず、ビームを表現する 座標ですが、通常進行方向(水平に走っている場合だけ で十分です)を s 軸(加速器に沿った長さ、通常 z でな く s を使う)、これに直角に水平面内に x 軸、鉛直方向に y 軸をとります。ビームは多くの場合バンチしています。 バンチ内の粒子すべてが正確に s 軸方向に走っているわ けではありません。加速器内のある場所で、バンチ内の 各粒子の x 座標、および x 方向の運動量 px をプロットす ると、たとえば図 43 のようになります。 σx = x,g βx = x,n βx γ (33) と書くことができます。ここで βx は、ベータ関数と呼ば れ、加速器内の場所 s の関数であり、ビームにはよりま せん。長さの次元をもちます。βy も同様です。 加速器内の電磁場のない区間(ドリフトスペース)に おいては、β は s の 2 次関数になります。その係数の間 には関係があり、2 次関数が最少になる点を s の原点にと ると px β(s) = β0 + s2 , β0 β0 = β(0) (34) と書けます。β0 を小さくすれば s = 0 でのベータ関数は 小さくなりますが、s = 0 から離れた点ではかえって大き くなってしまいます。この付近のビームサイズは σ(s) = σ(0) x 1+ s β0 2 , (35) の形で、図示すると図 44 のようになります。これを砂時 計(hour-glass)効果と呼びます。 Figure 43: エミッタンス これを覆うような楕円の面積を π で割ったものを規格 化エミッタンスと呼びます。実際には分布のすそがある ので、標準偏差をとります。次元は、meter×eV/c になり ますが、通常これを mc(m は電子の質量、c は光速度) Figure 44: 砂時計(hour-glass)効果 19 㸰㸫 References [1] Executive Summary, Physics, Accelerator R&D, Accelerator Baseline Design, Detectors, それに一 般向け冊子(’‘From Design To Reality’)の 5 冊か らなる。総計 1270 ページ。KEK ナンバーは KEK Report 2013-1。KEK のサイトは、 http://www-lib.kek.jp/cgi-bin/kiss_prepri. v8?KN=201324001&OF=8. 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